LAST RESORT 過去ログ.5

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拍手が、鳴り止みません。


それはきっと、アタシに向けられたものだったと思います。
けれど、うるさくはありませんでした。


当たり前の音として、わたしの耳を通り過ぎていくだけです。




イーティス「―――以上が、今回の研究報告となります。アタシの研究が今後のゼレオロス帝国の繁栄に寄与することを願っています 」


そう締めくくって壇上から見下ろした会場では、研究者たちが一様にどよめいていました。
その中のひとりが、手元のマイクのスイッチを入れます。


研究者「イーティス・センシオン博士、ひとついいですかな。今の理論、再現性の観点から見て――― 」


イーティス「ああ、それについては事前に補足を入れてあります。3ページ18行目からご覧ください。クスッ……申し訳ございません、アタシのお話が少し難しかったようですね? 」


返答はあくまでも丁寧に。しかし、たっぷりの皮肉を込めて。


研究者「イーティス……センシオン………! 」

研究者「……素晴らしい! ひと目見たときから、彼女は大成すると思っていたよ! 100年に1人の天才だ! 」


―――ああ、そう。


かつてアタシを嘲笑し、排除しようとした愚かな人々は 、
今やアタシの前では息を潜めるか、あるいは必死に取り入ろうと卑屈な笑顔を浮かべるだけです。
実に滑稽でした。


アタシは小さく息をつきます。質問に時間を割く気が失せたのです。


イーティス「皆様、ご清聴いただきありがとうございました。」


壇上を降りると、再び拍手が会場を満たしました。
けれど、そんなものにも興味はありません。ただの背景に過ぎないのですから。


控室にも寄らず、そのまま会場を後にしようとしていたそのとき。視線を感じます。


振り向くと、会場のいちばん隅。
誰からも注目されることなく佇んでいた男性が、こちらに小さく手を振りました。


イーティス「先生っ……! 」

ノイマン「やあ。素晴らしかったよ、イーティス博士 」

イーティス「ふふっ、ありがとうございます。先生のご指導の賜物ですよ 」


わざとらしく上品に一礼してみせると、先生は少しだけ口元を緩めてくれました。


ノイマン「―――……さて、イーティス 」

ノイマン「久しぶりに、僕と『対局』でもどうかな。 それと……ずっと前に話した『見せたいもの』も、そろそろ頃合いかもしれない 」


その言葉に、アタシの中で何かが、音を立てて軋みます。


『見せたいもの』。あの日。あの雨の日のことを思い出します。


空に憧れたあの日のこと。鳥になりたかったあの日のこと。


まだ”わたし”が、”アタシ”になりきれていなかった、あの日のことを。


イーティス「……今なら、いいんですか? 」

ノイマン「ああ 」

イーティス「…… …… …… 」

イーティス「……連れて行ってください 」


先生は何も言わずに一度だけうなずき、アタシに背を向けて歩き出しました。








足音だけが、長い廊下に響きます。


ゼレオロス帝国の軍部。関係者以外の立ち入りを禁止されている区画です。


こんなところで、アタシに何を見せようというのでしょうか。


胸がざわざわしました。知れば、きっと引き返せなくなる。
不安、緊張、恐怖。それでも、それらを上回る好奇心が、アタシの足を止めることを許しません。




やがて、先生は一つの扉の前で足を止めました。
先生が慣れた手つきで認証パネルを操作すると、重々しいロック解除の音と共に扉が開かれます。


部屋の中央には机。そしてその上にはチェス盤が。


イーティス「チェス盤……ここで、ですか? 」

ノイマン「ああ。さあ、かけて 」

イーティス「……はい 」


引っ掛かりが残ったままのアタシは、言われるがままに先生と盤を挟み、対局を始めました。


それは今までの”対話”とは決定的に違っていました。


序盤、中盤は互角の戦い。
アタシは先生の思考を読み、最善手を尽くしていきます。


けれど終盤に近づくにつれて、盤面は奇妙な停滞を見せ始めます。


ノイマン「チェック 」


アタシのキングが追い詰められます。

イーティス「…… 」


それを冷静に受けて、キングを逃がします。でも、


ノイマン「チェック 」


再び、追撃されます。


イーティス「……っ 」


キングを逃がす、チェック。キングを逃がす、チェック。


イーティス「先生……これは――― 」

ノイマン「ああ、パーペチュアル・チェックだね。お互いが勝ちもしないし、負けもしない。ただ、同じ手を繰り返す

ノイマン「―――チェック。さあ、次はどうするんだい? 」

イーティス「――――……ッ!? 」


ドクン。心臓がひときわ大きく跳ねます。呼吸は乱れ、手は震えていました。


わかっています。偶然ではあり得ません。
これは先生が意図して仕組んだ盤面。
だったら何故?その意図は?


すぐに理解しました―――アタシは、”初めて先生に試されている”


汗がぶわりと吹き出して、息がうまくできません。
どうすればいい?何が正解?間違えたらどうしよう。
とりとめのない思考がぐるぐると回ります。


ノイマン「選択するんだ、イーティス


先生の目が、じっとアタシを映していました。


―――その目をやめてください、先生。アタシを判じないで。
あなたにだけは、あなたに失敗作だと思われたら、アタシは。


イーティス「……先生 」


声は情けないくらいに震えていました。


イーティス「アタシは……まだ、間違えていませんか……? 」

ノイマン「それを決めるのは僕じゃない。もし苦しいなら、何もしなくていい 」

ノイマン「だが、そうすれば君は”何もしない”ことを選んだことになる 」


このまま駒を逃がし続けても、状況は何も変わりません。
詰みではない。勝ちでもない。終わりのない繰り返し。


この盤上には出口がありません。どこへも行くことができません。だったら、


イーティス「……っ、……ッ 」


震える指先で、盤上のキングをつまみます。


そしてアタシは、そのキングを―――


―――――――――――   静かに。盤の外へと置きました。  


イーティス「…… …… ……っ 」


誰が見ても分かる、ルールから逸脱した一手。


でも、これが……これだけが、アタシが絞り出した”最後の手段”だったのです。


ノイマン「――――――……! 」


先生は、言葉にならないような、今まで見たことのない表情をしていました。
失敗だったのでしょうか。それはダメ、先生に謝らないと。


イーティス「―――先生、ごめんなさ 」

ノイマン「―――イーティス、来てくれ!


言葉を遮って、先生がアタシの腕を強く引きました。







さらに扉の向こう。


”それ”は、静かにそこにありました。


巨大で、複雑な構造物。
一見すると完成品のようにも見えましたが、
アタシにはそれがまだ不完全な状態であることを、直感で理解しました。


イーティス「……先生、これが、『見せたいもの』――― 」

ノイマン「――――――『タイムマシン』だよ 」


掠れた声でした。
その言葉の重みは、一体どれだけの想いを込めたのか想像もできません。


そして、先生はついにその言葉を口にします。


ノイマン「イーティス、僕に……力を貸してほしい



イーティス「…… …… ……はい。……はい、協力します 」



イーティス「アタシが、この願いを、必ずあなたと完成させます




先生が静かに、深くうなずきました。


その目に映るアタシの姿を、今は少しだけ、誇らしく思えたのです。















『 LAST RESORT 』








#5:射る心に手を延す













― ラステルム王国・世界政府駐屯エリア・大会議室 ―


これまでにおいて何度も招集されたレギュレイターの団長・副団長たち…
一部隊を背負う彼らが一堂に会する様は、傍から見れば圧巻の一言に尽きるものであった


だがその威光も…人数と共に薄れていく
円卓を取り囲む者たちの数は、かつてより一人また一人と姿を消していたのだ―――




ティネル「―――― ……マリマロンにおけるゼレオロスの襲撃、ラステルムにおける不可解な音響騒動により、 第4調査兵団・副団長「ウィーン・マルガレーテ」… そして、第7調査兵団・団長「エクレイル・ロザ・バントレット」の殉職が報じられた。加えて、先のラステルムの騒動後に第4調査兵団・団長「片桐貴兵」は政府赤十字病院にて入院、第2調査兵団・副団長「嵐千砂都」は行方不明となった。(円卓に両肘を突き、一見は淡々としながらもどこか熱意に震えたような声音を上げる) 」

ティネル「だが、それを話す前に…まずは、今後の各団の新体制を発表する。まずは、第7調査兵団・副団長「フロール・アオイ・メイエル」を"団長"へ。同じく第7調査兵団・メカニック「ヴェスパー」を"副団長"へと任命することが決まった。また、現在入院中の片桐に代わり、臨時で代行者を構えることになった。(その視線を、第4の席に居座る者へと向ける) 」

庚「(視線の先には、この場に集った者と気色の異なるスーツ姿の男が腰掛けていた。席を立ち短く一例すると、"警察手帳"を取り出し…) 本日付で第4調査兵団へ臨時配属となりました庚 吉晴です。ケイオス中央警察の要請により、当部隊の視察、再編……或いは"解体"も視野に入れ"副団長相当"の任に当たります。よろしくお願い致します。 」

アレックス・ディノ「……情けない。(サングラスの下、目線を悟らせぬままそう零し)……こういう事態を防ぐために俺が……いや、過ぎたことを考えても仕方はないか 」

ヴェスパー「(窮屈そうに目を横一文字に細め、眉間に皺を刻み後ろ手を組んで団長の席に傍らに立ち沈黙を通す)……スゥゥゥウ~~~…… (息を深く吸い込むと、一礼しデフォジト三白眼で口をミッフィーのように閉ざした) 」

コンラード「…………。(掌を重ね拳を額に付け、岩を幾つも背負わされたかのように重く項垂れる。溜息は愚か、呼吸すら忘れる程の失意に沈み、言葉を出せずにいた) 」

ヘザー「……主幹となる隊員がここまで一斉に………(車椅子を傍らに停め、他の人物と同様の椅子に座った状態で、明らかに動揺を隠せない声音と表情で、小さく声を上げ)……音響騒動と、第四調査兵団の被害状況について、詳細な報告を求めます ……全く、まさかここまで…(一度目を伏せた後、再び顔を上げ……現れた面々に目を向け) 」

ルクエス「ん-……いやはや、これはこれハ…(常日頃より飄々とした態度を保つ自身ですらも、このいつになく殺風景な光景には口数も減るものであった) 」

ニーベルゲ「(第五のイスにどっしりと座り、自慢のバッドをなでながら目を鋭くしている。周囲の重苦しさは感じているものの、それ以上の感情が渦巻いているようだ) 」

劉狼「………(椅子に座るラタリアの背後に立ち、一人静かに胸に手を当てながら亡き者たちを追悼する) 」

庚「音響騒動については事前に共有した通りになります。確固たる物証こそありませんが、ゼレオロス帝国によって"生物兵器"へ改造されたマルガレーテ副団長によりラステルム王国の一部が崩落。片桐団長は戦線復帰が困難な状態にあるとのこと。また、第4調査兵団主力部隊の殆どが殉職、或いは戦線復帰が不可能と判断されております。現状、まともに動けるのは増員によって派兵された隊員のみと言えるでしょう。こうなった場合、再編より"解体"し、現存の所属団員は異動させた方が効率的と本部は判断しております。が、正式な決定権はティネル総団長にあり、彼女の移行に委ねる……とのことです。 」

9S「アレックス団長……(彼の背後に立ち、その背中に彼の重苦しい責務を感じ取り思わず閉口してしまう) 」

フロール「(ヴェスパーの隣に立ち、お手本の様な一礼を見せ)………改めて、ご紹介に与りました。「エクレイル・ロザ・バントレット」……"元"団長を引継ぎ、この度第7調査兵団、団長に就任させて頂きました、フロール・アオイ・メイエルです。 宜しくお願いいたします 」

アレックス・ディノ「……問題ない。俺はな(頬を叩きながら)……第一は基本問題ない。それより、他の団の人手不足だ…… 」

エドガー「(席を立ちフロールへお手本のような一礼を返す)改めてよろしくお願いします、 だな"現団長"(元服団ということもあり知った仲故か比較的フランクにそう言うと席へ就く) 各々別れは済ましただろう、"今"と"先"に集中するべきだ。 」

ガトウ「……だな…!(エドガーに同調するように、喝を入れるような大声を上げる)失ったものばかりじゃねえ…そうだろ?(再び総団長に視線を促す) 」

ヘザー「……報告ありがとうございます、庚副団長。確かに……その状態では兵団としての機能を喪失している様にも思えます。解体もやむを得ない状況だと言えるでしょう……音響兵器への対策も考える必要があります……(ティネルへと振り返り) 」

ティネル「庚吉晴氏、報告感謝する。現状の第4調査兵団は確かに再起動までには多大な時間を要する。片桐の復帰の目途も立たない今、第4は活動を一時停止。在団員は団員研修配属制度により、一時的に他団への移籍を行ってもらう。以降、第4は庚を筆頭に一部のメンバーのみで本部にて事務作業に当たってもらう。事態によっては現場への派遣も要請することを念頭に置いてほしい。ゼレオロスの新兵器の対策も、随時行う予定だ。 」

ティネル「――――左様。(エドガーとガトウの発言に続くように、伏し目がちな眼差しを上げる)諸君、失意に項垂れるな。我々の最たる目的は『反復現象《オーバーラップ》』の解明およびその被害抑制だ。 そして今回の件を経て…我々はついにその真相に至ることとなった。ラタリア。(彼女へ解説を促す) 」

ラタリア「――――!(「待ってました」と言わんばりにばぁんと立ち上がる) 諸君、悲報はそこまれらよ。ここからは【朗報】ら。ついにはかs…コホンッ、我々は、長い間追い続けてきた『反復現象《オーバーラップ》』の解明に至ったのら。(会議室の照明を消し、プロジェクターを起動。壁に映る大画面に映像を映し出す) 」

劉狼「(そんなラタリアの傍へ近寄り、一同の前で軽く会釈する)……此度のマリマロン王国遠征の件について、責任者の拙僧よりご報告いたします。マリマロン王国のエデ女王陛下より共有していただいた反復現象の感染データを確保いたしました。現地では、反復現象を克服した一般人の少女をはじめ、また世間では公表されいない多くの感染者の"治療"の成功が確定づけられていたことも明らかとなりました。 」

ガトウ「……マジかよ…ッ…!?(驚嘆に思わず声を荒げる)…あの噂は本当だったのか…!だが…いったい、どうって…? 」

ラタリア「いろいろ悩まされてきたけれろ…マリマロン独自の技術から、ようやくその詳細が解明されたんら。 そのヒントは…「電流」ら。 」

ラタリア「電子の流れを、読んで字の如く「電流」というら。電流とは本来、プラスからマイナスの信号を受けて流れるものらと言われているけろも…実際は違くて、本当はマイナス側からマイナスの電子が放出されているんら。これは乾電池と同じ仕組みなんら。 」

ラタリア「どーゆーことかと言うとね…まあ、結論から言うら。ナノマシン「ヘリックス」より齎される『反復現象《オーバーラップ》』とは、人間に24時間前の行動を強制させる、まさしく乾電池と同じ仕組みの電気信号を送ることで…本来持ちうる脳神経の流れを逆流させたことでそのような繰り返しの行動を引き起こすものらったんら。」

ラタリア「ナノマシンによって脳に与えられる電気信号はマイナスとなった…らけろも、マリマロンの衛兵が使用していた護衛用の帯電式ビームサーベルの感電を受けて感染者が反復現象から立ち直ったデータから、"マイナスだった感染者にプラスの電気信号を与えることで脳の流れを元に戻すことができる"ことがようやく判明したのら。 そう……反復現象は、掘り起こせば実に単純な仕組みで起動し、その解除も容易だったんら。 」

ヘザー「脳神経に直接作用し、その行動を制御するナノマシン………いやまあ、単純と言えばそうかもしれませんが……では、かなり安定した方法で、確実性の高い治療が行えるという事ですか…? 」

劉狼「左様。ただ強い電流を与えればよいという話ではなく、ナノマシンに対する正規の電気信号を与えることで感染者に齎された信号を中和し、解除できる…ということでございます。偶然にも、マリマロンの携帯武器が持ちうる電気信号がそれに該当するものであったらしく…謂わば偶然の産物として発見された事例から、この結論に至ったと事です。 」

ガトウ「なるほどな!理屈は全くなるほどとはいかねえが(※脳筋であるが故か)、解除できる方法がようやくわかったのは大きな進展だな……!これで、ラステルムの女王陛下をはじめ、多くの感染者を元通りにすることができるんだろ? 」

アレックス・ディノ「このパターンを解析・治療法として落とし込むことが出来れば、それこそ治療は容易になる。段階は既に「元を叩く」フェイズに移行している 」

ラタリア「そうら。劉狼の言う通り、ちゃんとナノマシンに対しての正確な電気信号を与えることで感染者の"反復"を解除できる可能性は大いにあるら。実際、マリマロンはその手法で確実に治療を成功させているら。らけろ…この単純な仕組みから、私は開発者の"意図"さえも感じるら。感染者に何らかの事態が発生した時、それを止めるためのセーフティのような…。その真意は、開発者の『イーティス・センシオン』を問い詰めないとわからんないことらけろも。(やれやれとぶかぶかの両袖をひらひらさせる) 」

コンラード「うむ……うむ……"真意"はどうあれ、"解決"へ向け大きく躍進した。それだけでもレギュレイターとして一つ功績は残せた事をまずは大いに喜ぼう……(その言葉とは裏腹に、沈んだ影を拭えないのか覇気はなく…)………("オアシム"へ一瞥をやる) 」

ルクエス「(ここで、静かに挙手を行う―――)……その『イーティス・センシオン』のことだけどサ…"居場所は特定"できたヨ。(ニタリと、不敵な笑みを浮かべる) 」


ルクエスによる回想~


大智「…やはりユナイタルに…だが…(インカムに手を添える)――― ノイン、先手必勝だ。君の暗殺歩法をもって彼女を一瞬で押さえろ。たとえユナイタルを装着していたとしても、不意打ちで出鼻を挫けばこちらが初手有利になる。ここでなんとしても彼女を捕らえる…!(小声ながらも強かな声音でノインへ通達する) 」

ノイン「 コ ク リ (インカムから聞こえる大智の声に静かに頷くと―――)――――  シ ュ オ ン ッ ! (その場から一瞬で姿を消す)  フ ォ ン ッ ―――――(残像すら残さない音速移動でイーティスの背後へ旋回。すでに振り抜かぶった鉤爪型ガジェットの爪先で背後を斬り裂こうとするが――――) 」

イーティス【サイナス】「(ノインの先制攻撃は完璧だったはず、にも関わらず)    ゴ   ッ    シ ャ ア ……ッ――――――!!!!  (あろうことか、彼女の斬撃に完璧に合わせ、最小限の動きで交差するように強烈な裏拳を叩き込んだ) 」

ノイン「  !  !  ?  (―――― ズ ガ ア ア ア ァ ァ ァ ア ア ン ッ ! ! ! )(刹那の出来事だった。気配を完全に消して至近距離まで迫ったはずだったが、気づいた頃には脇腹に強烈な激痛が走り、海岸へ勢いよく激突し、その華奢な体が岩石にめり込んでしまった) 」

ノイン「――――――――――(だが、攻撃を受けるその瞬間―――イーティスのユナイタルに"小型発信機をさり気なく設置していた"のだ) 」





ルクエス「……ガレアたちは上手くやってくれたヨ。もっとも、その発信機も気づかれちゃったのか…今じゃリアルタイムの更新も不可能になっちゃってネェ…。けど、イーティス・センシオンが頻繁に行き来するルートは特定できた。 」

ルクエス「 彼女の拠点は、ゼレオロス帝国……その更に深部…―――――― 『 ルディン 』である可能性が極めて高イ。  」

コンラード「ガ タ ンッ (思わず膝がテーブ裏を突いてしまう勢いで立ち上がり身を乗り出そうとする)……!! で、ではやはり実在するのかね!!いやそれ以前に……いやまてまて、あまりにも突拍子もなくて理解が……あっ 膝 いった………(スン とゆっくり席へ腰を下ろし目元をきゅっと閉じ痛みに耐えつつ耳を傾ける) 」

9S「…『ルディン』といえば、ラステルムの女王陛下が仰っていたという、あの「古代ルディン文明」の発祥地…!その所在はゼレオロス帝国の地下にあるとは聞きましたが…まさか……! 」

ガトウ「待て、『ルディン』ってお前…あのオカルト話のことだろ…?なんだってそんなものが"存る"ってわかんだ……!?つーか、それは本当なのか…!? 」

エドガー「良いニュースだが喜ばしくないのが悲しいな(顎に手を当て、手元に広げたゼレオロス帝国の地図、それも殆どが曖昧な内容のものを俯瞰する) 一つ確かなのは"こちらから"探りを入れるにはリスクが高すぎる上、それに対するリターンが少ないことだ。現状俺達は敵の本体ではなく"遊撃隊"に悩まされている。 奴が中枢にいるとなれば、ただ虎の穴に入ったつもりが数千匹の虎の街に放り込まれたという事態になりかねない 」

フロール「落ち着いて下さい、コンラード隊長……二人が生命を賭して我々に齎してくれた情報です。『ルディン』と聞いて思い当たるのは、確かにそれですが……エドガー団長の言う通り、おいそれと侵入できるような場所ではありません 」

ルクエス「――― 『ルディン』、それは後の「ゼレオロス帝国」となった地底国。伝承は、都市伝説は、間違いなく"実在"する。ボクたちはレギュレイター随一の諜報部隊だヨ。その所在くらい掴めていル。もっとも、『セイン』の奴が入念に調査をしてくれた助力もあるんだけどネ。彼はずっとゼレオロスと五大国の因果関係、その歴史の調査に精を出していた人間だったかラ。 」

ルクエス「現在、ボクたち第9調査兵団はゼレオロス帝国への進行ルートを調査していル。それを洗い出せば、奴らがどうやってエーテルベールをすり抜けて五大国へ侵攻しているのかも把握できるからネ。それに…万が一「こちら」から攻め入る際にも有効打となり得ル。反復現象の解除方法が分かったとはいえ、治療に徹していても被害が収まるわけじゃあない。アレックスの言う通り、こーゆーのは元凶を叩かないとダメだと思うんだけどね、ボクハ。まあ任せておいてヨ。今の今までそれらしい成果を上げなかった分、ここから巻き返すかラ。 」

アレックス・ディノ「もうそこまで分かってるのか。オレも独自で調査していたが……手が早いな、本職は 」

エドガー「(そういや疑ったことなかったな……古代ルディン文明を元に帝国が発展したんだからそんなもんだろぐらいにしか……)(頭上のフキダシ内で"ボウル型の地形にブリキのロボットやら何やらが埋まっている場所と、それを蓋するように"ぜれおろす"と書かれた都市が乗っかっているデフォルメ絵"を思い浮かべる) ……だな、水際対策では限界が来る。ただ……(目を伏せ、何かを思案し間を置いて目を開け)これ以上"仲間"を失いたくない。諜報特化である第9の実力は、これまでも、これからも"疑うことはない"。だが第4のように先急がないでくれ、可能な限り連携して総力で解決させたい(真っ直ぐと"綺麗事"を言ってのける) 」

コンラード「うぅむすまないフロール団長……。うむ、そうだな……ユナイタルへの対策が十全でない中、さぞ危険な任務だったろう。後で二人には熱々のパンケーキを振る舞ってやらねば(朗らかな笑みを浮かべ冗談交じりに言いつつルクエスを見やり) うむ、私からも物資支援や資金面での支援等要望があれば全面的に支援したい。なんでも言ってくれ(心の底からの本音を送る) 」

アレックス・ディノ「こっちで開発していた各隊用の特化型ハロ……スカウト仕様も使えるはずだ。良ければ手配する 」

ヘザー「第9兵団の能力を疑うつもりはありませんし、有用な侵攻ルートが分かれば、直接叩いて決着を着ける事も……理論上は可能でしょうが……最深部に行く以上、恐らくは"決死隊"を組む事になる。それでも尚、かなり困難な作戦になる……早期解決の為、政府から正式に師団単位の部隊を派遣して大規模攻勢を掛けるべき事案なのでは…… 」

ルクエス「一応C.P(サイファポール)の最上位機関から派遣されてきた身だからネ、ボク。(アレックスに謎のドヤ顔を決める)…………ヒュー♪心配してくれるんダ~?嬉しいネェ。そーゆーところはセインに似ているよ、ほんト。(その綺麗事を見透かしているかのような悪戯な細い眼差しをエドガーへ向ける)本当かイ?パンケーキは大好きだヨ。今度とっておきの高級品を頼むヨ。(揚々とコンラードと会話を弾ませる) 」

ティネル「ラタリア、ルクエス、報告ご苦労。今の件で、反復現象《オーバーラップ》の解明方法はついに把握できた。元凶である「イーティス・センシオン」の居所も含めてな。ここからは、その抑制の為の対策段階に移行する。先だってのゼレオロス帝国の精鋭部隊、遊撃隊《アサルト》をはじめ、機械生命体にゼレオロイド、音響兵器など…底知れない兵力を構えている奴らに真っ向から立ち向かのは困難を極める。事実、遊撃隊によって団長格が二人も討たれたのだ。要警戒相手として、慎重に対策を講じねばなるまい。」

ティネル「ヘザー、その件については既に動いている。いや、もう"確定"したというべきだろう。此度の反復現象《オーバーラップ》における問題、延いてはゼレオロスとの交戦に裂けるリソースが限られているこの険しい状況下で、ついに本部の「許可」も下り、「選定」も決定した。 」

ガトウ「まさか…ついに"動く"のか…ッ……?(ティネルの発言から何かを察したのか、眉間がぴくりと微動する) 」

ティネル「  ようやく、『 第0調査兵団 』の編成が決定した   」

団長・副団長陣『 『 『 『 『   !  !  !   』 』 』 』 』

9S「……圧倒的戦力を投じて一国を確実に落とすバスターコールにさえ匹敵する軍事力を持つ一部隊"…それが、『 第0調査兵団 』だと…っ… 」

ヘザー「………驚きました。実現は難しいと思っておりましたが………決定、ですか…… 」

ティネル「第4調査兵団が機能しない今こそ、その補欠を担うということでもこのタイミングで『第0調査兵団』の結成が決まったのには意味がある。今後、『第0』は突起戦力として遊撃隊《アサルト》並びにゼレオロイドなどに宛て、ゼレオロス帝国本隊との応戦を重点とした活動を行う。よって…――――― 」

ティネル「―――― これまで奴らと応戦してきた第1から第10は前線から離脱。本来の任務を全うせよ。今後は、総団長である私の許可なく敵精鋭部隊との交戦は認めない。

コンラード「"調査"の二文字からは最も遠い戦力……及び腰だった政府もいよいよゼレオロスを"敵"と認識、して……しまったか…… 」

ガトウ「待ってくれ!それってつまり…ゼレオロスとの戦いは「第0」に任せて、俺たちは戦いから外れろってことか…!?確かに、「第0」の戦力は俺たち10部隊を併せてもその実力を遥かに凌ぐとはいえ、俺たちだって戦える…!戦わせてくれよ、総団長…!(大きな音を立てながら身を乗り出しかける) 」

アレックス・ディノ「……世界政府も本気か……出来れば避けたいことだったが……だが、それ以上に……このタイミングであの規定を使わずいつ……というタイミングでもあるか。レギュレイターというくくりで動かせる一番強い戦力は、疑いようもなくそれだからな 」

ティネル「レギュレイターの本来の目的を見誤るな。お前たちは、反復現象ならびにゼレオロス帝国の被害を受けている王国・民間の守備、避難誘導、感染者のフォローに当たりつつ、「イーティス・センシオン」の身柄を抑えろ。 ラタリア、例のプロジェクトはどうなっている? 」

フロール「………それだけ本気になったという事でしょうね、政府も……機械兵の掃討と反復現象の調査と言う任務からは、確かに我々は逸脱し始めていたかもしれません、が……故に、政府軍本部の認識が”対帝国”へと切り替わったという事の証左……承知いたしました、第7調査兵団員に、その旨通達いたします 」

ラタリア「え~っと…「アップグレードプロジェクト」の"第二弾"なら、間もなく完成の見込みらよ…!理論上、「こいつ」が完成すれば…"単騎でゼレオロイドを討伐できる"可能性が大いにあるら…!け、けろ……「第0」が動くとなるなら…せっかくのこれも日の出を拝む機会が来るかどうかは正直アレらけろ……(言い淀む) 」

ガトウ「…っ……わかった…(渋々と引き下がるように着席する) 」

エドガーゼレオロス帝国がイーティス・センシオンの存在、その計画にどれだけ重きを置いているかによっては"そいつ"の出番があるだろう。場合によっては奴を抑える過程で帝国本隊相当の敵と遭遇しかねない、完成間近っていうのは朗報に違いねえさ(ラタリアへフォローを入れつつ)………(第0、その単語事態に思うところがあるのか表情に影が堕ちる) 」

ティネル「構わん。そのまま完成を進めろ。ゼレオロスの科学力は未知数だ。"万が一"ということもある。その発明が我々の「切り札」となるかもしれない。完成後は各団長に手配しろ、いいな。 」

ヘザー「妥当な判断かと思われます、総司令官。より強力な戦力を当て、確実に勝利する……こういった状況であれば、尚更です……!!!ガタッ(ガトウとは対照的に、納得したような表情でティネルへと返答した直後、ラタリアの声に思わず目を見開き、両手を机の上に立てて軽く立ち上がり)……ついに、完成までの見込みが…!!いえ、例え「第0」が動くとしても、前線以外が奇襲を受ける事も大いにあり得ます、そして対象となる 遊撃隊《アサルト》並びにゼレオロイド以外の戦力に、一時的にでも当たる可能性がある………いずれにせよ、それは我々に必要な装備です!! 」

ラタリア「…り、了解なのら…!(一同の発言から、自らに言い聞かせるようにこくりと頷いた) 」

ルクエス「まーボクたち諜報部隊は寧ろ前線から降ろされるのは願ったり叶ったりだヨ。最大の武器である「情報」を仕入れる為には陰でこそこそ動かせてくれると助かル。 」

ルクエス「……そういえバ?今日はやけに第5の団長さんは静かだネェ?またいつものように「お取込み中」かナー?(円卓の上、不在の席に置かれているいもむしの置物にわざとらしく首を傾げる) 」

フロール「ビクッ!!(突然テンションが上がったヘザーに軽く引き)……急に行きますね……とはいえ、我々は前線から下がるだけで、やるべきことはそう変わりません。寧ろ、被害を止めるという事についてはよりリソースを投入できるようになった訳ですから。アップグレードもありますし、ね 」

オアシム「――――――――――――(卓上に置かれたまま全く微動だにしない。音声を発することは愚か、僅かな駆動音すら発さず完全に"沈黙"している) 」

フロール「…………その様、ですね…きっと、取り込んでいるのでしょうか 」

コンラード「………(船上でのエデとの会話が脳裏を過る。 団長会議という公の場で物証のない"疑念"を振りまくべきか。悩んだ末)……(ティネルへ黙したままアイコンタクトを送る) 」

ティネル「………どうした。(強かな声音でコンラードに) 」

コンラード「…………いえ(言い淀んだ後、順にこの円卓に集う全員をぐるりと見渡す。その行動に対する"反応"を伺うようにして)…………。第0の設立、戦争への移行。いざ現実になると、やはり一兵卒ですら無い末席にはくるものがありますな……と(少なくとも総団長は”違う”。後で個別にオアシムの件は共有するべきか……?しかし、奴の上にあるのが本部の人間だとしたら、そこにより近い彼女を信用して良いものか……) 」

ティネル「無理もない。事実、レギュレイターは本来戦闘に秀でた組織ではない。前代未聞の大事件である「反復現象《オーバーラップ》」の解明、そのためだけに結成された。その渦中で遭遇した機械生命体から、初めて戦闘員やメディック、メカニック等の役割を分担させることになったのが事の発端だからな。だが、真相を負えば追うほど、その元凶も武力を行使して抵抗するのは必定。ならばその対抗策を講じねばならぬのも言わずもがなだ。だが、ここまで来て引き下がるわけにはいかない。必ず諸悪の根源を討ち、繰り返される時間から人々を解放するのだ。 」

ティネル「一同、各自の役目を理解した上で…今後の各団の方針を再確認したい。まずは…―――― 」

アナウンス「エマージェンシーコール エマージェンシーコール―――(会議の最中、その警報は突然鳴り響いた―――) 」




劉狼「ムッ―――警報!?(鳴り響く警告音に頭上を仰ぐ) 」

アレックス・ディノ「……!!(ピクリと眉を動かし、すぐさまそれに反応)……こんな時に 」

エドガー「―――――"こんな時"だからかもな(先までオーバーラップの構造が映し出されていたホワイトボードを見やり目を細める)(場合によっては第0とやらの実力を拝めるか) 」

アナウンス「緊急事態発生。「ウェスター王国」にて、ゼレオロス帝国の大軍が侵攻。王国防衛部隊より、遊撃隊《アサルト》と思われし先導者3名、並びに超巨大機械生命体「ゼレオロイド」の存在も確認。現在、被害拡大中。応援要請により、レギュレイター全部隊は至急ウェスター王国へ急行し、ゼレオロスの部隊を迎撃せよ。繰り返す…――――― 」

ヘザー「……そうですね、"こんな時"………団長会議の真っ最中、ですからね ウェスター王国……しかも、早速遊撃隊《アサルト》3名にゼレオロイドか……総司令、指示を 」

ガトウ「ゼレオロスめ、動いたか…ッ…!俺たちも向かうぞッ!前線には出れねえが…代わりに全力で都市部を死守する…!! 」

コンラード「―――――!(警報の内容を聞き硬直。すぐにある考えに思い至り席を立ち振り返る)クック副団長!至急我が隊へ至急伝達!"待機命令"!! 間違っても現場へ向かわせてはならん!! 」

アレックス・ディノ「確かに相手としては絶好のチャンスでもあるか……だが……その分戦力ならば纏まっている……全体の数が少なくなった今としてはありがたい 」

ティネル「(けたたましく鳴り響く刑法の中で、総団長のこの女性は依然厳めしい表情を微塵も返ることなく居座り、その瞼を開いた)――― 第1、第2、第6、第8、第9は雑兵殲滅。第3、第5、第7、第10は民間人、王族の避難誘導。「第0」は遊撃隊《アサルト》およびゼレオロイドの討伐に当る。「イーティス・センシオン」の捜索よりも民間と王国の安否を最優先に動け。ラタリア、お前は本部に残りプロジェクトの完成を急がせろ。総員、直ちに各部隊に以上の件を伝達し、ヴァーチャル・スキャナーで現地へ急行。任務を遂行せよ。(全団長陣と共に立ち上がる) 」

ラタリア「了解したのら!劉狼、ライオットアサギのこと、頼むらよ…! 」

劉狼「御意。(ラタリアに深く首を下げ、会議室を急いで後にする) 」

ガトウ「俺たちも行くぞ、「千砂都」―――(そう言っていつものように振り返るが、そこにはいつもの彼女はいない)………くそッ…!(目を瞑り、一人静かにその場を後にする) 」

エドガー「了解。(席を立ち円卓へ背を向けあるき出そうとする最中、劉狼が視界端に入り)……(オアシムへ一瞬一瞥をやる) 劉狼副団長!ロジェスティラ二等兵は引き続き預ける、頼んだ!(そう伝えると相馬と共に会議室を後にする) 」

フロール「……(疑念を抱いていたであろうコンラード、そして物言わぬオアシムを交互に見)……後回し、か…了解致しました。第7調査兵団は民間人、王族の避難誘導へと当たります…!直ちに団員へと通達、現場へと急行します!(素早く立ち上がり、一礼。その後踵を返して足早に歩き去る) 」

劉狼「うむ、任せよ。(エドガーに頷き、廊下の別れ道で彼らと離れていく) 」

ルクエス「………現場にはチーム・ガレアを行かせル。行くヨ、ウィルバー。(よっこらせと悠長な足取りで歩を進める) 」

ヴェスパー「まあ全団と連携して一般ピッピの護衛を優先できるようになったのはいいニュースよね。コンラードちゃんの車にバンバン載せてこっか(伸びをしつつ立ち上がり、フロールに続いてその場を後にする) 」

9S「アレックス団長、僕たちも…! 」

ウィルバー「…………。(ルクエスの後へ続き出口へ向かう。その道中、何を思ったのか)……"哀れ"だな(本人も無自覚なのか、ぽつりと囁いた) 」

ヘザー「了解しました、総司令。直ちに出動致します(一礼の後、腕力で強引に机から飛び、傍らの車椅子に着地)……ご武運を(面々を見回してそう一言だけ良った後、車椅子に据付られたヘッドセットを起動) ――ヨールダン、出動よ。今すぐ団員を招集して。それから……(通話先に指示を飛ばしながら、車椅子を転がして会議室から去って行く) 」

コンラード「………。よし(ようやく意を決したのか冷や汗を流しつつ頷き)クック君、次のようにチームを組むぞ。ロナ君を基準に"戦闘できる"メンバーを"本部"へ残し、ラタリア団長を始めとする者達の超えにつける。君も監督して残ってくれ。 私は"救助" "輸送"を得手とする団員と共に現地で人命保護を最優先とする。頼んだぞ! 」

アレックス・ディノ「ああ、行くぞ9S。全域のハロを展開。ハイグレード品はAEGISに変形させる!オレも出る!! 」

クック「へ、言われるまでもねえ。ロナは最近動きがいいからな。へへへ、俺の舎弟にふさわしい。もっともっとこき使ってやるぜ。(コンラードの指示通りに動くため自身も移動) 」



― ラステルム王国 市街地 ―


ヒロ「……ちぃちゃん、まだ…見つからないのか…(市街地、失踪した副団長「嵐千砂都」を捜索せんと歩き回っている) 」

鬼塚冬毬「ここで焦るのはタブーです。見つかるものも見つかりません…(後ろから付いて同じく千砂都を捜索している) 」

鬼塚夏美「…手分けして捜索してはや数日…進展はありませんの。…隣の国とかも探す手もあるかもしれないですの。 」


解放ベイベーお前を~♪お前と~一緒に~♪(突然ヒロの携帯が鳴る)


ヒロ「そうだな、国外に出ている可能性もある…ということか。…っと電話か…(電話に出る)……… 」

鬼塚夏美「……むっ、私も電話ですの。(電話に出る)…………………!?敵襲ですの!? 」

ヒロ「……あぁ、わかった。第1は兵の殲滅……今すぐ向かう!(電話を切る)…そっちも電話があったと思うが………敵襲だ…一旦捜索は打ち切らざるを得ない… 」

鬼塚夏美「私たちは避難民の誘導ですの…とりあえず途中まで一緒に行きますの!(ダッとかけ出す) 」

鬼塚冬毬「こんな時に敵襲とは…なんと言うバッドタイミングでしょうか…(走りながら) 」

ヒロ「…おう!(夏美に続いて走り出す) 」



錦木千束「ん~~……ここ!(🍒🍒→🍓)ヨシ! あぁん!もう、なんでそっちいっちゃうかなぁ!(某ゲームしてる)  📱<~♪(バイブ音)ん……もしもし~? 」

井ノ上たきな📱「――――――――千束、〝仕事〟です。 」

錦木千束「えっ、今から?いや、今ちょっt…… \ 📱ブツッ / え……ちょちょっ、切れたし……何なのもう~。  はぁ~……仕事かぁ……… 」

錦木千束「………よ~し!いっちょやったろやないかぁ!!! ………はぁ~~~めんっど。 ………いくかぁ。 」



嵐千砂都「………… 」


目を瞑れば、そこにはあの日の思い出がよみがえる


いつだって瞼の裏にはその光景が広がっている


あのまんまる太陽が沈みゆく夕焼け空のように輝いていた、私の『憧れ』も――――






嵐千砂都(10才)「――――返して!私の、私の、大事な…!(茜空が赤く染め上げる公園。そこには長く白い髪を伸ばした弱気な少女が、涙ぐんだ瞳で顔を歪ませていた。その小さな手は、届きそうで届かない何かを掴み返すように、必死に震えていたのだった) 」

悪戯少女『やーだよ! なぁにこの汚いリボン!こんなものを付けてるなんて恥ずかしー♪ 余所者はあたしたちの公園に来ないで!邪魔なの!(三人の少女が、自分たちよりも小柄な彼女を囲んでいた。白髪の少女が取り返そうとしていたしわくちゃの赤いリボンをぷらぷらと――餌をねだる野良猫を弄ぶかのように――垂れ揺らしていた)』 」

嵐千砂都(10才)「…う……ぁ…っ……(もう限界だった。敵うはずのない相手を前に、少女は絶望で更に視界を歪ませる。弱い自分には何もできない。それが幼き日の彼女のすべてだったのだ…―――) 」


――――― やめなよ!


悪戯少女『 ! ! ? (三人の少女たちが振り返る。彼女たちを戒める、その張りのある声へ)』 」




渋谷かのん(10才)「――― やめなよ、そんなかっこ悪いこと!(夕焼け空のような朱色をした髪の少女がずかずかと歩み迫る。凛とした眼差しに透き通った声。その気迫は少女を勇敢たらしめる何よりの特徴だった)  バ ッ (少女たちから赤いリボンを踏んだ来るように奪い返しては、千砂都を庇うように両の手を広げた) 『ちぃちゃん』をイジめる子は私が許さない! (キッ、と強く睨みつけて少女は果敢にも威嚇する) 」

悪戯少女『 ……っ… なに、調子乗って… あほくさ…帰ろ帰ろっ…! (かのんの気迫に押し負かされた三人の少女が逃げるように公園を立ち去っていった) 」

嵐千砂都(10才)「……『かのん』…ちゃん……?(助けに現れた幼馴染の後姿に歪みかけた丸い瞳がぴたりと止まる) 」

渋谷かのん(10才)「ちぃちゃん…!(振り返るや否や「大丈夫?」と彼女の全身を足の爪先から頭の天辺まで見つめては、その安否を確認する) 怪我はない?もう大丈夫からね…♪ (そう言って、少女たちから取り返した赤いリボンをそっと差し出す。夕焼けのように暖かく優しい笑顔と共に) 」

嵐千砂都(10才)「……―――――!(差し出された赤いリボンに視線を落とすことなく、幼馴染のその笑顔にすっかり見惚れていた) 」


私が泣いている時、『かのん』ちゃんはいつも助けに来てくれる

ちっぽけで、なにもできない、こんな弱い自分を…かのんちゃんは「大事な友達」だからって手を差し伸べてくれる

優しいかのんちゃんが怒るのは、明るいかのんちゃんが泣いちゃうのは、いつだって私の為だった…

それがたまらなく嬉しくて… そんな幼馴染(しんゆう)を持てた私はきっと、世界で一番の幸せ者なんだなと気づいたんだ




渋谷かのん(10才)「  ちぃちゃんは私が守るからね   」


そうして、私たちは大きくなった―――


レギュレイター団員『第2調査兵団・渋谷かのん副団長が長期遠征から帰還したぞ!すぐに迎え入れろ! エフィリア王国で出現した機械生命体の襲撃をたった一人で食い止めたそうだ…! 流石は"英雄"と謳われた女性だ…!あのマルガレーテさんも認めるだけのことはある…!』

渋谷かのん「―――― ザ ッ (政府が保有するレギュレイター本部となる施設。そこに軍の制服コートをはためかせながら帰還する勇ましき英雄がいた――――が…) 」

渋谷かのん「…っ…―――――(蓄積された疲労感が一気に押し寄せたのだろう。一瞬見せた眩暈から足元が救われ、転倒しかける―――) 」

嵐千砂都「―――――― ガ バ ッ (そんな彼女を抱きかかえるようにま殺気に迎え入れたのは、幼馴染のあの少女であった)……もうっ、また一人で無茶しちゃって……!ウチの副団長さんは本当に世話が焼けるんだから。 」

渋谷かのん「あ、ははは……ごめんね、ありがとう、ちぃちゃん。(ややかすれた声に何処と泣く弛んだ表情。誰よりも責任感の強いが故に抱え込み過ぎるという彼女自身の欠点が、ついに症状に現れ始めてきていた) 」

葉月恋「……!かのんさん!す、すぐに治療を…!(彼女の容態から急を要すと判断したメディックの少女がかのんへ寄り添っていく) 」

唐可可「かのん!大丈夫デスか…!?ゆっくり休みやがってくださいデス!かのんのガジェットも、可可が視ておきマスから!…すみれ!貴女もボヤッとしてねえでかのんを助けるのデス! 」

平安名すみれ「ボヤっとしてないったらしてないのよ!ったく…なんでいつも私にだけ当りが強いのかしら…ってそんなことより…!かのん!無事でよかったわ…!まさか王への謁見のためだから一人で向かったはずが、現場で機械生命体の襲撃に遭うなんて…!私も一緒に行って戦えてたらよかったのだけど… 」

渋谷かのん「はぁ…はぁ……ううん…!みんな、心配してくれてありがとう…。ただの寝不足だから、気にしないで…!ちょっと寝たら、すぐに良くなるはずだからさ。(気にかけてくれる仲間たちの優しさに囲まれて、少女は気恥ずかしそうに苦笑を零していた) 」

嵐千砂都「……かのんちゃん…(そんなバレバレな見栄を取り繕う彼女に対し、一度俯いては再び顔をあげる) 」

嵐千砂都「…………かのんちゃん、私、ね…本当は…ずっとここ最近のかのんちゃんを見ていて…ずっと、言えなかったことがあるの。……ねえ、かのんちゃん…?私ってさ…かのんちゃんを叱ったことって、一度もなかったよね…?(改まった表情でかのんの顔を覗き込むように尋ねる) 」

渋谷かのん「……?そういえば…そう、だね…?どうしたの…ちぃちゃん……?(心底不思議そうに首を傾げる) 」

嵐千砂都「……正直ね…どうしたらいいのか、分からなかったんだ…。私たちチーム「Liella!」が『レギュレイター』に編成された時から、かのんちゃんは私たちのリーダーとして引っ張ってくれた。やがてはレギュレイターさえも引っ張って…ついにはこの第2調査兵団の副団長にも任命されて。幼馴染として、こんなにすごいかのんちゃんが私たちの傍にいてくれてすっごく嬉しかった。 」

嵐千砂都「……でもね、それからというもの…かのんちゃんはずっと前線を走り続けてきた。私たち一団員の負担を和らげるために自分が率先して最難関な事態にたった一人で挑んで。私たちを守るために自分だけが傷ついて…そんなかのんちゃんの背中を、ずっと見ていた。 」

嵐千砂都「…言葉や態度では平然を取り繕ったって、ダメだよ。私には、全部わかっているんだから。だから、叱らせてもらうよ…? 」

嵐千砂都「……苦しいんでしょ?痛いんでしょ?何もかも自分一人で背負いこんで。でもね、かのんちゃん。私は………私たちは……ッ……!かのんちゃんの自己犠牲に支えられたくないんだよッ!!そんなの…私たちも辛い…ッ…!だからかのんちゃんだって…!辛い時くらい、「つらい」って言ってよッ!! 」

渋谷かのん「―――――― ! (嵐千砂都、彼女のすべてを表すその丸い瞳がその言葉と共に揺らいだのを見逃さなかった) 」

嵐千砂都「弱音を吐くことが弱さだと思ってるなら、それは違うよッ!自分の弱さを口にできないで、人の弱さなんてわかるわけないじゃないッ!! 」

嵐千砂都「……かのんちゃんがいつも一人で密かに泣いているのを、ほんとは知っているんだから…… 」

渋谷かのん「……!!ちぃ、ちゃん……――――― 」


彼女の言う通りだった。渋谷かのんは組織内で"英雄"として賞賛され、市民からも多くの期待を寄せられていた。
誰もが彼女に救いを求めている。だが、当の本人は?いったい何に縋ればよい?誰が自分を救ってくれる?
積み重なる期待は彼女の背中に圧し掛かり、止まることも振り返ることも許されない。
もう、一人で抱え込んで歩き続けるしかないのだ。
そんな重圧の日々を、まだ若い少女にはあまりにも重苦であったのだ――――


嵐千砂都「…かのんちゃん、もう…一人で抱え込まなくていいんだよ?『私たち』がいる。気分が悪くなったら恋ちゃんが診てくれる。武器が不調なら可可ちゃんが直してくれる。戦いになったらすみれちゃんが敵を捌いてくれる。そして、私も…かのんちゃんをサポートできる。もうすぐ頼れる「後輩たち」も配属されるんだ。持ち前のチームワークを取り戻そうよ。5つの点が重なって星になるんだ。だから絶対に一つでも欠けちゃダメだから…ね…? 」

渋谷かのん「ちぃちゃん……(そんな彼女の言葉に感化されたのか、乾いた笑みと共に涙がこぼれかけた)……そう、だよね… ごめんね…みんなにも……いっぱい迷惑を掛けちゃった。……私、もっとみんなを頼りたい。みんなのことを、信じたい……! 」

唐可可「千砂都の言う通りデス!可可たちが協力し合えば、きっとどんな困難だって立ち向かえるデス! 」

平安名すみれ「さすがのかのんでも、千砂都には敵わないわね。でも私も同意ったら同意よ。ここから変わればいいのよ。 」

葉月恋「はい、そうですね…♪私たちは、5人で一つの"スーパースター"なんですから。(くすり、とほくそ笑む) 」

嵐千砂都「…ありがとね、かのんちゃん。私たちも、かのんちゃんのことを信じてる。いつでも、いつまでも…――― 」


この時私たちは信じてやまなかった。
きっとこの五人でならどんなことが起きたって、乗り越えられる。
あの夜空に輝く"星"のようにずっと輝きを失わずにいられるんだって。


嵐千砂都「  今度は私が、かのんちゃんを守るから   」


そう信じた、ハズだったのに―――――


― 半年前・アルガンドーラ ―


― ロ ク ス ベ ル ク ―




ここは、ウェスターとエフィリア…両国の国境にある峡谷。踏み込めば帰らぬ人と為ると警告される要因は、この地域一帯に立ち込める「濃霧」であった――――


アナウンス「エマージェンシーコール エマージェンシーコール。「ロクスベルク」にて機械生命体「ヒトガタ」を多数観測。『 反復《 オーバーラップ 》 』の発生は確認できていない。現象が発生する前に、第2、第3、第9調査兵団は速やかに現場へ直行し、敵機体を討伐せよ。繰り返す――― 」


― エリアA ―


劉狼「―――第3調査兵団、現場へ到着。これより任務を遂行する!(装着したインカムに触れながら発声する) ライオットアサギ!貴殿等にとっては今回で二度目となる任務だが…この濃霧だ、貴殿等では荷が重い。決してツーマンセルの体勢を崩すでないぞ! 」

ライオット「っ……この霧…なんでこんなに深ぇんだ…!?なんも見えねえじゃねえか…!(四方を左右に見渡すが、その最悪な視界には本当に何も映りはしない) 」

アサギ「相手も考えますねー…確かにここなら五大国に感知されずに国境を跨ぐことだって容易いはずっす。 ただ、相手が機人《ヒトガタ》ならウチらのレーダーで観測は可能っすけど…(スマホの画面に映し出されたフィールドを確認するが…)――――!?ちょっ、"これ"って…ッ…(画面に釘続けになったまま息を呑む) 」

ライオット「どうした、アサギ!?まさか…充電切れか!?だからソシャゲはほどほどにしとけって師匠にも怒られんだzぶげぇ(話の最中にアサギにずいっと頬を突かれる) 」

アサギ「レーダの反応が…なんかおかしいっすよ…!?敵反応が消失したり出現したりを繰り返して…(画面内では、赤いサークル=敵反応が点滅を繰り返すたびにその座標ポイントが無作為に移動を繰り返しているのが分かる) 」

劉狼「………よもや、これは…――――――― 」


― エリアB ―


ガレア「大智、いったい何が起きている…!?(その頃、別エリアにて――チームリーダーとして筆頭に立つ中、端末のレーダーの不調を訴えていた) 」

五十鈴大智「カタカタカタ……――――恐らく、ジャミングだね。それも、この峡谷一帯に張り巡らされている。(冷静にラップトップを手繰り謎の妨害電波の感知に成功する) 僕達レギュレイターが機人《ヒトガタ》の感知ができることを知って対策してきたのだろう。はっきり言って、これではレーダーは当てにならない。目視で敵を殲滅する他ない。 」

イペリ「だっっっっっっっっっっrrrrrる!(心底嫌悪感剥きだして喚く)うちの故郷の吹雪みてぇなこの状況で!?上段はその眼鏡だけにしてくれる!?(大智の肩をバシバシ叩く) 」

キコ「やぁねぇ…困ったわねぇ…これじゃあ何も見えないし…だ・か・ら――― ピ ト ッ ♪ (唐突にガレアへ抱き着く)ガレアちゃん、迷子にならないようにしないとね?お姉ちゃんから離れちゃダメよ…? 」

ノイン「目視での遂行、了解。(暗殺に秀でてきた彼女にとっては如何なる迷霧だろうとも獲物を捕らえ、逃がさない自身がある模様で、躊躇いもなく頷いてみせる) 」

ルクエス「―――― あんまり無茶だけはしないでくれヨ~、キミたちが暴れた後の処理って結構面倒なんだからサ~…(帽子の唾を摘まみながらチーム・ガレア一同のもとへ霧の中より現れる) 」

ガレア「……!団長(アンタ)が現場へ赴くなんて珍しいこともあるもんだ…いったいどういう風の吹き回しだ?(抱き着いてくるキコをうざったそうに振り払い、気まぐれな性格をした団長の青年へ半場睨みつけるように向き直る) 」

ルクエス「なぁに、機械生命体の殲滅はキミたちだけで勝手にやっていいヨ。ボクは「別件」でここに来ただけサ。(深くかぶられた帽子の内側、そこに輝く眼光はあらぬ方向を怪しく見据えていたのだった――――) 」


― エリアC ―


ガトウ「―――第2調査兵団も現場へ到着!任務を開始する!(鋼鉄鎧のような武具を纏い、ガチンッと拳をぶつけ合う) 渋谷!!団員たちを頼んだぞ!俺は先陣を切って敵を攪乱する!うおおおおおぉぉぉぉぉーーーーーッ!!!(そう言うと考えも無しに我先に濃霧の中へと特攻していくのだった) 」

渋谷かのん「ちょッ、団長!!?(否応なしに霧の中へ特攻していくガトウに仰天しながら手を伸ばすが、彼の姿をすぐに見失ってしまった)……はぁ……とほほ…今回"も"団長を止められなかった…ていうか、この霧の中でどうやって敵を見つけ出すんだろう…(日常茶飯事なのだろう、がっくりと肩を落として溜息を吐き出した) 」

嵐千砂都「 ポ ン ッ (そんなかのんの背中を優しく叩く)大丈夫、「私たち」がついてるよ…!かのんちゃん、指示をちょうだい!私たちは、かのんちゃんを信じるよ!(深い霧をも振り切るような明るい笑顔を向ける) 」

渋谷かのん「……!(千砂都の声、その笑顔に勇気づけられる)…ちぃちゃん……うんっ!第2調査兵団のみんな!絶対に陣形を崩さず、油断せず進もう!チーム・Liella!、集合!(丸みを帯びた背を正すと、彼女たちと円陣を組む) 」

渋谷かのん「 Song for me, song for you!!チーム・「Liella!」、いくよッ!!  」

嵐千砂都&唐可可&平安名すみれ&葉月恋「「「「 おおおおおッ!!!!! 」」」」 」

渋谷かのん「 突撃ッ!!!  」

第2調調査兵団『 うおおおおおぉぉぉぉぉおおおおッ!!!! (第2が誇る筋骨隆々な前衛部隊を筆頭に、その他の団員が陣形を崩すことなく真っすぐに霧の中へ突撃を開始していく)』

腹筋崩壊太郎「ヤーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!(マッスルボディを見せつけながら特攻していく) 」

渋谷かのん「よし、私たちも…―――― ッ ! (一歩目を踏み出したその時、微かに激しい頭痛が迸り、出鼻を挫かれる) 」

嵐千砂都「……!(一歩で遅れたかのんにいち早く気付いたのか、すぐに振り返る)かのんちゃん…っ?(「大丈夫?」と怪訝そうに寄り添う) 」

渋谷かのん「……ううん…大丈夫!行こう、ちぃちゃん!(こめかみを押さえつけながら、それでも無理矢理笑顔を取り繕って団員たちを追いかけるように駆け出しはじめた) 」

嵐千砂都「………(…かのんちゃん……ひょっとして…――――)(その丸い瞳が曇り出していく。だが、今は不安に駆られている場合ではないと、急いでかのんの後を追いかけるのだった) 」





機人《ヒトガタ》『ダッ、ダッ、ダッ、ダッ―――(峡谷と言う足場の悪いフィールド、それに加えて視界を遮る濃霧の中を、奴らは滞りなく侵攻を開始していた) 」

ガレア「―――ヌェアアァッ!!!(ブォンッ―――ズシャアアアァァアンッ!!!)(濃霧が漂う中、黒い刀身を持つ大太刀型ガジェット「深影《ディープ》」を豪快に振り回しながら機人《ヒトガタ》を相手に蹂躙していた) 」

キコ「ガレアちゃん!(パンパンッ―――!)(自身のガジェット「注射機銃《インジェクショット》」を二丁拳銃型に切り替えることでガレアの背後から忍びよろうとする機人のコアを撃ち抜き、彼をサポートする) 」

イペリ「ちィッ―――めんどくさッ!!!(パキパキパキィ――――ザキィィイインッ!!!)(チャクラム型ガジェット「雪崩《アバランチ》・Type-Ⅱ」をフラフープのように華麗に振り回すと同時に内部から冷気を放ち、周囲一帯を機人諸共凍結させ、身動きの取れなくなったその氷塊を丸ごと断裂していく) 」

ノイン「ザキィン――ザギィッン――――ギャキィンッ――ザギィィインッ!!(最悪な視界に翻弄される面々の一方で、この状況下で唯一まともに行動できるほどの動体視力や察知能力に長けた自身は鉤爪型ガジェット「猫掌《チャッシャー》」と持ち前の身のこなしを武器にした類稀な機動力で悉く敵陣を瞬殺していく) 」

五十鈴大智「…っ……せめて、ジャミングの発信源さえ特定できれば…!(安全地帯の岩裏に身を潜めて感知作業に取り組んでいたが、苦戦を強いられているように表情を歪ませていた) 」





ライオット「――――ッ!(ガッ、ギギャァンッ!!)(二対のナイフ型に変形させた閃光《グリント》を手繰り、アサギと背合わせになる態勢を維持したまま周囲を注視していた。その最中、四方八方より襲撃してくる機人に対し刃を振るって応戦するも、姿を現しては消しての繰り返しを行う奴らの動きに翻弄されていた)くそッ…!!視界が悪すぎて思うように動けねぇ!!アサギ、どうにかなんねえのか!? 」

アサギ「あたしにできることならやってますよお!(「ひーっ!」と叫びながら先輩と同様の抵抗を行っている) この霧ごとまとめて吹き飛ばせたらいいんですけどねぇ…!生憎この霧も何処から湧いてんのか定かじゃないし…現実的じゃないっすよね…うわわっ…!?(爆破《 スターマイン 》による銃撃を繰り出すも、濃霧が原因で狙いが定まらず何度も攻撃を外してしまう)博士は例の如く夜勤明けで今頃絶賛爆睡中だし…!助け船が欲しいっすよ~~~!>< 」

劉狼「――――――――(慌てふためく一同。四方八方より轟く機械の足跡。様々な雑音が交錯する中で、人狼の男はただ静かに瞑目し、濃霧の中で微動だにせず佇んでいた) 」

機人《ヒトガタ》『 シ ュ バ バ バ ァ ッ ! ! ! (格好の餌食ともいえる劉狼を標的に、一斉に飛びかかるように襲撃していく)』 」

ライオット「……?(師匠…?いったいなにやって――――)――――ッ゛!?(静寂に佇む劉狼を他所目にしていたが、そんな師に雪崩れ込むような敵の突撃に血相を変えると、身を投げ入るかのような決死の覚悟で阻止しにかかるが――――) 」

劉狼「 待テバ海路之日和有リ (そう小さく呟くと、人狼は瞼を開くことなく両拳を握りしめた。そして―――)―――― 破 ァ ! ! ! ( ズ ド オ オ ォ ォ オ ン ッ ! ! ! )(敵の凶刃が自身に届くその瞬間、足元の大地へ目掛けて拳を振り下ろす。その鉄槌は地盤を砕き、待機を震わせ、霧を吹き飛ばし、激しい衝撃が空間一帯へと瞬く間に広がっていく) 」

機人《ヒトガタ》『――――― ズ シ ャ ア ア ア ア ァ ァ ァ ァ ア ア ア ア ン ッ ! ! ! ! (重厚感のあるボディを持つ機械生命体が紙屑のように吹き飛ばされては一斉に岩壁へと叩きつけられてしまった) 」

ライオット「――――ッ!!?(獣の拳が繰り出す凄まじい衝撃に思わず足を止めてしまい、その迫力に圧倒されてしまった)……す、げぇ……!あんな状況で、眼を閉じたまままとめてぶっ飛ばすなんて…! 」

劉狼「……人は、目に視えるものだけを真実と捉える傾向にある。しかし、獣は違う。(瞳を閉ざしたままライオットたちと向き合う)…毛先で風向きを感じ、鼻先で獲物を捉え、爪先で大地を感受し、そして…―――微かにざわつく"感"で身の危険を察するものだ。 」

劉狼「今ので妨害電波の発信源を捉えた。これよりそれを叩いて、我らの反撃に回る!来い、ライオットアサギ!(渓谷を飛び移る狼の如き俊敏な疾走で濃霧を切り抜けていく) 」

アサギ「マジっすか!?あはは…やっぱ師匠には敵わないっすね~…(たまげたなあ、と感心するように慌てて追跡していく) 」

ライオット「……!へへっ、流石は師匠だぜ…!!(師の背中に憧憬の眼差しを輝かせ、置き去りにされないよう食らいつくように追いかけていく) 」





嵐千砂都「――――はっ!!(ドッガガガガガッ!!)(場面は変わり、他の団とは離れた箇所にて同様に交戦していた。持ち前の身体能力を発揮し、カポイエラの如き回転蹴りを機人に叩き込んでは駆逐していく) 」

唐可可「可可のガジェットは、そんじゃそこらのモノとは一味違うデスよー!クーーカーー!(パンダや太陽といった可愛らしい外観をした支援機型ガジェット「クーカー」を操り、機人の侵攻を遮っていた) 」

渋谷かのん「デバイス起動!( カ シ ャ ン ッ )(ヘッドセットマイク型のガジェット「オウル」を装着)  ♪  ♪  ♪  ~  (デバイスを介し、自身の美しい歌声が文字通りの武器となって変換される自身のガジェット。歌声は広範囲に渡る絶大的な衝撃波となって轟き、迫りくる機人の大群を真っ向から蹴散らしていくのだった) 」

葉月恋「回復支援の準備はできております!みなさん、無理はなさらずに…! 」

平安名すみれ「はぁぁぁぁあ!!!!(グソクムシのガジェットで敵を薙ぎ払っていく)私の力を舐めるなったら舐めるな! 」





劉狼「(岩壁から岩壁へと蹴り移りながら移動する最中――――)――――見つけた、「アレ」ぞ!!(幾つもの石柱に挟まれるかのように設置されたジャミング電波発信装置を俯瞰した態勢から発見する) 」

機人《ヒトガタ》『――――!!(その装置の防衛を担う数機体が第3調査兵団の登場に警戒する)』 」

ライオットアサギ『 邪魔すんじゃ――― / ―――ないっすよー!! (同時にガジェットを振るって機人を薙ぎ払いながら着地する)』 」

劉狼「―――― セ イ ッ ! ! ( バ ギ ャ ア ア ァ ン … ッ … ! ! )(その間隙を縫って装置を踵落としにて破壊した)……全レギュレイター部隊へ通達!ジャミングの発信源を叩いた!これで機械生命体反応が正常に作動するはずだ!確認を!(インカムで通達する) 」

五十鈴大智「この通信は…第3の副団長…!まさか…!(通達を受けてラップトップを操作。レーダーが正常に作動していることを確認し目を丸くした)……ジャミングによる妨害が消失…!これで機械生命体反応が正常に機能する…!ガレア!! 」

ガレア「……(第3……「あの野郎」がいる部隊か…――――)――――― チ ィ ッ !いつもいつも、俺の神経を逆なでさせるムカつく野郎だァ!!( バ ギ ャ ア ァ ン ッ ! ! )(不快感をあらわに剥きだすや否やその怒りの矛先を眼前の機人にぶつけていく) 」

ガトウ「劉狼かッ…!でかしたァ!!(よっしゃあ!と声を気張らせて剛腕を振り抜き、敵の大群を一網打尽にしていく) 」

???「…電波発生装置がやられたか(遠くから状況を見ていて)……さて、行くか 」

ルクエス「ヘェ…やるじゃないカ、オオカミ君。この難攻不落のロクスベルクを攻略したカ… これは大した功績になりそうだネ。さて、それはそれとしテ…――――(戦場から離れた地にて一人通達を耳にしながら薄ら笑みを浮かべていたが、そのまま歩を進めて濃霧の中へと消えていく) 」

渋谷かのん「……!本当だ…!レーダーが正常に作動している…これなら…!みんな、あともう一息だよ!頑張ろう!………(団員たちを鼓舞する一方で、ふと自身のガジェットに違和感を覚えたのか、装着していたそれを取り外して視線を落とす)……………(気のせいだろう、そうであってほしい、と心の中で訴えると再びガジェットを頭部へ装着し、戦いへ復帰する) 」


かくして、第3調査兵団の活躍により、
序盤は翻弄されていたレギュレイターそれ以降機械生命体の撃退を滞りなく遂行し、そして―――――


劉狼「これで――――― 最後だッ!!(狙い定めた最後の一機へ砲弾の如き勢いで肉薄すると、拳を突き出したまま寸での所で急停止する)  」

劉狼「――――― “ 狼 貪 虎 視 ” ――――― 」

機人《ヒトガタ》「 バ キ ャ ア ア ア ァ ァ ア ア ア ン ッ ! ! ! (直撃を免れたはずの劉狼の拳。だが、その先端より放たれた鋼を穿つ衝撃の余波により跡形もなく粉砕され、濃霧の中へ残骸となって溶けていくのだった―――) 」

五十鈴大智「……機械生命体反応、すべて消失…!僕たちの…勝利だ…!(眼鏡をくいっと上げる) 」

嵐千砂都「やった……やったんだ、私たち…! 」

アサギ「んええぇぇ~……一時はどうなるかと思ったっすけど、なんとかなったぁ~~~……(依然として霧が立ち込める中でへちゃりと脱力する) 」

ライオット「……(今回の師匠…いつも以上にかっこよすぎたな… )……目に視えるものだけが真実ではない、か……(その教えを静かに反復し、肝に明示するように自らの胸部に拳を添えた) 」

平安名すみれ「ふん、私のおかげったらおかげね! 」

ガレア「……チッ、如何せんいけ好かねえ結果だ。戻るぞ!(不機嫌を露わに踵を返して同僚らと共に歩きながら撤退していく) 」

葉月恋「みなさん、本当にお疲れさまでした。幸い誰一人負傷者がいなくてほっとしました……あっ!そういえば…ガトウ団長、今頃この霧の中で一人迷子になっておられるのでは……?!(あわわっと口元を開く) 」

嵐千砂都「あー…大丈夫なんじゃないかな、あの人は。ガトウ団長だから。(はははと苦笑ながら恋を宥める)ほらっ、私たちは私たちで撤退しよう?もう霧の中はこりごりだよ…(うげぇとわざとらしく舌を出す) 」

唐可可「そうデス!今日は帰って盛大に宴でもやるデスよー!………すみれのポケットマネーで(ボソッ)(いやらしい眼差しをすみれに突きつけながら歩き始める) 」

平安名すみれ「なんでそうなるのよ! 」

渋谷かのん「あ、ははは……まあ、それも…そっか…(ガトウ団長を置いていくことについて苦笑する)……うん、帰ろう。事務所へ戻って、みんなでぱーっと楽しいことを…――――(勝利の余韻を噛み締めながら歩いていくチーム・Liella!の四人を追いかける。その時だった。一瞬、視界がぐにゃりと歪む。その異変に気付くこともなく、さもはじめからあるものとして受け入れているかのように、歪んだままの視界を頼りに歩を進める。四人の影が、原形を留めなくなっていく。それは霧のように掠れていく感覚と同じであった) 」

渋谷かのん「……―――――――(そう、だ……私は……ずっと、守りたかったんだ…。この日常を…私たち、5人で過ごす日々を……だか、ら……)(視界が暗くなっていく。足取りが重くなっていく。背中が丸まっていく。呼吸が次第に浅くなっていく。声が、掠れ始めていく―――――) 」


――――― ボ ッ ガ ア ア ア ァ ァ ァ ァ ァ ア ア ア ン ッ ! ! ! (戦いは鎮まり、静寂に包まれたはずの峡谷に突如轟いた爆音。それは彼女たちの上空から鳴り響いた。空が暗くなっていくような感覚が押し寄せる。その正体は――――)


ゴ  オ  ォ  ッ  ―――――――  !  (高くそびえ立つ岩山の山頂から転がり落ちた巨大な岩石。その大きな影が、一人の少女に向かって落下していくのだった―――――――)


渋谷かのん「 ぇ ―――――――――― ?


メ    シ    ャ゛    ア゛    ア゛    ァ゛    ン゛    ッ゛    !   !   !   !  


嵐千砂都「 ぇ ―――――――――  」




四人の少女が振り返ると、そこには巨大な岩石が地面にめり込んでいた。
彼女たちの背後には「誰か」がいたはずだった。
ずっと、自分たちの背中を守り続けていた、「誰か」が――――


???「………(仕留め損ねたが、どうやら………天は味方したようだ)(状況を裏から見て) 」

???→ペニー「(派手に動いてくれたから…どうやら、俺様が動くまでもなかったようだな) 」


その「誰か」の存在に気づいた瞬間、少女たちは血の気が引いたように表情を強張らせ、
急いで「誰か」の名前を叫びながら来た道へ振り返り必死に駆け出していく。
めり込んだ岩石の影に、漂う濃霧の間隙に、
微かに小さな「手」が顔を出していた。その方角へ進むと、そこには―――――


渋谷かのん「――――――――(全身の4分の3が岩石に押し潰された少女の、見るも無残な姿が転がっていたのだった) 」

嵐千砂都「……………かのん……ちゃん…………? 」

嵐千砂都「―――――― か の ん ち ゃ ん ッ゛ ! ! ! ! !(凍り付いた感覚を自ら砕かん勢いで彼女へと迫った) 」

渋谷かのん「…ハァ………ハーァ………あ、は、はは………ハァ… ごめん、みんな………"こんなん"に、なっちゃった………(痛覚が完全に機能せず、もはや痛みすら感じないのだろう。こんな最悪な状況下で、少女はせせら笑っていた) 」

唐可可「……かのん……かのん…ッ……?!ど、どうし、て……??なんで…ッ……なんでデスか…ッ!!?(彼女の傍へ近寄るや否や怒りとも悲しみとも取れる悲痛な叫びをあげる) 」

渋谷かのん「ハァ……ハァ……ちが、うんだ……こんなはずじゃ、なかったんだよ……ほんと、は…―――― 」


~2分前の回想~


ゴ  オ  ォ  ッ  ―――――――  !  (高くそびえ立つ岩山の山頂から転がり落ちた巨大な岩石。その大きな影が、一人の少女に向かって落下していく――――)


渋谷かのん「 ぇ ――――――(ま、不味い…ッ…!)(いち早く察して頭上を仰ぎ、迫りくる岩石を対処しようと咄嗟にガジェットを起動する。歌声を衝撃波に変換して岩石を粉砕し自身を守る―――――) 」


―――――――ことはできなかった。そう、彼女のガジェットは起動しなかったのだ。長い間メンテナンスを行っていなかったツケがここに来て、先の交戦でついに寿命を迎えていたのだった。


渋谷かのん「 (そんn――――――――――)  」


メ    シ    ャ゛    ア゛    ア゛    ァ゛    ン゛    ッ゛    !   !   !   !  


唐可可「―――――……!ひょっとして…可可の…せいデスか……??可可が、かのんのガジェットのメンテナンスを視てあげなかったから……?(声を震わせる) 」

渋谷かのん「…っ……ちが、う…の……可可ちゃん…の、せいじゃな、い………… 」

葉月恋「か、かのん、さん……ッ…ごめんなさい……!本当は、今回の任務、貴女を引き留めるべきでした…!先の一件で、かのんさんに蓄積された疲労は"まだ完治しているはずがなかった"んです……!だけど……――― 」

(回想)渋谷かのん「大丈夫だよ、恋ちゃん!もうすっかり元気だから…!さっ、行こう!今回はとても重大な任務だから…! 」

葉月恋「――――……メディックとして、貴女にドクターストップをかけるべきでした…なのに……なのに、私は…ぁ……っ……(溢れそうになる涙が、ついに抑えきれなくなる) 」

平安名すみれ「あ、あたしが…あたしが、もっと敵を効率よく倒して…あんたの負担を軽減させてれば…! 」

渋谷かのん「ハー…ぁ……ハァ…待って……ちが…恋ちゃん… そんなこと、は……ぁ…… 」

渋谷かのん「ぁ……あ……ちが…ちがう……すみれちゃん、そんな……そうじゃ、ないんだ、よ……これ、は…… 」

嵐千砂都「………―――――――(全部、私のせいだ…… あの時…私が、かのんちゃんの異変にもっと早く気付いていれば… いや…ほんとは気づいていたはずなのに、かのんちゃんのあの自信満々な表情(かお)を見て杞憂と感じたから……?じゃあ、尚のこと……) 」

嵐千砂都「――――――――― "私が、悪いんだ"……ッ……

渋谷かのん「――――――!(もう、聞きたくなかった。大切な仲間たちが、自分自身が招いた不幸に対する懺悔の声を聴くのは。痛みよりも耐え難い苦痛でしかなかった。どこで間違えてしまったのだろう?どうしてこんなことになってしまったのだろう?自分自身、掠れていく意識の中で辛うじて脳裏を巡らせてみるが、結局その答えは見つからない。) 」

嵐千砂都「……待ってて、かのんちゃん…ッ… 今、助ける、から…ッ……!(彼女を押し潰している岩石を退かそうと両手を突いて転がそうとする。当然、非力な少女では1mmも動くはずはない) 」

唐可可&平安名すみれ『すみれッ!!はやくやるですッ!! / 言われなくてもやるったらやるわよッ!!(二人同時に血相を変えて、千砂都に続く様に岩石に手を伸ばす)』

葉月恋「かのんさん…ッ!気を確かに…っ!まだ…まだ、助かるはずです……!!(声を震わせながら緊急キットを開いて応急処置を行い始めるが、あまりにも動揺しているためか、その手先が定まらず、がくがくと痙攣が止まらない) 」

渋谷かのん「………みんな……ありがとう。でも…もう、"いい"の……

嵐千砂都「……!?"いい"って……そんなの、いいわけないでしょッ!!?私は…絶対、諦めない…ッ!私が犯した罪は、自分で償うんだ…!かのんちゃんを…守るって…今度こそ…私が…ッ……!(まんまるな瞳が涙で歪みを帯びていく) 」

相馬和樹「―――――――(霧ではばまれる距離の中にたたずみ、リエラの成り行きを見ていた)……フッ(ほくそ笑むように口角をゆがめて足音も気配も殺して奥へと去っていく) 」

渋谷かのん「  ギ ュ ッ  (唯一動くことを許された片手を伸ばし、千砂都の足を優しく掴んだ。「もう、いいんだ」と宥めるように…)……私、もう十分に、ちぃちゃんやみんなに、守られてきた、よ……ハァ、ハァ……私は、こんなにも、みんなに信頼されていたんだ、って……だから…だから……そんな顔、しないでほしい。「私のせいだ」って、言ってほしくないんだ…。 」

渋谷かのん「ごめんね、みんな。私、先に「お星さま」になってくるね。みんなで夢描いてた、あの一番星(スーパースター)のように。 」

渋谷かのん「………――――――  ♪ ~ (人は最期を迎えるその時、何を残すのだろう。何を思い馳せるのだろう。自分なら…と、彼女は潰れた喉を震わせて、「歌」を紡いだ。曲名は、いつかみんなと一緒に作ったもの。それは彼女にとって感謝であり、歓喜であり、お別れの言葉でもあった) 」

嵐千砂都「…ぁ………ぁぁ…っ……―――― 」


彼女が最期に紡いだ歌声は、少女たちの慟哭と共に空へと登り、消えていく――――



『 ロクスベルク事件 』

難攻不落と思われたこの事件を解決に導いた英雄が賞賛され、その一方で、一人の団員が尊い犠牲となった




~半年前 第2兵団 事務所~


ヒロ「……すまないね、俺はここの人ではないけど…どうやら、皆さんお留守みたいだ(事務所内にて、訪れた4人の客人を招き入れる) 」

桜小路きな子「…はぇ~、ここが先輩達の事務所っすか~…(事務所に足を踏み入れ、目をキラキラさせながらあたりを見渡す) 」

鬼塚夏美「…私たちが見学に来るって話は通ってたんじゃないですの?(ジト目で続き) 」

米女メイ「電話で言ってただろ、第2兵団全員に出動命令が来たって。…しかしわざわざよく開けてくれたな。他兵団だってのに… 」

若菜四季「きっと千砂都先輩にいいとこ見せようとしてる。アピールタイム。(若干怪しい表情で) 」

ヒロ「…ちぃty・・・・千砂都ちゃんから頼まれたんだよ、後輩達が来るから代わりに対応してくれってさ(まいったなと言わんばかりの表情で)まぁ…ゆっくりしていってくれ。ってよその奴がいうのも変だな… 」

ヒロ「(ほんとはちぃちゃんのとこ訪ねたら出撃命令出されてて留守番頼まれたんだが…まぁ、変わらないか) 」

鬼塚夏美「…それにしても、あなたがこんなところにいるってことは…全部隊が対応するわけではないですの? 」

ヒロ「…俺のとこは出てなかったな。全兵団出るまでもなかった…ってことか。俺もこっそり行ってもよかったんだが命令が出てなかったもんでな… 」

桜小路きな子「…軍人さん故っすかねぇ…千砂都先輩、心配じゃないっすか? 」

ヒロ「ぐっ(なぜにちぃちゃんの事をピンポイントに…)(ぐぬぬ)…彼女なら…彼女”たち”なら大丈夫だ。5人揃った時の力…君たちはよく知っているはずだ。(強い瞳で4人を見つめる) 」

桜小路きな子「…!(彼女たちが追いかける”先輩”の背を思い浮かべながらヒロの言葉に強く頷く) 」

米女メイ「そのために…あたしたちはその背中を追いかけてきたんだ! 」

若菜四季「…その背中を支えられる存在として、私達は…レギュレイターとなる。 」

鬼塚夏美「この私達が加われば…その5人はさらに無敵になりますの!(Vサインを見せる) 」

ヒロ「……(4人の熱意を受け取ったかのように目を閉じる)その意気だ、その気持ちを忘れずに頑張ってくれ……さて、ゆっくりと彼女たちの帰りを待つとしよう。(茶菓子を用意しながら) 」


この時彼らは…思いもしなかった。
彼女たちが挑んだ戦いが後に”ロクスベルク事件”と呼ばれ、強固であるはずの5人の力が砕ける幕開けであると…























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最終更新:2025年06月02日 00:11
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