エル・ファシル海賊とはエル・ファシル星系と周辺の無人星系を拠点とする宇宙海賊をさす。

概略

 人類の生活圏が地球上に限られていた時代から海の流通は海賊の脅威にさらされてきた。自由惑星同盟においても経済発展を遂げたエル・ファシル星系から同盟各地を結ぶ航路が宇宙海賊の脅威にさらされるのは必然であったといえよう。この航路に巣食う宇宙海賊に限らず、自由惑星同盟領内で最大の勢力を誇る宇宙海賊がエル・ファシル海賊である。

 宇宙歴792年3月対帝国反攻作戦「自由の夜明け」により奪還された惑星エル・ファシルは人員削減、支出の圧縮といった行政のスリム化、規制撤廃、公共事業の民営化などの経済改革をすすめ、ハイネセン資本、フェザーン資本を呼び込むことで復興をはかった。この方針は一面的には成功を収め、凄まじい経済格差を伴いながらも経済的な繁栄をもたらした。しかし、その副産物としてこのエル・ファシルの富を目当てに集まった海賊がエル・ファシル海賊である。794年ごろからエル・ファシル海賊は急速にその勢力を拡大し、猛威を振るうようになった。(35話)エル・ファシル海賊はエル・ファシル星系と周辺の無人星系を拠点とし、活動範囲はエルゴン星系からティアマト星系に至るまでの国境星域にわたる。宇宙歴795年時点で総勢力は艦艇が約八〇〇〇隻、構成員が約四五万人に及び、その半数が黒色戦隊ドラキュラワシントン・ブラザーズガミ・ガミイ自由艦隊ヴィリー・ヒルパート・グループの五大組織のいずれかに属するといわれる。(36話)この急速な勢力拡大の背後には、同盟領内の混乱を狙う銀河帝国、同盟政府に反発するメルカルト星系など辺境星系政府の後押しがあったことが後日明らかとなった。(41話)また、彼らの最大の被害者であるエル・ファシル星系政府にすら海賊行為を「憲章に定められた正当な抵抗権の行使」と心情を吐露したゴルチノイ前農業長官がいた(43話)という事実は、エル・ファシル星系住民の中に協力者が存在する可能性をうかがわせる。
 宇宙歴795年2月には軍縮により弱体化したとはいえアスターテ星域軍の即応部隊がエル・ファシル海賊に敗れ、(30話)同年6月には第七方面軍即応部隊副司令官の猛将ラルフ・カールセン准将とすら痛み分けに持ち込んでいる。同月中旬エル・ファシル海賊の脅威を深刻にとらえた自由惑星同盟はエル・ファシル海賊専任の任務部隊第一三任務艦隊を臨時に編成するに至った。(36話)第一三任務艦隊は一定の成果を上げたが、同年12月には同艦隊が派遣される前の八割まで戻ってしまった。(38話)その上、同月リオ・コロラド事件が発生し、受動的な海賊対策の限界が明らかになった。こうして海賊討伐任務部隊エル・ファシル方面軍が編成された。(38話)

 宇宙歴796年4月に海賊討伐を開始したエル・ファシル方面軍の前に当初連戦連敗を続けた(41話)が、7月7日ゲベル・バルカルの戦いで方面軍主力を撃滅する大勝利を挙げた。(42話)そして、エル・ファシル民族主義者と手を組み、エル・ファシル革命政府の樹立を全宇宙に宣言した。(43話)しかし、エル・ファシル革命政府軍の主力を担ったエル・ファシル海賊はエル・ファシル方面軍司令官代行ヤン・ウェンリー准将の前にエル・ファシル星域会戦で壊滅した。(44話)

 作中では、この後エル・ファシル海賊に対する言及はないが、エル・ファシル海賊はなお活動を続けていると考えるべきであろう。

著名な海賊一覧

首領不明
首領不明 副首領ガブリエラ・ダ・シルバ
首領不明
首領ヴィリー・ヒルパート 参謀「ポール・アップストーン少佐*1」ことパウル・フォン・オーベルシュタイン大佐
首領「ガミ・ガミイ」ことレミ・シュライネン 幹部「タウニー・オウル(モリフクロウ)」ことイツァク・ゴーラン
  • 所属不明
最終更新:2017年10月11日 15:44

*1 トップストーンともされている(45話)がObersteinを英訳したUpstoneが正しいと判断した