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「永沢、殺し合いに乗る」の巻

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「どうなってるんだよ……子供同士で殺し合いなんて、おかしいじゃないか!」

眼鏡を掛けた聡明そうな少年、あくまで聡明そうなだけで、実はそこまででもない中島は狼狽していた。
いつものように、学校終わりに磯野カツオと野球をしようと、これまたいつもの空き地に向かっていた時だ。
急に意識が飛び、気付いたら時刻は深夜になっていて、しかも妙な少年に殺し合いを要求されていた。
まるで出来の悪いB級映画のような突拍子のなさだが、どうにも現実に今起きている事らしい。

「うわっまだ参加者名簿が見れないじゃないか!」

とにかく知り合いを探そうとタブレットを操作してみたが、肝心の名簿は見れずじまいだった。
それならばと、SNSを駆使して外部に助けを求めようとしたが、やはり対策されており無理だった。(サザエさんは一応現代設定の筈)

「誰か、通報してくれれば良いんだけど……いや、してる筈だよ。兄貴もおじいちゃんもこんな時間まで、僕が帰らなかったらおかしいと思うさ」

今頃警察が通報を受けて、自分を探してくれている。半ば無理にそうだと決めつけて、中島はタブレットのライトを頼りに殺し合いの中の探索を始める事にした。
もしカツオが居れば、何だかんだで頼もしい。成績こそ悪いが、あれで本当は頭もキレるとこがあって、中島にはない発想があるかもしれない。
他にも、カツオの妹のワカメや花沢さん、タラちゃんにハヤカワさん、カオリちゃんだって来ていれば、男の自分が守らなきゃいけないだろう。

「……花沢さんは僕がいなくても大丈夫か」

とにかく、誰かしらと合流し今後の方針を相談し合うべきだ。
殺し合いに乗った参加者が居たら? そんな恐怖もあったが、内心では早々居ないだろうとも決めつけてもいた。

「あ、あの……」
「なんだ!?」

そんな時、怯えた様子の少年が中島に声を掛けてきた。玉ねぎのような頭をして、ちょっと捻くれてそうな顔をした男の子だ。
歳も背も自分より下で、多分低学年だろうと中島は思った。

「ごめんなさい、僕不安で……」

本当は中島も死ぬほど不安だったが、流石に低学年の前でみっともない姿は見せられないと見栄を張る。

「大丈夫だよ。僕も殺し合いには乗っていないんだ」
「そうなんですか? 良かった……」

ゴシャッと水気の混じった鈍くて重々しい音が響いてきた。

「……ぁっ」

それは自分の頭から鳴っていたもので、遅れてやってきた激痛とふらついた視界に写った玉ねぎ少年が野球バッドを握っていたことで、ようやく自分が殴られたと理解した。

「ごめんよお兄さん、でも一人しか生き残れないんだ。しょうがないよね」
「や、やめ……」

中島の不幸はなまじ体格差があったせいで、殴られても即死とはいかず、結果としてまだ意識も息もあったということだろう。
当然、相手は殺しに来るのだから、止めを刺すためにもう一度殴る。
そして本当に相手は死んだのか気になってしまう。だから、もう一度殴る。更にもう一度、もう一度、もう一度、もう一度もう一度もう一度もう一度。
最期まで痛みと恐怖を味わいながら、中島の意識は薄れていった。

「ハァ……死んだ、よね?」

息を荒げ、永沢君男は今しがたまで生きていた中島を見下ろし呟いた。
あの乃亜と名乗る子供から殺し合いを命じられ、永沢は迷うことなく殺し合いに乗ることを決意した。
悪いとも思うし、罪悪感もない訳ではないが、あんな人を平然と殺し死人も生き返らせるような相手に、爆弾を首に嵌められどう勝てばいいか分からない。
歳の割にリアリストな考えで、永沢は中島を襲撃し、それに成功してしまった。


「永沢……永沢、よね……?」

「なっ!?」

頭が真っ白になった。今、人を殺した場面を目撃されたのなら、それは言い逃れできない。
永沢も最初は中島を奇襲したとはいえ、こんな方法で最後まで勝ち残れるとは考えていない。支給品を奪ってから、別の参加者に紛れて優勝の機を伺おうと予定は立てていた。
だから、ここで殺人の現場を見られた以上は、殺すしかない。

「なんで、きみがいるんだ……」

なのに、手が震え、足は小刻みに揺れて思うように動かない。

「じょ、城ヶ崎……」

予想もしなかったからだ。まさか、こんな殺し合いに城ヶ崎姫子が居るなんて。

「そ、その人、永沢が……?」

城ヶ崎の声は震えていた。
いつも勝ち気で、強気で活発で鼻に付くお嬢様の癖に、そんな姿を、ましてや自分の前で見せるなんて、そう考えた永沢は動揺を隠すように口を開いた。

「ああ、決まってるだろ。こうしないと、僕が殺されてしまうんだからね」
「その人が襲ってきたのよね? そうでしょ、永沢!」
「……そんな、訳ないだろ」
「嘘! こんな時まで、捻くれるのやめてよっ!」
「嘘で人が殺せるもんか。僕は、死にたくないんだ……だから、城ヶ崎……」

死んでくれよ。

頭に浮かんだ最後の一言が口に出なかった。

「―――わたし、黙ってるから」

「えっ……?」

「このこと、黙ってるから……だからもうやめましょ? きっと誰か救出に来てくれるわよ。
 だから、それまで隠れていればいいわ。ここから助けてもらったあと、警察にだってこのこと言わないから……もう殺し合いなんてやめましょ、永沢?」

「ほんとうに、救出なんて来ると思っているのかい?
 きみも見たろ? あの腕が伸びる子、超能力者じゃないか? しかも、乃亜とかいう奴はそんな奴を殺して、しかも生き返らせてたんだぜ?
 あんな力を持ってたら、警察だって太刀打ちできないさ」

「じゃあ、なおさら永沢が優勝するなんて無理じゃない!! あのルフィって子みたいな超能力者が他にも居たら、あんたに勝ち目ないわよ!」

「うっ、それは……うるさいな、きみには関係ないだろ!」

城ヶ崎の指摘通り、最初に殺されたルフィのような超能力者がいないとも限らない。
SFに出てくるような念力や瞬間移動を使えるような子供がいたら、永沢がどうやって立ち向かえばいいのか。

(な、なにを狼狽えてるんだ……? 僕は、城ヶ崎をここで生かしたら、僕に不利になるだろう!?)

そう、もう一度決めた事だ。それに既に死人も出してしまった。今更都合よく、方針を変える訳にはいかない。

(いや……でも、城ヶ崎が黙っていてくれるなら……今はまだ……)

「永沢、バッド寄こして」

「どうして、きみに命令されなきゃならないんだ」

「いいから! 寄こしなさい!!」

(待てよ、これは、チャンスなんじゃないか? いまは城ヶ崎に従うフリをして、それで彼女を味方に付けて、殺し合いに乗らない奴らに紛れ込むんだ。城ケ崎のが、人当たりも良さそうだし……信用もされやすい。
 い、いや……これは一人しか生き残れないんだぞ。やっぱり、城ヶ崎はここで殺して……で、でも……)

中島を襲った時は、容赦なくバッドを振るえた。それが友達でもない知り合いを見付けただけで、こうも呆気なく決意が揺らぐ。
情けなくて、惨めで、永沢の瞳に涙が浮かびそうになってきた。
結局、現実を見て強固な決意で優勝を決意しても、それは相手が知り合いでないから殺せただけだったのかもしれない。

(こ、殺すんだ……でないと、生き残るなんて出来やしないんだ。もう一人、僕は殺したんだぞ!!)

「……こんなこと、いつもなら絶対言わないわよ? でも、ほんとはあんた良い人じゃない。
 太郎君の為に、玩具のピアノ買ってあげようとしたり、自分の家が火事になったから、時々パトロールだってしてる。
 ほら、線香花火で喧嘩した時も、代わりの買ってきてくれたでしょ?
 ね? 良い人が無理して悪い人になるなんて、きっと辛いだけよ……」

「僕は、僕は……無理なんて、そんな……」

いつもは小生意気で憎たらしい、それでいて癪に障るこの女の声が今は聖職者の説教のように、永沢の心に突き刺さる。
バッドを持つ手は既に緩んでいた。全身から力が抜けていく脱力感と、城ヶ崎の姿に安堵感すら覚える。
保身から来る偽りの言葉ではなく、城ヶ崎は心の底から永沢の事を想って、説得を続けているのが分かってしまったからだ。

「永沢」

暖かく、名前を呼ばれて、永沢は膝から崩れ落ちた。



「―――う”、あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!!」


獣のような雄叫びが木霊する。膝をついた永沢は後ろを振り向いて、驚嘆した。

「ど、どうして……うわああああ!!」

先ほど殺した筈の中島が息を吹き返し、血と涙と鼻水で汚れた顔を更に歪めながらこちらへ突っ込んできている。


(……磯野)


自分を殺そうとした玉ねぎともう一人、ツインテールの髪を更に縦巻きロールにしたお嬢様みたいな女の子が口論をしている時、中島は息を吹き返した。
頭に残る鈍痛と、そこから流れていく血の量から多分長くはないと悟る。
病院に掛かれば話は違うかもしれないが、こんな場所に医者もいるとは思えない。だから、最後に出来るだけの事を考えた。

(僕はもう、駄目だけど……最後にこいつぐらいは道連れにしてやる!)

もしも、ここに最高の親友が居れば、それがこの少年の毒牙に掛からないとは限らない。
だって、磯野カツオは良い奴だから、きっと騙される。
そうなるくらいなら、どうせ死んでいく自分がこいつを先に殺してやる。

ズドン、と発砲音が響き、中島の胸に小さな風穴が空いた。

「ぐ、ふ……!」

それが決定打になり、糸が切れた人形のように中島は倒れる。

(磯野、お前は……まだこっち来るなよ……)

最後にまた野球がしたかったと思って、友達の顔を思い浮かべながら中島は息絶えた。


【中島弘@サザエさん】死亡


「嘘だろ……」

息を吹き返した中島が永沢に襲い掛かったその時、永沢の後ろから銃声が響き渡って中島は射殺されてしまった。
永沢は何もしていない。というより、出来なかった。目まぐるしい展開の変化に、永沢は置いて行かれていたからだ。
だから、中島を殺したのは、もう一人しかいない。

「どうして、撃ったんだ! 城ヶ崎……!」

城ヶ崎の震えた手には、黒い銃が握られていた。

「わ、わたし……永沢が……殺されちゃうって……」

「クソっ!」

先ほどとは一転して、永沢は中島の元へ駆け寄り脈を図った。自分でも何をしているのか、あべこべな行動だった。
だが、ここで中島に死なれる訳にはいかず、身勝手だが生きててほしいと祈って首元に触れる。

「……永沢?」

「……」

死んでいた。

殺してしまった。

いや、殺させてしまった。

「永沢……私、わたし……」
「きみは悪くない、殺したの僕なんだ! いいかい? 僕が殺したんだ!」

今になって、永沢に激しい後悔が襲ってくる。

そもそも、この殺し合いに乗る前にもっと深く考えていれば、こんな事態を避けられたはずだ。
乃亜の言動から、子供が殺し合いに巻き込まれているのは察することが出来たし、それなら自分の兄弟やクラスメイトだって来てる可能性は考えられた。
なのに、永沢はそのことを一切考慮せずに、安易に殺し合いに乗ってしまった。愚かな自己保身の為だけに。
その挙句、関係ないクラスメイトに人殺しまでさせてしまった。



―――本当の卑怯者は僕じゃないか―――



今更気付いても、もう遅い。


「来るんだ、城ヶ崎」
「え?」
「大丈夫、誰も見ていない。だから、このまま逃げるんだよ!」

そう言って、城ヶ崎の手を取り永沢は駆け出した。普段なら城ヶ崎と手を繋ぐなんて、絶対にやりたくないが、今はそんなことを気にしている場合じゃなかった。

「な、永沢……」

(どうすればいいんだ……僕が殺し合いに乗ろうとさえしなければ、こんなことには……!)

ここであったことを二人だけの秘密にして、全てなかったことに出来ればと考えながら、永沢は当てもなく城ヶ崎を連れて進んでいく。
願わくば、誰もこの現場を見ていないよう祈りながら。




【永沢君男@ちびまる子ちゃん】
[状態]健康、城ヶ崎に人を殺させた事への罪悪感と後悔(極大)
[装備]ジャイアンのバッド@ドラえもん
[道具]基本支給品、ランダム支給品2~0
[思考・状況]基本方針:殺し合いに乗るのは断念。
1:城ケ崎を連れて逃げる。
2:僕は本当に卑怯だな……。
[備考]
※アニメ版二期以降の参戦です。


【城ヶ崎姫子@ちびまる子ちゃん】
[状態]健康、中島を殺した事へのショック(極大)
[装備]ベレッタ81@現実
[道具]基本支給品、ランダム支給品0~2
[思考・状況]基本方針:これからどうしたらいいの?
1:……
[備考]
※アニメ版二期以降の参戦です。


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