ダッシュボードパッド(膝防護クッション)

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10年近く前にFIAT 500Fがうちに来たときから「ダッシュボードパッド」が欠品していた。以前はパッドがあるべき場所におっそろしいほどの電線がむき出しで這い回っていたのでパッドどころではなかったが、最近になってワイヤリングハーネスを新調したので、いよいよパッドが欲しくなった。(無くても困らないようなものだが、、、) やっぱ↓こんなのがいいなぁ、と。
(Photo: Eckhard Henkel / Wikimedia Commons / CC BY-SA 3.0 DE)

ダッシュボードパッドは今でも1万5千〜2万円ほどで新品が買えるのに、暇にまかせて自作を選んだ(右ハンドル用が少ないのも理由)。「魔改造」にカテゴライズしてあるが、たかがインテリア小物の類。そんな大げさなものではない。


以前の寂しい状態↓

完成、取り付け後↓

準備

● 工法:FRPハンドレイアップ(手積層)

メス型やオス型を作らず、離型剤と保護膜代わりに養生テープをダッシュボード下辺に貼り、その上から直接に樹脂とガラス繊維を直接積層した。

● 材料と用具:ポリウレタン+ガラス繊維チョップドストランドマット

  • シンプルFRP材料セット (樹脂0.5kg、ガラス繊維、硬化剤、洗浄用アセトン等入り)https://store.shopping.yahoo.co.jp/mega-store/M13022.html
  • 断熱チューブカバー エアロフレックス M13022 13mm厚 内径22mm 長さ2m(実使用量は91cm)https://store.shopping.yahoo.co.jp/mega-store/M13022.html
  • フェイクレザー 巾15cm 長さ1m程度
  • M5ボルト 長さ20mm 4本(左ハンドルの場合5本)
  • M5平ワッシャー 4枚(左ハンドルの場合5枚)
  • M5ナイロンロックナット 4個(左ハンドルの場合5個)
  • 金属用エポキシパテ 1本(無くてもFRPで固定できるのでOK)
  • 瞬間接着剤 (ゼリー状と高速硬化タイプの両方。百均の数グラム入りチューブ数本ずつ)
  • 硬化後も柔軟性のある接着剤 (スーパーXやウルトラ多用途SU等)1本(25mL程度)
  • 養生テープ 巾5cm 1巻
  • 使い捨て刷毛 巾2~3cmと巾5~7cmほどのもの各1本
  • 脱泡ネジローラー 巾5〜10cm 1本(無くても刷毛でなんとかなるが脱泡にはそれなりに技術が要る)
  • 使い捨て紙容器 2〜3個(樹脂200ccが余裕で入る深皿状のもの)
  • ハサミ(ガラス繊維を切るのではこぼれしたり樹脂でよごれても構わない安物でいい)
  • カッターナイフ
  • ダイヤモンドカッター刃とディスクグラインダー
  • サンドペーパー(300番)
  • 使い捨て作業手袋 ポリエチレンまたはゴム製
  • 古新聞

製作工程

● 構造と工法

元から付いてなかったので本物を見たことがなく、市販されているFIAT 500用のパッドのサイズや構造が不明だった。ネットから写真を拾って来て、ダッシュボード上のスイッチやランプの間隔などからパッドの巾を推測した。内部はおそらく発泡ウレタンの一体成形構造であろうと思われるが、自分で作る分にはどうにでもなる。
自作の場合、バックプレート(ここでは以後「ベース」と呼ぶ)をFRPで作り、その上にスポンジを乗せ、さらに上からフェイクレザー(以後は単に「レザー」)で覆うことになる。FRPベースは硬いのでレザーをタッカー留めできないから折返しの糊しろ部分を接着する。両端は皺にならないようレザーにギャザーを寄せるのが難しい。

● サイズ

上記で推測したサイズは幅約5cm、長さが約70cmと21cmの1対。

以下に構造をサイズを検討した覚え書きの画像を添付しておく。(ただし、自分の500Fは右ハンドルであることに注意。あくまで個人的な覚え書きなので、そのまま正確の製作の参考にはならないかもしれない。また運転席ドア側ダッシュボードにはネジ孔が1つしかないのでボルトの位置は記入していない)



● 作業

FRPのハンドレイアップ(手積層)の工法についてはここに書くほどの余裕がないが、ウェブページやYoutube動画などネット上に情報が溢れているのでそれらを参照のこと。ガラス繊維はアスベストのような発がん性はなく、比較的安全だという報告(例えば→https://www.newglass.jp/mag/TITL/maghtml/80-pdf/+80-p022.pdf)はあるが、取り扱いを間違えると痒みがひどく、後々嫌な思いをすることになるので、帽子、マスク、雨具のような平滑な作業着、ゴムまたはポリエチレン手袋は必須である。

養生:
  • ダッシュボード下部に後付けの補機類があれば取り外しておく。
  • 下辺の角に沿って養生テープを並行に上下それぞれ2列ずつ計4列貼る。各テープは5~10mmほどオーバーラップさせること。
  • 養生テープを貼る場合、下面にある配線の「逃げ」も考慮すること。
  • ダッシュボードの下角から上方約3cmの位置に積層範囲の「あたり線」をにフェルトペン等引いておく。下角より下方はよく見えないので省略。(フェルトペンの線は積層時に樹脂で流れる可能性があるので注意)
  • 同じくフェルトペンでダッシュボード下辺のネジ穴の位置をマーキングしておく。
  • 残りのダッシュボードの露出部分とハンドル、足元等も古新聞と養生テープで保護・養生する。(自分は足元についてはポリエチレンシートに粘着テープが付いた「マスカー」を使用した。作業中は膝をその下に潜り込ませて、衣服と足元の床を同時にカバーできるので便利)

ガラス繊維マットの裁断:
  • チョップドストランドマットを15cmx90cmと15cm21cmに各3枚ずつ裁断する。
  • ダッシュボード下辺の角に沿うようにマットの中心線で半折にし「クセ」を付けておくと、積層時に跳ね上がりが少なくて楽。(余りも後でボルト固定のパッチに使うので保存)


ハンドレイアップ:
  • 説明書によると変形が少なく一度に積層できるのは3mm厚までとのこと。使用したキットに同梱のガラス繊維チョップドストランドマットの1プライ(1層)が約1mm厚になるので3プライ貼る。1〜2プライでも強度は出るかもしれないが、後々フェイクレザーが経年劣化で縮んだ場合に変形する恐れがあり、剛性を確保するために多めに積層する。

  • 3層のマットの合計面積は(90+21)x15x3≒約5000→約0.5㎡だが、樹脂を含浸させる実効面積は上記「あたり線」の内側は幅が約6cmなので約0.2㎡となる。1㎡1プライに必要な樹脂量は1000gなので用意する樹脂はおよそ200g。(実際には余分をみて220g)
  • 硬化剤約2cc入れると重量比で約1%弱となる。気温が20℃ほどだったのでポットライフ(硬化時間)はおそらく15〜20分くらいであろうと踏んだ。1プライに付き5分もあればOK。(実際はカツカツだったので、5〜7%ほどが良かっただろう)


  • パラフィン皮膜を形成してベタつきをなくす空気硬化剤は使用しない。樹脂にはパラフィン入り(インパラ)とパラフィン無し(ノンパラ)があり、今回使ったのはノンパラ(良心的なキットだったのでパラフィンの空気硬化剤も付属してきたが不使用)。ノンパラで良い理由は、養生テープと密着している面は空気が遮断されていて完全硬化するし、露出している上面は後にスポンジを乗せるからベタつきの影響が無いから。
  • 樹脂はマット上に刷毛で「置く」ように含浸させ、刷毛を横に動かさないこと。擦るとクロスと違って繊維が偏ってしまう。(写真を撮る余裕なし!)
  • ガラス繊維を1プライ積層する度に丁寧に脱泡しないと、重ねてしまってからでは1層目の脱泡は難しくなる。
  • 「あたり線」より内側は完全に樹脂を含浸させるが、あまり大きくはみ出すと樹脂が足りなくなる。はみ出しが少なかったり足りないとトリミングした時に層が縁から剥離する。


  • キュアタイム(放置時間)は丸1日が望ましいが、せっかちなので数時間で次工程に移った。それでも変形などの問題は無かった。

脱型とトリミング:
  • 樹脂硬化後に、1プライ目のマットとダッシュボードに貼り付けた養生テープの間に上からプラスチックのヘラを差し込み樹脂部分の上辺全体をまんべんなく剥がす。その後に少しずつ全体を下に向かって剥離させると脱型できる。養生テープの剥離効果は上々。





  • 出来上がったFRPのベースを幅5cmになるようダイヤモンドカッター刃付きのディスクグラインダーとサンドペーパーでトリミング(自分は48mmだったが、好みでどうにでも、、、ただし、あまり大きく逸脱するとスポンジと合わなくなるので注意)。角丸の半径は大きいほどレザー張りで皺が出にくくなる。
  • フェルトペンでマーキングしたネジ穴の位置が樹脂に転写されているのでφ6.2〜6.5mmの孔を穿つ。

仮合わせとボルト植え付け:
  • 固定するまえにボルトにナイロンロックナットを一度ねじ込んでおき、スムーズに締め込めるようにしておく。(一回目のネジ込みはかたいのでボルトが供回りする可能性あり)



  • ダッシュボード下部にベースを当て、ボルトが問題なく通ることを確認したらベースを外し、ボルトを固定する。自分は有り物のエポキシパテを使ったが材質が柔らかくナットで締めるときに一部供回りしてしまった。金属用の硬いパテ(セメダインのものとか、、、)を使うほうが良い。

  • パテが固まったらその上に樹脂と5cm四方のマットで1プライ積層して固定。硬化後にはみ出た樹脂とガラス繊維をトリムする。


スポンジ下ごしらえ:
  • 断熱チューブカバーに長手方向に養生テープを2枚並行に貼り付ける。(カッターナイフで縦割りする時に変形が少なく、正確に切れる)
  • 内径が22mmで壁厚が13mmなので外周は約150mm。ベースの中心角は135°なので必要外周弧の長さは約94mmだが、オフセットなどで今回は外周弧長を85mmとした。(図参照)カットする時にカッターナイフの滑りを良くするため、刃を濡らすと良い。また刃の角度がカット方向にできるだけ直角になるようにしてナイフを細かく上下(ミシンの針やジグソーの刃のような動き)させると断面がきれいに仕上がる。


  • 縦割りしたスポンジをFRPのベースと同じ長さに切りそろえる。
  • 自分は念の為にスポンジの中心の空間を埋める「芯」として半割りした硬質塩ビVP管を入れたが、以外にスポンジがしっかりしていて必要ないかもしれないので工程は省略。
スポンジ貼り付けとレザー張り:
  • ベースの内側(ボルトのネジ部分が突出している側)に縁から15mmの位置に外縁と平行な線をノギスや鉛筆で引く。(レザー張りの基準線)
  • ベース上辺だけ縁に合わせてスポンジをスーパーXや多用途SUなどの接着剤で貼り付ける。

  • 接着剤硬化後にスポンジ両端をハサミで丸く整形。(同時に配線の「逃げ」の部分のスポンジも切り取って整形)
  • フェイクレザーを幅15cm、長さ100cmと31cmの2枚裁断する。

  • フェイクレザーをベースの上辺直線部分だけ上記の、両端から約5cmずつを残して接着する。両端のはみ出しは左右均等にする)


  • 24時間後、フェイクレザーの接着が完全硬化したら反対側の下辺まで仮に巻き込んで、レザー張り基準線よりはみ出ている部分を線に合わせて切り取る。
  • 上辺と同じく下辺も巻き込んだ部分を糊しろとして両端から5cmずつ残して接着する。(「電線の逃げ」の部分はこの時点では接着しない)

  • 再び24時間後に接着完了したら端部のレザーを引っ張って、シワが出ないようにベースに巻き込んでギャザーを寄せながら瞬間接着剤で固定していく。上記「逃げ」の部分もレザーを伸ばしながら接着)

  • ギャザー部分の接着が完了してから、盛り上がっているギャザーをカッターナイフで切り落とす。

  • 完成。


取り付け:
  • 出来上がったパッドをダッシュボードに養生テープで仮止めする

  • ボンネットを開け、ダッシュボード裏の配線を避けながら突出しているボルトを探し、平ワッシャーとナイロン・ロックナットで固定する。(ワイパーモーターを外す必要がある。理想的には燃料タンクも外したいところだ)

  • ボルト・ナットによる締結が難しければ両面テープによる貼り付け固定を考えても良い。(自分の場合、短い方はボルトが1本しか付けられないので両面テープを併用している)

  • 取り付け完了





by Okapon
2020/5/4

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