ダンゲロスSS上海
序夜『NeonSignも灯らぬソコで(新約)』
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dangerousss_shanghai
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中国、魔都上海。
言わずと知れた欲望の坩堝。あんまりな有様に聖人様も裸足で逃げ出す事請け合いの、この世の悪徳を煮詰めた地獄だ。
世間様から見れば、こんな街に住んでる連中は救いがたい化け物どもなんだろう。
言わずと知れた欲望の坩堝。あんまりな有様に聖人様も裸足で逃げ出す事請け合いの、この世の悪徳を煮詰めた地獄だ。
世間様から見れば、こんな街に住んでる連中は救いがたい化け物どもなんだろう。
が、じゃあその全員がどうしようもない怪物か、って言うと、意外とそんなことはない――悪い意味で 。
この街には、『どうしようもない怪物』と『怪物も喰い物に出来るもっとヤベー奴』で織りなされる、反吐が出るような階層構造が構築されている。それだけの話だ。
この街には、『どうしようもない怪物』と『怪物も喰い物に出来るもっとヤベー奴』で織りなされる、反吐が出るような階層構造が構築されている。それだけの話だ。
……これは、その階層の下の下、ガチのどん底にいる奴が語る話。
つまり、『俺』が語る話だ。
どんなエンディングかはともかく、反吐みたいな後味だけは保証する。
楽しませるつもりはないが、楽しんでくれるなら幸いだ。
つまり、『俺』が語る話だ。
どんなエンディングかはともかく、反吐みたいな後味だけは保証する。
楽しませるつもりはないが、楽しんでくれるなら幸いだ。
ここは上海の底の底、未開発の貧民街のさらに裏側。
表通りの電飾の遠慮のない輝きも、このどん底には届かない。
そのどん底の中の、さらにどん底の男。つまり俺。
俺の名は、カズマ。
……これは、そんな俺が、かすかな輝きを目にした話だ。
表通りの電飾の遠慮のない輝きも、このどん底には届かない。
そのどん底の中の、さらにどん底の男。つまり俺。
俺の名は、カズマ。
……これは、そんな俺が、かすかな輝きを目にした話だ。
* * *
「ひま~」
誰憚 ることもない、緊張感のない少年の声が薄暗い路地裏にこだまする。
俺は、声の発生源に目を向けることもせず、黙々と作業を続けた。
しゅー、と、気の抜ける音が暗がりに響く。俺の手の中のスプレー缶が塗料噴出 をしている証となるその音はしかし、少年の声にしばしばかき消されていた。
俺は、声の発生源に目を向けることもせず、黙々と作業を続けた。
しゅー、と、気の抜ける音が暗がりに響く。俺の手の中のスプレー缶が
「ひ~ま~、ひまひまひま~、つまんない~」
というか、少年の声がデカい。デカすぎる。
ヘッドホンで耳を塞いでおきゃよかったと思うも後の祭り。
俺の集中力の最終防衛線は俺の忍耐力に託された。
ヘッドホンで耳を塞いでおきゃよかったと思うも後の祭り。
俺の集中力の最終防衛線は俺の忍耐力に託された。
「カズマ~、遊んでよ~、どうせそれ誰も見やしないんだからさ~」
「うるせえよ」
「うるせえよ」
忍耐力、決壊。お疲れさまでしたまたのお越しをお待ちしております。
デカい溜息を一つついて、俺は声の主である少年の方を振り返った。
キラキラと煌めく金髪ブロンドが目に飛び込んでくる。こいつこの貧民街でどうやってこの髪質維持してるんだ、といつも不思議に思う。
デカい溜息を一つついて、俺は声の主である少年の方を振り返った。
キラキラと煌めく金髪ブロンドが目に飛び込んでくる。こいつこの貧民街でどうやってこの髪質維持してるんだ、といつも不思議に思う。
「お前それ俺の逆鱗に触れてるからな。これは俺の偉大な芸術だから誰も見ないとか関係ねえんだよ」
「でも誰も見ないのは大体本当じゃん。いや、今はぼくとカズマが見てるけど」
「でも誰も見ないのは大体本当じゃん。いや、今はぼくとカズマが見てるけど」
にこやかに微笑みながら繰り出してくる正論パンチはいつものように俺の心を抉る。
しかたねーだろ今の上海で見れるところにグラフティアートなんて書いたら速攻で処されるんだから、という事をオブラート3枚ぐらいに包んで反論を試みた俺だったが。
しかたねーだろ今の上海で見れるところにグラフティアートなんて書いたら速攻で処されるんだから、という事をオブラート3枚ぐらいに包んで反論を試みた俺だったが。
「つまり、カズマに根性がないから、ってことだね」
「……ぐっ」
「……ぐっ」
オッシャルトオリデス。
俺も、昔のような命知らずではいられない、ってことで。
俺も、昔のような命知らずではいられない、ってことで。
「……そう考えると、お前はすげーよな、カムパネルラ」
「? 何が?」
「いや、多分お前が俺みたいにグラフティが生きがいだったら、この街のスゲー所にグラフティ描いてるだろ」
「? 何が?」
「いや、多分お前が俺みたいにグラフティが生きがいだったら、この街のスゲー所にグラフティ描いてるだろ」
たとえば、今度オープンするらしい電波塔の展望室の外壁辺りに。
「そ~だね、それが面白いと思ったら、やってると思う」
「そう言う所、マネしたくないけど尊敬するわ」
「やった~、ほめられた!」
「……はぁ」
「そう言う所、マネしたくないけど尊敬するわ」
「やった~、ほめられた!」
「……はぁ」
溜息一つ。尊敬するという言葉に嘘はないが、どちらかと言えばマネしたくないの方が本体だ。
こいつはいつも、命が幾つあっても足りないような無茶をしようとする。
5年前、こいつらと一緒に日本から逃げて上海に駆け込んだ時も。
10年前、こいつがその身体の成長を止めたときも。
15年前、こいつらと出会った時も。
こいつは、いつもそうだったのだ。
こいつはいつも、命が幾つあっても足りないような無茶をしようとする。
5年前、こいつらと一緒に日本から逃げて上海に駆け込んだ時も。
10年前、こいつがその身体の成長を止めたときも。
15年前、こいつらと出会った時も。
こいつは、いつもそうだったのだ。
* * *
「そういやお前、今日はあのクソ女と一緒じゃないんだな」
「ジョバンニの事言ってる? そうだね。今日はちょっと大事な話し合いがあるんだって」
「話し合いって……あいつの方が呼ばれたってことか?」
「そーゆーこと」
「ジョバンニの事言ってる? そうだね。今日はちょっと大事な話し合いがあるんだって」
「話し合いって……あいつの方が呼ばれたってことか?」
「そーゆーこと」
嫌な予感がする。
『カムパネルラとジョバンニ』の本丸があのクソ女 の方なのは、俺も含めた数少ない人間しか知らないはずだ。
一応、部屋を借りるのはあいつがやってたりしたかもしれないが、まさか家賃の交渉が大事な話し合いってことはないだろ。
『カムパネルラとジョバンニ』の本丸が
一応、部屋を借りるのはあいつがやってたりしたかもしれないが、まさか家賃の交渉が大事な話し合いってことはないだろ。
「多分ね、ジョバンニは願いをかなえようとしてる」
「……なに?」
「願い事。10年前からずっと、そうしたいと思ってたことなんだって」
「……なに?」
「願い事。10年前からずっと、そうしたいと思ってたことなんだって」
…………。
「たぶん、今度は上手くいくって」
「そう言ってたよ」
「そう言ってたよ」
この上海に胡散臭い噂は数あれど、これほど胡散臭い噂もあるまい。
『願いをかなえる取引』
しかるべき代価を支払えば、どんな願いでもかなえてくれる、願望成就の権能持ち。
俺も含めた数少ない人間が、これが真実であることを知っている。
そして、あのクソ女が、それに見合う『代価』を求め続けていることも。
『願いをかなえる取引』
しかるべき代価を支払えば、どんな願いでもかなえてくれる、願望成就の権能持ち。
俺も含めた数少ない人間が、これが真実であることを知っている。
そして、あのクソ女が、それに見合う『代価』を求め続けていることも。
* * *
これは、俺があのクソ女と別れる話。
クソみたいな読み心地を保証できる、圧倒的バッドエンドストーリー。
気の向いたやつだけ、付き合ってくれ。
クソみたいな読み心地を保証できる、圧倒的バッドエンドストーリー。
気の向いたやつだけ、付き合ってくれ。