歩く速度を上げても、脳裏へ刻まれた言葉は消えない。
歯を痛いくらいに噛み締めても、暗い誘惑を完全に振り払えない。
何度黙れと胸中で叫んだとて、効果が無いのは自分が一番理解している。
虫の鳴き声一つしない静寂の中を進んでいるのに、心は何時まで経っても喧しいまま。
歯を痛いくらいに噛み締めても、暗い誘惑を完全に振り払えない。
何度黙れと胸中で叫んだとて、効果が無いのは自分が一番理解している。
虫の鳴き声一つしない静寂の中を進んでいるのに、心は何時まで経っても喧しいまま。
情報交換を挟み、移動を再開しどれくらい経ったか。
怪僧とこましゃくれた少女との出会い以降、遭遇した人数はゼロ。
参加者は勿論、NPCすら影も形も見当たらない。
良いことなのか悪いことなのか、或人には即座に答えが出せなかった。
怪僧とこましゃくれた少女との出会い以降、遭遇した人数はゼロ。
参加者は勿論、NPCすら影も形も見当たらない。
良いことなのか悪いことなのか、或人には即座に答えが出せなかった。
未だに滅を発見出来ておらず、手掛かりもロクに掴めない。
そう考えると手放しにラッキーとは言えないが。
余計なトラブルに巻き込まれず滅の捜索へ時間を割けた。
見方を少し変えれば、悪い事でもないと言えるだろう。
そう考えると手放しにラッキーとは言えないが。
余計なトラブルに巻き込まれず滅の捜索へ時間を割けた。
見方を少し変えれば、悪い事でもないと言えるだろう。
例えば、襲われている参加者を助け時間のロスに繋がった。
体力と時間ばかりを消費している間に、滅が自分以外の者の手で討たれた。
人助けに精を出したのが原因で、復讐の機会は永遠に失われる。
そういった事態にならないとは限らない。
体力と時間ばかりを消費している間に、滅が自分以外の者の手で討たれた。
人助けに精を出したのが原因で、復讐の機会は永遠に失われる。
そういった事態にならないとは限らない。
「……っ」
自分の中で何かが軋む感覚があった。
身勝手な思考を重ねた己への苦い嫌悪。
起こり得る展開への焦り。
誰かが殺されそうになるのを見捨てたい筈が無い。
けど滅を自分の手で破壊出来なくなるのも、受け入れられない。
前者は万丈との拳を用いた語らいで改めて自覚し、後者はリンボに毒を流され気付いてしまった。
どちらもゲームで会った者が影響している、しかし紛れも無い或人の本心。
身勝手な思考を重ねた己への苦い嫌悪。
起こり得る展開への焦り。
誰かが殺されそうになるのを見捨てたい筈が無い。
けど滅を自分の手で破壊出来なくなるのも、受け入れられない。
前者は万丈との拳を用いた語らいで改めて自覚し、後者はリンボに毒を流され気付いてしまった。
どちらもゲームで会った者が影響している、しかし紛れも無い或人の本心。
復讐の為なら他の人の命などどうなったって構わない。
耳を塞ぎ目を逸らし、知ったことかと立ち去ればいい。
間違っていると否定を突き付けようにも、いざ声を挙げようとすれば躊躇が生まれる。
何が正解なのかが分からない。
灯花にも言われた、どっちつかずでは全部無駄になると。
復讐も叶わず命も取り零す、最悪の結末は非現実的に非ず。
理解している、だからこそ余計に迷いは強くなる一方だった。
耳を塞ぎ目を逸らし、知ったことかと立ち去ればいい。
間違っていると否定を突き付けようにも、いざ声を挙げようとすれば躊躇が生まれる。
何が正解なのかが分からない。
灯花にも言われた、どっちつかずでは全部無駄になると。
復讐も叶わず命も取り零す、最悪の結末は非現実的に非ず。
理解している、だからこそ余計に迷いは強くなる一方だった。
「ちょいと宜しいですかい?」
「うわっ!?」
「うわっ!?」
脳内に渦を巻きながら進み続ける最中、不意に声を掛けられた。
脚は止めずとも意識はリンボ達の言葉に大半が割かれており、接近する気配にも気付かず。
こうして向こうから呼び止められ、ようやっと相手の存在を認識。
油断し過ぎだ、悪意ある者なら攻撃を加えられただろうに。
情けない自分へ苛立ちつつ、声の主を見やる。
脚は止めずとも意識はリンボ達の言葉に大半が割かれており、接近する気配にも気付かず。
こうして向こうから呼び止められ、ようやっと相手の存在を認識。
油断し過ぎだ、悪意ある者なら攻撃を加えられただろうに。
情けない自分へ苛立ちつつ、声の主を見やる。
「うぇっ!?あ、あんた何!?」
数秒と経たずに二度目の驚愕。
無理も無い、すぐ傍に突っ立っているのはどう見ても人間では無い生物なのだから。
黒光りし横幅の広い体に、人間よりも多い手足。
頭部らしき箇所から伸びた触覚。
人の特徴が一つも無い、言うなれば巨大な昆虫。
そんな虫が何故か赤いパンツを履き、荷袋を背負い或人の目の前にいた。
レイダーやマギアの類かと身構えるも、レイドライザーやゼツメライズキーは見当たらない。
無理も無い、すぐ傍に突っ立っているのはどう見ても人間では無い生物なのだから。
黒光りし横幅の広い体に、人間よりも多い手足。
頭部らしき箇所から伸びた触覚。
人の特徴が一つも無い、言うなれば巨大な昆虫。
そんな虫が何故か赤いパンツを履き、荷袋を背負い或人の目の前にいた。
レイダーやマギアの類かと身構えるも、レイドライザーやゼツメライズキーは見当たらない。
「そう警戒しないでくだせぇ。アタシャただの商人なもんで」
「いや、怪しむに決まってるって……」
「いや、怪しむに決まってるって……」
困惑を隠せない或人とは対照的に、巨大昆虫は敵意を見せずに説明する。
一通りの話を聞き分かったのは、虫の名は魔導雑貨商人。
決闘者(デュエリスト)達には聞き覚えのあるだろう、デュエルモンスターズの昆虫族モンスター。
ゲームにおいてはNPCとして用意されたが、数時間前に或人が蹴散らしたガスマスクの集団とは役割が異なる。
曰く、ゲームを円滑に進める為の取引が可能。
他参加者から回収した首輪、若しくは現在所持中の支給品との物々交換で別の道具を提供するのだという。
これが提供できる道具の一覧と渡されたカタログを開けば、名前と写真に簡易な説明文がズラリ。
一通りの話を聞き分かったのは、虫の名は魔導雑貨商人。
決闘者(デュエリスト)達には聞き覚えのあるだろう、デュエルモンスターズの昆虫族モンスター。
ゲームにおいてはNPCとして用意されたが、数時間前に或人が蹴散らしたガスマスクの集団とは役割が異なる。
曰く、ゲームを円滑に進める為の取引が可能。
他参加者から回収した首輪、若しくは現在所持中の支給品との物々交換で別の道具を提供するのだという。
これが提供できる道具の一覧と渡されたカタログを開けば、名前と写真に簡易な説明文がズラリ。
「と言っても価値が釣り合ってなきゃ交換はしませんぜ。ちり紙と引き換えに旦那が巻いてるようなベルトを寄越せと言われても、フェアじゃないんでね」
「じゃあ首輪と交換って言うのは…」
「強力な道具が欲しいならこっちに寄越す首輪の数も増えまさぁ。一応言っときますけど、アタシを殺しても道具は一切手に入りやせん」
「じゃあ首輪と交換って言うのは…」
「強力な道具が欲しいならこっちに寄越す首輪の数も増えまさぁ。一応言っときますけど、アタシを殺しても道具は一切手に入りやせん」
魔導雑貨商人が提供する道具は参加者を会場へ送ったのと同じ、転送装置で手元に送られる。
つまりここで殺しても残るのはカタログだけで、肝心の道具は手に入らない。
つまりここで殺しても残るのはカタログだけで、肝心の道具は手に入らない。
「…やっぱり、殺し合いをゲームとしか見てないんだな」
「さぁ。アタシはただ物を交換するようプログラムされてるだけですんで」
「さぁ。アタシはただ物を交換するようプログラムされてるだけですんで」
テレビ画面の向こうのゲームであれば、こういったアイテムを売る商人は当然の存在。
しかし命が掛かった本物の殺し合いでは、悪趣味としか言いようが無い。
檀黎斗は冗談や比喩でなく、本気でゲームとして殺し合いを始めた。
今は滅への憎悪が勝るとはいえ、神を名乗る男に良い感情など抱ける筈も無い。
しかし命が掛かった本物の殺し合いでは、悪趣味としか言いようが無い。
檀黎斗は冗談や比喩でなく、本気でゲームとして殺し合いを始めた。
今は滅への憎悪が勝るとはいえ、神を名乗る男に良い感情など抱ける筈も無い。
表情に険しさの増す或人だが、目の前のNPCはただ与えられた役割通りに動くだけ。
それこそ初見のプレイヤーへするかのように説明を行う。
それこそ初見のプレイヤーへするかのように説明を行う。
「ああそうだ、道具以外に情報も売ってますぜ。例えば他の参加者がどこにいるかとか」
「えっ」
「えっ」
心臓が強く跳ねた。
黎斗への悪感情が一瞬で鳴りを潜める程度には、聞き逃せない言葉。
黎斗への悪感情が一瞬で鳴りを潜める程度には、聞き逃せない言葉。
「本当に…教えてくれるのか……?」
「交換する物のレートによりますね。良いもんや首輪が多い程具体的な現在位置を教えますが、質が低けりゃ期待はしないでくだせぇや。数時間前の位置しか教えられないってこともあります」
「交換する物のレートによりますね。良いもんや首輪が多い程具体的な現在位置を教えますが、質が低けりゃ期待はしないでくだせぇや。数時間前の位置しか教えられないってこともあります」
当然タダで知る事は不可能、但し渡せる物によっては詳細な情報が手に入る。
ということは、滅が今どのエリアにいるかが分かるかもしれない。
その為には情報に見合うだけの物を渡さねばならず、チラとデイパックへ視線が移動。
首輪は持っていない、必然的に渡せるのは支給品。
食料やタブレットといった全参加者共通の物を渡した所で、旨みが少ないのは明白。
かといってビルドドライバーを始め変身ツール一式は無理だ。
アークワンに変身出来無い以上、今の自分が使える貴重な戦力。
もし滅と会っても破壊可能な力がなくては、何の意味も無い。
同様の理由でフルボトルバスターも渡せない。
メタルビルドと相性の良い武器なのは、先の戦闘で確認済みである。
ということは、滅が今どのエリアにいるかが分かるかもしれない。
その為には情報に見合うだけの物を渡さねばならず、チラとデイパックへ視線が移動。
首輪は持っていない、必然的に渡せるのは支給品。
食料やタブレットといった全参加者共通の物を渡した所で、旨みが少ないのは明白。
かといってビルドドライバーを始め変身ツール一式は無理だ。
アークワンに変身出来無い以上、今の自分が使える貴重な戦力。
もし滅と会っても破壊可能な力がなくては、何の意味も無い。
同様の理由でフルボトルバスターも渡せない。
メタルビルドと相性の良い武器なのは、先の戦闘で確認済みである。
となれば残るは二つ。
(でもそれは……)
クローズドラゴンもアナザーウォッチも、万丈が自分に託してくれた。
だというのに滅の情報欲しさに売り渡すのは、信頼を踏み躙る行為に他ならない。
何よりビルドドライバー等の変身ツールだって、聞けば元は万丈の仲間の戦兎の物。
次に会う時には再び仮面ライダーゼロワンになっていると信じ、纏めて返してもらうと言われた。
だから自分も自信はないけど、そうなるよう努力すると返したのは嘘じゃない。
だというのに滅の情報欲しさに売り渡すのは、信頼を踏み躙る行為に他ならない。
何よりビルドドライバー等の変身ツールだって、聞けば元は万丈の仲間の戦兎の物。
次に会う時には再び仮面ライダーゼロワンになっていると信じ、纏めて返してもらうと言われた。
だから自分も自信はないけど、そうなるよう努力すると返したのは嘘じゃない。
交換可能な物は持ってないと言うのが正しい。
復讐だけに固執してしまった自分に喝を入れた男の信頼を、こんな形で裏切ってはいけない。
分かっている、誰に言われずとも分かっている。
復讐だけに固執してしまった自分に喝を入れた男の信頼を、こんな形で裏切ってはいけない。
分かっている、誰に言われずとも分かっている。
だけど、必ずや己が手での破壊を望むヒューマギアの情報が手に入る。
降って湧いた思わぬ機会を、縁が無かったで終わらせるのには抵抗があった。
降って湧いた思わぬ機会を、縁が無かったで終わらせるのには抵抗があった。
「あのさ、次にどのエリアに行けばあんたに会えるとかってのは…」
「そいつぁ教えられないよう設定されてます。次に旦那と会えるかどうかは…まぁ運次第ってことで」
「そいつぁ教えられないよう設定されてます。次に旦那と会えるかどうかは…まぁ運次第ってことで」
ここで別れてもまたすぐ会える、と都合良くはいかない。
恐らく今自分の元へ現れたのも偶然に過ぎないのだろう。
恐らく今自分の元へ現れたのも偶然に過ぎないのだろう。
「俺は……」
復讐か信頼か。
どちらを取ってもしこりの残る選択へ、或人は答えを出せずにいた。
どちらを取ってもしこりの残る選択へ、或人は答えを出せずにいた。
【H-6/一日目/早朝】
【飛電或人@仮面ライダーゼロワン】
[状態]:迷い(大)、ダメージ(小)
[装備]:ビルドドライバー+メタルタンクタンクフルボトル+ハザードトリガー@仮面ライダービルド
[道具]:基本支給品一式、アナザーゼロワンライドウォッチ@仮面ライダージオウ×ゼロワン、令和・ザ・ファーストジェネレーション、フルボトルバスター@仮面ライダービルド、クローズドラゴン@仮面ライダービルド
[思考・状況]
基本方針:とりあえず滅をはか…倒す…
1:滅の情報を得る為に…………
2:滅がここにいるなら必ず倒す…つもりだ。でももし他の参加者に倒されたら……?
3:垓さんか…まぁ頑張ってくれてるといいな
4:とりあえずあった人からは話を聞いていこうかな
5:万丈の仲間に会えたら礼と情報交換をしなくちゃな
6:エボルトに警戒
7:主催の人達は許さない、けど滅よりは優先度は…まだ低いな
8:他の人達を助けて、それで間に合わなくなるなら……
[備考]
※参戦時期は43話開始直後。
[状態]:迷い(大)、ダメージ(小)
[装備]:ビルドドライバー+メタルタンクタンクフルボトル+ハザードトリガー@仮面ライダービルド
[道具]:基本支給品一式、アナザーゼロワンライドウォッチ@仮面ライダージオウ×ゼロワン、令和・ザ・ファーストジェネレーション、フルボトルバスター@仮面ライダービルド、クローズドラゴン@仮面ライダービルド
[思考・状況]
基本方針:とりあえず滅をはか…倒す…
1:滅の情報を得る為に…………
2:滅がここにいるなら必ず倒す…つもりだ。でももし他の参加者に倒されたら……?
3:垓さんか…まぁ頑張ってくれてるといいな
4:とりあえずあった人からは話を聞いていこうかな
5:万丈の仲間に会えたら礼と情報交換をしなくちゃな
6:エボルトに警戒
7:主催の人達は許さない、けど滅よりは優先度は…まだ低いな
8:他の人達を助けて、それで間に合わなくなるなら……
[備考]
※参戦時期は43話開始直後。
『NPC紹介』
【魔導雑貨商人@遊戯王OCG】
リバース・効果モンスター
星1/光属性/昆虫族/攻 200/守 700
(1):このカードがリバースした場合に発動する。
魔法・罠カードが出るまで自分のデッキの上からカードをめくり、その魔法・罠カードを手札に加える。
残りのめくったカードは全て墓地へ送る。
【魔導雑貨商人@遊戯王OCG】
リバース・効果モンスター
星1/光属性/昆虫族/攻 200/守 700
(1):このカードがリバースした場合に発動する。
魔法・罠カードが出るまで自分のデッキの上からカードをめくり、その魔法・罠カードを手札に加える。
残りのめくったカードは全て墓地へ送る。
今ロワにおいては参加者と取引を行う、言わば生きた移動アイテム販売店。
以下、大まかな詳細。
以下、大まかな詳細。
- 首輪か所持している支給品と引き換えに道具を提供。提供可能な道具の一覧は魔導雑貨商人が持つカタログに記載。
- 参加者が渡した支給品は新しくカタログに加わり、別の参加者が手に入れる事も可。
- 転送装置で主催本部から道具が送られてくる為、魔導雑貨商人を殺しても道具は手に入らない。
- 他参加者の情報も交換可能。渡す道具や首輪の数によって情報の正確さは変わる。
- どのエリアに現れるかは完全にランダム。また今回登場した以外の個体が存在するかは後続の書き手に任せます。
070:Break&Peace | 投下順 | 072:Judge End ─アドバンス・カーニバル─ |
時系列順 | ||
050:贈【のろい】 | 飛電或人 | 076:ソレが正しい選択か? |