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バーチャルポッド
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バーチャルポッド
先輩であるみたらしっぽが作業しているという教室へ向かう。
「今先輩って何かしてるんですか?」
「新しい装置を設置するためのテストをしてるみたいだ。」
「新しい装置ですか」
「あぁ、詳しくはみたから聞いてくれ。私もよくは知らないんだ。」
「学校で装置のテストをするんですね~」
「この学校ではバーチャル世界関係の部活だったり、同好会がいっぱいあるからみたがやってても不思議には思われないな。」
そんなことを話しながら歩いていると…
「この教室だ。空き教室を借りてるんだ。」
「おーい、みたいるかー?客人だぞー。」
「ん?客人って誰?」
「し、失礼します」
「お邪魔します~」
「おぉチョコ!久しぶりだね。」
「お久しぶりです!」
「んーっと?そちらは?」
「同じクラスのマリーシュトレンです。」
「よろしく。もう友達作ってる早いなー。」
「今は何されてたんですか~?」
「これはバーチャルポッドって言って、違うバーチャル空間を展開できて一部屋だけ別空間にできる装置で。」
「部屋ごとにサーバーを設定する方法とは違うんですね~」
「それができる場所ならいいんだけど、ここは学校内の校舎としてもう生成されてるから、簡単にはいじれないんだよね~」
「それで体育祭には間に合いそうなのか?」
「今のところは順調だね。校庭の真ん中でちゃんと展開できるかどうかは試してみないとわからないね」
今までの体育祭は現実競技を校庭で行い、バーチャル世界内競技は体育館で映像出力して行われていたが、メイン競技「決闘大会」は近年校庭でのトラック競技と同等の盛り上がりと注目を集めていることから観客の分散を避けるべく、校庭内で見れるようにするための新しいシステムとしてバーチャルポッドの導入準備を一部生徒と協力して進めている。
バーチャルポッドとは、ペットボトル程度の大きさの卵型の装置を現実に設置し、接続するバーチャル空間サーバーと中心座標を指定した後、指定したバーチャル世界の座標に行き専用のアプリケーションを使って空間の最低四隅の座標を指定するとその座標のバーチャル映像を現実のバーチャルポッドから3D映像として表示できるデバイスである。
「今年の決闘大会はチョコちゃんにいいとこ見せてやれよ?」
「去年先輩も決闘大会に出られたんですね」
「あぁ全生徒対抗だからね、でもみたは勝ち上がって注目浴びるのが嫌だったから途中で手を抜いて負けたんだ!ずっと横で見てきた私しか気づいてなかったみたいだが、明らかにいつもの戦い方じゃなかった。」
「でも、相手さんも強いのではないんですか?」
「あんたら二人のいつもの実力からすれば、みたが1本のレイピアで戦っても勝てるくらいだと思うよ」
「まぁ、チョコはいつも通り戦ってみたらいいんじゃないかな。優勝狙っちゃおうぜ」
「わ、私もそんないきなり注目浴びるのはちょっと困りますよぉ....」
「もしかしたら決勝でみたと戦うのはチョコちゃんかもな」
「
「今先輩って何かしてるんですか?」
「新しい装置を設置するためのテストをしてるみたいだ。」
「新しい装置ですか」
「あぁ、詳しくはみたから聞いてくれ。私もよくは知らないんだ。」
「学校で装置のテストをするんですね~」
「この学校ではバーチャル世界関係の部活だったり、同好会がいっぱいあるからみたがやってても不思議には思われないな。」
そんなことを話しながら歩いていると…
「この教室だ。空き教室を借りてるんだ。」
「おーい、みたいるかー?客人だぞー。」
「ん?客人って誰?」
「し、失礼します」
「お邪魔します~」
「おぉチョコ!久しぶりだね。」
「お久しぶりです!」
「んーっと?そちらは?」
「同じクラスのマリーシュトレンです。」
「よろしく。もう友達作ってる早いなー。」
「今は何されてたんですか~?」
「これはバーチャルポッドって言って、違うバーチャル空間を展開できて一部屋だけ別空間にできる装置で。」
「部屋ごとにサーバーを設定する方法とは違うんですね~」
「それができる場所ならいいんだけど、ここは学校内の校舎としてもう生成されてるから、簡単にはいじれないんだよね~」
「それで体育祭には間に合いそうなのか?」
「今のところは順調だね。校庭の真ん中でちゃんと展開できるかどうかは試してみないとわからないね」
今までの体育祭は現実競技を校庭で行い、バーチャル世界内競技は体育館で映像出力して行われていたが、メイン競技「決闘大会」は近年校庭でのトラック競技と同等の盛り上がりと注目を集めていることから観客の分散を避けるべく、校庭内で見れるようにするための新しいシステムとしてバーチャルポッドの導入準備を一部生徒と協力して進めている。
バーチャルポッドとは、ペットボトル程度の大きさの卵型の装置を現実に設置し、接続するバーチャル空間サーバーと中心座標を指定した後、指定したバーチャル世界の座標に行き専用のアプリケーションを使って空間の最低四隅の座標を指定するとその座標のバーチャル映像を現実のバーチャルポッドから3D映像として表示できるデバイスである。
「今年の決闘大会はチョコちゃんにいいとこ見せてやれよ?」
「去年先輩も決闘大会に出られたんですね」
「あぁ全生徒対抗だからね、でもみたは勝ち上がって注目浴びるのが嫌だったから途中で手を抜いて負けたんだ!ずっと横で見てきた私しか気づいてなかったみたいだが、明らかにいつもの戦い方じゃなかった。」
「でも、相手さんも強いのではないんですか?」
「あんたら二人のいつもの実力からすれば、みたが1本のレイピアで戦っても勝てるくらいだと思うよ」
「まぁ、チョコはいつも通り戦ってみたらいいんじゃないかな。優勝狙っちゃおうぜ」
「わ、私もそんないきなり注目浴びるのはちょっと困りますよぉ....」
「もしかしたら決勝でみたと戦うのはチョコちゃんかもな」
「
放課後の寄り道
入学式から数日が経ちました。
学校へ向かうことには、まだ少し緊張します。
それでも、初日のようにDPo-Xの地図を何度も開いたり閉じたりすることはなくなりました。
一年二組の教室までの道。
昇降口。
購買。
食堂。
保健室。
それから、つきみ先輩の地図に大きな足跡がつけられていた、中庭のベンチ。
少しずつですが、学校の中に知っている場所が増えています。
「チョコちゃん、今日このあと時間ある?」
帰りの準備をしていると、シュトレンさんが机の横から聞いてきました。
「今日は特に予定はありません。シュトレンさんは?」
「私も。軽音同好会の体験会は来週だし、今日は学校をもう少し見て回ろうかなって」
「また校内散策ですか?」
「うん。まだ見てないところがいっぱいあるから」
シュトレンさんは、本当に学校を歩くことが好きなようです。
普通の教室でも、階段でも、校庭でも。
初めて見たものには、いつも楽しそうに目を向けます。
向こうで暮らしていた頃にはできなかった、普通の高校生活。
彼女にとっては、何でもない放課後も、その一つなのでしょう。
「でしたら、図書室へ行ってみませんか? つきみ先輩の地図に、静かでおすすめと書いてありました」
「いいね。行こう!」
二人で教室を出ようとした時、廊下の向こうから聞き慣れた声がしました。
「チョコちゃん!」
振り向くと、シロさんがこちらへ走ってきます。
今日はブレザーを着ず、シャツの袖を少しまくっていました。
その後ろから、キャラメル先輩とコレット先輩が歩いてきます。
「シロちゃん、廊下は走らない」
キャラメル先輩が注意します。
「走ってない。急いで歩いただけ」
「それ、走ってたよ」
コレット先輩が淡々と言いました。
「二人とも厳しくない?」
「見たままを言ってるだけ」
シロさんは少し不満そうにしながらも、私たちの前で立ち止まりました。
「ちょうどよかった。二人とも、このあと暇?」
「先ほど、図書室へ行こうと話していたところです」
「図書室か。じゃあ、その前に面白いもの見に行かない?」
「面白いもの?」
シュトレンさんがすぐに反応しました。
「みたが空き教室で、変な卵をいじってる」
「変な卵……ですか?」
その説明だけでは、何もわかりません。
「シロさん、もう少し詳しくお願いします」
「私もよく知らないんだよ。新しい装置のテストらしい」
コレット先輩が横から付け足します。
「変な卵という説明は間違ってないけどね。見た目は本当に卵みたいだった」
「学校で、新しい装置を試しているんですか?」
シュトレンさんの目が輝きます。
「この学校らしいね。見たい!」
「決まりだな」
シロさんは嬉しそうに笑いました。
キャラメル先輩は、私たちの反応を見てから言います。
「私はこのあと用事があるから行けないけど、あまり遅くならないようにね」
「わかってるって」
「シロちゃんではなく、チョコちゃんたちに言ったの」
「私の信用は?」
「日頃の積み重ねかな」
「厳しい」
キャラメル先輩とコレット先輩は、別の教室へ向かうため、そこで別れました。
私とシュトレンさんは、シロさんに案内されて廊下を歩きます。
「みた先輩は、どうして装置のテストをしているんですか?」
私が聞くと、シロさんは少し考えました。
「みた、こういうの好きだからな。バーチャル世界の座標とか、空間設定とか」
「授業の一環でしょうか」
「学校側が手伝う生徒を募集してたんだよ。この学校、バーチャル世界関係の部活や同好会も多いし、生徒が装置のテストに参加することも珍しくないから」
「先輩が装置を作ったわけではないんですね」
シュトレンさんが聞きます。
「そこまでではないと思う。みたが一から作ったなら、たぶんもっと寝不足になってる」
「そういう基準なんですか?」
「みたの場合は」
少しだけ納得できてしまいました。
シロさんは廊下の端にある教室の前で止まります。
普段は授業に使われていない、空き教室のようです。
扉の横には、
<機器動作試験中>
<許可なく入室しないでください>
と表示されていました。
「ここだ」
シロさんは扉を軽く叩きました。
「みたー、いるか?」
教室の中から、フェタ先輩の声が返ってきます。
「いるけど、シロは入る前に足元見てね。目印踏まないで」
「踏まないって」
扉が開きます。
「客人連れてきたぞー」
「客人って誰?」
教室の奥から、みた先輩が顔を上げました。
床に片膝をつき、小さな端末とケーブルを確認しています。
そのすぐ近くにはフェタ先輩。
教室の反対側では、アッサム先輩が壁際の光る目印を調整していました。
みた先輩は私たちを見ると、少し驚いた顔をします。
「チョコ。シュトレンさんも」
「お邪魔します、みた先輩」
「失礼します」
シュトレンさんが丁寧に頭を下げました。
「シロ、勝手に見学者増やしたの?」
フェタ先輩が聞きます。
「多い方が、テストになるだろ?」
「見学人数のテストはしてないよ」
「でも、二人とも見たいって」
「それならいいけど」
フェタ先輩は、私たちへ軽く手を振りました。
「足元の四角いマーカーは踏まないでね。今、位置合わせしてるから」
見ると、机をすべて壁際へ寄せた教室の床に、青白い目印が四つ置かれていました。
その中央に、小さな台。
そして台の上には、見慣れない装置が置かれています。
ペットボトルほどの大きさ。
丸みを帯びた、卵のような形。
表面には細い線が何本も走り、下の部分だけが淡く光っていました。
「これが、変な卵ですか?」
私が聞くと、みた先輩は少し笑いました。
「その説明で連れてこられたんだ」
「シロさんからは、そう聞きました」
「間違ってはいないけどね」
みた先輩は立ち上がり、装置の隣へ移動します。
「これは、バーチャルポッド」
「バーチャルポッド……」
「現実空間に、バーチャル空間の映像を立体投影するための装置だよ」
みた先輩が、中央の卵型装置を軽く示しました。
「今は、教室一部屋分のテストをしてる」
シュトレンさんは装置を覗き込みます。
「一部屋を、別のバーチャル空間に変えるんですか?」
「見た目だけなら、そんな感じかな」
「部屋そのものがバーチャル世界になるわけではないんですか?」
「ならない。床も壁も、ここにある机も本物のまま。違う場所の映像を、今いる空間へ重ねて見せるだけ」
みた先輩は床の四つのマーカーを指しました。
「現実側に、投影したい範囲を決める。次にバーチャル側でも、最低四つの角と中心座標を指定する。それを対応させると、選んだバーチャル空間が、こっちに同じ大きさで表示される」
「部屋ごとに接続先のサーバーを変える方法とは違うんですね」
シュトレンさんが言いました。
みた先輩は少し感心したように彼女を見ます。
「そう。学校のバーチャル校舎は、もう一つの大きな空間として生成されてるからね。空き教室だけを別サーバーへ変えるとなると、校舎全体の設定に影響が出る」
「それで、外から映像を重ねるんですね」
「うん。基礎の空間はそのままだから、使い終わったら投影を消すだけでいい」
シュトレンさんは納得したように何度も頷いていました。
「なんだか、舞台装置みたいですね」
「それに近いかも」
アッサム先輩が、壁際の端末から顔を上げます。
「ただし、見た目が変わっても物理的な位置は変わらないから、机や壁へぶつからないように安全表示を残す必要がある」
「そこが今、うまく合ってないんだよね」
フェタ先輩が言いました。
「三回目のテストでは、仮想の床が現実より三センチ高く表示された」
「前は四センチだったから、少し良くなった」
みた先輩が答えます。
「一センチを成果みたいに言わないで」
「成果ではあるよ」
「校庭全体に広げたら、その一センチがもっと目立つんだからね」
アッサム先輩まで、少し厳しい声を出します。
「わかってる」
みた先輩はそう言いながらも、どこか楽しそうでした。
ゲームをしている時とは少し違います。
戦うためではなく、仕組みを理解しようとしている顔です。
その姿を見ていると、同じ学校に通い始めたのに、まだ知らないみた先輩がたくさんいるのだと思いました。
学校へ向かうことには、まだ少し緊張します。
それでも、初日のようにDPo-Xの地図を何度も開いたり閉じたりすることはなくなりました。
一年二組の教室までの道。
昇降口。
購買。
食堂。
保健室。
それから、つきみ先輩の地図に大きな足跡がつけられていた、中庭のベンチ。
少しずつですが、学校の中に知っている場所が増えています。
「チョコちゃん、今日このあと時間ある?」
帰りの準備をしていると、シュトレンさんが机の横から聞いてきました。
「今日は特に予定はありません。シュトレンさんは?」
「私も。軽音同好会の体験会は来週だし、今日は学校をもう少し見て回ろうかなって」
「また校内散策ですか?」
「うん。まだ見てないところがいっぱいあるから」
シュトレンさんは、本当に学校を歩くことが好きなようです。
普通の教室でも、階段でも、校庭でも。
初めて見たものには、いつも楽しそうに目を向けます。
向こうで暮らしていた頃にはできなかった、普通の高校生活。
彼女にとっては、何でもない放課後も、その一つなのでしょう。
「でしたら、図書室へ行ってみませんか? つきみ先輩の地図に、静かでおすすめと書いてありました」
「いいね。行こう!」
二人で教室を出ようとした時、廊下の向こうから聞き慣れた声がしました。
「チョコちゃん!」
振り向くと、シロさんがこちらへ走ってきます。
今日はブレザーを着ず、シャツの袖を少しまくっていました。
その後ろから、キャラメル先輩とコレット先輩が歩いてきます。
「シロちゃん、廊下は走らない」
キャラメル先輩が注意します。
「走ってない。急いで歩いただけ」
「それ、走ってたよ」
コレット先輩が淡々と言いました。
「二人とも厳しくない?」
「見たままを言ってるだけ」
シロさんは少し不満そうにしながらも、私たちの前で立ち止まりました。
「ちょうどよかった。二人とも、このあと暇?」
「先ほど、図書室へ行こうと話していたところです」
「図書室か。じゃあ、その前に面白いもの見に行かない?」
「面白いもの?」
シュトレンさんがすぐに反応しました。
「みたが空き教室で、変な卵をいじってる」
「変な卵……ですか?」
その説明だけでは、何もわかりません。
「シロさん、もう少し詳しくお願いします」
「私もよく知らないんだよ。新しい装置のテストらしい」
コレット先輩が横から付け足します。
「変な卵という説明は間違ってないけどね。見た目は本当に卵みたいだった」
「学校で、新しい装置を試しているんですか?」
シュトレンさんの目が輝きます。
「この学校らしいね。見たい!」
「決まりだな」
シロさんは嬉しそうに笑いました。
キャラメル先輩は、私たちの反応を見てから言います。
「私はこのあと用事があるから行けないけど、あまり遅くならないようにね」
「わかってるって」
「シロちゃんではなく、チョコちゃんたちに言ったの」
「私の信用は?」
「日頃の積み重ねかな」
「厳しい」
キャラメル先輩とコレット先輩は、別の教室へ向かうため、そこで別れました。
私とシュトレンさんは、シロさんに案内されて廊下を歩きます。
「みた先輩は、どうして装置のテストをしているんですか?」
私が聞くと、シロさんは少し考えました。
「みた、こういうの好きだからな。バーチャル世界の座標とか、空間設定とか」
「授業の一環でしょうか」
「学校側が手伝う生徒を募集してたんだよ。この学校、バーチャル世界関係の部活や同好会も多いし、生徒が装置のテストに参加することも珍しくないから」
「先輩が装置を作ったわけではないんですね」
シュトレンさんが聞きます。
「そこまでではないと思う。みたが一から作ったなら、たぶんもっと寝不足になってる」
「そういう基準なんですか?」
「みたの場合は」
少しだけ納得できてしまいました。
シロさんは廊下の端にある教室の前で止まります。
普段は授業に使われていない、空き教室のようです。
扉の横には、
<機器動作試験中>
<許可なく入室しないでください>
と表示されていました。
「ここだ」
シロさんは扉を軽く叩きました。
「みたー、いるか?」
教室の中から、フェタ先輩の声が返ってきます。
「いるけど、シロは入る前に足元見てね。目印踏まないで」
「踏まないって」
扉が開きます。
「客人連れてきたぞー」
「客人って誰?」
教室の奥から、みた先輩が顔を上げました。
床に片膝をつき、小さな端末とケーブルを確認しています。
そのすぐ近くにはフェタ先輩。
教室の反対側では、アッサム先輩が壁際の光る目印を調整していました。
みた先輩は私たちを見ると、少し驚いた顔をします。
「チョコ。シュトレンさんも」
「お邪魔します、みた先輩」
「失礼します」
シュトレンさんが丁寧に頭を下げました。
「シロ、勝手に見学者増やしたの?」
フェタ先輩が聞きます。
「多い方が、テストになるだろ?」
「見学人数のテストはしてないよ」
「でも、二人とも見たいって」
「それならいいけど」
フェタ先輩は、私たちへ軽く手を振りました。
「足元の四角いマーカーは踏まないでね。今、位置合わせしてるから」
見ると、机をすべて壁際へ寄せた教室の床に、青白い目印が四つ置かれていました。
その中央に、小さな台。
そして台の上には、見慣れない装置が置かれています。
ペットボトルほどの大きさ。
丸みを帯びた、卵のような形。
表面には細い線が何本も走り、下の部分だけが淡く光っていました。
「これが、変な卵ですか?」
私が聞くと、みた先輩は少し笑いました。
「その説明で連れてこられたんだ」
「シロさんからは、そう聞きました」
「間違ってはいないけどね」
みた先輩は立ち上がり、装置の隣へ移動します。
「これは、バーチャルポッド」
「バーチャルポッド……」
「現実空間に、バーチャル空間の映像を立体投影するための装置だよ」
みた先輩が、中央の卵型装置を軽く示しました。
「今は、教室一部屋分のテストをしてる」
シュトレンさんは装置を覗き込みます。
「一部屋を、別のバーチャル空間に変えるんですか?」
「見た目だけなら、そんな感じかな」
「部屋そのものがバーチャル世界になるわけではないんですか?」
「ならない。床も壁も、ここにある机も本物のまま。違う場所の映像を、今いる空間へ重ねて見せるだけ」
みた先輩は床の四つのマーカーを指しました。
「現実側に、投影したい範囲を決める。次にバーチャル側でも、最低四つの角と中心座標を指定する。それを対応させると、選んだバーチャル空間が、こっちに同じ大きさで表示される」
「部屋ごとに接続先のサーバーを変える方法とは違うんですね」
シュトレンさんが言いました。
みた先輩は少し感心したように彼女を見ます。
「そう。学校のバーチャル校舎は、もう一つの大きな空間として生成されてるからね。空き教室だけを別サーバーへ変えるとなると、校舎全体の設定に影響が出る」
「それで、外から映像を重ねるんですね」
「うん。基礎の空間はそのままだから、使い終わったら投影を消すだけでいい」
シュトレンさんは納得したように何度も頷いていました。
「なんだか、舞台装置みたいですね」
「それに近いかも」
アッサム先輩が、壁際の端末から顔を上げます。
「ただし、見た目が変わっても物理的な位置は変わらないから、机や壁へぶつからないように安全表示を残す必要がある」
「そこが今、うまく合ってないんだよね」
フェタ先輩が言いました。
「三回目のテストでは、仮想の床が現実より三センチ高く表示された」
「前は四センチだったから、少し良くなった」
みた先輩が答えます。
「一センチを成果みたいに言わないで」
「成果ではあるよ」
「校庭全体に広げたら、その一センチがもっと目立つんだからね」
アッサム先輩まで、少し厳しい声を出します。
「わかってる」
みた先輩はそう言いながらも、どこか楽しそうでした。
ゲームをしている時とは少し違います。
戦うためではなく、仕組みを理解しようとしている顔です。
その姿を見ていると、同じ学校に通い始めたのに、まだ知らないみた先輩がたくさんいるのだと思いました。
一部屋だけの別世界
「それで、今から動かすの?」
シロさんが聞きます。
「最終確認してから」
みた先輩は端末を操作し、フェタ先輩とアッサム先輩へ視線を向けました。
「現実側の座標は?」
「四点とも固定済み」
フェタ先輩が答えます。
「障害物の警告表示も出る」
「投影サーバーは、学校の決闘訓練場」
アッサム先輩が続けました。
「中心座標の誤差、今のところ二・六センチ」
「まだ少しずれてるけど、見学なら問題ないかな」
「本番ではだめだけどね」
「わかってるって」
みた先輩はバーチャルポッドの上へ指を置きました。
「起動するよ。光が強くなるから、一度目を閉じて」
私たちは少し距離を取りました。
教室の照明が落ちます。
装置の表面を走る線が、青白く光り始めました。
低い動作音。
床の四つのマーカーから、光の壁が立ち上がります。
「目、開けて大丈夫」
みた先輩の声で、ゆっくり目を開きました。
「……わぁ」
教室が、なくなっていました。
正確には、見えなくなっていました。
足元には石畳。
周囲には高い観客席。
正面には、決闘場らしい円形の舞台。
頭上には青い空が広がっています。
先ほどまであった教室の壁も、黒板も、窓も見えません。
まるで一瞬で、別の場所へ移動したようです。
シュトレンさんは目を輝かせ、ゆっくり周囲を見回していました。
「本当に、教室が消えたみたい……」
「歩く時は気をつけて」
フェタ先輩が言います。
彼女が端末を操作すると、石畳の中に半透明の黄色い線が現れました。
壁際へ寄せてある机や椅子の輪郭です。
「これが現実側の障害物」
「映像の中に、現実の物の位置も出せるんですね」
「安全のためにね。投影へ夢中になって、机にぶつかったら困るから」
シロさんは足元を確かめるように、石畳を一歩踏みました。
靴底が触れる感覚は、教室の床のままです。
「見た目は石なのに、全然石じゃないな」
「映像だけだからね」
みた先輩が言いました。
「触覚まで再現する装置ではないよ」
シュトレンさんは、決闘場の壁へ手を伸ばしました。
指先が、石壁の映像を通り抜けます。
その奥に、半透明の教室の壁が一瞬だけ表示されました。
「不思議ですね」
「見えてるものと、触れるものが違うから、最初は違和感あるでしょ」
「でも、面白いです!」
シュトレンさんは、本当に楽しそうです。
「普通の高校の放課後に、空き教室が決闘場になるとは思いませんでした」
「この学校で普通を探すの、ちょっと難しいかもな」
シロさんが笑いました。
「シロさんが言うと、説得力があります」
「どういう意味?」
「そのままの意味です」
シロさんが少し不思議そうな顔をしました。
みた先輩は投影の端へ歩き、床を確認しています。
「やっぱり少し高い」
「二・六センチ」
フェタ先輩が言います。
「見ただけでわかるの?」
私が聞くと、みた先輩は石畳と靴の間を指しました。
「足が、少し床へ沈んで見えるでしょ」
よく見ると、みた先輩の靴底の一部が、石畳へ埋まっているように見えます。
「本当です」
「本番で競技者を投影した時、これがずれると浮いたり沈んだりして見える。だからできるだけ正確に合わせたい」
「本番というのは、体育祭ですか?」
「うん」
みた先輩は頷きました。
「この装置を使って、体育祭の決闘大会を校庭へ投影する計画があるんだ」
シロさんが聞きます。
「最終確認してから」
みた先輩は端末を操作し、フェタ先輩とアッサム先輩へ視線を向けました。
「現実側の座標は?」
「四点とも固定済み」
フェタ先輩が答えます。
「障害物の警告表示も出る」
「投影サーバーは、学校の決闘訓練場」
アッサム先輩が続けました。
「中心座標の誤差、今のところ二・六センチ」
「まだ少しずれてるけど、見学なら問題ないかな」
「本番ではだめだけどね」
「わかってるって」
みた先輩はバーチャルポッドの上へ指を置きました。
「起動するよ。光が強くなるから、一度目を閉じて」
私たちは少し距離を取りました。
教室の照明が落ちます。
装置の表面を走る線が、青白く光り始めました。
低い動作音。
床の四つのマーカーから、光の壁が立ち上がります。
「目、開けて大丈夫」
みた先輩の声で、ゆっくり目を開きました。
「……わぁ」
教室が、なくなっていました。
正確には、見えなくなっていました。
足元には石畳。
周囲には高い観客席。
正面には、決闘場らしい円形の舞台。
頭上には青い空が広がっています。
先ほどまであった教室の壁も、黒板も、窓も見えません。
まるで一瞬で、別の場所へ移動したようです。
シュトレンさんは目を輝かせ、ゆっくり周囲を見回していました。
「本当に、教室が消えたみたい……」
「歩く時は気をつけて」
フェタ先輩が言います。
彼女が端末を操作すると、石畳の中に半透明の黄色い線が現れました。
壁際へ寄せてある机や椅子の輪郭です。
「これが現実側の障害物」
「映像の中に、現実の物の位置も出せるんですね」
「安全のためにね。投影へ夢中になって、机にぶつかったら困るから」
シロさんは足元を確かめるように、石畳を一歩踏みました。
靴底が触れる感覚は、教室の床のままです。
「見た目は石なのに、全然石じゃないな」
「映像だけだからね」
みた先輩が言いました。
「触覚まで再現する装置ではないよ」
シュトレンさんは、決闘場の壁へ手を伸ばしました。
指先が、石壁の映像を通り抜けます。
その奥に、半透明の教室の壁が一瞬だけ表示されました。
「不思議ですね」
「見えてるものと、触れるものが違うから、最初は違和感あるでしょ」
「でも、面白いです!」
シュトレンさんは、本当に楽しそうです。
「普通の高校の放課後に、空き教室が決闘場になるとは思いませんでした」
「この学校で普通を探すの、ちょっと難しいかもな」
シロさんが笑いました。
「シロさんが言うと、説得力があります」
「どういう意味?」
「そのままの意味です」
シロさんが少し不思議そうな顔をしました。
みた先輩は投影の端へ歩き、床を確認しています。
「やっぱり少し高い」
「二・六センチ」
フェタ先輩が言います。
「見ただけでわかるの?」
私が聞くと、みた先輩は石畳と靴の間を指しました。
「足が、少し床へ沈んで見えるでしょ」
よく見ると、みた先輩の靴底の一部が、石畳へ埋まっているように見えます。
「本当です」
「本番で競技者を投影した時、これがずれると浮いたり沈んだりして見える。だからできるだけ正確に合わせたい」
「本番というのは、体育祭ですか?」
「うん」
みた先輩は頷きました。
「この装置を使って、体育祭の決闘大会を校庭へ投影する計画があるんだ」
体育祭の新しい見せ方
これまで、この学校の体育祭では、現実側の競技を校庭で行い、バーチャル世界側の競技は体育館の映像設備で中継していたそうです。
ただ、近年はバーチャル競技の中でも、全校生徒が参加する決闘大会の人気が高くなっています。
校庭の競技を見る人。
体育館で決闘大会を見る人。
観客が二つの会場へ分かれてしまうことが、以前から課題になっていたそうです。
「それで、今年は決闘大会を校庭に出すんだ」
みた先輩が説明します。
「バーチャル側の決闘場と選手を、そのまま現実の校庭に投影する。観客は校庭にいながら、現実競技も決闘大会も見られるようになる」
「この小さな装置一つで、校庭全体へ出せるんですか?」
私が聞くと、みた先輩は首を横に振りました。
「一つでは無理。本番では複数のポッドを校庭の周囲に置いて、投影範囲をつなぐ予定」
「今は、一台分の範囲を試しているんですね」
「そう。今日は教室。次は体育館。それが通ったら、校庭で日光や風の影響も含めて試す」
アッサム先輩が端末を見ながら言います。
「外では、見る位置によるずれも確認しないといけない。観客席の端から見た時に、選手が横へ引き伸ばされる可能性もあるから」
「思っていたより、大変な準備なんですね」
「体育祭まで、まだ時間があるように見えるけどね」
フェタ先輩が言いました。
「校庭規模になると、試すことが多いんだよ」
シュトレンさんは決闘場を見回しながら、嬉しそうに言います。
「でも、成功したらすごく盛り上がりそうです。現実の校庭に、大きな決闘場が現れるんですよね?」
「予定どおりならね」
「私、絶対見たいです!」
「新入生も全員参加だよ」
シロさんが言いました。
シュトレンさんは一瞬、動きを止めました。
「見るだけではないんですか?」
「全校生徒対抗だからな。シュトレンも、チョコちゃんも出る」
「私も……」
入学式の夜、エクレアさんが決闘はあったのかと聞いてきたことを思い出しました。
あの時は、入学式の日に決闘などしないと思っていました。
けれど、体育祭では本当に全校生徒が参加するようです。
「競技の細かい説明は、これから授業であるよ」
みた先輩が言いました。
「最初はクラス内の模擬戦から。武器や能力の使い方を確認して、体育祭前に組み合わせを決める」
「私、学校の決闘は初めてです」
「FoFとは少し違うけど、チョコならすぐ慣れると思う」
「そうでしょうか」
「サムライの動き、そのまま使える部分もあるし」
学校用の戦闘システムと、FoFの戦闘は同じではありません。
それでも、刀を使ってきた経験が、まったく無駄になるわけではないようです。
「チョコちゃん、普通に戦ったらかなり強そうだよな」
シロさんが言いました。
「まだ授業も受けていません」
「でも、FoFでは強くなっただろ?」
「みなさんに比べれば、まだまだです」
「その言い方する人、大体そこそこ強いんだよ」
フェタ先輩が笑います。
シュトレンさんは少し考えてから、みた先輩へ聞きました。
「みた先輩も、去年の決闘大会に出たんですよね?」
「出たよ」
「どこまで勝ったんですか?」
みた先輩が答えるより先に、シロさんが口を開きました。
「途中で負けた」
「シロ」
「でも、普通に負けたんじゃないだろ?」
シロさんの表情が、少しだけ楽しそうに変わりました。
「勝ち上がって目立つのが嫌だから、途中で手抜いて負けたんだ」
「手を抜いたんですか?」
私は驚いて、みた先輩を見ました。
みた先輩は、少し困ったように視線を逸らします。
「手を抜いたというか……無理に勝たなくてもいいかなと思っただけ」
「同じだろ」
「少し違う」
「いつものみたなら、あの相手はレイピア一本でも押し切れたと思う」
シロさんは断言しました。
「相手の方も、強かったのではないですか?」
シュトレンさんが聞きます。
「強かったよ」
みた先輩は、すぐに認めました。
「読み合いも上手かったし、普通に最後まで戦っても勝てたとは言い切れない」
「でも、途中から明らかに戦い方変えただろ」
「観客が増えてきたから」
「ほら」
「それだけで決めつけないでよ」
フェタ先輩が少し笑います。
「去年は気づかなかったけど、シロに言われて映像を見返したら、本当に途中から前へ出なくなってたよね」
「フェタまで」
「今ちょうど、動きの速い映像で投影テストしたかったところだし、再生してみたら?」
みた先輩は嫌そうな顔をしました。
「僕のじゃなくてもいいでしょ」
「学校側から使用許可が出てる映像で、一番速く動いてたのがみたの試合」
アッサム先輩が淡々と言います。
「検証のため」
「そう言われると断れないなぁ」
みた先輩は諦めたように、端末を操作しました。
ただ、近年はバーチャル競技の中でも、全校生徒が参加する決闘大会の人気が高くなっています。
校庭の競技を見る人。
体育館で決闘大会を見る人。
観客が二つの会場へ分かれてしまうことが、以前から課題になっていたそうです。
「それで、今年は決闘大会を校庭に出すんだ」
みた先輩が説明します。
「バーチャル側の決闘場と選手を、そのまま現実の校庭に投影する。観客は校庭にいながら、現実競技も決闘大会も見られるようになる」
「この小さな装置一つで、校庭全体へ出せるんですか?」
私が聞くと、みた先輩は首を横に振りました。
「一つでは無理。本番では複数のポッドを校庭の周囲に置いて、投影範囲をつなぐ予定」
「今は、一台分の範囲を試しているんですね」
「そう。今日は教室。次は体育館。それが通ったら、校庭で日光や風の影響も含めて試す」
アッサム先輩が端末を見ながら言います。
「外では、見る位置によるずれも確認しないといけない。観客席の端から見た時に、選手が横へ引き伸ばされる可能性もあるから」
「思っていたより、大変な準備なんですね」
「体育祭まで、まだ時間があるように見えるけどね」
フェタ先輩が言いました。
「校庭規模になると、試すことが多いんだよ」
シュトレンさんは決闘場を見回しながら、嬉しそうに言います。
「でも、成功したらすごく盛り上がりそうです。現実の校庭に、大きな決闘場が現れるんですよね?」
「予定どおりならね」
「私、絶対見たいです!」
「新入生も全員参加だよ」
シロさんが言いました。
シュトレンさんは一瞬、動きを止めました。
「見るだけではないんですか?」
「全校生徒対抗だからな。シュトレンも、チョコちゃんも出る」
「私も……」
入学式の夜、エクレアさんが決闘はあったのかと聞いてきたことを思い出しました。
あの時は、入学式の日に決闘などしないと思っていました。
けれど、体育祭では本当に全校生徒が参加するようです。
「競技の細かい説明は、これから授業であるよ」
みた先輩が言いました。
「最初はクラス内の模擬戦から。武器や能力の使い方を確認して、体育祭前に組み合わせを決める」
「私、学校の決闘は初めてです」
「FoFとは少し違うけど、チョコならすぐ慣れると思う」
「そうでしょうか」
「サムライの動き、そのまま使える部分もあるし」
学校用の戦闘システムと、FoFの戦闘は同じではありません。
それでも、刀を使ってきた経験が、まったく無駄になるわけではないようです。
「チョコちゃん、普通に戦ったらかなり強そうだよな」
シロさんが言いました。
「まだ授業も受けていません」
「でも、FoFでは強くなっただろ?」
「みなさんに比べれば、まだまだです」
「その言い方する人、大体そこそこ強いんだよ」
フェタ先輩が笑います。
シュトレンさんは少し考えてから、みた先輩へ聞きました。
「みた先輩も、去年の決闘大会に出たんですよね?」
「出たよ」
「どこまで勝ったんですか?」
みた先輩が答えるより先に、シロさんが口を開きました。
「途中で負けた」
「シロ」
「でも、普通に負けたんじゃないだろ?」
シロさんの表情が、少しだけ楽しそうに変わりました。
「勝ち上がって目立つのが嫌だから、途中で手抜いて負けたんだ」
「手を抜いたんですか?」
私は驚いて、みた先輩を見ました。
みた先輩は、少し困ったように視線を逸らします。
「手を抜いたというか……無理に勝たなくてもいいかなと思っただけ」
「同じだろ」
「少し違う」
「いつものみたなら、あの相手はレイピア一本でも押し切れたと思う」
シロさんは断言しました。
「相手の方も、強かったのではないですか?」
シュトレンさんが聞きます。
「強かったよ」
みた先輩は、すぐに認めました。
「読み合いも上手かったし、普通に最後まで戦っても勝てたとは言い切れない」
「でも、途中から明らかに戦い方変えただろ」
「観客が増えてきたから」
「ほら」
「それだけで決めつけないでよ」
フェタ先輩が少し笑います。
「去年は気づかなかったけど、シロに言われて映像を見返したら、本当に途中から前へ出なくなってたよね」
「フェタまで」
「今ちょうど、動きの速い映像で投影テストしたかったところだし、再生してみたら?」
みた先輩は嫌そうな顔をしました。
「僕のじゃなくてもいいでしょ」
「学校側から使用許可が出てる映像で、一番速く動いてたのがみたの試合」
アッサム先輩が淡々と言います。
「検証のため」
「そう言われると断れないなぁ」
みた先輩は諦めたように、端末を操作しました。
去年の決闘大会
周囲の決闘場が一度暗くなりました。
次に表示されたのは、去年の体育祭。
観客席には多くの生徒。
円形の舞台には、二人の選手が立っています。
その一人が、みた先輩でした。
今より少しだけ制服の着方が固く見えます。
右手には、細身のレイピア。
相手は長い槍を持っていました。
<記録映像を再生します>
合図と同時に、二人が動きます。
槍が突き出される。
みた先輩は、大きく下がりませんでした。
体をわずかにずらし、槍の横をすり抜けます。
レイピアの切っ先が、相手の肩へ触れる寸前で止まりました。
判定表示。
みた先輩に得点が入ります。
「速い……」
シュトレンさんが呟きました。
映像だとわかっていても、目で追うのが難しいほどでした。
相手の槍は長く、間合いでは有利に見えます。
それでも、みた先輩は攻撃の始まる直前に入り込み、短い一撃だけを入れて離れます。
FoFで見るグラディエーターの戦い方とも少し違います。
連撃ではなく。
相手が動く前に、その選択肢を一つずつ消していくような戦い方です。
「このままなら、先輩が勝ちそうです」
私が言うと、シロさんは頷きました。
「だろ?」
映像の中で、観客席の声が大きくなります。
みた先輩の名前を呼ぶ声。
次の攻撃を期待する声。
その直後でした。
みた先輩の動きが変わります。
先ほどまでなら入っていた場面で、踏み込みません。
相手の攻撃を避けても、反撃しません。
少しずつ舞台の外側へ追い込まれていきます。
「本当ですね」
シュトレンさんが言いました。
「急に、前へ出なくなりました」
「相手が対応した可能性もある」
みた先輩が言います。
「でも、ここ」
シロさんは映像の一場面を止めました。
相手の槍が大きく外れています。
みた先輩の正面には、何もありません。
一歩出れば、確実に攻撃できる距離です。
それでも、映像の中のみた先輩は動きませんでした。
数秒後、槍の柄による攻撃を受け、場外へ押し出されます。
試合終了。
「これは……」
私も、どう言えばいいのかわかりませんでした。
「わざとに見えるだろ?」
シロさんが言います。
「少し早めに負けただけ」
みた先輩は認めました。
「早めに負けるという言い方が、もうわざとですよ」
私が言うと、みた先輩は少しだけ目を丸くしました。
シロさんが笑います。
「チョコちゃんに怒られてる」
「怒ってはいません」
「でも、ちょっと残念そう」
「それは……」
続きを言うか迷いました。
みた先輩が注目を苦手にしていることは、何となくわかります。
無理に勝ち続ける必要もありません。
それでも。
あれだけ綺麗に戦っていたのに、自分から終わらせてしまったことは、少しだけ惜しいと思いました。
「今年は、普通に戦ってほしいです」
私は言いました。
「優勝してほしい、という意味ではありません。ただ……みた先輩が、どこまで戦えるのか見てみたいです」
みた先輩は、少しだけ困ったように笑いました。
「チョコにそう言われると、逃げにくいなぁ」
「逃げるつもりだったんですか?」
「まだ何も決めてないよ」
「今年はチョコちゃんに、いいところ見せないとな」
シロさんが、みた先輩の肩を叩きます。
「僕が誰かに見せるための大会ではないでしょ」
「でも、チョコちゃん見てるぞ?」
「それは……まあ」
みた先輩の返事が、少しだけ曖昧になりました。
シュトレンさんが楽しそうに私を見ます。
「チョコちゃんも出るんだよね?」
「はい。全校生徒参加ですから」
「もしかして、決勝でみた先輩とチョコちゃんが戦うこともある?」
「ありません」
私はすぐに答えました。
「早いね」
「私はまだ、一度も学校の決闘をしていません」
「チョコなら、普通に戦えば上まで行くと思うよ」
みた先輩が言いました。
「みた先輩まで、簡単に言わないでください」
「FoFでの動きを見てるから」
「でも、学校では別です」
「だから、まずは授業で確認だね」
「はい」
シロさんは腕を組み、満足そうに頷きました。
「決勝でみた対チョコちゃん。面白そうだな」
「面白がらないでください」
「実現したら、ポッドの宣伝にもなるね」
フェタ先輩まで言います。
「先輩と後輩の再会対決」
「フェタ先輩まで……」
シュトレンさんは、すでに観客として楽しみにしている顔です。
「私、どっちを応援すればいいんだろう」
「今から考えなくて大丈夫です」
「両方応援する!」
「それが一番だと思います」
みた先輩は、少し疲れたように息を吐きました。
「まだ体育祭の投影テストをしてる段階なのに、決勝の話まで進んでる」
「気が早い方が楽しいだろ?」
シロさんが言います。
「シロは早すぎるんだよ」
教室だったはずの決闘場に、笑い声が広がりました。
次に表示されたのは、去年の体育祭。
観客席には多くの生徒。
円形の舞台には、二人の選手が立っています。
その一人が、みた先輩でした。
今より少しだけ制服の着方が固く見えます。
右手には、細身のレイピア。
相手は長い槍を持っていました。
<記録映像を再生します>
合図と同時に、二人が動きます。
槍が突き出される。
みた先輩は、大きく下がりませんでした。
体をわずかにずらし、槍の横をすり抜けます。
レイピアの切っ先が、相手の肩へ触れる寸前で止まりました。
判定表示。
みた先輩に得点が入ります。
「速い……」
シュトレンさんが呟きました。
映像だとわかっていても、目で追うのが難しいほどでした。
相手の槍は長く、間合いでは有利に見えます。
それでも、みた先輩は攻撃の始まる直前に入り込み、短い一撃だけを入れて離れます。
FoFで見るグラディエーターの戦い方とも少し違います。
連撃ではなく。
相手が動く前に、その選択肢を一つずつ消していくような戦い方です。
「このままなら、先輩が勝ちそうです」
私が言うと、シロさんは頷きました。
「だろ?」
映像の中で、観客席の声が大きくなります。
みた先輩の名前を呼ぶ声。
次の攻撃を期待する声。
その直後でした。
みた先輩の動きが変わります。
先ほどまでなら入っていた場面で、踏み込みません。
相手の攻撃を避けても、反撃しません。
少しずつ舞台の外側へ追い込まれていきます。
「本当ですね」
シュトレンさんが言いました。
「急に、前へ出なくなりました」
「相手が対応した可能性もある」
みた先輩が言います。
「でも、ここ」
シロさんは映像の一場面を止めました。
相手の槍が大きく外れています。
みた先輩の正面には、何もありません。
一歩出れば、確実に攻撃できる距離です。
それでも、映像の中のみた先輩は動きませんでした。
数秒後、槍の柄による攻撃を受け、場外へ押し出されます。
試合終了。
「これは……」
私も、どう言えばいいのかわかりませんでした。
「わざとに見えるだろ?」
シロさんが言います。
「少し早めに負けただけ」
みた先輩は認めました。
「早めに負けるという言い方が、もうわざとですよ」
私が言うと、みた先輩は少しだけ目を丸くしました。
シロさんが笑います。
「チョコちゃんに怒られてる」
「怒ってはいません」
「でも、ちょっと残念そう」
「それは……」
続きを言うか迷いました。
みた先輩が注目を苦手にしていることは、何となくわかります。
無理に勝ち続ける必要もありません。
それでも。
あれだけ綺麗に戦っていたのに、自分から終わらせてしまったことは、少しだけ惜しいと思いました。
「今年は、普通に戦ってほしいです」
私は言いました。
「優勝してほしい、という意味ではありません。ただ……みた先輩が、どこまで戦えるのか見てみたいです」
みた先輩は、少しだけ困ったように笑いました。
「チョコにそう言われると、逃げにくいなぁ」
「逃げるつもりだったんですか?」
「まだ何も決めてないよ」
「今年はチョコちゃんに、いいところ見せないとな」
シロさんが、みた先輩の肩を叩きます。
「僕が誰かに見せるための大会ではないでしょ」
「でも、チョコちゃん見てるぞ?」
「それは……まあ」
みた先輩の返事が、少しだけ曖昧になりました。
シュトレンさんが楽しそうに私を見ます。
「チョコちゃんも出るんだよね?」
「はい。全校生徒参加ですから」
「もしかして、決勝でみた先輩とチョコちゃんが戦うこともある?」
「ありません」
私はすぐに答えました。
「早いね」
「私はまだ、一度も学校の決闘をしていません」
「チョコなら、普通に戦えば上まで行くと思うよ」
みた先輩が言いました。
「みた先輩まで、簡単に言わないでください」
「FoFでの動きを見てるから」
「でも、学校では別です」
「だから、まずは授業で確認だね」
「はい」
シロさんは腕を組み、満足そうに頷きました。
「決勝でみた対チョコちゃん。面白そうだな」
「面白がらないでください」
「実現したら、ポッドの宣伝にもなるね」
フェタ先輩まで言います。
「先輩と後輩の再会対決」
「フェタ先輩まで……」
シュトレンさんは、すでに観客として楽しみにしている顔です。
「私、どっちを応援すればいいんだろう」
「今から考えなくて大丈夫です」
「両方応援する!」
「それが一番だと思います」
みた先輩は、少し疲れたように息を吐きました。
「まだ体育祭の投影テストをしてる段階なのに、決勝の話まで進んでる」
「気が早い方が楽しいだろ?」
シロさんが言います。
「シロは早すぎるんだよ」
教室だったはずの決闘場に、笑い声が広がりました。
花が反対側
「それじゃ、次は生体アバターの同期を試したい」
みた先輩が言いました。
「誰か一人、テスト空間へ接続してくれる?」
「私が行く!」
シロさんがすぐに手を上げます。
「シロは動きすぎるから、最初の確認には向かない」
「どういう意味?」
「歩く、止まる、手を上げる。この三つだけやってほしいんだよ」
「できるって」
「途中で走るでしょ」
「少しだけ」
「ほら」
フェタ先輩が笑いました。
みた先輩は少し考えてから、私を見ます。
「チョコ、お願いしてもいい?」
「私ですか?」
「学校用アバターの小物があるから、向きの確認もしやすい」
みた先輩の視線が、花飾りへ向きました。
「もちろん、疲れてたら別の人にするけど」
「大丈夫です。やります」
教室の隅には、学校用の接続席が二つ置かれていました。
私は片方へ座り、DPo-Xから指定されたテスト空間へアクセスします。
視界が切り替わりました。
そこは、先ほど投影されていた決闘場です。
現実側の教室にいるみなさんの姿は見えません。
代わりに、音声だけが聞こえます。
『チョコ、聞こえる?』
「はい。聞こえています」
『正面の青い印まで歩いて』
「わかりました」
私は床に表示された印へ向かいます。
『止まって。右手を上げて』
指示どおりに動きました。
しばらく、誰からも声がありません。
「何か問題がありましたか?」
『チョコちゃん』
シュトレンさんの声が聞こえます。
『花が反対についてるよ』
「え?」
私は自分の髪へ触れました。
花は、いつもどおりの位置にあります。
『こっちから見ると、左と右が逆になってる』
『やっぱり座標の順番、反転してるね』
みた先輩の声。
『現実側の二番と四番、入れ替える』
フェタ先輩が端末を操作しているようです。
映像が一度暗くなりました。
数秒後、再び決闘場が表示されます。
『今度は?』
『合ってる』
シュトレンさんが答えました。
『花、いつもの側だよ』
花飾りが、装置の向きを確認する目印になるとは思いませんでした。
「役に立ってよかったです」
『チョコの花がなかったら、反転に気づくの遅れたかも』
みた先輩が言います。
『ありがとう、チョコ』
「いえ。私は立っていただけです」
『立ってるのも大事なテストだから』
続いて、みた先輩も隣の接続席からテスト空間へ入りました。
決闘場の反対側に、制服姿のみた先輩が現れます。
「みた先輩」
「今度は二人分の位置合わせ。チョコはそのままで、僕が動くから」
みた先輩がこちらへ歩いてきます。
現実側では、私たち二人のアバターが教室の中へ投影されているはずです。
「右へ一歩」
「はい」
「次、前へ」
指示に合わせて動きます。
みた先輩とすれ違う。
二人の間隔。
床との高さ。
歩いた時の残像。
現実側から、フェタ先輩とアッサム先輩の確認する声が聞こえました。
『同期遅延、〇・一秒以内』
『床のずれ、一・二センチ』
『かなり良くなったね』
しばらくして、決闘場の中央へ二人で向かい合うよう指示されました。
私は円の片側。
みた先輩は反対側。
まだ武器はありません。
試合でもありません。
ただ、動作確認のために立っているだけです。
それでも、先ほどの話を聞いたあとでは、少しだけ落ち着きませんでした。
『うわ、本当に決勝みたいだな』
シロさんの声が響きます。
「シロさん」
『まだ何もしてないって』
みた先輩も困ったように言いました。
『写真撮っていい?』
シュトレンさんが聞きます。
「テストの記録でしたら……」
『記念にもなるよ』
「シュトレンさん、それが目的ですね?」
『半分だけ』
小さなシャッター音が聞こえました。
現実の教室の中に投影された、二人の学校用アバター。
向かい合うみた先輩と私。
その間には、決闘開始前のような距離があります。
『投影試験、成功』
アッサム先輩の声がしました。
『記録保存。教室規模は、この設定で通せそう』
みた先輩が、少しだけ安心したように息を吐きました。
「よかった」
「お疲れさまです、みた先輩」
「チョコもね。助かったよ」
決闘場の映像が消えます。
現実へ戻る直前。
私の髪にある小さな花が、青い光を受けて揺れました。
みた先輩が言いました。
「誰か一人、テスト空間へ接続してくれる?」
「私が行く!」
シロさんがすぐに手を上げます。
「シロは動きすぎるから、最初の確認には向かない」
「どういう意味?」
「歩く、止まる、手を上げる。この三つだけやってほしいんだよ」
「できるって」
「途中で走るでしょ」
「少しだけ」
「ほら」
フェタ先輩が笑いました。
みた先輩は少し考えてから、私を見ます。
「チョコ、お願いしてもいい?」
「私ですか?」
「学校用アバターの小物があるから、向きの確認もしやすい」
みた先輩の視線が、花飾りへ向きました。
「もちろん、疲れてたら別の人にするけど」
「大丈夫です。やります」
教室の隅には、学校用の接続席が二つ置かれていました。
私は片方へ座り、DPo-Xから指定されたテスト空間へアクセスします。
視界が切り替わりました。
そこは、先ほど投影されていた決闘場です。
現実側の教室にいるみなさんの姿は見えません。
代わりに、音声だけが聞こえます。
『チョコ、聞こえる?』
「はい。聞こえています」
『正面の青い印まで歩いて』
「わかりました」
私は床に表示された印へ向かいます。
『止まって。右手を上げて』
指示どおりに動きました。
しばらく、誰からも声がありません。
「何か問題がありましたか?」
『チョコちゃん』
シュトレンさんの声が聞こえます。
『花が反対についてるよ』
「え?」
私は自分の髪へ触れました。
花は、いつもどおりの位置にあります。
『こっちから見ると、左と右が逆になってる』
『やっぱり座標の順番、反転してるね』
みた先輩の声。
『現実側の二番と四番、入れ替える』
フェタ先輩が端末を操作しているようです。
映像が一度暗くなりました。
数秒後、再び決闘場が表示されます。
『今度は?』
『合ってる』
シュトレンさんが答えました。
『花、いつもの側だよ』
花飾りが、装置の向きを確認する目印になるとは思いませんでした。
「役に立ってよかったです」
『チョコの花がなかったら、反転に気づくの遅れたかも』
みた先輩が言います。
『ありがとう、チョコ』
「いえ。私は立っていただけです」
『立ってるのも大事なテストだから』
続いて、みた先輩も隣の接続席からテスト空間へ入りました。
決闘場の反対側に、制服姿のみた先輩が現れます。
「みた先輩」
「今度は二人分の位置合わせ。チョコはそのままで、僕が動くから」
みた先輩がこちらへ歩いてきます。
現実側では、私たち二人のアバターが教室の中へ投影されているはずです。
「右へ一歩」
「はい」
「次、前へ」
指示に合わせて動きます。
みた先輩とすれ違う。
二人の間隔。
床との高さ。
歩いた時の残像。
現実側から、フェタ先輩とアッサム先輩の確認する声が聞こえました。
『同期遅延、〇・一秒以内』
『床のずれ、一・二センチ』
『かなり良くなったね』
しばらくして、決闘場の中央へ二人で向かい合うよう指示されました。
私は円の片側。
みた先輩は反対側。
まだ武器はありません。
試合でもありません。
ただ、動作確認のために立っているだけです。
それでも、先ほどの話を聞いたあとでは、少しだけ落ち着きませんでした。
『うわ、本当に決勝みたいだな』
シロさんの声が響きます。
「シロさん」
『まだ何もしてないって』
みた先輩も困ったように言いました。
『写真撮っていい?』
シュトレンさんが聞きます。
「テストの記録でしたら……」
『記念にもなるよ』
「シュトレンさん、それが目的ですね?」
『半分だけ』
小さなシャッター音が聞こえました。
現実の教室の中に投影された、二人の学校用アバター。
向かい合うみた先輩と私。
その間には、決闘開始前のような距離があります。
『投影試験、成功』
アッサム先輩の声がしました。
『記録保存。教室規模は、この設定で通せそう』
みた先輩が、少しだけ安心したように息を吐きました。
「よかった」
「お疲れさまです、みた先輩」
「チョコもね。助かったよ」
決闘場の映像が消えます。
現実へ戻る直前。
私の髪にある小さな花が、青い光を受けて揺れました。
小さな装置と大きな校庭
接続を終え、教室へ戻りました。
投影が停止すると、石畳も観客席も空も、一瞬で消えました。
残ったのは、机を壁際へ寄せた空き教室。
床のマーカー。
中央に置かれた、小さな卵型の装置だけです。
先ほどまで別世界を広げていたものとは思えないほど、小さく見えます。
「成功したね!」
シロさんが、みた先輩の背中を叩きました。
「まだ教室だけだよ」
「でも一歩進んだだろ?」
「うん」
みた先輩は装置の記録を確認しながら、少しだけ笑いました。
フェタ先輩が、シュトレンさんの撮った写真を見ます。
「向きも合ってる。花もちゃんと右側」
「この写真、チョコちゃんに送っていい?」
シュトレンさんが聞きます。
「はい。お願いします」
すぐに、DPo-Xへ写真が届きました。
何も知らずに見れば、本当に決闘場で向かい合っているように見えます。
「みた、少し大きく見えない?」
シロさんが写真を覗き込みました。
「え?」
「チョコちゃんより、実際以上に背が高い気がする」
フェタ先輩が測定値を確認します。
「縦方向、一・五パーセント拡大されてる」
「みた先輩、少しだけ身長を盛っていますね」
シュトレンさんが笑いました。
「僕が設定したわけじゃないよ」
「本番までに直さないと」
アッサム先輩が淡々と言います。
「決闘大会で、全員が少しずつ縦長になる」
「それはちょっと面白いな」
シロさんが言いました。
「面白くないよ」
みた先輩は、すぐに修正値を入力し始めました。
その横顔は、やはり楽しそうです。
「みた先輩」
「何?」
「体育祭まで、ずっとこの準備を続けるんですか?」
「毎日ではないけどね。僕たち以外にも担当がいるし」
「忙しくなりそうですね」
「学校のことだから。授業よりは気楽だよ」
フェタ先輩が横から言います。
「みたは、こういうの始めると授業より真剣になるけどね」
「授業も真剣に受けてるよ」
「先生に呼ばれる直前まで、別の画面見てる人が?」
「それはたまに」
「チョコちゃん、やっぱりみたの生活管理お願いね」
「フェタ先輩」
「何?」
「それは私より、フェタ先輩の方が適任だと思います」
「毎日隣にいるから、私はもうやってる」
「勝手に担当にしないでよ」
みた先輩が言いました。
私たちは少し笑いました。
シュトレンさんは、もう一度バーチャルポッドを見ます。
「一つの教室に、遠くの場所を持ってこられるんですね」
「うん」
「体育祭では、バーチャル世界で戦っている人を、現実側の人たちも同じ場所で見られる」
「そうなる予定」
「すごく、この学校らしいです」
シュトレンさんは嬉しそうに言いました。
「私、入学してまだ数日なのに、もう普通の高校生活が何なのかわからなくなってきました」
「シュトレンさんが思ってた普通とは、少し違うかもね」
みた先輩が答えます。
「でも、これはこれで楽しいです」
「ならよかった」
教室の外から、下校時間を知らせる音が聞こえました。
「そろそろ片づけるか」
シロさんが床のマーカーへ手を伸ばします。
「シロは触らないで」
フェタ先輩が言いました。
「なんで?」
「番号順に回収するから。絶対混ぜるでしょ」
「混ぜないって」
「じゃあ、一番だけ取って」
「一番どれ?」
「ほら」
「まだ取ってないだろ?」
「取る前に止められてよかった」
最後まで、シロさんの信用はあまり増えませんでした。
私はシュトレンさんと一緒に、壁際へ寄せていた椅子を元へ戻します。
みた先輩はバーチャルポッドを専用の箱へしまい、アッサム先輩と記録を確認していました。
小さな装置。
まだ校庭で使えるかはわかりません。
それでも、今日見た決闘場が、本当に体育祭の日の校庭へ現れるのだと思うと、少し楽しみになりました。
そして、その中へ自分も立つのだと思うと。
楽しみと同じくらい、緊張もしました。
投影が停止すると、石畳も観客席も空も、一瞬で消えました。
残ったのは、机を壁際へ寄せた空き教室。
床のマーカー。
中央に置かれた、小さな卵型の装置だけです。
先ほどまで別世界を広げていたものとは思えないほど、小さく見えます。
「成功したね!」
シロさんが、みた先輩の背中を叩きました。
「まだ教室だけだよ」
「でも一歩進んだだろ?」
「うん」
みた先輩は装置の記録を確認しながら、少しだけ笑いました。
フェタ先輩が、シュトレンさんの撮った写真を見ます。
「向きも合ってる。花もちゃんと右側」
「この写真、チョコちゃんに送っていい?」
シュトレンさんが聞きます。
「はい。お願いします」
すぐに、DPo-Xへ写真が届きました。
何も知らずに見れば、本当に決闘場で向かい合っているように見えます。
「みた、少し大きく見えない?」
シロさんが写真を覗き込みました。
「え?」
「チョコちゃんより、実際以上に背が高い気がする」
フェタ先輩が測定値を確認します。
「縦方向、一・五パーセント拡大されてる」
「みた先輩、少しだけ身長を盛っていますね」
シュトレンさんが笑いました。
「僕が設定したわけじゃないよ」
「本番までに直さないと」
アッサム先輩が淡々と言います。
「決闘大会で、全員が少しずつ縦長になる」
「それはちょっと面白いな」
シロさんが言いました。
「面白くないよ」
みた先輩は、すぐに修正値を入力し始めました。
その横顔は、やはり楽しそうです。
「みた先輩」
「何?」
「体育祭まで、ずっとこの準備を続けるんですか?」
「毎日ではないけどね。僕たち以外にも担当がいるし」
「忙しくなりそうですね」
「学校のことだから。授業よりは気楽だよ」
フェタ先輩が横から言います。
「みたは、こういうの始めると授業より真剣になるけどね」
「授業も真剣に受けてるよ」
「先生に呼ばれる直前まで、別の画面見てる人が?」
「それはたまに」
「チョコちゃん、やっぱりみたの生活管理お願いね」
「フェタ先輩」
「何?」
「それは私より、フェタ先輩の方が適任だと思います」
「毎日隣にいるから、私はもうやってる」
「勝手に担当にしないでよ」
みた先輩が言いました。
私たちは少し笑いました。
シュトレンさんは、もう一度バーチャルポッドを見ます。
「一つの教室に、遠くの場所を持ってこられるんですね」
「うん」
「体育祭では、バーチャル世界で戦っている人を、現実側の人たちも同じ場所で見られる」
「そうなる予定」
「すごく、この学校らしいです」
シュトレンさんは嬉しそうに言いました。
「私、入学してまだ数日なのに、もう普通の高校生活が何なのかわからなくなってきました」
「シュトレンさんが思ってた普通とは、少し違うかもね」
みた先輩が答えます。
「でも、これはこれで楽しいです」
「ならよかった」
教室の外から、下校時間を知らせる音が聞こえました。
「そろそろ片づけるか」
シロさんが床のマーカーへ手を伸ばします。
「シロは触らないで」
フェタ先輩が言いました。
「なんで?」
「番号順に回収するから。絶対混ぜるでしょ」
「混ぜないって」
「じゃあ、一番だけ取って」
「一番どれ?」
「ほら」
「まだ取ってないだろ?」
「取る前に止められてよかった」
最後まで、シロさんの信用はあまり増えませんでした。
私はシュトレンさんと一緒に、壁際へ寄せていた椅子を元へ戻します。
みた先輩はバーチャルポッドを専用の箱へしまい、アッサム先輩と記録を確認していました。
小さな装置。
まだ校庭で使えるかはわかりません。
それでも、今日見た決闘場が、本当に体育祭の日の校庭へ現れるのだと思うと、少し楽しみになりました。
そして、その中へ自分も立つのだと思うと。
楽しみと同じくらい、緊張もしました。
姉妹の放課後報告
家に戻ると、ミントちゃんが居間のソファで待っていました。
「おかえり、お姉ちゃん」
「ただいま戻りました」
「今日は遅かったね。シュトレンさんと図書室?」
「図書室へは行けませんでした」
「じゃあ、何してたの?」
私は鞄を置き、ミントちゃんの隣へ座りました。
「空き教室で、決闘場に立っていました」
ミントちゃんは数秒、黙りました。
「入学して数日で、学校生活が強すぎない?」
「本当に決闘したわけではありません」
「じゃあ、どういうこと?」
「バーチャルポッドという装置のテストです」
私は、今日見たものを順番に説明しました。
卵型の小さな装置。
一部屋へ別のバーチャル空間を投影できること。
体育祭の決闘大会を、現実の校庭へ表示する計画。
みた先輩が、フェタ先輩やアッサム先輩と一緒に調整していたこと。
私も動作確認へ参加したこと。
「お姉ちゃん、装置のテストまでしてきたんだ」
「立って、少し歩いただけです」
「でも、お姉ちゃんの花が役に立ったんでしょ?」
「はい。映像が左右反転していることに、シュトレンさんが気づいてくださいました」
「花、ちゃんとつけていってよかったね」
ミントちゃんは嬉しそうに笑いました。
「写真もあります」
DPo-Xから、シュトレンさんにもらった写真を端末へ送ります。
決闘場の中央。
向かい合う、みた先輩と私。
ミントちゃんは写真を見ると、少しだけにやりとしました。
「決勝戦?」
「違います」
「でも、そう見えるよ」
「動作確認です」
「みた先輩と二人で?」
「たまたまです」
「ふーん」
「ミントちゃん、その顔は何ですか?」
「別に」
明らかに何かを楽しんでいる顔です。
私は写真を閉じようとしましたが、ミントちゃんが端末を押さえました。
「待って。花の向き見たい」
「そこですか?」
「本当に反対だったの?」
「最初は、こちらから見た映像だけが逆になっていたそうです」
「今は合ってるね」
ミントちゃんは写真の花飾りと、私の現実の髪にある花を見比べました。
「みた先輩も、少し大きく見える」
「シロさんにも言われていました」
「ちょっと盛った?」
「装置の誤差です」
「本人が設定したんでしょ?」
「わざとではありません」
つい、みた先輩をかばうような言い方になってしまいました。
ミントちゃんは、ますます楽しそうな顔をします。
「お姉ちゃん、今年の決闘大会でみた先輩と戦うの?」
「シロさんたちも、同じことを言っていました」
「あるかもね」
「ありません。私は、まだ模擬戦の授業も受けていません」
「でもFoFでは戦ってるでしょ?」
「同じではありません」
「じゃあ、これから練習だね」
「出場は全校生徒なので、練習は必要だと思います」
「決勝まで行ったら教えて」
「今から決勝の話をしないでください」
ミントちゃんは声を上げて笑いました。
そのあと、私の肩へ頭を預けます。
「でも、楽しそうでよかった」
「はい」
「新しい友達もいて、先輩たちもいて。学校、ちゃんと楽しい?」
「まだ数日ですが……楽しいです」
入学前には、少し不安でした。
先輩たちとの距離。
新しいクラス。
知らない学校。
でも、今は。
シュトレンさんと一緒に教室を出て。
シロさんに連れられて。
みた先輩が取り組んでいるものを見て。
フェタ先輩やアッサム先輩と話して。
一つの教室が、別の世界へ変わる瞬間を見ました。
毎日、何か新しいことがあります。
「ミントちゃん」
「何?」
「もし家にバーチャルポッドがあったら、何を映したいですか?」
「うーん……FoFのギルドハウス」
「ギルドハウスですか?」
「お姉ちゃんがいつも行ってる場所、現実でも見てみたい」
「エクレアさんまで映したら、少しにぎやかになりそうです」
「映像だけなら大丈夫じゃない?」
「音も投影されると思います」
「じゃあ、アイリスさんも一緒に映さないとね」
「止める方が必要ですね」
「あと、猫カフェ」
「それはいいですね」
「でも、本物の猫はいないのか」
「映像ですから」
「やっぱり、猫は本物がいいなぁ」
二人で、まだ家にない装置の使い道を考えました。
ギルドハウス。
カフェのんびりひっそり。
FoFの王都。
月見丘。
いつか、本当に部屋の中へ映せる日が来るのでしょうか。
端末が振動しました。
シュトレンさんからのメッセージです。
<今日の写真、きれいに撮れてたね!>
<普通の高校の放課後って、空き教室が決闘場になるんだね>
私は少し考えて、返事を送りました。
<この学校では、普通なのかもしれません>
すぐに返信が届きます。
<じゃあ明日は、もっと普通のことをしよう!>
<購買でパンを買って、中庭で食べたい!>
それは、確かに高校生活らしい予定でした。
<はい。楽しみにしています>
送信すると、ミントちゃんが画面を覗き込みます。
「明日も待ち合わせ?」
「はい」
「今度こそ写真撮ってきてね」
「覚えていたんですね」
「もちろん」
ミントちゃんは、私の手を取って指を絡めました。
「お姉ちゃんの高校生活、私にもいっぱい教えて」
「はい。ミントちゃんの学校のことも、聞かせてくださいね」
「毎日話してるけどね」
「これからもです」
一つの教室に、別の世界を映す装置。
離れた場所を、今いる場所へ重ねる仕組み。
今日のバーチャルポッドを思い出しながら、私はミントちゃんの手を握り返しました。
学校。
家。
FoF。
それぞれ違う場所にある日常が、少しずつつながっています。
明日は、シュトレンさんと購買へ行きます。
いつか行われる体育祭では、校庭に決闘場が現れるかもしれません。
そして、その舞台に自分も立ちます。
楽しみなのか。
不安なのか。
今はまだ、どちらとも言い切れません。
ただ。
去年のみた先輩の試合を見た時に思ったことだけは、もう一度心の中で繰り返しました。
今年は、最後まで戦うところを見てみたい。
もし、その相手が本当に私になるのだとしたら。
その時は私も、途中で止まらずに戦いたいと思いました。
「おかえり、お姉ちゃん」
「ただいま戻りました」
「今日は遅かったね。シュトレンさんと図書室?」
「図書室へは行けませんでした」
「じゃあ、何してたの?」
私は鞄を置き、ミントちゃんの隣へ座りました。
「空き教室で、決闘場に立っていました」
ミントちゃんは数秒、黙りました。
「入学して数日で、学校生活が強すぎない?」
「本当に決闘したわけではありません」
「じゃあ、どういうこと?」
「バーチャルポッドという装置のテストです」
私は、今日見たものを順番に説明しました。
卵型の小さな装置。
一部屋へ別のバーチャル空間を投影できること。
体育祭の決闘大会を、現実の校庭へ表示する計画。
みた先輩が、フェタ先輩やアッサム先輩と一緒に調整していたこと。
私も動作確認へ参加したこと。
「お姉ちゃん、装置のテストまでしてきたんだ」
「立って、少し歩いただけです」
「でも、お姉ちゃんの花が役に立ったんでしょ?」
「はい。映像が左右反転していることに、シュトレンさんが気づいてくださいました」
「花、ちゃんとつけていってよかったね」
ミントちゃんは嬉しそうに笑いました。
「写真もあります」
DPo-Xから、シュトレンさんにもらった写真を端末へ送ります。
決闘場の中央。
向かい合う、みた先輩と私。
ミントちゃんは写真を見ると、少しだけにやりとしました。
「決勝戦?」
「違います」
「でも、そう見えるよ」
「動作確認です」
「みた先輩と二人で?」
「たまたまです」
「ふーん」
「ミントちゃん、その顔は何ですか?」
「別に」
明らかに何かを楽しんでいる顔です。
私は写真を閉じようとしましたが、ミントちゃんが端末を押さえました。
「待って。花の向き見たい」
「そこですか?」
「本当に反対だったの?」
「最初は、こちらから見た映像だけが逆になっていたそうです」
「今は合ってるね」
ミントちゃんは写真の花飾りと、私の現実の髪にある花を見比べました。
「みた先輩も、少し大きく見える」
「シロさんにも言われていました」
「ちょっと盛った?」
「装置の誤差です」
「本人が設定したんでしょ?」
「わざとではありません」
つい、みた先輩をかばうような言い方になってしまいました。
ミントちゃんは、ますます楽しそうな顔をします。
「お姉ちゃん、今年の決闘大会でみた先輩と戦うの?」
「シロさんたちも、同じことを言っていました」
「あるかもね」
「ありません。私は、まだ模擬戦の授業も受けていません」
「でもFoFでは戦ってるでしょ?」
「同じではありません」
「じゃあ、これから練習だね」
「出場は全校生徒なので、練習は必要だと思います」
「決勝まで行ったら教えて」
「今から決勝の話をしないでください」
ミントちゃんは声を上げて笑いました。
そのあと、私の肩へ頭を預けます。
「でも、楽しそうでよかった」
「はい」
「新しい友達もいて、先輩たちもいて。学校、ちゃんと楽しい?」
「まだ数日ですが……楽しいです」
入学前には、少し不安でした。
先輩たちとの距離。
新しいクラス。
知らない学校。
でも、今は。
シュトレンさんと一緒に教室を出て。
シロさんに連れられて。
みた先輩が取り組んでいるものを見て。
フェタ先輩やアッサム先輩と話して。
一つの教室が、別の世界へ変わる瞬間を見ました。
毎日、何か新しいことがあります。
「ミントちゃん」
「何?」
「もし家にバーチャルポッドがあったら、何を映したいですか?」
「うーん……FoFのギルドハウス」
「ギルドハウスですか?」
「お姉ちゃんがいつも行ってる場所、現実でも見てみたい」
「エクレアさんまで映したら、少しにぎやかになりそうです」
「映像だけなら大丈夫じゃない?」
「音も投影されると思います」
「じゃあ、アイリスさんも一緒に映さないとね」
「止める方が必要ですね」
「あと、猫カフェ」
「それはいいですね」
「でも、本物の猫はいないのか」
「映像ですから」
「やっぱり、猫は本物がいいなぁ」
二人で、まだ家にない装置の使い道を考えました。
ギルドハウス。
カフェのんびりひっそり。
FoFの王都。
月見丘。
いつか、本当に部屋の中へ映せる日が来るのでしょうか。
端末が振動しました。
シュトレンさんからのメッセージです。
<今日の写真、きれいに撮れてたね!>
<普通の高校の放課後って、空き教室が決闘場になるんだね>
私は少し考えて、返事を送りました。
<この学校では、普通なのかもしれません>
すぐに返信が届きます。
<じゃあ明日は、もっと普通のことをしよう!>
<購買でパンを買って、中庭で食べたい!>
それは、確かに高校生活らしい予定でした。
<はい。楽しみにしています>
送信すると、ミントちゃんが画面を覗き込みます。
「明日も待ち合わせ?」
「はい」
「今度こそ写真撮ってきてね」
「覚えていたんですね」
「もちろん」
ミントちゃんは、私の手を取って指を絡めました。
「お姉ちゃんの高校生活、私にもいっぱい教えて」
「はい。ミントちゃんの学校のことも、聞かせてくださいね」
「毎日話してるけどね」
「これからもです」
一つの教室に、別の世界を映す装置。
離れた場所を、今いる場所へ重ねる仕組み。
今日のバーチャルポッドを思い出しながら、私はミントちゃんの手を握り返しました。
学校。
家。
FoF。
それぞれ違う場所にある日常が、少しずつつながっています。
明日は、シュトレンさんと購買へ行きます。
いつか行われる体育祭では、校庭に決闘場が現れるかもしれません。
そして、その舞台に自分も立ちます。
楽しみなのか。
不安なのか。
今はまだ、どちらとも言い切れません。
ただ。
去年のみた先輩の試合を見た時に思ったことだけは、もう一度心の中で繰り返しました。
今年は、最後まで戦うところを見てみたい。
もし、その相手が本当に私になるのだとしたら。
その時は私も、途中で止まらずに戦いたいと思いました。