風見雄二は親殺しだ。
母親を助けるために。その一心で『殺してやる』と覚悟を決めて、明確な殺意を持って酒の瓶で父親の頭部を殴打。
母親を助けるために。その一心で『殺してやる』と覚悟を決めて、明確な殺意を持って酒の瓶で父親の頭部を殴打。
『文字を書いたり、箸を持つのは右……。ボールを投げたり、バッターボックスに立つ時は左……。じゃあ、人を殺す時はどっちの手?』
姉の一姫がそんなことまできょういくしていたから、しっかりと右手で。
父親ははっきり言って、クズだ。
天才である姉の一姫ばかりを大切に扱い、雄二に対しては極めて雑に。
彼に与えられたものが食パン1枚だったことを一姫が知ると、それ以降は食事が惣菜パンにグレードアップした。
天才である姉の一姫ばかりを大切に扱い、雄二に対しては極めて雑に。
彼に与えられたものが食パン1枚だったことを一姫が知ると、それ以降は食事が惣菜パンにグレードアップした。
一姫はブラコンだ。弟の雄二を愛している。
そして一姫は天才で、家族の誰も逆らえない。彼女こそ家計を支える収入源であり、この家で誰よりも優れた存在だ。
雄二は風呂場で性的な悪戯をされたりもしたが、それでも姉の愛は本物で。そして風見一姫がいるから、こんな家庭でもなんとか成り立っていた。そんな姉に恐怖心がないと言えば嘘になるが、雄二も彼女に依存していたのもまた事実。
そして一姫は天才で、家族の誰も逆らえない。彼女こそ家計を支える収入源であり、この家で誰よりも優れた存在だ。
雄二は風呂場で性的な悪戯をされたりもしたが、それでも姉の愛は本物で。そして風見一姫がいるから、こんな家庭でもなんとか成り立っていた。そんな姉に恐怖心がないと言えば嘘になるが、雄二も彼女に依存していたのもまた事実。
ゆえに姉の一姫が死んだ時、家庭はすぐに崩壊した。
父親は酒に溺れ、母親と雄二を虐待するように。
あまりにも理不尽な日々を脱するために雄二と母親は家出をした。
父親は酒に溺れ、母親と雄二を虐待するように。
あまりにも理不尽な日々を脱するために雄二と母親は家出をした。
それから雄二は母親一人に養われた。
父親が存在しない、安らかな日々。天国のような日常。
だが天国はすぐに崩壊し、父親という悪魔が再びやってきた。彼はいきなり襲来して母親を性的に襲い始めた。
父親が存在しない、安らかな日々。天国のような日常。
だが天国はすぐに崩壊し、父親という悪魔が再びやってきた。彼はいきなり襲来して母親を性的に襲い始めた。
だから風見雄二はこの時、初めて殺人という罪を背負ったのだ。
母親を助けるために、立ち向かった。
それは少年にとって勇気ある一歩である。逃げてばかりじゃ何も変えられないから――だから雄二は立ち向かったのだ。
そして殺人者としての一歩でもあった。どんな動機があるにせよ、殺人は殺人。
たとえゲスな男が相手で、家族のためであっても。風見雄二はその瞬間、自らの手を血で汚してしまったのだから。
母親を助けるために、立ち向かった。
それは少年にとって勇気ある一歩である。逃げてばかりじゃ何も変えられないから――だから雄二は立ち向かったのだ。
そして殺人者としての一歩でもあった。どんな動機があるにせよ、殺人は殺人。
たとえゲスな男が相手で、家族のためであっても。風見雄二はその瞬間、自らの手を血で汚してしまったのだから。
『お母さん、逃げよう』
それでも雄二は逃げることを選んだ。
せっかく母親と平和な時間を、手に入れたのだから。
せっかく母親と平和な時間を、手に入れたのだから。
『どこまで逃げればいいんだろうね……。いつまで逃げればいいのかしら……』
それでも母親はもう精神的に限界で。
『ユウちゃん先に逃げなさい……。お母さん、後から行くから』
まだ子供だった雄二には、何もわからなくて。
彼が家を出ると――母親は自殺した。
彼が家を出ると――母親は自殺した。
『ごめんね、ユウちゃん。ごめんなさい』
母親は遺書の中で、必死に雄二に謝っていた。
……こうして彼は父を殺し、母親を自殺へ追い込んでしまった。
……こうして彼は父を殺し、母親を自殺へ追い込んでしまった。
それから桐原礼と名乗る男に身元を引き取られた。
女装をさせられ、体を触られ。
雄二はとても女装が似合い、長いウィッグを被ったその姿は皮肉にも姉の一姫に似ていた。
女装をさせられ、体を触られ。
雄二はとても女装が似合い、長いウィッグを被ったその姿は皮肉にも姉の一姫に似ていた。
そしてまた殺人を繰り返す。
それを気に入った桐原礼――ヒースオスロは自身が設立したテロリスト養成機関に雄二を通わせた。
それを気に入った桐原礼――ヒースオスロは自身が設立したテロリスト養成機関に雄二を通わせた。
そこではオスロのお気に入りということで疎まれ、嫌がらせだって受けた。
それでもマーリンという少女は手を差し伸べてくれた。
ひたすら訓練に励み、卒業試験はマーリンとの殺し合い。
彼女を殴った時――父親のしてきたことを思い出して。彼と同じになりたくなくて。
それでもマーリンという少女は手を差し伸べてくれた。
ひたすら訓練に励み、卒業試験はマーリンとの殺し合い。
彼女を殴った時――父親のしてきたことを思い出して。彼と同じになりたくなくて。
雄二は負けた。
『ごめんなさい……。なんでこんなことになっちゃったんだろうね』
卒業試験が終わった後、マーリンは母親と同じ言葉を口にした。聞きたくない言葉だった。
『人を傷つけないで生きていければ……それが一番いいのにね……』
そしてマーリンは二度と顔を合わせることがなかった。
後から看護師にマーリンが初仕事でミスして死亡したことだけが、伝えられた。
後から看護師にマーリンが初仕事でミスして死亡したことだけが、伝えられた。
現実はあまりにも残酷だ。
風見雄二という少年はそんな過酷な人生を歩んできた。
風見雄二という少年はそんな過酷な人生を歩んできた。
マーリンの死亡後、卒業のための課題として彼は暗殺をした。
女装をして、隙を突いての殺害。雄二はたかだか子供と言えども鍛錬を積んできた存在だ。大人相手でも殺せる。
女装をして、隙を突いての殺害。雄二はたかだか子供と言えども鍛錬を積んできた存在だ。大人相手でも殺せる。
正体すら掴まれることない、見事な暗殺。
このままでは風見雄二は間違いなく最低最悪の殺戮兵器になっていただろう。
このままでは風見雄二は間違いなく最低最悪の殺戮兵器になっていただろう。
――だがオスロの屋敷で日下部麻子に発見。保護されたことで彼の人生は大きく変わる。
『いいか?私がお前を拾う神、神様だ』
神様。
麻子のその言葉は、大袈裟に言っているようでもあるが――あながち間違いではない。
事実。風見雄二という少年に正しき道を歩ませたのは、彼女なのだから。
麻子のその言葉は、大袈裟に言っているようでもあるが――あながち間違いではない。
事実。風見雄二という少年に正しき道を歩ませたのは、彼女なのだから。
それから雄二は麻子と、彼女と仲の良いJBによって育てられた。
最初こそ死んだ瞳をしていたが……彼女たちと過ごしていくにつれてその目に光を取り戻してゆく。
最初こそ死んだ瞳をしていたが……彼女たちと過ごしていくにつれてその目に光を取り戻してゆく。
そして雄二は犬を与えられた。
犬とは人懐っこい生き物だ。当然、雄二にもすぐに懐いた。
ジョンと名付けられたその犬は雄二と共に過ごし、成長する。
犬とは人懐っこい生き物だ。当然、雄二にもすぐに懐いた。
ジョンと名付けられたその犬は雄二と共に過ごし、成長する。
麻子に特訓された際に『力だけじゃねえ、頭も使え!使えるものは何でも使え!!』と言われてジョンの名を呼び、噛み付いてもらうことでサポートされたこともあった。
ジョンは雄二にとって大切な家族だ。
ジョンは雄二にとって大切な家族だ。
だが――ある日、熊から家を襲撃されてジョンを攫われた。
武器を取りに行っている間に――ジョンは首根っこをクマに噛まれ……おそらく、即死していた。
それでも雄二はジョンを取り返そうとして――。
だってジョンは雄二にとって大切な家族だから。
武器を取りに行っている間に――ジョンは首根っこをクマに噛まれ……おそらく、即死していた。
それでも雄二はジョンを取り返そうとして――。
だってジョンは雄二にとって大切な家族だから。
かつての地獄のような日々。そこへ光を齎してくれたのが麻子とJB。そしてジョンだ。
そんな雄二がようやく手に入れた――大切な日常(家族)なのだ。
そんな雄二がようやく手に入れた――大切な日常(家族)なのだ。
だから雄二は、クマと戦った。
一度は追い詰められたが――殺害することに躊躇しないというスイッチが入った瞬間。
彼はクマの目を、容赦なくナイフで切り裂いた。
一度は追い詰められたが――殺害することに躊躇しないというスイッチが入った瞬間。
彼はクマの目を、容赦なくナイフで切り裂いた。
そのまま熊を殺すことも出来た。
後は銃を撃つだけだったが――。
後は銃を撃つだけだったが――。
「こいつらに食わせる気だった……。俺の犬を……」
ジョンを殺した熊は親で。
その子供が、雄二の視界に入ってしまったから。
その子供が、雄二の視界に入ってしまったから。
「どうして、俺の犬なんだよ……」
雄二は、熊を撃つことが出来なかった。
だが麻子はそんな雄二を『それでいい。お前はそれでいいんだ』と抱き締めた。
大切な家族を守れなかった雄二は、ジョンの墓の前で誓う。
『麻子のように強くなりたい』
そんな雄二に――麻子は今後、彼の呪いになったともいえる言葉を掛けた。
――お前は私の命令なければ虫や鹿も殺せない。
防衛省が貴様のようなヘタレを一人前にするために、いくら金を使ったと思っている。すべて国民の血税で賄われていることを肝に銘じろ
防衛省が貴様のようなヘタレを一人前にするために、いくら金を使ったと思っている。すべて国民の血税で賄われていることを肝に銘じろ
貴様には、貴様を育てるために支払われた費用に見合う働きをするまでは、勝手に死ぬことすら許可されていない。
一人十衛!!
貴様は国民10人の命を救うことと引き換えに、始めて死を許される。
5人にまけてやる!国民5人を救うまで、野垂れ死にすることは許さん
他人のためには迷わず引き金を引ける人間になれ。
一人十衛!!
貴様は国民10人の命を救うことと引き換えに、始めて死を許される。
5人にまけてやる!国民5人を救うまで、野垂れ死にすることは許さん
他人のためには迷わず引き金を引ける人間になれ。
――そして。
そんな言葉を胸に刻んで暫くしてから――雄二はこの殺し合いに巻き込まれた。
そんな言葉を胸に刻んで暫くしてから――雄二はこの殺し合いに巻き込まれた。
○
「まさかいきなり、こんなものに巻き込まれるとはな……」
動揺こそしていないが雄二の声には、緊張感が含まれていた。
修羅場は踏んできた。普通の子供とは大きくかけ離れた少年――それが風見雄二だ。
だが。
だがそれでも、なにもかもが唐突過ぎるし、目の前で命を散らされたのだ。
これが成長した後の雄二ならばもっと平常心を保てたが、まだ幼い子供の雄二にはあまりにも辛い現実だった。
修羅場は踏んできた。普通の子供とは大きくかけ離れた少年――それが風見雄二だ。
だが。
だがそれでも、なにもかもが唐突過ぎるし、目の前で命を散らされたのだ。
これが成長した後の雄二ならばもっと平常心を保てたが、まだ幼い子供の雄二にはあまりにも辛い現実だった。
こんな状況でも正気を保てるだけでも、子供としてはすごい方だろう。幾度となく死を見てきたから、現実から目を逸らさず。大きく取り乱すこともなく振る舞うことが出来る。
「兄弟愛……」
雄二にとってルフィとエースは赤の他人だし、彼らのことは全くわからない。
しかし乃亜の言葉から察するにあの二人が兄弟だということはわかった。
しかし乃亜の言葉から察するにあの二人が兄弟だということはわかった。
兄弟。家族。
――雄二はこれまで姉と母親と犬を失い。父親を殺した。
だからそういう言葉に対して無関心というわけじゃない。……兄弟共々、乃亜に殺された敗北者を哀れだと思う。
――雄二はこれまで姉と母親と犬を失い。父親を殺した。
だからそういう言葉に対して無関心というわけじゃない。……兄弟共々、乃亜に殺された敗北者を哀れだと思う。
「……悪趣味なやつだな」
雄二が乃亜に嫌悪感を示す。
別にこういうゲスが珍しいとは言わない。彼は人生で何度もクズを見てきた。
――だからといって彼らを許容する気もない。
別にこういうゲスが珍しいとは言わない。彼は人生で何度もクズを見てきた。
――だからといって彼らを許容する気もない。
「見ていろ、乃亜。お前は俺が倒す――」
雄二の決断は早かった。
優勝特典?そんなものに興味はない。
風見雄二はこの殺し合いで乃亜を打倒し、麻子達の待つ日常へ帰ると決めたのだから。
優勝特典?そんなものに興味はない。
風見雄二はこの殺し合いで乃亜を打倒し、麻子達の待つ日常へ帰ると決めたのだから。
「あんたはこの世界(ゲーム)の神らしいが、俺にはもう麻子っていう神がいるんだ」
灰色の迷宮から楽園へ至るはずだった少年は――その途中で、殺し合いに身を投じた。
○
「えっ……。今の、なんだったの……?」
条河麻耶は怒りや悲しみという感情を抱かなかった。
というよりも、あまりにも現実離れし過ぎて頭が追い付いてない。
というよりも、あまりにも現実離れし過ぎて頭が追い付いてない。
「ゲームっていうには、いくらなんでもやり過ぎじゃね……?ドッキリにしても限度があるぞ……」
マヤはこれまで殺戮や暴力とは無縁の日常を歩んできた。
笑顔溢れる木組みの街で、みんなで楽しく幸せに――。
そんな日常が、素晴らしき日々だなんて。かけがえのないものだなんて思わずに。
いつまでもずっと続くのが当たり前だなんて――。
笑顔溢れる木組みの街で、みんなで楽しく幸せに――。
そんな日常が、素晴らしき日々だなんて。かけがえのないものだなんて思わずに。
いつまでもずっと続くのが当たり前だなんて――。
「おーい!チノ、メグ!!」
あまりにも現実離れして、頭が追い付かないけど。
それでもやっぱり、ちょっぴり不安で。
大切な親友を――チマメ隊の二人の名を呼んだ。
だが返事はない。チマメ隊だけじゃなくて――ココアも、リゼも。
誰もマヤの声に反応しない。
それでもやっぱり、ちょっぴり不安で。
大切な親友を――チマメ隊の二人の名を呼んだ。
だが返事はない。チマメ隊だけじゃなくて――ココアも、リゼも。
誰もマヤの声に反応しない。
「…………」
ゴクリ、と生唾を飲み込む。
怖い。何も知らない場所にいきなり拉致されて、連れてこられたのだ。恐怖感に襲われるのが当然である。
怖い。何も知らない場所にいきなり拉致されて、連れてこられたのだ。恐怖感に襲われるのが当然である。
「ちぇ~。みんなして私をからかおうとしてるんだな~!?」
空元気。
そんな言葉が今のマヤにはお似合いだろう。
......はっきり言って怖い。人があっさりと死んだ、あの生々しい光景をドッキリだとか、悪戯だとか。そういう言葉で片付けるなんて無理だ。
そんな言葉が今のマヤにはお似合いだろう。
......はっきり言って怖い。人があっさりと死んだ、あの生々しい光景をドッキリだとか、悪戯だとか。そういう言葉で片付けるなんて無理だ。
それにマヤは自分の友達がそんなことするわけないと信じている。
木組みの街で。優しい世界で育ったみんなは――冗談でもこんなことしない。するはずがない。そういう分別は付くはずだ。
木組みの街で。優しい世界で育ったみんなは――冗談でもこんなことしない。するはずがない。そういう分別は付くはずだ。
それでもあんな現実、受け止められなくて。
怒りや哀しみはあまり湧いてこないが――恐怖感に苛まれる。
怒りや哀しみはあまり湧いてこないが――恐怖感に苛まれる。
もしもこれが本当に殺し合いだったら――。
チマメ隊のみんなや、リゼ達が巻き込まれてたら――。
チマメ隊のみんなや、リゼ達が巻き込まれてたら――。
「――それは違うな」
そんなマヤに、一人の少年が声を掛けた。
彼の名は風見雄二。子供の身でありながら、過酷な人生を送ってきたせいであまりにも『普通の子供』とは掛け離れてしまった存在。
彼の名は風見雄二。子供の身でありながら、過酷な人生を送ってきたせいであまりにも『普通の子供』とは掛け離れてしまった存在。
マヤは頭が追い付かず、なによりこんな現実を認めたくなくて。
表面上しか取り繕えなかった滑稽な彼女は――雄二の接近にすら気付けなかった。
表面上しか取り繕えなかった滑稽な彼女は――雄二の接近にすら気付けなかった。
「え?それってどういうこと??」
マヤが首を傾げる。
だがその表情に余裕はなくて。本当はこの現実を理解しているということを雄二は察する。
だがその表情に余裕はなくて。本当はこの現実を理解しているということを雄二は察する。
もしも彼女の茶番に付き合えば――もしかしたらマヤはこれ以上、悩まなくて済むかもしれない。天真爛漫な笑顔を振る舞き、現実から目を逸らすことだろう。
――だがその先に待っているものは、間違いなく死だ。
雄二にとって目の前の少女は赤の他人だが――
雄二にとって目の前の少女は赤の他人だが――
『一人十衛!!
貴様は国民10人の命を救うことと引き換えに、始めて死を許される。
5人にまけてやる!国民5人を救うまで、野垂れ死にすることは許さん』
貴様は国民10人の命を救うことと引き換えに、始めて死を許される。
5人にまけてやる!国民5人を救うまで、野垂れ死にすることは許さん』
麻子の言葉があるから。
それにこのまま見捨てた結果、死なれるというのも――少し胸糞が悪いから。
それにこのまま見捨てた結果、死なれるというのも――少し胸糞が悪いから。
(俺は麻子みたいにはなれない。でも今ここに、救える命があるのなら――)
「これは誰かが仕組んだ悪戯やドッキリじゃない。……正真正銘の殺し合いだ」
「うーん。でもさ、これが本物の殺し合いなんて証拠はないじゃん」
「じゃあ人が死んだあの光景はなんだ?」
「それは……きっと何か手の込んだトリックとかあって……」
「うーん。でもさ、これが本物の殺し合いなんて証拠はないじゃん」
「じゃあ人が死んだあの光景はなんだ?」
「それは……きっと何か手の込んだトリックとかあって……」
そんなふうにあまりにも馬鹿げたことを言い始めたマヤを。雄二は哀れみを含んだ視線で見つめる。
……きっとマヤの反応こそが、子供として当たり前の反応なのだろう。
風見雄二はここに来るまで傷付き過ぎて――だから覚悟を固めるまでも早かった。
……きっとマヤの反応こそが、子供として当たり前の反応なのだろう。
風見雄二はここに来るまで傷付き過ぎて――だから覚悟を固めるまでも早かった。
だがみんながみんな、雄二みたいに悲惨な人生を歩んでるわけじゃないのだ。……そもそも子供なんて本来、死という概念とは程遠く日常を過ごすものだ。
「マヤ。これが見えるか?」
「銃でしょ?それくらい――」
「銃でしょ?それくらい――」
パン、パン。
マヤが言い終えるより早く雄二は樹木に発砲した。
たったそれだけ。たったそれだけで、ぽっかりと穴が――銃弾の貫いたあとが2つ見える。
マヤが言い終えるより早く雄二は樹木に発砲した。
たったそれだけ。たったそれだけで、ぽっかりと穴が――銃弾の貫いたあとが2つ見える。
「ああ、銃だ。本物の実銃だ」
瞬間――流石にマヤの表情が青ざめた。
バラエティの銃にしては破壊力が高すぎるし、なによりこの子供の技術。そして精神力だ。
彼は当たり前のように銃を撃った。何の躊躇いもなく引き金を引いた。
バラエティの銃にしては破壊力が高すぎるし、なによりこの子供の技術。そして精神力だ。
彼は当たり前のように銃を撃った。何の躊躇いもなく引き金を引いた。
「これで現実がわかったか?」
「……うん。でも、どうしてそんなことを教えてくれたの?」
「……うん。でも、どうしてそんなことを教えてくれたの?」
純粋な疑問だった。
これほど強いのなら、優勝を目指すのも難しくないようにマヤには思える。
これほど強いのなら、優勝を目指すのも難しくないようにマヤには思える。
「――俺の名前は風見雄二。この殺し合いで5人を救うのが俺の目的で、偶然にもお前が一人目だったというだけだ」
「それはすげー目標だね!わたしはマヤ。チマメ隊の条河麻耶!」
「……マヤ。お前は何かの特殊部隊だったのか?」
「まあ銃は撃てないけどね」
「それはすげー目標だね!わたしはマヤ。チマメ隊の条河麻耶!」
「……マヤ。お前は何かの特殊部隊だったのか?」
「まあ銃は撃てないけどね」
マヤは素人だ。
そもそもチマメ隊なんて何か特殊な部隊というわけじゃないし、戦うこともない。
そもそもチマメ隊なんて何か特殊な部隊というわけじゃないし、戦うこともない。
「その代わりわたしには、これがあるみたいだけどさ」
マヤは一振の剣を取り出した。
その名も戦雷の聖剣。戦場を照らす光になりたいという渇望により強化される、戦乙女(ヴァルキュリア)の剣。
その名も戦雷の聖剣。戦場を照らす光になりたいという渇望により強化される、戦乙女(ヴァルキュリア)の剣。
「ふむ。誇り高き戦乙女の剣、か……」
マヤに支給された支給品の説明を読み、彼女の元気な姿を見る。
……なんとも頼りない姿だが、仲間を守るという気概を感じる。
彼女ならあの時のように――ジョンを失った時のようにならないと思えた。
……なんとも頼りない姿だが、仲間を守るという気概を感じる。
彼女ならあの時のように――ジョンを失った時のようにならないと思えた。
そして二人の子供は、灰色の迷宮を彷徨う
ちなみにこの際、雄二は支給されたもう1つの武器であるパンプキンを使用していない。今はだたかだか樹木相手に使う必要性を感じなかったのだろう
ちなみにこの際、雄二は支給されたもう1つの武器であるパンプキンを使用していない。今はだたかだか樹木相手に使う必要性を感じなかったのだろう
【風見雄二@グリザイアの果実シリーズ(アニメ版)】
[状態]:健康
[装備]:グロック17@現実
[道具]:基本支給品、浪漫砲台パンプキン@アカメが斬る!、ランダム支給品0~1
[思考・状況]基本方針:5人救い、ここを抜け出す
1:マヤに同行。保護する
2:パンプキンの性能を知りたい
[備考]
参戦時期は迷宮~楽園の少年時代からです
[状態]:健康
[装備]:グロック17@現実
[道具]:基本支給品、浪漫砲台パンプキン@アカメが斬る!、ランダム支給品0~1
[思考・状況]基本方針:5人救い、ここを抜け出す
1:マヤに同行。保護する
2:パンプキンの性能を知りたい
[備考]
参戦時期は迷宮~楽園の少年時代からです
【条河麻耶@ご注文はうさぎですか?】
[状態]:健康
[装備]:戦雷の聖剣@Dies irae
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2
[思考・状況]基本方針:チマメ隊やみんなと一緒に戦う
1:バラエティじゃないなら、わたしが戦わなきゃ!
2:雄二って何かリゼみたいなやつだよね。やっぱ強いのかな?
[備考]
[状態]:健康
[装備]:戦雷の聖剣@Dies irae
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2
[思考・状況]基本方針:チマメ隊やみんなと一緒に戦う
1:バラエティじゃないなら、わたしが戦わなきゃ!
2:雄二って何かリゼみたいなやつだよね。やっぱ強いのかな?
[備考]
161:絶対強者 | 投下順に読む | 178:壊れるほどに愛しても |
時系列順に読む | ||
START | 風見雄二 | 008:迷路の中、僕ら二人、空を目指す |
START | 条河麻耶 |