昭和11年。まだ黝き最悪の呪霊が生まれる以前の
申仏島において、
呪術により他者の命を奪い続けた一人の男が、かつて命を奪った者と縁ある者の恨みを乗せた呪詛返しにより、死に瀕していた。
死にゆくその男は声を搾り出し、
不言名流呪術を授けた娘に対して…力を与えたことの意味を問う。
幼い娘――菊乃は、『敗北した』父に向けて答えを告げる――
この世のどんな人間にも、どんな道理にも負けないためだと。
現世に生まれた多くの人間が心に抱くだろう祈り……
複雑に絡まる世の理を飛び越えてでも自分の都合のよい結果を引き寄せたい、手に入れたい、という願い。
それを実現する術こそが、人の“
呪い”を操る
呪術である。
ならば……自分は負けてなるものか。
自分は、他人の“
呪い”に敗北し、自分の命すら守れず苦悶の声を上げて死んでいくだけの弱い父とは違う。
欲するだけ欲しいものを手にし、現世を好きなように生きて笑って勝ち逃げしてやるんだと――
不敵に言い放った娘の姿に、父は満足気に笑い……
数日後血反吐を撒き散らしながら地獄へと堕ちていった。
……そして。父に告げた通り、菊乃は他者の願いを押しのけ夥しい血に染められた道を駆け上り、
二ツ栗家の実質的な支配者として数十年間にわたり金と暴力と呪の力で、自らの願いを満たしていったのだ。
だが老いていった菊乃の欲、願いは死後にも及ぶようになり――
その熱意は二ツ栗家にかけられた死後も続く苦悶の呪いから一人、逃れ出る方法の究明へと向かっていった。
そしてその実現のために、ある一人の娘といずれ生まれくるその子供が生贄と捧げられることが決まったのである。
本編より
「この世に人が生まれたときから、呪いってものは始まっているんだろ。誰もが自分が他人より幸せになりたいと願うものだし、自分より幸せな他人の不幸を願ってるんだから」
「それが人の自然な姿。善いも悪いもありゃしない。だったらこの世は、欲しいものを手に入れたものの勝ち。どんな力にも負けなけりゃいい」
「お父は呪術師だから死ぬんじゃない。弱い呪術師だから死ぬんだ」
「あたしはお父みたいに惨めには死なない。生きたいように生きて、この世を笑って勝ち逃げする」
「たかが同じ人間の呪いなんかで、地獄に堕ちてたまるもんかい」
- うわようじょつよい -- 名無しさん (2025-02-27 10:48:19)
- なお原作の結末 -- 名無しさん (2025-02-28 21:27:21)
- 両ルートきっちりジジイと怨霊に負けてること含めて完成されてるなって -- 名無しさん (2025-03-01 11:57:07)
- ハァ・・ハァ・・敗北者…?(●を刑部に喰わせながら -- 名無しさん (2025-03-08 23:01:52)
最終更新:2025年03月09日 01:16