そんな中、完と偲が新たな拠点とした小さな民家に、偲の復讐相手である
刑部が来訪、お互いに優先して排除すべき術者・
文鳴啾蔵を協力して討たないかという誘いをかけてきた。
激しく反発する偲を何とか抑えつつ、その場は刑部と手を結ぶことを了承する完。
そして――刑部が去った後、疑念の消えない偲に、今は二ツ栗家の厄介な術者を一人でも減らすべきであり、
順番が来れば、自分も偲の復讐を助けるつもりであると完は説得を続けるが……
「……信じらんないね」
「結局、付き合いが長いのは向こうのほうだろ?あたしがオッサンと会ってから、せいぜいまだ十日くらいじゃん。土壇場で裏切られるのは真っ平ごめんだよ」
当然、闇稼業の人間として生きてきた彼女からは否定されるばかり。それでもと対する“オッサン”は言葉を尽くそうとする
「俺が偲を選ぶ理由は、ちゃんとあるさ」
「偲の味方をすることで、得られる見返りが欲しい」
「要するにだな、おまえと一緒にいたいんだ」
その、40代男性の(色々と足りてない)発言に、偲は固まりドン引きした。
「ええ……それってマジ口説き?いきなり過ぎだし、悪いけど全然タイプじゃないから」
苦笑し――頭を掻きながら完は、己の言葉を補足していく。
今まで流されるだけだった自分が今、何がなんでも成し遂げたい目的がある。
自分とは正反対の生き方―執念を燃やして生きてきた、そんな真っ直ぐな偲と共に行動する事で、目的も意欲も明確にできるのではないかと。
だからこそ、“一緒にいたい”のだと。
だがまだ、女の方は渋い顔であり……
「なんか、理屈っぽくて実感しづらいよ。それならまだ、あたしを抱きたいからとかのほうが全然わかりやすいし」
「じゃあ、それでいい」
「はあ!?」
「ああ、今の言い方は流石にアレだったな……要は、偲に信用してもらうためなら何でもするってことだ。それぐらい、俺にはおまえに拘りたい理由がある」
ポロっと出たデリカシーのない答えを弁明する中年男の姿を、女は黙って吟味して。
「まあ、嘘は言ってないんだろうなってのだけはわかるよ。あんたは人殺しだけど、そう悪い男でもない。でも、だからこそってのがあるんだよなあ……」
「……なかなか面倒臭いな。そろそろ心が折れてきそうだ」
それでも……と悩む偲を前に、完が途方に暮れかけた時。
「ああもうッ……じゃあ、わかりやすいのでいこう」
長い髪を掻き上げ、偲は言った。
「抱けるんだろ?さっき言ったよね。じゃあ抱きなよ」
「あれはまあ、例えばの話でな。信用してもらえるなら何でも構わんのだが」
「いいよ別に、減るもんじゃなし。面倒臭いのはやめやめ!」
そうして、胡坐をかいた完の上に柔らかな女の躰が密着する。
「あんた、自分と寝た女を裏切れるタイプじゃないだろ?これならなんとか、あたしもオッサンを信用できそうだし」
開き直った偲の思いきりの良さに圧倒されながら、完の雄の部分はしっかりと彼女の体温と感触に確かな興奮を覚えていたのだった……
やっぱり女を買いそうな顔しとるじゃないかこの中年
- 中年特有のナチュラルなノンデリ仕草をイジる描写が令和作品っぽい -- 名無しさん (2024-06-29 15:40:24)
最終更新:2024年10月24日 12:47