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霧と雷

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夜の闇の中で、一人の少年が立っていた。
少年の周囲は、濃く、黒い霧で満たされている。
数メートル先でさえ視認するのが難しい程だ。
少年の背丈は五歳ほど、彼が本当にただの子供だったら、余りの心細さに震え、蹲り。
そして、動かなくなっただろう。


「フン…試運転と行くか」


だが、少年は違った。
白のマントと、高級そうな王族しか付けられないブローチを身に纏い。
白銀の髪を揺らし、ギラギラと紫電の双眸を獰猛に滾らせて。
サメの様な歯をむき出しにして、彼は笑っていた。
そして、その手に握る、彼の身長より遥かに大きな刀を無造作に振るった。
轟!!と。
少年が大刀を振るうたびに、濃霧が掻き消えていく。
桁外れの彼の膂力が凄まじいまでの突風を生み出している事もある。
しかし、霧の消えていくスピードはそれだけでは説明がつかない物だった。
まるで、刀に吸い込まれていくようで。
途中何かにぶつかろうと構わない、手当たり次第に叩き切る。破壊をまき散らす。
只の人間が見れば、小型の嵐の様だった。


「どうした!そんなに俺が怖いか!!こんな霧で俺は殺せんぞ!!」


霧の奥に潜むものに、少年は脅すように声を張り上げる。
その声色は、少年の周囲を包む霧のように深い苛立ちと憎しみが込められた物だった。
次瞬、少年の短い肩に鋭い痛みが走る。
見てみれば、彼の肩をかすめる軌道で短刀が投擲されていた。
そして、それだけでは終わらない。


「下らねぇ」


空気を裂く鋭利な音と共に、少年の元へ短刀が殺到した。
それも一本や二本ではない。五本、十本……。
瞬きよりもなお短い一瞬の間に、優に十以上の短刀が少年をハリネズミにせんと迫る。
総身を殺意に晒されてなお、少年の表情は変わらない。
目にもとまらぬ速度で、その手の大刀を全力で振るう。
放たれた殺意をは次々に撃ち落とされて、鋼の調べが響いた。
だが──如何に速度や膂力があれど、少年の可動域は人の範疇だ。


「……ぐっ」


大きく右に振るわれた大刀の隙を縫うように、左の背後に短刀が二本突き刺さっていた。
振るうタイミングを完璧に読み切っていなければこうはならない。
少年は元より、霧の奥に潜む少年の敵手もまた超人の技を有していた。
深く突き刺さった短刀のダメージにより、少年の体が大きく右に揺らぐ。


「───解体するよ」


少年の姿勢が大きくブレたのを、小さな暗殺者は見逃さなかった。
獲物を定めた豹のように俊敏な動きで、霧の奥から少年へと迫る。
少年と同じ白銀の髪、幼く無邪気なアイスブルーの瞳と、無邪気そうな顔立ち、
黒いマントを羽織っているため体つきは見えないが、一見すれば脅威には見えない小柄な少女だった。
しかし、少女のスピードと内包する無垢な殺意はただの少女のそれではない。
一瞬で距離を詰めて、少年が負傷し意識を集中させている左後方とは逆側である右後方部に白刃を煌めかせた。


「ばいばい」


殺った。確信する。
少年は回避すべく身を捻ろうとしているが、すでに遅い。
元より、自分が放ったこの暗黒霧都(ミスト)の中にいて俊敏な動きは不可能なのだから。
その予想の通り──短刀は頸動脈という急所目掛けて振り下ろされた。
しかし。


「───!?」
「甘いな、その程度で俺の首を獲れると思ったか……?」


振り下ろした腕は、少年の纏う純白のマントに絡め取られていた。
よく見れば、最初に突き刺さったと思った短刀も、マントで受け止められているのが見えた。
つまり、手傷を追って体勢を崩した一連の動きはフェイク。
少女は、少年の策に嵌まった事を瞬時に悟った。


「ぐ、うぅ~!!」


マントから抜け出そうと藻掻くものの、少女の膂力と技術を以てしても抜け出すには数十秒はかかりそうだった。
手に持った短刀でマントを切り裂こうとするが、手首を抑えられては上手く行かない。
切り裂くのを当然相手も待ってはくれないだろう。


「シッ!」


そこで少女が選んだのはがっちりと手を抑えられているのを利用しての回し蹴りだった。
軽業師の様な身軽さで体を振り上げ、少年の首目掛けて蹴りを放つ。
その蹴りの速度も、子供どころか人間離れした物だった。
例え彼女よりずっと屈強なプロボクサーでも、まともに受ければ首がへし折れている。
首を切り取る鎌のように幼い足は振るわれ──そして、受け止められる。


「中々だ…だがやはりその程度では俺は殺せん」


パァンッ!という破裂音が響き渡る。
少女の渾身の蹴りは、少年の巨木を蹴った様な圧力を感じる腕で止められていた。
両腕と片足の攻撃を封じられ、少女に少年を攻撃する術は最早ない。
それでも何とか藻掻こうとする敵手に、冷酷に少年はその五指を広げて、叫ぶ。


「ザケル!」


それは、夜の闇を裂いて、少年の広げられた掌から放たれた。
瞬く間に少女の全身を突き抜け、食い破り、その身を焦がす。


「くっ!」


しかし少女もさる者、一瞬で失いかけた意識を引き戻して、バックステップで後退する。
余力はあるが、たった一発で無視できないダメージを負った。
恐らく雷撃の類だろう。足先や指先に僅かにだが痺れがあり、技に支障が出る可能性がある。
故に選ぶは撤退。霧の中に逃げ込めば、今のコンディションでも十分逃げ切れる。
彼女はそう判断した。彼女にはそう自負するだけの実力があった。


「逃がさん!!」


少年が再びその手の大刀を振るう。
すると先ほどの焼き直しの光景──黒い霧が風圧で吹き飛ばされ、或いは刀身に食われ削り取られた様に吸収されていく。
それに伴い霧の中に身を潜めるのに成功しかけていた、少女の姿が露わになる。
再び少年が五指を開く。不味い、と少女は思うが詠唱を阻止するすべは最早ない。


「ラージア・ザケル!!」


雷光が、夜闇を再び裂く。
円状に放たれた雷の輪は少年を中心点として急速に広がり、少女を捉えた。


「が、ぁ……!?」


先ほどよりも強い威力、がくり、と少女が膝をつく。
それでも意識を保ち、気を失わなかったのは常人では不可能な芸当だっただろう。
だが、膝をついた時間で少年が詰み(チェック)を掛けるには十分だった。
ドン!と少女の傍らに大刀が突き立てられる。
その気になれば、何時でも少女の首を撥ねることができると言わんばかりに。
ニィと口の端を歪ませて、少年は少女に尋ねる。


「さて…お前、名前は?」


沈黙は許さないといった様相で、少年は目の前の少女に名乗る事を促す。
僅かな逡巡のあと、少女は静かに自分の名を名乗った。
そうしなかれば、躊躇なく少年は自分の首を絶つだろうから。


「私たちは…ジャック、ジャック・ザ・リッパー」


名乗った名前は、19世紀のロンドンを恐怖に陥れた世界一有名な殺人鬼の名前。
何も知らぬ大人が聞けばこんなあどけない子供が何を馬鹿な、と失笑するだろう。
しかし、時に現実は空想を超える物だ。聞くものが信じようと、信じまいと。
生まれ損なった幾万の孤児・胎児、それらが身を寄せ合い生まれた怨霊(フリークス)。
怨霊達の集合体が、彼の連続殺人事件の犯人の名を冠した時、彼女は生誕した。
反英霊(サーヴァント)、ジャック・ザ・リッパーとして。


「そうか…ではジャックこれからお前には選んでもらおうか」


そんな怪異を前にしても、紫電の双眸の少年は笑みを深めるのみ。
ギラギラと光る眼は、正しく修羅に憑りつかれた者のソレであった。


「ここで死ぬか…それとも──このゼオンの手足となるか」


少年の名はゼオン。ゼオン・ベル。
雷帝ゼオンと呼ばれた少年だった。




「どうだ、傷は癒えたか」
「うん、大体元気になったよ。ありがとう、ゼオン
……それにしても凄いね、この刀。私の霧を削り取るだけじゃなくて、傷も治せるなんて」


結論を最初に言えば。
ジャックは、ゼオンの申し出を受けた。
断っていればまず間違いなく死んでいただろうし、お互いのスタンス的にも問題は無かった。
ゼオンとジャック、双方とも殺し合いに乗っていたからだ。
殺人鬼であるジャックは元々人を殺す事に一切忌避感がない。
殺し合いをしろと言われれば、乗るのは決まっていた。


「鮫肌という刀らしい。敵の魔力を削り取って使用者に還元する…かなりの業物だ。
ただ不用意に触れるなよ、こいつは使用者を選ぶからな」
「ふーん……わっ、ほんとだ」


柄に触れようとしたジャックの指目掛けて、鮫肌の柄から鋭利な棘が飛び出す。
担い手を選ぶという話は本当の様だ。
いざとなったら奪い取ってゼオンを殺すのには使えないだろう。
そう思いつつ、布にくるまれた鮫肌の刀身を猫のように撫でる。


「これがあればゼオンも、私たちへの魔力きょーきゅー困らなくていいね」
「舐めるな。お前ひとり程度、俺なら何の問題も無い」
「はいはい」


契約の証として、サーヴァントであるジャックは既にゼオンと仮契約を結んでいた。
サーヴァントと言う存在の都合上、はぐれでいるよりはマスターを得て魔力供給を受けていた方が圧倒的にできる事も増える。
その点ゼオンはマスターとして申し分ない実力を有していた。
またサーヴァントとマスターの関係も絶対ではない。
令呪の絡繰りを気取られなければ、ゼオンを後ろから刺すことも十分可能だ。
それはゼオンの方も薄々分かっているだろうが、彼はその事を指摘しなかった。
ジャックが謀反を企てても対処できるという自負があるのだろう。
それに加えて、服従を迫れば拒絶され、折角見染めた有能な手駒に成り得る人材を消費してしまう事になる。
それはゼオンにとっても旨味がない。だから指摘しなかった。


「それじゃ行こっか!お兄ちゃん!!」
「お兄ちゃんはよせ、ゼオンでいい」
「えー、じゃあお母さん?」
「何でそうなる。お母さんはもっとやめろ」


大刀を担ぎ上げて。
白の少年と黒の少女は同じ方向を向けて歩みだす。
殺すために。優勝する為に。
そう遠くない未来で、隣に立つ相手を殺すことを理解しながら。


(しかし…何でも願いが叶うか。踊らされるのは業腹だが……
もしそれで俺にバオウが手に入るなら…それも悪くねぇ)


自分ではなく不出来な弟に与えられた最強のバオウの術。
それが手に入るなら、少しばかりプライドを枉げても乃亜の為に働いてやってもいい。
勿論、その後でお礼をするのは言うまでもない話だが。
必ず手に入れる。
修羅の雷帝の紫電の瞳の奥で。
野望と、与えられなかった者の怨嗟の炎が燃えていた。



【ゼオン・ベル@金色のガッシュ!】
[状態]健康、ジャックと契約
[装備]鮫肌@NARUTO
[道具]基本支給品、ランダム支給品1~2
[思考・状況]基本方針:優勝し、バオウを手に入れる。
1:ジャックを上手く使って殺しまわる。
2:ジャックの反逆には注意しておく。
[備考]
ファウード編直前より参戦です。
瞬間移動は近距離の転移しかできない様に制限されています。
ジャックと仮契約を結びました。

【ジャック・ザ・リッパー@Fate/Grand Order】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]基本方針:優勝して、おかーさんのお腹の中へ還る
1:お兄ちゃんと一緒に殺しまわる。
2:お腹空いたな…
[備考]
現地召喚された野良サーヴァントという扱いで現界しています。カルデア所属ではありません。
ゼオンと仮契約を結び魔力供給を受けています。

【大刀・鮫肌@NARUTO】
「霧の忍刀七人衆」の一員であり、「霧隠れの怪人」、干柿鬼鮫の愛刀。
文字通り鮫の肌を巨大にしたかのようなトゲだらけの刀身を持ち、切れ味はまるでなく打撃武器に近い。
"斬る"のではなく、その表面で"削る"ことで相手を攻撃する。
相手の持つチャクラを削り取ることもでき、削り取ったチャクラを吸収して鬼鮫に還元し、チャクラの回復及び負傷した箇所の再生まで出来る。
また、刀自体が意志を持ち、担い手を選ぶ。選ばれていない者が柄を握ると鋭利な棘が飛び出す。




068:「永沢、殺し合いに乗る」の巻 投下順に読む 085:未知との遭遇
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