コンペロリショタバトルロワイアル@ ウィキ

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だれでも歓迎! 編集
追って来ない。
海馬コーポレーションを脱兎の勢いで飛び出し早数十分。
天を突き上げ聳え立つ海馬瀬人の城も、今では遠くの景色の一部。
背中へ刺さる殺意も皆無、自分達以外に生き物の気配は虫一匹だってありやしない。
振り返り暫しの警戒。
逃走の継続か交戦に移るか、どちらだろうと即座に動けるよう霊子を集中。

「……鬼ごっこする気は無かったってことかよ」

それでも追跡者が現れる様子は無く、本当に気を抜けると判断したらしい。
気怠さをため息に乗せて吐き出し、地べたへ乱雑に腰を下ろした。

斬り落とした参加者の頭部を弄び利用した挙句、エントランスの爆破という派手な真似に出た二人組。
褐色肌の少女はまだしも、銀髪の方は兎を追いかける狼にでもなりきってハンティングに興じるのではと考えたが。
存外、逃げた獲物への拘りは低いのか追跡はして来なかった。
今更ながら少々焦り過ぎていた自分が馬鹿に思えて、舌打ちを一つ零す。
クセの強い輩など、見えざる帝国(ヴァンデライヒ)の同僚で散々見慣れてるだろうに。
直前に感じた強者同士による霊圧の衝突に、緊張が解けなかった故か。

「うぅ~めがまわるよ~…」

或いは、抱き上げたちっぽけな命が原因か。

夢の世界で束の間の休息を取っていた筈が、意識を現実に引き戻され訳も分からぬ内に逃げる羽目になった。
飛廉脚を使った移動は、ジェットコースターも未体験の小恋には刺激が強い。
数時間前に暴風で吹き飛ばされた時と良い勝負だ。

尤もリルからすれば、逃走の際に出した速度はノロ過ぎると言ってもいい。
最早過去の称号であるがリルは星十字騎士団の一人だった身。
ユーハバッハの力を分け与えられたのは同じでも、一般聖兵とは一線を画す実力者だ。
単に聖文字を持つのみならず、滅却師の基本的な能力がより洗練されている。
霊子兵装の扱い、血装による能力向上の練度、そして飛廉脚の速度。
だが此度は実力が高過ぎる故に、自らへ枷を付ける必要に迫られた。
リル一人ならば全力のスピードを出したとて問題は無いが、小恋がいるなら話は別。
滅却師でもなければ死神でもない、正真正銘只の人間の幼子の体は耐えられない。
とはいえわざわざノロく走ってやった意味も無かったのだが。

もう一度舌打ちが零れそうになり、耳障りな声が聞こえ出す。
タイミングが良いのか悪いのか、乃亜による定時放送の時間だ。



「うぜぇ」

放送が終わって真っ先に口を付いて出るシンプルな罵倒。
6時間前の放送での口振りから予想していたが案の定、聞きたくも挑発を垂れ流された。
全く持って人を苛つかせるのにかけては天才的なガキだと、つくづく思う。

耳に入れたいとは微塵も思わない煽りの数々だが、必要な情報も手に入った。
禁止エリアは今の自分達に大きく影響する場所では無い。
死亡者も同様。
知人の名は一つも呼ばれず、小恋が言っていた連中も無し。
いい加減見れるようになったらしい名簿を開くと、小恋も画面を覗き込む。

ジジも、キャンディも、ミニィも、ついでにバンビもいない。
乃亜が始めたデスゲームの参加者は皆子供ばかり。
大半が現世で言う小学生か、精々が中学生辺りのガキ限定。
中身まで子供かはともかくとして、参加条件からジジ達は除外確実。
よりにもよって自分だけピンポイントで巻き込まれたのは、言ってやりたい文句と罵倒が山ほどある。

親しい者達はいないが知っている名前が一つもない訳ではなかった。

(こいつかよ…)

日番谷冬獅郎。
護廷十三隊の十番隊隊長は参加条件に合致する少年だ。
瀞霊廷襲撃の前に死神達の情報は伝達されたのもあって、日番谷を知ってはいる。
が、向こうからリルへの印象が良いか悪いかで言えば後者だろう。
元々敵同士だったのは当然として、何より日番谷は一度ジジの能力で支配下に置かれた。
自分をゾンビ化させた奴とつるんでいたリルへ友好的に接するとは、幾ら何でも有り得ない。
それこそ黒崎一護のような甘ったるい男でもない限り。

(ま…他の連中よりはまだマシか)

いざ対面となったら警戒はされるだろうが、問答無用で殺しに来る程の能筋では無い筈。
事態が事態だ、こっちが殺し合いに乗って無いと分かれば一時的な共闘くらいは承諾すると思いたい。
少なくとも、十一番隊のバーサーカーや十二番隊のマッドサイエンティストよりかはスムーズに事を運べる。
加えて京楽春水から叫谷での一件の報告を受けていれば、リルへの印象も幾らか和らいでいるだろう。
ジジがやらかした件については今だけ水に流して欲しいものだ。

(そういや、アイツはいないんだな)

思い出すのは褐色の肌をした一人の子供。
綱彌代時灘に従っていた、というよりは使われていた彦禰という名の霊王の器。
日番谷と同じく参加者の条件に当て嵌まるが、乃亜のお眼鏡に適わなかったのだろうか。
リル本人は彦禰へ思う所があるものの、不参加ならばこれ以上考える必要もない。

「むむむ……」

唸るような声に視線をくれてやれば、険しい表情でタブレットを睨む幼女が見えた。
こちらが何かを口にするより早くバッと顔を上げる。

「おねえちゃん…」

リルを見つめる顔付きたるや、一桁の年齢らしからぬ真剣さ。
知っている名前、それもリルと違って親しい人間のものが載っているのだろうか。
それなら流石に少しは真面目にもなるだろうなと、ありきたりな予想をし、

「かんじがいっぱいでよめません!」
「カッコ付けて言う台詞じゃねえだろ」

飛び出した内容に思わず真顔で返す。
深く考えなくても当然と言えば当然の話だ。
こんな1+1の問題を大真面目に取り組んでるだろう子供では、名簿の確認もままならない。
フリガナを付けてくれる親切さが乃亜にある筈も無く、大層面倒くさそうにもう一度名簿を隅から隅までチェック。
小恋が言っていた「みのりちゃん」を始め、知り合いが一人もいないのを伝える。

「よかったぁ…みのりちゃんたちはこわいめにあってなくて……」
「案外、お前がいない隙に別のガキに手を出してんのかもな」
「そんなことないもん!ほかのコにデレデレしないってやくそくしてくれたよ!」

頬を膨らませて反論する小恋を尻目に、今後の動きを考える。
とにかく日番谷とは会っておいて損はない。
金髪の痴女に、イカレた趣味のガキと組んでる褐色女。
まともの「ま」の字も知らない連中ばかりと遭遇する羽目になったが、ようやく話の通じる相手の存在を知れた。
それに日番谷なら、小恋を預ける相手としても申し分ない。
一護程甘くはないだろうけど、幼女を守るくらいの正義感は持ち合わせているだろう。
実力に関しても特記戦力に名は連ねなかったが、それでも隊長に上り詰めるだけの強さはある。
それなら小恋一人を守るくらいは問題無い。

「…………何考えてんだか」

と、そこまで思考を回し自分への呆れを吐き捨てる。
日番谷と組むのに不満はない、かといって別に協力して乃亜を倒そうなどと暑苦しい理由は含まれていない。
自身の生存の為に組んだ方が都合が良いから。
だというのに、いつの間にやら小恋を守れる参加者という方に理由がシフトし掛かってるではないか。
合理的とは言えないチョコラテのような甘ったるさ、口内に広がるのは吐き出しそうな苦い味。
優先順位を見誤る己への不快感。

「おねえちゃん…?」
「……」

こちらを見上げる幼女を無視し、太陽が見え隠れする空を睨む。
小恋を連れ歩き、何らかのメリットがあったとは正直言えない。
金髪の痴女との殺し合い、敵が繰り出す大規模な一撃との衝突を避け逃走に移った。
もし小恋がいなければ迎撃し、始末できたか或いは痛手を食らわせてやれたかもしれない。
海馬コーポレーションに現れた二人組。
自分一人ならもう少し冷静に動けただろうが、小恋の存在が逃走を急かし今に至る。

「……」

ジジ達のように戦闘で背中を任せられる奴じゃない。
戦えなくとも、首輪解除などで役に立つ頭脳も持っていない。
お人好しな参加者とスムーズに組める為に連れ歩いた。
だがそういった者と会えるまでにこいつと一緒にいたせいで、いらぬ災難が自分に降りかからないと何故言い切れる。
この先も小恋を連れて行くのは、果たしてマシな選択と言えるのか。

「……」

いっそここで首輪を手に入れるのも、悪い手ではないんじゃあないか。
周囲に霊圧は皆無。
今なら幼女一人を朝食にしたって、乃亜以外には分からない。
後で日番谷や善良な参加者に遭遇しても、リルが黙っていれば永遠に知る機会はない。
現世のガキ一人殺すくらい、駄菓子を噛み砕くのと同じだ。
ドーナツ一箱で繋がった薄っぺらい関係を自ら壊すか否か。
天秤が前者へと傾きを見せ――

「…………あ?」

ぷにっと、気の抜けた擬音が聞こえそうな感触。
自分の首に腕が回され、マシュマロのようなモノが頬に当たっている。

「えへへ…すりすり~」

視界に映る水色は数時間前に着替えた、魔術師の衣装。
むず痒くなるような甘ったるい匂いが鼻孔を擽る。
横目で見ると、何が楽しいのか悪戯っぽく微笑む見慣れた幼女の顔。
自分に頬を摺り寄せる小恋へ、次に言うべき言葉が出て来ない。

リルの視線に気付き頬を離すも、体勢は抱きついたまま。
互いの吐息が当たる程の至近距離で、満面の笑みを向ける。

「いまの小恋はぶらっくまじしゃんがーるだから、げんきがでるまほうをかけてあげたのです」
「……」

得意気に言うけどリルは無言で顔色一つ変えない。
ほんのちょっぴり不安になったのか、眉を八の字に下げて言う。

「えっとね…おねえちゃん、なんだかおこってるみたいにみえたの。小恋のためにたくさんがんばってくれて、それでつかれちゃったのかなって」
「……」
「小恋はおねえちゃんみたいにびゅわーってはしったりできないけど、でも、なにかしてあげたくて……」

乃亜が自分達に何をさせようとしてるのか、具体的には分かっていない。
だけど最初に二人の少年が殺され、金髪の裸みたいな女の子に襲われ、別の少年の頭部が置かれてるのを見た。
今自分達がいるのは、前に「みのりちゃん」と二人で入ったお化け屋敷よりも恐い場所だとは小恋も察しが付いている。
一人だったらきっと大泣きしていたかもしれない。
金髪の女の人や、他の危ない人達に酷い目に遭わされていたかもしれない。
でもそうならなかった。
守ってくれて、助けてくれる人がずっと一緒にいてくれたから。

嬉しいけれど、それだけじゃ嫌だった。
「みのりちゃん」が沢山大好きをくれた分、小恋からも大好きをあげたように。
貰ってばかりは嫌だから、自分からも何かをしてあげたかった。

「だから、これでげんきがでるかなぁっておもったんだけど…おねえちゃん、まだおつかれモード?」
「……」
「んーと、それじゃあ…ほっぺにチューする?小恋もヒメとよくチューしてるから、おねえちゃんともチューすればもっとなかよしになれるかな?」

大真面目に首を傾げて思案する幼女を前に、無言を貫く。
ほんの数十秒前まで、小恋を切り捨てようと考えていたとは夢にも思わないだろう。
極めて利己的に喰い殺すのを決めかけたなんて、絶対に気付かないだろうガキをポーカーフェイスで見つめ、

「いらねえよアホチビ。ガキの癖に脳内真っピンクのド淫乱かよ」
「うにゃっ!?」

すらすらと毒を吐きつつ、頬をつねる。
軽く動かすと面白い様に伸びる、まるで餅のようだ。

(…っとに、何考えてんだか)

真剣に小恋を喰い殺そうか考え込んだというのに、すっかりどうでも良くなった。
あれだけ考え込んだ自分が馬鹿みたいだ。
乃亜が人を小馬鹿にする天才なら、こいつは差し詰め思考を投げやりにさせる才能の持ち主か。
非情にどうでもいいことを思い浮かべる辺り、あながち間違いでも無いとリルは少々現実逃避気味に思う。

(まぁ、あのクソガキがいらねえ横槍入れてバラす可能性もあるか…)

仮に小恋を密かに殺し、何食わぬ顔で日番谷と手を組んだとしてもだ。
主催者という立場の乃亜は小恋の殺害を当然把握してるだろう。
余計なタイミングでそれを曝露され、協力関係から一転し大勢を敵に回す羽目にならないとも限らない。
最初の場や放送での口振りから、乃亜は時灘と同じく腐り切った性根の持ち主なのはほぼ確定。
今は高みの見物を決め込んでいても、いつ参加者へちょっかいをかけるか分かったもんじゃあない。
己の嗜好の為だけに三界の均衡を崩そうと目論んだ男の顔が、嫌でも思い出される。

(いっそこいつが……)
「うにゅ…おねえちゃん?」
「なんでもねーよ」

引っ張られた頬を擦りつつ、不思議そうな顔をする小恋を雑にあしらう。
いっそ小恋が、もっと我儘でロクに言う事も聞かない奴なら。
余計なトラブルばかりを招き、悪びれもしないクソガキだったら。
迷う必要も無く切り捨てられた。

そんな言い訳染みた内心を馬鹿正直に伝える気はなく、地図を開き行き先を決める方を優先。
施設は複数あれど選べるのは一つだけ。
しかもどのような奴と会えるかは完全に賭けだ。
放送前に感知した巨大な霊圧の持ち主とぶつかる羽目になってもおかしくはない。
せめて護廷十三隊や見えざる帝国と関係のある施設が設置されていれば、そこを目指す気になれたのだが。
何にしろ、日番谷でなくともいい加減まともな参加者と会えることを願いタブレットを睨む。

――『リルのそういう冷たい顔で暑苦しいところ、本当にキモいと思うけど、結構好きだよボク?』

(るっせーんだよ変態趣味の糞ビッチ)

いつだったかジジに言われた、褒めてるのか貶してるのか分からない言葉。
頭にチラつくソレに、相も変らぬ毒を吐き捨てて。




自分達を利用した騎士団の滅却師を迷わず喰い殺すくらいには容赦がなく。
満身創痍の強敵を四人掛かりで袋叩きにするくらいには冷酷。
ユーハバッハの元にいただけあって人でなしであるのは否定できない。

だけど、自分を治療した女への義理は果たし。
危ない橋を渡ってまで、十二番隊に囚われた腐れ縁の少女達の奪還に動き。
他愛のない口約束を交わしただけの相手が、死後も利用されてると知り、元凶の男へ殺意を抱く。
リアリストの面はあれど、情を捨て切った訳でもない。

リルトット・ランパードとは、そういう少女だった。


【F-7/1日目/朝】

【リルトット・ランパード@BLEACH】
[状態]:若干の敏感状態(時間経過で回復)、銀髪(グレーテル)に対する嫌悪感(中)
[装備]:可楽の団扇@鬼滅の刃
[道具]:基本支給品一式、トーナツの詰め合わせ@ONE PIECE、ランダム支給品×0~2
[思考・状況]
基本方針:脱出優先。殺し合いに乗るかは一旦保留。
0:どこに行くか…
1:チビ(小恋)と行動。機を見て適当な参加者に押し付ける。(現状の有力候補は日番谷)
2:首輪を外せる奴を探す。
3:十番隊の隊長(日番谷)となら、まぁ手を組めるだろうな。
4:あの痴女(ヤミ)には二度と会いたくない、どっかで勝手にくたばっとけ。
5:あの銀髪イカレ過ぎだろ。
6:二つの巨大な霊圧に警戒。
[備考]
※参戦時期はノベライズ版『Can't Fear Your Own World』終了後。
※静血装で首輪周辺の皮膚の防御力強化は不可能なようです。

【鈴原小恋@お姉さんは女子小学生に興味があります。】
[状態]:精神的疲労(中)、敏感状態(時間経過で回復)
[装備]ブラック・マジシャン・ガールのコスプレ@現地調達
[道具]:なし
[思考・状況]
基本方針:みのりちゃんたちのところにかえる。
1:おねえちゃん(リル)といっしょにいる。
[備考]
※参戦時期は原作6巻以降。


090:嘘吐き 投下順に読む 092:さすらいの卑怯者
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059:ピンポンダッシュ リルトット・ランパード 097:Ave Maria
鈴原小恋

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