二ツ栗月夜

ふたつぐり つきよ
CV:今谷皆美


『鏖呪ノ嶼』、《過去編》の登場人物。
二ツ栗家先代当主・吉延の妻で、二ツ栗珠夜の母親である。

「吐月さんって、私と同学年なんですってね。お生まれも東京だそうで、
もしかしたら同級生になっていたかも……なんて、そんなことはないでしょうけど」

「じゃあ、それっぽく吐月くんと呼びましょうか。なんだか私、あなたと話すとほっとする気持ちになるわ」


物語が始まる約二十年ほど前、二ツ栗家の金銭的な援助を目当てとした父親の意向で親子ほども歳の離れた吉延と結婚。
申仏島に住まうようになって以降も一般的な人間の感性を保っており、一族が背負う呪いやそこから生き延びる為に様々な人間を犠牲とする仕組みに対して嫌悪感を隠していなかった。

特に実質的な二ツ栗家の支配者である菊乃に命ぜられるまま、“呪殺”稼業や女性達を呪いの生贄に捧げ続けた夫・吉延に対しては態度がかなり冷たく、介護の時以外はほとんど夫婦としての会話はなかったという。
ただ、彼との間に生まれた珠夜に対しては深く愛情を注いでおり、成長し東京の学び舎に入った彼女がそのまま真っ当に生きていく事を心から望んでいた。
また、新たに島へ訪れた吐月完に対しては、同じく“外”から来た人間としてシンパシーを感じていた様子であり、
完の側も決して他者に心を許さない文鳴啾蔵や、どこか得体のしれない苦松刑部といった同僚たちに囲まれる中で、陰の気を感じさせない月夜との交流をいつしか息抜きと感じるようになっていた。

しかし、2016年――二ツ栗の支配者・菊乃が老衰で没するに際し、仮初の穏やかな日々は終わりを告げる。
彼女の遺言により、老いた吉延に代わり、学び舎を卒業する珠夜を次の当主とすることが決まり……
それに反対した月夜が菊乃の自室に軟禁されたのである。
それでも島を出て、呪われた一族から解放され娘と共に静かに生きることを望んだ月夜は唯一気心の知れた完へ脱出の協力を求める。
無謀な試みだと、自分とは関わりない一族のいざこざに過ぎないと理性が語りかける中、
――それでも、吐月完はかつて守れなかった一人の女の面影を振り切ることは叶わず、彼は二ツ栗に背こうとした


その結果は――やはり、失敗だった。
すでに脱出の企ては『振興会』の荒くれ者共に知れ渡っており、彼らと啾蔵の激しい追跡により二人は分断。
完は格上の刑部に追い詰められるも、不気味な嗤いを浮かべる彼に見逃される形でただ独り、島から逃げ出したのであった。
そのまま、二ツ栗月夜という女性はその後島で一切姿を見せることはなかった――軍神の糧という、単に死ぬよりも恐ろしい末路を迎えて。
一方の逃げ延びた完の側は完全に心が折れ、覇気を失くし濁りきった瞳で、
唯一残った“呪術”を生きる術として闇から闇へ、どこで朽ち果てても構わないと世を流れていった。

だが、そんな重い挫折の瘡蓋を抱えた男は、三年後残された“因縁”へと導かれ、忌まわしき島へと足を踏み入れる。
そして、人知れず朽ち果てた“彼女”と同じ血を引いた一人の女も、見えぬ因果の糸に引き寄せられる。



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最終更新:2024年06月20日 23:05