『征服者』(せいふくしゃ、原題:Les Conquérants)は、フランスの作家アンドレ・マルロー(André Malraux、1901–1976)が1928年に発表した処女長編小説であり、アジア革命三部作の第一作目である。
概要
マルローが中国で実際に体験した1925–1927年の広州・武漢革命(国民党と共産党の第一次国共合作期)を基に描いた政治小説で、当時26歳の若さで一躍文壇に登場した衝撃作だ。ゴンクール賞候補となり、マルローの冒険家・革命家としてのイメージを決定づけた。物語は1925年の広州を舞台に、フランス人革命家ガルラン(Garine)と彼の同志たちの視点から語られる。ガルランは病に冒されながらも、国民党左派と共産党の連合を支えるプロパガンダ担当として活躍するが、革命の理想と現実の残酷さの間で苦悩する。イギリス帝国主義との対決、ストライキの組織化、裏切りと粛清の連鎖が描かれ、革命は「征服」の名の下に血と暴力にまみれていく。最大の特徴は、主人公が「行動する人間」として描かれながらも、絶対的な意味や救済を信じていない点にある。マルローは「人間は死ぬ」という事実を前提に、革命という「無意味な行動」を通じてのみ人間が「征服者」たり得るとする実存的な視点を打ち出した。文体は断片的で緊迫感に満ち、心理描写よりも状況の描写と対話が中心。マルローの体験(インドシナでの反植民地運動、中国での国民党工作)が色濃く反映されており、当時のヨーロッパ知識人にとって「アジアの革命」を初めてリアルに伝えた作品となった。日本語訳では新潮文庫(小松清訳)が定番で、短めながらも息もつかせぬ密度の高さが魅力だ。