「あの野郎ォ……ふざけやがって!!」
乃亜の放送を聞きながら、勝次は怒りを露わにしていた。
14人だ。子供を集めて、一時間で14人も死なさせてしまったのだ。
勝次のいるクソったれの日本も、吸血鬼による悪趣味な催しはいくつもあったが、この殺し合いもそれに勝るとも劣らない。
14人だ。子供を集めて、一時間で14人も死なさせてしまったのだ。
勝次のいるクソったれの日本も、吸血鬼による悪趣味な催しはいくつもあったが、この殺し合いもそれに勝るとも劣らない。
「……こんなに、人って簡単に殺し合っちゃうのかよ」
命懸けのデュエルはよく聞く話だが、既に先ほど交戦した割戦隊のように、直接相手を害して平気でいるような連中がこんなにも居る事に、龍亞はギャップを感じ始めていた。
理由のない殺人、あった筈の理由すら忘れ、元は手段であった殺人が目的となって狂ってしまった少年達。
龍亞にとって、あまりにも住んでいる世界が違った。
デュエルの有無などではなく、文字り生まれた場所も境遇もあまりにも違い過ぎる。
以前、ジャック・アトラスにも金のない者の何が分かるか、そう怒鳴られた事もあった。今、思うと正論だったと思う。
理由のない殺人、あった筈の理由すら忘れ、元は手段であった殺人が目的となって狂ってしまった少年達。
龍亞にとって、あまりにも住んでいる世界が違った。
デュエルの有無などではなく、文字り生まれた場所も境遇もあまりにも違い過ぎる。
以前、ジャック・アトラスにも金のない者の何が分かるか、そう怒鳴られた事もあった。今、思うと正論だったと思う。
――――フフ……所詮、社会のレールにも乗れなかった、負け犬共の傷の舐め合いだったということかな。
「オレが殺したあいつらも……生まれとか、何か違ったら……なのに、そこまで言う事ないじゃないかよ」
「龍亞、あんま思い詰めんな」
言いながら勝次も、割戦隊に対し思う所もあった。あの戦隊ごっこも、何か思い入れのある物を真似ていたのだろうか。
殺人鬼に堕ちながらも、心の奥底にあった僅かな良心や元は存在した正義の味方への憧れが、ああした道化を演じさせていたのかもしれない。
殺人鬼に堕ちながらも、心の奥底にあった僅かな良心や元は存在した正義の味方への憧れが、ああした道化を演じさせていたのかもしれない。
「……お前、知り合いは呼ばれてないんだよな」
「うん、友達も妹も誰も、放送で呼ばれなかった。勝次は?」
「俺は……大丈夫だ……きっと、誰も居ねえよ。ガキばっか集めてるってんなら、ハゲや明も居ねえし、ユカ姉ちゃんもネズミもガキじゃねえよ」
「そっか……でも、学校の友達とか……」
「もう、学校なんか閉まったし……」
「あ、いや……ごめん……」
「うん、友達も妹も誰も、放送で呼ばれなかった。勝次は?」
「俺は……大丈夫だ……きっと、誰も居ねえよ。ガキばっか集めてるってんなら、ハゲや明も居ねえし、ユカ姉ちゃんもネズミもガキじゃねえよ」
「そっか……でも、学校の友達とか……」
「もう、学校なんか閉まったし……」
「あ、いや……ごめん……」
「……」
「……」
「……」
気まずくなってしまった。
お互いに、地雷を踏んだ、別に気にしてないが空気を悪くしたと、遠慮と後悔をすることで話が続かなくなる。
「ねぇ、あんた達! 何か、何か……武器持ってない!?」
そんな時、沈黙を破って一人の少女が大声で割り込んできた。
有馬かな。
サーヴァントだの、極道だの、真祖の吸血鬼だの、エンジェロイドだの、二―ドレスだの、危険人物てんこ盛りの中に、重曹一つで挑まざるを得なくなった女である。
この一時間の中、14人死んでる中で彼女はとても幸運なことに、誰とも出会わずに生き延びることが出来た。
悪意ある参加者に出会えば、重曹一つでは、確実に死んでいて乃亜に呼ばれた名前が一つ増えていた事だろう。
だが、殺し合いは24時間以上続く中で、そろそろ行動を起こさねば不味いと、幼いかなにも分かっていたことで、勇気を出して辺りを散策したところ、殺し合いには乗ってなさそうな二人を見付けた。
サーヴァントだの、極道だの、真祖の吸血鬼だの、エンジェロイドだの、二―ドレスだの、危険人物てんこ盛りの中に、重曹一つで挑まざるを得なくなった女である。
この一時間の中、14人死んでる中で彼女はとても幸運なことに、誰とも出会わずに生き延びることが出来た。
悪意ある参加者に出会えば、重曹一つでは、確実に死んでいて乃亜に呼ばれた名前が一つ増えていた事だろう。
だが、殺し合いは24時間以上続く中で、そろそろ行動を起こさねば不味いと、幼いかなにも分かっていたことで、勇気を出して辺りを散策したところ、殺し合いには乗ってなさそうな二人を見付けた。
(一人は左手、気持ち悪いけど……贅沢言ってられないわね)
「なんだ? 藪から棒に……武器なんて、みんなに支給されてるだろ」
「……重曹しか、なかったの」
「重曹だァ?」
勝次が間の抜けた声を上げた。
重曹ってあれだ、洗濯で使うやつ、母ちゃんも使ってた気がする。
昔の記憶を掘り下げていくと、そんな懐かしい思い出が蘇るが、とても戦いに役立つとは思えない。
重曹ってあれだ、洗濯で使うやつ、母ちゃんも使ってた気がする。
昔の記憶を掘り下げていくと、そんな懐かしい思い出が蘇るが、とても戦いに役立つとは思えない。
「私は有馬かな、十秒で泣ける天才子役、当然知ってるわよね? 殺し合いなんかしてないわ。だから、守ってちょうだい。
次の撮影が明日に控えてるんだから、怪我だってするわけにはいかないし、脚本だってちゃんと読み込まなきゃいけないんだから、私早く帰りたいの」
次の撮影が明日に控えてるんだから、怪我だってするわけにはいかないし、脚本だってちゃんと読み込まなきゃいけないんだから、私早く帰りたいの」
「えぇ……殺し合いなんかオレもやってないけど……すっごい上から目線だなぁ……」
「おい、龍亞、こんな奴放っておいて行こうぜ。泣くだけならヒー坊だって出来るぜ」
「ちょ、待ちなさい! お願いだから、待って!! っていうか、ヒー坊って何? 自分の左腕の出来物に名前付けてるの? キモッ!」
「なんだと、この野郎ォ!! ヒー坊を馬鹿にすんな!」
「いやああああ! 愛着湧いてる!!?」
「龍亞……こいつ、ぶん殴っていいか?」
「か、顔はやめて……って……いやああああああ、何? 何よ、あの血の海はァ……!!」
勝次から庇うように顔を背けた瞬間、視界に入ったのは割戦隊の成れの果て。
「そ、それは……」
龍亞の中で、つい数分前に繰り広げられた血生臭い惨殺劇が思い起こされる。
自分たちの身を守るために仕方なかったとはいえ、自分は既に人を殺めてしまったこと。
勝次だって、同じように手を殺めているのに、自分だけ罪悪感に押し潰されていることが逆に自己中心的な思考なようで、自分が嫌になってくる。
自分たちの身を守るために仕方なかったとはいえ、自分は既に人を殺めてしまったこと。
勝次だって、同じように手を殺めているのに、自分だけ罪悪感に押し潰されていることが逆に自己中心的な思考なようで、自分が嫌になってくる。
「やっぱ、危険人物じゃない! 来ないでぇ!!」
「馬鹿、騒ぐな! 今、説明を……ゲホッ、重曹を投げんな!」
「……殺したんだ。オレが……あいつら、本気で殺しに来てて……それを楽しんでた。オレも妹がもしここに来てて、あいつらに殺されたらって思ったら……怖くなって殺したんだ」
「龍亞……」
「……」
パニックになって騒いでいたかなが落ち着きを取り戻し一転して静かになった。
「……分かった」
「し、信じるのかよ……? 自分で言うのもなんだけど、俺達、今結構怪しいけど」
「演技じゃないでしょ? あの龍亞って子の言う事も、あんたのあの子を気遣ってる顔も……もし演技なら大した役者よ」
かなは子役として、驕り慢心し天狗になっていたが、演技という仕事に対しては何よりも真摯に携わってきた。
だから、目の前の少年が自分を偽っているわけではないのは、その繊細な機微を見ることで察することが出来た。
だから、目の前の少年が自分を偽っているわけではないのは、その繊細な機微を見ることで察することが出来た。
「ありがとう……かな」
龍亞の少し憑き物が落ちたような顔を見て、かなもここが本当に殺し合いの場なのだと理解させられる。
自分がここまで生き残れたのは、本当に偶々運が良かっただけだ。もし、先にこの死んでる連中がかなと出会ったら、重曹で戦わなければならなくなっていた。無理だ、死ぬ。
仮に武器を持たされても、今度は目の前の少年みたいに、相手を殺めたという深い傷を負わされる。
自分がここまで生き残れたのは、本当に偶々運が良かっただけだ。もし、先にこの死んでる連中がかなと出会ったら、重曹で戦わなければならなくなっていた。無理だ、死ぬ。
仮に武器を持たされても、今度は目の前の少年みたいに、相手を殺めたという深い傷を負わされる。
「そうだ。あんた達のこと信じるから、名前、教えて」
「……そっか、名前まだ言ってねェな。……俺は―――」
――――――――
「吸血鬼……デュエルモンスターズ……? 何それ」
「やっぱり……オレも、星野アイなんて人が殺された事件も知らないし、かなも別のパラレルワールドから来てるのかも」
「話、改めて聞いてみると、年代も全然違うしな」
「やっぱ、アンタ達、私を騙そうと……」
「さっきは演技じゃないって言ってたろ?」
「ぐぬぬ……」
自己紹介を終えてから、三人は改めて、それまでの自分達の殺し合いに巻き込まれる以前の敬意を話し合っていた。
「じゃあ、この首輪も……外すにしても、別の世界の技術を使われてるのかもしれないのよね?」
「だと思う。……だから、これから色んな人達に会って、情報を交換しないといけないんじゃないかな。オレ達だけじゃ、無理だ」
「こっから先は、みんなで協力しなきゃいけないってことだな。かな、お前、協調性を大事にしろよ?」
「う、うるさいわね……」
「だと思う。……だから、これから色んな人達に会って、情報を交換しないといけないんじゃないかな。オレ達だけじゃ、無理だ」
「こっから先は、みんなで協力しなきゃいけないってことだな。かな、お前、協調性を大事にしろよ?」
「う、うるさいわね……」
協調性という言葉が、かなの中で突き刺さった。
かなも子役を続ける中で、普通の子供以上に人生経験を積み重ねてきた。
だから、歳を重ね成長する度、自分の需要が徐々に下がってきている事にも薄々は気付いていた。
今はまだいいが、少なくとも、ピークを過ぎた時、天才子役というブランドが賞味期限を迎えた時にどうなるか。
かなも子役を続ける中で、普通の子供以上に人生経験を積み重ねてきた。
だから、歳を重ね成長する度、自分の需要が徐々に下がってきている事にも薄々は気付いていた。
今はまだいいが、少なくとも、ピークを過ぎた時、天才子役というブランドが賞味期限を迎えた時にどうなるか。
(でも、稽古はずっと続けてきたし……私は……)
その時、本当に仕事を貰えるほど、周りの人間と信頼関係を築けているのだろうか。
「割戦隊の首輪、5個ある。これを全員で別けて持とう。
かなと龍亞が2個ずつ、俺が1個だ」
かなと龍亞が2個ずつ、俺が1個だ」
「う、うん」
「もし、誰かやられても……残った誰かが、これを外せる技術を持った人に渡すってこと?」
「そうだ、龍亞」
情報を交換する前、勝次が、かなと龍亞と一緒に物陰へ押しやった後、赤ん坊の泣き声と共に首輪を回収してきた。
かなも龍亞も、言及はしないが、あの死体から首を切断し、首輪を取ってきたのは明らかだった。
これが少し前まで、生きた人の首に嵌められていたと考えると気が滅入ってしまう。
かなも龍亞も、言及はしないが、あの死体から首を切断し、首輪を取ってきたのは明らかだった。
これが少し前まで、生きた人の首に嵌められていたと考えると気が滅入ってしまう。
「……あくまで、もしもの時の為だ。安心しろ、お前らしぶとそうだしな。そう簡単には死なねェよ」
話は纏まった。出来る限り多くの参加者に接触し、首輪を外せそうな技術者を見つけ出す。殺し合いに逆らう参加者も味方に出来れば心強い。
危険はあるが、禁止エリアの追加を考えると、行動は可能な限り早い方が良い。
危険はあるが、禁止エリアの追加を考えると、行動は可能な限り早い方が良い。
「当り前よ。私、こんなところで絶対死なないんだから……重曹舐めたって生き延びるわよ!!」
まだまだ、かなは演技の仕事がしたい。挑戦したい作品だって一杯ある。こんな、訳の分からない殺し合いで死ぬ訳にはいかない。
「へへっ、良い心がけだぜ!」
この、鼻持ちならない高飛車な女に、勝次は明るく笑い返した。
かなには夢がある。龍亞にだって、沢山の可能性の未来だって残されている。
何より、まだまだ二人とも子供だ。
かなには夢がある。龍亞にだって、沢山の可能性の未来だって残されている。
何より、まだまだ二人とも子供だ。
(左吉は子供のまま死んじまった……そんなのは……うんざりだ)
だから、もう……死なせたくない。
【H-2/1日目/深夜】
【山本勝次@彼岸島 48日後…】
[状態]健康
[装備]ヒー坊@彼岸島 48日後…(自前)
[道具]基本支給品、ランダム支給品1~3、割戦隊の首輪×1
[思考・状況]基本方針:クソみてェな殺し合いをぶっ潰す。
1:無害な子供も保護して家に帰してやりたい。
2:首輪を外せる参加者を見つけ出す。殺し合いに乗らない奴も味方にしたい。
[備考]
少なくとも、血の楽園突入以降からの参戦です。
遊戯王5D's&当時のかな目線の【推しの子】世界について、大まかに知りました。
[状態]健康
[装備]ヒー坊@彼岸島 48日後…(自前)
[道具]基本支給品、ランダム支給品1~3、割戦隊の首輪×1
[思考・状況]基本方針:クソみてェな殺し合いをぶっ潰す。
1:無害な子供も保護して家に帰してやりたい。
2:首輪を外せる参加者を見つけ出す。殺し合いに乗らない奴も味方にしたい。
[備考]
少なくとも、血の楽園突入以降からの参戦です。
遊戯王5D's&当時のかな目線の【推しの子】世界について、大まかに知りました。
【有馬かな@【推しの子】】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、重曹@現実、割戦隊の首輪×2
[思考・状況]基本方針:重曹舐めてでも生き延びる。
1:勝次、龍亞に同行して、首輪を外せる参加者を探す。
[備考]
幼年期時代からの参戦です
遊戯王5D's、彼岸島世界について大まかに知りました。
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、重曹@現実、割戦隊の首輪×2
[思考・状況]基本方針:重曹舐めてでも生き延びる。
1:勝次、龍亞に同行して、首輪を外せる参加者を探す。
[備考]
幼年期時代からの参戦です
遊戯王5D's、彼岸島世界について大まかに知りました。
(……なあ、勝次……どうして、お前だけ首輪、一個なんだよ)
首輪は5個しかない以上、3人で割り切れないのは分かる。だが、龍亞は何故、勝次が1個だけなのか疑問だった。
『誰かやられても……残った誰かが、これを外せる技術を持った人に渡す』
自分で言ったことだが、これは逆を言えば首輪の数が少ない者ほど、危険な立ち回りをして、犠牲になる確率が高くなるという事にもなるのではないか。
生存率が高い者に首輪の数をより多く渡せば、それこそ首輪解析に有力な参加者に首輪が渡る可能性も高い。
生存率が高い者に首輪の数をより多く渡せば、それこそ首輪解析に有力な参加者に首輪が渡る可能性も高い。
もしかして勝次は有事の際に、自分が犠牲になってでも、龍亞とかなを逃がそうとしているのかもしれない。
最も危険な役目を、一人で請け負うつもりなのかもしれない。
それを、勝次に指摘しようとして……かなが傍に居る事で躊躇われた。
少なくとも、かなはいざという時に守らなきゃいけない事は分かっている。
だから、下手に自分の推測を口にして、彼女に引け目を与えてはいけない。
少なくとも、かなはいざという時に守らなきゃいけない事は分かっている。
だから、下手に自分の推測を口にして、彼女に引け目を与えてはいけない。
(……お前だって、まだ子供だろ……?)
何故、勝次は自分だけ線引きするんだと、龍亞は声に出せないもどかしさを内に留めた。
【龍亞@遊戯王5D's】
[状態]健康、殺人へのショック(極大)
[装備]パワー・ツール・ドラゴン@遊戯王5D's(日中まで使用不可)
[道具]基本支給品、ランダム支給品0~2、割戦隊の首輪×2
[思考・状況]基本方針:殺し合いはしない。
1:妹の龍可が居れば探す。首輪を外せる参加者も探す。
2:勝次が心配。
[備考]
少なくともアーククレイドルでアポリアを撃破して以降からの参戦です。
彼岸島、当時のかな目線の【推しの子】世界について、大まかに把握しました。
[状態]健康、殺人へのショック(極大)
[装備]パワー・ツール・ドラゴン@遊戯王5D's(日中まで使用不可)
[道具]基本支給品、ランダム支給品0~2、割戦隊の首輪×2
[思考・状況]基本方針:殺し合いはしない。
1:妹の龍可が居れば探す。首輪を外せる参加者も探す。
2:勝次が心配。
[備考]
少なくともアーククレイドルでアポリアを撃破して以降からの参戦です。
彼岸島、当時のかな目線の【推しの子】世界について、大まかに把握しました。
003:俺が死ぬまで治らない | 投下順に読む | 005:剥がれ落ちた羽にも気付かずに |
時系列順に読む | ||
092(候補作採用話):レイプ | 山本勝次 | 046:星に願いを |
龍亞 | ||
240(候補作採用話):これはバトロワであっても、リアリティードラマではない | 有馬かな |