その少年は、その時を迎えるまではごく普通のありふれた子どもでしかなかった。
流行りの漫画を読み、流行りのアイドルを好み、流行りのゲームを遊ぶ。
友人は多いが、クラスの中心的な立場ではない。
当時から既に成績だけなら他の追随を許さなかったが、彼はそれを誇りには思っていなかった。
将来の夢はない。強いて言うなら公務員にでもなって、安定した暮らしをしたいという程度のものだった。
強いて言うなら、性癖だけは異常であったかもしれない。
自分より年下――それも小学校低学年から未就学児などに対してしか、恋愛感情と性欲を向けることができない。
そういう素質は当時からあった。だが当時の彼は思春期の真っ只中である十三歳だ。
第二次性徴を迎えて程ない多感な時期の少年が、"そういう"性癖に傾倒すること自体はそう珍しいこととも呼べないだろう。
この世には様々な形の"性愛"が存在する。彼にとってはたまたまその対象が幼い娘であったというだけ。
その証拠に、彼が人生のレールを大きく間違えた運命の日に至るまで、縁は欲情こそすれども実際に日本の刑法において犯罪と看做される行為に手を染めたことはなかった。
その日は、えらく暑い夏の日であった。
茹だるような熱気で、アスファルトからも陽炎が立ち昇るような猛暑日だった。
帰り道。少年は、前方を歩く赤いランドセルを背負った少女を見つけた。
少年の性的嗜好はいわゆる小児性愛(ペドフィリア)に分類されるものであったが、これまでその嗜好を行動に移したことはない。
この日もそうだった。彼を突き動かしたのは、性欲とは完全に別種の衝動だったのだ。
――――――――ふと、欲しくなった。
遊びの約束でもしているのか、鼻歌交じりに弾む足取りで家路につく少女のことが、どうしても欲しくなった。
思えばそれは、"魔が差した"というやつだったのかもしれない。
非行とは無縁の優等生が、つい出来心で会計を済ませていない文房具を懐に押し込んでしまうような。そんな衝動に、よく似ていた。
ただひとつ違うのは、彼には今この瞬間が自分という生物にとっての岐路であるという自覚があったことだ。
此処でこの黒い衝動に抗って踵を返せば、自分はこの先二度とこんな感情を芽生えさせることはないだろうと確信していた。
だが逆に、それをしてしまえば今此処にいる自分は満たされることなく少しずつ薄れ、消えていくのだとも感じていた。
白と黒、過去と未来の交差点。そういう場所に立っているのだと知り、少年は一瞬だけ足を止めた。
しかしそれだけだった。
次の瞬間、彼は進む方を選んでいた。
その後少年が、少女に何をしたのかは語るに及ばないだろう。
彼の決断の六時間後にドブ川で発見された哀れな少女の死を皮切りに、日本は連日の少女殺しに震撼することとなっていく。
鳴り響くサイレンの音、臨時休校を報せる学校からの連絡網、マスコミがこぞって繰り広げるセンセーショナルな報道――
自分という殺人鬼を探し出すべく日本中が躍起になっているのを目の当たりにしても、彼の胸に恐怖はついぞなかった。
あったのは悦びだけだ。誰より自由であること、自分の行動によって他者の心と体、更にその存在までもを支配すること。
これまで味わったどの快楽よりも凄まじい陶酔感に、悪魔となった少年は歓喜し、自分の選んだ道が間違っていなかったのを確信した。
自分は自由で、支配する側の存在なのだという実感を得るための連続殺人。
六人の命を奪った咎を他人に押し付け、無実の誰かが自分の代わりに永遠の不自由に囚われた時には心が躍った。
極上の成功体験を得て、自分の〈起源〉を自覚した少年はもはや止まらない。
ただ奪うのではなく、ただ殺すのではなく、すべてを奪い支配することに彼は病的なほど固執した。
その上で――決して証拠を残さず、探らせず、自分という存在が蠢いていることを悟らせない。
この世で最も自由に欲望の果実を貪りながら、一方でそれを誤魔化すための工作と手管は完璧なまでに徹底する。
大胆と慎重を共に最高の領域で併せ持ち、後に〈支配の蛇(ナ―ハーシュ)〉を名乗る肉食の蛇は肥え太っていった。
気付けば、肉体も人間のそれではなくなっていたが。
文字通りの"人で無し"になったことさえ、男にとっては悦びだった。
文明という藪の奥底へ常に潜み、永久に恐怖と不幸ですべての人類を支配する蛇の怪物。
それは彼にとって、まさしく理想のカタチそのものだったから。
そうしてこの国は、今も密かに支配されている。
誰も気付かぬまま。誰も気付けぬまま。気付いていられぬまま。
――今も。彼の食い物にされ続けているのだ。
◇◇
スマートフォンが着信を告げた。
ディスプレイには、見慣れた名前が躍っている。
安心できる名前だった。ほっと、なんだか胸を撫で下ろしてしまう。
レミュリンにはなんでも相談できる家族という存在がいない。
仮にいたとしても"本当のこと"なんて話せるわけもないのだけど、心の拠り所にはなってくれただろう。
けれどもう一度言うが、レミュリンにはそれがいない。もうずっと昔に、ある日突然すべて失ってしまった。
今は頼れる父親のような相棒が居てくれるが、それでもやはり、自分の人となりをよく知っていて、自分も相手のことをよく知っている――無条件で心を委ねられる。そういう存在というのは、多いに越したことはなかった。
「あ……もしもし、ダヴィドフ神父。こんにちは」
『こんにちは。ご機嫌いかがかな、レミー』
アンドレイ・ダヴィドフ神父。
都内某区、白鷺教会に身を置く本職の聖職者だ。
彼は、この再現された"東京都"での聖杯戦争にレミュリンが参加するに当たって、正しくはそのロールを成立させる上で、この世界により用意された知人である。
異国から留学生として東京へやってきた身寄りのないレミュリンの後見人。
言ってしまえばそれだけの魂の通わない"誰か"……冷たい言い方をすれば聖杯戦争を矛盾なく成立させる上での舞台装置でしかないのだったが、レミュリンはこの人のことが好きだった。
教会に通う習慣はなかったが、神父というものと語らうことがこれほど心を落ち着かせるものだとレミュリンは知らなかった。
ダヴィドフはいつだって優しく、親身になってレミュリンの話を聞いてくれる。
つまらない世間話であっても朗らかに微笑んで相槌を打ち、彼もお返しとばかりに面白い話を振って自分を元気づけてくれる。
実のところ、レミュリンは此処までの一ヶ月で既に何度も彼に励まされ、勇気を与えられてきた。
「あはは……。元気ですよ。最近ちょっとだけ寝不足だけど、悩みって言ったらそのくらいで」
そういえば、父はこんな人だったと記憶している。
決して厳格ではないが、人としてとてもあたたかな人だった。
今にして思えば彼も自分には言えないものをいくつも抱えていたのだろうが、その辛さや苦労を表に出さない人だった。
だから、なのかもしれない。この神父と語らう時には決まって、いつもより少しだけ素直になれるのは。
『君が困ったように笑う時は、決まって何か悩んでいる時じゃないか』
「そんなことないですよー……ところで神父さん、何かご用ですか?」
『ああ。実はだね、ちょっとわけがあって連絡先が変わってしまうから――その旨を伝えたかったんだ。
教会が例の〈蝗害〉に巻き込まれそうでね。やむなく別の区に移り住むことになったから、君には一応伝えておこうと思って』
流石は聖職者だと思う。
まさに、レミュリンは今悩んでいる真っ最中だったからだ。
〈脱出王〉との遭遇。彼女が伝えた、レミュリンという少女がずっと求めていた真実。
それはさながら、物語のページを読み飛ばしたみたいな唐突だった。
青天の霹靂。過程も然るべき経緯も、すべてがさらりと消し飛ばされて。
まるでスカーフの中からコインを取り出す手品のように、それはレミュリンに告げられた。
――君の御両親とお姉さんを焼き殺した犯人は、この聖杯戦争に、マスターとして参加している。
――
赤坂亜切。
――対魔術師専門の暗殺者。
――その目で見るだけで人を焼く、発火能力者(パイロキネシスト)。
――ロンドンの魔術の名門スタール家の唯一の生き残りである君には、彼に報復する権利がある。
〈脱出王〉はやはり、奇術師として超一流だった。
彼女がレミュリンにかけた言葉はまさに奇術(マジック)。
その運命を無理やりにでも加速させる、お節介な親切だったのだから。
レミュリン・ウェルブレイシス・スタールはもう、彼女と出会う前には戻れない。
どうやったってそれは不可能だ。何故なら、レミュリンはもう知ってしまったから。
自分の探していた答え。探すべき、あるいは挑むべき運命。
親を殺した仇の名と得体を知らされて尚、何も変わらずにいられる子どもなど居やしない。
「……蝗害、ですか。あの」
『恐ろしい限りだよ。今、この東京は恐怖と不安で満ちている。
ぼくの愛した国とその民が、夜も眠れないといつだって羽音に怯えているんだ……
ぼくはこの仕事を常々誇りに思っているが、今ほど十字架を切るたびに無力感を覚えたことはない』
「そ――そんなこと言わないでください、神父さま。
ダヴィドフ神父の祈りはきっと、怯えている人達の心を照らしていると思いますよ」
『はは……そう言ってもらえると少しは気も楽になるよ。やっぱり君は優しい子だ、レミー。ご両親の教育がさぞや良かったのだろう』
こうして後見人の神父と談笑している時でさえ、レミュリンの脳裏には顔も知らない魔術師の名前がぐるぐる踊り続けている。
アギリ・アカサカ。赤坂亜切。炎を操る魔術師というその特性は、レミュリンの家族を襲った悲劇とあまりに合致していた。
それに何より、あの〈脱出王〉はつまらない嘘で人を誑かすような人間ではないと、あのわずかな時間で既に少女はどこか悟っていたのだ。
仇は割れた。
運命は加速した。
では、自分は。
何をどうして、どこを目指せばいいのだろう。
あの〈
三つの選択肢〉の、どれを選べばいいのだろう。
『ところで、レミー』
「え? あ……はい。なんでしょう、神父さま」
『やっぱり、君は今とても悩んでいるようだ』
「っ」
気を抜くとついつい上の空になってしまう。
そこで不意に話を切り替えられて、ついしどろもどろになってしまった。
そんな有様では、一度ごまかした話を蒸し返されてしまっても仕方はないだろう。
ましてや相手は現職の神父なのだ。祈り、懺悔を日々山ほど聞いて慰めるのが仕事のお人なのだ。
『言いたくないことならそれで構わないが……よかったら、ぼくに聞かせてくれないか。
ぼくが解決できることなら力を貸すし、そうでなくても話し相手くらいにはなれると思うんだ』
「神父さま……」
きゅ、とスマートフォンを握る手に力が籠もった。
その言葉は、今のレミュリンがいちばん求めていたものだった。
〈脱出王〉が去って、時間が経つにつれてどんどん心のなかで膨らんでいく惑いの風船。
もう少女のちいさな心はいっぱいいっぱいだ。誰かに聞いてほしい、そんな弱さが生まれてしまうことを誰が責められようか。
ただ、大恩ある神父を"こちら"の世界に引き込むのは気が咎める。
だから本当のことを、ありのまま伝えることはどうしてもできない。
仮に伝えたとしても、この"神父さま"なら親身になって協力してくれるのだろうが――
それをした結果彼の身に何か起こったなら、その時自分はきっととても後悔する。
少しの逡巡と躊躇い。その末に、レミュリンは震える口をゆっくりと開いた。
「……どうすればいいか、わからなくなってしまって」
『続けなさい』
「ずっと探していたものが見つかったんです。ずっと知りたかったことが、予想もしない形で判ったんです。
でも、あまりに突然のことだったから……わたし、自分がそれを知ってどうしたいのかも決められてなくて。心が、ぐるぐるして……それで……」
『……ふむ』
時間さえあれば、いつかは自分の心というものが分かったかもしれない。
目指すべき道、取るべき選択。過去に向き合う顔というものを、決められたかもしれない。
でも、レミュリンの運命は彼女に選択の猶予を許してくれなかった。
ジェットコースターのようにやってきた"その時"に、レミュリンの心はちっとも間に合わなかった。
復讐がしたいのか。許すのか。それとも、ただ真実が知れればそれでよかったのか。
答えは得た。でも納得ができない。あの日の解への、向き合い方がわからない。
そんなレミュリンの告白に、神父は少し押し黙って。
『多くは聞かないことにする。想像だが、それは君にとってとても大切なことなのだろう。
善いことか悪いことかは別として、君の人生にとても大きく関わることなのだろう。現に君は、それをぼかしてぼくに伝えている』
「っ……ごめん、なさい」
『謝らなくていいさ。人間誰しも秘密にしたいことや、人に知られたくないことというのはあるものだ。
ぼくにだってあるとも。若い頃はずいぶん火遊びをしたものでね、教会に通うご婦人が聞いたら頬をぶたれてもおかしくはない』
だからぼくは、君に"何があった"とは聞かない。
神父は言う。
その声は、レミュリンのねじくれた心を少しずつ落ち着かせてくれる優しさに溢れていた。
『ただ、神に仕える者として……人生の先輩として、君に言えることはないわけじゃない』
「……、……」
『君がほんの少しでも、その"真実"に思うところがあるのなら、背を向けるべきではないだろう』
思うところがあるのかなんて、自問するまでもない。
率直に言って、大ありだった。
レミュリンは今も、あの日の喪失に囚われている。
どんなに楽しいことをしていても、美味しいものを食べていても、ふとした拍子に亡くした家族のことを思い出してしまう。
レミュリンの家族の件は、彼女以外にとってはもうとっくの昔に終わったことだ。
魔術協会の処理はつつがなく済み、社会的にも不運な事故として処理された。
そしてきっと、殺した側もそうなのだろうとレミュリンは思っている。
終わった話、済んだ話。時の砂漠に紛れて埋もれた、いつかの話。
世界で今もそれを引きずっているのは、レミュリンだけ。
自分だけがまだ、あの日の痛みに足を引かれ続けている――。
『自分の心を押し殺して背を向けて、そうして家に帰って、君はぐっすり眠れるかい?
いいかい、レミー。生きる上で大切なのは、自分の気持ちと折り合いを付けることだ。
逆に言えばどうしても折り合いが付けられないなら、それをなあなあにしておくべきではない。
過去に呪われたままでは、人間はいつまで経っても前へは進めないんだよ。進んだつもりで、堂々巡りを繰り返すだけだ』
神父の話を聞いて、レミュリンは考える。
自分は、折り合いを付けられるだろうか。
あの過去に。そして、アギリ・アカサカに。
結論は、すぐに出た。
――無理だ。わたしはどうやっても、家族(みんな)の顔を忘れられない。
「……ダヴィドフ神父」
『なんだい』
「わたし、知りたいです」
何故、あんなことになったのか。
あの日、本当は何があったのか。
知りたい。知らないままでは、何にも納得できないままだ。
加速した運命が自分に与えた答えと、さらなる疑問。
心のなかに閉じ込めてきた、時が忘れさせてきた、激情にも似た感情が古傷の開くみたいに滲み出してくるのがわかった。
そんなレミュリンに、神父は言った。
『ならば、君は知るべきだ』
レミュリンは、唇を噛む。
神父の言葉を、今は一言一句聞き逃したくなかった。
教誨を求めて教会の門を叩く人はきっとこんな気持ちなのだろうと思った。
『進みなさい、レミュリン・ウェルブレイシス・スタール。
君の進む道の名をわたしは知らないが、きっとその先に君の望む答えがあると思う』
――答えは得た。そして、答えは出た。
わたしは、知りたい。
あの日のことを。あの日を産んだ"仇"のことを。
知らなければきっと、わたしはいつまで経っても前に進めない。
復讐したいからとかじゃない。ただ純粋に、知りたいのだ。
わたしから家族を奪った人の口から、その答えを聞きたいのだ。
ダヴィドフに礼を言って、レミュリンは通話を切った。
傍らのランサーが「どうした?」と問いかけてくる。
レミュリンは少しの緊張と共に、彼へと向き直り。
そして、さっきまでとは見違えた真剣な顔で、言った。
「ランサー。わたし――アギリ・アカサカに会いたい」
そうしないと、この"
熱の日々"はきっと終わらない。
少女は進む。答えを求めて。
背中を押してくれた恩人の言葉を胸に、レミュリンの聖杯戦争はこの時ようやく、本当の意味で始まりを迎えたのかもしれなかった。
◇◇
長く悪事を働き続けるのは、誰にでもできることじゃない。
夜な夜な布団の中でがたがた震えながら、追跡の手が来ないようにと祈っているような人間では少なくとも不可能だ。
長く楽しむためには工夫が要るし、頭脳が要る。そして何より、経験が要る。
もっとも必要ないのは運だ。悪さを正しく重ねていれば、必然的にそこに運の介入する余地など生まれない。
例えば、これは初歩中の初歩だが――
関わりを持つことになった人間の情報は、どんな手を使ってでも掘れる限りで掘り尽くす。
興信所に頼ったりなどしない。自分の手と足、そして顔で集めていくのだ。
そうして知った"真実"を馬鹿正直に伝えるのは、言うまでもなく意味のないことだ。
ただし自分の記憶の中で塩漬けにするのも、これまたやっぱり意味がない。
人間は誰しも、自分を理解してくれる他者というものに飢えているものだ。
したがって誰かに思い通りになってほしい時、この手を使わない理由はない。
あくまで自分は、あなたのことなど何も知らないよ、と装う。
その上で絶妙な塩梅で、相手の人生経験における肝の部分を使うのだ。
的を射すぎてはいけない。言葉と薀蓄で巧みに舗装して、甘い言葉で口説くように語りかける。
すると、面白いほどに効果が出る。まるで天啓を得たみたいに、自分の進んでほしい方向に歩み出す。
もちろん、念入りに信頼関係を構築してきた相手なら尚のこと、効果は覿面に発揮される。
自らの手を汚すのは、どうしても自分でなくてはいけない時だけに留める。
例えば、子どもを喰らう時などがまさにそうだ。そこには打算ではなく欲望があるから。
他人に任せられる仕事は、すべてそうすればいい。尻尾を出さなければ、そこに狡猾な蛇は存在しないも同じだ。
彼はずっとこうして世の中をコントロールしながら、証拠のひとつも残すことなく殺し、喰らい、弄んできた。
場合によっては偽りのゴールを用意して、違和感を抱いた側の人間に満足感と成功体験を与えて慰めてやる。
万物を支配するフィクサーが本気になれば、自分自身でさえ"利用された"ことに気付かぬまま手を血に染めた卑劣な悲劇の殺人者を用立てるのさえ造作もないことである。
百年後にまで語り継がれるだろう悲惨な事件事故の影にさえ、時に彼の存在がある。蛇はどこにでもいて、どこにもいないのだ。
レミュリン・ウェルブレイシス・スタールは彼にとって殺すべき敵であり、同時にいつか喰べたい候補のひとりだった。
だが問題がひとつ。彼女の連れている英霊は恐らく、どこかの神話体系における最高位に近い存在だ。
蛇の擬態はおよそ完璧だが、蛇杖堂の老人がしてみせたように、見抜ける手合いが出てこないとも限らない。
レミュリンは彼にとって愛しい仔だったが、彼女のサーヴァントは彼にとって邪魔である。
だから、体よくレミュリンには運命に挑んでもらうことにした。〈葬儀屋〉への接近を誘導したのがそれだ。まさかいるとは思わなかったが。
レミュリンがどんな答えを出すにせよ、相手が悪名高き禍炎では血の流れない結末はあり得ない。
そこで彼女のサーヴァントが脱落してくれれば御の字。葬儀屋・赤坂亜切を相討ちにでもしてくれれば更に上々。
もしレミュリン自身まで命を落とすことになったら残念だが、幸い食いでのありそうな獲物は彼女以外にもいる。
芳醇な果実をひとつ駄目にしてしまっても、バスケットから次の林檎を取り出せばいいだけだ。
どう転んだところで、蛇は損をしない。それどころかレミュリンの頑張り次第では、更に追熟した彼女を食らえると来ている。
問題は彼女の運命を"加速"させた何者かの存在だが、これを蛇はさほど重要視していなかった。
藪をかき回せば虫が跳ねる。鼠が走り、猫が鳴く。酔狂な誰かの気まぐれでもたらされる混乱は、蛇に這いずる隙を与えてくれる。
「それにしても……知った顔が多いな」
『アンドレイ・ダヴィドフ』の顔で、蛇は感嘆したように息を吐いた。
この顔は、敬虔なロシア人の少年を支配して手に入れたものである。
蛇は食らった子どもの未来を支配し、己が物として扱う。幸せな、あった筈のいつかの皮を被る。
少年を食うのは趣味ではないが、顔は多いに越したことはないし、性別の多様性もあって困ることはない。
いつも美味い肉ばかり食べられたら幸せだが、健康のためには好きでもない野菜も食べる。彼にとって少年を食うのはそういうことだった。
楽しむためではなく、目的あっての食事。メインディッシュの脇に添えられた葉野菜を口に運ぶようなものだ。
「空回る道化に、代行者の娘。経営に失敗した果樹園の狗、義肢作りの家の次男……彼の親はなんで殺したんだったかな……。
ともかくその他諸々含めてずいぶん集まったものだねぇ……特に困るわけでもないが、運命の"引力"というやつかな?
彼らの持って生まれた運命は、僕という宿命に向かうことを望んでいると? いや、流石にそこまでは言い過ぎか」
意外なことだが、この蛇は過去に何度か捕食に失敗している。
彼は英霊を寄せ付けぬほど強靭で、悪魔も逃げ出すほどに狡猾な存在だ。
それでも時に、それこそ運命のいたずらというものを疑うような奇跡の偶然で、難を逃れる獲物がいる。
琴峯教会の忘れ形見がまさにそれだ。少なくとも蛇は、彼女のことは本気で捕食するつもりだったのだから。
ともかくそういうことがあった時、蛇はその獲物にはもう固執しないように務めている。
きっぱりと諦めるのだ。念のため自分を阻んだ要因は排除するが、運命に守られた子どもからは視線を外す。
無論、生き延びた彼や彼女に対する温情ではない。
そうした方が無難で利口だから、というだけのことだ。
また食えそうな機会が回ってきたなら、その時改めて毒牙を伸ばせばいいだけのこと。
急ぐ理由はなにもない。この世には少女も少年も、掃いて捨てるほど溢れているのだから。
「〈葬儀屋〉と縁のある顔を早い内に捨てたのは正解だったね。
彼の殺し方は解りやすい。予選の内に気付いて、なるべく自然な形で"死んだ"ことにしておいたが……我ながら気が利くというかなんというか。僕のかわいいレミーに要らない手がかりを与えるのは本懐じゃないからな」
蛇は表の社会と裏の社会、そして魔術の社会にもその魔手を伸ばしている。
レミュリンに悲劇を齎した〈葬儀屋〉の存在を感知した時点で、蛇は過去、彼へ接触した際に使っていた顔を捨てた。
どの道ヤクザの理事長という顔は少々荒事に近すぎる。何かと治安の悪いこの街で暗躍するには不向きだったので、特に損失ではない。
そう、彼は早い段階から自身と縁(よすが)のある者達の捕捉を完了していた。
琴峯教会に関しては苦労しなかった。既にダヴィドフ神父として、電話越しだが接触も果たしている。
高乃家の次男を捕捉できたのは偶然だ。蛇はその嗜好上、全国の幼稚園及び小中高校における児童生徒の在籍状況を常に把握している。
特にこの世界では都内だけにアンテナを張ればよかったので、早めに
高乃河二の存在に気付くことができた。
雪村鉄志は昔の顔で簡単に動向を掴めたし、暗殺者養成施設/果樹園の生き残りは、彼が殺した人間の外傷ですぐに察せた。
脅威とまでは思っていない。
ただ、興味深いとは思う。
この狭い箱庭に、自分の縁者がこれだけ集まっている事実。
そこに蛇は、何か見えない力の存在を感じずにはいられなかった。
「案外、今回の雪村くんはいいところまで行くかもなぁ……ふふ、彼は昔から草の根を分けて泥に塗れるのが得意だった。
そして本当に大切なものは取りこぼす。本当に求めているものは決して手に入らない。まったくかわいい後輩だよ、実にいじらしい……
僕に辿り着くことは不可能だとしても、そのうち手を打っておいた方がいいか」
蛇は、先刻会ったもう一匹の蛇との会話を思い出していた。
老獪な男だった。よもやこうも早く、自分を見抜く手合いが現れるとは思わなかったのもある。
実に惜しいと思う。アレがまだ幼年の頃に遭遇できていたなら、自分は今の比にならない躍進を遂げていただろう――欲を言えば少女であったら尚よかった、本当に惜しまれる――。
誰かに驚かされたのは、ずいぶんと久方ぶりの経験だった。
この世界にはやはり、この自分でさえ完全には掌握することのできない"何か"が満ちている。
であれば現状に対する認識はいくらか改める必要があるだろう。
我ながららしくない台詞ではあるが、此処では〈支配の蛇〉さえ混沌を描きあげる絵具の一色でしかないらしい。
その事実に屈辱は感じなかった。むしろ、どろりとした欲望の雫がニューロンの底から滲み出してくるのを感じる。
運命。引力。不可解。いいじゃないか、実に唆る。
率直に言って。支配、してみたくなる。
「面白い。来てごらんよ、僕のところまで。来れるものならね」
その時はご褒美に、僕のすべてをお見せしよう。
にた……と、白い牙を覗かせながら蛇は笑う。
蛇は己を探るものを許さない。そこには必ず、天罰にも似た厄災が降り注ぐ。
だがもし仮に、それさえ乗り越えてニシキヘビの実像に辿り着く者が現れたのなら。
それでもやはり、蛇は悦ぶのだろう。
悦び、歓迎し、両手を広げながら、支配(ハグ)をする。
彼はミステリーの範疇にはいない。
真相を解き明かし、殺人犯を見つけたならば。
そこで待っているのは正真正銘、この世の理から解き放たれた一匹の蛇だ。
〈主役〉、〈はじまりの六人〉、そのどちらでもないもう一体の異常存在。
「さて。蛇杖堂のご老人から良い情報も聞けたことだし、データベースを照会しつつ吉報を待とうか」
〈支配の蛇〉という不条理が――とぐろを巻いてそこにいる。
◇◇
「……ああ、やっと思い出した。
そういえば昔いたなあ、蛇みたいなヤツ」
ファミレスでの一件、雪村鉄志との接触。
それから少しした頃に、赤坂亜切は目黒区内の路上でぽんと柏手を打っていた。
「あのオッサン、間の悪さで損をするタイプだな。
もう少し僕との世間話を続ける根気があったら、少しは役にも立てたかもしれないのに」
「なーにひとりでブツクサ言ってんのさ」
「君には関係ない話だよ。君が未来の妹候補カッコカリと抜け駆けしてる間にいろいろあってね」
「興味の有無を決めるのはアタシさ。いいかい? アタシは蚊帳の外ってヤツが嫌いなんだ。隠してもいいけど根に持つよ、ほら話した話した」
「……分かったよ。君に粘着されるのは僕としてもストレスが溜まりそうだ」
肩を竦めて、亜切は嫌そうな顔で嘆息した。
この破綻者にこんな顔をさせられる存在は希少である。
彼のサーヴァントである巨人の女神と、後は精々蛇杖堂の暴君くらいのものであろう。
「〈蛇〉を知らないかと問われてね。僕は興味のない相手を覚えるのが苦手だから、その時は思い出せなかったんだが」
「蛇、ねえ。蛇毒なら持ち合わせはあるけど」
「そういう話じゃない……いや、あるのかもしれないけども。
とにかく、此処で言うのは在り方の話さ。蛇のように狡猾で実像の掴めない、そういうヤツを知らないか聞かれてるんだと僕は解釈した」
「性格悪いヤツを知ってるかって話? そんなの掃いて捨てるほどいると思うけどねぇ」
「そりゃそうだ。だからまあ、それなりに名なり実力なりのある手合いを探してるんだろう。
咄嗟には思い出せなかったが、思えばひとり"ぽい"のが居た。もうずいぶん前の話になるけどね」
〈葬儀屋〉。
あるいは〈禍炎〉。
決して過たず、つまらぬこだわりや呵責に左右されることのない念発火能力者(パイロキネシスト)は魔術絡みの裏社会で重宝されていた。
要人暗殺。復讐。権力闘争。金さえ払えば必ず仕事をこなして帰ってくる存在は、何かとしがらみの多い魔術師の業界では稀有だった。
それは赤坂亜切がまだ本当の光を知らなかった頃。
本当に追うべき家族(だれか)を見つけられず、幽鬼のように世を漂っていた頃のこと。
彼にある依頼を持ち込んだ魔術師がいた。東洋人の男だった。亜切と同じ、日本を生まれ故郷とする男であった。
「名前は、確か……山本。山本テーキチ……テーイチ? だったかな。そんな名前だった気がする」
「なんだい。勿体つけといてうろ覚えかい」
「しょうがないだろ。依頼人の顔や名前なんていちいち覚えてないし、此処まで思い出せてるだけでも褒めてほしいね」
亜切は人の名前を覚えない。
というか、得意でない。
"こう"なってからはその欠点も多少改善されたが、世界が狂気に色づく前となると実に朧気だ。
しかし逆に言えば、その頃の彼でさえ多少印象に残しているということの意味は際立つ。
その男の名は、表でも裏でも有名だった。
殺し屋は仕事をする前に、まず依頼人を調べる。
何分恨みを買いやすい職業である、依頼人が実はこちらを嵌めようとしているなんてことは珍しくもないのだ。
だから調べた。結果として、件の山本某は"表"ではヤクザの幹部候補生として名を馳せていた。
そして"裏"では――ある暗殺者養成施設の運営を一手に担う、野心溢れる守銭奴として知られていた。
「結論から言うと、僕はそいつを結構警戒してた。少しでも不穏な素振りが見えたら始末するつもりだったんだ。結局最後まで、危惧してたようなことは起きないまま終わったけれどね。僕は仕事をして、奴さんは報酬を払った。それだけの縁(えにし)だった」
「それを、アンタは蛇と思った?」
「思ったさ。人間が同族を蛇と呼ぶ時、そうさせる要素は突き詰めると"頭の良さ"だろう? そいつは頭が良かった。プランの指定がとにかく事細かでね、おまけにそれに従うと気持ち悪いくらい上手くいく。うん、こうして振り返ると今の僕でも警戒するだろうな」
彼が〈葬儀屋〉に依頼した仕事。
それ自体は、決してなんてことのないものだった。
結局山本某も最後まで亜切を裏切ることはなく。亜切も、彼の期待に背くことなく仕事をこなした。
「僕がわざわざ記憶の引き出しの奥に残してた理由はそういう非凡さにもあったんだろう。確かに言われてみれば蛇のような男だった。言動もそうだが、ほら、蛇って一般論としては気持ち悪い生き物だろ? 僕もあんまり好きじゃない。とにかく、そっちの意味でもだね」
赤坂亜切が知る限り、雪村鉄志が行方を探す蛇に類する存在は彼だけだ。
そしてその男は、この世界にも存在していた。だが、今はもういない。
広域指定暴力団烈帛會理事長『山本帝一』。彼は数週間前、敵対する暴力団組織による暗殺という形で落命している。
そういうことに、なっている。何故巨大な立場と価値を持つ顔を蛇が切り捨てたのか、その理由は先に述べた通りだ。
さりとて。
文字通り雲を掴むようなものである〈ニシキヘビ〉狩りにおいて、赤坂亜切に過去接触していたキナ臭い"蛇の如き男"の存在が小さくない意味を持つことは間違いなかった。
とはいえ無論、狂気の徒と化した亜切が自ら鉄志へそれを伝えに行くなんて殊勝な真似をすることはあり得ない。
彼は試されている。己が運命に、積怨の真実に向かう引力を持つか否かその可能性を問われている。
あるいは亜切が彼へ持ちかけた"依頼"をこなすことができれば、気まぐれな葬儀屋に対価を払わせることも可能だろうが、さて。
「――おいアーチャー。聞いてんの?」
「ん? ああ、悪い聞いてなかったわ」
「……人に話せ話せとせがんでおいてそれはないだろ、君。
まあ神様なんて勝手なモノだし、ある意味"らしい"のかもしれないけど」
「そうじゃないよ」
「は?」
訝しげに眉をひそめる亜切をよそに、
スカディは遥か遠くの空を見ていた。
顔に浮かぶ笑みは、この女神の……狩人の気性を体現するような獰猛。
雪村鉄志の連れる幼神に向けた顔とは違う、闘志の滾る笑みがそこにはあった。
「――何見てんだよ、って思ってさ」
同時に、矢の如く放たれる女神の殺気。
亜切でさえ骨身が震えるのを感じる神代の威圧が向かう先には、何もないし何も見えない。
人間はおろか英霊でもまず同じだったろう。この針音都市の中にさえ、彼女と同じ視座を持てる英霊がどれほどいるかという話だ。
されどスカディは確かに、彼方からこちらを視ている存在を感知していた。
彼女は女神にして狩人たる存在。その瞳と、天に奉じられた星の眼は敵として立つ者を決して見逃さない。
空の果てから何かが視ている。見世物じゃねえぞと、女神はそれに中指を立てる。
次の瞬間の、ことであった。距離にして確実に二桁kmは先であろう空の彼方に、小さな黒点が生まれたのは。
ああ、そういうことか――と亜切は納得する。
と同時に、黒点の来る方角から半身を翻し、スカディの後ろに立った。
理解したからだ、アレが何か。
それは、矢である。射程距離、速度、命中精度、そして込められた殺意。
すべてにおいて並の次元にはない……英霊の弓。逃げることなど不能、そもそも普通は感知することさえ不能。
空の彼方よりやって来て、神の裁きのように敵を屠り去る。
そんな、黒い流れ星。
◇◇
アーチャー・
天津甕星がスカディを捕捉したのは、ひとえに先ほど彼女の放った"矢"のせいだ。
彼女は、悪神である。そうと定められ、記録されたモノである。
屈強な天津神を薙ぎ払い、傲慢なる天に恐怖と戦慄を与えた〈神の敵対者〉である。
故にその知覚能力は、こと忌々しき神々に対しては通常の数倍もの能力を発揮する。
そして、理解した。自身の感覚を揺らしたこの神が、ともすれば此度の戦の勝者になっても不思議ではないだけの怪物であることを。
「やべ……まずかったかな。ちょっと判断早すぎた?」
ついでに言うなら、なんとなく気に食わない気配だった。
自分の存在を誇示することに躊躇がなく、大上段から周りの命を見下ろしてくる――実に神らしい気配を感じた。
そんなモノが、驚くべきことに自分の視線に気付き。
数十kmは離れているこの地点まで届き、霊基を震わせるような殺気を飛ばしてきた。
天津甕星は神の敵対者である。ので当然に、彼女は神を嫌っている。
憎むとか軽蔑するとか、それ以前の段階で天津甕星は"それら"が好きでない。
神が神たるその在り方、自分達を地の人間を導き見守る者だと驕り腐ったその態度がとにかく気に食わない。
ただでさえ嫌いな生き物が、事もあろうに喧嘩を売るような真似をしてきたから。
だからつい衝動のままに弓を引き、煩いよ馬鹿、と言わんばかりに死の極星を撃ち放った。
まさしく、神をも恐れぬ所業。
神に弓を引く短慮。そしてそれを可能にする、神の如き御業。
少女のまま神の座に上り詰めた凶星は、雪村鉄志の幼神と根っこの部分ではさほど大差ない。
違うのは前を向いているかふて腐れているかであって、だからこそふて腐れている彼女は一時の衝動で暴力を振るう。
とはいえ、もしかするとまずいことをしてしまったかもしれない、とやった後でそう思うくらいの理性があるのも事実で。
「……とりあえず逃げよっか。無いとは思うけど、わざわざここまで殺しに来るならその時はその時ってことで」
弓を下ろして踵を返し、ぴゅう、と神の敵たる悪神はこの場を離れることにした。
忌まわしいが、自分の願いを叶える上で極上の協力者である〈蛇〉をこんな癇癪の後始末にかかずらわせるわけにはいかない。
こうして、星神は狩猟の神を矢で射るという大不敬をやらかし。
私は何も知りませんよ、みたいな顔ですたこら去っていったのだった。
◇◇
【新宿区・路上/一日目・午後】
【レミュリン・ウェルブレイシス・スタール 】
[状態]:健康、決意
[令呪]:残り三画
[装備]:
[道具]:大きな花束(山越風夏に渡されたもの)(なんとなく持ったままでいる)
[所持金]:6万円程度(5月分の生活費)
[思考・状況]
基本方針:――進む。わたしの知りたい、答えのもとへ。
1:まだ決めきれてはいない。でも、神父さまの言葉に従おう。
[備考]
自分の両親と姉の仇が赤坂亜切であること、彼がマスターとして聖杯戦争に参加していることを知りました。
山越風夏のことを、大道芸人だと認識しています。
【ランサー(
ルー・マク・エスリン)】
[状態]:健康
[装備]:常勝の四秘宝・槍、ゲイ・アッサル、アラドヴァル
[道具]:緑のマント、ヒーロー風スーツ
[所持金]:なし
[思考・状況]
基本方針:困ったことになったな……
0:そうするんだな、レミュリン。
1:レミュリンがこの先何を選択したとしても、ヒーローとしてそれを支える。
2:俺は過保護すぎるのか……?
[備考]
予選期間の一ヵ月の間に、3組の主従と交戦し、いずれも傷ひとつ負わずに圧勝し撃退しています。
レミュリンは交戦があった事実そのものを知らず、気づいていません。
ライダー(
ハリー・フーディーニ)から、その3組がいずれも脱落したことを知らされました。
【???/一日目・午後】
【
神寂縁】
[状態]:健康
[令呪]:残り3画
[装備]:様々(偽る身分による)
[道具]:様々(偽る身分による)
[所持金]:潤沢
[思考・状況]
基本方針:この聖杯戦争を堪能する。
0:運命、ねえ。本当にあるのかもな、そういうのも。
1:
楪依里朱に興味。調べて趣味に合致するようなら、飲み込む。
2:
蛇杖堂寂句とは当面はゆるい協力体制をとりつつ、いつか必ず始末する。
[備考]
奪った身分を演じる際、無意識のうちに、認識阻害の魔術に近い能力を行使していることが確認されました。
とはいえ本来であれは察知も対策も困難です。
神寂縁の化けの皮として、個人輸入代行業者、サーペントトレード有限会社社長・水池魅鳥(みずち・みどり)が追加されました。
裏社会ではカネ次第で銃器や麻薬、魔術関連の品々などなんでも用意する調達屋として知られています。
楪依里朱について基本的な情報(名前、顔写真、高校名、住所等)を入手しました。
蛇杖堂寂句との間には、蛇杖堂一族に属する静寂暁美として、緊急連絡が可能なホットラインが結ばれています。
赤坂亜切の存在を知ったため、広域指定暴力団烈帛會理事長『山本帝一』の顔を予選段階で捨てています。
山本帝一は赤坂亜切に依頼を行ったことがあるようです。
【???(神寂縁とはある程度離れている)/一日目・午後】
【アーチャー(天津甕星)】
[状態]:健康
[装備]:弓と矢
[道具]:なし
[所持金]:なし
[思考・状況]
基本方針:優勝を目指す。
0:やっべ……。一応逃げよ。
1:当面は神寂縁に従う。
【目黒区・中目黒/一日目・午後】
【赤坂亜切】
[状態]:健康
[令呪]:残り三画
[装備]:『嚇炎の魔眼』
[道具]:魔眼殺しの眼鏡(模造品)
[所持金]:潤沢。殺し屋として働いた報酬がほぼ手つかずで残っている。
[思考・状況]
基本方針:優勝する。お姉(妹)ちゃんを手に入れる。
0:面倒臭いことになる予感がしてきたぞぅ。
1:適当に参加者を間引きながらお姉(妹)ちゃんを探す。
2:日中はある程度力を抑え、夜間に本格的な狩りを実行する。
3:他の〈はじまりの六人〉を警戒しつつ、情報を集める。
4:〈蛇〉ねえ。
[備考]
※彼の所持する魔眼殺しの眼鏡は質の低い模造品であり、力を抑えるに十全な代物ではありません。
【アーチャー(スカディ)】
[状態]:健康、すごい笑顔
[装備]:イチイの大弓、スキー板。
[道具]:なし
[所持金]:なし
[思考・状況]
基本方針:狩りを楽しむ。
0:(にっこり)
1:日中はある程度力を抑え、夜間に本格的な狩りを実行する。
2:マキナはかわいいね。生きて再会できたら、また話そうじゃないか。
[備考]
※笑顔の意味はおまかせします。
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最終更新:2024年10月20日 15:33