「海馬コーポレーションって、時々変なことやるし、この殺し合いもあの会社の仕業かも!」
緑の髪を後ろに束ねた活発そうな少年、龍亞は語っていた。
殺し合いを開いた乃亜という少年が名乗った、海馬という姓に心当たりがあったからだ。
ソリッドビジョンを開発し、デュエルモンスターズを世界的に大流行させた大手ゲーム産業企業、龍亞の住むネオドミノシティとは切っても切れぬ縁のある会社である。
殺し合いを開いた乃亜という少年が名乗った、海馬という姓に心当たりがあったからだ。
ソリッドビジョンを開発し、デュエルモンスターズを世界的に大流行させた大手ゲーム産業企業、龍亞の住むネオドミノシティとは切っても切れぬ縁のある会社である。
「多分、乃亜ってやつ海馬瀬人の息子なんだ! 海馬瀬人も、頭がおかしい人だって聞いたことあるしさ、髪の色以外なんか似てるじゃん」
デュエルモンスターズの生みの親にして本人も凄腕のデュエリストであるペガサス・J・クロフォードが認めた5本の指に入るデュエリスト達
武藤遊戯、城之内克也、エド・フェニックス、ヨハン・アンデルセン、そして乃亜と同じ苗字を持つ海馬瀬人。
龍亞からすれば全員が歴史の偉人、伝説の英霊と言い切っても良いほど偉大なる先人であるが、特に海馬瀬人はその奇行が目立つ。
その血筋を引き継ぎ、性格が捻じ曲がり、海馬コーポレーションの技術、財力と権力をフルに活用し、殺し合いを開いたと言えば納得できてしまう。
武藤遊戯、城之内克也、エド・フェニックス、ヨハン・アンデルセン、そして乃亜と同じ苗字を持つ海馬瀬人。
龍亞からすれば全員が歴史の偉人、伝説の英霊と言い切っても良いほど偉大なる先人であるが、特に海馬瀬人はその奇行が目立つ。
その血筋を引き継ぎ、性格が捻じ曲がり、海馬コーポレーションの技術、財力と権力をフルに活用し、殺し合いを開いたと言えば納得できてしまう。
「よく分からないけど、吸血鬼共が崇める雅みたいなもんか、畜生ォ!」
その話を真に受けるのは、帽子を被り左腕が醜い怪物の姿に変えられた小学四年生、山本勝次だった。
「……吸血鬼って何?」
「吸血鬼は、吸血鬼だよ! あいつらのせいで、日本は滅んじまったんだ」
「え? 日本って滅んじゃったの!? うっそだぁ~!」
「何を馬鹿なこと言ってんだよ……。
吸血鬼になるウィルスがばら撒かれて、日本中はもう滅茶苦茶じゃないか! 俺の左腕だって元を辿れば、あいつらにやられたようなもんだし、暇さえあれば人間を襲うわレイプするわ酷ェ奴らだろ!?」
「吸血鬼は、吸血鬼だよ! あいつらのせいで、日本は滅んじまったんだ」
「え? 日本って滅んじゃったの!? うっそだぁ~!」
「何を馬鹿なこと言ってんだよ……。
吸血鬼になるウィルスがばら撒かれて、日本中はもう滅茶苦茶じゃないか! 俺の左腕だって元を辿れば、あいつらにやられたようなもんだし、暇さえあれば人間を襲うわレイプするわ酷ェ奴らだろ!?」
「れいぷ……? れいぷってなに?」
「レイプはレイプだよ!」
どうも話が食い合わない。
平和だった頃なら、勝次もレイプとは何か知らなかっただろう。
だが現在、いくら小学生といえど、吸血鬼が蔓延する日本で龍亞がレイプを知らないというのは、考え辛い。
平和だった頃なら、勝次もレイプとは何か知らなかっただろう。
だが現在、いくら小学生といえど、吸血鬼が蔓延する日本で龍亞がレイプを知らないというのは、考え辛い。
「オレ、吸血鬼なんて見たことないし……ウィルスなんて知らないよ」
「マジかよ!? なんか、化け物とか見たことねェか? っていうか、俺の左腕見ても全然驚かねェし、見慣れてるとかじゃなかったのかよ!?」
「そ、そういうものかと……凄い肩幅デカいおじさん(アポリア)とか、Dホイールと合体したじいさんも(ホセ)も居たし……変な左腕とは思ったけど、そういうものなんだなって」
「マジかよ!? なんか、化け物とか見たことねェか? っていうか、俺の左腕見ても全然驚かねェし、見慣れてるとかじゃなかったのかよ!?」
「そ、そういうものかと……凄い肩幅デカいおじさん(アポリア)とか、Dホイールと合体したじいさんも(ホセ)も居たし……変な左腕とは思ったけど、そういうものなんだなって」
ここで、もう一度お互いに話を擦り合わせ、整理してみる。
勝次の語る世界は吸血鬼に人間が支配された世界で、実質文明が滅んだ非合法地帯である。
逆に龍亞の語る世界は、ソリッドビジョンを始めとした勝次からすれば、近未来的な技術が広まった人間の文明社会だ。
勝次の語る世界は吸血鬼に人間が支配された世界で、実質文明が滅んだ非合法地帯である。
逆に龍亞の語る世界は、ソリッドビジョンを始めとした勝次からすれば、近未来的な技術が広まった人間の文明社会だ。
「分かったよ! 多分、あれなんだ……えーと、何だっけパラレル……なんだっけ、パラダイス?」
「パラレルワールド?」
「そうそう、オレ昔なんかのアニメで見たことあるんだ。色んな世界があるって」
「マジかァ?」
「信じられないかもしれないけど、遊星っていう凄ェカッコいいデュエリストが居るんだけど、過去の時代に行ったこともあるんだ。
過去を変えたら、未来も変わるからさ。勝次の世界はオレ達と違う歴史の世界なんじゃない?」
「パラレルワールド?」
「そうそう、オレ昔なんかのアニメで見たことあるんだ。色んな世界があるって」
「マジかァ?」
「信じられないかもしれないけど、遊星っていう凄ェカッコいいデュエリストが居るんだけど、過去の時代に行ったこともあるんだ。
過去を変えたら、未来も変わるからさ。勝次の世界はオレ達と違う歴史の世界なんじゃない?」
突拍子もない話になってきたが、乃亜が人を生き返らせた場面を勝次は目撃している。なら、そういうモンなのかもしれない。
それに、こんな場所で相手の仮説を否定して口論しても時間の無駄だ。勝次は取り合えず、納得しておくことにした。
それに、こんな場所で相手の仮説を否定して口論しても時間の無駄だ。勝次は取り合えず、納得しておくことにした。
「とにかく俺は、こんなクソみてェな殺し合いには乗らない。お前は?」
「オレだって嫌だよ。……でも、この首輪どうすればいいんだろう」
「今はとにかく、進むしかないよ。もしかしたら、首輪を外せる奴も居るかもしれないし、明やハゲが来てくれるかもしれない」
「そうだよな。オレだって、遊星やジャックが助けに来てくれるかもしれないしな。それまで、誰も死なせないように頑張んなきゃ」
「オレだって嫌だよ。……でも、この首輪どうすればいいんだろう」
「今はとにかく、進むしかないよ。もしかしたら、首輪を外せる奴も居るかもしれないし、明やハゲが来てくれるかもしれない」
「そうだよな。オレだって、遊星やジャックが助けに来てくれるかもしれないしな。それまで、誰も死なせないように頑張んなきゃ」
「「「「「じわじわ楽しく☆ブッ殺そう」」」」」
「え? 何…」
歌声が聞こえてきた。愉快で明るい軽快な、それでいてこれ以上なく物騒で残酷な歌詞を歌う五人の子供達。
「「「「「僕達5人で“割戦隊(ワレンジャー)”!!!」」」」」
全員がガムテープを顔に巻き付け、ナイフを振り回しながら爽やかな笑いを浮かべている。
「ふったりっ☆みっけ」
「誰がやる?」
「オレがやる」
「いや、僕が」
「早い者勝ちでよくね?」
「了解(おけび)~」
同じ子供でありながら、明らかに堅気ではない異様な集団を前にして、それでも龍亞は可能な限り冷静に努めようとした。
「ま、待ってよ……オレ達殺し合いなんかしたくないんだって……ここから出る方法に心当たりもあるんだよ。
牛尾っていう、セキュリティの結構偉い人が知り合いなんだ。オレが居ないって分かればすぐに助けに来てくれるよ」
牛尾っていう、セキュリティの結構偉い人が知り合いなんだ。オレが居ないって分かればすぐに助けに来てくれるよ」
いささか他人頼りだが、外部に頼もしい知り合いが居るから殺し合いに乗らなくても良い、というのは悪くない説得内容だと考える。
やはり子供が子供に下手に説得するより、大人が助けに来てくれると思えれば、冷静にもなれるだろう。
やはり子供が子供に下手に説得するより、大人が助けに来てくれると思えれば、冷静にもなれるだろう。
「セキュリティ?」
「セキュリティじゃ分かりづらいか、警察みたいな……」
「警察(ポリ)ィ?」
普通の子供ならば、警察が身内に居るから事件は早期に察知されて救助が来ると言われれば、ある程度の説得力は持たせられるだろう。
だが彼は既に普通ではない。道を踏み外し、かつては被害者だった少年たちが今は狂気の殺人鬼と化した存在、心が決定的に壊された小さな殺戮者。
だが彼は既に普通ではない。道を踏み外し、かつては被害者だった少年たちが今は狂気の殺人鬼と化した存在、心が決定的に壊された小さな殺戮者。
「ギャハハハハハハハハハハ!!!」
「極道(ヤクザ)が警察(サツ)を待機(まつ)訳ないじゃん☆!!」
割れた子供達(グラス・チルドレン)。
「あいつら、ヤクザの癖に戦隊ごっこしてやがったのか、ふざけやがって!!」
「嘘だろ、ヤクザなんて……オレらと歳そんなに変わらないのに」
一瞬、ワレンジャーの視線が龍亞へと集約する。僅かな沈黙の後に、リーダー格と見られる少年が口を開いた。
「あの髪結んでるガキ、立腹(ムカ)つくなぁ」
「さきにあっちからやろうよ」
「左手が奇形(キモ)い奴は後回しだね☆」
「さきにあっちからやろうよ」
「左手が奇形(キモ)い奴は後回しだね☆」
口調こそ軽くあっけらかんとしているが、その殺意は本物だった。
龍亞とて命がけのデュエルは何度か経験している。だから、子供にしては敵意の類には耐性はある方だった。
龍亞とて命がけのデュエルは何度か経験している。だから、子供にしては敵意の類には耐性はある方だった。
(な、なんだよ……この感じ……)
だが、目の前の少年たちは違う。
以前虐待されたおじさんとも、人違いで戦う羽目になったダークシグナーとも、未来からの使者たる絶望の番人とも、違う。
彼らには戦いに理由があった。目的の為に戦い、その過程で龍亞を倒す必要があったが、この少年たちはそうではない。
手段が目的であり、殺したいから殺すだけだ。乃亜に強制されたからでは断じてなく、望んで殺しに愉しみを見出している。
以前虐待されたおじさんとも、人違いで戦う羽目になったダークシグナーとも、未来からの使者たる絶望の番人とも、違う。
彼らには戦いに理由があった。目的の為に戦い、その過程で龍亞を倒す必要があったが、この少年たちはそうではない。
手段が目的であり、殺したいから殺すだけだ。乃亜に強制されたからでは断じてなく、望んで殺しに愉しみを見出している。
「ヤバいぞ、龍亞!」
体が動かず、混乱している龍亞を庇うように勝次が前に出る。
「無理だよ! 勝次、相手は5人だよ!」
「でも、戦うしかないよ。へっ、あんな奴ら、大した事ねェよ。こちとら吸血鬼相手に毎日命懸けで戦ってんだぜ」
「でも、戦うしかないよ。へっ、あんな奴ら、大した事ねェよ。こちとら吸血鬼相手に毎日命懸けで戦ってんだぜ」
口では強がるが、勝次も今が相当な窮地に追い込まれているのは理解していた。
「吸血鬼(ヴァンパイア)ァ? おもしろーい☆」
「うるせェ! どうせ、お前らなんて自分より弱い奴等しか殺してきてねェんだろ! クソ吸血鬼みてェに!!」
「うるせェ! どうせ、お前らなんて自分より弱い奴等しか殺してきてねェんだろ! クソ吸血鬼みてェに!!」
勝てそうにないのは分かっていた。だが、龍亞を見捨てて逃げ出すなんて事も出来なかった。
こいつらは人間だが、やっていることはあの憎き吸血鬼達と同じだ。人間を玩具にして、弄び、慰み者にする。
そんな奴らに、好き勝手などさせてたまるものか。
こいつらは人間だが、やっていることはあの憎き吸血鬼達と同じだ。人間を玩具にして、弄び、慰み者にする。
そんな奴らに、好き勝手などさせてたまるものか。
「……」
ほんの僅か、軽薄な態度は鳴りを潜め、リーダー格の少年が小さく俯く。
「お前ら、もしかして……」
あの少年たちが勝次と同じ世界の住人かは分からないが、こうなってしまった経緯としては、自分と近しいモノがあるような気がした。
きっと、奪われたのだろうと。何があったかは知らない。誰にやられたのかも分からない。
勝次がエロ金剛を初めとした吸血鬼に母親を辱められたように。
享受できる筈だった幸せを、平穏を、未来を、無慈悲に暴虐に奪われてしまったのだと。
きっと、奪われたのだろうと。何があったかは知らない。誰にやられたのかも分からない。
勝次がエロ金剛を初めとした吸血鬼に母親を辱められたように。
享受できる筈だった幸せを、平穏を、未来を、無慈悲に暴虐に奪われてしまったのだと。
(考えんのはあとだ! なんとか全員倒すしかない!)
とはいえ、どんな事情があろうとも、その矛先を向けてくるのであれば戦うしかない。
割戦隊五人がナイフを片手に飛び掛かってくる。
早い身のこなしで、人間より強化された筈の吸血鬼よりも戦闘力は上のようだ。だが、全員本気ではなく遊びが混じっている。
割戦隊五人がナイフを片手に飛び掛かってくる。
早い身のこなしで、人間より強化された筈の吸血鬼よりも戦闘力は上のようだ。だが、全員本気ではなく遊びが混じっている。
(頼むぞヒー坊、ままよ!)
勝次は微動だにしない。ただ、震える右拳を握りしめ冷静に割戦隊達の位置関係を把握する。
「―――よし!」
ワレンジャーが横並びになっているのを確認し、勝次はようやく相手に突っ込むように走り出す。
「ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”」
「ぐがああっ痛ェ!」
「ぐがああっ痛ェ!」
ヒュッ ザシュッ
勝次の左の赤ん坊が泣き声をあげ、鋭利な槍状の触手を生成した。
そのまま目にも止まらぬ速さで、ワレンジャーの内二人の顔面を貫いた。
残った三人は触手を避け、一気に散会する。
そのまま目にも止まらぬ速さで、ワレンジャーの内二人の顔面を貫いた。
残った三人は触手を避け、一気に散会する。
(三人残した!?)
【割戦隊(緑)@忍者と極道】死亡
【割戦隊(桃)@忍者と極道】死亡
【割戦隊(桃)@忍者と極道】死亡
「緑(グリーン)、桃(ピンク)!!?」
割戦隊は五人纏めて参加させられた反面、ハンデとして身体を強化する麻薬(ヤク)、地獄への回数券(ヘルズ・クーポン)の支給はない。
武器もそれぞれナイフのみという、武装面では恵まれたスタートではなかった。
もっとも、ヤクなどなくても殺し屋として幾人も殺害し磨き上げた技術は確かなものであり、ナイフさえあればそこいらの子供を数人襲う程度なら問題はないだろうと、彼らも考えてはいた。
武器もそれぞれナイフのみという、武装面では恵まれたスタートではなかった。
もっとも、ヤクなどなくても殺し屋として幾人も殺害し磨き上げた技術は確かなものであり、ナイフさえあればそこいらの子供を数人襲う程度なら問題はないだろうと、彼らも考えてはいた。
「みんな、こいつは本気(マジ)でやろう」
だが、それは過ちであったと考え直す。少なくともこの子供は、地獄への回数券なしとはいえ、仮にも殺しのプロフェッショナルである割れた子供達を二人瞬殺してみせた。
ならばそれは遊びで殺す相手ではなく、プロの殺し屋として応じなければ、こちらが狩られる側になるということだ。
ならばそれは遊びで殺す相手ではなく、プロの殺し屋として応じなければ、こちらが狩られる側になるということだ。
(不味い、ヒー坊の副作用のこともバレちまった)
対する勝次も相手の態度が露骨に変わってきたのを肌で感じた。
ヒー坊のオート攻撃を利用し、一気に纏めて始末する算段だったが、やはり5人という多勢に加えて、相手も相当な練度を積んだ殺戮者だ。それを全員屠り去るのは難しい。
ワレンジャーは勝次へと少しずつ距離を詰め、そしてわざとヒー坊の攻撃を誘導する。
ヒー坊のオート攻撃を利用し、一気に纏めて始末する算段だったが、やはり5人という多勢に加えて、相手も相当な練度を積んだ殺戮者だ。それを全員屠り去るのは難しい。
ワレンジャーは勝次へと少しずつ距離を詰め、そしてわざとヒー坊の攻撃を誘導する。
「ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”」
「がああああああああああ!!!」
「がああああああああああ!!!」
ヒー坊が触手を動かすたびに、勝次の体の痛覚を刺激してしまうのか、強力な戦闘力と引き換えに戦闘時に強烈な反動を齎してしまう。
「このままジワジワ嬲り殺しにしてやるよ」
「こっちも地獄への回数券がないから、あまり無茶出来ないしね」
「こっちも地獄への回数券がないから、あまり無茶出来ないしね」
割戦隊はそれを一瞬で見抜き、確実に避けられよう距離を開けながら、勝次の意思ではなくヒー坊の独断で勝手に攻撃を開始するのを利用し、反動による激痛を利用した消耗勝ちという戦術を選んだ。
「うがああああああああ!!! 駄目だ、耐えらんないよ……!」
「ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”」
激痛に蝕まれる勝次を見て、割戦隊達はほくそ笑む。獲物が弱る瞬間を狩る、その時を愉しみにしながら。
「世界の平和を守るため、勇気と力をドッキング! シンクロ召喚! 愛と正義の使者! パワー・ツール・ドラゴン!」
オ オ オ オ
この殺戮の場にそぐわない幼稚(ダサ)い、召喚口上(スピーチ)。
割戦隊が声の主へ視線を向けた時、白い玩具(エモノ)の切札(カード)を天高く掲げる龍亞と、その背後から閃光に導かれるように翼を羽ばたかせ色彩豊富(カラフル)なドラゴンが飛翔した。
「これ、現実(マジ)?」
「虚構(ドラゴン)!!?」
「非実在(アリエネ)ェ!!」
「すげェ!」
ワーワーと全員の視線が集まる中、龍亞は少し安堵しながら自分が手にするカードを見た。
(説明書に書いてあったみたいに、ほんとうにモンスターが実体化した……アキ姉ちゃんみたいだ……)
サイコデュエリスのような特異能力者の特権である、デュエルモンスターズの実体化を行えたことに戸惑いながらも龍亞は顔を振って、一旦その疑問を振り捨てる。
この窮地を脱する力が、自分にとって最も馴染のある形で恵まれたのなら、それを使わない理由はない。
この窮地を脱する力が、自分にとって最も馴染のある形で恵まれたのなら、それを使わない理由はない。
「おまえら、全員やっつけられたくなかったら、早くどっかに行け!!」
「唖然(ハァ)?」
いくら割れた子供達といえど、麻薬(ヤク)なし、健康(シラフ)のままでは実体化したデュエルモンスターズに勝ち目はない。
だが、いくらモンスターに強力な力があろうと、操るのはその召喚者だ。
だが、いくらモンスターに強力な力があろうと、操るのはその召喚者だ。
「お、おい……! オレは本気だぞ!」
命懸けのデュエルを経験してきた龍亞だからこそ、生身の人間が実体化したモンスターの攻撃を直接喰らえばどうなるか容易に想像が付いてしまう。
だからこそ、躊躇いが生まれた。
大好きなデュエルで人を殺めたくないというエゴが、殺人への逃避が、相手への良心が、罪悪感が、入り交じり龍亞に攻撃をさせない。
故に選んだのは威嚇による撃退、可能な限り強い言葉を選んで虚勢を張るが、所詮は小学生の語彙力に加え、殺すなどの言動が飛び出ないのは育ちの良さのせいだろう。
だからこそ、躊躇いが生まれた。
大好きなデュエルで人を殺めたくないというエゴが、殺人への逃避が、相手への良心が、罪悪感が、入り交じり龍亞に攻撃をさせない。
故に選んだのは威嚇による撃退、可能な限り強い言葉を選んで虚勢を張るが、所詮は小学生の語彙力に加え、殺すなどの言動が飛び出ないのは育ちの良さのせいだろう。
「ギャハハハ!」
「大爆笑(ウケ)る!!」
「確定(ゼッテ)ェ、殺人未経験(ドーテー)じゃん!!」
「大爆笑(ウケ)る!!」
「確定(ゼッテ)ェ、殺人未経験(ドーテー)じゃん!!」
「ど、どーてーってなんだよ……バカにすんな!」
つまるところ、殺(ヤル)気が見られない。
極端な話、例えこの場で核ミサイルのスイッチを持っていても、早々脅しにはならない。
この会場ごと吹き飛べば自分も吹き飛ぶからだ。ならば、どう相手にそれを信じさせるか、それはいかに自分が自滅しようとも構わないか、覚悟を魅せ付ける狂気(パフォーマンス)が必要になる。
だが、龍亞にそんな経験(テク)は存在しない。
決闘(デュエル)での技巧(タクティクス)ならば、幼いながらも既に一流(プロ)にも勝るとも劣らないものの、死合(リアルファイト)は未経験。
極端な話、例えこの場で核ミサイルのスイッチを持っていても、早々脅しにはならない。
この会場ごと吹き飛べば自分も吹き飛ぶからだ。ならば、どう相手にそれを信じさせるか、それはいかに自分が自滅しようとも構わないか、覚悟を魅せ付ける狂気(パフォーマンス)が必要になる。
だが、龍亞にそんな経験(テク)は存在しない。
決闘(デュエル)での技巧(タクティクス)ならば、幼いながらも既に一流(プロ)にも勝るとも劣らないものの、死合(リアルファイト)は未経験。
「こ、こっち来るなよ……」
「恐怖(ビビ)ってる☆!」
「逃げろ! 龍亞!!」
威嚇には殺意が足りず、殺害には覚悟が足りない。そんな半端な戦意で割れた子供達が折れる筈がない。
ジワジワと笑みを浮かべながら、割戦隊の赤(レッド)が龍亞へと歩み寄る。
勝次は激痛を抑え、龍亞の元へ向かおうとするが、残り二人の割戦隊に妨害される。
ジワジワと笑みを浮かべながら、割戦隊の赤(レッド)が龍亞へと歩み寄る。
勝次は激痛を抑え、龍亞の元へ向かおうとするが、残り二人の割戦隊に妨害される。
「どうしてだよ……クソっ、オレはほんとうに―――」
「じゃ、他界(バイバイ)」
赤と必殺(リーチ)距離にまで縮まった。既に喉元にナイフを何時でも突きつけられる距離、景色が異様な程に遅く感じる。
今までの思い出が唐突に脳内を駆け巡っていく。多分、これが走馬灯と呼ばれるものだろうと、小学生の龍亞の知識でも分かった。
今までの思い出が唐突に脳内を駆け巡っていく。多分、これが走馬灯と呼ばれるものだろうと、小学生の龍亞の知識でも分かった。
――――龍亞は私にとって、最高のヒーローだもん!
(だ、駄目だ……オレの妹を、龍可をこんな奴らに……!)
産まれた時からずっと一緒だった双子の妹。
居るかも分からない。でも、もし居たら。
こんな、人殺し集団にもし出会ってしまったら。
傷付けられる、殺される、奪われてしまう。
「パワーツール・ドラゴンのォ―――攻撃ィ!!!」
スローモーションだった景色は通常の流れに戻り、強張った声から流れる様に龍亞は宣言する。
「危険(ヤッb)!」
一瞬にして、覚醒(レベルアップ)を果たした龍亞の異変を察知し、赤は速攻でナイフを振るう。
だが、遅い。既に攻撃宣言は済んでいる。
ぐぢゃりと、湿っぽい音と共にパワーツール・ドラゴンの青のアームが、赤を文字通り叩き潰した。
だが、遅い。既に攻撃宣言は済んでいる。
ぐぢゃりと、湿っぽい音と共にパワーツール・ドラゴンの青のアームが、赤を文字通り叩き潰した。
【割戦隊(赤)@忍者と極道】死亡
血と肉の残骸が散らばり、赤い大きなシミのように広がっていく。
「ガム…テ……」
そのまま青(ブルー)を。
【割戦隊(青)@忍者と極道】死亡
「有難(あざ)」
あっさり、黄(イエロー)を。
【割戦隊(黄)@忍者と極道】死亡
柔らかい果実のように捻りつぶし、赤黒いシミを三つに増やし、パワー・ツール・ドラゴンは消えていく。
悪い奴等をやっつける正義のヒーローを目指した筈の子供たちは、愛と正義の使者に呆気なく葬り去られた。
悪い奴等をやっつける正義のヒーローを目指した筈の子供たちは、愛と正義の使者に呆気なく葬り去られた。
「うっ!? おえっ!!」
龍亞はうずくまり、そのまま胃の中の物を吐き出しぶちまけていた。
自分が作り出した三つの凄惨な惨劇を目の当たりにし、精神が限界を迎え身体に異常をきたす。
えづきながら、瞳が潤み涙が溢れ出す。押し潰されそうな程の罪悪感と、人を初めて殺めた事への自己嫌悪、そしてあらゆる感情が入れ混じった悲しみが涙を溢れさせる。
自分が作り出した三つの凄惨な惨劇を目の当たりにし、精神が限界を迎え身体に異常をきたす。
えづきながら、瞳が潤み涙が溢れ出す。押し潰されそうな程の罪悪感と、人を初めて殺めた事への自己嫌悪、そしてあらゆる感情が入れ混じった悲しみが涙を溢れさせる。
「おい、龍亞……」
「ぐ、う、ぅ……うわああああああああ!!」
泣き崩れる龍亞を見て、勝次は左腕の痛みなど忘れてしまうような想いに駆られた。
(無理もねェよな……レイプも知らない子供が、人を殺すなんて……そうだよな、普通の子供はレイプなんて知らないんだよ。俺、そんな当たり前の事、ずっと忘れてたんだな……)
普通の子供だ。吸血鬼なんて居なくて、母親も父親も居て、あったかい部屋で母親の美味いご飯食べて、父親と談笑して。
家族からの愛情を受けながら、柔らかい布団で寝る。そして次の日には、学校で友達と馬鹿話して、退屈な授業聞いて、そんな何気ない生活の繰り返しだ。
家族からの愛情を受けながら、柔らかい布団で寝る。そして次の日には、学校で友達と馬鹿話して、退屈な授業聞いて、そんな何気ない生活の繰り返しだ。
血の楽園で見てきた光景まで、フラッシュバックしてきた。
人間を蹂躙しながら、吸血鬼達がかつての日本のような文明的な生活を送る、あの特殊区域を。
(でも、こいつは吸血鬼じゃなく人間だ。……なら、ちゃんと元の場所に帰してやらねェと……俺らみたいのはともかく、子供に殺し合いなんてさせちゃ駄目だ)
だからこそ、猶更怒りが沸いてくる。こんな平穏に暮らしている、暮らせている子供達を何人殺し合いに巻き込んだというのか。
その数だけ悲劇が起こり、望みもしない離別が強制されれるのだろうか。かつての、勝次とその母である吉川のように。
その数だけ悲劇が起こり、望みもしない離別が強制されれるのだろうか。かつての、勝次とその母である吉川のように。
(あの乃亜とかいう野郎……こんなクソみてェな殺し合い、絶対ぶち壊してやる!)
「ハァ、ハァ……ごめん、勝次……辛いのオレだけじゃ、ないのに……泣いちゃって」
「……気にすんな」
だが、どんなに怒りを内に秘めようとも、既に一度悲劇は起きてしまった。こんな明るくて活発な少年の手を血で汚させてしまった。
後悔してもしきれない大失態だ。
後悔してもしきれない大失態だ。
「……」
先ほどまで人だった5人の子供達に一瞥をくれる。事情は知らないし、知ったとしても今やクソ吸血鬼以下の殺人鬼どもだ。
かつての自衛隊の時とは訳が違う。多分、分かり合えることは一生ないだろうし、殺さずに事を収めるのは無理だろうとも今でも思う。仮に明が居ても、きっと同じ判断をする。
ただ、それでもそこに至るまでの、何かがあった過程には同情しようと思った。
かつての自衛隊の時とは訳が違う。多分、分かり合えることは一生ないだろうし、殺さずに事を収めるのは無理だろうとも今でも思う。仮に明が居ても、きっと同じ判断をする。
ただ、それでもそこに至るまでの、何かがあった過程には同情しようと思った。
「辛ェな……」
そのまま、顔を上げて夜空を見つめる。こんなクソみたいな場所でも、星空は奇麗に広がっていた。
※割戦隊の支給品はそれぞれナイフ@現実×1本
合計5本のみです。
合計5本のみです。
【龍亞@遊戯王5D's】
[状態]健康、殺人へのショック(極大)
[装備]パワー・ツール・ドラゴン@遊戯王5D's(12時間使用不可)
[道具]基本支給品、ランダム支給品0~2
[思考・状況]基本方針:殺し合いはしない。
1:妹の龍可が居れば探す。
2:人を殺しちゃった……。
[備考]
少なくともアーククレイドルでアポリアを撃破して以降からの参戦です。
彼岸島世界について、大まかに把握しました。
[状態]健康、殺人へのショック(極大)
[装備]パワー・ツール・ドラゴン@遊戯王5D's(12時間使用不可)
[道具]基本支給品、ランダム支給品0~2
[思考・状況]基本方針:殺し合いはしない。
1:妹の龍可が居れば探す。
2:人を殺しちゃった……。
[備考]
少なくともアーククレイドルでアポリアを撃破して以降からの参戦です。
彼岸島世界について、大まかに把握しました。
【山本勝次@彼岸島 48日後…】
[状態]健康
[装備]ヒー坊@彼岸島 48日後…(自前)
[道具]基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]基本方針:クソみてェな殺し合いをぶっ潰す。
1:龍亞が落ち着くまで、何とかしてやる。無害な子供も保護して家に帰してやりたい。
2:パラレルワールドが本当に存在するのか?
[備考]
少なくとも、血の楽園突入以降からの参戦です。
遊戯王5D's世界について、大まかに知りました。
[状態]健康
[装備]ヒー坊@彼岸島 48日後…(自前)
[道具]基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]基本方針:クソみてェな殺し合いをぶっ潰す。
1:龍亞が落ち着くまで、何とかしてやる。無害な子供も保護して家に帰してやりたい。
2:パラレルワールドが本当に存在するのか?
[備考]
少なくとも、血の楽園突入以降からの参戦です。
遊戯王5D's世界について、大まかに知りました。
【パワー・ツール・ドラゴン@遊戯王5D's】
シンクロ・効果モンスター
星7/地属性/機械族/攻2300/守2500
星7/地属性/機械族/攻2300/守2500
細かい効果は割愛、実体化させて戦わせる事が出来る。
一度の使用で12時間使用不可。
一度の使用で12時間使用不可。
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