宇宙海賊とは、星間航路で略奪行為を働く非合法武装集団を指す。

概略

 人類が生活の場を宇宙空間に広げて以来、宇宙海賊も発生したものと思われる。海賊活動は星間交易に悪影響を及ぼす。食糧やエネルギーを自給できない惑星にとっては、文字通り死活問題となる。それゆえに歴代の宇宙軍は総力をあげて海賊対策に取り組んだ。銀河連邦最高の名将クリストファー・ウッド元帥、史上最悪の独裁者ルドルフ・フォン・ゴールデンバウムなども海賊討伐の英雄として頭角を現した。(36話)

 自由惑星同盟と銀河帝国が宇宙での覇権をめぐって争うこの時代でも、宇宙海賊は国家にとって重大な脅威である。作中で銀河帝国やフェザーン自治領での宇宙海賊での記載はないのでその実態は定かではないが、自由惑星同盟では海賊を帝国軍に次ぐ大敵としている。このため、航路警備にあたる地方警備部隊の戦力は対帝国部隊と同等以上であった。しかし、宇宙歴790年代財政委員長ジョアン・レベロと統合作戦本部長シドニー・シトレ元帥は大規模な軍縮を進め、主として地方警備部隊がその矢面に立たされた。地方警備部隊が弱体化したため、航路警備能力が低下した。(36話)

 また、「ミスター・コストカット」の異名を持つレベロは大胆に地方への補助金を削減し、窮状を訴える辺境星系政府を叱りつけた。(35話)中央への反発から一度は沈静化した星系ナショナリズムが復活し、辺境星系では横暴な自由惑星同盟に対する反感が募っていく。実際、辺境星系政府首脳部にさえ、海賊行為を「憲章に定められた正当な抵抗権の行使」と言ってのける人物があらわれている。(43話)辺境星系の窮状をまともに受ける一般庶民の反応は推して知るべしである。同盟領中央宙域(メインランド)の住人にとってはテロリストや麻薬密売人と同レベルの凶悪犯罪者として忌み嫌われる(41話)とはいえ、辺境星系の住人の宇宙海賊に対する忌避感はかなり薄れていると考えるべきであろう。

 このような背景から軍縮で軍を追われた軍人、統廃合された部隊から流出した武器などが宇宙海賊へ流れ込み、勢力のを拡大へとつながった。(36話)海賊への転職を果たした元軍人には元艦長や元司令など佐官クラスも少なくない。大手組織では参謀経験者が作戦立案にあたっているという。(41話)作中で、同盟領内で最大の勢力を誇るエル・ファシル星系と周辺の無人星系を拠点とするエル・ファシル海賊に至っては元同盟軍提督が参加するという事態に至っている。(36話)

 ただし、バンプール海賊の例のように、長年続いた宇宙海賊との戦いに終止符が打たれるケースも作中に存在する。(46話)

 幾たびかの海賊掃討作戦で打撃を受けたが、今後とも宇宙海賊の活動がやむことはないであろう。
最終更新:2017年12月14日 23:06