星系ナショナリズムとはその提唱する星系の住人の権利擁護、星系共和国の自由惑星同盟脱退などを唱える思想である。星系民族主義とも言える。

概要

 自由惑星同盟アーレ・ハイネセン系の長征グループが、銀河連邦から分離した植民星の後裔であるロスト・コロニーとせめぎ合いながら、多国間軍事同盟「自由惑星同盟」を拡大していくとこによって成立した。元来同盟加盟国間の調整機関であった最高評議会と各委員会は加盟国からの独立性を強め、事実上の中央政府と化した。(54話)このように自由惑星同盟が中央集権国家と化していくにつれて、加盟国である各星系共和国では中央政府となった最高評議会と各委員会に対する反発も強まっていったものと考えられる。この反発が星系ナショナリズムの原点であろう。

 宇宙歴640年ダゴン星域会戦以降、ゴールデンバウム朝銀河帝国という強大な外敵の出現に団結して対抗する必要が生じたため、自由惑星同盟に対する反発はいったん沈静に向かった。しかし、首星ハイネセンを中心とする同盟領中央宙域(メインランド)との経済格差に苦しむ辺境宙域の諸星系では、星系ナショナリズムを掲げる地域政党の台頭、分離主義テロリズムの激化といった現象が起きている。(54話)

 特にラグナロック戦役後から顕在した銀河帝国の動乱によって、外敵の脅威は事実上消滅したとの認識が広まることにより、中央と辺境との対立はもはやだれの目にも明らかとなった。星系ナショナリズムの激化はもはや明らかである。

 作中で特に顕著なのがエル・ファシル星系エル・ファシル・ナショナリズム(39話 - 45話)であるが、ヤム・ナハル星系(36話)ムシュフシュ星系(36話 - 37話)でも中央と星系政府との軋轢の記載があり、この背後には星系ナショナリズムがあるものと考えられる。また、作中でガルボア終身首相が同盟憲章に反する強権政策を推進するメルカルト星系、天然ガスマネーに物を言わせてフェザーンから戦闘艦艇六〇〇隻を購入したパラトプール星系、同盟脱退をめぐる住民投票が宇宙歴794年3月に行われる予定とされたカニングハム星系(29話)、五三星系からなるアラウカニア条約機構などの宙域統合体の結成(72話)、同盟政府との条約の改定を求めたザーヴィエップ星系(123話)などの動きも星系ナショナリズムに関連していると思われる。

最終更新:2019年09月21日 08:18