復讐を果たす。
ゲーム開始当初から、否、ゲームに巻き込まれる前より或人が何を捨て置いても優先するもの。
誰かが傷付いている、泣いている、助けを求めている。
その全てを知った事かと振り払い、忌々しい男の元へと辿り着く。
だがその通りに動くには、飛電或人という青年は善意を完全には捨てられなかった。
当然だ。
容易く切り替えられる程度の善意しか持たないならば、ゼロワンに変身出来た筈がない。
ゲーム開始当初から、否、ゲームに巻き込まれる前より或人が何を捨て置いても優先するもの。
誰かが傷付いている、泣いている、助けを求めている。
その全てを知った事かと振り払い、忌々しい男の元へと辿り着く。
だがその通りに動くには、飛電或人という青年は善意を完全には捨てられなかった。
当然だ。
容易く切り替えられる程度の善意しか持たないならば、ゼロワンに変身出来た筈がない。
日は顔を見せず、月が淡く照らす心許ない夜の道。
恐れを知らぬ戦士の足取りで或人は進む。
指針となるは一体の人造生命体。
父であれと願われ生み出されたヒューマギア。
或人の希望を奪い去った許し難き男、滅。
恐れを知らぬ戦士の足取りで或人は進む。
指針となるは一体の人造生命体。
父であれと願われ生み出されたヒューマギア。
或人の希望を奪い去った許し難き男、滅。
考える、滅がこの地で何を為さんとしているかを。
答えは即座に弾き出された。
人類滅亡、かの人工知能が乗り移ったが如き人間社会への宣戦布告。
聖戦と信じてやまぬ大虐殺を引き起こすのだろう。
罪の無い人々ならず、障害と見なせば善良なヒューマギアすらも手に掛ける悪の所業。
『彼女』を破壊された絶望の瞬間を思えば、滅がそういった行動に出ても不思議は無い。
答えは即座に弾き出された。
人類滅亡、かの人工知能が乗り移ったが如き人間社会への宣戦布告。
聖戦と信じてやまぬ大虐殺を引き起こすのだろう。
罪の無い人々ならず、障害と見なせば善良なヒューマギアすらも手に掛ける悪の所業。
『彼女』を破壊された絶望の瞬間を思えば、滅がそういった行動に出ても不思議は無い。
「……っ」
痛いくらいに噛み締められる奥歯。
滅に生まれた感情を信じたイズが、あの日どうなったか。
火花を散らし、人工皮膚が剥がれ落ちた彼女の最後の笑みが今尚焼き付き離れない。
これまでずっと傍にいてくれた、この先も傍にいてくれる筈だった。
或人が疑いも無く信じた未来は、自らを突き動かす原動力諸共壊された。
イズはもういない、追い求めた夢は自ら捨てた、残されたのは憎悪。
それだけが或人の生きる理由。
滅に生まれた感情を信じたイズが、あの日どうなったか。
火花を散らし、人工皮膚が剥がれ落ちた彼女の最後の笑みが今尚焼き付き離れない。
これまでずっと傍にいてくれた、この先も傍にいてくれる筈だった。
或人が疑いも無く信じた未来は、自らを突き動かす原動力諸共壊された。
イズはもういない、追い求めた夢は自ら捨てた、残されたのは憎悪。
それだけが或人の生きる理由。
ゲームが始まったばかりの頃はそうだったろう。
怒りで自らを追い込む或人の頭を冷やしたのは、キーキーという鳴き声。
パタパタ飛び回る小さなドラゴン。
心配しているのか、或いは落ち着けよとでも言いたいのか。
どっちにしても気を遣わせてしまったようだ。
機械の体を持った小さな仲間に。
パタパタ飛び回る小さなドラゴン。
心配しているのか、或いは落ち着けよとでも言いたいのか。
どっちにしても気を遣わせてしまったようだ。
機械の体を持った小さな仲間に。
「分かってる、大丈夫だよ」
クローズドラゴンへ、今は共に行動していない持ち主へ向けて言う。
復讐をやめるつもりはない。
ただ復讐のみに囚われ、他から目を背けるつもりもない。
少なくとも助けを求める声を無視して、見殺しにする真似には出来そうも無かった。
万丈龍我、彼との出会いで心に溜まった燻りをある程度解消し、幾分余裕が生まれたのである。
滅を倒すのを諦めたつもりは無く、他の参加者と必要以上に慣れ合う気もない。
しかし自分の力を必要としているなら、ゼロワンドライバーが無くともその者の為に戦う。
それが現在の或人の方針。
復讐をやめるつもりはない。
ただ復讐のみに囚われ、他から目を背けるつもりもない。
少なくとも助けを求める声を無視して、見殺しにする真似には出来そうも無かった。
万丈龍我、彼との出会いで心に溜まった燻りをある程度解消し、幾分余裕が生まれたのである。
滅を倒すのを諦めたつもりは無く、他の参加者と必要以上に慣れ合う気もない。
しかし自分の力を必要としているなら、ゼロワンドライバーが無くともその者の為に戦う。
それが現在の或人の方針。
無理をして言ったのではない言葉を信用したのか、嬉しそうに鳴き声を上げる。
万丈が言っていた通りの喧しさ、されど不快感は無い。
こんな自分を心配してくれているのに、どこか嬉しさを感じるからか。
考えてみれば、イズを失ってからの自分を心配する者は多い。
不破や唯阿は勿論のこと、副添ら社員にも迷惑をかけてしまった。
迅だって、滅がイズを破壊したのにはショックだったろう。
復讐しか頭になかった時には彼らの様子に気を回せず、むしろ煩わしいとさえ思っていた。
万丈が言っていた通りの喧しさ、されど不快感は無い。
こんな自分を心配してくれているのに、どこか嬉しさを感じるからか。
考えてみれば、イズを失ってからの自分を心配する者は多い。
不破や唯阿は勿論のこと、副添ら社員にも迷惑をかけてしまった。
迅だって、滅がイズを破壊したのにはショックだったろう。
復讐しか頭になかった時には彼らの様子に気を回せず、むしろ煩わしいとさえ思っていた。
ここにはいない仲間達へ申し訳なさを抱き、
「もし、宜しいですかな?」
ゾワリと。
一声で体温を奪われた気がした。
一声で体温を奪われた気がした。
何か害を加えられたのではない。
体に走る痛みは万丈との戦闘によるもの以外ない。
ならばこれは一体何なのだろうか。
心臓を鷲積みにされた苦痛、背筋を百足が這いずり回る怖気。
現実には起こっていないそれらを、男の声を聞いただけで錯覚してしまった。
体に走る痛みは万丈との戦闘によるもの以外ない。
ならばこれは一体何なのだろうか。
心臓を鷲積みにされた苦痛、背筋を百足が這いずり回る怖気。
現実には起こっていないそれらを、男の声を聞いただけで錯覚してしまった。
「何やら急ぎの用があるとお見受け致しまするが、暫し足を止め耳を傾けて頂きたい」
振り返り、ソレをしかと己が両目で見る。
男である。
長身で、整った顔立ちで、奇抜な衣装を身に纏った、そんな男が一人。
男である。
長身で、整った顔立ちで、奇抜な衣装を身に纏った、そんな男が一人。
今が殺し合いでなかったとしても、目を引く容姿の男へ或人が思ったのは一つ。
――コレは何だ?
誰だとか、何故そんな恰好をとかよりも真っ先に疑問に思ったのだ。
男が一体どういう存在なのかを。
目の前に立ち、口を動かし言葉を発するのは紛れも無い人間の姿。
だというのに或人はコレを人間に分類すべきか大いに悩む。
男が一体どういう存在なのかを。
目の前に立ち、口を動かし言葉を発するのは紛れも無い人間の姿。
だというのに或人はコレを人間に分類すべきか大いに悩む。
「そう身構えずとも心配は無用。ただ少々、拙僧との“お喋り”に付き合って下されば、と」
人間がこれ程におぞましい気配を放てるのか。
人間がこれ程までに他者を戦慄させられるのか。
コレと似た存在を或人は一つ知っている。
支配者(アーク)の名を冠した人工知能。
警戒と恐怖が電流のように駆け巡り、最早男の言葉を耳に入れるだけの木偶人形と化した時、
人間がこれ程までに他者を戦慄させられるのか。
コレと似た存在を或人は一つ知っている。
支配者(アーク)の名を冠した人工知能。
警戒と恐怖が電流のように駆け巡り、最早男の言葉を耳に入れるだけの木偶人形と化した時、
「あなた相手に警戒するなって言う方が無理じゃないかにゃー?」
耳へ届くはまた別の声。
男の言葉がまるで粘液のようにへばりつくなら、こちらは綿毛が纏わりつくかのこそばゆさ。
ひょこりと男の後ろから顔を出す少女。
男が平均的な日本人を凌駕する長身なのを考慮しても、少女の体躯はやけに小さい。
海馬コーポレーション製のデイパックより、赤くてピカピカのランドセルの方が似合う。
それ程に幼い少女だった。
男の言葉がまるで粘液のようにへばりつくなら、こちらは綿毛が纏わりつくかのこそばゆさ。
ひょこりと男の後ろから顔を出す少女。
男が平均的な日本人を凌駕する長身なのを考慮しても、少女の体躯はやけに小さい。
海馬コーポレーション製のデイパックより、赤くてピカピカのランドセルの方が似合う。
それ程に幼い少女だった。
「このお兄さんの扁桃体が興奮して、一次的情動反応を引き起こしちゃってるのは明らかだよー?もうちょっと自分の怪しさを自覚した方が良いんじゃないの?」
「ンン、これは手厳しい。当世では悪い男に惹かれる婦人方も多いと小耳に挟みましたが、灯花殿にはまだ早かったご様子」
「あなたの場合は惹かれるじゃなく引かれるって言う方が正しいと思うよー」
「ンン、これは手厳しい。当世では悪い男に惹かれる婦人方も多いと小耳に挟みましたが、灯花殿にはまだ早かったご様子」
「あなたの場合は惹かれるじゃなく引かれるって言う方が正しいと思うよー」
笑みを崩さぬ男とは対照的に、少女が浮かべる表情は冷たい。
声色に含まれるのは大きな呆れ、それに嫌悪と警戒。
或人をも戦慄させた男と皮肉交じりに言葉を交わすとは、この少女は何者なのか。
理解が追い付かない。
声色に含まれるのは大きな呆れ、それに嫌悪と警戒。
或人をも戦慄させた男と皮肉交じりに言葉を交わすとは、この少女は何者なのか。
理解が追い付かない。
奇妙な組み合わせの二人組が自分そっちのけで会話する光景。
反応に困り固まるしかできない或人へ、ため息交じりに少女が視線を寄越す。
男に向けたのとは違う見た目に相応しい、しかしどこか冷たいものを感じずにはいられない笑みで話しかけた。
反応に困り固まるしかできない或人へ、ため息交じりに少女が視線を寄越す。
男に向けたのとは違う見た目に相応しい、しかしどこか冷たいものを感じずにはいられない笑みで話しかけた。
「知ってることぜーんぶ、わたくしに教えて欲しいにゃー」
○
「飛電インテリジェンス?悪いけど、中小企業を一々覚えてあげる程物好きじゃないんだよねー」
「ちゅうしょ…いやいや滅茶苦茶大手だって!」」
「ちゅうしょ…いやいや滅茶苦茶大手だって!」」
数分後、三人の間で行われたのは然程大きなことでもない。
交戦の意思の無い参加者ならばやるだろう、情報交換。
それぞれ名前を明かし、どんな参加者と出会ったか、誰を探してるかを教え合う。
リンボと名乗った男を強く警戒してはいても、戦闘を仕掛ける様子はない。
なら話をするくらいは或人としても問題なかった。
何故か首輪を填めていないのに関しても、ここにいるリンボは分身のようなものであり本体は別行動中と説明。
交戦の意思の無い参加者ならばやるだろう、情報交換。
それぞれ名前を明かし、どんな参加者と出会ったか、誰を探してるかを教え合う。
リンボと名乗った男を強く警戒してはいても、戦闘を仕掛ける様子はない。
なら話をするくらいは或人としても問題なかった。
何故か首輪を填めていないのに関しても、ここにいるリンボは分身のようなものであり本体は別行動中と説明。
或人が特に求める情報、滅に関してはどちらも知らないとのこと。
出会った参加者と言えばリンボの本体と行動中の二人だけ。
当たり前だが馬鹿正直に自分達の行いを明かす真似はしない。
女児が着せ替え人形をドレスアップするように、吉田良子を自分好みへ捻じ曲げた。
極めて利己的に使えないと判断し、桜田ネネをモンスターの餌にした。
復讐の道を選んだ或人であっても知れば敵対は確実。
真実を知る術が無い故、警戒以上に何もしない。
出会った参加者と言えばリンボの本体と行動中の二人だけ。
当たり前だが馬鹿正直に自分達の行いを明かす真似はしない。
女児が着せ替え人形をドレスアップするように、吉田良子を自分好みへ捻じ曲げた。
極めて利己的に使えないと判断し、桜田ネネをモンスターの餌にした。
復讐の道を選んだ或人であっても知れば敵対は確実。
真実を知る術が無い故、警戒以上に何もしない。
「ところで、社長さんが会ったのはその二人だけなの?」
「ああ、万丈と…そういやあの子の名前聞いてなかったな…」
「ふーん……」
「ああ、万丈と…そういやあの子の名前聞いてなかったな…」
「ふーん……」
ついさっき遭遇し、或人の目を覚まさせる目的で戦闘を仕掛けた青年。
万丈以外で或人が出会ったのは金髪の少女だけ。
巨大なハンマーを振り回しNPCを蹴散らしていた少女について、或人はほとんど何も知らない。
殺し合いに乗っていない、滅とも会っていない。
それだけ聞き早々に離れたのを今になって後悔する。
せめて名前を聞いていれば、少女の仲間に何処であったかを伝えられたというのに。
万丈以外で或人が出会ったのは金髪の少女だけ。
巨大なハンマーを振り回しNPCを蹴散らしていた少女について、或人はほとんど何も知らない。
殺し合いに乗っていない、滅とも会っていない。
それだけ聞き早々に離れたのを今になって後悔する。
せめて名前を聞いていれば、少女の仲間に何処であったかを伝えられたというのに。
失敗を悔やむ或人を尻目に、灯花はつまらなそうに目を細める。
特徴を聞くに金髪の少女は深月フェリシアで間違いない。
自分の知る参加者の一人だが、いろはやねむと違い敵と見ている相手。
精々他の面倒な参加者を道連れにして、やちよとみふゆ共々さっさと死んでくれた方が都合が良い。
大人しく魔法少女救済に手を貸す、なんて展開には期待しない。
特徴を聞くに金髪の少女は深月フェリシアで間違いない。
自分の知る参加者の一人だが、いろはやねむと違い敵と見ている相手。
精々他の面倒な参加者を道連れにして、やちよとみふゆ共々さっさと死んでくれた方が都合が良い。
大人しく魔法少女救済に手を貸す、なんて展開には期待しない。
灯花にとって幸運な事に、フェリシアが或人と遭遇したのはゲーム開始直後。
黎斗が大々的に放送を行う前、まだ参加者名簿が確定していなかった頃だ。
もし名簿を確認した後で或人と会っていたら、危険人物として灯花とねむの情報を教えていただろう。
リンボだけでも警戒の対象なのに、そこへ加えてフェリシアから警戒を促された少女までいる。
そうなっては情報交換どころか、戦闘に発展した可能性とてあった。
黎斗が大々的に放送を行う前、まだ参加者名簿が確定していなかった頃だ。
もし名簿を確認した後で或人と会っていたら、危険人物として灯花とねむの情報を教えていただろう。
リンボだけでも警戒の対象なのに、そこへ加えてフェリシアから警戒を促された少女までいる。
そうなっては情報交換どころか、戦闘に発展した可能性とてあった。
争いにならずに済んだのを良しと見るか、危険人物の情報を知る機会が無かったのを悪いと見るか。
灯花の正体を知らない或人には判断を付けられなかった。
灯花の正体を知らない或人には判断を付けられなかった。
滅の情報が無いなら何時までも足を止める理由は無い。
「暫し待たれよ或人殿」
そこへ待ったをかけるは怪僧の一声。
互いに話すべきは全て口にした筈。
何故いざ再出発のタイミングで止めるのか、訝し気な瞳も何のそので続ける。
互いに話すべきは全て口にした筈。
何故いざ再出発のタイミングで止めるのか、訝し気な瞳も何のそので続ける。
「時間は取らせませぬ。一つだけ確認しておきたい事があります故」
「まぁいいけど…」
「感謝いたします。ええ、ええ、気難しく考える必要はない、認か否かの実に実に単純極まる質問なので!」
「まぁいいけど…」
「感謝いたします。ええ、ええ、気難しく考える必要はない、認か否かの実に実に単純極まる質問なので!」
いいから早く言えよと或人のみならず、傍らの灯花も視線で呆れを伝える。
急かす空気を察し、これは失敬と上辺の謝罪を先に一言。
次いで本題が口から飛び出た。
急かす空気を察し、これは失敬と上辺の謝罪を先に一言。
次いで本題が口から飛び出た。
「率直にお尋ねしますが、或人殿は先の話に出た滅なる者を大層憎んでおられるのでは?」
「…っ!」
「…っ!」
強張る表情、言葉に出さなくとも態度が正解だと言っている。
万丈の時よりは落ち着いて滅の事を聞いたつもりだったが、あの男への憎悪を完全には抑え切れず見抜かれたらしい。
尤も或人が滅へ恨みを抱いているだろうとはリンボだけでなく、灯花にも察しが付いた。
魔法少女の中には個人的な復讐や、逆恨みでキュゥべえと契約を交わした者も少なくはない。
そういった羽と滅の情報を求める或人はやけにそっくりだった。
万丈の時よりは落ち着いて滅の事を聞いたつもりだったが、あの男への憎悪を完全には抑え切れず見抜かれたらしい。
尤も或人が滅へ恨みを抱いているだろうとはリンボだけでなく、灯花にも察しが付いた。
魔法少女の中には個人的な復讐や、逆恨みでキュゥべえと契約を交わした者も少なくはない。
そういった羽と滅の情報を求める或人はやけにそっくりだった。
だからといって所詮は他人の事情。
或人が誰を恨もうと自分の邪魔にならないなら、別に口出しする気は無い。
不運な事に、灯花と違いリンボにはちょっかいを掛ける格好の相手と認識されたようだが。
或人が誰を恨もうと自分の邪魔にならないなら、別に口出しする気は無い。
不運な事に、灯花と違いリンボにはちょっかいを掛ける格好の相手と認識されたようだが。
「反応を見るに図星のようですな。拙僧これでも人を見る目には自信がありまして」
その人を見る目のせいでデリケートな部分を土足で踏み荒らされた挙句、泥を撒き散らされたのが灯花だ。
負の感情を溜め込んだ真顔で睨み付けるも、気付いてないのか効果なし。
気付いたところで、のらりくらりと躱されるのがオチだろうけれど。
負の感情を溜め込んだ真顔で睨み付けるも、気付いてないのか効果なし。
気付いたところで、のらりくらりと躱されるのがオチだろうけれど。
「…だったら何だよ」
つい喧嘩腰で聞き返す。
まさかとは思うが、復讐はやめろとでも論すつもりか。
もしそうなら話を打ち切って、早々に彼らとは離れた方が良い。
身構える或人に対し、リンボはあくまで柔らかな物腰を崩さない。
まさかとは思うが、復讐はやめろとでも論すつもりか。
もしそうなら話を打ち切って、早々に彼らとは離れた方が良い。
身構える或人に対し、リンボはあくまで柔らかな物腰を崩さない。
「勘違い為されるな。復讐、大いに結構!無粋にもそれを阻もうなどとは微塵も考えておりませぬ。ただ一つ、若人へ僭越ながら助言を贈りたいのです」
「助言…?」
「助言…?」
またもや或人を困惑させる内容。
復讐の邪魔をされないのは良いとして、まさかアドバイスをするとは。
迷える信者を導く教祖のように、ゆったりとした口調で言う。
復讐の邪魔をされないのは良いとして、まさかアドバイスをするとは。
迷える信者を導く教祖のように、ゆったりとした口調で言う。
「滅への復讐、それ以外は捨てなされ」
或人の心を掻き乱す悪意を。
「は……?」
理解するのに十数秒の時間を要した。
自分は今何を言われたのか。
目の前の男は今何を言ったのか。
まるで水に溶けるように、リンボの言葉が或人の心(なか)へ浸透する。
復讐以外は捨ててしまえ。
つまりそれは、
自分は今何を言われたのか。
目の前の男は今何を言ったのか。
まるで水に溶けるように、リンボの言葉が或人の心(なか)へ浸透する。
復讐以外は捨ててしまえ。
つまりそれは、
「襲われてる人がいても無視しろって言いたいのか…?」
「平たく言うとそうですな」
「平たく言うとそうですな」
あっさり肯定され顔が引き攣る。
万丈から言われた事の正反対をやれと、リンボはそう言っているのだ。
自身の中のアークに囁かれた、他の連中なんぞどうでもいい、復讐を優先しろと。
まさかそれと同じ内容を、他者から言われるとは思わなかった。
万丈から言われた事の正反対をやれと、リンボはそう言っているのだ。
自身の中のアークに囁かれた、他の連中なんぞどうでもいい、復讐を優先しろと。
まさかそれと同じ内容を、他者から言われるとは思わなかった。
「そんなの…!」
もしゲームに巻き込まれた直後や万丈と出会う前なら、また違った反応を見せただろう。
しかし或人は既に万丈との戦いを通じ、本来持つ善意をある程度だが取り戻した状態。
故にリンボの助言へ声を荒げる。
復讐を言い訳に救いが必要な人達を見捨てるなど、万丈が突きつけたように間違っている。
復讐の為に誰かを守る道を捨てるつもりはない。
己の善意のままに反論を返す。
しかし或人は既に万丈との戦いを通じ、本来持つ善意をある程度だが取り戻した状態。
故にリンボの助言へ声を荒げる。
復讐を言い訳に救いが必要な人達を見捨てるなど、万丈が突きつけたように間違っている。
復讐の為に誰かを守る道を捨てるつもりはない。
己の善意のままに反論を返す。
「まぁまぁ落ち着きなされ。憤るのは拙僧の話を全て聞いてからでも、遅くはないでしょう」
或人の怒りを真正面から向けられても、涼しい顔で受け流す。
暖簾に腕押し、真面目に怒るだけ馬鹿を見るとでも言いたげな態度。
話を聞くも何も、他者を見捨てる正当な理由なんてあるものか。
至極当然の怒りを露わにする青年へ向け、怪僧は次の言葉を言い放つ。
暖簾に腕押し、真面目に怒るだけ馬鹿を見るとでも言いたげな態度。
話を聞くも何も、他者を見捨てる正当な理由なんてあるものか。
至極当然の怒りを露わにする青年へ向け、怪僧は次の言葉を言い放つ。
「滅が別の者に討ち取られても或人殿は納得できると?」
「えっ」
「えっ」
動きが止まる。
熱を一瞬で奪い取られ、怒りの感情は瞬く間に霧散。
冷水を浴びせられたというよりは、蛇が絡み付いたと言った方がしっくり来る。
噛み付き流し込んだ毒が、あっという間に激情を塗り替えた。
熱を一瞬で奪い取られ、怒りの感情は瞬く間に霧散。
冷水を浴びせられたというよりは、蛇が絡み付いたと言った方がしっくり来る。
噛み付き流し込んだ毒が、あっという間に激情を塗り替えた。
「聞けばその滅なる絡繰人形、屍を積み上げ血の河を築く正に此度の遊戯へうってつけの人材。黎斗なる自称神が目を付けるのもよく分かる。ですが、それは何も滅のみに限った話ではありますまい」
黎斗が開催したゲームは殺し合い。
人類滅亡を掲げ、人間を殺すのに一切の躊躇を持たない滅は本選のプレイヤーにこの上なく相応しい。
だが人殺しを積極的に行う参加者は別に滅しかいない訳ではない。
例えば放送で少女を惨殺した金髪の男、例えば万丈が警戒を呼び掛けていたエボルト。
他にも或人が知らないだけで、残虐性と相応の力を持った輩がゴロゴロいても不思議は無い。
加えて言うなら、戦う為の力を持つのは殺し合いに反抗する参加者だって同じ。
既に或人が遭遇した金髪の少女や万丈が良い例だ。
人類滅亡を掲げ、人間を殺すのに一切の躊躇を持たない滅は本選のプレイヤーにこの上なく相応しい。
だが人殺しを積極的に行う参加者は別に滅しかいない訳ではない。
例えば放送で少女を惨殺した金髪の男、例えば万丈が警戒を呼び掛けていたエボルト。
他にも或人が知らないだけで、残虐性と相応の力を持った輩がゴロゴロいても不思議は無い。
加えて言うなら、戦う為の力を持つのは殺し合いに反抗する参加者だって同じ。
既に或人が遭遇した金髪の少女や万丈が良い例だ。
そういった参加者の存在を考えれば、リンボが何を言いたいかも自ずと見えてくる。
確かに滅はそう簡単に殺される程軟では無い。
がしかし、或人が復讐を果たすまで絶対に生き延びている保障も無いのだ。
忘れてはならない、或人達が巻き込まれたのは殺し合いだ。
殺し合いを良しとしない善良な参加者を襲い、逆に討ち取られるかもしれない。
或いは別の殺し合いに乗った参加者と戦闘に発展し、あえなく破壊される可能性もある。
事情を知らない参加者からしたら、或人の復讐の為に滅を生かしておこうなどとは考えないだろう。
確かに滅はそう簡単に殺される程軟では無い。
がしかし、或人が復讐を果たすまで絶対に生き延びている保障も無いのだ。
忘れてはならない、或人達が巻き込まれたのは殺し合いだ。
殺し合いを良しとしない善良な参加者を襲い、逆に討ち取られるかもしれない。
或いは別の殺し合いに乗った参加者と戦闘に発展し、あえなく破壊される可能性もある。
事情を知らない参加者からしたら、或人の復讐の為に滅を生かしておこうなどとは考えないだろう。
「それは……」
滅が他の参加者を殺そうとするとは考えた。
けれどその逆、滅が他の参加者に殺される可能性を失念していた。
今この瞬間にも復讐すべき男が或人の与り知らぬ所で殺されている、そんな展開は有り得ないとどうして言い切れようか。
けれどその逆、滅が他の参加者に殺される可能性を失念していた。
今この瞬間にも復讐すべき男が或人の与り知らぬ所で殺されている、そんな展開は有り得ないとどうして言い切れようか。
「救いを求める者達を放っては置けない。ええ、確かに人間として正しき行いと言えるでしょう。ですが、善行を為す事が恨み辛みを晴らす機会の喪失に繋がるとしたら…果たしてそれは或人殿の望む所と言えますかな?」
言葉に詰まる。
他の巻き込まれた参加者がどうでもいい、と言うつもりはない。
放送で少女達や自分の知らない仮面ライダーが殺された際に抱いた義憤は、偽りなんかじゃない。
あのような悲劇がこの先も起こるのなら黙っていられない。
しかし復讐の妨げになるのなら、流石に思う所は多々ある。
他の巻き込まれた参加者がどうでもいい、と言うつもりはない。
放送で少女達や自分の知らない仮面ライダーが殺された際に抱いた義憤は、偽りなんかじゃない。
あのような悲劇がこの先も起こるのなら黙っていられない。
しかし復讐の妨げになるのなら、流石に思う所は多々ある。
「とはいえ、仮にそうなっても参加者の皆々様にとっては喜ばしいことでしょうなぁ。自分達を害する絡繰人形が消えたとあれば、拾われる命も少なくはないでしょう」
但しそれは或人の個人的感情を無視すれば、という大前提が付くが。
滅が自分以外の者の手で破壊され、納得できるか否か。
出来る訳が無い。
万丈との邂逅を経た後でも滅への憎悪は健在、この手でイズの仇を取らねば気は済まない。
そうでなければ何の為に自分の夢を捨てたのか、アズの誘いに乗りアークの力を手にしたのか。
復讐という選択を自ら諦めるのではない、どこの誰とも知れぬ輩の手で奪われる。
そのような結果、断じて認められるか。
滅が自分以外の者の手で破壊され、納得できるか否か。
出来る訳が無い。
万丈との邂逅を経た後でも滅への憎悪は健在、この手でイズの仇を取らねば気は済まない。
そうでなければ何の為に自分の夢を捨てたのか、アズの誘いに乗りアークの力を手にしたのか。
復讐という選択を自ら諦めるのではない、どこの誰とも知れぬ輩の手で奪われる。
そのような結果、断じて認められるか。
「ねー社長さん」
ここまで口を挟まなかった少女の声。
渋い顔で俯く或人をフォローする為か、それとも更に追い詰める為か。
幼子とは思えぬ程に冷め切った瞳で灯花は言う。
渋い顔で俯く或人をフォローする為か、それとも更に追い詰める為か。
幼子とは思えぬ程に冷め切った瞳で灯花は言う。
「社長さんが誰を恨もうが興味無いけどー。知らない人達を一々助けるのに労力を費やすくらいなら、本当は大して恨んだりしてないんじゃないのー?」
「っ!そんなことない…!俺は滅を…」
「だったら」
「っ!そんなことない…!俺は滅を…」
「だったら」
年上の青年の激昂も、どうでも良さげに受け流す。
恨みが本物なら、殺さずにはいられないくらい憎んでいるのなら。
答えは一つしか無いだろうに。
さながら出来の悪い生徒へするように、ため息交じりで教えてやった。
恨みが本物なら、殺さずにはいられないくらい憎んでいるのなら。
答えは一つしか無いだろうに。
さながら出来の悪い生徒へするように、ため息交じりで教えてやった。
「そんなどーでもいい人達なんか無視して、早く殺しに行った方が良いんじゃないかにゃー?どっちつかずなままじゃ、全部無駄になっちゃうよ?」
○
月が淡く照らす道をとぼとぼ歩く青年。
鉄球を括り付けた罪人の如き鈍足で、或人は一歩一歩進む。
鉄球を括り付けた罪人の如き鈍足で、或人は一歩一歩進む。
リンボ達とは同行せず、ゲーム開始当初と同じ単独行動。
怪し過ぎる怪僧を放置していいものかと悩みはしたが、結局は別れて今に至る。
滅を見付けるのを優先したかったから、リンボと一緒にいた灯花が心配無用と言ったから。
理由は色々あるが、一番はこれ以上一緒にいて自分の心を掻き乱されたくなかったからだろう。
怪し過ぎる怪僧を放置していいものかと悩みはしたが、結局は別れて今に至る。
滅を見付けるのを優先したかったから、リンボと一緒にいた灯花が心配無用と言ったから。
理由は色々あるが、一番はこれ以上一緒にいて自分の心を掻き乱されたくなかったからだろう。
「……」
別行動を取っても、二人に言われた内容が冷静さを渦のように絡め取る。
怪しい連中の言葉など無視しろと言い聞かせ、その通りに出来れば苦労はしない。
怪しい連中の言葉など無視しろと言い聞かせ、その通りに出来れば苦労はしない。
リンボの言葉は果たして間違いだと言えるのだろうか。
自分が破壊するまでに、滅が生きているとは限らない。
一刻も早く滅の元へ辿り着かねばならない自分に、道中見ず知らずの者達を助けている余裕はハッキリ言ってないのだ。
無論、力を持たない参加者が死のうとどうでもいいと言うつもりはない。
しかしそういった者達を助けるのにかまけた結果、復讐の機会を失うかもしれないとあっては話は別だ。
自分が破壊するまでに、滅が生きているとは限らない。
一刻も早く滅の元へ辿り着かねばならない自分に、道中見ず知らずの者達を助けている余裕はハッキリ言ってないのだ。
無論、力を持たない参加者が死のうとどうでもいいと言うつもりはない。
しかしそういった者達を助けるのにかまけた結果、復讐の機会を失うかもしれないとあっては話は別だ。
「……」
よくよく考えてみれば、何も自分が助けなくても良いのではないだろうか。
殺し合いに乗っておらず、尚且つ他者を助けられる力の持ち主が自分一人しかいないとかならともかく。
万丈や彼の仲間である桐生戦兎達など、善良な仮面ライダーは複数いる。
それなら何も或人が手を差し伸べずとも、そういった役目は彼らに任せても良いのでは?
言い訳染みた考えを浮かべた瞬間、耳元でキーと鳴き声がした。
殺し合いに乗っておらず、尚且つ他者を助けられる力の持ち主が自分一人しかいないとかならともかく。
万丈や彼の仲間である桐生戦兎達など、善良な仮面ライダーは複数いる。
それなら何も或人が手を差し伸べずとも、そういった役目は彼らに任せても良いのでは?
言い訳染みた考えを浮かべた瞬間、耳元でキーと鳴き声がした。
「うわっ!?脅かすなって…」
鼓膜が痛む。
耳を抑えて抗議するも、知った事かとばかりにクローズドラゴンは鳴き声を上げる。
数十分前なら苦笑いで済ませた姿も、今では何となく後ろめたさを感じずにはいられない。
まるで本来の持ち主に、自分の身勝手な考えを見透かされた気分だ。
耳を抑えて抗議するも、知った事かとばかりにクローズドラゴンは鳴き声を上げる。
数十分前なら苦笑いで済ませた姿も、今では何となく後ろめたさを感じずにはいられない。
まるで本来の持ち主に、自分の身勝手な考えを見透かされた気分だ。
「……本当に大丈夫だってば」
こちらの葛藤を見抜いてか、尚も鳴き止まない。
万丈本人に責められている気がして落ち着かず、首根っこを掴んで黙らせる。
抵抗するクローズドラゴンをデイパックに押し込み、やっと静かになった。
が、静寂が戻った所で胸中のざわめきは健在。
むしろ気を紛らわす鳴き声が無くなったせいか、余計に思考はこんがらがるばかり。
頭の中ではリンボと灯花の言葉が繰り返され、負けじと万丈から喝を入れられた光景がリピートされる。
万丈本人に責められている気がして落ち着かず、首根っこを掴んで黙らせる。
抵抗するクローズドラゴンをデイパックに押し込み、やっと静かになった。
が、静寂が戻った所で胸中のざわめきは健在。
むしろ気を紛らわす鳴き声が無くなったせいか、余計に思考はこんがらがるばかり。
頭の中ではリンボと灯花の言葉が繰り返され、負けじと万丈から喝を入れられた光景がリピートされる。
――『もし何も力を持っていねぇ人に会った時も…その復讐を優先するつもりかよ!?』
――『お前はそんな自分を自分で裏切っている事に罪悪感を感じねぇのかよ!?』
――『多くの力がない人達を無視してまでしたい物なのかよ!?』
「じゃあどうしろって言うんだ…」
復讐が叶わなかったら、仕方ないで切り替えろとでも言うのか。
滅をこの手で破壊出来なくとも、他の人達を守れたなら良かったで済ませろと言うのか。
イズを奪われた絶望は、そんな簡単に割り切れる程軽いものじゃあない。
滅をこの手で破壊出来なくとも、他の人達を守れたなら良かったで済ませろと言うのか。
イズを奪われた絶望は、そんな簡単に割り切れる程軽いものじゃあない。
自分の間違いに向き合わされた熱く力強い言葉。
今ではどこか冷めた思いを抱いている。
そんな自分が堪らなく嫌だった。
今ではどこか冷めた思いを抱いている。
そんな自分が堪らなく嫌だった。
【G-5 川沿い付近/一日目/黎明】
【飛電或人@仮面ライダーゼロワン】
[状態]:迷い(大)、ダメージ(中)
[装備]:ビルドドライバー+メタルタンクタンクフルボトル+ハザードトリガー@仮面ライダービルド
[道具]:基本支給品一式、アナザーゼロワンライドウォッチ@仮面ライダージオウ×ゼロワン、令和・ザ・ファーストジェネレーション、フルボトルバスター@仮面ライダービルド、クローズドラゴン@仮面ライダービルド
[思考・状況]
基本方針:とりあえず滅をはか…倒す…
1:滅がここにいるなら必ず倒す…つもりだ。でももし他の参加者に倒されたら……?
2:垓さんか…まぁ頑張ってくれてるといいな
3:とりあえずあった人からは話を聞いていこうかな
4:万丈の仲間に会えたら礼と情報交換をしなくちゃな
5:エボルトに警戒
6:主催の人達は許さない、けど滅よりは優先度は…まだ低いな
7:他の人達を助けて、それで間に合わなくなるなら……
[備考]
※参戦時期は43話開始直後。
[状態]:迷い(大)、ダメージ(中)
[装備]:ビルドドライバー+メタルタンクタンクフルボトル+ハザードトリガー@仮面ライダービルド
[道具]:基本支給品一式、アナザーゼロワンライドウォッチ@仮面ライダージオウ×ゼロワン、令和・ザ・ファーストジェネレーション、フルボトルバスター@仮面ライダービルド、クローズドラゴン@仮面ライダービルド
[思考・状況]
基本方針:とりあえず滅をはか…倒す…
1:滅がここにいるなら必ず倒す…つもりだ。でももし他の参加者に倒されたら……?
2:垓さんか…まぁ頑張ってくれてるといいな
3:とりあえずあった人からは話を聞いていこうかな
4:万丈の仲間に会えたら礼と情報交換をしなくちゃな
5:エボルトに警戒
6:主催の人達は許さない、けど滅よりは優先度は…まだ低いな
7:他の人達を助けて、それで間に合わなくなるなら……
[備考]
※参戦時期は43話開始直後。
◆◆◆
復讐に燃えていた青年は自らの過ちを突き付けられた。
結果、憎悪の感情は燻ったままなれど本来持つ善意を幾分か取り戻した。
必要以上に慣れ合わなくとも、救いを求める人々の元へ駆け付け、縁を繋いで行く。
そうすれば復讐を完遂した後も、各地で築いた絆が彼を一人にはさせない。
一度は悪意に呑まれた青年は仲間のお陰で徐々に己自身を取り戻し、もう一度ヒーローとして再起を果たす。
万人受けする王道のストーリー。
結果、憎悪の感情は燻ったままなれど本来持つ善意を幾分か取り戻した。
必要以上に慣れ合わなくとも、救いを求める人々の元へ駆け付け、縁を繋いで行く。
そうすれば復讐を完遂した後も、各地で築いた絆が彼を一人にはさせない。
一度は悪意に呑まれた青年は仲間のお陰で徐々に己自身を取り戻し、もう一度ヒーローとして再起を果たす。
万人受けする王道のストーリー。
だが待って欲しい、それは本当に面白いと言えるのだろうか?
否、断じて否と唱えるのがキャスター・リンボ。
憎悪という極上の食材を、つまらない調理法で三流の料理に仕上げる。
何と勿体ないことか。
なのでリンボ好みのスパイスをさっと振り掛け、彼の復讐心を突き出してやった。
憎悪という極上の食材を、つまらない調理法で三流の料理に仕上げる。
何と勿体ないことか。
なのでリンボ好みのスパイスをさっと振り掛け、彼の復讐心を突き出してやった。
檀黎斗が提示したゲームのクリア条件は優勝と主催者撃破の二つ。
この内後者を目的とする者達にとっては、或人が善意で悪意を乗り越えるのは歓迎すべきものだろう。
しかし、必ずしもそのようになる必要はない。
優勝か主催者撃破、そこに至るまでの過程はああしろこうしろと細かいルール明記はされていない。
となれば、リンボが或人にちょっかいを出し打倒主催者を目指す者達の妨害を行うのはルール違反に非ず。
むしろこれもまたゲームを盛り上げる要素として、黎斗からは喜ばれるだろう。
ポセイドンやデェムシュ、鬼舞辻無惨など強力無比な暴力のみではない。
こういった悪辣な策を用いるプレイヤーも、ゲームの魅力を引き立てるのに必要不可欠なのだから。
この内後者を目的とする者達にとっては、或人が善意で悪意を乗り越えるのは歓迎すべきものだろう。
しかし、必ずしもそのようになる必要はない。
優勝か主催者撃破、そこに至るまでの過程はああしろこうしろと細かいルール明記はされていない。
となれば、リンボが或人にちょっかいを出し打倒主催者を目指す者達の妨害を行うのはルール違反に非ず。
むしろこれもまたゲームを盛り上げる要素として、黎斗からは喜ばれるだろう。
ポセイドンやデェムシュ、鬼舞辻無惨など強力無比な暴力のみではない。
こういった悪辣な策を用いるプレイヤーも、ゲームの魅力を引き立てるのに必要不可欠なのだから。
人間というのは面白いもので、一度道を踏み外せばあっという間。
もし或人がこの先己の復讐を優先し、他者を見捨てたらどうなるか。
最初は罪悪感に蝕まれるだろうが、二度三度と続けば抵抗も薄れる。
「自分には今更誰かを助ける資格も無い、既に見捨てている自分はもう復讐の道を突き進むしかない」。
そんな言い訳を重ねて、引き返せる道を自ら潰す。
何せ引き返してやり直すよりも、落ちるところまで落ちる方が楽だ。
もし或人がこの先己の復讐を優先し、他者を見捨てたらどうなるか。
最初は罪悪感に蝕まれるだろうが、二度三度と続けば抵抗も薄れる。
「自分には今更誰かを助ける資格も無い、既に見捨てている自分はもう復讐の道を突き進むしかない」。
そんな言い訳を重ねて、引き返せる道を自ら潰す。
何せ引き返してやり直すよりも、落ちるところまで落ちる方が楽だ。
仮に或人がそれでも参加者を見捨てられず助け続け、結局滅が別の誰かに倒されたなら。
復讐の機会を永遠に失った或人はやり場のない感情をどこへぶつけるのか。
「こんな奴らに構っていたせいで復讐出来なかった」と、自らが助けた者達へ逆恨みを抱く。
どう転んでも傑作と言える光景の出来上がり。
そうなっては最早或人は善意を信じて戦うヒーローではない。
悪意を糧とする醜悪な存在、仮面ライダーゼロワンと対極に位置する新たなアークが生まれる。
復讐の機会を永遠に失った或人はやり場のない感情をどこへぶつけるのか。
「こんな奴らに構っていたせいで復讐出来なかった」と、自らが助けた者達へ逆恨みを抱く。
どう転んでも傑作と言える光景の出来上がり。
そうなっては最早或人は善意を信じて戦うヒーローではない。
悪意を糧とする醜悪な存在、仮面ライダーゼロワンと対極に位置する新たなアークが生まれる。
「それにしても少々意外でしたな。灯花殿はあの若造の為す事に無関心のはず」
「べっつにー。仮にも社長さんの癖してまごまごしてるのがみっともないって思っただけ」
「べっつにー。仮にも社長さんの癖してまごまごしてるのがみっともないって思っただけ」
灯花からすれば或人が今後どうなるかなど興味無い。
ただ復讐を優先するのか、見ず知らずの連中を守りたいのか。
どっちつかずな姿勢を見苦しく思ったのは事実。
ただ復讐を優先するのか、見ず知らずの連中を守りたいのか。
どっちつかずな姿勢を見苦しく思ったのは事実。
だから辛辣な言葉を投げかけたが、あれはきっと灯花自身に言い聞かせる内容でもあったのだろう。
参加者名簿を見た時に湧き上がった、捨てなければいけない未練。
魔法少女の救済よりも、ねむと二人でいろはの傍にいるという選択肢。
捨てたと思ったが未だ心の奥底で燻っていたらしい。
いろはの望むだろう選択を、灯花はダメだと否定する。
たとえいろはの切な願いを裏切るのだとしても、自分とねむがやらねばならないのは魔法少女の救済。
未練を抱え中途半端なままでは、魔法少女は救われない。
参加者名簿を見た時に湧き上がった、捨てなければいけない未練。
魔法少女の救済よりも、ねむと二人でいろはの傍にいるという選択肢。
捨てたと思ったが未だ心の奥底で燻っていたらしい。
いろはの望むだろう選択を、灯花はダメだと否定する。
たとえいろはの切な願いを裏切るのだとしても、自分とねむがやらねばならないのは魔法少女の救済。
未練を抱え中途半端なままでは、魔法少女は救われない。
(そうだ、わたくしはお姉さまを……)
魔法少女の運命から解放する。
沢山の愛をくれたあの人の為なら、どれだけ罪を被ろうが構うものか。
自分とねむにとって、いろははそれくらいに大切な――
沢山の愛をくれたあの人の為なら、どれだけ罪を被ろうが構うものか。
自分とねむにとって、いろははそれくらいに大切な――
唐突に。
あのお菓子が食べたいとか、近所の雑貨屋に行こうかなとか。
そんな日常で抱くような気安さで、ふと思い浮かんだ。
あのお菓子が食べたいとか、近所の雑貨屋に行こうかなとか。
そんな日常で抱くような気安さで、ふと思い浮かんだ。
もし、殺し合いの中でねむが死んでしまったらどうなるのかを。
ねむだって自分と同じマギウスの一人、下手を踏むような真似は滅多にしない筈。
だがこの地にはリンボを始め、得体の知れない連中がゴロゴロいる。
如何にねむとて、絶対の安全が保障された訳ではない。
だがこの地にはリンボを始め、得体の知れない連中がゴロゴロいる。
如何にねむとて、絶対の安全が保障された訳ではない。
ういはもういない、そしてねむもいなくなり灯花だけが残ったら。
その時は、いろはからの愛は灯花のみに向けられる事になる。
その時は、いろはからの愛は灯花のみに向けられる事になる。
魔法少女になる前、入院時代からいろはは自分達三人を等しく大切にしてくれた。
疑問や不満を抱いた事は一度も無い。
贔屓や蔑ろを絶対にしないいろはだからこそ、自分達はあの人を大好きになったのだから。
疑問や不満を抱いた事は一度も無い。
贔屓や蔑ろを絶対にしないいろはだからこそ、自分達はあの人を大好きになったのだから。
だが思う、いろはからの想いを自分が独占出来るとしたら?
何時だったか作ってくれた豆腐ハンバーグのお弁当、あれを自分の為だけに作ってくれるとしたら?
病とは無縁の体で神浜市を歩く、それも四人では無くいろはとの二人きりで。
何時だったか作ってくれた豆腐ハンバーグのお弁当、あれを自分の為だけに作ってくれるとしたら?
病とは無縁の体で神浜市を歩く、それも四人では無くいろはとの二人きりで。
想像した光景に、ゾクリと言い知れぬ感覚を味わう。
ういでも、ねむでも、まして七海やちよでもない。
自分がいろはを独り占めする。
背徳的な喜びがじわじわと湧き上がり――
ういでも、ねむでも、まして七海やちよでもない。
自分がいろはを独り占めする。
背徳的な喜びがじわじわと湧き上がり――
「……っ!」
我に返り頭を振る。
一体自分は何を考えているのか。
確かにねむが無事でいられる保障は無いが、だからといって死んで欲しいなど思っていない。
大体自分の目的は魔法少女の救済、いろはを救うことだろうに。
灯花自身の幸福を叶えるのが目的ではない。
一体自分は何を考えているのか。
確かにねむが無事でいられる保障は無いが、だからといって死んで欲しいなど思っていない。
大体自分の目的は魔法少女の救済、いろはを救うことだろうに。
灯花自身の幸福を叶えるのが目的ではない。
「ンン――」
震える小さな体を見下ろし、リンボはニタニタと笑うばかり。
灯花も或人も、順調に自分の零した毒が効いている様子。
たかが一滴、されど毒は毒。
放って置けば全身を蝕み、やがてはリンボの望む光景が現実のものとなる。
灯花も或人も、順調に自分の零した毒が効いている様子。
たかが一滴、されど毒は毒。
放って置けば全身を蝕み、やがてはリンボの望む光景が現実のものとなる。
キャスター・リンボ、蘆屋道満。
如何なる世界、如何なる時間、如何なる戦場においても。
秘めたる悪意に翳り無し。
如何なる世界、如何なる時間、如何なる戦場においても。
秘めたる悪意に翳り無し。
【G-5 川沿い付近/一日目/黎明】
【里見灯花@マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝(アニメ版)】
[状態]:あり得ない思考に対する動揺(小)、リンボ(式神)による暗示の影響(小)
[装備]:デュエルディスク+素良のデッキ@遊戯王ARC-V
[道具]:基本支給品一式×2、ランダム支給品×1~3、ネネの首輪
[思考・状況]
基本方針:ハ・デスの力を奪い、魔法少女の救済を果たす。
1:使える人材は生かしておく。
2:首輪を外す。取り敢えずどこかで調べたい。
3:出来ることならねむと合流。
4:深月フェリシア、七海やちよ、梓みふゆに関しては、邪魔をしてくるなら容赦しない。
5:私は、いろはお姉さま、を――?
6:この陰陽師(リンボ)、信用はできないは実力はあるから今のところは保留
[備考]
※参戦時期は死亡後。
※首輪が爆発した時、ソウルジェムも同時に破壊されると考えています。
※リンボによる暗示の影響で、リンボに危害を加えることは不可能となっております。
[状態]:あり得ない思考に対する動揺(小)、リンボ(式神)による暗示の影響(小)
[装備]:デュエルディスク+素良のデッキ@遊戯王ARC-V
[道具]:基本支給品一式×2、ランダム支給品×1~3、ネネの首輪
[思考・状況]
基本方針:ハ・デスの力を奪い、魔法少女の救済を果たす。
1:使える人材は生かしておく。
2:首輪を外す。取り敢えずどこかで調べたい。
3:出来ることならねむと合流。
4:深月フェリシア、七海やちよ、梓みふゆに関しては、邪魔をしてくるなら容赦しない。
5:私は、いろはお姉さま、を――?
6:この陰陽師(リンボ)、信用はできないは実力はあるから今のところは保留
[備考]
※参戦時期は死亡後。
※首輪が爆発した時、ソウルジェムも同時に破壊されると考えています。
※リンボによる暗示の影響で、リンボに危害を加えることは不可能となっております。
【キャスター・リンボ(式神)@Fate/Grand Order】
[状態]:健康(本体より弱体化)
[装備]:
[道具]:小倉しおんの支給品袋及び支給品一式、小倉しおんのランダム支給品1~3
[思考]
基本:ただ、己の衝動と欲望の赴くままに
1:里見灯花に付き従う。何時彼女が爆発するか楽しみですぞ、ンンンンン―――。
2:飛電或人が次に会った時どうなっているか、いやはや期待が高まりますなぁ。
[備考]
『式神について』
※最大召喚数は1名
※他参加者から5メートル以上離れた場合自動的に消滅。
※性能は本体より著しく弱体化。
※自動消滅または撃破された場合、式神再召喚まで6時間のインターバルが必要。
※本体が撃破された場合、式神も同じく消滅する。
※式神が得た情報は本体に共有される。
[状態]:健康(本体より弱体化)
[装備]:
[道具]:小倉しおんの支給品袋及び支給品一式、小倉しおんのランダム支給品1~3
[思考]
基本:ただ、己の衝動と欲望の赴くままに
1:里見灯花に付き従う。何時彼女が爆発するか楽しみですぞ、ンンンンン―――。
2:飛電或人が次に会った時どうなっているか、いやはや期待が高まりますなぁ。
[備考]
『式神について』
※最大召喚数は1名
※他参加者から5メートル以上離れた場合自動的に消滅。
※性能は本体より著しく弱体化。
※自動消滅または撃破された場合、式神再召喚まで6時間のインターバルが必要。
※本体が撃破された場合、式神も同じく消滅する。
※式神が得た情報は本体に共有される。
049:咲き誇れ、枯れ落ちるまで(前編) | 投下順 | 051:あなたの死を望みます |
049:グレイブ・スクワーマー | 時系列順 | 053:Battle Royal Mode-Joining 超戦士カオスソルジャー |
034:Ark vs Love&PEACE | 飛電或人 | 071:物々交換録アルト |
003:妖星絢爛 | 里見灯花 | 066:淀んでゆくだけ |
キャスター・リンボ(式神) |