al fine (後後) 1 ◆Live4Uyua6
深い闇に赤白の星が打たれた緞帳も昇った朝日に吊られて持ち上がり、演劇は終わりの終わりへと向け遂に始まる。
隅々まで明るく照らされた舞台の端より端へ。
劇を演ずる役者達はひとつひとつ確実にステップを刻み、歌を歌い、踊り、そして感情を露に心の内を吐き出し舞台を渡る。
己が立ち位置へと向かい、そこが不明なれど惑うことなく足を踏み鳴らし、予感を頼りに彼らは進む。
劇を演ずる役者達はひとつひとつ確実にステップを刻み、歌を歌い、踊り、そして感情を露に心の内を吐き出し舞台を渡る。
己が立ち位置へと向かい、そこが不明なれど惑うことなく足を踏み鳴らし、予感を頼りに彼らは進む。
そして未だ明らかにならぬ暗がりの中にも役者の影がちらほら。
彼女達は足を止め、舞台を見下ろし、耳を傾け、その眩しさ、その喧しさに何を思うのか。
何を思い、そしてそこから生まれた想いを彼女達はどちらへと向けるのだろうか。それもこれもまだまだ不明。
彼女達は足を止め、舞台を見下ろし、耳を傾け、その眩しさ、その喧しさに何を思うのか。
何を思い、そしてそこから生まれた想いを彼女達はどちらへと向けるのだろうか。それもこれもまだまだ不明。
辿るは道。戻るは思い出。垣間見るは心。振り返るは過去。進むは後後。明らかでないは――その先。
- ギャルゲ・ロワイアル2nd 第二幕 連作歌曲第二番 「al fine (後後)」 -
入れ替わり立ち代わり、表と裏。舞台の中と舞台の外。
演劇の第二幕は世界の端の橋。残骸としか呼べず、過去しか残っていない、そんな寂しい風景の中から始まる――……
演劇の第二幕は世界の端の橋。残骸としか呼べず、過去しか残っていない、そんな寂しい風景の中から始まる――……
・◆・◆・◆・
「追憶は風に消え、現実は変わる事は無い」
横なぐりの風に、薄い金の髪が流れる。
今はもう遠い日々、同じような光景を目にしたかもしれない。
今のように橋の上か、それともビルの屋上か、あるいは街の雑踏の中かそれとも硝煙の香りの中か。
あるいはそんな光景なんてどこにも無かったのかもしれないが、例えそうだとしても気落ちなどしない。
彼女と……キャルと過ごした日々の中には、そのくらいの眩しさはあたりまえの事だったと、それだけなのだから。
今はもう遠い日々、同じような光景を目にしたかもしれない。
今のように橋の上か、それともビルの屋上か、あるいは街の雑踏の中かそれとも硝煙の香りの中か。
あるいはそんな光景なんてどこにも無かったのかもしれないが、例えそうだとしても気落ちなどしない。
彼女と……キャルと過ごした日々の中には、そのくらいの眩しさはあたりまえの事だったと、それだけなのだから。
……ふと、風に混じった砂に視界を奪われる。
気がつけば既に風の気配はなく、あるのは決して揺るがぬ景色。
俺の立つ場所は壊れた橋の上でしかありえず、追憶のそれよりも薄い色の髪の主は、もちろんキャルではない。
短い髪に揺るがぬ表情を持つ少女、『深優・グリーア』
キャルと似ている点があるかと聞かれれば、似てない部分のほうが多い……外見も、内面も。
要するに、こんな事を感じる原因は他のところに、俺の中にあるという事だろう。
俺の立つ場所は壊れた橋の上でしかありえず、追憶のそれよりも薄い色の髪の主は、もちろんキャルではない。
短い髪に揺るがぬ表情を持つ少女、『深優・グリーア』
キャルと似ている点があるかと聞かれれば、似てない部分のほうが多い……外見も、内面も。
要するに、こんな事を感じる原因は他のところに、俺の中にあるという事だろう。
「玲二」
俺へと振り向いた深優に、視線だけで返す。
そういえば俺の呼び方だけは、同じではある……そんな事は誰も気にしないだろうが。
そういえば俺の呼び方だけは、同じではある……そんな事は誰も気にしないだろうが。
壊れた橋の上、立ち尽くしていた深優は果たしてどのような景色を目にしていたのだろうか。
大体の想像が付くが、それは俺の考える事では無い……俺には意味の無いことでしかないのだ。
確か、九鬼耀鋼と、そんな名だったか。 憎しみに囚われて鬼と化す、そんな当たり前の男の事など。
深優がどのように感じていようと、俺には意味がない、無論俺の考えも深優に意味などない。
幾つの事実を知らされても、どれだけの言葉を重ねられても、選ぶのは自分自身なのだから。
だから深優が九鬼との邂逅をどう感じていたとしても、俺があの男に抱く感情は変わらない。
大体の想像が付くが、それは俺の考える事では無い……俺には意味の無いことでしかないのだ。
確か、九鬼耀鋼と、そんな名だったか。 憎しみに囚われて鬼と化す、そんな当たり前の男の事など。
深優がどのように感じていようと、俺には意味がない、無論俺の考えも深優に意味などない。
幾つの事実を知らされても、どれだけの言葉を重ねられても、選ぶのは自分自身なのだから。
だから深優が九鬼との邂逅をどう感じていたとしても、俺があの男に抱く感情は変わらない。
俺と同じ、愚かな男。
ただひたすら仇のみを追い求めた俺と。
仇へのそれよりも自分自身への憎しみが上回った九鬼。
どちらがより愚かなのか、論じることがもっとも愚かだろうか。
或いは深優は否定するかもしれないが、俺には否定する理由はない。
そして、愚かだととうにわかっていたとして、それを曲げるつもりもない。
仇へのそれよりも自分自身への憎しみが上回った九鬼。
どちらがより愚かなのか、論じることがもっとも愚かだろうか。
或いは深優は否定するかもしれないが、俺には否定する理由はない。
そして、愚かだととうにわかっていたとして、それを曲げるつもりもない。
いつの間にか俺のとなりに並んだ深優が、俺と同じ方向に向き直る。
少なくとも、初めて会った時の深優ならばそんな風にはしなかっただろうが……
深優は、変わった。 間違いなく。
そして、俺も少しは変わったのだろう。
そうでなければ、こんな風に考える事も無かっただろう。
少なくとも、初めて会った時の深優ならばそんな風にはしなかっただろうが……
深優は、変わった。 間違いなく。
そして、俺も少しは変わったのだろう。
そうでなければ、こんな風に考える事も無かっただろう。
「スタンダァーープ!!であるそこの二人! こんな何も無いところで何を見つめあっておるのであるか!?
む、いや待て待つである、既に我輩含めてこの場は皆立っている、つまりシットダウーーーーーンである皆の衆!!!!
ふう、やれやれどっこいしょと、やたらと残骸が多いであるなここは」
「…………」
「…………」
む、いや待て待つである、既に我輩含めてこの場は皆立っている、つまりシットダウーーーーーンである皆の衆!!!!
ふう、やれやれどっこいしょと、やたらと残骸が多いであるなここは」
「…………」
「…………」
別に長い時間見ていた訳では無いが……この男は何も変わらない。
恐らくこいつは俺や九鬼のことは盛大に愚かであると叫ぶのだろうか。
多少納得のいかない物を感じなくも無いが、否定する事も無い。
恐らくこいつは俺や九鬼のことは盛大に愚かであると叫ぶのだろうか。
多少納得のいかない物を感じなくも無いが、否定する事も無い。
「ってそこな二人何を華麗にスルーしているであるか!!
我輩がシットダウンと言っているのであるからさっさと座るである!!
あ、いや待て座ってはいかん座っては、そういえばなぜ我輩は座っておるのであるか!? はっ、これはもしや孔明の罠……?
と、まあそれはどうでもいいのである、という訳で何そんな所で景色など眺めておるかそこの二人!! デートか!デートであるか!?
そうなると我輩どう見てもお邪魔虫、ここはすごすごと退散するのが礼儀らしいが我輩元々礼儀など知った事では無いので盛大に邪魔してやるであーーーる!!
さあ、という訳でさっさと戻ってこいなのであるそこな二人! うむ、元々の伝言も組みこめてまさに一石二鳥、さすがはドクターーーァウエスト!!である」
「「帰れ」」
「それはこっちのセリフじゃこのバカップル候補生!! というか無駄にハモるなであーる! 嫌味か?嫌味であるか!?
貴様ら二人我輩たちの護衛的なポジションだったであろ!!二人して長い時間離れるとか何考えておるのであるかーーー!! イチャイチャするならホテルに行ってからにしろと!
いやまあ実際まだ10分くらいしか経っておらんのではあるが何故か我輩あの憎っくきアル・アジフめにさっさと連れ戻してこんかと文句言われたのである!! 理不尽である!反省汁!
というか何故超絶大天才な上にかなり重症な部類に入る我輩がこんな事しなければならんのか非常に納得いかんのであるが成人男性なのだからとか言われては反論も出来んのである! うむ、我輩は大人である。
まあ実際はCDアルバムが一周するくらい反論し続けるなどたやすいのであるがその途中で力技に出られて今ここにいるのであるマル…………という訳でさっさと戻ってこいなのであーーーる!!荷物の回収程度のどれだけの時間を使うつもりなのであるかたわらばっ!!??」
「……玲二、いくら気に障るからと言って投石はどうかと」
「そういうお前が背中に隠した石は何だ、野球でもする気か?」
我輩がシットダウンと言っているのであるからさっさと座るである!!
あ、いや待て座ってはいかん座っては、そういえばなぜ我輩は座っておるのであるか!? はっ、これはもしや孔明の罠……?
と、まあそれはどうでもいいのである、という訳で何そんな所で景色など眺めておるかそこの二人!! デートか!デートであるか!?
そうなると我輩どう見てもお邪魔虫、ここはすごすごと退散するのが礼儀らしいが我輩元々礼儀など知った事では無いので盛大に邪魔してやるであーーーる!!
さあ、という訳でさっさと戻ってこいなのであるそこな二人! うむ、元々の伝言も組みこめてまさに一石二鳥、さすがはドクターーーァウエスト!!である」
「「帰れ」」
「それはこっちのセリフじゃこのバカップル候補生!! というか無駄にハモるなであーる! 嫌味か?嫌味であるか!?
貴様ら二人我輩たちの護衛的なポジションだったであろ!!二人して長い時間離れるとか何考えておるのであるかーーー!! イチャイチャするならホテルに行ってからにしろと!
いやまあ実際まだ10分くらいしか経っておらんのではあるが何故か我輩あの憎っくきアル・アジフめにさっさと連れ戻してこんかと文句言われたのである!! 理不尽である!反省汁!
というか何故超絶大天才な上にかなり重症な部類に入る我輩がこんな事しなければならんのか非常に納得いかんのであるが成人男性なのだからとか言われては反論も出来んのである! うむ、我輩は大人である。
まあ実際はCDアルバムが一周するくらい反論し続けるなどたやすいのであるがその途中で力技に出られて今ここにいるのであるマル…………という訳でさっさと戻ってこいなのであーーーる!!荷物の回収程度のどれだけの時間を使うつもりなのであるかたわらばっ!!??」
「……玲二、いくら気に障るからと言って投石はどうかと」
「そういうお前が背中に隠した石は何だ、野球でもする気か?」
ビー球程度の石を当てただけ、当たり所が悪ければ充分に武器になるがあの男相手では気にするだけ無駄だろう。
煩かったのでとりあえず黙らせてみたが、よく考えてみればその必要は無い。 ここでの用件は既に済んでいる。
かつて使用した道具の数々、レザーソーに銃が三丁、時間にしておおよそ3分程で回収し終えた。
この内の一丁、火炎放射器のような銃はアルがやたらと気にしていた代物だが、見たところ問題は無さそうだ。
問題があるとすれば二度ほど放り投げたコルトM16だろうか。 海が近い事もあるし、スコープの微調整なども考えると一度整備するべきだろう。
これ以上この場にいても特に得るものも無い……のだが。
煩かったのでとりあえず黙らせてみたが、よく考えてみればその必要は無い。 ここでの用件は既に済んでいる。
かつて使用した道具の数々、レザーソーに銃が三丁、時間にしておおよそ3分程で回収し終えた。
この内の一丁、火炎放射器のような銃はアルがやたらと気にしていた代物だが、見たところ問題は無さそうだ。
問題があるとすれば二度ほど放り投げたコルトM16だろうか。 海が近い事もあるし、スコープの微調整なども考えると一度整備するべきだろう。
これ以上この場にいても特に得るものも無い……のだが。
「……しまったな」
「……ですね」
「……ですね」
特に危機感も無くそんな会話をしながら、再び彼方に目を向ける。
どこか当たり所が悪かったのか、ウェストは倒れたまま目を覚まさない。
呼吸もしっかりしているので問題は無いがアレを背負って帰るというのは御免蒙る。
まあ、騒がしい連中と長かったのでもう少しのんびりするとしよう、と深優と意味も無く通じ合う。
連中の下に帰るのが遅くなったとして、どうせ文句を言われるのはウェストなのだから問題は何も無い。
どこか当たり所が悪かったのか、ウェストは倒れたまま目を覚まさない。
呼吸もしっかりしているので問題は無いがアレを背負って帰るというのは御免蒙る。
まあ、騒がしい連中と長かったのでもう少しのんびりするとしよう、と深優と意味も無く通じ合う。
連中の下に帰るのが遅くなったとして、どうせ文句を言われるのはウェストなのだから問題は何も無い。
「……玲二」
「……なんだ」
「結局、貴方は何を望んで戦うのですか?」
「……なんだ」
「結局、貴方は何を望んで戦うのですか?」
思い返せるかも判らない郷愁に身を委ねようか、などと似合わぬ事を考えたせいかそれは深優の言葉に遮られる。
それは、あるいは誰かに聞かれる事が予想された問いでもある。
それは、あるいは誰かに聞かれる事が予想された問いでもある。
「那岐や、九条むつみを含めて、私たちの目的は神崎黎人の打倒とそれによるこの儀式の破壊、元の世界への帰還に統一されています。
……無論、大なり小なりの誤差は存在します、柚明さんは恐らく帰還することよりも桂さんの身の安全の方を優先していると考えられますし、私も私自身よりもこの儀式の破壊の方に重点を置いています。
逆にやよいさんや桂さんは、皆が助かるならば神崎黎人の殺害にはそれほど固執はしないでしょう、憎しみは抱いているでしょうが、いざ彼を殺せる段階に至ったならば迷い、あるいは彼の助命を請う筈です」
ただ、それでもこのゲームの破壊と殺し合いという儀式の放棄、その部分については皆が一致しています……美希さんやファルさんに至るまで」
……無論、大なり小なりの誤差は存在します、柚明さんは恐らく帰還することよりも桂さんの身の安全の方を優先していると考えられますし、私も私自身よりもこの儀式の破壊の方に重点を置いています。
逆にやよいさんや桂さんは、皆が助かるならば神崎黎人の殺害にはそれほど固執はしないでしょう、憎しみは抱いているでしょうが、いざ彼を殺せる段階に至ったならば迷い、あるいは彼の助命を請う筈です」
ただ、それでもこのゲームの破壊と殺し合いという儀式の放棄、その部分については皆が一致しています……美希さんやファルさんに至るまで」
僅かに緊張を孕んだ空気の中で、緩やかに思考する。
殺し合いを否定した人間であれ、肯定した人間であれ、大まかな目的は変わらない。
殺し合いの放棄と、主催たちとの対峙。
殺し合いを否定した人間であれ、肯定した人間であれ、大まかな目的は変わらない。
殺し合いの放棄と、主催たちとの対峙。
「ですが、貴方は違います。 神崎黎人を殺すという点までは疑いようもありません。
しかしその後、仮に私たち全員を殺せば望みが叶う、という確実な保障があるならば、貴方は再びその誘いに乗るのではないですか?」
「……否定は、しないな」
しかしその後、仮に私たち全員を殺せば望みが叶う、という確実な保障があるならば、貴方は再びその誘いに乗るのではないですか?」
「……否定は、しないな」
口先だけの誘いではなく、何か物証があるならば。
俺は、その時に躊躇はしない。
俺は元々『ファントム』だ、人を殺す事に躊躇いなどは無い。
……ただ、
俺は、その時に躊躇はしない。
俺は元々『ファントム』だ、人を殺す事に躊躇いなどは無い。
……ただ、
そう、俺は奴らの誘いに乗ることなどあり得ない。
標的の命乞いに耳を貸した事など一度も無いように。
俺のすることは何も変わらない。
標的の命乞いに耳を貸した事など一度も無いように。
俺のすることは何も変わらない。
「ああ、だが、ナイアとかいう存在から奪い取った力。
それがもし、他の生き残り全員を殺さないと作動しないというのなら、躊躇なく実行する」
それがもし、他の生き残り全員を殺さないと作動しないというのなら、躊躇なく実行する」
僅かに弛緩した空気が、再び硬さを取り戻す。
そういえば、深優とは元々はこういう空気の付き合いだった筈なのだがな。
いつの間にかあの連中に当てられて緩んでいたのだろう。
そういえば、深優とは元々はこういう空気の付き合いだった筈なのだがな。
いつの間にかあの連中に当てられて緩んでいたのだろう。
……深優も、
「だから、その時は躊躇わずに俺を殺すんだな。
息の根をとめない限りは歯だけでもお前らを殺すだろうからな」
息の根をとめない限りは歯だけでもお前らを殺すだろうからな」
……俺も、
話は終わりとばかりに、彼方に目を向ける。
こんな事は言わないほうが簡単に決まっている。
わざわざ宣告するような殺人者など変態以外にはいないだろうに。
こんな事は言わないほうが簡単に決まっている。
わざわざ宣告するような殺人者など変態以外にはいないだろうに。
「……」
「……」
「……」
乾ききった空気を流そうかというように、湿った風が吹いてくる。
冷たさを含んだ海風は、もはや記憶にもない遠い日々に浴びたこともあっただろうか。
思い起こすほどの事でも無いし、思い出せる事でもない。
冷たさを含んだ海風は、もはや記憶にもない遠い日々に浴びたこともあっただろうか。
思い起こすほどの事でも無いし、思い出せる事でもない。
「やはり、諦めきれませんか……」
「違うな、元々諦めてなどない」
「違うな、元々諦めてなどない」
それほど遠い昔の話ではない筈だが、それでもはるか昔のように思えてくる。
俺もあったらしい、連中と同じような平和な日々はとうに奪われている。
もう残されているのは、鉄と血と硝煙の死の香りがする世界のみ。
その灰色の日々の中にあって、唯一輝きを保ちつづける記憶。
そう、どんなに願っても取り戻すことのできない景色。
だが、それを望んでしまうことは間違いなのか?
誰にもそれを否定することは出来ない。
ただ、押さえ込むだけだ。
過去は変わらない。
俺もあったらしい、連中と同じような平和な日々はとうに奪われている。
もう残されているのは、鉄と血と硝煙の死の香りがする世界のみ。
その灰色の日々の中にあって、唯一輝きを保ちつづける記憶。
そう、どんなに願っても取り戻すことのできない景色。
だが、それを望んでしまうことは間違いなのか?
誰にもそれを否定することは出来ない。
ただ、押さえ込むだけだ。
過去は変わらない。
そう、己の心に言い聞かせるだけだ。
それが、残されたものに出来る唯一の事柄。
だが……そうでは無いのだとしたら?
それを間違いであると、誰が言えるのだろうか。
それが、残されたものに出来る唯一の事柄。
だが……そうでは無いのだとしたら?
それを間違いであると、誰が言えるのだろうか。
・◆・◆・◆・
「……愚かであるな」
いつの間に目を覚ましたのであろうか。
風に身を任せ続ける二人に、その場にいた最後の男の声が掛かる。
風に身を任せ続ける二人に、その場にいた最後の男の声が掛かる。
「千羽烏月といい此処には愚か者がやたら多いようである」
「……」
玲二にとってその反応は既に予想されたもので、特に怒りは芽生えない。
いや、どちらかと言えば戸惑っているというべきだろうか。
いつもの如く壊れたスピーカーのように叫び続けると思っていたのだから。
いや、どちらかと言えば戸惑っているというべきだろうか。
いつもの如く壊れたスピーカーのように叫び続けると思っていたのだから。
「貴方は……玲二の考えを否定するのですか?」
「否定はしておらんのである、……誰にも、出来ないのである。
我輩はただ愚かだと言ったのである」
「否定はしておらんのである、……誰にも、出来ないのである。
我輩はただ愚かだと言ったのである」
答えない玲二に代わり、深優がウェストに問いかける。
深優からすればウェストの論調は味方に属するものであるのだが、彼の無遠慮な言葉が思わぬ引き金を引いてしまう事を警戒しての事。
……ただ、その深優もウェストの態度にいささか戸惑っていた。
故に、再び言葉は消える、あたかもその場に吹き始めた風に消されたかのように。
深優からすればウェストの論調は味方に属するものであるのだが、彼の無遠慮な言葉が思わぬ引き金を引いてしまう事を警戒しての事。
……ただ、その深優もウェストの態度にいささか戸惑っていた。
故に、再び言葉は消える、あたかもその場に吹き始めた風に消されたかのように。
「理論は……完璧だった筈である」
どれほどの時が流れたであろうか。
ポツリと、ウェストが普段からは信じられないような語彙で言葉を紡ぐ。
ポツリと、ウェストが普段からは信じられないような語彙で言葉を紡ぐ。
「いや、そもそも我輩の理論に間違いなどありえないであるから、間違いなく完璧だったのである」
そう、間違いなく完璧であった筈だ。
彼は当時も変わらず天才であり、『彼女』という共同研究者もいた。
そこで生まれた理論に、間違いなどある筈が無い。
例え、その施術の際に、彼女がこの世にいなかったとしても。
彼は当時も変わらず天才であり、『彼女』という共同研究者もいた。
そこで生まれた理論に、間違いなどある筈が無い。
例え、その施術の際に、彼女がこの世にいなかったとしても。
「もう、何年前のことであるか……我輩はエルザの死体を盗み出し、そして、彼女を生き返らせた」
彼は若かったが、それでもその才気ににはいささかの不足も無く、己が天才性を信じて疑わなかった。
ただ、強いていうなれば、当時の彼には今のような余力が抜けていたとでも言おうか、余裕がなかったのも事実であった。
出来て当然、己に出来ぬ事などこの世には無く、世界そのものを侮り、また己の失敗を瞬時にプラスの思考へ転換出来る、ある種超越した精神が存在しなかった。
理論は完璧だ、出来る、取り戻せる、失敗するはずが無い、したくない、失いたくない、彼を動かしていたのは、ある種の強迫観念とでも言うべきもので、
ただ、強いていうなれば、当時の彼には今のような余力が抜けていたとでも言おうか、余裕がなかったのも事実であった。
出来て当然、己に出来ぬ事などこの世には無く、世界そのものを侮り、また己の失敗を瞬時にプラスの思考へ転換出来る、ある種超越した精神が存在しなかった。
理論は完璧だ、出来る、取り戻せる、失敗するはずが無い、したくない、失いたくない、彼を動かしていたのは、ある種の強迫観念とでも言うべきもので、
「理論は完璧であり、事実エルザは生き返った、脈動し、呼吸し、動いた……間違いなく、生きているという状態であったのである。
……ただ一つ、『それ』がエルザではないということを除いて」
……ただ一つ、『それ』がエルザではないということを除いて」
エルザでは、いや人の姿をしている以外は人とも呼べぬ化け物。 エルザの姿をした、意思の無い怪物。
それが、彼が行なった蘇生の結果。
その後どうなったか、などとどうでもいい事だ。
それが、彼が行なった蘇生の結果。
その後どうなったか、などとどうでもいい事だ。
「死者の蘇生、その理論は完璧であった筈なのに、生まれた結果が完璧ではなかった、なら間違いは他のところにあったのである。
蘇った死者は、あくまで蘇った死者でしか無いのである。
死者を生者に戻すには、また違った理論が必要なのであろ」
蘇った死者は、あくまで蘇った死者でしか無いのである。
死者を生者に戻すには、また違った理論が必要なのであろ」
それは、ある意味では正しく、ある意味では間違っている結論。
過去は変わらない、故に人は生き返らない。
生き返ったとして、それはやり直す事にはならない、ただ続きが紡がれるだけだ。
だからこそ、『彼女』は蘇らなかった、彼が取り戻す事のみを望んだが故に。
……もっとも、それが判ったとて、今はもう彼には死者の蘇生に挑む意思は無い。
答えが判っていながらそれに挑まないなどと、彼にはありえない事なのに、それに挑もうという気が起きない。
それはその答えがまた間違うのが怖いのか、それとも正解であると証明してしまう事が怖いのか。
いずれにしろ、今はもうウェストには死者を蘇らせるという意思は無い。
過去は変わらない、故に人は生き返らない。
生き返ったとして、それはやり直す事にはならない、ただ続きが紡がれるだけだ。
だからこそ、『彼女』は蘇らなかった、彼が取り戻す事のみを望んだが故に。
……もっとも、それが判ったとて、今はもう彼には死者の蘇生に挑む意思は無い。
答えが判っていながらそれに挑まないなどと、彼にはありえない事なのに、それに挑もうという気が起きない。
それはその答えがまた間違うのが怖いのか、それとも正解であると証明してしまう事が怖いのか。
いずれにしろ、今はもうウェストには死者を蘇らせるという意思は無い。
己が技術の粋を持って作り上げた人形に、『エルザ』と名づけたのは単なる未練か、それとも。
いずれにしろ、『彼女』のことはもはや未練でしか無い。
故に、振り返る事はない、彼がドクター・ウェストである限りは。
いずれにしろ、『彼女』のことはもはや未練でしか無い。
故に、振り返る事はない、彼がドクター・ウェストである限りは。
・◆・◆・◆・
……少し、驚いた。
「明日からしばらくは大雨ですか……突入に支障が出そうですね……」
「潜入自体は容易くなるが証拠が残りやすくなるな。 どれだけ迅速に行動できるかが鍵になるだろう」
「む? 我輩のカンではここ数日晴れの筈であるが?」
「潜入自体は容易くなるが証拠が残りやすくなるな。 どれだけ迅速に行動できるかが鍵になるだろう」
「む? 我輩のカンではここ数日晴れの筈であるが?」
……気のせいだったか?
あの一瞬、誰か別人のようにすら見えたのだが。
あの一瞬、誰か別人のようにすら見えたのだが。
「まあとにかくである、死者の蘇生、それを行なったところで、何処かに不具合が生じるであろうな。
壊れた物でさえ完全に直す事は出来ても元に戻すことは出来ないのである。 我輩の破壊ロボとて、それは同じ。
なのでとりあえず愚かな考えは一時置いておいて我輩の下僕になって憎っくき大十字九朗を倒すのである! お前ならやれる!」
「……なぜそうなる」
「玲二、私も彼の意見に賛成です」
「……正気か?」
壊れた物でさえ完全に直す事は出来ても元に戻すことは出来ないのである。 我輩の破壊ロボとて、それは同じ。
なのでとりあえず愚かな考えは一時置いておいて我輩の下僕になって憎っくき大十字九朗を倒すのである! お前ならやれる!」
「……なぜそうなる」
「玲二、私も彼の意見に賛成です」
「……正気か?」
馬鹿は感染するというのは本当だったのだろうか。
そうなるともうあの連中も半分くらいは終わっているかもしれないな。
それなりに良い連中ではあったのだが……蛍の光程度には輝くくらいには。
まあ……墓碑に花くらいは添えてやろうか。
そうなるともうあの連中も半分くらいは終わっているかもしれないな。
それなりに良い連中ではあったのだが……蛍の光程度には輝くくらいには。
まあ……墓碑に花くらいは添えてやろうか。
「現象としての蘇生であれば、おそらくは可能です」
「……そっちか」
「……? 他の話題などありましたか?」
「いや、問題無い」
「……そっちか」
「……? 他の話題などありましたか?」
「いや、問題無い」
便利な耳だな。
……うらやましい。
……うらやましい。
・◆・◆・◆・
「『サーヴァント』という現象があります。 過去の偉人、英雄と称される存在を、現世に呼び起こす儀式。
最も、私も知識として与えられただけですが、過去の『英霊』人間としての輪廻より外れ、英雄としての型に押し込まれた存在。
それらを呼び出し、使役する法がサーヴァント、言峰綺礼ならばより詳しいことを知っているそうですが。
玲二、貴方が出会ったという黒衣の暗殺者、真アサシン。 彼の本当の名は『ハサン・サッバーハ』
世界で最も古く有名な、中東の暗殺教団『山の老人』の教主の一人です。
ただし、本当の彼はとうの昔に無くなっていますが。」
「…………」
「サーヴァントには彼ら自身の人格が存在し、己の意思で、己の望みにために行動できます。
これは確かに死者の蘇生といえるでしょう。
……ですが、それはあくまで既に英雄として完結した存在でしかないのだそうです。
彼らの物語は、彼らの死によって完結しています、この世に再び呼び起こされたとしても、それは既に過去のものでしかない。
彼は既にハサン・サッバーハではない、いえハサンという存在ではありますが、それはあくまでハサンとして生まれかわったというようなものであり、決してその生の続きが出来る訳ではありません」
最も、私も知識として与えられただけですが、過去の『英霊』人間としての輪廻より外れ、英雄としての型に押し込まれた存在。
それらを呼び出し、使役する法がサーヴァント、言峰綺礼ならばより詳しいことを知っているそうですが。
玲二、貴方が出会ったという黒衣の暗殺者、真アサシン。 彼の本当の名は『ハサン・サッバーハ』
世界で最も古く有名な、中東の暗殺教団『山の老人』の教主の一人です。
ただし、本当の彼はとうの昔に無くなっていますが。」
「…………」
「サーヴァントには彼ら自身の人格が存在し、己の意思で、己の望みにために行動できます。
これは確かに死者の蘇生といえるでしょう。
……ですが、それはあくまで既に英雄として完結した存在でしかないのだそうです。
彼らの物語は、彼らの死によって完結しています、この世に再び呼び起こされたとしても、それは既に過去のものでしかない。
彼は既にハサン・サッバーハではない、いえハサンという存在ではありますが、それはあくまでハサンとして生まれかわったというようなものであり、決してその生の続きが出来る訳ではありません」
深優は語る、己の知る死者蘇生と酷似した現象を。
なるほど、それは確かに死者の復活であろう。
だが、それは断じて蘇生ではないと、そう告げた。
それはあくまで登場人物が同じなだけの、別の物語を生み出すだけだと。
続きを生み出すわけでは無いのだと。
なるほど、それは確かに死者の復活であろう。
だが、それは断じて蘇生ではないと、そう告げた。
それはあくまで登場人物が同じなだけの、別の物語を生み出すだけだと。
続きを生み出すわけでは無いのだと。
「私はアリッサ様を蘇らせたいと思いません」
少しの沈黙と戸惑いの後。
それでも深優ははっきりと告げた。
その言葉には、いささかの迷いも無いとばかりに。
それでも深優ははっきりと告げた。
その言葉には、いささかの迷いも無いとばかりに。
「無論未練はあります。 出会えるのであればもう一度出会いたい。
もう一度アリッサ様の側でその歌声を聞きたいという想いが、そう、『感情』があります。
……ですが、それならば、この力は」
もう一度アリッサ様の側でその歌声を聞きたいという想いが、そう、『感情』があります。
……ですが、それならば、この力は」
その瞬間、深優の両手に羽を模した光の刃が生まれる。
深優・グリーアの、深優・グリーアとしてのHiMEの力。
深優・グリーアの、深優・グリーアとしてのHiMEの力。
「これは、私のアリッサ様への想いです。
アリッサ様と私の物語の果てに、私が手にした想いです。
私がアリッサ様の死を否定するという事は、同時にこの力を、アリッサ様への想いも、否定することになります」
アリッサ様と私の物語の果てに、私が手にした想いです。
私がアリッサ様の死を否定するという事は、同時にこの力を、アリッサ様への想いも、否定することになります」
そして、それは許されない事。
深優・グリーアという少女が深優・グリーアである為に、否定してはならない事。
深優・グリーアという少女が深優・グリーアである為に、否定してはならない事。
「私とアリッサ様の物語は、完結しました。 それは変わるはずの無い事実です。
……ですが、それでもアリッサ様の物語は、私の物語の一部として続いていきます、恐らくは私が壊れるまで」
……ですが、それでもアリッサ様の物語は、私の物語の一部として続いていきます、恐らくは私が壊れるまで」
だからこそ、彼女はアリッサを望まない。
アリッサを望むという事は、同時に深優の中のアリッサを否定する事なのだから。
そんな事をしなくても、深優はアリッサの事を感じられるのだから。
アリッサを望むという事は、同時に深優の中のアリッサを否定する事なのだから。
そんな事をしなくても、深優はアリッサの事を感じられるのだから。
「玲二、貴方がキャル・ディヴェンスを生き返らせたとしても、貴方と彼女は、決して元の姿にはなりえません。
貴方と彼女の物語は、既に二度、完結しています。
再び出会った彼女は一度目の彼女とは異なり、貴方の敵として存在しました。
二度目に出会った彼女が蘇ったとして、それが同じになりえると、どうして言えるでしょうか」
貴方と彼女の物語は、既に二度、完結しています。
再び出会った彼女は一度目の彼女とは異なり、貴方の敵として存在しました。
二度目に出会った彼女が蘇ったとして、それが同じになりえると、どうして言えるでしょうか」
深優は、あえて己の言いたいことの全てを、口にはしなかった。
玲二が目的を果たしたとして、果たしてそれは彼の望みが叶った事になるのか、と。
暗に、彼に問いかけた。
玲二が目的を果たしたとして、果たしてそれは彼の望みが叶った事になるのか、と。
暗に、彼に問いかけた。
・◆・◆・◆・
「御託は、いいさ」
僅かに、乾いた声を出す。
「俺とキャルの形は元に戻らない?
キャル自身がそれを望まないかもしれない?
そんなどうでもいい事はとうに承知しているさ」
キャル自身がそれを望まないかもしれない?
そんなどうでもいい事はとうに承知しているさ」
ただ、漠然とした形としてあっただけ、だが。
あるいは、それを認めるのが怖かったのかもしれないが。
あるいは、それを認めるのが怖かったのかもしれないが。
「ああ、それでもいいさ。
キャルが生きていてくれるのなら、俺がどうであっても、な」
キャルが生きていてくれるのなら、俺がどうであっても、な」
そう、とっくに覚悟していたのだ。
その思いは、今も変わる事は無い。
その思いは、今も変わる事は無い。
「だから、俺のやることは変わらない。
神埼黎人を殺し、ナイアとやらから蘇生の力を奪い取る。
その時にもし必要なものがあるなら、躊躇う気なんて無い」
「……他に方法はあるかもしれませんが」
「そんなものを探せるほど器用じゃないさ、俺は」
神埼黎人を殺し、ナイアとやらから蘇生の力を奪い取る。
その時にもし必要なものがあるなら、躊躇う気なんて無い」
「……他に方法はあるかもしれませんが」
「そんなものを探せるほど器用じゃないさ、俺は」
そう、そんな事が出来るくらいなら、俺はとうに違う所にいる。
少しばかりの変化があったとして、俺の根幹が揺らぐ事は無い。
少しばかりの変化があったとして、俺の根幹が揺らぐ事は無い。
「ああ、安心しろ、その時はちゃんと言ってから殺しに行く。
問答無用で敵になる事は無い。 だからその時は躊躇わずに殺せ」
問答無用で敵になる事は無い。 だからその時は躊躇わずに殺せ」
ただ、少しばかりの遠回りくらいはしてもよいかと、そう感じようになった程度には、変わった、それだけの事。
僅かに見える、小さな灯火
輝く時間というほどではなくとも、それこそ蛍の光程度でも、その灯火を守ろうというくらいには。
もしもの時に、僅かに、それこそ一瞬程度でも、かつてアインを撃てなかった時くらいに躊躇するくらいには。
僅かに見える、小さな灯火
輝く時間というほどではなくとも、それこそ蛍の光程度でも、その灯火を守ろうというくらいには。
もしもの時に、僅かに、それこそ一瞬程度でも、かつてアインを撃てなかった時くらいに躊躇するくらいには。
・◆・◆・◆・
もう話は終わり、とばかりに玲二は歩き出す。
それを、ウェストと深優は少し見送る。
それを、ウェストと深優は少し見送る。
「貴方が、あのような事を言うとは思っていませんでした」
「さて、我輩も、何が言いたいのであろうな……過去を振り返って我輩の時間を無駄にするなど世界の損失であるというのにである。
まあ、我輩の無駄にした分の時間の数百分の一の収穫ぐらいはあったかもしれんではあるがな」
「……先ほどのようにマジメであれば、トーニャさんの負担も少しは減るでしょうに」
「ふん、あのようなツンギレに用は無いのである、ついでに我輩はいつでも本気である」
「さて、我輩も、何が言いたいのであろうな……過去を振り返って我輩の時間を無駄にするなど世界の損失であるというのにである。
まあ、我輩の無駄にした分の時間の数百分の一の収穫ぐらいはあったかもしれんではあるがな」
「……先ほどのようにマジメであれば、トーニャさんの負担も少しは減るでしょうに」
「ふん、あのようなツンギレに用は無いのである、ついでに我輩はいつでも本気である」
そうして、ウェストも玲二の後を追う。
もはやこの場所には何も無いのだから。
ややあってから、深優もそれに続く。
もはやこの場所には何も無いのだから。
ややあってから、深優もそれに続く。
「玲二は或いは再び私たちの敵となるのでしょうか……?」
「……最初に言ったであろ、それは誰にも否定出来んのである」
「……最初に言ったであろ、それは誰にも否定出来んのである」
正しい答えなど、何処にも無い。
ウェストはエルザを蘇らせる事は出来なかった、そしてもうその意思はない。
深優はアリッサを失った、彼女を蘇らせる意思は深優には無いけれど、それでもその姿を汚した者たちへの怒りは消えない。
玲二は二度キャルを失った、彼女を取り戻す意思は変わることは無い……ただ、少しばかりの遠回りを許容するだけで、目的地は変わる事ない。
深優はアリッサを失った、彼女を蘇らせる意思は深優には無いけれど、それでもその姿を汚した者たちへの怒りは消えない。
玲二は二度キャルを失った、彼女を取り戻す意思は変わることは無い……ただ、少しばかりの遠回りを許容するだけで、目的地は変わる事ない。
短い幕間は終わる。
風によって生まれた追憶は風とともに消え去り、現実は何も変わる事は無い。
事実を客観的に確認しあっただけの、目新しい発見も無い、
それでも、確かに意味はあった、言葉にしなければ、何も見えないのだから。
他人の事であれ、自分自身のことであれ。
風によって生まれた追憶は風とともに消え去り、現実は何も変わる事は無い。
事実を客観的に確認しあっただけの、目新しい発見も無い、
それでも、確かに意味はあった、言葉にしなければ、何も見えないのだから。
他人の事であれ、自分自身のことであれ。
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