ダンゲロスSS上海
さらばキラ子!もう帰ってくるな!
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dangerousss_shanghai
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僕はクズだ。やり直すチャンスを貰ったのに、結局他人を傷つけて生きる存在になってしまった。
それってさ、最低じゃん。だから僕は待ち続けた。やり直す機会をくれた男を。劉炎嵐という最強の存在を。
周囲の気温が上がるのを感じた。あの時と同じだ。彼は文字通り空気を変える。彼の怒りは熱となり僕を焼き尽くすだろう。
「来てくれたんだ、君は」
僕は熱源の方を確認する。なんか、買い物袋を持ったギャルが居た。いや、女の子にしては少し背が高くて声が低い。ギャルの格好した男性なのかな。
「誰?」
「取り敢えずアンタの待ち人では無いよ。この辺でダイヤ求めて暴れてるチンピラが居るって聞いてさー、そーゆーのほっとけないから。てなわけで、さっさと倒されてくれない?」
「できないよ、それは」
「えー?アンタ倒してくれって顔してたじゃん?抜け殻みたいな顔して」
「劉炎嵐、彼だけなんだ。僕を終わらせてくれるのは」
「ゑ?アンタもあいつ待ち?なら、なおさらサッサと倒しておくか!私、アイツと大事な話があるから」
「そっか、僕も君が邪魔になったよ。これって、同じ意見ってヤツ?」
「取り敢えずアンタの待ち人では無いよ。この辺でダイヤ求めて暴れてるチンピラが居るって聞いてさー、そーゆーのほっとけないから。てなわけで、さっさと倒されてくれない?」
「できないよ、それは」
「えー?アンタ倒してくれって顔してたじゃん?抜け殻みたいな顔して」
「劉炎嵐、彼だけなんだ。僕を終わらせてくれるのは」
「ゑ?アンタもあいつ待ち?なら、なおさらサッサと倒しておくか!私、アイツと大事な話があるから」
「そっか、僕も君が邪魔になったよ。これって、同じ意見ってヤツ?」
会う理由は全く違うだろうけど、お互い邪魔ならやるしかないよね。
「そんじゃ、いただきマンモスー」
彼?彼女?…ギャルの人は、買い物袋から粉ミルクを取り出すと、蓋を開けて中身を食べ始めた。
「何してるの、君?ていうか、何で粉ミルクなんか持ち歩いてるの?」
「こないだ知り合った子が普通の食事から栄養とるの出来なくてさー、これならワンチャンいけるかもって買ったワケ。あーあ、後でまた買い…ふんっ!」
「こないだ知り合った子が普通の食事から栄養とるの出来なくてさー、これならワンチャンいけるかもって買ったワケ。あーあ、後でまた買い…ふんっ!」
ギャルは会話中に粉ミルクを僕の顔めがけて吹き出した。煙幕として使って僕の視界を消すつもりだったのかもだけど、これは逆にチャンスだ。僕はポケットに手を入れ、抜いておいた髪の毛と血液を染み込ませておいたボロ布を取り出す。
「行けっ、赤蛇・黒蛇!」
取り出した髪の毛と血は僕の命令に応えて数匹の蛇へと姿を変える。僕の魔人能力で作り出した蛇達は、具体的な命令が無い時は僕以外の熱源へ向かって進む。たとえ粉ミルクの煙幕の中でも、あのギャルのやたら高い体温を追尾して牙を当ててくれるはず。
この時気付くべきだったんだ、僕は。ギャルの体温が劉炎嵐と間違えてしまうぐらい高かった理由を。
「ファイアー!」
煙幕の向こうで声と小さな光。次の瞬間、粉ミルクが漂う範囲が爆発した。これってさ、粉塵爆発じゃん!
チュドーン!
爆発により、僕も蛇達も吹き飛ばされ倒れる。だけど、爆心地に居たギャルはノーダメージでこちらへ近付いてきた。そっか、このギャルも同じ性質なんだ、劉炎嵐と。内気功と外気功の違いはあるけど。
「そんじゃ、大人しくしてて…」
「まだだっ!」
「まだだっ!」
僕は足元に転がる数匹の蛇をさすまた状に組み合わせて振るう。
「なんとかなれ〜っ!」
「なるかボケェ!」
「なるかボケェ!」
なんともならなかった。勝ちたい気持ちとここで死にたい気持ち、心が二つある状態で勝てる訳無かった。さすまたを軽々避けられ高速タックルをお腹に喰らって、今度こそ僕は戦闘不能になる。
「勝った〜。今の内に、消耗分補給しとくかー」
仰向けに倒れる僕の胸に腰を降ろし、ギャル男はマカロニドッグを食べ始めた。一本食べ終わると、次の一本を僕の口にねじ込んでくる。
「アンタも食べな。腹減ってたんだろ?」
「ふごっ、上手く食べれない。この状態じゃ」
「だからいいんじゃん。アイツが来るまで、ゆっくりと噛んで飲み込む事に集中してて。歯向かって来たら即焼くから」
「ふごっ、上手く食べれない。この状態じゃ」
「だからいいんじゃん。アイツが来るまで、ゆっくりと噛んで飲み込む事に集中してて。歯向かって来たら即焼くから」
僕は口の中にねじ込められたパンを何度も噛んで少しずつ飲み込みながら、どうしてこうなってしまったのか振り返り自然と涙がこぼれた。
「こんなはずじゃ無かった、僕は…」
「ちょっと静かにして。…どーやらお出ましみたい」
「ちょっと静かにして。…どーやらお出ましみたい」
ズン ズン
この足音、自分の強さを一切疑わない歩みは、今度こそ彼が。
「よう、ギャラハッド!動画見たよ」
「白…、来てたんだ」
「白…、来てたんだ」
また違った。そう言えば、怒りも熱も感じられなかった。白黒二色に分かれた髪と服をした大きな女性は、こちらへ歩いて来ると僕のお腹に腰を下ろした。
重い。
「ぐえー」
「失礼だな、こんな美人二人の椅子になれたんだからもっと喜べっての。で、こいつ誰?」
「知らんけど、腹すかせてヤケ起こしてたっぽいから、こーしてる。モグモグ」
「アタシにもメシ」
「おけ」
「失礼だな、こんな美人二人の椅子になれたんだからもっと喜べっての。で、こいつ誰?」
「知らんけど、腹すかせてヤケ起こしてたっぽいから、こーしてる。モグモグ」
「アタシにもメシ」
「おけ」
ギャラハッドと白なんとかさんは知り合いだったらしく、僕を尻で押さえつけながら久し振りの再会を喜んでいた。
「粉ミルク甘酒割り完成〜」
「サンキューピッチ!うまっ!」
「てか、白は何用で上海に?」
「あいつの依頼。あいつママになるから、そのお祝いに今話題の清王朝のダイヤ贈ろうと思って」
「そいつはアンタらしい…ゑ?あいつ結婚しててママになるの?」
「やっぱ知らなかった?でも、あいつもアンタもママになるし焦るなー」
「は?私はちげーし!」
「サンキューピッチ!うまっ!」
「てか、白は何用で上海に?」
「あいつの依頼。あいつママになるから、そのお祝いに今話題の清王朝のダイヤ贈ろうと思って」
「そいつはアンタらしい…ゑ?あいつ結婚しててママになるの?」
「やっぱ知らなかった?でも、あいつもアンタもママになるし焦るなー」
「は?私はちげーし!」
全身圧迫され知らない人の話を延々と聞かされ、口の中パンでパッサパサ。
僕は限界だった。
僕は限界だった。
「劉炎嵐早く来て…」
当初とは全く別の思いを抱いて僕は彼の名を呼んだ。
トコトコトコ
「あ、この足音は多分違うな」
明らかに一般人の足音と気配。首を捻って足音の方を確認すると、日本人の少女が旅行カバンを引っ張りながらこちらへ向かって来た。
「し…、白髮さん、この荷物はどうします?」
「お疲れ神楽ちゃん。そのカバンはそこに置いといて」
「白、あの子誰よ?素人っぽいけど、こんな所連れてきて大丈夫なん?」
「んー、あの子は自分で戦える子だし、アタシがカバーしてやれば大丈夫さ。けど念には念をいれとくか。おい、チンピラA。ちょっと立て」
「えっ?」
「お疲れ神楽ちゃん。そのカバンはそこに置いといて」
「白、あの子誰よ?素人っぽいけど、こんな所連れてきて大丈夫なん?」
「んー、あの子は自分で戦える子だし、アタシがカバーしてやれば大丈夫さ。けど念には念をいれとくか。おい、チンピラA。ちょっと立て」
「えっ?」
僕は突然白なんとかさんにより無理矢理立たされると、プロレス技を決められた。
「出たー!白のオクトパスホールドだー!」
「これは清海が黙ってませんよー!」
「これは清海が黙ってませんよー!」
偽ギャルとガチ女子の声援の中、僕の右肩がゴリっと音がして外れた。
「ぎゃー!」
「悪いね、アンタにも事情ありそうな顔してたけど、今日は大人しくしてな」
「悪いね、アンタにも事情ありそうな顔してたけど、今日は大人しくしてな」
オクトパスホールドから解放されて僕は再び地面に倒れた。もう誰の尻も僕の身体の上に乗ってないけど、右肩が痛くて立ち上がれない。
それに、何故か急にズボンがキツくなってる?
「どんだけ高カロリーなんだよ、マカロニドッグ!」
「違う違う、ズボンがキツくなったのはアタシの能力だよ。分かったら大人しく寝てな」
「違う違う、ズボンがキツくなったのはアタシの能力だよ。分かったら大人しく寝てな」
ズボンがミチミチになった原因は白なんとかさんの能力だった。そこに更なる追撃が迫る。
「すみません。私もちょっと貴方の行動に制限をかけさせて貰います」
神楽ちゃんが僕の左腕に手をかざすと、僕の左腕に謎の✕マークが貼り付けられた。
「これで安心ですね」
「え?これ何?ねえ何?」
「その✕を取ろうとしたり、左腕を無理に動かさな方が良いですよ」
「教えてよ、ねえ?これ何ー?」
「え?これ何?ねえ何?」
「その✕を取ろうとしたり、左腕を無理に動かさな方が良いですよ」
「教えてよ、ねえ?これ何ー?」
神楽ちゃんは質問に答えず、ギャラハッドと白なんとかさんの方へ去って行く。困った。実質両手両足の自由が無くなった。今の僕に出来るのは、あの三人の会話に聞き耳を立てるぐらいだ。
「ギャラハッドはまだブリキュアしてるのか?」
「私はそーゆーのとっくに引退したっての。精霊達も次の世代の魔法少女の所へ行ったよ」
「すみません、お二人はお知り合いなのですか?」
「ん。学生の頃ちょっとね。紹介するよ。こいつはギャラハッド・ソネット。精霊に頼まれ魔法少女やったり、家庭の事情でギャルみてーな格好してたりするおもしれー奴だ」
「アンタにだけは格好をおちょくられたくないわい」
「私はそーゆーのとっくに引退したっての。精霊達も次の世代の魔法少女の所へ行ったよ」
「すみません、お二人はお知り合いなのですか?」
「ん。学生の頃ちょっとね。紹介するよ。こいつはギャラハッド・ソネット。精霊に頼まれ魔法少女やったり、家庭の事情でギャルみてーな格好してたりするおもしれー奴だ」
「アンタにだけは格好をおちょくられたくないわい」
ギャラハッドと白なんとかさんとその連れの神楽ちゃんの話を聞きながら、僕は意識が段々と遠のいていくのを感じた。全身痛いし空腹も収まったし、身体が睡眠を欲してるのだろう。…いっそもう、寝ようかな。
ズン
「き、来たぁ!」
間違えようの無い足音と熱量。ニ回間違えたけど、今度こそ劉炎嵐だ!
ズン スン スン
(´・ω・`)ナニコレ
現場に現れた劉炎嵐は、僕達に近付くにつれ足音と怒りが小さくなっていった。それもそうだ。彼は僕を殴りに来たんだろうけれど、肝心の僕は既に倒されてて、美人三人が楽しげにしてるんだから。
「…ふむ」
( ・`ω・´)オッケリカイシタ
あ、ちょっと持ち直した顔してる。気温二度ぐらい上がった。劉炎嵐は僕と女子達を交互に見て、数秒考え込んでから僕の方へ歩み寄った。
「灰チワレ、立てるか?」
「ちょっと無理かも」
「なら、一発で終わらせてやるから、歯ぁ食いしばれ」
「ちょっと無理かも」
「なら、一発で終わらせてやるから、歯ぁ食いしばれ」
劉炎嵐は僕の首根っこを掴み、上半身だけ起こさせると、そのまま僕の顔を一発だけ平手打ちした。痛かったけれど、何の怒りの力も籠っていない普通の平手打ちだった。
「この馬鹿野郎」
「うん」
「ここに来るまでに、お前に何があったかは大体聞いた。…絶対に許せねえ」
「ごめん」
「お前にゃ、さっきの一発分で怒りは終わりだ。俺が許せねえのは俺自身だ」
「うん」
「ここに来るまでに、お前に何があったかは大体聞いた。…絶対に許せねえ」
「ごめん」
「お前にゃ、さっきの一発分で怒りは終わりだ。俺が許せねえのは俺自身だ」
僕の口の中が完全にカラカラになる。劉炎嵐が本調子に戻ったからだ。到着したら大体終わってたせいで毒気の抜かれていた彼は、再び怒りに熱くなる。
「お前がこうなるまで気付かなかった事、そしてこの上海でお前みたいな奴が何十人と現れてるのに解決出来ない事が何よりも許せねえ!」
劉炎嵐は右手を高々と揚げて拳を力強く握りしめる。すると、拳の上にダイヤモンドが現れた。
「こんなモンを手に入れたはいいが、あらゆる願いを叶えるって話なのに、何度試しても俺の拳の上て輝くだけだ。悪人を止めろと願っても、悪人の被害者を救えと願っても何一つ反応しねえ!」
「そりゃ、前提が間違ってるからだよ」
「そりゃ、前提が間違ってるからだよ」
劉炎嵐の怒りと嘆きに答えたのはギャラハッドだった。
「そのダイヤは清王朝のダイヤモンドじゃない。いや、そもそも清王朝のダイヤモンドなんてこの世のどこにも存在しないよ」
「誰だお前」
「私とキキちゃんの動画見てない?なら名乗るわ。私はギャラハッド・ソネット。清王朝に願いを叶えるダイヤがあるとデマを広めた宦官が居た。その子孫が私なワケ」
「そしてアタシは万事屋の白髪黒羽!ギャラハッドのダチだ!まあ、今一緒に居るのはたまたまなんだけどな!」
「誰だお前」
「私とキキちゃんの動画見てない?なら名乗るわ。私はギャラハッド・ソネット。清王朝に願いを叶えるダイヤがあるとデマを広めた宦官が居た。その子孫が私なワケ」
「そしてアタシは万事屋の白髪黒羽!ギャラハッドのダチだ!まあ、今一緒に居るのはたまたまなんだけどな!」
白なんとかさんのフルネーム判明。白髮黒羽、白髮黒羽、白髮黒羽。僕は彼女の覚えにくい名前を忘れない様に三回繰り返した。
「そんで、この美少女はアタシがボデーガードしてる神楽ちゃんだ」
「はい。白髮さんの同行者で、日ノ御子神楽と申します」
「はい。白髮さんの同行者で、日ノ御子神楽と申します」
神楽ちゃんの名前は覚えるの絶対無理と判断。今後も神楽ちゃん呼びで行こう。
「…お前ら全員、俺のダイヤに用があるって事でいいのか?」
劉炎嵐は怒りを内に秘め、警戒しながら冷静に相手の様子を伺った。
「ん。ダイヤの事て話しに来たワケよ。私の白はそれぞれ別口で来たんだけどね」
「ギャラハッドだったか?あんた、このダイヤについて詳しいなら、これで上海を平和にする方法を教えてくれ」
「さっきも言ったけど、それには願いを叶える力は無いと思うよ。清王朝のダイヤモンドってのは、『そういうお宝がある』って噂で馬鹿な反乱分子を釣る餌なの。私は先祖代々そう聞かされてきた」
「そうなのか?だが、俺にこれを譲った奴は嘘を付いてる様には見えなかった。それに、これを巡って何人もの魔幇の構成員が亡くなったとも聞いた」
「だからこそ、偽物だっての。それ手に入れた奴、全員不幸になってるじゃん!てか、そもそも清王朝が滅んでる時点で、万能の願望器たるダイヤは無いって証明してるよね?」
「ギャラハッドだったか?あんた、このダイヤについて詳しいなら、これで上海を平和にする方法を教えてくれ」
「さっきも言ったけど、それには願いを叶える力は無いと思うよ。清王朝のダイヤモンドってのは、『そういうお宝がある』って噂で馬鹿な反乱分子を釣る餌なの。私は先祖代々そう聞かされてきた」
「そうなのか?だが、俺にこれを譲った奴は嘘を付いてる様には見えなかった。それに、これを巡って何人もの魔幇の構成員が亡くなったとも聞いた」
「だからこそ、偽物だっての。それ手に入れた奴、全員不幸になってるじゃん!てか、そもそも清王朝が滅んでる時点で、万能の願望器たるダイヤは無いって証明してるよね?」
ギャラハッドの主張は筋が通ってる様に見えた。劉炎嵐も、腕を組みながらそうかも知れないと考え込んでいた。
「実物を見て、大体分かったよ。私の推理が正しければ、魔幇が所有していたのは何の力も無い偽物。それが盗まれた事で、自分達の手に本物のダイヤが無かった事をがバレる前に取り戻そうと血眼になってるというのがこの騒動の真相…」
「おいギャラハッド、ちょい待て」
「おいギャラハッド、ちょい待て」
ギャラハッドの最もらしい主張に待ったをかけたのは、白髮黒羽だった。
「アンタの推理には穴があるよ。実はアタシ達はここに来るまでに、清王朝のダイヤの欠片と同化したという人物と知り合った」
「白、そーゆーのは先に言ってよ!話が色々変わってくるし!」
「わりいわりい。で、だ。他にも言わなきゃいけない事がある。神楽ちゃん、例のやつ全員に渡して」
「はい、かしこまりました」
「白、そーゆーのは先に言ってよ!話が色々変わってくるし!」
「わりいわりい。で、だ。他にも言わなきゃいけない事がある。神楽ちゃん、例のやつ全員に渡して」
「はい、かしこまりました」
笑点の司会者と山田君みたいなやり取りをして、神楽ちゃんが例のやつを全員に配る。そう、全員だ。僕にもそれは渡された。それはタブレットだった。
「いや、僕に渡されても、両腕動かせないんだけど?」
「それ他者への攻撃を禁止しただけなので、タブレット操作なら問題なく動かせますよ」
「それ他者への攻撃を禁止しただけなので、タブレット操作なら問題なく動かせますよ」
恐る恐る左腕を動かすと、神楽ちゃんの言う通り問題なく動かす事が出来た。
「本当だ。左腕動く。けどいいの?悪者なんだけど、僕」
「大丈夫ですよね、白髮さん?」
「ああ。もし何かしようもんなら、ここに居る全員で殴ればいいさ。さて、全員タブレットの電源入れたよな?出てきたニュースに目を通してくれ」
「大丈夫ですよね、白髮さん?」
「ああ。もし何かしようもんなら、ここに居る全員で殴ればいいさ。さて、全員タブレットの電源入れたよな?出てきたニュースに目を通してくれ」
タブレットの画面には数々のニュースが表示されている。
『ダブル・ハピネス・キャンペーン継続のお知らせ』
『新作映画会場にてアマゾンとうんこの集団幻覚』
『最新ダイヤ情報!現在の所有者はあの劉炎嵐!』
『上海地下で行われた破壊活動〜爆弾テロの疑い』
『鞍馬山で異常気象発生!清王朝ダイヤの影響か?』
『新作映画会場にてアマゾンとうんこの集団幻覚』
『最新ダイヤ情報!現在の所有者はあの劉炎嵐!』
『上海地下で行われた破壊活動〜爆弾テロの疑い』
『鞍馬山で異常気象発生!清王朝ダイヤの影響か?』
「よし、全員読み終えたな?見ての通り、ここ数日で上海全域で奇妙な事件が立て続けに起こっている」
「何か、大変な事なってるね上海」
「何か、大変な事なってるね上海」
自分の事で精一杯で清王朝のダイヤの事ぐらいしか知る事が出来なかったけど、世間は僕の想像を遥かに越えた異常事態が起こっていた。
「ダイヤ争奪戦とは別にいくつもの混乱が起こっている。そして、肝心のダイヤは現状ただの所有者を示すアイコンに過ぎない。果たして、この上海はどうなってしまうのか?アタシらは何をすべきなのか?アンタらもここへ来るまでに色々あっただろ?情報交換と行こうじなないか」
そう言い白髮黒羽は僕達に意見を求めた。しかし、そんな事言われても僕は何も思いつかない。
「私は昨日まで、この通りの反対側の屋台街に居て、そこで双喜やアホな傭兵と…」
「俺はこのダイヤを手に入れてからはカジノで魔幇の奴らを…」
「私は誘拐されて魔人になって、その時期はダイヤが盗まれた少し前になると…」
「俺はこのダイヤを手に入れてからはカジノで魔幇の奴らを…」
「私は誘拐されて魔人になって、その時期はダイヤが盗まれた少し前になると…」
皆が次々と役に立ちそうな情報を言う中、僕も意見を求められた。
「アンタは何も無いのか?」
「すみません。僕は無いです、情報。一応元は魔幇の雇われだったけど、その間はダイヤの話なんて一切聞かなかったし…」
「何だって!?」
「すみません。僕は無いです、情報。一応元は魔幇の雇われだったけど、その間はダイヤの話なんて一切聞かなかったし…」
「何だって!?」
僕の何も無いという話を聞いた途端、彼女は何かに気付いた様な顔をした。
「本当に、ダイヤについて何も聞いてなかったのか?魔幇の繁栄にダイヤが関わってるとか、ダイヤがいつ手に入ったとか、そんな話は一切無かったのか?」
「う、うん。五爪の翁と数人の武術の達人が組織を作った武勇伝は先輩からお酒の場で何度も聞かされたけど、ダイヤの話は全くしてなかったよ」
「う、うん。五爪の翁と数人の武術の達人が組織を作った武勇伝は先輩からお酒の場で何度も聞かされたけど、ダイヤの話は全くしてなかったよ」
僕がそう言うと、白髮黒羽は自分のタブレットを操作し、誰かと連絡を取った。通信先の相手とのやり取りを終えると、彼女は顔を真っ青にしていた。
「…やばい事が判明した。今さっき、アタシの知り合いの探偵に確認したんだが、清王朝のダイヤモンドに関する情報が広まったのは、ダイヤモンドが魔幇から盗まれたという噂の後だ。それ以前には、魔幇とダイヤの繋がりに関する話やダイヤが願いを叶える噂は殆ど無かった」
「ゑ?それマ?それはマジでヤバい!」
「ゑ?それマ?それはマジでヤバい!」
白髮黒羽は絶望した顔をし、ギャラハッドも慌てだした。二人は何に驚き怯えてるんだろう。
「おい、何がマズイんだ?俺にも説明してくれ」
僕の気持ちを代弁するかの様に劉炎嵐が質問した。
「まだ確定した訳じゃないが、アタシらは『集まった』んじゃなくて『集められた』可能性がある」
「集められた、だと?」
「そう。今回の騒動の黒幕は、ダイヤを盗み出す事が目的だったんじゃない。何でも願いが叶うダイヤが流出した噂を広めて、上海に人を集めるのが目的だったと考えられる」
「何の為だ?」
「それは…まだ分からない」
「いえ、答えはもう出ているはずです」
「集められた、だと?」
「そう。今回の騒動の黒幕は、ダイヤを盗み出す事が目的だったんじゃない。何でも願いが叶うダイヤが流出した噂を広めて、上海に人を集めるのが目的だったと考えられる」
「何の為だ?」
「それは…まだ分からない」
「いえ、答えはもう出ているはずです」
突如知らない女性の声がした。声の方を確認すると、それは神楽ちゃんが持ってた旅行カバンからだった。
「白髮さん、神楽さん、外に出て問題ないですか?」
「ああ。劉炎嵐も話し合いに応じてくれたし、ここで暴れてた奴も大人しくしてる」
「では、出ますね」
「ああ。劉炎嵐も話し合いに応じてくれたし、ここで暴れてた奴も大人しくしてる」
「では、出ますね」
旅行カバンがパカっと開き、小柄な少女が現れた。僕が言うのもなんだけど、貧乏くさい雰囲気を漂わせている。
「皆さんはじめまして。私は死神という登録名で便利屋をしているものです。死神ちゃんとお呼び下さい。私は清王朝のダイヤに興味があり持ち主を探し回っていたのですが、見ての通り私は戦闘が苦手なので、私の持つ情報を皆さんの前で話すという条件で白髮さん達に安全に運んで貰いました」
「白ー!また隠し事!?」
「白ー!また隠し事!?」
情報を小出しにする白髮黒羽にギャラハッドが抗議する。
「ま、ま、勘弁してくれよ。この子、魔人だけど本当に一般人並の強さしかないみたいなんだ。もしアタシが、アンタや劉炎嵐と交渉決裂してバトったら、流れ弾で死にかねないんだよ。な?」
「はい。私は腕力も主食ももやしです。それで、本題に移って良いですか?」
「はい。私は腕力も主食ももやしです。それで、本題に移って良いですか?」
死神ちゃんは自分が入っていたカバンに腰掛けると、さっき言いかけていた事を話し始めた。
「白髮さん、あなたは既にこの上海で何が起きているかを知る為のヒントを全て得ています。そして、あなたにはそれを理解する能力もあるはずです」
「お褒めにあずかり光栄だが、残念ながら、誰かの陰謀に巻き込まれてるとまでしか分かってないよ」
「そう思ってしまうのは、『黒もっこ』の仕業です黒もっこというのはですね…」
「お褒めにあずかり光栄だが、残念ながら、誰かの陰謀に巻き込まれてるとまでしか分かってないよ」
「そう思ってしまうのは、『黒もっこ』の仕業です黒もっこというのはですね…」
死神ちゃんは語った。彼女は過去に生死の狭間を彷徨った半死人の様な存在だと。そして、蘇って以来謎を具現化した黒い霧の様な物が感じ取れる様になった。
彼女はそれを黒もっこと呼んだ。黒い霧は謎そのもの。それに名前を付ける事で初めて存在が確定し、人の利益にも呪いにもなる。黒もっことは仮の名前、死神ちゃんが謎の正体を保留する為に付けた仮の呼び名。そして今の上海、特に清王朝のダイヤモンドがあるとされる場所には特に大きな謎が存在していると語った。
「白髮さんやその協力者がこの騒動の本質に到れないその訳は、謎そのものがまだその時ではないとして解決を拒否しているからです」
「なるほど。で、アタシらはどうすれば謎を解けるんだい?」
「謎に触れて名前を与えれば良いのです。ただし」
「なるほど。で、アタシらはどうすれば謎を解けるんだい?」
「謎に触れて名前を与えれば良いのです。ただし」
死神ちゃんは一度言葉を切り、迷いの籠った目で皆を見た。まるで、彼女も謎が解かれるのを恐れてる様だった。
「ただし何だ?」
「…失礼しました。続けます。えーとですね、謎は不用意に名前を与えると名付けた者を飲み込んでしまいます。つまり、ミスると死にます」
「見てきたかの様に言うねえ」
「鞍馬山にある謎に挑み、飲み込まれそうになったんです。その時は、名付けを保留する事を選択し何とか生還は果たしました」
「生還したが、何も得られなかったと」
「はい。ですが、今になって思うのです。私が、鞍馬山て謎を解かなかったのは、最初からそういう運命だったのではないかと。えーと、えーと」
「…失礼しました。続けます。えーとですね、謎は不用意に名前を与えると名付けた者を飲み込んでしまいます。つまり、ミスると死にます」
「見てきたかの様に言うねえ」
「鞍馬山にある謎に挑み、飲み込まれそうになったんです。その時は、名付けを保留する事を選択し何とか生還は果たしました」
「生還したが、何も得られなかったと」
「はい。ですが、今になって思うのです。私が、鞍馬山て謎を解かなかったのは、最初からそういう運命だったのではないかと。えーと、えーと」
死神ちゃんは頭をボリボリかきながら、どう伝えたら良いのか必死に考えている。
「ねー、その子ずっとカバンの中に居たんてしょ?なら一回休憩挟まない?」
ギャラハッドの提案で、屋台街のものを食べながら休憩となった。女子組が全員のゴハン買いに行き、劉炎嵐とギャラハッドが僕の見張りとして残った。
「待ってる間お話しない?」
ギャラハッドが僕に語り掛けてきた。
「アンタ、マフィアから足洗うのに失敗して、劉炎嵐に引導渡して貰いたかった感じだよね?」
「うん。馬鹿な事をしたと思ってる」
「本当にそうだぞ!」
「劉さん落ち着いて、熱いから。で、具体的には何やったの?」
「うん。馬鹿な事をしたと思ってる」
「本当にそうだぞ!」
「劉さん落ち着いて、熱いから。で、具体的には何やったの?」
隠しても仕方無いので、僕は全て話した。カタギとして働いていた場所を失った事から、無一文で逃亡中に拾い食いしたのを飢えた子供に見られて全て嫌になった事まで。
「その子、私知っでるかも」
「えっ」
「アンタが言ったのと似た特徴の子が観光客の食事盗もうとしてたから、捕まえて警察に届けたんだよ」
「そうか、あの子無事だったんだ」
「えっ」
「アンタが言ったのと似た特徴の子が観光客の食事盗もうとしてたから、捕まえて警察に届けたんだよ」
「そうか、あの子無事だったんだ」
僕の罪が軽くなった訳じゃないし、本当に同じ子供かも分からないけど、少し気分が楽になった気がした。それから暫く三人で話してると、女子組が買い物から戻り、食事しつつ話を聞く事になった。
「どこまで話しましたっけ。そう、私が鞍馬山で謎を解けなかった理由の説明でしたね。それは多分、白髮さんの言ってた『私達は黒幕に集められた』という事と関係してると思うんです」
死神ちゃん以外の全員にハテナマークが浮かんだ。分からないので黙って話の続きを聞く。
「つまりですね、黒幕は私を目的の為に必要だと思ってるから、私を殺さない様に動かした。一方、上海の謎には解くのに失敗したら死ぬ危険がある事を私は鞍馬山で出会った専門家から聞きました」
「そういう事か」
「そういう事か」
この中で一番賢そうな、インテリブタゴリラの白髮黒羽が死神ちゃんの言葉の意味に気付き頷いた。
「死神ちゃんは黒幕に命を握られてる、だから謎へ命を捧げられなかった。生還するにも、死んでしまうにも、まずは場代として命を預けないと謎に本当の意味で向き合えない仕様だと」
「そうです!それが言いたかったんです!謎を解くには謎に命を捧げないといけないけれど、私の命は黒幕の手の中だからそれは無理。そして、黒幕が皆さんを上海へ集めたという白髮さんの推理が正しければ」
「アタシらもダイヤの正体という謎へ挑めない」
「えっと…黒幕が凄い運命操作力を使って、死神ちゃんや白髮黒羽達を命の危険のある謎解きから遠ざけてたってコト?」
「そうです!それが言いたかったんです!謎を解くには謎に命を捧げないといけないけれど、私の命は黒幕の手の中だからそれは無理。そして、黒幕が皆さんを上海へ集めたという白髮さんの推理が正しければ」
「アタシらもダイヤの正体という謎へ挑めない」
「えっと…黒幕が凄い運命操作力を使って、死神ちゃんや白髮黒羽達を命の危険のある謎解きから遠ざけてたってコト?」
死神ちゃんは僕の確認にコクリと頷き、その後僕に向かって人差し指をピーンと突き立てる。
「そういう訳なので、謎解きに捧げられる命はこの場に一つしかありません」
「え、僕?」
「はい。私はずっと前からこの上海に漂う謎を感じ取る事が出来ましたが、鞍馬山へ登ってから、より強く詳しく感じられる様になりました。その声に耳を傾けると、あからさまに貴方を招いています」
「え、僕?」
「はい。私はずっと前からこの上海に漂う謎を感じ取る事が出来ましたが、鞍馬山へ登ってから、より強く詳しく感じられる様になりました。その声に耳を傾けると、あからさまに貴方を招いています」
それって、…僕に死んでこいってコト?
「誰かの命を賭ける必要があるんなら、俺の命を使え!」
劉炎嵐が僕の代わりに命を賭けると言ってくれたが、死神ちゃんは難しそうな表情で首を横へ振った。
「先程言った通り、黒幕にとって必要な人達はその時が来るまでは命が保証されているはずです。ですので、命を賭ける挑戦からは弾かれるのだと思います」
「その話に根拠はあるのか?」
「正直に言うとありません。私が謎に触れてそう感じる様になっただけの事で、ここまでの話自体が見当違いの妄想かも知れません。ただ、一つ確かな事があります」
「その話に根拠はあるのか?」
「正直に言うとありません。私が謎に触れてそう感じる様になっただけの事で、ここまでの話自体が見当違いの妄想かも知れません。ただ、一つ確かな事があります」
死神ちゃんは再度僕の方を向き、手を差し出した。
「この人に、己の命を賭けてでも真実を暴く覚悟があるのなら、私は彼を謎に挑ませる事が出来ます」
「僕が真実を…」
「上海の謎を解きたいのなら、私の手を取って下さい」
「僕が真実を…」
「上海の謎を解きたいのなら、私の手を取って下さい」
僕は考えた。正直、やっぱり死にたくない。けれど、ここで逃げてどうなる?僕を雇ってくれた店主や僕を許してくれた劉炎嵐に顔向け出来るのか?どうせ死ぬのなら…。
「おい、まず俺が試してから」
「待って。やるよ」
「待って。やるよ」
僕は腹筋の力と左手を使って上体を起こし、死に神ちゃんの手を取った。
「灰チワレ、またお前ヤケを起こして…」
「劉炎嵐、あの時君に許されて救われた命は、きっとここで使う為のものだったと思うんだ。もし、僕が死んだら…」
「劉炎嵐、あの時君に許されて救われた命は、きっとここで使う為のものだったと思うんだ。もし、僕が死んだら…」
突如意識が遠のき僕の目の前が真っ暗になった。
「言ってるそばから死んだぞ!!!」
「ゑ?これ死んでる?マジで死んでる?」
「お前達落ち着け!おい、死神ちゃん…こっちも息してねえ!」
「と、取り敢えず二人とも温かい場所へ移しましょう」
「ゑ?これ死んでる?マジで死んでる?」
「お前達落ち着け!おい、死神ちゃん…こっちも息してねえ!」
「と、取り敢えず二人とも温かい場所へ移しましょう」
皆の悲鳴を聞きながら、僕の意識は完全に消えていった。
■
■
■
「ここは…?」
気が付くと僕と死神ちゃんは知らない場所に居た。屋台街に似ているけど、僕達以外の人の気配は無い。
「謎が具現化した空間です。私達は霊体となってここに来ました。ここでは、現世のダメージに関係なく動けますよ」
「本当だ。手足が動くし、どこも痛く無い」
「ただし、謎に飲まれると存在ごと消えます。ソースは鞍馬山で会った専門家さんと犠牲者の方々の遺留品です」
「ナニソレ怖い。で、ここからどうすれば良いの?」
「奥の方へ行けば、謎の真相が解明するはずです。行きましょう」
「本当だ。手足が動くし、どこも痛く無い」
「ただし、謎に飲まれると存在ごと消えます。ソースは鞍馬山で会った専門家さんと犠牲者の方々の遺留品です」
「ナニソレ怖い。で、ここからどうすれば良いの?」
「奥の方へ行けば、謎の真相が解明するはずです。行きましょう」
僕達は黒もっこが作り出した屋台街の道を歩いていく。暫く歩くと、道が左右に分かれており、分岐点に看板が立ててあった。
【第一問、四百年の清王朝時代にあらゆる願いを叶えるダイヤモンドは存在した?YESなら右、NOなら左へ進め】
「…クイズ?」
「ですね。謎に対し迂闊に答えを出すと死ぬ。つまりこれは間違えたら貴方は多分…」
「縁起でもない事言わないでよ!えーと」
「ですね。謎に対し迂闊に答えを出すと死ぬ。つまりこれは間違えたら貴方は多分…」
「縁起でもない事言わないでよ!えーと」
僕はギャラハッドの言葉を思い出す。あいつは清王朝に噂通りのダイヤモンドがあったならそもそも滅びてないって言ってたな。
「よし、左に行こう」
「それで良いんですね?」
「うん。清王朝が滅んでるし願いの叶うダイヤは無かった確率の方が高い。それに、劉炎嵐のダイヤモンドも願いを叶える力は無かったしね」
「それで良いんですね?」
「うん。清王朝が滅んでるし願いの叶うダイヤは無かった確率の方が高い。それに、劉炎嵐のダイヤモンドも願いを叶える力は無かったしね」
左へ曲がり少し進むと、ズシンズシンと地響きがし始めた。
「うわっ、ま、間違えたって事?死ぬの、僕?」
「いえ、これは…来ます」
「いえ、これは…来ます」
ズシン ズシン
『侵入者発見。排除します』
地響きの正体はパワードスーツを着た女性がこちらに迫って来る足音だった。そして、女性の顔には見覚えがあった。
「神楽ちゃん!?何でここに居るの?この空間に来たのって僕達だけじゃないの?」
「いえ、あれは正体に近付かれた謎が防衛の意志を形にしたんだと思います。つまり、このルートは正解ですね」
「それはいいんだけど、アレはどうすればいいの?」
『排除開始』
「いえ、あれは正体に近付かれた謎が防衛の意志を形にしたんだと思います。つまり、このルートは正解ですね」
「それはいいんだけど、アレはどうすればいいの?」
『排除開始』
神楽ちゃんの偽物は、両手を構えると、大きな✕印を出現させてこちらへと発射してきた。
「うわっ!」
飛んできた✕印を横っ飛びで回避する。
✕印の速度はそこまで速くは無いし、腕の向きで軌道も読める。僕だって一応は用心棒になれるぐらいの戦闘経験はある。この空間なら怪我の心配も無さそうだし、魔人能力で相手の動きを封じてしまえばいけそうだ。
✕印の速度はそこまで速くは無いし、腕の向きで軌道も読める。僕だって一応は用心棒になれるぐらいの戦闘経験はある。この空間なら怪我の心配も無さそうだし、魔人能力で相手の動きを封じてしまえばいけそうだ。
「いけっ、黒蛇!」
髪の毛を数本抜き、蛇へと変化する様に念じる。だけど、魔人能力は発動しなかった。
「あれ?蛇にならない」
「ここは謎解きを求められる世界なので、物理的な攻撃は使えなさそうですね」
「それって、詰んだ…ってコト?」
「いえ、謎に正しい名前を与えれば良いのは間違い無いはず。取り敢えず、避け続けて隙を見つけましょう」
「ここは謎解きを求められる世界なので、物理的な攻撃は使えなさそうですね」
「それって、詰んだ…ってコト?」
「いえ、謎に正しい名前を与えれば良いのは間違い無いはず。取り敢えず、避け続けて隙を見つけましょう」
引き返す訳にもいかず、道もそんなに広くないから横を通り抜けるのも難しい。僕達は偽神楽ちゃんの攻撃を回避し続けた。すると、彼女が攻撃しながら同じ言葉を繰り返している事に気付いた。
『貴方が余計な事をしなければ、魔幇がこの混乱を解決し、元の平和が戻るだろう』
『だから今すぐ立ち去れ』
『だから今すぐ立ち去れ』
やはりそうだ。さっきから、このセリフを繰り返している。
「死神ちゃん、気付いた?あの偽神楽ちゃん、こちらに攻撃しながら何度も同じ言葉を繰り返してる」
「そうですね。しかし、何だかちょっとムカつきますね。魔幇による平和とか言って」
「うん。僕も昔所属していたからあんまり言える立場じゃないけど、あいつらの暴力と無法による支配は世間で言う平和とは程遠いよ」
「そうですね。しかし、何だかちょっとムカつきますね。魔幇による平和とか言って」
「うん。僕も昔所属していたからあんまり言える立場じゃないけど、あいつらの暴力と無法による支配は世間で言う平和とは程遠いよ」
先へ進めないストレスも合わさり、段々腹が立ってきた僕は、攻撃を避けながら言い返してやる事にした。
『貴方が余計な事をしなければ、魔幇がこの混乱を解決し、元の平和が戻るだろう』
「何が魔幇によって平和が戻るだよ!あいつらの支配は平和なんかじゃない!」
「何が魔幇によって平和が戻るだよ!あいつらの支配は平和なんかじゃない!」
僕がそう言い返した途端、偽神楽ちゃんの攻撃は止まった。
『うあ…ガガガ…アーッ!』
偽物は苦しみ唸り声を上げて震えだし、遂には爆発四散した。
「…何か、倒せたっぽい」
「…今の内に先へ進みましょう」
「…今の内に先へ進みましょう」
理屈は分からないけど、排除できたんでよし。また邪魔が入らない内に、僕達は先へと急いだ。そして暫く走ると、また分岐点に差し掛かった。
【第二問、魔幇は清王朝のダイヤモンドを所有していた?YESなら右へNOなら左へ進め】
「こっちだ!」
僕はYESの方を選び進んだ。
「こっちで間違い無いのですか?」
「うん。最初の問題では清王朝に願いを叶えるダイヤモンドは無いって答えたけど、魔幇には確かにダイヤモンドは存在した。劉炎嵐が今持ってるやつ。だからYESの方へ進んだんだ」
「うん。最初の問題では清王朝に願いを叶えるダイヤモンドは無いって答えたけど、魔幇には確かにダイヤモンドは存在した。劉炎嵐が今持ってるやつ。だからYESの方へ進んだんだ」
この答えは自信がある。一問目は僕の知らない過去の話だから推測でしか答えられなかったけれど、二問目は実際にこの目で見た事実の確認だ。
「しかし、清王朝時代の願いを叶えるダイヤモンドの話が嘘で、現代に存在する魔幇が持っていたダイヤモンドに清王朝のダイヤモンドという名前が付いてるのも不思議な話ですよね」
「その謎もこの先を進めば分かる様になってるのかな…、死神ちゃん気を付けて」
「その謎もこの先を進めば分かる様になってるのかな…、死神ちゃん気を付けて」
やはり来た。正解の道を進んでいる僕達の前に、再び進行を妨害する存在が現れた。
『ブリリアントてキュアキュアな暴食の魔法少女キュアイーター参上!謎を暴こうとする悪い子はオシオキだぞ♡』
「うわ、きっつう」
「うわ、きっつう」
足止めに現れたのは、魔法少女コスプレをしたギャラハッドの偽物だった。
「死神ちゃん、この空間って何で僕が今日出会った人達ばかり出るの?」
「それこそが、黒幕が彼らを必要としていた裏付けなんだと思います。神楽さんやギャラハッドさんの外見を参考にして防衛役に出来るという事は、彼らのデータをあらかじめ用意していたからに他ならないです」
「そ、そうなの?取り敢えず、前回のやり方で倒せるか試してみよう!」
『ファイアー!』
「それこそが、黒幕が彼らを必要としていた裏付けなんだと思います。神楽さんやギャラハッドさんの外見を参考にして防衛役に出来るという事は、彼らのデータをあらかじめ用意していたからに他ならないです」
「そ、そうなの?取り敢えず、前回のやり方で倒せるか試してみよう!」
『ファイアー!』
偽ギャラハッドは口から炎を吐きながら、こちらを煽って来る。思った通り、こちらを呷るセリフはループしていた。
『清王朝のダイヤモンドの伝説が嘘だってのはもう分かったんなら、さっさと帰えれっての!』
『いい?この騒動の正体は、魔幇の内ゲバなんだよ!』
『劉炎嵐がダイヤモンドを手に入れた経緯が正にそうじゃん!』
『魔幇の下っ端がダイヤモンドを奪って王になろうとした』
『それが連鎖反応して上海全土に被害が広がったのが真相なんだ!知らんけど』
『いい?この騒動の正体は、魔幇の内ゲバなんだよ!』
『劉炎嵐がダイヤモンドを手に入れた経緯が正にそうじゃん!』
『魔幇の下っ端がダイヤモンドを奪って王になろうとした』
『それが連鎖反応して上海全土に被害が広がったのが真相なんだ!知らんけど』
偽ギャラハッドの言葉を一通り聞いた僕は、攻撃を回避しながら死神ちゃんと相談する。
「どうやら、似てるのは外見だけみたいだね。本物のギャラハッドの攻撃なら、こんな簡単に避けられないよ」
「あの偽物の真髄は謎掛けの方なのでしょう。それで、発言の矛盾は見つかりましたか?」
「うーん、多分ここだって部分はあるんだけど…間違えたら僕死ぬんだよね?」
「鞍馬山で所持品を残して消えた人達と同じ運命になると思います」
「怖っ!でも、正解だと信じてやるしか無いよね」
「あの偽物の真髄は謎掛けの方なのでしょう。それで、発言の矛盾は見つかりましたか?」
「うーん、多分ここだって部分はあるんだけど…間違えたら僕死ぬんだよね?」
「鞍馬山で所持品を残して消えた人達と同じ運命になると思います」
「怖っ!でも、正解だと信じてやるしか無いよね」
僕は正解だと思う部分のセリフを待ち、言い返す。
『魔幇の下っ端がダイヤモンドを奪って王になろうとした』
「それは違うよ!確かにダイヤは存在していたけど、それは最強を表す象徴程度だった!だから、ダイヤを奪っても上海の王になれる訳じゃない!」
『…チクショー!』
「それは違うよ!確かにダイヤは存在していたけど、それは最強を表す象徴程度だった!だから、ダイヤを奪っても上海の王になれる訳じゃない!」
『…チクショー!』
偽ギャラハッドは小梅太夫ばりの悲鳴を上げて爆発四散した。
「良かった、合ってた!」
「はい。先へ向かいましょう」
「はい。先へ向かいましょう」
偽物を倒して進むとまた分岐点、そして問題文。
【第三問、真実はどうあれ魔幇にあったダイヤモンドは盗まれ、それを手にすればあらゆる願いが叶うという話が広まり、その結果多くの事件が発生した。黒幕の真の狙いは何か?上海を破壊し尽くす事なら右へ、魔幇を滅ぼす事なら左へ、あらゆる願いを叶える清王朝のダイヤモンドを手にするのが目的なら真っ直ぐ進め】
「む、ムズい」
いきなり二択から三択になってるし、問題文自体も難易度上がってるし、本当に難しい。
「頑張って下さい」
「死神ちゃんも一緒に考えてよ」
「私は案内人でしかないので。命を賭けて謎を明かすのは貴方の役割です」
「それなら仕方ないな。えーと…こっちだ!」
「死神ちゃんも一緒に考えてよ」
「私は案内人でしかないので。命を賭けて謎を明かすのは貴方の役割です」
「それなら仕方ないな。えーと…こっちだ!」
散々悩んだ末に、僕は直進する事にした。
「どうしてこの選択肢にしたんですか?」
「まず、上海の破壊が黒幕の目的という可能性はほぼ無いと思った。僕達がこれまで得た情報にはどこにもそんな要素は無かったからね。だから二択に絞れたけど、そこで白髮黒羽が言ってた言葉を思い出したんだ」
「白髮さんの言葉?」
「ほら、ダイヤの欠片と同化した人が居るって話。黒幕は魔幇にあったダイヤモンドとその人が同化したダイヤモンドを引き合わせたかったんじゃないかと思って…どうやら正解だったみたい」
『酒!酒!酒ぇ!』
「まず、上海の破壊が黒幕の目的という可能性はほぼ無いと思った。僕達がこれまで得た情報にはどこにもそんな要素は無かったからね。だから二択に絞れたけど、そこで白髮黒羽が言ってた言葉を思い出したんだ」
「白髮さんの言葉?」
「ほら、ダイヤの欠片と同化した人が居るって話。黒幕は魔幇にあったダイヤモンドとその人が同化したダイヤモンドを引き合わせたかったんじゃないかと思って…どうやら正解だったみたい」
『酒!酒!酒ぇ!』
正しい道を通る僕達を阻んだのは、白髮黒羽の偽物だった。髮と服の白黒が反転しており、赤ら顔をしている。くり魔んじゅう先輩を女体化した様な偽物だった。
『お前らぁ、アタシを論破してここ突破するつもりだなー!』
『なら、アタシにも考えがある!そうっ、ダイヤの事について何も話さねー!』
『とゆー訳てお帰りはあちらでーす!』
『なら、アタシにも考えがある!そうっ、ダイヤの事について何も話さねー!』
『とゆー訳てお帰りはあちらでーす!』
なんてこった。この偽物これまでのルールガン無視で通せんぼしてきたぞ。もう打つ手無しかと諦めかけたその時だった。
「いっけな〜い地獄地獄」
「誰?…何だ、登校中の女子高生か」
「誰?…何だ、登校中の女子高生か」
僕達の後ろからパンをくわえた女子高生が走ってきた。
「わたしの名前はしりあるキラ子!生死の境を彷徨ってたらこんな所に来ちゃった☆ムムッ、あそこに見えるのはわたしを死の淵に追いやったやつ!髪とスーツの色が左右逆な気もするけど気のせいだよね!」
そう言い、女子高生はフランスパンで偽白髪黒羽へ殴りかかった。
「どりゃー!」
『グワーッ』
「やったね!リベンジ達成!アレ?何か身体が…」
『グワーッ』
「やったね!リベンジ達成!アレ?何か身体が…」
偽白髮黒羽はフランスパンを脳天直撃して爆発四散し、その後女子高生も爆発四散した。
「死神ちゃん、ここって物理的な攻撃は無効じゃなかったっけ?」
「白髮さんの偽物が謎解きゲームを放棄した事で、一時的に物理攻撃が通るようになったのかも知れませんね」
「白髮さんの偽物が謎解きゲームを放棄した事で、一時的に物理攻撃が通るようになったのかも知れませんね」
何者か分からないまま秒で消えた女子高生に感謝しつつ、僕達は走り出す。これまでに、神楽ちゃん、ギャラハッド、白髮黒羽の偽物が現れたのなら、多分ゴールは近い。数分走り続けると、行き止まりになっていた。そして、その行き止まりにはいつもの様に問題文が書かれていた。
【最終問題、黒幕が欲しがっている、あらゆる願いを叶えるダイヤモンドはどこにある?口頭で答えよ】
最後の問題は選択肢すら無い上に、クソデカ難易度だった。
素直に考えるなら、劉炎嵐の持ってるアレに他の欠片が合わさった時に完成するとかだろうけれど、確証が無い。
「うーん、どう答えればいいんだろう」
ポケットに手を入れながら考えていると、指先に固いものが触れた。それは、白髮黒羽から借りたタブレットだった。取り出してスイッチを押すと、現実世界と同じ様にニュース画面を見る事が出来た。
「もう一度これを見て、復習しながら考えてみよう」
上海で起きた事件を読み返すと、ある思いに駆られた。
「ねえ死神ちゃん、改めて思ったんだけど、今上海に集まっている魔人って凄い能力者だらけだよね」
「そうですね。たとえ清王朝のダイヤモンドが無くても、上海に集まった人達が力を合わせれば大体の事は出来てしまえるんじゃないかと思いますね」
「…そうか、そういう事だったのか」
「そうですね。たとえ清王朝のダイヤモンドが無くても、上海に集まった人達が力を合わせれば大体の事は出来てしまえるんじゃないかと思いますね」
「…そうか、そういう事だったのか」
死神ちゃんの言葉を聞き、僕は確信した。問題文の書かれた壁の前へ行き、今思い付いた答えを大声で叫ぶ。
「あらゆる願いを叶える清王朝のダイヤモンドとは…、黒幕によって集められた魔人達だ!」
白髮黒羽が調べ上げたニュースに書かれていた魔人達と屋台街に集まった人達、彼らの能力を使えば望む結果を引き寄せる事も不老不死となる事も最強の存在になるのも可能だろう。
「黒幕は集めた魔人達の能力を掛け合わせて事実上の万能の願望器を作ろうとしているんだ!」
僕が最後の問題を答えた直後、問題文の書かれた壁が自動ドアの様に左右に開いた。そして、扉の先へ進むと最後の番人が現れた。
スタ スタ スタ
そいつは冷笑を浮かべ、感情の籠もらない瞳をこちらへ向けている。外見は劉炎嵐だが、雰囲気は正反対だった。
『不完全な解答だが、まあいい。オマケで正解にしてやる』
「オマケ?」
『お前は多人数の魔人能力を合わせる事で、事実上の万能の願望器を生み出そうとしていると推理したが、それは間違っている。彼らはダイヤモンドを生み出す材料などではない。彼らの出会いとこれまでの戦いこそが清王朝のダイヤモンドだ』
「それって…目的の為に争わせていたんじゃなく、争いこそが目的だったってコト?それってお人形遊びじゃん!」
『言い方は悪いがそういう事だな。こいつとこいつを戦わせたらどうなるか、こんな戦場にあいつを送り込めばどうなるか、二十数名の魔人達、それにお前の様な替えのきく噛ませ犬を加えればパターンは無限大。あの方の見たいシチュエーションが叶うという訳だ』
「それじゃあ、願いが叶うダイヤモンドの意味って…」
『そうだ、劉炎嵐も、白髮黒羽も、ギャラハッド・ソネットも、死神ちゃんも、一人一人があの方の大切なダイヤモンドだ。彼らは光を浴びたプリズムの様に様々な可能性を見せてくれた。そして、間もなく行われる最後の戦いでも、様々な結果を見せてあの方を喜ばさてくれるだろう』
「そんな…そんなの酷すぎる」
「オマケ?」
『お前は多人数の魔人能力を合わせる事で、事実上の万能の願望器を生み出そうとしていると推理したが、それは間違っている。彼らはダイヤモンドを生み出す材料などではない。彼らの出会いとこれまでの戦いこそが清王朝のダイヤモンドだ』
「それって…目的の為に争わせていたんじゃなく、争いこそが目的だったってコト?それってお人形遊びじゃん!」
『言い方は悪いがそういう事だな。こいつとこいつを戦わせたらどうなるか、こんな戦場にあいつを送り込めばどうなるか、二十数名の魔人達、それにお前の様な替えのきく噛ませ犬を加えればパターンは無限大。あの方の見たいシチュエーションが叶うという訳だ』
「それじゃあ、願いが叶うダイヤモンドの意味って…」
『そうだ、劉炎嵐も、白髮黒羽も、ギャラハッド・ソネットも、死神ちゃんも、一人一人があの方の大切なダイヤモンドだ。彼らは光を浴びたプリズムの様に様々な可能性を見せてくれた。そして、間もなく行われる最後の戦いでも、様々な結果を見せてあの方を喜ばさてくれるだろう』
「そんな…そんなの酷すぎる」
僕はショックのあまり何も言い返せず膝から崩れ落ちた。何か救いがあるって、何か皆の為になると思って上海の謎を解くためにここまで来たのに、分かったのはとても残酷な真実だった。偽劉炎嵐の説明で全部分かった訳じゃないけど、僕の生きてきたこの世界が巨大な存在によって作られた箱庭みたいなものだという事は嫌でも理解出来てしまった。
「あの、少しよろしいですか?」
僕が何も言えないでいると、死神ちゃんが偽劉炎嵐に向かって話し掛けた。
『なんだ?俺が答えられる事なら答えてやるぞ』
「二つ聞きたい事があります。一つ目は、私が今日まで生きてこられたのも、黒幕の力によるものなのか」
『ああ、そうだ。物語世界とメタ視点の繋ぎ役として、お前の様な奴も必要だった』
「私の生きたいという気持ち、これも貴方達によって操られた結果なのですね」
「二つ聞きたい事があります。一つ目は、私が今日まで生きてこられたのも、黒幕の力によるものなのか」
『ああ、そうだ。物語世界とメタ視点の繋ぎ役として、お前の様な奴も必要だった』
「私の生きたいという気持ち、これも貴方達によって操られた結果なのですね」
死神ちゃんはそう言い悲しそうな顔をした。無理もない。自分の意思と思っていた行動が全て他人の願いによる事を告げられたんだ。だけど、死神ちゃんはそれに打ちひしがれる事なく質問を続けた。
「もう一つの質問です。ここで得られる真実は、これで全部ですか?」
『ああ。ここがこの謎の終着点。お前達はここで得られる全てを知った』
「なら、この場所の名前は確定しましたね。ここは上位存在の魔人能力で作り出されたメタ空間です」
『ああ。ここがこの謎の終着点。お前達はここで得られる全てを知った』
「なら、この場所の名前は確定しましたね。ここは上位存在の魔人能力で作り出されたメタ空間です」
死神ちゃんがそう告げると背後から複数人の足音が聞こえた。誰かが、ここへと向かって来ている。
「お前達、無事か!」
それは本物の劉炎嵐だった。
「よくやったね。アンタらが頑張ってくれたから、アタシらもここへ来れた」
それは本物の白髮黒羽だった。
「アレ倒せばオケ?知らんけど」
それは本物のギャラハッドだった。
「ここへ来るまでに問題文があったので、大体の事情は理解してますのでご安心ください!」
それは本物の神楽ちゃんだった。
『そうか、謎が解かれた事で道が開かれたのか。それにしても素晴らしい精神力だな。ここに着くまでの速さも見事だが、自分達があの方の敷いたレールの上を走らされていたのを知ってなお誰も心が折れていない。流石はあの方に選別されたキャラクター達だ』
偽劉炎嵐は追い詰められた状況を寧ろ楽しんでいた。残酷な真実を知り、それぇも止まる事なく進んできた彼らを褒め称え拍手を送った。そして、彼らへの称賛を終えると、全く感情の籠もらない目で僕の方を見た。
『お前達に比べこいつはどうだ?未だに膝を付いて下を向いている。俺や元凶たるあの方へ怒りをぶつけて飛び掛ってくる気概も無い。所詮はやられ役のNPC…』
「それ以上喋るな」
「それ以上喋るな」
偽劉炎嵐の言葉は本物の拳によって強制的に止められた。彼が放った拳が偽物の顔面を撃ち抜いたからだ。
『クックック、謎が無くなったから暴力が普通に通って痛いぞ。いい一撃だ。タイミングといい威力といい、物語を盛り上げる最高のパンチだった。流石俺のオリジナルだな。主人公力が高い』
「黙れって言ってるだろ!」
「黙れって言ってるだろ!」
平然と起き上がってきた偽物へ更に顔面パンチを叩き込む。
「俺はな、この騒動を起こした奴の正体とかはどうでもいいんだよ!格闘大会のスポンサーが予想より金持ちだった程度にしか思わねえ!それはそれとして、お前らは他人より優れた力を社会を乱す為に使うクズだからぶちのめす!」
『期待通りの答えだ。だが、お前だけにいいカッコはさせられねえ。そこのお前達も俺に言いたい事を言ってやれ』
『期待通りの答えだ。だが、お前だけにいいカッコはさせられねえ。そこのお前達も俺に言いたい事を言ってやれ』
こいつはどの立場で物を言ってるんだ。
「要は転校生がアタシらの世界に降りてきて好き勝手してるんだろ?稀によくある話だし、これまで何度もこの世界の人々によって解決されたパターンさ。絶望なんてしてられないね」
「感謝するよ。ご先祖様のやらかしの精算方法がハッキリと示された。遠慮なく焼き尽くす!」
「私、正直怒ってます!ようやく他人の人形ではなくなり自由を得たって思えたばかりなんですよ!」
「ここへ辿り着き謎が解かれた事て分かりました。私はそれでも生きていたい。自分の選択で仕事を選び、好きな場所で好きな物を食べて、本当の意味で生きたい」
「「「「これが俺(アタシ・私)達の答えだ!!!」」」」
「感謝するよ。ご先祖様のやらかしの精算方法がハッキリと示された。遠慮なく焼き尽くす!」
「私、正直怒ってます!ようやく他人の人形ではなくなり自由を得たって思えたばかりなんですよ!」
「ここへ辿り着き謎が解かれた事て分かりました。私はそれでも生きていたい。自分の選択で仕事を選び、好きな場所で好きな物を食べて、本当の意味で生きたい」
「「「「これが俺(アタシ・私)達の答えだ!!!」」」」
まるで、映画のクライマックスの様だった。ここに集まった人達が、自分の意見を叫びながら敵へと挑む。そんな中、僕は顔を上げず、血が出るほどに下唇を噛み締め続けていた。
『いいそ、お前達最高だ。それじゃボスバトルといこうか。言っておくが、俺はラスボス前の踏み台だが、ここに居る全員が上手く力を合わせないと倒せない程度には強いぞ?そうでないと盛り上がらんからな』
偽劉炎嵐は、壁を背にして両手を広げる。
『来い』
辺りの気温が急速に下がっていく。劉炎嵐が偽物に向かって殴りかかるが、偽物もそこに拳を合わせる。本物と偽物の拳が激しくぶつかり合い、本物の腕が凍りついた。
『さっきはわざと殴らせたんだ。俺が本気を出せばこんなもんだせ』
「ちいっ!」
「ちいっ!」
劉炎嵐は凍りついた腕を震わせる。腕から湯気が立ち上り元通りに治ったが力負けしている事は、周囲の気温が証明している。
「劉さんよ、一人で突っ走るな。あいつの言う通り、アタシ達が力合わさないと本当に勝てない相手かもだぞ」
「そうみてえだな。手はあるか?」
「一人で無理なら二人でだ。ギャラハッド、劉さんと一緒に前に出てくれ」
「はいはい、こーゆーのは男子の仕事ですねっと。ファイアー!」
「そうみてえだな。手はあるか?」
「一人で無理なら二人でだ。ギャラハッド、劉さんと一緒に前に出てくれ」
「はいはい、こーゆーのは男子の仕事ですねっと。ファイアー!」
ギャラハッドは火を口から吐きながら偽劉炎嵐の周囲を飛び回る。偽劉炎嵐によって低下していた気温が僅かだが戻っていく。
「劉炎嵐、身体暖まってる?」
「ああ、これならあの野郎のムカつく顔を潰せそうだ」
「ああ、これならあの野郎のムカつく顔を潰せそうだ」
劉炎嵐は身体を捻り、全身を回転させながらパンチを放つ。それは再び偽物に受け止められたが、今度は腕は凍らない。お互いの拳がぶつかり合ったまま、互角の押し合いとなった。
『おお?楽しくなってきたな』
「ほざけ!屋台街に来てからずっと燻ってた怒り全部ぶつけてやる!」
「私も居るの忘れちゃ駄目だからね!」
「ほざけ!屋台街に来てからずっと燻ってた怒り全部ぶつけてやる!」
「私も居るの忘れちゃ駄目だからね!」
劉炎嵐とギャラハッドが偽劉炎嵐を押さえてる間、女子組も戦闘準備をしていた。
「神楽ちゃん、今どのぐらいの距離まで✕飛ばせる?」
「すみません、今はその…二メートルぐらいまでが精一杯です」
「死神ちゃんは何か出来そう?」
「あいつがまだ黒もっこだったなら、名前を与え直して無力化出来たかもですが、今はもう無理だと思います」
「そうか。なら、死神ちゃんは灰チワレの側にいてやってくれ。神楽ちゃんはアタシの背中に隠れてついてきな」
「すみません、今はその…二メートルぐらいまでが精一杯です」
「死神ちゃんは何か出来そう?」
「あいつがまだ黒もっこだったなら、名前を与え直して無力化出来たかもですが、今はもう無理だと思います」
「そうか。なら、死神ちゃんは灰チワレの側にいてやってくれ。神楽ちゃんはアタシの背中に隠れてついてきな」
白髮黒羽と神楽ちゃんも出陣。白髮黒羽は拳銃で、神楽ちゃんは謎の✕マークを使い、数メートル離れた先から前列の二人を援護する。
「頑張れ、あの偽物の劉炎嵐を倒せっ」
僕は隅っこで寒さに縮こまりながら小さく呟く。これが今の僕に出来る精一杯だった。
「…大丈夫ですか?」
僕の側に居るように言われた死神ちゃんが、声を掛けてくる。
「もう少し近くに来てくれると助かるかな」
「はい。…お互いこういう時、戦いに混ざれないと気まずいですよね」
「うん、偽物の劉炎嵐は一対一なら本物にも勝てそうなぐらいの化物だし、あんなのに近づく強さも勇気も僕には無い」
「はい。…お互いこういう時、戦いに混ざれないと気まずいですよね」
「うん、偽物の劉炎嵐は一対一なら本物にも勝てそうなぐらいの化物だし、あんなのに近づく強さも勇気も僕には無い」
僕はゆっくりと顔を上げて戦場を確認する。そして、今度は全員に聞こえる声で叫んだ。
「その偽物の劉炎嵐を倒せー!」
『何だあ!?』
『何だあ!?』
赤蛇が足元に絡みつき偽劉炎嵐がバランスを崩す。作戦成功だ。僕は偽劉炎嵐から全く相手にされてない事を利用し、唇を切って一匹の赤蛇を作り出していた。それを隠す為に膝を付いた姿勢を続け、けしかけるチャンスを狙っていた。
白髮黒羽が僕の意図に気付いて死神ちゃんと神楽ちゃんの身体で死角を作ってくれたおかげで、こうして気付かれる事無く足元まで接近させる事が出来た訳だ。
バランスを崩した偽劉炎嵐に対し、チャンスとばかりに僕と死神ちゃんを除く全員が襲い掛かる。白髮黒羽が反撃を封じ、神楽ちゃんが赤蛇の絡まった足を完全に硬直させ、ギャラハッドが片腕を押さえ込み、劉炎嵐がガードの空いた胴体にパンチとキックを連打して、遂に偽劉炎嵐は最後を迎えた。
『くそ、まさかこの俺が、あの方に選ばれていない噛ませ犬に不覚を取るとは…だが、これはこれで美味しい負け方かもな』
最後まで一切怒りの感情を見せず他人を見下し冷笑しながら偽劉炎嵐は爆発四散。その直後辺りは光に包まれ、僕は眩しさに思わず目を閉じた。
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目を開けると、僕はベッドで寝ていた。右肩の痛みで、ここが現実世界なのだと気付く。
「おっは〜、元気?」
ベッドから起き上がった僕を見て、ギャラハッドが近付いて来た。
「パン食べる?」
「一つ。後、出来れば水も」
「一つ。後、出来れば水も」
水と一緒に少しずつ食べながら、僕はギャラハッドに今どうなってるか尋ねた。
「ねえ、あの後どうなったの?」
「元の屋台街に戻って来た私達は、ダイヤモンド騒動の真実を信頼出来る人達と共有した。んで、今は黒幕を迎え撃つ準備中。んで、皆で交代でアンタの見張りしてたんだけど、もう大丈夫だよね?」
「元の屋台街に戻って来た私達は、ダイヤモンド騒動の真実を信頼出来る人達と共有した。んで、今は黒幕を迎え撃つ準備中。んで、皆で交代でアンタの見張りしてたんだけど、もう大丈夫だよね?」
僕は全身に異変が無いか確かめるが、特に異常は無かった。
「脱臼した右肩が痛い。そこ以外は何とも無いかな」
「もし何かあったらお医者さん呼んでね。んじゃ、そろそろ行くわ」
「もし何かあったらお医者さん呼んでね。んじゃ、そろそろ行くわ」
ギャラハッドは荷物をまとめて病室を出ようとする。その時僕は、伝えなきゃいけない事があると思い、彼を呼び止めた。
「ちょっと待って」
「ん?何」
「劉炎嵐に会ったら伝えて欲しいんだ。僕は大丈夫だから、心配しないでって」
「おけ。そんじゃ、行ってきま…あ、電話」
「ん?何」
「劉炎嵐に会ったら伝えて欲しいんだ。僕は大丈夫だから、心配しないでって」
「おけ。そんじゃ、行ってきま…あ、電話」
ギャラハッドは、自分のスマホが鳴ったのに気付き、通話を始めた。
「白?うん、アイツ起きたよ。…ゑ?もう一回言って!」
相手は白髮黒羽みたいだけど、ギャラハッドはかなり慌てている。
「お前、それマジで言ってるの?本当に…本当に黒幕の本名が早乙女ケンジなん!?」
(続く)