遍く万象は流転すべきもの、故に死もまた死すべし

THE EPITHAPHS FOR IMMOTALS



「「我らが双血の墓碑銘(エピタフ)をここに謳おう────」」


死の嵐を恐れる事無く、隼人と柩……寄り添う二人の瞳が同時に真紅の輝きを放つ。互いを流れる血と血が共鳴し合う。
手の甲に刻まれた血の十字紋から、紅く輝く一条の短槍――否、結晶化した《真祖》の力を宿す血の杭が出現していた。


柾隼人、二人の男女がその()を共有・共鳴させる事で発動する、異端の墓碑銘(エピタフ)
人類種が畏れ敬ってきた“死”の概念の化身――“真祖”の血を以て、遍く不死を討ち滅ぼす異能である
比翼と力を重ね合わせた隼人の振う一太刀は、たとえ原初の《墓碑銘》に目覚めた不死者さえもその因果の鎖を断ち切って、不可逆の完全なる死を齎し……
真祖の血で形成された真紅の杭は、吸血種を吸血種たらしめる“不死”の因子を穿ち、その命を灰燼へと帰すのである。

本来であれば、この不死者に一方的な死を与えられる強大な権能は、器たる柩の自我が目覚めたままでは行使は困難であると見られた。
故に龍馬は、不完全な一回限りの発動でも諸外国にその破壊力を知らしめることができればよいと判断、
彼女にとって愛する存在である隼人を眼前で殺害する事で、その内なる力を暴走させ……箱根一帯の吸血種へ自死を強制させた
一方、何とか箱根でその強制力をやり過ごしたフェレイラは、
隼人の亡骸を操り、あたかも彼が生きているかのように思わせ、対立者の手が及ばない蝦夷の地へ柩を誘き寄せ……自らの精神世界にて彼女を抹殺しその真祖の力を手中に収めようとしたのだが。

ここでフェレイラ(ユダ)にとって、大きな誤算が三つ存在していたのである。


一つ目は、器であり、偽りの外殻でしかないと軽んじた柩という少女の精神が、彼の知らぬこれまでの旅路の中で強く生き抜こうとする意思を育んでいた事
精神世界での物理的な肉体破壊は確かに苛烈であり、同時に隼人が既にこの世にいないという事実の宣告は心を打ちのめしはした。
それでも少女は魂の強度を取り戻し、自分の足で地を踏みしめこの世界で生きていきたいと強く願い抵抗し続けた事で、ユダは予想を超えた時を割かねばならなかった。

二つ目は、隼人の血と柩の血が、二回の《洗礼》を経て深く共鳴し真祖の力を共有し得る段階にまで至っていた事。
隼人が柩の眷属となった最初の洗礼――この時実は、隼人は洗礼を受けた事で、吸血種黎明の十二使徒と同じ、《真祖》の権能とかなり近しい状態に置かれていた。
そして蝦夷の地で隼人の肉体に施された洗礼の重ね掛け――これが本来柩一人では制御不可能な膨大な力を、二人で力を共有化するという特殊な現象を生んだのだった。

そして―――三つ目にして最大の誤算。最後の死の瞬間まで、ユダが気づくことはなかったその原因は。
……十六夜村で、無念無想の一太刀で隼人が斬り捨てたはずの()が、滅びるはずだった隼人の魂を護り、癒し――最後には自らの魂を同化させる事で、柾隼人を現世へと復活させた事
かつて哀しく離別するしかなかった幼馴染が、これまでも、そしてこれからの未来もずっと寄り添ってくれる事
そこに魂の救いを感じながら、隼人は真に自らの一部となった刀を携え、遍く不死の因子を滅する力に触れる。
……これこそ、黒幕達さえも予想し得なかった、人の意思により行使される神の力の顕現

―――かくして、目覚めた隼人と彼に寄り添う柩は、未来をその手で切り拓く為に……
精神世界でユダ・イスカリオテと、そして現実世界で最大の仇である伊東甲子太郎と対峙するのだった。


「このわたしは、ここにいる……! どこへでも、行ける……!」

――愛する者を喪ってもなお、胸に脈打つ鼓動に従い生きようとした柩の決意

『いいの。それで、あたしは隼人とずっと一緒になれるんだから』

――死してなお、愛する人を見守り、その未来を守ろうとした澪の慈愛

「柩との約束、ここで果たすよ―――」

――そして、因縁を打ち破り、伴侶と共に歩む未来を願った隼人の新たな誓い



「「遍く万象は流転すべきもの、故に死もまた死すべし(T H E E P I T H A P H S F O R I M M O T A L S)」」


旅の果て、隼人と柩、二人の男女を中心とした数多の想いが積み重なる。
死への想い(メメント・モリ)を抱き、神なき世に一つの終わりを告げようとする、双血の契りが生んだ軌跡の結晶である。





  • ヴァーミリ以来の伝統、最終技でのタイトル回収芸 -- 名無しさん (2021-12-04 10:16:28)
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最終更新:2021年12月22日 22:53