男達が斬り合っていると視認できる者が、果たして何人いるのやら。
得物を握って振るう、単純な動作なれど極めれば只人が捉える事は不可能。
肘から先が消え、金属をぶつけたのに似た音が繰り返される。
与えられた時間全てを鍛錬に費やした達人でさえ、そう言うのが精一杯。
人でいられなかった鬼と、生まれながらに鬼を超えた人が刃を交わす。
兄弟共に、剣以外に語らう術を知らぬとばかりに。
得物を握って振るう、単純な動作なれど極めれば只人が捉える事は不可能。
肘から先が消え、金属をぶつけたのに似た音が繰り返される。
与えられた時間全てを鍛錬に費やした達人でさえ、そう言うのが精一杯。
人でいられなかった鬼と、生まれながらに鬼を超えた人が刃を交わす。
兄弟共に、剣以外に語らう術を知らぬとばかりに。
得物を抜いた瞬間より、黒死牟は攻勢を保っていた。
一呼吸の間すら腕を休めず、ただひたすら何もさせじと振るい続ける。
斬撃一つの度に細かく狙いを調整し、一定方向からは刀を走らせない。
常に軌道が変化し四方八方から迫る刃は、まるで複数人を相手取っているかのよう。
正面を凌げば既に次の剣が三つ四つ纏めて襲い来る。
躱す、防ぐ、受け流す以外に何一つ許しはしない猛攻であった。
一呼吸の間すら腕を休めず、ただひたすら何もさせじと振るい続ける。
斬撃一つの度に細かく狙いを調整し、一定方向からは刀を走らせない。
常に軌道が変化し四方八方から迫る刃は、まるで複数人を相手取っているかのよう。
正面を凌げば既に次の剣が三つ四つ纏めて襲い来る。
躱す、防ぐ、受け流す以外に何一つ許しはしない猛攻であった。
縁壱は防戦一方で手も足も出ない。
と、楽観的に言う者がいれば黒死牟は心底の侮蔑を籠め、「節穴」と返す。
これだけの剣を振るっても届かない、未だ着物の端すら裂けない。
並の隊士であればとうに千を超え殺された刃の嵐も、吹けば消える霧雨に等しい。
その証拠に見るがいい、受けに徹した縁壱が攻めに出る瞬間を。
と、楽観的に言う者がいれば黒死牟は心底の侮蔑を籠め、「節穴」と返す。
これだけの剣を振るっても届かない、未だ着物の端すら裂けない。
並の隊士であればとうに千を超え殺された刃の嵐も、吹けば消える霧雨に等しい。
その証拠に見るがいい、受けに徹した縁壱が攻めに出る瞬間を。
するりと、僅かな裂け目を抜け一歩踏み込む。
眼球の浮かぶ鬼の刀は、熱に浮かされた宙を空しく斬って終わる。
手元へ引き寄せるまでの数秒にも満たない中、六眼が捉えるは輝く刃。
灼熱を纏いし日輪刀が、死を運び己が頸へと疾走。
眼球の浮かぶ鬼の刀は、熱に浮かされた宙を空しく斬って終わる。
手元へ引き寄せるまでの数秒にも満たない中、六眼が捉えるは輝く刃。
灼熱を纏いし日輪刀が、死を運び己が頸へと疾走。
――壱ノ型 円舞
両手持ちに変えた日輪刀で円を描き振り下ろす。
文字にすれば単純な技なれど、恐るべきは速さ。
たった一振りで爆発的な加速が発生、描いた円が太陽同然の高熱を帯び襲い来る。
頸を刀身が撫でたが最後、積み上げられた鬼の屍に実の兄も加わるだろう。
文字にすれば単純な技なれど、恐るべきは速さ。
たった一振りで爆発的な加速が発生、描いた円が太陽同然の高熱を帯び襲い来る。
頸を刀身が撫でたが最後、積み上げられた鬼の屍に実の兄も加わるだろう。
――月の呼吸 壱ノ型 闇月・宵の宮
瞬き一つ終えた直後に訪れる末路を、狂月が噛み砕き否と唱える。
月の呼吸の基本となる型にして、瞬間的な速度では随一。
居合斬りを異次元の速度で放つ事で、技の完成度を脅威となるまでに昇華した。
霞柱の片腕をも奪った剣を此度は弟へ放つ。
月の呼吸の基本となる型にして、瞬間的な速度では随一。
居合斬りを異次元の速度で放つ事で、技の完成度を脅威となるまでに昇華した。
霞柱の片腕をも奪った剣を此度は弟へ放つ。
日と月が互いへ牙を突き立て、示し合わせたように揃って得物が弾かれた。
指一本で数えるよりも早く、縁壱が片腕を引き戻す。
瞳に映らずとも周囲へ生み出された、三日月の大群。
鬼殺隊の呼吸法とは違う、血鬼術と組み合わせ発生させる刃の檻。
初見での回避は柱でさえ難関であるが、日輪にとっては宙を舞う葉も同然。
兄から視線を逸らさず、得物一振りで難なく打ち払う。
指一本で数えるよりも早く、縁壱が片腕を引き戻す。
瞳に映らずとも周囲へ生み出された、三日月の大群。
鬼殺隊の呼吸法とは違う、血鬼術と組み合わせ発生させる刃の檻。
初見での回避は柱でさえ難関であるが、日輪にとっては宙を舞う葉も同然。
兄から視線を逸らさず、得物一振りで難なく打ち払う。
――月の呼吸 参ノ型 厭忌月・鞘
技を打ち破られたとて、身を強張らせる無駄な動きには出ない。
大量の三日月を引き連れた半月が二つ、回転しながら襲う。
片方への対処に意識を割けば、もう片方が臓物の雨を降らす。
名も顔も忘れた鬼狩り達同様の決着は、当然の如く訪れない。
大量の三日月を引き連れた半月が二つ、回転しながら襲う。
片方への対処に意識を割けば、もう片方が臓物の雨を降らす。
名も顔も忘れた鬼狩り達同様の決着は、当然の如く訪れない。
――弐の型 碧羅の天
どちらか一方のみへ意識を割くのが危険であるなら、両方纏めて消し去るだけ。
浮かぶ刃群を見えているかのように避け、刀が再び日を生み出した。
空へ描いた円は、月を飲み込む冥府への入り口と化す。
夜を終わらせる為の剣は勢いを落とさず、鬼の頸元へ死を運ぶ。
浮かぶ刃群を見えているかのように避け、刀が再び日を生み出した。
空へ描いた円は、月を飲み込む冥府への入り口と化す。
夜を終わらせる為の剣は勢いを落とさず、鬼の頸元へ死を運ぶ。
――肆ノ型 灼骨炎陽
渦を巻き走る火炎と見紛う斬撃が、前方広範囲へ放たれた。
退けば即座に追い付かれ、無謀にも挑めば自ら身を焼き焦がす自害行為に他ならない。
どちらにせよ待つのは地獄、しかし鬼に後ろへ下がる選択肢はない。
退けば即座に追い付かれ、無謀にも挑めば自ら身を焼き焦がす自害行為に他ならない。
どちらにせよ待つのは地獄、しかし鬼に後ろへ下がる選択肢はない。
――月の呼吸 拾ノ型 穿面斬・蘿月
半月が複数重なり合い、参の型を超える巨大な刃を造る。
アスファルトで舗装された地面が、豆腐を崩すのにも等しく粉砕。
眼前より迫り肥大化する太陽を削り取らんとし、相手もまた叩き砕くべく前進。
打ち勝ち我が道を突き進むは日輪、阻む全てを薙ぎ払う勢いで黒死牟に接近。
アスファルトで舗装された地面が、豆腐を崩すのにも等しく粉砕。
眼前より迫り肥大化する太陽を削り取らんとし、相手もまた叩き砕くべく前進。
打ち勝ち我が道を突き進むは日輪、阻む全てを薙ぎ払う勢いで黒死牟に接近。
飛び退き背を向けるか?いいや、しかと見えた。
こちらの技を捻じ伏せた太陽の勢いが、僅かであるも衰えたのを。
こちらの技を捻じ伏せた太陽の勢いが、僅かであるも衰えたのを。
管が裂けんばかりに得物を握り、針の穴にも満たない一点狙いで振り被る。
鬼の膂力を十全に乗せ、尚且つ音を置き去りにする速さ。
太陽を真っ向から崩し、猶予は与えられず幾度目かの剣戟が再開。
鬼の膂力を十全に乗せ、尚且つ音を置き去りにする速さ。
太陽を真っ向から崩し、猶予は与えられず幾度目かの剣戟が再開。
自身の頸へ刃が添えられ、いつ骨まで断たれてもおかしくない緊張感。
付き纏う死の気配に蝕まれながらも、黒死牟の剣には揺らぎが一度も生じない。
意識全てを弟との闘争に割き、五感と直感から得られる情報を余さず拾い戦術を構築。
鬼殺隊指折りの柱ですら、無茶と言わざるを得ない動きで実行に移し続けた。
付き纏う死の気配に蝕まれながらも、黒死牟の剣には揺らぎが一度も生じない。
意識全てを弟との闘争に割き、五感と直感から得られる情報を余さず拾い戦術を構築。
鬼殺隊指折りの柱ですら、無茶と言わざるを得ない動きで実行に移し続けた。
縁壱相手に食らい付き、戦闘を展開出来ている。
産み落とされた瞬間から神の領域へ座す男相手に、未だ無傷で持ち堪える。
仮に数時間前の黒死牟が聞けば、戯言と一蹴するだろう。
幼き頃より日と月の差は絶望的なまでに開き、永遠の時を経たとて埋まらない。
産み落とされた瞬間から神の領域へ座す男相手に、未だ無傷で持ち堪える。
仮に数時間前の黒死牟が聞けば、戯言と一蹴するだろう。
幼き頃より日と月の差は絶望的なまでに開き、永遠の時を経たとて埋まらない。
しかし黒死牟が一太刀で全てに決着が付く程の塵芥かと言うと、それも否である。
四百年間、屈辱に身悶えしながら胡坐を掻き続けたのではない。
死に物狂いで鍛え抜いた、技を更に高位へと磨いた、多くの鬼狩りを斬った、柱を捻じ伏せ肉を喰らった。
勝利への執着が強さの獲得を一度たりとも忘れさせず、殺した何もかもを己の糧に変えた。
枯れ細った弟の剣を浴びた頃以上の強さを、今の黒死牟は確かに手に入れている。
四百年間、屈辱に身悶えしながら胡坐を掻き続けたのではない。
死に物狂いで鍛え抜いた、技を更に高位へと磨いた、多くの鬼狩りを斬った、柱を捻じ伏せ肉を喰らった。
勝利への執着が強さの獲得を一度たりとも忘れさせず、殺した何もかもを己の糧に変えた。
枯れ細った弟の剣を浴びた頃以上の強さを、今の黒死牟は確かに手に入れている。
だが最も大きな理由は肉体的な強さや技の手数ではなく、精神に由来するもの。
理由の分からぬままいろはを助けた一件を除き、常に受け身の姿勢だった。
襲われたから戦う、例えるなら決まった反応以外不可能な人形。
戦意を大きく欠いたままでは、勝てる戦闘も本来なら敗北以外ない。
上弦の壱として並の枠に収まらない力があったから、どうにか生き残って来ただけだ。
理由の分からぬままいろはを助けた一件を除き、常に受け身の姿勢だった。
襲われたから戦う、例えるなら決まった反応以外不可能な人形。
戦意を大きく欠いたままでは、勝てる戦闘も本来なら敗北以外ない。
上弦の壱として並の枠に収まらない力があったから、どうにか生き残って来ただけだ。
6時間が経っても暫くは変わらない状態が続いたが、弟の再会が遂に戦意へ火をつけた。
敵へ踏み込み、剣を振るい、時には最小限の動きで躱す。
動作全てが油を差し込んだようにキレを増し、これまでとは別人と疑い兼ねない力を発揮。
練り上げた呼吸の精度は、生前最後の無限城での決戦すら超える勢い。
敵へ踏み込み、剣を振るい、時には最小限の動きで躱す。
動作全てが油を差し込んだようにキレを増し、これまでとは別人と疑い兼ねない力を発揮。
練り上げた呼吸の精度は、生前最後の無限城での決戦すら超える勢い。
では黒死牟をそうまで動かすモノとは、一体何なのか。
勝ち逃げ同然に先立たれた弟との、再戦の機会が巡った事への歓喜?
嫉妬に狂わせた元凶へ必ずや剣を届かせる、醜く膨れ上がった憎悪?
それとも、魔法少女に手を掛けられた怒りという、遥か過去へ捨てた人間らしい使命感?
勝ち逃げ同然に先立たれた弟との、再戦の機会が巡った事への歓喜?
嫉妬に狂わせた元凶へ必ずや剣を届かせる、醜く膨れ上がった憎悪?
それとも、魔法少女に手を掛けられた怒りという、遥か過去へ捨てた人間らしい使命感?
どれも違う。
黒死牟を突き動かし、生前を超える力を齎す正体とは――
黒死牟を突き動かし、生前を超える力を齎す正体とは――
(何故私は……こうも焦りを覚えている……?)
彼自身にすら理解不可能な、焦燥感。
戦闘の為に無駄を一切合切削ぎ落とした思考とは裏腹に、心は指でかき混ぜられたように荒れ狂う。
余裕の二文字など、縁壱の姿を見た瞬間に崩れ去った。
戦闘の為に無駄を一切合切削ぎ落とした思考とは裏腹に、心は指でかき混ぜられたように荒れ狂う。
余裕の二文字など、縁壱の姿を見た瞬間に崩れ去った。
あの時、いろはが両腕を細切れに変えられたあの瞬間。
六眼が捉えた現実の光景に、猛烈なまでの拒否感を覚えた。
言動も行動もまるで理解出来ない娘だが、善性の強い人間だとは自分でも分かる。
本来なら、縁壱が剣を向けるなど天地がひっくり返っても有り得ない。
むしろ率先し守るような人間であり、鬼の自分と行動を共にする方が不自然。
そのいろはを斬り、殺す寸前までいった時の目が忘れられない。
人を喰らう鬼に向けた、存在してはならない者へ向ける目。
六眼が捉えた現実の光景に、猛烈なまでの拒否感を覚えた。
言動も行動もまるで理解出来ない娘だが、善性の強い人間だとは自分でも分かる。
本来なら、縁壱が剣を向けるなど天地がひっくり返っても有り得ない。
むしろ率先し守るような人間であり、鬼の自分と行動を共にする方が不自然。
そのいろはを斬り、殺す寸前までいった時の目が忘れられない。
人を喰らう鬼に向けた、存在してはならない者へ向ける目。
神の傀儡へ堕ちた以上、十分予想出来た展開だ。
自分や主のみならず、屠り合いの参加者全員が縁壱にとっては滅ぼすべき鬼。
分かっていても、受け入れられるかは全く別の話。
縁壱がいろはを、病院に集まった同じ善側の人間を殺す。
すぐにでも訪れるだろう未来に、己の内が軋み絶叫を上げた。
気付けば思考は焦燥に駆られ命令を下した、それだけは認めらないと。
自分や主のみならず、屠り合いの参加者全員が縁壱にとっては滅ぼすべき鬼。
分かっていても、受け入れられるかは全く別の話。
縁壱がいろはを、病院に集まった同じ善側の人間を殺す。
すぐにでも訪れるだろう未来に、己の内が軋み絶叫を上げた。
気付けば思考は焦燥に駆られ命令を下した、それだけは認めらないと。
(何故……)
答えに辿り着けないまま、頸へ駆ける刃を弾く。
縁壱の変わらぬ強さへの、五臓六腑が捩じ切れる憎悪は不思議と薄い。
縁壱が人間を殺す事への、激しい動揺が黒死牟を闘争へ駆り立てる。
縁壱の変わらぬ強さへの、五臓六腑が捩じ切れる憎悪は不思議と薄い。
縁壱が人間を殺す事への、激しい動揺が黒死牟を闘争へ駆り立てる。
「……っ」
内心のざわめきを無視し、戦況に変化が現れた。
無論、黒死牟にとって悪い方のだ。
縁壱の剣捌きが目に見えて数段階速度を上げ、こちらの刃を悉く受け流す。
何が起きたかを察せられない訳がない。
振るう刀の一つ一つを正確に見極め、慣れた動きとして対処を更に安易に変えた。
数百年の足掻きをものの数分で埋められ、忌々しく歯を噛み絞めたい怒りも捨て置く。
無論、黒死牟にとって悪い方のだ。
縁壱の剣捌きが目に見えて数段階速度を上げ、こちらの刃を悉く受け流す。
何が起きたかを察せられない訳がない。
振るう刀の一つ一つを正確に見極め、慣れた動きとして対処を更に安易に変えた。
数百年の足掻きをものの数分で埋められ、忌々しく歯を噛み絞めたい怒りも捨て置く。
刃から伝わる感触は、まるで幽体を斬ったかの薄さ。
速度を落とした覚えはない、単に縁壱が自分以上の速さで避けただけ。
次なる手を出させはせぬと日輪刀が走り、頸へ食らい付く。
速度を落とした覚えはない、単に縁壱が自分以上の速さで避けただけ。
次なる手を出させはせぬと日輪刀が走り、頸へ食らい付く。
「結芽もいーれーてっ!」
横から伸びた剣が無ければ、そうなっただろう。
黒死牟から日輪刀が離れ、別方向からの襲撃に対処。
刀を弾くや即座の二撃目を放ち、抵抗の隙を与えない。
黒い甲冑を着込んだ少女の「鬼」を討つ刃を、もう一体の鬼が阻む。
汗を流しつつも笑って少女は後退、黒死牟も一度距離を取って仕切り直す。
刀を弾くや即座の二撃目を放ち、抵抗の隙を与えない。
黒い甲冑を着込んだ少女の「鬼」を討つ刃を、もう一体の鬼が阻む。
汗を流しつつも笑って少女は後退、黒死牟も一度距離を取って仕切り直す。
「あっぶな…写シがあるって分かってもヒヤヒヤしちゃった」
「退け……自分の手に負える者だけを……相手取るがいい……」
「うわっ、今のカッチーンって来ちゃうなー。あ、いろはおねーさんなら無事だよ。腕も治ってたし、大丈夫って本人も言ってたもん。おにーさんも一安心でしょ?」
「……」
「退け……自分の手に負える者だけを……相手取るがいい……」
「うわっ、今のカッチーンって来ちゃうなー。あ、いろはおねーさんなら無事だよ。腕も治ってたし、大丈夫って本人も言ってたもん。おにーさんも一安心でしょ?」
「……」
聞いてもいない事をベラベラ喋る結芽を横目で睨むも、視線はすぐ弟へ戻す。
下らない雑談に興じる気もなければ、一々お守りをする余裕だって皆無。
縁壱を相手にしながら、他へ意識を回すなど頸を差し出すのも同義。
死んでも自業自得だと切り捨てたい。
なのに縁壱がこの小生意気な人間の娘を殺す光景を思い描くと、喉奥を掻き出されるような吐き気に襲われるのだ。
下らない雑談に興じる気もなければ、一々お守りをする余裕だって皆無。
縁壱を相手にしながら、他へ意識を回すなど頸を差し出すのも同義。
死んでも自業自得だと切り捨てたい。
なのに縁壱がこの小生意気な人間の娘を殺す光景を思い描くと、喉奥を掻き出されるような吐き気に襲われるのだ。
(あははー…正面から見ると本当にヤバいなぁ……)
黒死牟へ軽口を叩く裏で、結芽も内心動揺を抑えられない。
強そうだとかじゃなく、心の底から恐いと思ったのは滅多にない経験だ。
放送でわざわざ紹介されたのだし、相応の力があると分かってはいた。
けれど実物をこの目で見てしまえば、全身の震えが止まらない。
天才的な剣の腕の刀使だからこそ理解出来る。
縁壱は人の身では有り得ない程に完成されている、いや完成され過ぎてると言った方が正しい。
殺し合いで戦った者達と違い、人を止めずにここまでの強さを持つのは乾いた笑いしか出なかった。
強そうだとかじゃなく、心の底から恐いと思ったのは滅多にない経験だ。
放送でわざわざ紹介されたのだし、相応の力があると分かってはいた。
けれど実物をこの目で見てしまえば、全身の震えが止まらない。
天才的な剣の腕の刀使だからこそ理解出来る。
縁壱は人の身では有り得ない程に完成されている、いや完成され過ぎてると言った方が正しい。
殺し合いで戦った者達と違い、人を止めずにここまでの強さを持つのは乾いた笑いしか出なかった。
(でも、やっぱりじっとしてなんかいられないや)
恐怖を感じたのは誤魔化せないけど、戦ってみたいと思ったのも本当。
向こうが圧倒的に格上なのは疑いようもないが、見てるだけではこの衝動を止められない。
きっとここに可奈美がいても、同じことを思う筈。
生きて帰れたらこんなに凄い剣士と戦ったと、自慢してみるのも良いかもしれない。
向こうが圧倒的に格上なのは疑いようもないが、見てるだけではこの衝動を止められない。
きっとここに可奈美がいても、同じことを思う筈。
生きて帰れたらこんなに凄い剣士と戦ったと、自慢してみるのも良いかもしれない。
(それに、黒死牟おにーさんにもちょっとムカついてるし!)
縁壱との斬り合いを見れば分からない筈がない。
放送前に自分と戦った時とは動きが全然違う、明らかに手を抜かれていた。
殺し合いに抗う者を殺さない為だとはいえ、ここまで露骨では流石に不満を抱く。
鬱憤晴らしと純粋に楽しみたいから、そんな理由二つも気分屋な結芽が戦うには十分である。
放送前に自分と戦った時とは動きが全然違う、明らかに手を抜かれていた。
殺し合いに抗う者を殺さない為だとはいえ、ここまで露骨では流石に不満を抱く。
鬱憤晴らしと純粋に楽しみたいから、そんな理由二つも気分屋な結芽が戦うには十分である。
「ほらほら、あのおにーさんがもう来そうだよ?ってか弟なんだね、あの人」
黙っていろと今一度睨む暇もなく、迫り来る濃密な死の予感へ得物を振り被った。
○
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラァッ!!」
パワーとスピード、両方が数あるスタンドの中でもトップクラス。
一度その身に拳を受けたら最後、再起不能は間違いなし。
だがしかし、DIOに匹敵する脅威が少なくない数揃えられてるのが神の遊戯盤。
最強のスタンドは異界の地において最強に非ず。
現在相対中の敵も、スタープラチナを真っ向から相手取る怪物也。
一度その身に拳を受けたら最後、再起不能は間違いなし。
だがしかし、DIOに匹敵する脅威が少なくない数揃えられてるのが神の遊戯盤。
最強のスタンドは異界の地において最強に非ず。
現在相対中の敵も、スタープラチナを真っ向から相手取る怪物也。
センサーモジュールが拳の来る位置を完璧に把握、合わせて蹴りを放つ。
高速戦闘特化のラビットエボルボトルが成分を多大に付与、文字通りの目にも止まらぬ連撃。
ラッシュにはラッシュを、数百本の手足が生えたとしか思えぬ勢いで互いを攻め立てる。
手数も威力も双方引けを取らないが、グリスはスタンドを操作しながら本体も攻撃可能な利点を活かす。
高速戦闘特化のラビットエボルボトルが成分を多大に付与、文字通りの目にも止まらぬ連撃。
ラッシュにはラッシュを、数百本の手足が生えたとしか思えぬ勢いで互いを攻め立てる。
手数も威力も双方引けを取らないが、グリスはスタンドを操作しながら本体も攻撃可能な利点を活かす。
『おばけ!』『パーカー!』
『ツインフィニッシュ!』
ゲル状に構成されたパーカーゴーストを射出。
スタープラチナ相手に割かれた意識が弾かれたように反応を見せ、片手の得物で振り払った。
両刃の斧が二体のゴースト切り裂き、すかさずガンモードへ変形。
脚を止めないまま銃口を向けるも、攻撃に打って出たのはグリスだけじゃない。
スタープラチナ相手に割かれた意識が弾かれたように反応を見せ、片手の得物で振り払った。
両刃の斧が二体のゴースト切り裂き、すかさずガンモードへ変形。
脚を止めないまま銃口を向けるも、攻撃に打って出たのはグリスだけじゃない。
『Progrise key comfirmed. Ready to break.』
タイヤが装着されたと思わせる勢いで回転し、サウザーが斬り付ける。
引き金を引く間に刃が装甲を撫でるだろう速さへ、銃撃は中断。
銃身を盾に防ぎ、武器を挟んで言葉を交わす。
引き金を引く間に刃が装甲を撫でるだろう速さへ、銃撃は中断。
銃身を盾に防ぎ、武器を挟んで言葉を交わす。
「聞け滅!君の怒りの理由が迅を破壊された事なら、手遅れではない!以前の記憶を保持したまま修復が可能だ!」
「何を……!?」
「私が口にすべきでないのは承知で言わせてもらおう!憎しみに囚われれば、人間のみならずヒューマギアを滅ぼすアークになるのは君の方じゃないのか!?」
「…っ!黙れ…!貴様の言葉が仮に真実でも、人類滅亡の結論は変わらん!」
「何を……!?」
「私が口にすべきでないのは承知で言わせてもらおう!憎しみに囚われれば、人間のみならずヒューマギアを滅ぼすアークになるのは君の方じゃないのか!?」
「…っ!黙れ…!貴様の言葉が仮に真実でも、人類滅亡の結論は変わらん!」
一瞬口籠るも直ぐに憎悪を吐き捨て、力任せに銃身で薙ぎ払う。
よろけたサウザーへ至近距離で追撃のエネルギー弾を撃ち、盛大な火花を咲かせた。
今の衝撃でホルダーから落ちたプログライズキーを奪い、得物へ装填。
よろけたサウザーへ至近距離で追撃のエネルギー弾を撃ち、盛大な火花を咲かせた。
今の衝撃でホルダーから落ちたプログライズキーを奪い、得物へ装填。
『Progrise key comfirmed. Ready to buster.』
「これは返してもらう」
自身のプログライズキー、スティングスコーピオンのデータを付与。
蠍の尾をエネルギー刃に変え振り回し、装甲越しにサウザーを痛め付け吹き飛ばす。
力尽きるまで叩き付けるのを、グリスが殴り掛かって妨害に動いた。
蠍の尾をエネルギー刃に変え振り回し、装甲越しにサウザーを痛め付け吹き飛ばす。
力尽きるまで叩き付けるのを、グリスが殴り掛かって妨害に動いた。
『ピプペポパニック~~~~~~~!?』
エボルに斬られた時の衝撃で、サウザーのデイパックから支給品が飛び出た。
バグルドライバーⅡに収納されたポッピーは、突然の衝撃に目を回す。
直接的なダメージはなくとも振動が襲うらしく、地震に見舞われた気分だ。
頭部を鐘のように揺らされた感覚からどうにか復帰。
画面越しに様子を見ると、驚きドライバーを拾い上げる少女が一名。
固有魔法での回復を終えて、両腕を取り戻したいろはであった。
バグルドライバーⅡに収納されたポッピーは、突然の衝撃に目を回す。
直接的なダメージはなくとも振動が襲うらしく、地震に見舞われた気分だ。
頭部を鐘のように揺らされた感覚からどうにか復帰。
画面越しに様子を見ると、驚きドライバーを拾い上げる少女が一名。
固有魔法での回復を終えて、両腕を取り戻したいろはであった。
『あれ?イロハちゃん?ガイは…っていうか何か凄いことになってない!?』
「は、はい。その、色々あって……」
「は、はい。その、色々あって……」
CRから地上へ戻る際にデイパックへ入れられ、ようやっと出てみれば戦闘の真っ最中。
しかも敵らしき者達は全員、非常に手強いのが見て取れた。
どういった経緯で混戦に発展したかを説明する時間はない。
腕が治り再び戦えるようになった以上、仲間の加勢に向かわなくては。
しかも敵らしき者達は全員、非常に手強いのが見て取れた。
どういった経緯で混戦に発展したかを説明する時間はない。
腕が治り再び戦えるようになった以上、仲間の加勢に向かわなくては。
『あ、でももしかすると今のドライバーなら……』
「どうかしたんですか?」
「どうかしたんですか?」
表示ディスプレイに映るポッピーが何やら呟いており、問い掛けると僅かに迷う素振りを見せ口を開く。
聞かされたのは現状に打って付けの、仲間への支えになる内容。
いろはからすれば迷う必要はなく、即座に実行に移すべきと答えた。
聞かされたのは現状に打って付けの、仲間への支えになる内容。
いろはからすれば迷う必要はなく、即座に実行に移すべきと答えた。
『良いの?いや何度も確認したから大丈夫だけど!でも、ホントはCRの関係者じゃない女の子にやらせちゃNGだし……』
「けど皆を助けられるなら、わたしはやります。だから……」
「けど皆を助けられるなら、わたしはやります。だから……」
一度区切って画面の向こうのバグスターと視線を合わせる。
こんなに近くにいるのに、外には干渉できない彼女。
共に戦えない歯痒さを汲み取り、触れられない手を包むように告げた。
こんなに近くにいるのに、外には干渉できない彼女。
共に戦えない歯痒さを汲み取り、触れられない手を包むように告げた。
「わたしと一緒に戦ってください!お願いします!」
『うぅ~~~……ちょっとでも変だと思ったら、すぐに中止してね!』
『うぅ~~~……ちょっとでも変だと思ったら、すぐに中止してね!』
そんな言い方で真摯に頼まれては、やっぱり無しとも言えない。
後は黎斗が本当に確認した通りの仕様に細工を施してるのを、実際に試す他ない。
もし異変を感じればいろはに被害が及ぶ前に、自分がドライバー内部で阻止するまで。
後は黎斗が本当に確認した通りの仕様に細工を施してるのを、実際に試す他ない。
もし異変を感じればいろはに被害が及ぶ前に、自分がドライバー内部で阻止するまで。
『じゃあまず、私の言う手順通りにやってみて!』
「はい!」
「はい!」
ドライバーを装着し、傍らに転がるもう一つのアイテムを回収。
イラストの描かれた持ち手部分のトリガーを引き、開始の合図となる。
イラストの描かれた持ち手部分のトリガーを引き、開始の合図となる。
『ときめきクライシス!』
ガシャットが己のゲームタイトルを響かせ起動。
いろはの背後に巨大なグラフィックが出現。
ピンクの髪の攻略キャラが目を惹くスタート画面が映り、複数の物体が飛び出す。
CRのメンバーやバグスターには珍しくもない、エナジーアイテムが配置完了。
いろはの背後に巨大なグラフィックが出現。
ピンクの髪の攻略キャラが目を惹くスタート画面が映り、複数の物体が飛び出す。
CRのメンバーやバグスターには珍しくもない、エナジーアイテムが配置完了。
『こっからが大事だよ!可愛らしいポーズで決めてね!』
「え?…わ、分かりました!変身!」
「え?…わ、分かりました!変身!」
『ガシャット♪』
『BUGL UP!』
ポーズが本当に必要なのかと一瞬思うも、指示には素直に従う。
フードを靡かせターンを決めて、ガシャットを挿入。
電子音声が装填確認を伝え、続けてボタンを操作。
変身プログラムが作動し、いろはを魔法少女から新たな姿へ変える。
フードを靡かせターンを決めて、ガシャットを挿入。
電子音声が装填確認を伝え、続けてボタンを操作。
変身プログラムが作動し、いろはを魔法少女から新たな姿へ変える。
『ドリーミングガール♪恋のシュミレーション♪乙女はいつもときめきクライシス♪』
純白のフードは黒のボディスーツと、黄色のミニスカートへ早変わり。
編み上げ状のサイハイブーツから、ガードパーツを組み込んだニーソックスへ。
素顔を覆う仮面にはパッチリとした青の複眼。
ピンクの頭髪モチーフの色は濃く、いろはではなく本来の変身者に近い。
仮面ライダーポッピー、名前が示す通りポッピーピポパポのライダーとしての姿である。
編み上げ状のサイハイブーツから、ガードパーツを組み込んだニーソックスへ。
素顔を覆う仮面にはパッチリとした青の複眼。
ピンクの頭髪モチーフの色は濃く、いろはではなく本来の変身者に近い。
仮面ライダーポッピー、名前が示す通りポッピーピポパポのライダーとしての姿である。
『やった!ちゃんと変身出来た!イロハちゃん体大丈夫!?痛い所ない!?』
「は、はい。何だか不思議な感じだけど、苦しくはないです」
「は、はい。何だか不思議な感じだけど、苦しくはないです」
まじまじと自身の体を見回し、やや戸惑い気味に言う。
仮面ライダーと言うからには天津達のと似たような外見と思ったが、色んな意味で違う。
所謂女の子らしさを前面に押し出しており、少々驚きだ。
仮面ライダーと言うからには天津達のと似たような外見と思ったが、色んな意味で違う。
所謂女の子らしさを前面に押し出しており、少々驚きだ。
本来なら、バグルドライバーⅡをいろはに使わせる気は絶対になかった。
何せこれはゲーマドライバーと違い、バグスターの使用が大前提の変身ツール。
仮に人間が使用してしまったら、即座にバグスターウイルスに感染。
十年以上の時間を掛けて完全な抗体を得た檀正宗ならともかく、そうでなければ即座に消滅は免れない。
たとえ肉体から魂を切り離した魔法少女であっても、非常に危険。
何せこれはゲーマドライバーと違い、バグスターの使用が大前提の変身ツール。
仮に人間が使用してしまったら、即座にバグスターウイルスに感染。
十年以上の時間を掛けて完全な抗体を得た檀正宗ならともかく、そうでなければ即座に消滅は免れない。
たとえ肉体から魂を切り離した魔法少女であっても、非常に危険。
しかし神主催のゲームでは仕様も異なる。
ネビュラガスを投与される人体実験を受けておらずとも、承太郎がスクラッシュドライバーを使えたように。
仮面ライダーや類する存在への変身は、ある程度敷居を下げられている。
バグルドライバーⅡも同様であり、バグスターや抗体を持つ者以外でも変身可能に調整済。
CRで筐体から出た時ポッピーもそこへ気付き、だからこそいろはに許可を出した。
ネビュラガスを投与される人体実験を受けておらずとも、承太郎がスクラッシュドライバーを使えたように。
仮面ライダーや類する存在への変身は、ある程度敷居を下げられている。
バグルドライバーⅡも同様であり、バグスターや抗体を持つ者以外でも変身可能に調整済。
CRで筐体から出た時ポッピーもそこへ気付き、だからこそいろはに許可を出した。
主催者に恩恵を受けたと思うと複雑だが、一々気にするのは後回し。
ドライバーを通じポッピーが変身後の機能を素早くチェック、頷きいろはへ指示を出す。
ドライバーを通じポッピーが変身後の機能を素早くチェック、頷きいろはへ指示を出す。
『いけるよイロハちゃん!後は皆のことを強く想って!』
「はい!やってみます!」
「はい!やってみます!」
戦い続ける仲間達の力になりたい。
強く願い感情の力が、現実に皆の元へ届けられる。
恋愛ゲームのときめきクライシスガシャットで変身を行った為、好感度や感情の強弱が固有能力に深く関係するのが仮面ライダーポッピー。
ハートをあしらった肩部装甲の強化装置が起動。
ライダーを、スタンド使いを、決闘者を、獣人の少女を、刀使を。
そして鬼を、仲間達全員の能力を引き上げた。
強く願い感情の力が、現実に皆の元へ届けられる。
恋愛ゲームのときめきクライシスガシャットで変身を行った為、好感度や感情の強弱が固有能力に深く関係するのが仮面ライダーポッピー。
ハートをあしらった肩部装甲の強化装置が起動。
ライダーを、スタンド使いを、決闘者を、獣人の少女を、刀使を。
そして鬼を、仲間達全員の能力を引き上げた。
この装置も元々は、ガシャットで変身したライダーにのみ作用する。
とはいえ仮面ライダークロニクルのように参加者全員がガシャットを持つゲームでない為、死蔵機能とならないよう調整。
細かい点にも神の手が伸びてると知らぬまま、仲間の助けになる。
とはいえ仮面ライダークロニクルのように参加者全員がガシャットを持つゲームでない為、死蔵機能とならないよう調整。
細かい点にも神の手が伸びてると知らぬまま、仲間の助けになる。
『へぇ、良い感じに動きやすくなったじゃない!そう言う訳だから、アンタはとっとと落っこちなさいっての!』
「黙れや猿ゥ!」
「黙れや猿ゥ!」
巨体を操る感覚が一段と精細さを増し、キャルは神へ殴打を叩き込む。
レイキュバスの顎はコンクリートも易々と切り裂くが、神に目立ったダメージは見られない。
尾を振り回し、時には自らの巨体をぶつけ相殺。
一歩も譲らぬ殴り合いは、強化を受けた事でキャルに天秤が傾く。
尾を挟んで引き寄せ、抜け出す前にガンQの頭部が顎へヒット。
視界がグラつく所へ二撃目が迫るも、神はその程度の児戯で倒れない。
レイキュバスの顎はコンクリートも易々と切り裂くが、神に目立ったダメージは見られない。
尾を振り回し、時には自らの巨体をぶつけ相殺。
一歩も譲らぬ殴り合いは、強化を受けた事でキャルに天秤が傾く。
尾を挟んで引き寄せ、抜け出す前にガンQの頭部が顎へヒット。
視界がグラつく所へ二撃目が迫るも、神はその程度の児戯で倒れない。
「調子こいてんじゃねぇぞこの野郎(棒)!レズのくせによォオン!?(アニコネ限定)」
人間以外の姿になるなど、BB先輩シリーズでは最早お馴染み。
神の巨体だろうと呼吸と同じくらい簡単に動かせる。
回避と同時に全身を巻き付け、キャルの動きを封じた。
ファイブキングのパワーを駆使すれば拘束を脱するのは容易いが、オシリスは並の域に収まる存在に非ず。
体中の骨が砕けるまで決して放さないだろう。
神の巨体だろうと呼吸と同じくらい簡単に動かせる。
回避と同時に全身を巻き付け、キャルの動きを封じた。
ファイブキングのパワーを駆使すれば拘束を脱するのは容易いが、オシリスは並の域に収まる存在に非ず。
体中の骨が砕けるまで決して放さないだろう。
「キャル…!」
地上からでもピンチがハッキリ見え、遊星はカードをドロー。
生半可な攻撃ではビクともしないと、言われるまでもなく分かってる。
それでも出来る事はある筈と手札を確認。
生半可な攻撃ではビクともしないと、言われるまでもなく分かってる。
それでも出来る事はある筈と手札を確認。
「このカードは……」
引いたのは城之内のデッキの中でも、特に強力な一枚。
通常のデュエルならば心強いと思えるが、果たして神にどれ程の効果が与えられるか。
通常のデュエルならば心強いと思えるが、果たして神にどれ程の効果が与えられるか。
(いや待て…)
険しい表情から一転、何かを思い付いたようにもう一度神を見上げる。
決闘者で知らぬ者はいない、デュエルモンスターズ界の伝説。
三幻神の一体、今自分の頭上に存在するアレはどういった存在か。
殺し合いという環境ではデュエルの解釈もある程度広がり、突ける隙も少なくない。
とにもかくにも試さない事には始まらない。
決闘者で知らぬ者はいない、デュエルモンスターズ界の伝説。
三幻神の一体、今自分の頭上に存在するアレはどういった存在か。
殺し合いという環境ではデュエルの解釈もある程度広がり、突ける隙も少なくない。
とにもかくにも試さない事には始まらない。
「リバースカードオープン!クイズを発動!」
自分の墓地の一番下のモンスター名を相手に問い、正解か否かで異なる効果を齎す。
嘗てはマリク相手に使った、城之内らしいギャンブルカードの一種だ。
今回問い掛ける相手は一人しかいない。
嘗てはマリク相手に使った、城之内らしいギャンブルカードの一種だ。
今回問い掛ける相手は一人しかいない。
「答えろ!俺の墓地の一番下にあるモンスターは何だ!?」
「え、何それは…(困惑)。多分変態だと思うんですけど(迷推理)」
「え、何それは…(困惑)。多分変態だと思うんですけど(迷推理)」
いきなり問い掛けられ、案の定野獣先輩は困惑。
正規のデュエルならともかく、一々相手が何のモンスターを召喚したかなど覚えていない。
苦し紛れに淫夢語録で答えるも、これが正解な訳ないだろいい加減にしろ。
正規のデュエルならともかく、一々相手が何のモンスターを召喚したかなど覚えていない。
苦し紛れに淫夢語録で答えるも、これが正解な訳ないだろいい加減にしろ。
「不正解だ!シャドウ・ファイターを墓地から召喚!」
相手が外れた場合、対象のモンスターを特殊召喚する。
更に墓地からの召喚という条件を満たし、続けて効果を発動。
更に墓地からの召喚という条件を満たし、続けて効果を発動。
「墓地のモンスターが場に出た事で、手札からサテライト・シンクロンを特殊召喚する!」
人工衛星に手足が生えたようなモンスターが現れる。
既にフィールドに存在するスケープゴート一体と合わせ、計三体が場に揃った。
既にフィールドに存在するスケープゴート一体と合わせ、計三体が場に揃った。
「フィールドのモンスター三体をリリースし、ギルフォード・ザ・ライトニングを召喚!」
筋骨隆々の肉体を白銀の鎧で覆い、大剣を背負った剣士。
城之内が操る中でも強力な戦士族モンスターだ。
だが場にモンスターが召喚された以上、オシリスの裁きからは逃れられない。
天から降り注ぐ雷が攻撃力を大きく削ぎ、余波が遊星にも襲い掛かる。
城之内が操る中でも強力な戦士族モンスターだ。
だが場にモンスターが召喚された以上、オシリスの裁きからは逃れられない。
天から降り注ぐ雷が攻撃力を大きく削ぎ、余波が遊星にも襲い掛かる。
「くっ…!だがギルフォード・ザ・ライトニングの効果発動!このカードがアドバンス召喚に成功した時、相手モンスターを全て破壊する!」
ウィザードに変身し、更にいろはの強化を受けたお陰で十分耐えられる。
遊星の宣言に従い、稲妻の剣士が得物を振り下ろす。
戦場へ迸る光刃は敵対者達を容赦なく狙った。
背後を見ぬまま縁壱が避けた一方で、エボルも高機能センサーを駆使しどうにか回避。
残る一体、野獣先輩は神の自分に雑魚モンスターの効果が効くはずないと嘲笑う。
遊星の宣言に従い、稲妻の剣士が得物を振り下ろす。
戦場へ迸る光刃は敵対者達を容赦なく狙った。
背後を見ぬまま縁壱が避けた一方で、エボルも高機能センサーを駆使しどうにか回避。
残る一体、野獣先輩は神の自分に雑魚モンスターの効果が効くはずないと嘲笑う。
「逝きすぎィ!?」
余裕の態度は即座に崩れ、神の長大な肉体を稲妻が焼く。
同時に拘束も弱まり、顔面をレイキュバスで思い切り叩き追い打ちを掛ける。
神とは思えないクッソ情けない悲鳴を上げ、痛みに悶えるばかり。
同時に拘束も弱まり、顔面をレイキュバスで思い切り叩き追い打ちを掛ける。
神とは思えないクッソ情けない悲鳴を上げ、痛みに悶えるばかり。
もしこれがマリク・イシュタールの召喚した、正真正銘のオシリスであったら。
強力な除去効果とて、神のカードには無意味だったろう。
しかしここに存在するのは、ネットの玩具のホモビ男優が姿を変えた偽りの神。
見た目や能力が同じであっても、核となるのは神とは程遠い汚さの塊。
オシリスであり野獣先輩でもある二面性を孕むが故に、本物の神程の耐性は無かったのである。
強力な除去効果とて、神のカードには無意味だったろう。
しかしここに存在するのは、ネットの玩具のホモビ男優が姿を変えた偽りの神。
見た目や能力が同じであっても、核となるのは神とは程遠い汚さの塊。
オシリスであり野獣先輩でもある二面性を孕むが故に、本物の神程の耐性は無かったのである。
「あ、そっか、あったま来た…(憤怒)」
自身に痛みを与えた決闘者への怒りを燃やし、口内へエネルギーを充填。
小癪な雑魚モンスター共々焼き払う、超電動波を発射。
稲妻の剣士はもとより、幾ら変身中の遊星であっても無事では済まない。
小癪な雑魚モンスター共々焼き払う、超電動波を発射。
稲妻の剣士はもとより、幾ら変身中の遊星であっても無事では済まない。
命中すれば、という前提が付くが。
『あーあ、アンタ下手踏んじゃったわね?』
「ファッ!?ファッ!?ファッ!?(ビーストドライバー)」
「ファッ!?ファッ!?ファッ!?(ビーストドライバー)」
不敵な笑みは強がりでないと、目の前の光景が証明する。
オシリスの放った光がファイブキングの左手に吸収され、遊星にはまるで届かない。
ウルトラ戦士達の光線技を悉く破ったガンQの能力は、神相手にも通用。
そっちが最大威力を放ったのは好都合、倍にして返してやろう。
オシリスの放った光がファイブキングの左手に吸収され、遊星にはまるで届かない。
ウルトラ戦士達の光線技を悉く破ったガンQの能力は、神相手にも通用。
そっちが最大威力を放ったのは好都合、倍にして返してやろう。
「逝キスギィ!逝く逝く…ンアーッ! (≧Д≦)」
反射された超電動波だけじゃない、各怪獣パーツから一斉に光線や火炎を放射。
いろはが強化したのもあって、通常時のファイブキング以上の威力を叩き出す。
ラーのゴッドフェニックスがマシに思える程の大火力へ、野獣先輩は為す術なく集中砲火の的と化す。
いろはが強化したのもあって、通常時のファイブキング以上の威力を叩き出す。
ラーのゴッドフェニックスがマシに思える程の大火力へ、野獣先輩は為す術なく集中砲火の的と化す。
やがて熱線が消えた時、そこに赤い巨体はなく地で悶える汚い男がいるのみだった。
神特有の耐久力とホモ特有の生命力で死は避けたが、ダメージは軽くない。
今の内に捕えておこうと、遊星はバインドのウィザードリングを使用。
水魔法により拘束され、一先ずこの男との戦闘は終わった筈。
神特有の耐久力とホモ特有の生命力で死は避けたが、ダメージは軽くない。
今の内に捕えておこうと、遊星はバインドのウィザードリングを使用。
水魔法により拘束され、一先ずこの男との戦闘は終わった筈。
なれど野獣先輩の目は未だ死んでいない。
日焼けに誘った後輩の体へ狙いを定めるが如く、野獣の眼光を浮かべていた。
日焼けに誘った後輩の体へ狙いを定めるが如く、野獣の眼光を浮かべていた。
○
『Progrise key comfirmed. Ready to break.』
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァッ!!」
火炎を纏った突きと、青い拳闘士の拳。
両方が絶え間なく襲い掛かり、エボルは持ち前の速さを活かし対処。
これまでと何ら変わりない戦況に見え、その実徐々に追い詰められている。
速さと一撃一撃の重さが、明らかに数段階引き上げられた。
数発が自身の防御をすり抜け、胴を叩き四肢を切り裂く。
地球外の未知の物質製の装甲とて、連続でダメージを受ければ徐々に蓄積し捨て置けない。
両方が絶え間なく襲い掛かり、エボルは持ち前の速さを活かし対処。
これまでと何ら変わりない戦況に見え、その実徐々に追い詰められている。
速さと一撃一撃の重さが、明らかに数段階引き上げられた。
数発が自身の防御をすり抜け、胴を叩き四肢を切り裂く。
地球外の未知の物質製の装甲とて、連続でダメージを受ければ徐々に蓄積し捨て置けない。
とうとうサウザーの渾身の一突きでたたらを踏み、間髪入れずにグリスが鉄拳を放つ。
オーソライズバスターで防ぐも、柔な一撃なんかじゃあない。
更によろけ隙が生まれれば、ロケット二つがエボル目掛け射出。
斬り落とし防ぎ、原因を作った人間を視覚センサーが捉える。
自分の知るライダーらしからぬ見た目でも油断は出来ない、先に潰すべきだ。
オーソライズバスターで防ぐも、柔な一撃なんかじゃあない。
更によろけ隙が生まれれば、ロケット二つがエボル目掛け射出。
斬り落とし防ぎ、原因を作った人間を視覚センサーが捉える。
自分の知るライダーらしからぬ見た目でも油断は出来ない、先に潰すべきだ。
『Progrise key comfirmed. Ready to buster.』
プログライズキーを装填し、毒針状の巨大針を連射。
弾幕を張りサウザー達が足を止めた所を見逃さず、ピンク頭のライダーの元へ急接近。
元々高い走力を持つが、ラビットフォームの恩恵でフェーズ1以上の速さを得た。
ハート型の装飾諸共叩き壊す勢いで、頭部目掛け斧を振り下ろす。
弾幕を張りサウザー達が足を止めた所を見逃さず、ピンク頭のライダーの元へ急接近。
元々高い走力を持つが、ラビットフォームの恩恵でフェーズ1以上の速さを得た。
ハート型の装飾諸共叩き壊す勢いで、頭部目掛け斧を振り下ろす。
『腕に付けてイロハちゃん!武器になるから!』
魔法少女とバグスター共に死を望む気持ちは微塵もない。
指示を受け即座に実行、バグルドライバーⅡからバックル部分を分離し装着。
左サイドのパーツが高速回転し、チェーンソータイプの武器として機能。
バグルドライバーⅡ改めガシャコンバグヴァイザーⅡで、重厚な斧を防いだ。
刀身が伸び、回転刃が敵の得物を削り取るべく火花を散らす。
指示を受け即座に実行、バグルドライバーⅡからバックル部分を分離し装着。
左サイドのパーツが高速回転し、チェーンソータイプの武器として機能。
バグルドライバーⅡ改めガシャコンバグヴァイザーⅡで、重厚な斧を防いだ。
刀身が伸び、回転刃が敵の得物を削り取るべく火花を散らす。
「いろは……そうか、お前がか」
レンズ越しに火花を浴びつつ、対峙中の少女をじっと見やる。
まさかこうも立て続けに、聞き覚えのある名の者に遭遇するとは。
まさかこうも立て続けに、聞き覚えのある名の者に遭遇するとは。
「わたしがどうかしたんですか…?」
少しばかりの驚きを含んだ呟きは、いろはにも聞き取れた。
当然ながらこのような男と知り合った覚えは、記憶の何処を探しても見付からない。
得物を挟んだ殺伐とした状況ながら、戸惑いを隠さずに問う。
当然ながらこのような男と知り合った覚えは、記憶の何処を探しても見付からない。
得物を挟んだ殺伐とした状況ながら、戸惑いを隠さずに問う。
「放送前に殺した子供が、お前を守ると言っていた。それだけだ」
「っ!?」
「っ!?」
予想外の返答に目を見開き、ヒュッと喉が鳴る。
激しい動揺を抱いてると、仮面の上からでもハッキリ分かった。
定時放送の前に死に、いろはを守ると口にするだろう者
該当する少女はたった一人、みかづき荘の大切なメンバー。
もう二度と会えない、あの子しか思い浮かばない。
激しい動揺を抱いてると、仮面の上からでもハッキリ分かった。
定時放送の前に死に、いろはを守ると口にするだろう者
該当する少女はたった一人、みかづき荘の大切なメンバー。
もう二度と会えない、あの子しか思い浮かばない。
「あなたが……フェリシアちゃんを……?」
声を震わせた問い掛けに、相手は何も答えない。
答えるまでもないと、沈黙が嫌と言う程に伝えて来る。
動悸が急激に激しくなり、体中が寒くないのに震え出す。
画面越しに必死に自分を呼ぶバグスターの声すら、どこか遠くに感じた。
斧を防ぐ力が弱まってると、気付く余裕も流れ落ち消える。
答えるまでもないと、沈黙が嫌と言う程に伝えて来る。
動悸が急激に激しくなり、体中が寒くないのに震え出す。
画面越しに必死に自分を呼ぶバグスターの声すら、どこか遠くに感じた。
斧を防ぐ力が弱まってると、気付く余裕も流れ落ち消える。
「きゃあっ!?」
防御を突破されたと理解した時にはもう遅い。
胸部プロテクターを刃が叩き、痛みと共に地面を転がる。
ダメージを半減し全身に分散する効果で、致命傷にはならずソウルジェムも無事。
なら確実に死ぬまで攻撃を続けると、再び斧が振り被られた。
胸部プロテクターを刃が叩き、痛みと共に地面を転がる。
ダメージを半減し全身に分散する効果で、致命傷にはならずソウルジェムも無事。
なら確実に死ぬまで攻撃を続けると、再び斧が振り被られた。
『Progrise key comfirmed. Ready to break.』
いろはの仲間が健在な以上、エボルの思い通りにはならない。
電撃を纏った槍が突き、得物越しに腕へ痺れが襲う。
舌打ち交じりに後退しつつ、退いた先で待ち構えるはもう一体の黄金のライダー。
ツインブレイカーの猛攻を速さを武器に捌く。
電撃を纏った槍が突き、得物越しに腕へ痺れが襲う。
舌打ち交じりに後退しつつ、退いた先で待ち構えるはもう一体の黄金のライダー。
ツインブレイカーの猛攻を速さを武器に捌く。
「滅…彼女の仲間を手に掛けたのは本当なのか…?」
「だったらどうした。殺さない理由がどこにある」
「……そうか。では断言しよう。君は1000%、以前の私と同じく自分が悪意を振り撒いてると気付かない、最も度し難い存在になった…!」
「ほざくな!そもそもの元凶はお前だろう!」
「だったらどうした。殺さない理由がどこにある」
「……そうか。では断言しよう。君は1000%、以前の私と同じく自分が悪意を振り撒いてると気付かない、最も度し難い存在になった…!」
「ほざくな!そもそもの元凶はお前だろう!」
怒声と得物で打ち合う男達から数十歩下がり、いろはは膝を付き動けない。
フェリシアが死んだのは放送で聞いたが、でも誰が殺したかは今初めて知った。
記憶の中で、八重歯を覗かせ無邪気に笑う姿がリピートされる。
魔女への復讐に燃えて、でも我慢する努力を続けて。
自分ややちよを悪く言った魔法少女へ怒り、喧嘩沙汰を起こした事もあった。
欠けて欲しくなんかない大切な友達を、殺した男がすぐ近くにいる。
殺し合いでも、自分を守ると言ってくれたらしいフェリシアを――
フェリシアが死んだのは放送で聞いたが、でも誰が殺したかは今初めて知った。
記憶の中で、八重歯を覗かせ無邪気に笑う姿がリピートされる。
魔女への復讐に燃えて、でも我慢する努力を続けて。
自分ややちよを悪く言った魔法少女へ怒り、喧嘩沙汰を起こした事もあった。
欠けて欲しくなんかない大切な友達を、殺した男がすぐ近くにいる。
殺し合いでも、自分を守ると言ってくれたらしいフェリシアを――
「クッ…!?」
グリスと拳を叩きつけ合うも、背後からの脅威をセンサーが察知。
一手回避が遅れ肩部装甲に被弾、だが動きを止める程のダメージじゃない。
大きく跳びエネルギー弾を撃った相手を睨み付ければ、向こうも視線を返す。
ガシャコンバグヴァイザーⅡを遠距離形態に変え、銃口と共に瞳を逸らさない少女。
大方、仲間を殺され憎悪を燃やしてるのだろう。
一手回避が遅れ肩部装甲に被弾、だが動きを止める程のダメージじゃない。
大きく跳びエネルギー弾を撃った相手を睨み付ければ、向こうも視線を返す。
ガシャコンバグヴァイザーⅡを遠距離形態に変え、銃口と共に瞳を逸らさない少女。
大方、仲間を殺され憎悪を燃やしてるのだろう。
「わたしは……凄く怒ってます!」
発した声には言葉通りの怒りが宿り、だけど憎しみは感じられない。
予想と違い、エボルは僅かに眉を顰める。
予想と違い、エボルは僅かに眉を顰める。
「フェリシアちゃんのことで、あなたに怒ってる……だけど…!」
どうして殺したんだと、問い詰めたい気持ちは当然ある。
仕方ないよねで済ませられる程、小さなことなんかじゃない。
けれど、恨みに身を任せて戦い、結果相手を殺すことが。
フェリシアが守りたいと言ってくれた、環いろはな筈がない。
自分が絶望に陥り掛けた時、希望を届けてくれた彼女を裏切りたくないから。
仕方ないよねで済ませられる程、小さなことなんかじゃない。
けれど、恨みに身を任せて戦い、結果相手を殺すことが。
フェリシアが守りたいと言ってくれた、環いろはな筈がない。
自分が絶望に陥り掛けた時、希望を届けてくれた彼女を裏切りたくないから。
「だからわたしは……フェリシアちゃんが守りたいって思ってくれたわたしのままで、あなたを止めます」
――『そうやって繋いでいった先にあるのは破滅なんかじゃない、希望って言うんだよ』
苛立ちに顔が歪むのが、自分でも分かる。
マゼンタ色のライダーが目の前の娘に重なり、内部パーツの損傷とはまた違う掻き毟られる感触を味わう。
戯言と受け流せば良いのに出来ず、突き動かす衝動へ逆らわずドライバーを操作。
レバーの回転数を一気に速め、エボルボトルの成分を大量に引き出す。
マゼンタ色のライダーが目の前の娘に重なり、内部パーツの損傷とはまた違う掻き毟られる感触を味わう。
戯言と受け流せば良いのに出来ず、突き動かす衝動へ逆らわずドライバーを操作。
レバーの回転数を一気に速め、エボルボトルの成分を大量に引き出す。
『Ready Go!』
『EVOLTEC FINISH!』
片脚にエネルギーを最大まで流し込み跳躍。
バネが付いていると疑う程の脚力で勢いを付け、破壊力を更に増幅。
ライダーの装甲を纏っていようと、当たれば無傷で済む保障はない。
この地で殺した少女と同じ場所へ送る時だ。
バネが付いていると疑う程の脚力で勢いを付け、破壊力を更に増幅。
ライダーの装甲を纏っていようと、当たれば無傷で済む保障はない。
この地で殺した少女と同じ場所へ送る時だ。
『キメワザ…』
こちらも高威力の技の出し所だ。
ボタン操作で低い電子音声が鳴り、二つの銃口へエネルギーが充填。
発射のタイミングを見極めトリガーを引く。
ボタン操作で低い電子音声が鳴り、二つの銃口へエネルギーが充填。
発射のタイミングを見極めトリガーを引く。
『CRITICAL CREWS-AID!』
武器内部で形状を変え、楽譜型のレーザーを発射。
真正面から撃ち落とさんとする光を、エボルも退く素振りを見せず突っ切る。
バグスターを焼き払う威力だろうと関係無い、消し去り蹴り砕く。
真正面から撃ち落とさんとする光を、エボルも退く素振りを見せず突っ切る。
バグスターを焼き払う威力だろうと関係無い、消し去り蹴り砕く。
『大丈夫だよイロハちゃん!勝ちたいって想いが強ければ、それは本当になるんだから!』
「はい…!絶対に、負けません…!」
「はい…!絶対に、負けません…!」
仲間の声は、勝ちを譲らぬ己の心は決して無意味なんかじゃあない。
仮面ライダーポッピーが好感度で強化するのは、味方だけに非ず。
自分自身の力をも引き上げ、レーザーが更に巨大化。
突っ切る筈だったエボルはそれ以上進めず、空中へ固定されやがて押し返された。
仮面ライダーポッピーが好感度で強化するのは、味方だけに非ず。
自分自身の力をも引き上げ、レーザーが更に巨大化。
突っ切る筈だったエボルはそれ以上進めず、空中へ固定されやがて押し返された。
「この程度がどうした…!」
『DRAGON…DRAGON…EVOL DRAGON!』
『フッハッハッハッハッハッ!』
地面へ投げ出されるも受け身を取り、ダメージを無視し別のエボルボトルを取り出す。
兎の耳を思わせるモジュールは消え、龍を模った意匠を装着。
格闘戦特化のドラゴンフォームへ変身し、すかさずドライバーを操作。
兎の耳を思わせるモジュールは消え、龍を模った意匠を装着。
格闘戦特化のドラゴンフォームへ変身し、すかさずドライバーを操作。
「スタープラチナ・ザ・ワールド」
だが寸前で時が止まる。
いろはが自分の意志を明確に告げ戦う気なら、男達も見物に徹してはいられない。
いろはが自分の意志を明確に告げ戦う気なら、男達も見物に徹してはいられない。
「テメーが何を思って殺し合いに乗ったのかは、知ったこっちゃねぇ」
天津からの説明だけでは理解しきれない、滅なりのどうしても譲れないものがあったのか。
いろはの仲間を殺すのも厭わない程に、人類滅亡とやらはさぞ大事に抱えたいものなのか。
何を言い訳されても、変えられない現実を迷わず見据える。
殺し合いを肯定し、この島で出会った仲間達に牙を剥いた。
故に自分がやるのは一つだけ、全力でブチのめす。
いろはの仲間を殺すのも厭わない程に、人類滅亡とやらはさぞ大事に抱えたいものなのか。
何を言い訳されても、変えられない現実を迷わず見据える。
殺し合いを肯定し、この島で出会った仲間達に牙を剥いた。
故に自分がやるのは一つだけ、全力でブチのめす。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァッ!!!」
彫像の如く静止したエボルへ叩き込まれるラッシュ。
時が動き出す前に、グリス本体もドライバーへ手を伸ばす。
簡単に倒されない敵と分かっているなら、手札は惜しまず切るに限る。
時が動き出す前に、グリス本体もドライバーへ手を伸ばす。
簡単に倒されない敵と分かっているなら、手札は惜しまず切るに限る。
『ディスチャージクラッシュ!潰れな~い!』
2秒が経過し、殴り飛ばされたエボルをすかさず捕える無数の鎖。
拘束は簡単に抜け出すだろうが、僅かなりとも隙が生まれるのは避けられない。
仲間が作ったチャンスを無視する者はおらず、サウザーが決着を付けに動く。
拘束は簡単に抜け出すだろうが、僅かなりとも隙が生まれるのは避けられない。
仲間が作ったチャンスを無視する者はおらず、サウザーが決着を付けに動く。
『THOUSAND DESTRUCTION!』
「滅…!申し訳ないが、力づくで君を止める!」
両足にエネルギーを収束させ、蹴りを叩き込む。
言葉で止まらないなら、こうする以外に方法はない。
善良な参加者をこれ以上手に掛けるのを、滅亡迅雷.netの同胞達だってきっと望まないのだから。
言葉で止まらないなら、こうする以外に方法はない。
善良な参加者をこれ以上手に掛けるのを、滅亡迅雷.netの同胞達だってきっと望まないのだから。
「天津垓…!貴様…!!」
散々ヒューマギア排他を目論んだ男が、今更ゼアの側に立つとでも言うのか。
ふざけるなと叫び鎖を壊すも、一手遅い。
悪意を砕き、囚われた心を引き上げる蹴りが――
ふざけるなと叫び鎖を壊すも、一手遅い。
悪意を砕き、囚われた心を引き上げる蹴りが――
届こうとした瞬間、世界は再び凍り付いた。
○
首の皮一枚繋がった。
魔法少女が齎す恩恵は刀使と鬼にも届き、能力の強化に成功。
膂力、走力、耐久性、反射神経、思考速度等々。
一つでも上がれば戦闘を格段に有利に出来る要素が、複数纏めて上昇した。
そうまでしても、日輪相手には雀の涙程度かも怪しい慰めに過ぎない。
魔法少女が齎す恩恵は刀使と鬼にも届き、能力の強化に成功。
膂力、走力、耐久性、反射神経、思考速度等々。
一つでも上がれば戦闘を格段に有利に出来る要素が、複数纏めて上昇した。
そうまでしても、日輪相手には雀の涙程度かも怪しい慰めに過ぎない。
「あははは…!これもう笑うしかないよね……!」
楽しさの中に呆れとヤケクソを混ぜた、小娘の声が鼓膜を掠める。
彼女にしては珍しい反応も、黒死牟には構う理由も余裕もなし。
五十を超える半月の群れを得物一本で捌く弟へ、ひたすらに手札を切り続ける。
彼女にしては珍しい反応も、黒死牟には構う理由も余裕もなし。
五十を超える半月の群れを得物一本で捌く弟へ、ひたすらに手札を切り続ける。
――月の呼吸 漆ノ型 厄鏡・月映え
虚哭神去を一閃、斬撃波が五つ纏めて襲来。
海中を泳ぐ鮫の背びれを思わせる様で迫り、着物を刻むのすら果たせず霧散。
合間を埋めるべく発生させた三日月をも、綿埃同然に散らされる。
驚きはない、既に一度見せた技で縁壱を阻める道理はないのだから。
海中を泳ぐ鮫の背びれを思わせる様で迫り、着物を刻むのすら果たせず霧散。
合間を埋めるべく発生させた三日月をも、綿埃同然に散らされる。
驚きはない、既に一度見せた技で縁壱を阻める道理はないのだから。
剣を振るう先に標的はおらず、空しく空気を噛み切るのみ。
技の悉くを潰され、一度出せば次はもう見飽きた児戯にまで落ちぶれる。
数百年掛けた歩みは小指一本分あるかないかでしかなく、如何に無駄な努力だったかを思い知らされた。
だが分かっていた筈だ、骨の髄まで味わって来ただろうに。
これこそが継国縁壱。
千年万年の時を費やしたとて、追い越すどころか並び立つ事すら不可能。
どこまでいっても月では日に手を届かせられない、幾年経とうと変えられない現実がそこにあった。
技の悉くを潰され、一度出せば次はもう見飽きた児戯にまで落ちぶれる。
数百年掛けた歩みは小指一本分あるかないかでしかなく、如何に無駄な努力だったかを思い知らされた。
だが分かっていた筈だ、骨の髄まで味わって来ただろうに。
これこそが継国縁壱。
千年万年の時を費やしたとて、追い越すどころか並び立つ事すら不可能。
どこまでいっても月では日に手を届かせられない、幾年経とうと変えられない現実がそこにあった。
――月の呼吸 弐ノ型 珠華ノ弄月
だとしても、剣を下ろす理由にはならない。
弟が善良な人間を殺す、鬼を斬るのと同じ目で命を刈り取る。
その光景が生み出されるのだけは、どうあっても受け入れられない。
未だ理由すら分からぬまま、されど剣筋は微塵も衰えず抗う。
弟が善良な人間を殺す、鬼を斬るのと同じ目で命を刈り取る。
その光景が生み出されるのだけは、どうあっても受け入れられない。
未だ理由すら分からぬまま、されど剣筋は微塵も衰えず抗う。
「そこっ…!」
感化されてはいないが、結芽もまた実力差を知って尚果敢に挑む。
退いたって、誰からも文句は飛ばない。
むしろこれ程の強者相手に、よくここまで持ち堪えたと労わられるだろう。
でも、はいそうですかと引き下がるのはお断りだ。
デェムシュの時みたいに、決め手に欠けるから一旦退くのではない。
純粋な力量差で及ばないから諦めるのは、非常に腹立たしい。
子供らしい理由なれど、結芽を動かすには十分だった。
退いたって、誰からも文句は飛ばない。
むしろこれ程の強者相手に、よくここまで持ち堪えたと労わられるだろう。
でも、はいそうですかと引き下がるのはお断りだ。
デェムシュの時みたいに、決め手に欠けるから一旦退くのではない。
純粋な力量差で及ばないから諦めるのは、非常に腹立たしい。
子供らしい理由なれど、結芽を動かすには十分だった。
黒死牟が繰り出した三日月の群れを、突っ切りながら御刀を突き出す。
向こうは自分に配慮なんかしてないし、して欲しいとも思ってない。
だから感覚を総動員し、足りない分は黒竜の鎧で防ぎ同士討ちは避けられているも、
といっても遊星の援護が無かったら、写シを張り直す間もなく細切れになったと言えるくらいには苛烈だ。
向こうは自分に配慮なんかしてないし、して欲しいとも思ってない。
だから感覚を総動員し、足りない分は黒竜の鎧で防ぎ同士討ちは避けられているも、
といっても遊星の援護が無かったら、写シを張り直す間もなく細切れになったと言えるくらいには苛烈だ。
鬼の技も刀使の剣も、大抵の相手なら逃れられない必中の刃。
但し縁壱は「大抵」の枠に括れない、別格の怪物。
気は一切緩めず、さりとて対処不可能に非ずと断定。
但し縁壱は「大抵」の枠に括れない、別格の怪物。
気は一切緩めず、さりとて対処不可能に非ずと断定。
――漆の型 斜陽転身
沈み掛けた太陽が再び天へ昇るが様で跳躍。
宙返りし頭部は下に、恐れ多くも神々のおわす天空へ足を向ける。
不安定な体勢ながらも回避は完璧。
全てが見えているかのように斬撃の間を抜け、刀を水平に薙ぐ。
灼熱の刀身が迫っていると分かった時既に、結芽は餌食と化していた。
宙返りし頭部は下に、恐れ多くも神々のおわす天空へ足を向ける。
不安定な体勢ながらも回避は完璧。
全てが見えているかのように斬撃の間を抜け、刀を水平に薙ぐ。
灼熱の刀身が迫っていると分かった時既に、結芽は餌食と化していた。
「うあああっ!?」
一振りで鎧は砕け散り、写シすらも解除。
死の肩代わりが出来ない、年相応の生身を日輪の前に晒す。
疲労は軽くないが、再び身を霊体に変えねば屍へなるのは確実。
だが遅い、再使用までの片手で数えられる間すら致命的な隙。
死ぬと脳が現実を直視する、よりも早く襟首をむんずと掴まれた。
死の肩代わりが出来ない、年相応の生身を日輪の前に晒す。
疲労は軽くないが、再び身を霊体に変えねば屍へなるのは確実。
だが遅い、再使用までの片手で数えられる間すら致命的な隙。
死ぬと脳が現実を直視する、よりも早く襟首をむんずと掴まれた。
「ひゃっ!?」
後方へ大きく放り投げた娘の声は無視し、己が妖刀を走らせる。
死が口を開き迫りつつあるのは、黒死牟も同じだ。
老爺に首を断たれる寸前だったあの夜よりも、無限城で鬼狩りどもに刃を突き立てられた時よりも。
濃密な終わりの気配に蝕まれながら、刀を振るう事はだけは止めない。
死が口を開き迫りつつあるのは、黒死牟も同じだ。
老爺に首を断たれる寸前だったあの夜よりも、無限城で鬼狩りどもに刃を突き立てられた時よりも。
濃密な終わりの気配に蝕まれながら、刀を振るう事はだけは止めない。
「――――っ」
が、物理的な問題がここで立ち塞がる。
虚哭神去が打ち合いの果てに断たれ、眼球の浮かぶ刀身は見る影もない。
黒死牟自身の血肉や骨から作った妖刀は、岩柱に折られても即座の修復が可能。
しかし縁壱が振るう刀は他の日輪刀とは別物。
不死に近い生命力を持つ無惨にすら、百年以上消えない傷痕を残した赫刀。
今この瞬間、黒死牟の得物は再生不可で使い物にならなくなった。
虚哭神去が打ち合いの果てに断たれ、眼球の浮かぶ刀身は見る影もない。
黒死牟自身の血肉や骨から作った妖刀は、岩柱に折られても即座の修復が可能。
しかし縁壱が振るう刀は他の日輪刀とは別物。
不死に近い生命力を持つ無惨にすら、百年以上消えない傷痕を残した赫刀。
今この瞬間、黒死牟の得物は再生不可で使い物にならなくなった。
再生成し構え直す時間は無い。
数秒と掛らず終える作業も、縁壱が相手では自殺行為以外の何ものでもない。
刀を再び手にするまでの猶予を与える、奇特な性質にも非ず。
鬼は斬る、たとえ実の兄であっても。
一切の迷いを捨てた殺意を前に取る手は――
数秒と掛らず終える作業も、縁壱が相手では自殺行為以外の何ものでもない。
刀を再び手にするまでの猶予を与える、奇特な性質にも非ず。
鬼は斬る、たとえ実の兄であっても。
一切の迷いを捨てた殺意を前に取る手は――
「……っ!」
残されている。
赫刀を防ぎ死を遠ざけるは、偶然手に入れた得物。
魔界最大勢力、ファンガイア族の王のみ所持を許された魔剣。
オーバーロードをも敗走へ追いやった力を手に、思考は焼き切れんばかりに働く。
赫刀を防ぎ死を遠ざけるは、偶然手に入れた得物。
魔界最大勢力、ファンガイア族の王のみ所持を許された魔剣。
オーバーロードをも敗走へ追いやった力を手に、思考は焼き切れんばかりに働く。
どう足掻いても縁壱には届かない、それはもう自分でも嫌と言う程分かっている。
得物を変えた所でどうにか出来る相手ではあるまい。
既存の力では何も変えられないのなら、方法は一つ。
荒唐無稽で馬鹿げた発想、それを実行する己への呆れも今は頭から追い出す。
得物を変えた所でどうにか出来る相手ではあるまい。
既存の力では何も変えられないのなら、方法は一つ。
荒唐無稽で馬鹿げた発想、それを実行する己への呆れも今は頭から追い出す。
思考を重ねる間にも戦闘は続き、日輪刀は鬼の命へ狙いを澄ます。
四百年前には実現しなかった兄殺しが、神の遊戯盤にて果たされる。
そんな幕引きを横合いからの一閃が妨害、横目で見やり弾き続く刀で胴を真っ二つに。
四百年前には実現しなかった兄殺しが、神の遊戯盤にて果たされる。
そんな幕引きを横合いからの一閃が妨害、横目で見やり弾き続く刀で胴を真っ二つに。
「…っと!分かってたけど、届かないのってムカついちゃうなぁ!」
迅移を用いた突きも無意味と化し、張り直した写シも一瞬で解除。
結芽自身察していたが、やはりこの程度は何ら脅威になり得ない。
吹き飛ばされた先で大いに不満を吐き出す。
結芽自身察していたが、やはりこの程度は何ら脅威になり得ない。
吹き飛ばされた先で大いに不満を吐き出す。
しかし意味はあった。
ほんの僅かに逸れた意識を兄へ戻した時、予想外の姿に瞳が揺らぐ。
ほんの僅かに逸れた意識を兄へ戻した時、予想外の姿に瞳が揺らぐ。
「ぐ……ガアアアアアア……!」
苦悶の声を上げる理由は、赫刀の餌食となったからじゃあない。
自らの手で魔剣を突き刺し、心臓を貫いたが為。
目的は至って単純、魔剣が秘める膨大な力を強引に引き出し己が内へ流し込むこと。
自らの手で魔剣を突き刺し、心臓を貫いたが為。
目的は至って単純、魔剣が秘める膨大な力を強引に引き出し己が内へ流し込むこと。
詳細を黒死牟は知らないが、ザンバットソードは使い手のライフエナジーへ過剰反応し自ら喰らう性質を持つ。
一方で刀身の素材や散りばめた意匠が高純度の魔皇石なのもあり、剣自体が強大な魔皇力の塊でもある。
つまり剣から強引に魔皇力を引き出すのは、絶対に不可能とも言い切れない。
一方で刀身の素材や散りばめた意匠が高純度の魔皇石なのもあり、剣自体が強大な魔皇力の塊でもある。
つまり剣から強引に魔皇力を引き出すのは、絶対に不可能とも言い切れない。
とはいえ、だ。
魔皇力は元々ファンガイアのような魔族が扱う力。
人間にとっては猛毒に等しく、使用を試みれば自ら命を縮めるも同義。
闇のキバの鎧を纏った紅音也のように、消耗死は免れない。
加えてザンバットソードもまた、所持者の精神を蝕み見境なしの獣へ変える程のじゃじゃ馬。
力を強引に引き出すなど、消滅か暴走の二択以外有り得ない。
魔皇力は元々ファンガイアのような魔族が扱う力。
人間にとっては猛毒に等しく、使用を試みれば自ら命を縮めるも同義。
闇のキバの鎧を纏った紅音也のように、消耗死は免れない。
加えてザンバットソードもまた、所持者の精神を蝕み見境なしの獣へ変える程のじゃじゃ馬。
力を強引に引き出すなど、消滅か暴走の二択以外有り得ない。
普通ならばそう。
しかし此度は前提が大きく違って来る。
しかし此度は前提が大きく違って来る。
上級クラスのファンガイアにも引けを取らない、十二鬼月最強の肉体を持つこと。
無惨の血を混入させられ鬼に変貌する激痛を、過去に乗り越え耐性があること。
いろはとのコネクトを経て、異なる力同士を纏め上げる感覚は得たこと。
刀身に噛み付くザンバットバットが、抑制を働きかけていること。
暴走を促す剣の誘惑を跳ね除ける程に、縁壱への形容し難き感情が強いこと。
無惨の血を混入させられ鬼に変貌する激痛を、過去に乗り越え耐性があること。
いろはとのコネクトを経て、異なる力同士を纏め上げる感覚は得たこと。
刀身に噛み付くザンバットバットが、抑制を働きかけていること。
暴走を促す剣の誘惑を跳ね除ける程に、縁壱への形容し難き感情が強いこと。
複数の理由が重なり、しかし一瞬でも気を抜けば食らい尽くされるだろう力の濁流に見舞われる。
歯が砕けん程に噛み締め、ふいに内側で渦巻く苦痛が和らいだ。
自分の中で僅かに残留していた娘の力が、溶けるように消えていく。
この期に及んでも桜色の少女の顔を思い浮かべてしまい、忌々し気に思うのも束の間。
カッと六眼を見開き魔剣を引き抜いた。
歯が砕けん程に噛み締め、ふいに内側で渦巻く苦痛が和らいだ。
自分の中で僅かに残留していた娘の力が、溶けるように消えていく。
この期に及んでも桜色の少女の顔を思い浮かべてしまい、忌々し気に思うのも束の間。
カッと六眼を見開き魔剣を引き抜いた。
闘気が嵐を巻き起こす。
上弦の参がここにいれば、短時間での劇的な変化へ眩暈を覚えただろう。
再び弟を見据える黒死牟の頬に、痣とは異なる模様が浮かび上がる。
ステンドグラス状のソレは、ファンガイアの王族が鎧を纏う際と似た現象。
生命の核である心臓へ直に流し込んだ影響で、鬼は新たな力を我が身に宿す。
キバット族の力を借りずとも、意思一つで魔皇力を活性化。
ザンバットソード本体が発するものと、剣へ深く刻まれた歴代の王達の魔皇力が、血のように全身を流れる。
これまで以上に濃厚となった異形の気配へ、縁壱も静かに構え直す。
多少の驚きはあれど、何をするかは分かっていた。
上弦の参がここにいれば、短時間での劇的な変化へ眩暈を覚えただろう。
再び弟を見据える黒死牟の頬に、痣とは異なる模様が浮かび上がる。
ステンドグラス状のソレは、ファンガイアの王族が鎧を纏う際と似た現象。
生命の核である心臓へ直に流し込んだ影響で、鬼は新たな力を我が身に宿す。
キバット族の力を借りずとも、意思一つで魔皇力を活性化。
ザンバットソード本体が発するものと、剣へ深く刻まれた歴代の王達の魔皇力が、血のように全身を流れる。
これまで以上に濃厚となった異形の気配へ、縁壱も静かに構え直す。
多少の驚きはあれど、何をするかは分かっていた。
――陸ノ型 日暈の龍・頭舞い
描いた光輪が幾つも繋がり、やがて龍を象る斬撃へ変化。
牙を突き立てるべく駆け巡り、灼熱で以て頸を落とす。
回避、防御、迎撃のいずれも不可能に等しい、鬼にとっての悪夢。
牙を突き立てるべく駆け巡り、灼熱で以て頸を落とす。
回避、防御、迎撃のいずれも不可能に等しい、鬼にとっての悪夢。
「やはりお前は……」
これ程に技が冴えながら、魂は神の操り人形も同然。
受け入れざるを得ない事実へ何を抱いたか、黒死牟自身も分からぬままに疾走。
正しい使い方を理解したと言わんばかりに、ザンバットバットで刀身を研ぐ。
魔皇力を高め、宙へ描いた巨大な蝙蝠が龍と激突。
ファンガイアの紋章に酷似してると知ってか知らずか、弾かれ合い数歩後退。
受け入れざるを得ない事実へ何を抱いたか、黒死牟自身も分からぬままに疾走。
正しい使い方を理解したと言わんばかりに、ザンバットバットで刀身を研ぐ。
魔皇力を高め、宙へ描いた巨大な蝙蝠が龍と激突。
ファンガイアの紋章に酷似してると知ってか知らずか、弾かれ合い数歩後退。
――肆ノ型 灼骨炎陽
選ぶは戦闘続行。
鬼が生きている、頸を落とすまで刀は納められない。
渦巻く火炎を思わせる斬撃が放たれる。
地獄という相応しき場所へ、鬼を引き摺り降ろす魔の手が伸ばされた。
鬼が生きている、頸を落とすまで刀は納められない。
渦巻く火炎を思わせる斬撃が放たれる。
地獄という相応しき場所へ、鬼を引き摺り降ろす魔の手が伸ばされた。
否と唱えるは魔剣に非ず、鬼が体内より作りし妖刀。
再生成を終えた虚哭神去が長大化し、真紅に染め上げられる。
鬼の生命を否定する灼熱ではない、魔界の王が支配下に置く鮮血だ。
本来の得物に魔皇力を流し込み、赤い二振りの刀が喰らい合う。
再生成を終えた虚哭神去が長大化し、真紅に染め上げられる。
鬼の生命を否定する灼熱ではない、魔界の王が支配下に置く鮮血だ。
本来の得物に魔皇力を流し込み、赤い二振りの刀が喰らい合う。
――月の呼吸 捌ノ型 月龍輪尾
龍の尾に等しい極大の刃で薙ぎ払う。
火炎が月を焼く、龍が日を砕く。
日輪が龍を炙る、月が火炎を消す。
魔を討つ刃の暴風雨を、魔に浸した刀を振るい突き進む。
宿す力が駆ける速度をも急速に引き上げ、届かぬ筈の太陽へと送り届けた。
火炎が月を焼く、龍が日を砕く。
日輪が龍を炙る、月が火炎を消す。
魔を討つ刃の暴風雨を、魔に浸した刀を振るい突き進む。
宿す力が駆ける速度をも急速に引き上げ、届かぬ筈の太陽へと送り届けた。
「縁壱……!」
赫刀と妖刀が、狙ったように同時に振るわれる。
傷は――浅い。
肩へ小さく触れた程度では、赤子だろうと人間は死なない。
頸を微かに裂いた程度など、再生が亀の歩みになったとてすぐに治る。
互いに剣を繰り出すも、振るった直後大きなブレが生じたのが原因。
縁壱は兄の声を聞き、黒死牟は弟の顔を見た。
だから決着への僅か数歩の距離へ、踏み込めなかった。
傷は――浅い。
肩へ小さく触れた程度では、赤子だろうと人間は死なない。
頸を微かに裂いた程度など、再生が亀の歩みになったとてすぐに治る。
互いに剣を繰り出すも、振るった直後大きなブレが生じたのが原因。
縁壱は兄の声を聞き、黒死牟は弟の顔を見た。
だから決着への僅か数歩の距離へ、踏み込めなかった。
(何だ……その顔は……)
己を見つめる縁壱に、どうしてなのだろうか。
憐れみで構ってやった自分へ付いて来る、幼き日を重ねるのは。
目の前にいる弟は人形染みた真顔だというのに。
不安そうに自分を見上げる、まるで悪戯を咎められたような子供に見えたのは。
憐れみで構ってやった自分へ付いて来る、幼き日を重ねるのは。
目の前にいる弟は人形染みた真顔だというのに。
不安そうに自分を見上げる、まるで悪戯を咎められたような子供に見えたのは。
(何故……そんな目で私を……)
兄弟共に、時が止まった世界へ閉じ込められたかのよう。
動けないまま、言葉一つ出せずにお互いを見る。
ほんの数秒が永遠の静寂にも感じられる中、
動けないまま、言葉一つ出せずにお互いを見る。
ほんの数秒が永遠の静寂にも感じられる中、
「っ!」
示し合わせたかのタイミングで、揃って飛び退き距離を取る。
お互いへの殺意を取り戻したのではなく、肌を尋常ならざる冷気が撫でたからだ。
地面に目を落とせば、立っていた箇所へ氷が張っているではないか。
病院へ集まった者の中に、このような術を持つ人間は皆無の筈。
唯一該当する異形はとっくに逃げ去っただろうに。
横槍を入れた輩をすぐさま探り当て、黒死牟は信じられぬ物を見た。
お互いへの殺意を取り戻したのではなく、肌を尋常ならざる冷気が撫でたからだ。
地面に目を落とせば、立っていた箇所へ氷が張っているではないか。
病院へ集まった者の中に、このような術を持つ人間は皆無の筈。
唯一該当する異形はとっくに逃げ去っただろうに。
横槍を入れた輩をすぐさま探り当て、黒死牟は信じられぬ物を見た。
「ビール!ビール!冷えてるか~?」
風呂上がりの飲酒を図々しく要求する、ステハゲこと野獣先輩。
姿は赤い巨体でも黄金の鎧でもなく、かといって元の服装とも違う。
大きめの帽子を被り、チリチリの黒髪は虹色の輝きを発す。
両手には鋭利な鉄扇が存在し、パタパタと扇ぐ真っ最中。
何より注目すべきは背後、二体の氷の巫女像が冷気を吐き出していた。
姿は赤い巨体でも黄金の鎧でもなく、かといって元の服装とも違う。
大きめの帽子を被り、チリチリの黒髪は虹色の輝きを発す。
両手には鋭利な鉄扇が存在し、パタパタと扇ぐ真っ最中。
何より注目すべきは背後、二体の氷の巫女像が冷気を吐き出していた。
その外見に、その得物に、その術に、何より両の瞳に浮かんだ『弐』『上弦』の文字を知らない筈がない。
「馬鹿な……!何故貴様が童磨の血鬼術を……!?」
野獣先輩童磨説。
大人気漫画、鬼滅の刃に登場する上弦の弐・童磨こそ野獣先輩の正体の可能性が微レ存とする説だ。
多くのファンからも、「二人纏めてとっとと地獄に落ちろ」とお墨付きを頂いてる。
大人気漫画、鬼滅の刃に登場する上弦の弐・童磨こそ野獣先輩の正体の可能性が微レ存とする説だ。
多くのファンからも、「二人纏めてとっとと地獄に落ちろ」とお墨付きを頂いてる。
困惑を抱きつつ更に視線を張り巡らさせれば、凍結の被害に遭い身動きを封じられた者がチラホラ。
バインドの魔法で遊星にあえて捕まり、ほんのちょっぴり気が緩んだ隙を突いたのだろう。
怪獣の巨体故効果が薄いキャルが殴り掛かるも、童磨の血鬼術のみならず身体能力も手に入れ野獣先輩は身軽だ。
蝶のようにひらひらと避け、デイパックから取り出した物体を投擲。
ずんぐりとした脚部へ張り付くも痛みは皆無。
ファイブキングの肉体に生半可な攻撃は意味を為さない、その筈だった。
バインドの魔法で遊星にあえて捕まり、ほんのちょっぴり気が緩んだ隙を突いたのだろう。
怪獣の巨体故効果が薄いキャルが殴り掛かるも、童磨の血鬼術のみならず身体能力も手に入れ野獣先輩は身軽だ。
蝶のようにひらひらと避け、デイパックから取り出した物体を投擲。
ずんぐりとした脚部へ張り付くも痛みは皆無。
ファイブキングの肉体に生半可な攻撃は意味を為さない、その筈だった。
『っ!?なによ…これ…この茶色野郎…!何したの…!?』
「大分溜まってんじゃんアゼルバイジャン」
「大分溜まってんじゃんアゼルバイジャン」
怒り交じりの問い掛けには答えず、したり顔を浮かべ語録を吐き出す。
唐突に体中が重くなり、荒い呼吸を繰り返すキャルには何が何やらさっぱり。
野獣先輩が投げ付けたのは、病院を襲う前にデェムシュが使ったケロンパス。
疲れを抜き取れるのは一度だけでも、再度貼り付ければ疲労を別の者へ押し付ける事も可能。
放送前の連戦の多大な消耗を、全てキャルが背負う羽目になったのである。
唐突に体中が重くなり、荒い呼吸を繰り返すキャルには何が何やらさっぱり。
野獣先輩が投げ付けたのは、病院を襲う前にデェムシュが使ったケロンパス。
疲れを抜き取れるのは一度だけでも、再度貼り付ければ疲労を別の者へ押し付ける事も可能。
放送前の連戦の多大な消耗を、全てキャルが背負う羽目になったのである。
「くっ…これは一体…!?」
凍結の被害に遭った者はまだいる。
滅と戦闘中のライダー達も体が凍り、身動きが取れない。
唯一、スタンドを操作できる承太郎がスタープラチナを出現させ脱出を試みる。
だが元の動きを取り戻したのは、滅の方が早い。
ドラゴンフォームは蒼炎を発生させる装置を搭載済、加えて感情の高まりによって出力は高まる。
融解寸前まで高温を発し、すかさずドライバーを操作。
滅と戦闘中のライダー達も体が凍り、身動きが取れない。
唯一、スタンドを操作できる承太郎がスタープラチナを出現させ脱出を試みる。
だが元の動きを取り戻したのは、滅の方が早い。
ドラゴンフォームは蒼炎を発生させる装置を搭載済、加えて感情の高まりによって出力は高まる。
融解寸前まで高温を発し、すかさずドライバーを操作。
『Ready Go!』
『EVOLTEC FINISH!』
「ぐぅ…!?」
「がっ…!」
「がっ…!」
叩き込んだ拳から蒼炎の龍が生み出され、サウザーのみならずグリスをも飲み込む。
盛大に殴り飛ばされた二人から視線を外し、続けてプログライズキーを得物に装填。
標的へ選ばれたのは残るもう一体のライダーだ。
盛大に殴り飛ばされた二人から視線を外し、続けてプログライズキーを得物に装填。
標的へ選ばれたのは残るもう一体のライダーだ。
『Progrise key comfirmed. Ready to buster.』
「きゃああああああっ!?」
『イロハちゃ――ひょえええ!?』
『イロハちゃ――ひょえええ!?』
片腕にオーラを纏わせ、いろはを拘束。
凍結を受けだされる前にこっちでも動きを封じ、確実に攻撃を当てる。
スティングスコーピオンのデータが刃を生成、斬り上げサウザー達同様に吹き飛ばす。
おまけにドライバーも外れ変身解除。
生身の魔法少女衣装を晒し、アスファルトの上で痛みに呻く。
凍結を受けだされる前にこっちでも動きを封じ、確実に攻撃を当てる。
スティングスコーピオンのデータが刃を生成、斬り上げサウザー達同様に吹き飛ばす。
おまけにドライバーも外れ変身解除。
生身の魔法少女衣装を晒し、アスファルトの上で痛みに呻く。
「そうですねぇ……」
各々の状況を視界に捉えつつ、野獣先輩は冷静に次の行動を模索。
大半の者が消耗しており、かく言う自身も新説シリーズの連続使用で体力的な余裕はない。
負傷こそ童磨になり鬼の再生能力で回復中だが、疲労はどうにもならなかった。
氷の吐息に包まれるのを躱した剣士達もおり、見れば結芽とか呼ばれてたメスガキも凍結は避けた様子。
大半の者が消耗しており、かく言う自身も新説シリーズの連続使用で体力的な余裕はない。
負傷こそ童磨になり鬼の再生能力で回復中だが、疲労はどうにもならなかった。
氷の吐息に包まれるのを躱した剣士達もおり、見れば結芽とか呼ばれてたメスガキも凍結は避けた様子。
「やっぱり僕は…王道を往くブラックホールですか(エボルフェーズ4)」
このまま戦闘を続けても、生き残れるかは怪しい。
となったら長居は無用、貴重な手札を失うのは惜しいが使わずに死ぬよりはマシ。
公園の死体達から回収した支給品を掲げ、発動を宣言。
聖都大学附属病院を見下ろす位置に、巨大な黒い穴が生まれた。
デュエルモンスターズのゴールドシリーズ、ブラック・ホール。
フィールド上のモンスター全てを破壊する、強力無比な全体除去魔法カード。
殺し合いで吸い込まれた参加者を、ランダムに別エリアへ転移させる効果を持つ。
となったら長居は無用、貴重な手札を失うのは惜しいが使わずに死ぬよりはマシ。
公園の死体達から回収した支給品を掲げ、発動を宣言。
聖都大学附属病院を見下ろす位置に、巨大な黒い穴が生まれた。
デュエルモンスターズのゴールドシリーズ、ブラック・ホール。
フィールド上のモンスター全てを破壊する、強力無比な全体除去魔法カード。
殺し合いで吸い込まれた参加者を、ランダムに別エリアへ転移させる効果を持つ。
「じゃあ俺、ギャラもらって帰るから…」
言葉とは裏腹に得た物は一つもなく、野獣先輩はブラックホールへ飲まれた。
ホモ特有の大胆な逃走に文句を付けられる状況ではない。
ホモ特有の大胆な逃走に文句を付けられる状況ではない。
「マズい……!」
ウィザードに変身し重量がある状態ですら、踏ん張るのも困難な吸引力。
凍結から抜け出たのも一瞬、すぐに遊星は上空へ吸い上げられた。
凍結から抜け出たのも一瞬、すぐに遊星は上空へ吸い上げられた。
「おにーさん!?」
遊星を追い掛けるように結芽も急上昇。
守ってあげると言った手前、一人放置させるのは少々バツが悪い。
単独で放り出されては危険度も高まるのもあり、どうにか腕を掴み分断を防ぐ。
揃って別エリアに飛ばされ、残る者達にも同様の被害が降り掛かる。
守ってあげると言った手前、一人放置させるのは少々バツが悪い。
単独で放り出されては危険度も高まるのもあり、どうにか腕を掴み分断を防ぐ。
揃って別エリアに飛ばされ、残る者達にも同様の被害が降り掛かる。
「だめ……もう……!きゃっ!?」
咄嗟に病院の壁にしがみ付くも、直前に受けたダメージもあり無駄な抵抗に終わった。
見えない手に摘ままれ引っ張られるように、いろはも地上から離れて行く。
純白の衣装と編んだ桜色の髪が激しく揺れる様は、鬼の六眼にも見えた。
刀を地面に突き刺しどうにか留まろうとした筈が、気付けば地を蹴り自ら空へ。
こちらへ気付いた娘が驚きの顔を浮かべるも、信じられないのは黒死牟自身も同じだ。
見えない手に摘ままれ引っ張られるように、いろはも地上から離れて行く。
純白の衣装と編んだ桜色の髪が激しく揺れる様は、鬼の六眼にも見えた。
刀を地面に突き刺しどうにか留まろうとした筈が、気付けば地を蹴り自ら空へ。
こちらへ気付いた娘が驚きの顔を浮かべるも、信じられないのは黒死牟自身も同じだ。
(私は……何をしている……)
黒い穴が何処へ通じてるのかは不明。
日の当たる場所が待ち構えている可能性とて低くはない。
自ら死にに向かうに等しいだろうに、何をしているのか。
日の当たる場所が待ち構えている可能性とて低くはない。
自ら死にに向かうに等しいだろうに、何をしているのか。
「黒死牟さ――」
己自身へ愕然としたまま、いろはの腕を掴む。
共に姿が何処とも知れぬ場所へ飛ばされ、声は誰にも届かない。
共に姿が何処とも知れぬ場所へ飛ばされ、声は誰にも届かない。
「おのれぇ…!」
怨嗟の声を吐きながら、滅は人間達から遠ざかって行く。
まただ、また一人も殺せず自分の内面を掻き乱される結果に終わった。
不甲斐ない己を恨んでも事態は変えられず、己の意志とは無関係に病院を去る。
因縁深いZAIAの人間を最後まで睨み付けたまま。
まただ、また一人も殺せず自分の内面を掻き乱される結果に終わった。
不甲斐ない己を恨んでも事態は変えられず、己の意志とは無関係に病院を去る。
因縁深いZAIAの人間を最後まで睨み付けたまま。
『く…ああああああ…!流石にヤバいかも……』
巨体で天津達に覆い被さり、吸い込まれるのを防ぐ。
しかしケロンパスの効果で押し付けられた疲労が枷となり、耐えるのにも限界だ。
本当に余計な事をしでかした薄汚い男へ怒りを燃やし、とうとうその時が来る。
しかしケロンパスの効果で押し付けられた疲労が枷となり、耐えるのにも限界だ。
本当に余計な事をしでかした薄汚い男へ怒りを燃やし、とうとうその時が来る。
『あんの茶色野郎…!次会ったらタダじゃ済まないわよ…!!』
怒声諸共吸収し、ファイブキングも消え去った。
残る天津達にも魔の手が迫り、フッと嘘のようにブラックホールは消失。
運が良いのか悪いのか、効果時間が切れたらしい。
残る天津達にも魔の手が迫り、フッと嘘のようにブラックホールは消失。
運が良いのか悪いのか、効果時間が切れたらしい。
「君達は無事か…?」
「どうにか、と言いてえ所だが…」
『皆いなくなっちゃったね……』
「どうにか、と言いてえ所だが…」
『皆いなくなっちゃったね……』
吸収を免れたのは天津と承太郎、それにドライバーの回収が間に合ったポッピー。
あれだけ他にいた参加者は、仲間も敵も全員消失。
悪い夢と思いたいが、破壊された周辺が無情にも現実を突き付けて来る。
あれだけ他にいた参加者は、仲間も敵も全員消失。
悪い夢と思いたいが、破壊された周辺が無情にも現実を突き付けて来る。
放送から間もなく起こった襲撃に端を発した乱戦の、幕引きがこうなるとは予想外。
苦い結果に三人とも暫し言葉が出なかった。
苦い結果に三人とも暫し言葉が出なかった。