「はぁはぁ……」
会場のどこかで、一人の男が必死の形相で疾走している。
爽やかな男前で、筋肉もガッチリした男だ。
爽やかな男前で、筋肉もガッチリした男だ。
彼の名前はゆうさく。淫夢ファミリーの一人である。
ACCEED所属のホモビ男優で、淫夢厨、ガチホモの双方から人気がある存在だ。
リアルでは結婚し、一児の父でもあるので、そういう意味では女性人気があると言ってもいいだろう。
そんな男が息を切らせながら、何度も後方を確認しつつ、何かから逃げていた。
ACCEED所属のホモビ男優で、淫夢厨、ガチホモの双方から人気がある存在だ。
リアルでは結婚し、一児の父でもあるので、そういう意味では女性人気があると言ってもいいだろう。
そんな男が息を切らせながら、何度も後方を確認しつつ、何かから逃げていた。
ビンビンビンビンビンビンビン……
ゆうさくの後方から不可思議な音を立てて彼を追い掛けているのは、一言で言うなら巨大な蜂だ。
大きさは優に五十センチを超え、それだけで尋常の存在でないことがうかがえる。
しかし、この蜂の一番おかしい所は、ズバリ顔だ。
大きさは優に五十センチを超え、それだけで尋常の存在でないことがうかがえる。
しかし、この蜂の一番おかしい所は、ズバリ顔だ。
そう、蜂の顔面はなぜか、今追われているゆうさくと同じだった。
この蜂の名前はスズメバチ。
2016年頃にニコニコ動画で一大ブームを作り上げた動画『スズメバチに刺されるゆうさく』に登場するスズメバチである。
動画の内容はスズメバチがゆうさくがスズメバチに刺されて死ぬだけの簡単なものだが、短いながらも強烈なインパクトを残し、幾多もの派生動画が生まれた。
2016年頃にニコニコ動画で一大ブームを作り上げた動画『スズメバチに刺されるゆうさく』に登場するスズメバチである。
動画の内容はスズメバチがゆうさくがスズメバチに刺されて死ぬだけの簡単なものだが、短いながらも強烈なインパクトを残し、幾多もの派生動画が生まれた。
、だがそれは、動画がヒットするたび、ゆうさくは死に続けていたということでもある。
いくら彼があらゆる方面から人気が出るほど性格がよくても、嫌になるのは必然。
殺される側からすればトラウマになってもおかしくない。
事実、彼は今もまたスズメバチに殺されようとしていた。
いくら彼があらゆる方面から人気が出るほど性格がよくても、嫌になるのは必然。
殺される側からすればトラウマになってもおかしくない。
事実、彼は今もまたスズメバチに殺されようとしていた。
しかしこれは決闘(デュエル)という名の殺し合い。
ゆうさくの敵はスズメバチだけではない。
そのことを彼は忘れていた。
ゆうさくの敵はスズメバチだけではない。
そのことを彼は忘れていた。
ドゴォォン
いきなりどこからか発砲音が聞こえたかと思うと、ゆうさくの視界に銃弾が入り込む。
その銃弾は彼の眼前を横切るかに見えたが、なんと銃弾が魔法の様に曲がり彼の額に向かってきた。
その銃弾は彼の眼前を横切るかに見えたが、なんと銃弾が魔法の様に曲がり彼の額に向かってきた。
突然曲がる銃弾に対処する術をゆうさくを持たない。
彼にできるのは、せめて少しでも遺言を残す位だ。
彼にできるのは、せめて少しでも遺言を残す位だ。
「俺の命壊れちまうよ……」
悲鳴のような言葉が聞き届けられることなく、ゆうさくの額に銃弾は貫かれ、彼の命はあっさり終わりを告げた。
【ゆうさく@真夏の夜の淫夢 死亡】
一方、いきなり獲物が死亡したスズメバチだが、こいつにそんなことで動揺するほどの知能はない。
こいつはただ、視界に入った参加者を無差別に刺し殺そうとするだけだ。
こいつはただ、視界に入った参加者を無差別に刺し殺そうとするだけだ。
ビンビンビンビンビンビンビン……
ゆうさくを追いかけていた時と同じ音を響かせながら、スズメバチはただ飛び回る。
【スズメバチ@真夏の夜の淫夢】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]基本方針:参加者を刺す
1:ビンビンビンビンビンビンビン……
[備考]
※視界に入った参加者を無差別に刺し殺そうとします。視界に入らない限りは何かしようとは考えません。
刺されれば毒耐性がない限り即死します。
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]基本方針:参加者を刺す
1:ビンビンビンビンビンビンビン……
[備考]
※視界に入った参加者を無差別に刺し殺そうとします。視界に入らない限りは何かしようとは考えません。
刺されれば毒耐性がない限り即死します。
◆
「行ったか……?」
ゆうさくが死亡し、スズメバチが飛び去った後、一人の少年が警戒しながら物陰から姿を現した。
左腕にはデュエルディスクを装着し、右手には拳銃が握られている。
左腕にはデュエルディスクを装着し、右手には拳銃が握られている。
彼の名前は南雲ハジメ。
ゲーム会社の社長である父と、少女漫画家の母を持つ高校生である。
彼はつい最近まで、本人視点では平々凡々とした日々を過ごしていた。
しかしある日、彼はクラスメイトと共に剣と魔法の異世界『トータス』に召喚されてしまう。
ゲーム会社の社長である父と、少女漫画家の母を持つ高校生である。
彼はつい最近まで、本人視点では平々凡々とした日々を過ごしていた。
しかしある日、彼はクラスメイトと共に剣と魔法の異世界『トータス』に召喚されてしまう。
トータスで最初に出会った者曰く、ハジメ達は人間を救うために神が呼び出した神の使徒だそうだ。
その言葉に嘘はなく、ステータスを調べれば誰もが凄い能力を持っていた。
南雲ハジメ以外は。
その言葉に嘘はなく、ステータスを調べれば誰もが凄い能力を持っていた。
南雲ハジメ以外は。
身体能力は人並みで、能力も代えの利くものでしかない。
これにより、彼は周りから一部を除いて露骨に見下されることになる。
これにより、彼は周りから一部を除いて露骨に見下されることになる。
それでも訓練し、身体能力は一般人よりはマシになったころ、クラスメイト全員でダンジョンに訓練に行くことになった。
オルクス大迷宮という、全百層で構成された地下ダンジョンだ。
上層にいるモンスターは大したことなく、下層に行くにつれてモンスターが強くなる仕様である。
オルクス大迷宮という、全百層で構成された地下ダンジョンだ。
上層にいるモンスターは大したことなく、下層に行くにつれてモンスターが強くなる仕様である。
そのダンジョンの上層で訓練が終わるはずだったが、クラスメイトの一人が罠にかかり一気に下層まで降りることになってしまう。
更にそこで強力なモンスターに襲われ、一行は絶体絶命のピンチに陥った。
紆余曲折の末、ハジメがモンスターを足止めすることで事なきを得かかるが、クラスメイトの一人の裏切りで、彼はオルクスの更なる下層へと叩き落されることになってしまった。
更にそこで強力なモンスターに襲われ、一行は絶体絶命のピンチに陥った。
紆余曲折の末、ハジメがモンスターを足止めすることで事なきを得かかるが、クラスメイトの一人の裏切りで、彼はオルクスの更なる下層へと叩き落されることになってしまった。
そこにこの殺し合いだ。
冥界の魔王を名乗る怪物の言葉を、ハジメはあまり疑わなかった。
地球とは違う異世界の存在を知ってしまうと、カードから生まれた世界があるかもしれないし、冥界が実在するかもしれない。
そして何より――
冥界の魔王を名乗る怪物の言葉を、ハジメはあまり疑わなかった。
地球とは違う異世界の存在を知ってしまうと、カードから生まれた世界があるかもしれないし、冥界が実在するかもしれない。
そして何より――
『この世には無数の世界がある。カードの種類だけデッキがあるように、だ。このデュエルでも様々な世界から決闘者を呼び寄せてある。楽しむが良い』
ハ・デスはもしかしたら、故郷に帰る術を持っているかもしれない。
それだけでハジメの心には希望が灯る。
だから彼は殺し合いに乗った。反逆ではなく、恭順で帰還を選んだのだ。
それだけでハジメの心には希望が灯る。
だから彼は殺し合いに乗った。反逆ではなく、恭順で帰還を選んだのだ。
本来なら、南雲ハジメは殺し合いに乗るような性格ではない。
少なくとも、人を傷つけて喜ぶ人間はなかった。
少なくとも、人を傷つけて喜ぶ人間はなかった。
だが殺し合いという極限状況と、願ってもない故郷への帰還。
そして裏切られたというショックが彼を変えた。
そして裏切られたというショックが彼を変えた。
別に、クラスメイトから好かれていると思っていたわけでは無い。
命の恩人になって感謝されたかったわけでもない。
だが、あの状況で殺されかかるほど憎まれているとは想定いなかった。
命の恩人になって感謝されたかったわけでもない。
だが、あの状況で殺されかかるほど憎まれているとは想定いなかった。
この時、ハジメはこう思った。
どうしてこんなことに。
なんで僕がこんな目に。
誰が悪い?
なんで僕がこんな目に。
誰が悪い?
神か。
ベヒモスか。
それとも、僕を裏切ったクラスメイトの誰かか。
ベヒモスか。
それとも、僕を裏切ったクラスメイトの誰かか。
いや、そんなことはもうどうでもいい。
裏切り者がどう扱われようが、トータスがどうなろうが知ったことか。
僕は帰る。
地球へ、故郷へ、家族の元へ帰る。
絶対に。
何を切り捨ててでも、どんなことをしてでも。
裏切り者がどう扱われようが、トータスがどうなろうが知ったことか。
僕は帰る。
地球へ、故郷へ、家族の元へ帰る。
絶対に。
何を切り捨ててでも、どんなことをしてでも。
その決意を固めながら支給品を調べてから他の参加者を探していると、何やら怪物に追われている成人男性を発見した。
そこでハジメは支給品の試運転を兼ねて、その男性を殺害した。
そこでハジメは支給品の試運転を兼ねて、その男性を殺害した。
なお、ここでゆうさくだけでなくスズメバチを殺さなかった理由は、ハジメが単にスズメバチを参加者ではなくNPCと勘違いしたからである。
そしてその得物は今、ハジメの手の中にある。
だけど次の瞬間、彼の手からその銃は消失した。
だけど次の瞬間、彼の手からその銃は消失した。
「本当に出たり消えたりするんだ。このスタンドって奴」
感心したように言葉を零すハジメ。
そう、さっきの銃はただの銃ではなくスタンド『皇帝(エンペラー)』である。
本来の所有者は別人だが、特別なDiscに封じ込められた状態で彼に支給されたのだ。
そう、さっきの銃はただの銃ではなくスタンド『皇帝(エンペラー)』である。
本来の所有者は別人だが、特別なDiscに封じ込められた状態で彼に支給されたのだ。
「となると、こっちのカードデッキにも何か意味があると見たほうがいいよな」
そう言いながらハジメは左腕に装着したデュエルディスクとデッキを見つめる。
とりあえず装着しただけで、デッキの詳しい内容もカードのルールも把握していないが、説明書きを見る限りTCGのデッキであることは理解していた。
少しだけデッキについての説明書きもあったが、どうやらこれは手札がゼロになった時に真価を発揮するもののようだ。
通常、TCGは手札が潤沢なほど強いのが常だが、どうやらこれは逆らしい。
ルールも知らないカードゲームのデッキな上、しかもそんな特殊なものを支給しないで欲しい、というのが彼の紛れもない本音だった。
とりあえず装着しただけで、デッキの詳しい内容もカードのルールも把握していないが、説明書きを見る限りTCGのデッキであることは理解していた。
少しだけデッキについての説明書きもあったが、どうやらこれは手札がゼロになった時に真価を発揮するもののようだ。
通常、TCGは手札が潤沢なほど強いのが常だが、どうやらこれは逆らしい。
ルールも知らないカードゲームのデッキな上、しかもそんな特殊なものを支給しないで欲しい、というのが彼の紛れもない本音だった。
「それにしても……」
とはいえ仕方ない、とばかりに割り切りながら、ハジメが自分が殺した男の死体を見る。
彼は何も感じなかった。
怪物を殺したことはあっても、人間を殺したのはこれが初めてなのに。
どんなことをしてでも願いを叶えると決意したからなのか、案外元から気付かなかっただけでそんな奴だったのかもしれない。
彼は何も感じなかった。
怪物を殺したことはあっても、人間を殺したのはこれが初めてなのに。
どんなことをしてでも願いを叶えると決意したからなのか、案外元から気付かなかっただけでそんな奴だったのかもしれない。
「どっちでもいいか」
ハジメはここで思索を止めた。
人殺しに何も感じない理由もまた、今の彼にはどうでもいいことだから。
人殺しに何も感じない理由もまた、今の彼にはどうでもいいことだから。
そしてハジメは死体が持っているデイパックを奪い、歩き始めた。
今の目的は腕にあるデッキに慣れること。
ならば適当な場所に入り、少し一人回しをしてみよう、と彼は考えていた。
今の目的は腕にあるデッキに慣れること。
ならば適当な場所に入り、少し一人回しをしてみよう、と彼は考えていた。
罪もない人間を殺して、その死体を漁る様はまさしく鬼畜外道。
今まで持っていたものと、本来の未来で手に入るはずだったものを全て捨て、南雲ハジメはただ一つの願いの為に突き進む。
今まで持っていたものと、本来の未来で手に入るはずだったものを全て捨て、南雲ハジメはただ一つの願いの為に突き進む。
【南雲ハジメ@ありふれた職業で世界最強】
[状態]:健康
[装備]:皇帝(エンペラー)のスタンドDisc@ジョジョの奇妙な冒険、鬼柳京介のデッキとデュエルディスク@遊☆戯☆王5D's
[道具]:基本支給品、ゆうさくのデイパック(基本支給品、ランダム支給品1~3)
[思考・状況]基本方針:優勝し、地球に帰る。
1:まずは皇帝(エンペラー)と支給されたデッキに慣れる
[備考]
※参戦時期はオルクス大迷宮65層から落下してから、真のオルクス大迷宮で目覚めるまでの間。
※スズメバチ@真夏の夜の淫夢 を参加者ではなく、NPCだと思っています。
[状態]:健康
[装備]:皇帝(エンペラー)のスタンドDisc@ジョジョの奇妙な冒険、鬼柳京介のデッキとデュエルディスク@遊☆戯☆王5D's
[道具]:基本支給品、ゆうさくのデイパック(基本支給品、ランダム支給品1~3)
[思考・状況]基本方針:優勝し、地球に帰る。
1:まずは皇帝(エンペラー)と支給されたデッキに慣れる
[備考]
※参戦時期はオルクス大迷宮65層から落下してから、真のオルクス大迷宮で目覚めるまでの間。
※スズメバチ@真夏の夜の淫夢 を参加者ではなく、NPCだと思っています。
※会場のどこかにゆうさくの遺体が放置されています。
【皇帝(エンペラー)のスタンドDics@ジョジョの奇妙な冒険】
南雲ハジメに支給。
ステータス【破壊力/B スピード/B 射程距離/B 持続力/C 精密動作性/E 成長性/E】
拳銃型のスタンドで、弾丸もスタンドなのが特徴。
弾道も操作できるが、視界から外れると操作が利かなくなる。
南雲ハジメに支給。
ステータス【破壊力/B スピード/B 射程距離/B 持続力/C 精密動作性/E 成長性/E】
拳銃型のスタンドで、弾丸もスタンドなのが特徴。
弾道も操作できるが、視界から外れると操作が利かなくなる。
【鬼柳京介のデッキとデュエルディスク@遊☆戯☆王5D's】
南雲ハジメに支給。
自身の手札を零にして行うハンドレスコンボをメインとするインフィルティデッキ。
地縛神は入っていない。
南雲ハジメに支給。
自身の手札を零にして行うハンドレスコンボをメインとするインフィルティデッキ。
地縛神は入っていない。