ギャルゲ・ロワイアル2nd@ ウィキ

無法のウエストE区

最終更新:

Bot(ページ名リンク)

- view
だれでも歓迎! 編集

無法のウエストE区 ◆LxH6hCs9JU



「どぅわーっはっはっはっは! ドォクタァァ――――ッ! ウェェェストッッ!!」

 住宅街の閑静な空気を吹き飛ばすように、高らかに笑う男があった。
 大柄な体躯に白衣を纏い、頭髪の色は白混じりの緑という奇異な外見。
 秘密結社〝ブラックロッジ〟に与する天才科学者、魔術師さえもその眉を潜める異端の科学の徒、ドクター・ウェストその人である。
 感極まると自分の名を叫ぶ奇怪な癖は自意識過剰の表れだが、事実、彼はその自負に足る超越的知性と、それ以上の熱情的狂気を兼ね揃えているのだった。

「鬱蒼としていた山を降り、摩天楼とは言わないまでも人智が作り出した母なる都へと!
 わたくし、ドクター・ウェストが帰ってまいりました。母さん、我輩の留守中どうでしたか?
 などと帰郷した若者のように足を運べばそこには誰も居らず。やん、我輩ちょっぴりセンチ。
 しかし悪の科学者とは暗躍して然るもの。出迎えナッシングとは逆に好都合ッ!
 我輩の保有戦力を持って、暢気でいる一般ピーポー共を恐怖のどん底に叩き落としてやるのである!
 カァァァモン、エルザッ! そしてお出でませ、ブラックロッジ戦闘員のみなっすわぁぁぁん!!
 ……などとコールしてはみたものの、今の我輩は孤独なロンリーウルフ。我輩かなりセンチ。
 乙女座のセンチメンタリズムは執念深いと聞くであるが、はてさてクエスチョン。我輩の星座は?」

 解答者はいない。わかりきった上での出題は、風に吹かれて空へと散っていく。
 思えば、このゲームに参加し始めてから延々、遭難者のように山中を彷徨っていたドクター・ウェストである。
 指針を見失い、同行者が去り、一人暮らしの大学生のように手持ち無沙汰になった若い男が、山の中でいつまでも燻っているのもおかしな話。
 とりあえず下山し、地図によるところの『中世西洋風の街』に出したウェストは、

「さて、これからどうしよう……である!」

 実はまだ、なにも考えていなかった。


 ◇ ◇ ◇


『汝の欲するところを行なえ』――それが、〝ブラックロッジ〟という集団の根幹を成す教義である。
 この地におけるティトゥスという名の侍が、自身と見合う強者を追い求めたように。
 結社に所属する魔術師、下部構成員に至るまで皆、なによりもまず己の欲望に奉仕している。
 金、女、権力、破壊、混沌、絶望、と明確な欲から概念的な欲に渡るまで、実に様々。
 ある者は崇高な将来設計に則り、ある者は下卑た動物的本能によって、欲を満たすために力の行使を続けるだろう。

 だが、ドクター・ウェストは少し違う。
 彼の生き様は、極度に趣味的だった。

 ウェストの興味は、ただ自らの天才的知性を証明することにしかない。
 証明して、なにがしたいというわけではなく――証明することにこそ、意味があるのだ。
 つまり彼が重点を置くのは、結果よりも過程、目的よりも手段、どのようにして証明を果たすか。
 人生を遊戯のように、もしくは難解な数式のように捉え、面白おかしく傍迷惑に生きる。
 そんな彼だからこそ、悪の秘密結社という拠り所は居心地がいいのかもしれない。

「故にッ! 我輩は証明するのみなのであ~~~る! ホワッツ再びクエスチョン。
 我輩はいったいなにを証明するべきであるか? 自分の胸に聞いてみるのである。
 問ぉ~うまでもなくこの大・天・才! ドクター・ウェスト様の知性及びカリスマ性を!
 体内から迸るリビドーの如き魅力は、今さら証明するまでもなく周知徹底なのである。
 風が吹けば桶屋が儲かる。我輩歩けば『ああん、ウェスト様ステキ☆』とファン急増間違いなし。
 しかしここで重大な問題が発生! な、な、ぬわ~んと! この街にはだ~れもいない!
 これでは我輩の存在意義が魅力含め三割方減! まっことまっこと、由々しき事態なのであ~る!!」

 煉瓦や石造りの建物が多く立ち並ぶ、アーカムシティとは似ても似つかぬ街にて。
 ゴキ○リの如くせかせかと歩き回る白い影こそ、我らがドクター・ウェストである。

 街に降りてなにをしよう。疑問を抱いた時点で、ウェストは即答を弾き出した。
 それこそが、天才科学者ドクター・ウェストとしての存在証明であった。
 彼が縄張りとするアーカムシティならまだしも、このゲームの会場にはウェストの名を知らぬ者も多い。
 名前どころか、彼が超絶的天才であること、脱いでもすごいことなど、知ってて当然知らなきゃ損な情報の数々も広まってはいないのだろう。

 それがウェストにとっては、容認できない大問題であった!

 立派に成人しているウェストの職業は、悪の秘密結社に属する天才科学者だ。
 主にアジトの地下研究室を住まいとし、改造人間など量産しつつ、滅多なことがない限りは表舞台に出てこない。
 それが普通の悪の科学者というものだろう。だがこのキ○ガイ科学者に、普通などという言葉が適用されるはずがない。

 彼の行動理念には、三種の法則がある。
 ひとつ――面白く!
 ふたつ――派手に!
 みっつ――悪っぽく!
 この条件を満たし、世間に自身の天才っぷりが証明できるというのであれば、ウェストは手段を選ばない。
 例えば、多大なリスクを伴うような方法であったとしても――だ。

 しかし、問題はそれ以前のレベルである。
 ウェストが証明を果たすには、当然、彼を天才だと認知する第三者の存在が必須となる。
 この地で巡り会った数多の人間たち――マッスル☆トーニャなどがそれに該当するだろう。
 彼女らはウェストの天才オーラにあてられ別行動を取っているが、頭の中には忘れえぬ記憶として、ウェストの天才っぷりが刻み付けられているに違いない。

「だが足りん! まだ足りんのである!
 我輩が超ド級大天才であることは、世間の一般常識にも等しく!
 我輩の名を知らぬ子供がいれば、その子は学校でいじめられてしまうこと確定!
 といったほどの常識でありたいと我輩は切に願う!」

 ドクター・ウェストの人間性を合理的に解釈するならば、『目立ちたがり』の一言で片がつく。
 と、そんな客観的姿勢でもってウェストを糾弾しようものなら、倍の熱弁で返り討ちにあうだろうが。

 話を戻すと、いま彼が最も欲しているのは、自身を天才と認める第三者の存在なのである。
 相棒たるエルザとの絆を裂かれ、一人の登場人物として野に放たれたウェストは、まだ実力の半分も発揮できていない。
 求めるのはウェストと波長がマッチングし、彼の性格を引き立てる気概を持った、優秀な『助手』の存在。
 例えばそう、ツッコミ上手で、ウェストのボケを蔑ろにせず、馬鹿みたいにリボンを飾り付けた年頃の女の子なんかが――

「――って、見事に凡骨リボンと条件合致! ええいなにを馬鹿な!
 僅か数時間ちょっぴりしかやり取りしていないあの子に我輩胸キュン。なんて非現実的なのである!
 自重せよ天の声! この悪の科学者たるドクター・ウェストが感傷に浸るなどーッ!
 ましてや凡骨リボンに先立たれてしんみりするあまり、空元気で無理してるなど見当違いも甚だしい!
 ほ、本当なんだから! か、かかか勘違いしないでよねっ! と強めに否定しておくのであ~る」

 無人の街を舞台に、ウェストの独り言という名のワンマンショーが続く。
 その姿は常時と変わらぬものだったが、極一部の人間、いや機械生命体なら――見抜けたかもしれない。

「……………………むなしいのである」

 探せば探すほど、街には誰も居らず。ウェストは徐々にテンションを落としていった。
 不意に漏らした本音に偽りはなく、彼の項垂れる姿というのは、非常にレアな光景と言えるだろう。

 千羽烏月から藤林杏死去の報を受けたとき、ウェストの心は確かな寂寥感に包まれた。
 もうあの姿を目にすることも、声を耳にすることも、ツッコミをもらうこともないんだな、と。
 寂しい、とストレートに思ったことは認めざるを得ない。どころか、藤林杏の人生について考えようとすらした。
 だからといって、仇を討とうだとか、死自体を否定したりだとか、そういった発想にまでは陥らない。
 死んだと確かに受け止め、悲しみ、涙を流すまではいかず、胸にポッカリ穴が空いた程度に気持ちは留まる。

 はたしてウェストが杏に入れ込んでいたのか、そうでなかったのか。判断は人によってまちまちだろう。
 結局ウェストの杏に対する感慨は、死を知ったときに漏れた「……大莫迦者である」という言葉に集約される。

(死んだ者のためにできることなど……なにもないのである)

 愁いの表情で、ドクター・ウェストは回顧する。
 ドクター・ウェストの『ドクター』には、二通りの意があった。
 ひとつは、現在の彼の肩書きである、科学者。
 そしてもうひとつは、彼の過去の肩書きである、医師。
 ウェストは今でこそ科学の徒だが――かつては、医学の徒であったのだ。

 生命の尊さや死の倫理も、知識としてなら頭に入っている。
 それどころか、人体の内部構造や各種生命器官の強度に至るまで。
 ウェストは、数多の凡人などとは比べものにならないほど、医師としても優秀だった。
 そう――『人体蘇生』という、愚かにもほどがある行為を試みるほどに。
 語るにも滑稽な、大馬鹿者の……所詮は、昔の話である。

 現在のウェストは医師ではなく、あくまでも科学者として、あるテーマを抱えている。
 それこそが、自らを神と恃む禁断の領域、即ち『死の克服』と『生命の創出』である。
 医師であった頃の彼は、死者の肉体に対し蘇生薬による賦活などを続け主題の追求を続けたが、ある日を境に限界を知った。
 壁にぶち当たった彼は、科学者としての発想に転じ、直接的な人体の蘇生を断念。
 しかし主題を追求すること自体は諦めず、模索した末に彼が導き出した結論が、『生命の無からの創造』だった。

 その成果の一つが、ブラックロッジ戦闘員。たびたび大十字九郎に蹴散らされている、人造人間だ。
 彼らは元を正せば、意識を持たぬ鉄屑にすぎない。そんな彼らに生命の息吹『もどき』を与える技術こそ、ウェストの科学者としての才だ。
 それら人造人間の類は、ウェストの追求するテーマからしてみれば、ほんの通過点。不完全品だった。
 大十字九郎に『恋心』を持つエルザとて、生命としての完成品とは言えない。
 ウェストは、未だ栄光へのロードをひた進んでいる最中なのだった。

「そう……生者が死者にしてやれることはなにもない。が、それはあくまでも凡人共の場合なのである!
 追悼や黙祷が供養となるならそのへんで留まっておくのが吉。鎮魂から飛躍させるのはよくない。
 我輩もかつては、千羽烏月のような大馬鹿者であった。今さら同じ過ちを犯すつもりはないのである。
 しっかーしッ! 手段は一つとは限らないからして、大天才の我輩は早くもその可能性に閃いたッ!」

 白昼堂々、殺し合いの往来で、ウェストは天に叫ぶ。

「彼女との思い出はメモリーズオフ! それから、を見据えて先に進もう!
 なれば! 我輩はここに誓い、そして宣言するのである!
 凡骨リボンよ……もしこれより先、貴様の遺体に巡り会うようなことがあれば――」

 愁いを排除した狂気的目つきで、燦々と照らす太陽を睨みつける。
 高々と拳を突き上げ、絶叫に近い声で、ウェストは言う。

「この大・天・才ッ! ドォクタァァ――――ッ! ウェェェストッッ!! ッッ様が!
 貴様を絶対無敵銀河旋風級改造人間として甦らせてやるからありがたく待っているのである!
 基本武装はロケットパンチに二連装ビームライフル及びハイメガ粒子砲プラススーパー凡骨バズーカ!
 隣接するマスに我輩がいるときのみ、オプションパーツとしてドリルアームを射出してやるのである!
 むむむ! 凡骨リボンのスペックが上手く引き出せれば大十字九郎も敵ではない予感!?
 死してなお我輩の天才的頭脳を満喫できるとはなんたる幸福者!
 首を洗って待っているのであるぞ、凡骨リボ――――――――ンッ!!」

 遥か天空の彼方から、「どないやねーん!」というツッコミが届いたような……気はまったくせず。
 ウェストはあの世滞在中の杏の心境などまったく気にもかけず、汝が信じる王道を突き進む。
 彼の宣言が真意であるか否かはともかくとして、これで杏の死去に対する清算は済んだ。

「一回休み、のターンはこれにて終了なのである。ここからが我輩の本領発揮。
 次からはサイコロを一気に三つ振る気構えでがんばれ我輩。負けるな我輩。
 そろそろ話相手が欲しいぐっすんおよよな我輩。寂しくなんかないよ我輩。
 ぬおぉぉぉぉ――ッ! 誰か我輩に構ってプリィィィィィズッッ!!」

 そうしてウェストは、孤独から遁走するため街の徘徊を続ける。
 ……ひとりぼっちで寂しくなんかないやい! と太陽に吼えながら。


 ◇ ◇ ◇


「のっひゃーっはっはっはっはっはっは! ドォクタァァ――――ッ! ウェェェストッッ!!」

 数時間後。
 未だ静謐な空気を保つ西洋の街外れに、変わらぬ態度で叫ぶドクター・ウェストの姿があった。

「ついに! ついに完成したのであーる! のひゃ、のひゃ、のひゃーっはっはっはっは!」

 下山した当初と比べて違う箇所があるとすれば、体が汗と油の臭いに塗れていることくらいだろうか。
 顔全体を爆笑から来る涙でぐしょぐしょにしているが、これはむしろ普段どおりの姿だ。

「作業時間一時間とプラスアルファ! こんな短時間でこれほどの発明を終えてしまう我輩の才能が怖い!
 才能だけでなく頭脳も怖い! 頭脳のみならず筋肉も怖い! 筋肉だけでなく乳首の桃色加減も超恐怖!
 我輩に惚れたらマグマで溶けるぜ! と言っても言い過ぎではないほどの魅力が溢れ出る!
 なのに! それを拝む者が未だこの周囲に現れないとは! 残念至極、残念至極なのであーる!!」

 彼が立つ場所には、中世西洋風の街の外れという他にもう一つ、特徴があった。
 それは、こじんまりとした楽器屋の店先だという点。
 ショウウインドーから覗くグランドピアノが高級感を引き立たせ、街中でも雰囲気の一味違う一画として聳え立っている。

 つい好奇心で入ってしまいそうな貴賓のある店先は、今は高笑いするキ○ガイが縄張りとして陣取っていた。
 彼の足元には、レンチやバールなどの工具の数々、配線らしきものの切れ端、だらしなく伸びた矩尺、大小様々な歯車等、発明の痕跡が散乱していた。
 もっとも、科学者が行う『発明』という行為は、基本的には無から有を生み出すものとされる。
 そういった細かい点に配慮するならば、ウェストが成したのは発明ではなく、『改造』であった。

「さて、まずは試運転といくのである」

 そう言って彼が取り出したのは、クラシカルな印象を漂わせるアコースティックギターだった。
 このギター、彼が元から所持していた壊れたギターではない。
 目の前の楽器店から拝借……もといパクった、まったくの新品である。いや、新品『だった』。

 これこそが、ウェストが一時間とプラスアルファの時をかけて改造した、スペシャルギター。
 先端のヘッド部分から、ナイロン弦の編まれたネック部分、ボディ部分に至るまで、見た目にも重そうな電装品が取り付けられている。
 胴体部分には尻尾のように伸びる電気コードが備えられており、その接続先を辿っていくと、楽器屋前に停車された軽トラックの荷台に繋がった。
 荷台の上にはまた別の、箱状のギターアンプらしきものが置かれており、既に電源が入っているのかゴゴゴと脈動を繰り返している。
 クラシックギターを無理矢理エレクトリックギターにしたような、弦を弾けば、ポロローンではなくギュワワーンと音が鳴りそうな、あまりにも大仰すぎるアコースティックギターだった。

「レェェェッツ! プゥゥレェェェイッ!!」

 ウェストがご自慢のテクニックでギターを弾き鳴らせば、予想通り。
 クラシックにあるまじき尖った音が鳴り響き、静かなる街に騒音を届ける。

「おぉ……これである。これぞ我輩が求めし究極にして至高の音!
 ソォォウルエェェンドスピリィィィッツ! 魂のロォックンロォォォル!!
 殺し合いなんてくだらないぜ、我輩の歌を聴けぇぇぇぇいッ!!」

 ジャーンとギターをかき鳴らし、「とぉ!」と掛け声を上げて軽トラックの荷台に飛び乗るウェスト。
 ギター同様、各部位に改造が施された装飾華美な軽トラは、まさしくウェストの天才的頭脳の発揮だった。

 街中で叫んでも人がいないというのであれば、さらなる音量を持ってして観衆の注意を惹くのみ。
 といった結論に辿り着いたウェストは、己が目的を達成するための手段として、まずそれに必要な装置を自作することに決めた。
 性格はともかくとして、科学者としては優秀の域を抜きん出たウェストである。
 少ない物資と僅かな時間で一台の車と一本のギターに改造を施すなど、朝飯前の如く。
 日が沈むにはまだまだ余裕のあるこの時刻に、ウェストは特製の『ステージ』を完成させた。

「これぞ――スーパーウェスト爆走ステージ『魂のファイアーボンバー』であ~~~る!」

 自作品の命名を果たし、ウェストは軽トラの荷台から運転席へと移動。
 改造の痕跡が残るごちゃごちゃとしたシートに着き、ハンドルを握った。
 エンジンは既に動いている。前述にあった試運転とは、ギターを指しての言葉ではない。

「我輩の手にかかれば、例え鍵が抜かれていようがガソリンが入っていなかろうが些事の如き瑣末事!
 いやいや燃料がないのはさすがに困るけれども、こ~んな宝を街中に放置しておくとは笑止いやむしろ爆笑!
 我輩が有効的に活用してやるから、オーナーは出てきたところで可愛そうな無駄足ちゃんなのであーる!」

 感極まったウェストが、力一杯アクセルペダルを踏む。
 見た目にも派手な楽器仕入れ用の軽トラックが、一瞬ウィリーになるもののすぐに着地。
 した瞬間、轟音を上げて前進し始めた。
 その速度は、どういうわけか軽トラック本来のスペックよりも遅い。

「む、むぅ。如何な天才の我輩とはいえ、あの条件下では車としての機能性までは追求できなかったであるか。
 が、しか~し! この、スーパーウェスト爆走ステージ『魂のファイアーボンバー』には、
 速度を蔑ろにして余りある超機能が搭載されているのである! いざ、マイク展開!」

 大げさな言葉を口にすると同時、ウェストは運転席側に備え付けられた小型マイクを手に取る。
 小型マイクからは配線が伸びており、その配線は天井部に備え付けられた、角ばった装置に繋がっている。
 この装置がなにを意味するのか、軽トラックの外観を外から眺めれば一目瞭然だろう。
 スーパーウェスト爆走ステージ『魂のファイアーボンバー』――そのフロントガラスの上部には、ウェストお手製『拡声器』が取り付けられていた。

『コホン。あー、テステス。マイクのテスト中。夜空の星が輝く影で、ワルの笑いが木霊する。
 星から星に泣く人の涙背負って宇宙の始末。天才科学者ドクター・ウェスト、お呼びとあらば即参上。
 ……うむ! 感度良好素晴らしきウィスパーボイスなのである!』

 ウェストのただでさえ喧しい声が、騒音となって辺りに充満する。
 エレクトリックギター及び拡声器付きの軽トラック……殺し合いをするには足枷にも等しい道具をわざわざ自作し、ウェストは行く。

「くっくっく……車という移動手段を手に入れると同時に、道行く通行人の足も止められる。
 そしてなにより、我輩の天才たる所以を移動と同時に証明することが可能!
 あぁんもう、なんたる合理的発明品! さあさ、我輩の天才的頭脳に感化されたい人この指と~まれ!
 おっといけない、マイクのスイッチを入れなければ誰にも気づいてもらえないであるな。
 これから先、なにを成すにしても移動手段と人手は必須アイテムなのである。
 その両方を確保することが――スーパーウェスト爆走ステージ『魂のファイアーボンバー』ならできぃるッ!」

 ウェストの感性、指針、方向性、いずれにもブレはない。
 宿敵・大十字九郎、クリス・ヴェルティンやマッスル☆トーニャとの合流。まだ見ぬ仲間集め。
 果ては危険人物からの逃走や禁止エリアからの脱出に至るまで、この改造軽トラックは全てを担う。
 製作者にして操縦者、ドクター・ウェストはまず近くの手ごろな参加者に反応を窺うべく、拡声器のマイクにスイッチを入れた。
 小型マイクを口元にあて、声を出す。

「ドォクタァァ――――ッ! ウェェェェストッッ!!」

 そう、いつものように。


【E-4 中世西洋風の街外れ/1日目 午後】

【ドクター・ウェスト@機神咆哮デモンベイン】
【装備】:スーパーウェスト爆走ステージ『魂のファイアーボンバー』
【所持品】支給品一式 、フカヒレのギター(破損)@つよきす -Mighty Heart-
【状態】左脇腹に銃創
【思考・行動】
基本方針:我輩の科学力は次元一ィィィィーーーーッ!!!!
1:拡声器で参加者を募りつつ、車で移動。
2:知人(大十字九郎)やクリスたちと合流する。
3:ついでに計算とやらも探す。
4:霊力に興味。
5:凡骨リボン(藤林杏)の冥福を祈る。
【備考】
※マスター・テリオンと主催者になんらかの関係があるのではないかと思っています。
ドライを警戒しています。
※フォルテールをある程度の魔力持ちか魔術師にしか弾けない楽器だと推測しました。
※杏とトーニャと真人と情報交換しました。参加者は異なる世界から連れてこられたと確信しました。
※クリスはなにか精神錯覚、幻覚をみてると判断。今の所危険性はないと見てます。
※烏月と情報を交換しました。

【スーパーウェスト爆走ステージ『魂のファイアーボンバー』】
見た目には装飾華美な軽トラック。
荷台には電気式のアコースティックギターが置かれ、車体には拡声器を装備。
拡声器は運転席から使用可能。また、武装等は備えられおらず、車としてのスペックも並。


154:誠と世界、そして侵食 投下順 156:赤より紅い鬼神/無様を晒せ (前編)
152:生成り姫 時系列順 159:観測者の願望
145:人と鬼のカルネヴァーレ (後編) ドクター・ウェスト 178:めぐり、巡る因果の果てで(大人編)

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
ウィキ募集バナー