銃声が響く外の戦いなど耳に届かないかのように、
三者が顔を合わせた一階のロビーは静寂がその場を包む。
夢でも見ているのか、疑いたくなる光景を前にして少し言葉を失ったが
三者が顔を合わせた一階のロビーは静寂がその場を包む。
夢でも見ているのか、疑いたくなる光景を前にして少し言葉を失ったが
「何、やってんだよ……アンタは!」
周囲の光景を改めて見やれば、
水面に波紋を広げるかの如くロックは叫ぶ。
こんな状態をひろしが一人でできるわけがない。
やった相手は当然誰か分かってるし、この男ならやれる。
それでも。ギースに対し、ロックの感情とは複雑なものだ。
水面に波紋を広げるかの如くロックは叫ぶ。
こんな状態をひろしが一人でできるわけがない。
やった相手は当然誰か分かってるし、この男ならやれる。
それでも。ギースに対し、ロックの感情とは複雑なものだ。
「あいつと知り合いなのか?」
「……父親になる。」
「な、親父さんかよ!?」
「何をやってるか、だと?」
彼はサウスタウンを牛耳る存在だった。立場が立場である以上、
おいそれと来ることはできなかったのは分からなくはないが、
彼は母を顧みることはなく、見舞いも手紙も一度とやろうとしなかった。
メアリーが危篤に入っても縋ったロックを冷酷に追い払い、いい感情などないに等しい。
とても好きにはなれない父親だったが、一方で死んでほしいとはまた別だ。
ギースの死に行き場のない感情から、テリーに戦いを挑んだぐらいだ。
毛嫌いしてた、なんて一言で済ませるには難しいものになっている。
おいそれと来ることはできなかったのは分からなくはないが、
彼は母を顧みることはなく、見舞いも手紙も一度とやろうとしなかった。
メアリーが危篤に入っても縋ったロックを冷酷に追い払い、いい感情などないに等しい。
とても好きにはなれない父親だったが、一方で死んでほしいとはまた別だ。
ギースの死に行き場のない感情から、テリーに戦いを挑んだぐらいだ。
毛嫌いしてた、なんて一言で済ませるには難しいものになっている。
「温いサウスタウンで成長してしまったようだな。
此処はサウスタウンのストリートファイトやKOFと同じ。
餓えた狼が跋扈する世界……嘗てのサウスタウンと変わらぬ。」
此処はサウスタウンのストリートファイトやKOFと同じ。
餓えた狼が跋扈する世界……嘗てのサウスタウンと変わらぬ。」
悪びれることはない。
ギースはこういう男だ。こういう男だからこそ、
人から恨みを買い続け、最終的にその怨恨で命を落とした。
彼はそれを悔いることも、それを過ちと思うことは決してない。
であれば、こうなるのは必定とも言えることだ。
ギースはこういう男だ。こういう男だからこそ、
人から恨みを買い続け、最終的にその怨恨で命を落とした。
彼はそれを悔いることも、それを過ちと思うことは決してない。
であれば、こうなるのは必定とも言えることだ。
「育て親はテリー・ボガードか? なんにせよ、
お前は私が殺し合いを乗らないとでも、本気で思っていたのか。」
お前は私が殺し合いを乗らないとでも、本気で思っていたのか。」
否定の言葉は出るはずがなかった。
この男が何をしてきたかを知っている。
悪のカリスマ。時として悪夢として出てくる存在。
そんな奴が乗ってない奴と思える要素が、ある方がおかしいだろう。
この男が何をしてきたかを知っている。
悪のカリスマ。時として悪夢として出てくる存在。
そんな奴が乗ってない奴と思える要素が、ある方がおかしいだろう。
「ふん、とんだ青二才になったものだな。
それでロック。お前は今いくつになっている?」
それでロック。お前は今いくつになっている?」
「……十七だ。」
「となればおよそ十年か。カインも相当腕を上げてるとみていいな。」
「カインを知ってるのか?」
ギースの死後初めて開催されたKOF。
カインに会う前に倒したグラントの発言から、
ギースのことを知っていた様子ではあったが、
その黒幕となるカインは少なからぬ因縁があるようだ。
カインに会う前に倒したグラントの発言から、
ギースのことを知っていた様子ではあったが、
その黒幕となるカインは少なからぬ因縁があるようだ。
「知ってるが教える理由はない。それよりも、
十年でどれほど変わったか、見せてもらおうか。」
十年でどれほど変わったか、見せてもらおうか。」
ギースが構え……と呼べるような構えではないが、
とにかく臨戦態勢に入ればロックもすぐに対応する。
此処で戦わなければ死。分かり切ったことだ。
とにかく臨戦態勢に入ればロックもすぐに対応する。
此処で戦わなければ死。分かり切ったことだ。
「烈風拳!」
先手はロック。
手を振るい、地を這う烈風。
衛生面を気遣った清潔な床を滑りながらギースへ迫る。
手を振るい、地を這う烈風。
衛生面を気遣った清潔な床を滑りながらギースへ迫る。
「ほう、私と同じ技が使えるのか。」
まずは手本を、と言わんばかりに御返しの烈風拳。
ロック以上のスピードで迫り互いの攻撃が相殺するも、
ロック以上のスピードで迫り互いの攻撃が相殺するも、
(む!)
烈風拳を注視したことで、
ロックがもう一発烈風拳を放ってたことに少し対応が遅れてしまう。
とは言え所詮誤差の範囲。寧ろ前進しながら飛び上がることで回避。
リョウ・サカザキの技への対抗策として編み出した腕の薙ぎ払い、飛燕失脚を放つ。
ロックがもう一発烈風拳を放ってたことに少し対応が遅れてしまう。
とは言え所詮誤差の範囲。寧ろ前進しながら飛び上がることで回避。
リョウ・サカザキの技への対抗策として編み出した腕の薙ぎ払い、飛燕失脚を放つ。
「ライジングタックル!」
迫る攻撃を前に冷静に、
錐揉み回転しながらの飛び蹴りで相殺。
相殺された反動で距離を取り、互いに揃って肉薄。
だが攻撃の間合いに入った瞬間、ロックの姿は消える。
錐揉み回転しながらの飛び蹴りで相殺。
相殺された反動で距離を取り、互いに揃って肉薄。
だが攻撃の間合いに入った瞬間、ロックの姿は消える。
(背後か!)
レイジランによる回り込みを即座に看破。
すかさず振り返り、背後から仕掛けた拳を掴む。
すかさず振り返り、背後から仕掛けた拳を掴む。
「しまっ……!」
テリーが苦戦を強いられたのは、
何よりもギースの防御の強さにある。
対空と言ったカウンターを必要しないのは、
適切に攻撃を防ぎつつ、カウンターをする当て身投げ。
これが洗練されていたからこそでもあった。
掴まれた後はそのまま真上へと投げ飛ばされる。
何よりもギースの防御の強さにある。
対空と言ったカウンターを必要しないのは、
適切に攻撃を防ぎつつ、カウンターをする当て身投げ。
これが洗練されていたからこそでもあった。
掴まれた後はそのまま真上へと投げ飛ばされる。
病院の天井高は法律上、ある程度の高さが義務付けられている、
基本的には四メートル以上、上へ投げ飛ばされても天井に激突することはない。
エレンにも決めた羅生門を叩き込まんとするも、
基本的には四メートル以上、上へ投げ飛ばされても天井に激突することはない。
エレンにも決めた羅生門を叩き込まんとするも、
「グッ、烈風拳!」
確実にまずいと気付いたロックが、
咄嗟に真下のギースへめがけて烈風拳を放つ。
ギースがよくやる疾風拳のそれであり、直撃は避けるように距離をるが、
彼と違って粗雑な疾風拳であるかのように、床が少し削れるぐらいだ。
咄嗟に真下のギースへめがけて烈風拳を放つ。
ギースがよくやる疾風拳のそれであり、直撃は避けるように距離をるが、
彼と違って粗雑な疾風拳であるかのように、床が少し削れるぐらいだ。
「疾風拳は慣れんらしいな。」
「咄嗟に使えるか、今試したばかりだからな!」
ロックが着地したと同時に、
「Deadly rave!!」
「デッドリーレイブ!!」
互いの打撃の押収だ。
ギースの技をベースにしながらも、
テリーから学んだマーシャルアーツを組み込んだデッドリーレイブ。
それを原典たるデッドリーレイブとはうまいこと相殺するが、
互いに決定打を与えることは叶わない。
ギースの技をベースにしながらも、
テリーから学んだマーシャルアーツを組み込んだデッドリーレイブ。
それを原典たるデッドリーレイブとはうまいこと相殺するが、
互いに決定打を与えることは叶わない。
(なんだよ、この重さ!?)
自身の肩の傷は確かに無視できないが、
ギースも見た感じダメージを十分に負っている。
拮抗はしているものの、一撃一撃全てが異様に重い。
相殺した手足の痺れから、直撃した際の威力を物語っている。
ギースも見た感じダメージを十分に負っている。
拮抗はしているものの、一撃一撃全てが異様に重い。
相殺した手足の痺れから、直撃した際の威力を物語っている。
ギースが掌底からの気を放つ瞬間、
ロックは相殺をやめて後方へサイドステップでギリギリ回避。
そこから続けて右ストレートのシャインナックルをギースの胸へ叩き込む。
デッドリーレイブの締めが同じ掌底波によるものだと読めたという、
親子だからこその判断力で僅かに一歩だけ上回った。
ロックは相殺をやめて後方へサイドステップでギリギリ回避。
そこから続けて右ストレートのシャインナックルをギースの胸へ叩き込む。
デッドリーレイブの締めが同じ掌底波によるものだと読めたという、
親子だからこその判断力で僅かに一歩だけ上回った。
「バーンナックルにライジングタックル、
テリーめ……余計な真似をしたようだな。」
テリーめ……余計な真似をしたようだな。」
とは言えそれが決定打には足りえない。
ましてや、人間を超えてしまった男ならなおの事。
威力の強さから後退はするが、大技の威力とは思えぬほどに傷が軽微だ。
ましてや、人間を超えてしまった男ならなおの事。
威力の強さから後退はするが、大技の威力とは思えぬほどに傷が軽微だ。
「少しは期待していたが、存外呆気ないものだな。」
「一撃も当てずに言う言葉じゃないと俺は思うんだが。」
「そうか? なら───本気で行くぞ?」
翼を生やし、五体があること以外は人間からかけ離れた姿。
雁を踏襲したかのようなヴァンパイア態へとギースは姿を変える。
突然自分の全く知らない父親の姿を前に一瞬戸惑い、反応が遅れそうになった。
先程よりも圧倒的な速度で肉薄からの裏拳が顔面に迫り、転がるように回避。
傍にあった柱がクッキーのように容易く砕かれ、その光景に戦慄する。
今度の攻撃は防ぐことすら許されない、当たれば致命傷しかない。
雁を踏襲したかのようなヴァンパイア態へとギースは姿を変える。
突然自分の全く知らない父親の姿を前に一瞬戸惑い、反応が遅れそうになった。
先程よりも圧倒的な速度で肉薄からの裏拳が顔面に迫り、転がるように回避。
傍にあった柱がクッキーのように容易く砕かれ、その光景に戦慄する。
今度の攻撃は防ぐことすら許されない、当たれば致命傷しかない。
「なんだよ、それ……」
「ヴァンパイアと言うらしい。
人の屍を糧に生きた私らしいとは思わんか?」
人の屍を糧に生きた私らしいとは思わんか?」
「そうまでして上に立ちたいのかよ、アンタは!
化け物になってまで、一体何処に行くって言うんだよ!!」
化け物になってまで、一体何処に行くって言うんだよ!!」
嬉々とした表情で人間をやめて、
怪物になってもまだ欲望の化身のままだ。
何処まですればこの男は気が済むのか。
怪物になってもまだ欲望の化身のままだ。
何処まですればこの男は気が済むのか。
「あくなき欲求こそ人間の本懐だ。
例えヴァンパイアになろうとも、私は私のままだ。
コギトエルゴズム……は、テリーでなくとも小難しい話か。
嘗ての哲学者の命題だ。『我思う、故に我在り』と言う意味になる。」
例えヴァンパイアになろうとも、私は私のままだ。
コギトエルゴズム……は、テリーでなくとも小難しい話か。
嘗ての哲学者の命題だ。『我思う、故に我在り』と言う意味になる。」
私腹を肥やす為にKOFを開き、
野望の障害となる存在を始末し続けてきた。
辺獄であっても同じことだ。ディメーンも、
双子の姉妹も超えて悪のカリスマらしくあり続ける。
人間をやめたところで、その芯は変わりはしない。
野望の障害となる存在を始末し続けてきた。
辺獄であっても同じことだ。ディメーンも、
双子の姉妹も超えて悪のカリスマらしくあり続ける。
人間をやめたところで、その芯は変わりはしない。
「ロック、なぜ勝てないか教えてやる。お前は餓えを知らない。
餓えを知らぬ狼が餓えた狼と対等であるはずがない。それだけだ。」
餓えを知らぬ狼が餓えた狼と対等であるはずがない。それだけだ。」
テリーが勝てたのは、その餓えにある。
親を殺されて、復讐に明け暮れてきたその執念。
勝ちたいという執念が彼を強くし続けた結果到達した。
ギースも同じだ。あくなき欲求に餓え続けてきたから、
他者を手にかけて、その上に立ち続けている存在だ。
親を殺されて、復讐に明け暮れてきたその執念。
勝ちたいという執念が彼を強くし続けた結果到達した。
ギースも同じだ。あくなき欲求に餓え続けてきたから、
他者を手にかけて、その上に立ち続けている存在だ。
では、ロックはあるのか?
親を殺されたところはテリーと同じだが、
復讐をしたいでもしたわけでもなく、ギースほどの野望もなく。
十年ぶりのKOFについてもグラントが言ったギースの遺産。
それを知るべく向かったが殺してでも欲するものでもなかった。
全体的に流れに乗ったままとも言えるだろう。
与えられるだけの存在に『餓え』などない。
親を殺されたところはテリーと同じだが、
復讐をしたいでもしたわけでもなく、ギースほどの野望もなく。
十年ぶりのKOFについてもグラントが言ったギースの遺産。
それを知るべく向かったが殺してでも欲するものでもなかった。
全体的に流れに乗ったままとも言えるだろう。
与えられるだけの存在に『餓え』などない。
「最後の親子喧嘩も終わりだ。」
逃げたロックへと間合いを詰める。
迎撃のミドルキックは容易く防がれ、
レイジランで背後に回り込みながらの肘打ちも止められ、
そのまま軽い足払いによって床へと叩きつけられてしまう。
先の攻撃と比べれば本当に手加減されたものではあるが、
それでもその足払いにロックはバランスを崩すしかなかった。
迎撃のミドルキックは容易く防がれ、
レイジランで背後に回り込みながらの肘打ちも止められ、
そのまま軽い足払いによって床へと叩きつけられてしまう。
先の攻撃と比べれば本当に手加減されたものではあるが、
それでもその足払いにロックはバランスを崩すしかなかった。
「Die Yaboo(弱者は死ね)。」
両手を掲げて放つのはレイジングストームではない。
レイジングストームを更に超えた、サンダーブレイク。
ヴァンパイアになった瞬間、一方的な展開にされた。
追い求めたわけではないが、父の強さは圧倒的なものだ。
いや、ヴァンパイアなら寧ろ生前以上と言うしかないだろう。
勝ち目などない、諦めようとしたその時。
レイジングストームを更に超えた、サンダーブレイク。
ヴァンパイアになった瞬間、一方的な展開にされた。
追い求めたわけではないが、父の強さは圧倒的なものだ。
いや、ヴァンパイアなら寧ろ生前以上と言うしかないだろう。
勝ち目などない、諦めようとしたその時。
「うおおおおおおおおおおっ!!」
持っていたハイドラを鈍器として、
ひろしがギースの背後から振るってきた。
銃弾ではロックに当たる可能性もあって鈍器として使うが、
鬱陶しいと言った冷めた表情で、横へと飛んで容易く避けられる。
ヴァンパイアなら避ける必要もないが、背中とは何があるかは自力で見えない箇所。
撃たれ弱い部分が露呈してるかもしれないと言う警戒から、避けることを選んだ。
とは言え、これのお陰でロックの命は首の皮一枚だけ繋がったとも言えた。
ひろしがギースの背後から振るってきた。
銃弾ではロックに当たる可能性もあって鈍器として使うが、
鬱陶しいと言った冷めた表情で、横へと飛んで容易く避けられる。
ヴァンパイアなら避ける必要もないが、背中とは何があるかは自力で見えない箇所。
撃たれ弱い部分が露呈してるかもしれないと言う警戒から、避けることを選んだ。
とは言え、これのお陰でロックの命は首の皮一枚だけ繋がったとも言えた。
「ひろし!? 何をやってるんだ!」
助かったとはいえその無謀な行動はロックも驚かされる。
あの強さを見たはずだ。一般人では勝てるどうこうの領域にはもういない。
彼が戦って勝てる可能性は万に一つだってないのは、
誰が見たってその通りとしか言えない行動だ。
あの強さを見たはずだ。一般人では勝てるどうこうの領域にはもういない。
彼が戦って勝てる可能性は万に一つだってないのは、
誰が見たってその通りとしか言えない行動だ。
「さっきから黙って聞いてりゃ、てめえそれでも父親かよ!!」
二度、三度と鈍器として振るうが、いずれも外れる。
ヴァンパイアとなったギース相手に攻撃はろくに届かない。
六度目の攻撃には腕を構えることで受け止められるが、
当然ながらダメージにすらなってないだろう。
ヴァンパイアとなったギース相手に攻撃はろくに届かない。
六度目の攻撃には腕を構えることで受け止められるが、
当然ながらダメージにすらなってないだろう。
「そうだ、父親だ。それの何が問題だ?」
「自分の息子に死ねって言う親が何処にいやがる!
親はなぁ、子供に生き抜けっていうもんだろがぁ!!」
親はなぁ、子供に生き抜けっていうもんだろがぁ!!」
奇しくもその言葉は、未来の野原ひろしも言った言葉だ。
金有増蔵はその言葉に動揺したものの、この男には何もない。
だって、それが揺るがぬ事実なのだと認識しているのだから。
金有増蔵はその言葉に動揺したものの、この男には何もない。
だって、それが揺るがぬ事実なのだと認識しているのだから。
「ふん。下らん。ならば息子の為に皆殺しを推奨するのか?」
「そんなことしろとは一言も言ってねえよ!
俺はみさえとしんのすけが、家族が巻き込まれてるが俺は乗らねえ!
家族を守る為なら戦うことはするが、俺達は他の手段で脱出してやらぁ!」
俺はみさえとしんのすけが、家族が巻き込まれてるが俺は乗らねえ!
家族を守る為なら戦うことはするが、俺達は他の手段で脱出してやらぁ!」
「ならば同じ父親なら聞こうか。
ミサエかシンノスケが死んだら、どうするつもりだ?」
ミサエかシンノスケが死んだら、どうするつもりだ?」
「ッ!」
家族三人揃って殺し合いに否定的な皆と脱出する。
それが目的ではあるものの、ひろしは言葉に詰まった。
既にみさえやしんのすけが、誰かの手にかけられていたのなら。
本当に乗らないと言えるのか。妻や息子のいない世界がいいと言うのか。
否、いいはずがない。嘗て彼は『息子のいない世界に未練はない』と言った。
一瞬のスキを突かれ、ハイドラを掴まれたまま足払いでひろしは転倒させられる。
それが目的ではあるものの、ひろしは言葉に詰まった。
既にみさえやしんのすけが、誰かの手にかけられていたのなら。
本当に乗らないと言えるのか。妻や息子のいない世界がいいと言うのか。
否、いいはずがない。嘗て彼は『息子のいない世界に未練はない』と言った。
一瞬のスキを突かれ、ハイドラを掴まれたまま足払いでひろしは転倒させられる。
「イツッ……!」
「ふん、素人風情が。家族を強く想うからそうなる。」
ハイドラを一瞥した後、適当に投げ捨てる。
適当とは言うがヴァンパイアの膂力で投げたものだ。
投げ飛ばされ適当な壁に叩きつけられたそれは、
銃口がひしゃげて銃器としての役割は果たせなくなる。
適当とは言うがヴァンパイアの膂力で投げたものだ。
投げ飛ばされ適当な壁に叩きつけられたそれは、
銃口がひしゃげて銃器としての役割は果たせなくなる。
「ロック。餓えを知らぬのであればその餓えを、動機をお前に与えてやろう。」
化け物から出る笑みは酷く品のない下卑たもの。
三日月のような笑みから何をしようとしているのか悪寒と共に察する。
三日月のような笑みから何をしようとしているのか悪寒と共に察する。
「! やめ───」
静止の言葉もむなしく、
ギースはひろしの左手を踏みつける。
ヴァンパイアの力が上乗せされたら、
その威力は最早手をプレス機に挟まれるに等しく
地面に軽いクレーターを作り、中心に血だまりができる。
ギースはひろしの左手を踏みつける。
ヴァンパイアの力が上乗せされたら、
その威力は最早手をプレス機に挟まれるに等しく
地面に軽いクレーターを作り、中心に血だまりができる。
「ガッ、アアアアアアアアアアッ!?」
痛みの余りのたうち回りたいが、
逆に痛みのせいで動くことすらままならない。
家族が、他人の家族を蹂躙する様を見せられ言葉を失う。
足を離せば、見るに堪えない潰れた手が視界に映る。
逆に痛みのせいで動くことすらままならない。
家族が、他人の家族を蹂躙する様を見せられ言葉を失う。
足を離せば、見るに堪えない潰れた手が視界に映る。
「即死させては実感が薄いだろうからな。今は手だけで済ませてやろう。
ロック。これが動機だ、それが執念だ、それこそが餓えだ……覚えておけ。」
ロック。これが動機だ、それが執念だ、それこそが餓えだ……覚えておけ。」
「───ッ、ウオオオオオオオオオオ!!」
怒りの余りロックはシャインナックルを叩き込むも、
見え見えの攻撃では簡単に防がれてしまう。
見え見えの攻撃では簡単に防がれてしまう。
「そういうのは、ただのやけくそというのだ! 愚か者が!」
人の姿へと戻りつつ胸元に掌底を叩き込まれ、吹き飛ばされるロック。
デイバックがあったお陰で壁に直ではないものの、
クレーターができる一撃はとても軽傷とは呼べない。
デイバックがあったお陰で壁に直ではないものの、
クレーターができる一撃はとても軽傷とは呼べない。
「……やはり期待しすぎだったな。
六時間を生き延びたのは、弱者を相手にしただけか。
数時間前に戦った魔法少女……でいいか。奴を含む三人がまだよかったぞ。」
六時間を生き延びたのは、弱者を相手にしただけか。
数時間前に戦った魔法少女……でいいか。奴を含む三人がまだよかったぞ。」
「てめえ、そいつらをどうしたんだ……!!」
痛みをこらえながら、足元に転がるひろしが声を絞り出す。
意味などないのは分かってる。それでも尋ねずにはいられなかった。
意味などないのは分かってる。それでも尋ねずにはいられなかった。
「殺した以外に何がある? それとも、生き血を啜ったかでも聞くか?」
ヴァンパイアは生きた人間の血を吸うことで一時的なパワーアップも望める。
本物のヴァンパイアらしい数少ないそれっぽい行動については興味を惹く。
餓えを知るきっかけにもなりそうにもないのであれば、ひろしはもう用済みだ。
どの程度の強化が見込めるかの為に、生き血を啜ってみるかとひろしの首を掴もうとする。
本物のヴァンパイアらしい数少ないそれっぽい行動については興味を惹く。
餓えを知るきっかけにもなりそうにもないのであれば、ひろしはもう用済みだ。
どの程度の強化が見込めるかの為に、生き血を啜ってみるかとひろしの首を掴もうとする。
「ん?」
しかし、ロックの方から鉄がぶつかる甲高い音が響いて中断。
後方にいる、もうろくな期待もできない息子へと視線を向ける。
頭部から出血しているが、それでもなお支給品の一つなのか、
西洋の剣を杖の代わりに立ち上がろうとしている姿があった。
後方にいる、もうろくな期待もできない息子へと視線を向ける。
頭部から出血しているが、それでもなお支給品の一つなのか、
西洋の剣を杖の代わりに立ち上がろうとしている姿があった。
「剣とマーシャルアーツを組み合わせた、新しい格闘術でも披露する気か?」
ロックが握っていたのは西洋にあるタイプの大剣。
両手で握るようなタイプのそれは、片手で振るうのは余りお勧めできない。
そも、ロック自身はこういう物を握る機会など殆どなかったのだから。
両手で握るようなタイプのそれは、片手で振るうのは余りお勧めできない。
そも、ロック自身はこういう物を握る機会など殆どなかったのだから。
「……頭に上った血が流れたお陰でちょっとだけ落ち着いた。
だから返すさ。俺はアンタの言う、餓えた狼は違うと思っている。」
だから返すさ。俺はアンタの言う、餓えた狼は違うと思っている。」
「ほう、ではなんだと言うんだ?」
「───多分なんだがな。
『どんな状況でも真っすぐ前を見ていること』が、餓えた狼だと俺は思う。」
『どんな状況でも真っすぐ前を見ていること』が、餓えた狼だと俺は思う。」
テリーはギースに復讐の為に修行をしていた。
でも修行、基復讐一辺倒だけと言うわけではない。
明るい性格からテリーの周りの人は笑顔が多かった。
彼の姿を見て、ギースの言う復讐と言う名の餓狼とは思えない。
復讐一辺倒であれば、今も彼の腕は衰えてないことにも矛盾する。
でも修行、基復讐一辺倒だけと言うわけではない。
明るい性格からテリーの周りの人は笑顔が多かった。
彼の姿を見て、ギースの言う復讐と言う名の餓狼とは思えない。
復讐一辺倒であれば、今も彼の腕は衰えてないことにも矛盾する。
彼が思った餓えた狼とは、逆境にあっても前を見据える、
言うなれば信念や志と言ったものではないのだろうかと。
前を見ていたからテリーは復讐だけに囚われることはなく、
自分を引き取って育てられた……と、そんな風に思えていた。
なお、テリーはずぼらなので家事は大体ロックがなんとかしてたが。
言うなれば信念や志と言ったものではないのだろうかと。
前を見ていたからテリーは復讐だけに囚われることはなく、
自分を引き取って育てられた……と、そんな風に思えていた。
なお、テリーはずぼらなので家事は大体ロックがなんとかしてたが。
それはギースにも同じことが言える。
逆境とはあまり縁がなさそうな人物ではあるものの、
野望に溢れた生き方はある意味真っすぐ、自分を見ている。
コギトエルゴズムもまた、自分を見失ってないことへの表れだ。
逆境とはあまり縁がなさそうな人物ではあるものの、
野望に溢れた生き方はある意味真っすぐ、自分を見ている。
コギトエルゴズムもまた、自分を見失ってないことへの表れだ。
「では貴様はこの逆境で前を向くと。できるとでもいうのか?」
「ああ、向いてやるさ───何処までも、足掻いてやる!!」
だからその為に剣を取った。
使うべきか悩み続けてきたそれを手に、彼猛るは猛る。
合わなければ即死、そんな曰く付きの代物だ。
躊躇ってきたのは当然だ。失敗するだけで死ぬ。
誰かと戦った末とかによる死ではなく、使えるかの確認一つで生死を分ける。
躊躇うのは当然ではあったが、その臆した心は何処かへとおいやった。
逆境であっても前を見据えろ。自分らしさを忘れることなかれ。
使うべきか悩み続けてきたそれを手に、彼猛るは猛る。
合わなければ即死、そんな曰く付きの代物だ。
躊躇ってきたのは当然だ。失敗するだけで死ぬ。
誰かと戦った末とかによる死ではなく、使えるかの確認一つで生死を分ける。
躊躇うのは当然ではあったが、その臆した心は何処かへとおいやった。
逆境であっても前を見据えろ。自分らしさを忘れることなかれ。
此処で自分で見つけた答えを否定するようでは───
男じゃねえ!!
「限界まで、飛ばすぜ! フェザー!!」
フェザーが身を挺したことで彼は生きながらえた。
何処か自分とそっくりだったが、自分以上に熱い奴。
これはフェザーのお陰で使える。だったら、共に歩まずしてどうする。
あいつのような真っすぐな志と共に歩んで見せよう。
彼のお陰での手元に残った、これと一緒に。
何処か自分とそっくりだったが、自分以上に熱い奴。
これはフェザーのお陰で使える。だったら、共に歩まずしてどうする。
あいつのような真っすぐな志と共に歩んで見せよう。
彼のお陰での手元に残った、これと一緒に。
『ああ! 叫ぼうぜロック!! 熱い魂でなッ!!』
死んだ人間は戻らない。目の前に過去の亡霊がいるが、
それは例外だ。少なくとも、此処にフェザーはいない。
だからいま聞こえたそれは恐らくは気のせいだろうと。
そう思いながらも彼のように熱く、同時に騒々しく叫ぼうではないかと。
その剣の、鎧の名を使うべく鍵をとなる剣を突き立てる。
それは例外だ。少なくとも、此処にフェザーはいない。
だからいま聞こえたそれは恐らくは気のせいだろうと。
そう思いながらも彼のように熱く、同時に騒々しく叫ぼうではないかと。
その剣の、鎧の名を使うべく鍵をとなる剣を突き立てる。
「インクルシオオオオオオオッ!!」
ロックの背後から鎖と共に白い鎧が姿を現す。
鎧の顔が変化し、凶暴な竜のような姿へ変貌する。
鎧の顔が変化し、凶暴な竜のような姿へ変貌する。
「何だ、その剣……いや、生物は!?」
関心、歓喜、驚嘆。
いずれも含まれるだろう、ギースの声が上がる。
いずれも含まれるだろう、ギースの声が上がる。
悪鬼纏身『インクルシオ』。
パンプキン同様に四十八の帝具の一つであり、
素材となった危険種『タイラント』を素材とした帝具。
身体能力の強化や装甲に覆われる恩恵はあるが、
何よりの特徴としてはこれに尽きるだろう。
パンプキン同様に四十八の帝具の一つであり、
素材となった危険種『タイラント』を素材とした帝具。
身体能力の強化や装甲に覆われる恩恵はあるが、
何よりの特徴としてはこれに尽きるだろう。
「生きているのか、その武器は!」
素材となったタイラントは未だに意思を持ったまま生きていると言うこと。
ロックの身体に合わせて鎧が形を変えていき、更にギースが興味を惹く。
どんな環境でも、どんな世界でも生き抜いたその尋常じゃない生への執着は、
今も尚生命を残しており、使用者の体格に合わせた鎧へと姿を変えていく。
ロックの体を覆うように白い装甲を身に纏った姿を披露することになる。
ロックの身体に合わせて鎧が形を変えていき、更にギースが興味を惹く。
どんな環境でも、どんな世界でも生き抜いたその尋常じゃない生への執着は、
今も尚生命を残しており、使用者の体格に合わせた鎧へと姿を変えていく。
ロックの体を覆うように白い装甲を身に纏った姿を披露することになる。
「ならば、本気を出すしかあるまいな!!」
ヴァンパイアとはまた違った力。
更なる高みを目指すギースにとって、これほどの相手はいない。
まるで好物の料理があることを心待ちにした、子供のような歓喜に満ちている。
相手にとって不足なしと紅茶色の翼を生やし、ヴァンパイア態へと姿を戻す。
更なる高みを目指すギースにとって、これほどの相手はいない。
まるで好物の料理があることを心待ちにした、子供のような歓喜に満ちている。
相手にとって不足なしと紅茶色の翼を生やし、ヴァンパイア態へと姿を戻す。
「行くぜ! ギース・ハワードォ!!」
「来い! ロック・ハワードォ!!」
インクルシオを纏ったシャインナックルと、
羅生門の掌底がぶつかり、周囲へすさまじい衝撃を送る。
具体的に言えば、周辺の窓ガラスが軒並み叩き割れるほどの。
羅生門の掌底がぶつかり、周囲へすさまじい衝撃を送る。
具体的に言えば、周辺の窓ガラスが軒並み叩き割れるほどの。
「……此処では枷があって邪魔だろう、上へ行くぞ。」
近くに転がっているひろしが視界に映る。
折角の戦いだ。ロックの動きを邪魔されては叶わない。
そういう意味でもギースは二人から離れた位置の天井を突き破り、
上の階へと着地して手招きする。
折角の戦いだ。ロックの動きを邪魔されては叶わない。
そういう意味でもギースは二人から離れた位置の天井を突き破り、
上の階へと着地して手招きする。
「ひろし。離れるついででいいから、都古の様子を見てきてくれないか。」
正直この状態で戦闘はとてもじゃないが無理だ。
援護とかそういうのは無理をさせたくないが、
都古が共倒れで動けなくなってる可能性だってある。
そういう時の為に任せておきたい。
援護とかそういうのは無理をさせたくないが、
都古が共倒れで動けなくなってる可能性だってある。
そういう時の為に任せておきたい。
「お、おう……任せて、くれ。」
手の痛みはなく、涙も止まらない頼りない姿だが、
ロックだって血の繋がった父親と戦おうと覚悟を決めている。
少しは大人らしく、引きつり気味だが笑顔と残された手でサムズアップをする。
包帯で止血だけしてもらった後、ロックは上の階へと向かう。
意識を持って行かれそうな痛みに耐えながら、ひろしもゆっくりと歩き出した。
二階へ向かえば、ロックから離れた位置でギースは腕を組んで立つ。
ロックが姿を見せた瞬間、ギースは再び手招きをする。
ロックだって血の繋がった父親と戦おうと覚悟を決めている。
少しは大人らしく、引きつり気味だが笑顔と残された手でサムズアップをする。
包帯で止血だけしてもらった後、ロックは上の階へと向かう。
意識を持って行かれそうな痛みに耐えながら、ひろしもゆっくりと歩き出した。
二階へ向かえば、ロックから離れた位置でギースは腕を組んで立つ。
ロックが姿を見せた瞬間、ギースは再び手招きをする。
「Come On Young Boy(かかってこい、小僧)。」
その一言がラウンドコールの合図だ。
「疾風拳!」
空を舞いながら大量の疾風拳を放つ。
一発一発が人並みの巨大さを誇りながら、
弾幕に等しい程に放ってくる姿は最早流星群。
それを、ロックは防ぐか払いながら前進する。
一発一発が人並みの巨大さを誇りながら、
弾幕に等しい程に放ってくる姿は最早流星群。
それを、ロックは防ぐか払いながら前進する。
「ダンクッ!!」
背後へ滑り込むように回り込むと同時に跳躍。
白き鎧に身を包んだ鉄拳のパワーダンクが迫り、
白き鎧に身を包んだ鉄拳のパワーダンクが迫り、
「フンッ!」
背後へ振り返りながら、
雷光回し蹴りの要領での蹴りが相殺する。
相殺とは言うが急な対応に威力が弱まったからか、
ぶつけ合ったギースの足から軽く血が噴き出す。
雷光回し蹴りの要領での蹴りが相殺する。
相殺とは言うが急な対応に威力が弱まったからか、
ぶつけ合ったギースの足から軽く血が噴き出す。
「期待外れと言ったことは訂正するべきだな。」
確かに先程のギースの攻撃を受けてはならなかったが、
今はこうしてある程度の拮抗していることから、
底上げされた力を見れば一目瞭然。
今はこうしてある程度の拮抗していることから、
底上げされた力を見れば一目瞭然。
「だが! 期待通りと呼ぶには程遠い!」
あくまで拮抗しているだけ。
たかだか小技が互角程度でなんだと言うのか。
それを越えてようやく期待通りの実力と言う物だ。
空を飛べる都合、滞空して維持できるギースは掌底を放つ。
インクルシオと言えども別の結末のように、成長しない限り翼はない。
必然的に落ちるだけのロックが防御に回るのは自明の理。
……だが。
たかだか小技が互角程度でなんだと言うのか。
それを越えてようやく期待通りの実力と言う物だ。
空を飛べる都合、滞空して維持できるギースは掌底を放つ。
インクルシオと言えども別の結末のように、成長しない限り翼はない。
必然的に落ちるだけのロックが防御に回るのは自明の理。
……だが。
「ハッ!」
その掌底を両腕で受け止める。
ヴァンパイアともなればただの掌底でもクレーターを作れるものだが、
受け止めた手を軸に、反動の勢いでロックは高跳びのように飛び上がった。
ヴァンパイアともなればただの掌底でもクレーターを作れるものだが、
受け止めた手を軸に、反動の勢いでロックは高跳びのように飛び上がった。
「この立ち回りは、当て身投げ───!」
「カウンター戦術がアンタの特権だけとは思うなよ!」
ギースの当て身投げ、テリーのクラックシュート。
双方の技を組み合わせたロックの技、クラックカウンター。
帝具で底上げされた身体能力は通常ならあり得ない動きを可能とする。
頭部を叩き潰す勢いでかかと落としが決まり、ギースは地面へと落下。
二階の床を破壊し、勢いは止まらず一階へと戻されるように落ちる。
想像以上の攻撃力に、ロックは逃げ遅れてないかとひろしを心配するが、
病院の玄関口をゆっくりと歩く姿は見えたので、無事であることは確認した。
双方の技を組み合わせたロックの技、クラックカウンター。
帝具で底上げされた身体能力は通常ならあり得ない動きを可能とする。
頭部を叩き潰す勢いでかかと落としが決まり、ギースは地面へと落下。
二階の床を破壊し、勢いは止まらず一階へと戻されるように落ちる。
想像以上の攻撃力に、ロックは逃げ遅れてないかとひろしを心配するが、
病院の玄関口をゆっくりと歩く姿は見えたので、無事であることは確認した。
「ハッハッハッハッハ!!」
瓦礫を吹き飛ばす勢いでギースは笑いながら舞う。
顔は潰れかけながらも再生している異様な光景に、
改めて人間をやめてしまったことを実感させられるが、
当然ながらそれを長々と見ている暇などない。
顔は潰れかけながらも再生している異様な光景に、
改めて人間をやめてしまったことを実感させられるが、
当然ながらそれを長々と見ている暇などない。
「Razing Storm!」
急降下ダイブするギースをバックステップで避ける。
着地と同時に赤黒い複数の柱が床から天高く隆起し、
それに耐えきれなかった床が崩落しながら周囲を破壊していく。
災厄が形を成して歩いてきたと言わんばかりの攻撃だ。
当たればどうなるかを想像したくない。鎧を貫通しかねない。
着地と同時に赤黒い複数の柱が床から天高く隆起し、
それに耐えきれなかった床が崩落しながら周囲を破壊していく。
災厄が形を成して歩いてきたと言わんばかりの攻撃だ。
当たればどうなるかを想像したくない。鎧を貫通しかねない。
「だが弱点はこの状況だと見え見えなんだよ!」
二階から跳躍して更に天井を蹴って、同じような急降下。
ただギースと違って重力に沿った形での垂直落下だ。
レイジングストームは二種類の内、周囲に柱を出すドームのタイプは、
ロックが出すタイプのものではないので今初めて見たがすぐに理解した。
前後左右から攻撃が出ては、誰だって近づくことは叶わないだろう。
いかにテリーと言えどもこの柱の壁を突破するのは至難だと。
ただギースと違って重力に沿った形での垂直落下だ。
レイジングストームは二種類の内、周囲に柱を出すドームのタイプは、
ロックが出すタイプのものではないので今初めて見たがすぐに理解した。
前後左右から攻撃が出ては、誰だって近づくことは叶わないだろう。
いかにテリーと言えどもこの柱の壁を突破するのは至難だと。
でもこの特異な状況なら突破は可能だ。
ドーム状は真上にのみ殆ど攻撃が届かない。
真上まで飛ばなければならないので並みの格闘家では、
届くこともないので事実上の弱点のない攻撃も、今だけは例外だ。
空中で地面に向けて肘打ちのハードエッジを放つ。
ドーム状は真上にのみ殆ど攻撃が届かない。
真上まで飛ばなければならないので並みの格闘家では、
届くこともないので事実上の弱点のない攻撃も、今だけは例外だ。
空中で地面に向けて肘打ちのハードエッジを放つ。
「弱点だと? 対応できるものを弱点と呼ぶか!」
地面に手を付けた手を即座に引き上げて回転させ、
「羅生門!!」
レイジングストームで放出させるつもりだった力で、
上から迫るロックへと羅生門の締めの掌底を上方向に叩き込む。
上から迫るロックへと羅生門の締めの掌底を上方向に叩き込む。
「ゴッ───!!」
グランシャリオと違い インクルシオは空中の機動力はない。
回避行動はとれず、そのまま叩き返されて次々と天井を突き破り、
最終的に屋上の床さえも破壊しながら吹き飛ばされる。
回避行動はとれず、そのまま叩き返されて次々と天井を突き破り、
最終的に屋上の床さえも破壊しながら吹き飛ばされる。
「どうした! 羅生門一つで沈めば、あの小娘以下と言うことだぞ!」
空高く舞うロックへ追撃の為飛翔。
「勝手に沈んだと思ってるんじゃ、ねえ!!」
迫るギースへと再び咄嗟ではあるが疾風拳を放つ。
先程よりも洗練されたのか、落下し始めたのを反動で再び飛ぶことになる。
無論、その攻撃はギースは難なく防ぐ。
先程よりも洗練されたのか、落下し始めたのを反動で再び飛ぶことになる。
無論、その攻撃はギースは難なく防ぐ。
「疾風拳も様になってきたな。咄嗟に出すことがコツ、
と言うのを身に染みて知る以上は納得と言えば納得か。」
と言うのを身に染みて知る以上は納得と言えば納得か。」
元々タワーからの落下を回避するために放った烈風拳が、
まさかの生存に繋がったことで編み出されたのが疾風拳。
そこを考えれば、危機的状況がこの技を鍛えるのだろうか。
まさかの生存に繋がったことで編み出されたのが疾風拳。
そこを考えれば、危機的状況がこの技を鍛えるのだろうか。
「勝手に言ってやがれ! おりゃぁッ!!」
再びロックが構えるのはシャインナックル。
重力に物を言わせたその一撃にギースも呆れてしまう。
重力に物を言わせたその一撃にギースも呆れてしまう。
「だから、たかがバーンナックル如き───ガッ!?」
故に油断した。ギースの顔面には、
直ぐに来るとは思わなかったロックの拳が既にめり込み、血を吹き出す。
疾風拳は落下の勢いを止める。それだけの反動が伴うと言うことは、だ。
直ぐに来るとは思わなかったロックの拳が既にめり込み、血を吹き出す。
疾風拳は落下の勢いを止める。それだけの反動が伴うと言うことは、だ。
「たかが、なんだって? 教えてもらうぜ!!」
・・・・・・・・・・・・・・・
前進の為にも使えるのではないか? と。
ロックは考えた。ギースにも、テリーにも、ましてや本来のロックにさえない、
『疾風拳を加速装置の扱いをして速度を上げたシャインナックル』なんて技は、
オロチの存在する世界でも、異世界で夢想する世界でも、基本の世界線のどこにも。
屋上に叩きつけられたギースは、反動て大きく跳ねて空を舞う。
前進の為にも使えるのではないか? と。
ロックは考えた。ギースにも、テリーにも、ましてや本来のロックにさえない、
『疾風拳を加速装置の扱いをして速度を上げたシャインナックル』なんて技は、
オロチの存在する世界でも、異世界で夢想する世界でも、基本の世界線のどこにも。
屋上に叩きつけられたギースは、反動て大きく跳ねて空を舞う。
「咄嗟に出すことがコツ、って言ったよなぁ!」
拳を離せば、横へ回転するような形でのクラックシュート。
再び疾風拳を後方へ放ったことで、独楽のような高速回転の蹴りだが、
再び疾風拳を後方へ放ったことで、独楽のような高速回転の蹴りだが、
「それでも、使いこなせてないぞ!」
所詮はまぐれによる即席のもの。
慣れれば洗練された一撃だろうが、
今の彼は覚えたばかりの疾風拳では精度が悪い。
だから先程のような勢いはつけられずに止められる。
ギースの当て身投げが決まり、地上へと叩きつけるように投げ落とされた。
屋上の床へと同じように叩きつけられる。
慣れれば洗練された一撃だろうが、
今の彼は覚えたばかりの疾風拳では精度が悪い。
だから先程のような勢いはつけられずに止められる。
ギースの当て身投げが決まり、地上へと叩きつけるように投げ落とされた。
屋上の床へと同じように叩きつけられる。
「不動拳!」
バーンナックルのような突進しながらの正拳突き。
横へ転がって回避し、先程いた場所は亀裂を作る。
すぐさま起き上がりハイキックを側頭部へと叩き込むが、
空いてる手による裏拳で容易く相殺される。
横へ転がって回避し、先程いた場所は亀裂を作る。
すぐさま起き上がりハイキックを側頭部へと叩き込むが、
空いてる手による裏拳で容易く相殺される。
(ヴァンパイアになっちまったからとか、
そういうのじゃあない。この男は元からこうなんだ。
格闘家としてのセンスがずば抜けて高い。だから、強い!)
そういうのじゃあない。この男は元からこうなんだ。
格闘家としてのセンスがずば抜けて高い。だから、強い!)
改めてギースの強大さを思い知らされる。
テリーが十年の修業を経てようやく勝てた相手。
まさにサウスタウンを牛耳っていた首領(ドン)なのだと。
テリーが十年の修業を経てようやく勝てた相手。
まさにサウスタウンを牛耳っていた首領(ドン)なのだと。
「だからって、負けられねえ!!」
折れるか。折れてたまるか。
何処までも足掻いてやると決めた。
だったら有言実行。その言葉を胸に彼は戦う。
何処までも足掻いてやると決めた。
だったら有言実行。その言葉を胸に彼は戦う。
「邪影拳!」
距離を取るとギースのショルダータックルに対して、
何度目か忘れた突進技である肘内のハードエッジで応戦する。
受け止めることは成功したものの、ミシリとロックの肘から嫌な音が軋む。
何度目か忘れた突進技である肘内のハードエッジで応戦する。
受け止めることは成功したものの、ミシリとロックの肘から嫌な音が軋む。
「ッ!!」
そのまま邪影拳の流れの如く掴まれそうになり、
掴まれる寸前に手を離してレイジングストームを放つ。
レイジングストームとは言うが、殆ど手に力をためてない状態。
威力は本来のと比べるまでもないが、インクルシオのお陰で引き上げられ、
少なくともギースにとっても素で受けるような軟弱な攻撃ではなくなっている。
すぐさま距離を取るように空中へ出てレイジングストームが終われば、
掴まれる寸前に手を離してレイジングストームを放つ。
レイジングストームとは言うが、殆ど手に力をためてない状態。
威力は本来のと比べるまでもないが、インクルシオのお陰で引き上げられ、
少なくともギースにとっても素で受けるような軟弱な攻撃ではなくなっている。
すぐさま距離を取るように空中へ出てレイジングストームが終われば、
「雷轟烈風拳ッ!!」
疾風拳の要領で雷轟烈風拳を、
この場合は『雷轟疾風拳』と呼ぶべきだろうか。
ロックもギースの血を引き継いでいるが故の疾風拳の亜種が編み出せるなら、
ギースもまた戦いの中で新たな道を体得するのはそう難しい話ではない。
互いに、本来のあるべき道から外れた辺獄の舞台において、
別の力を得たが故の産物だろうか。
この場合は『雷轟疾風拳』と呼ぶべきだろうか。
ロックもギースの血を引き継いでいるが故の疾風拳の亜種が編み出せるなら、
ギースもまた戦いの中で新たな道を体得するのはそう難しい話ではない。
互いに、本来のあるべき道から外れた辺獄の舞台において、
別の力を得たが故の産物だろうか。
弾丸よりもはるかに速い速度で飛んだ雷撃に回避は間に合わない。
全身を痺れさせる一撃に、すぐに動くことは叶わず続けてギースが先を行く。
全身を痺れさせる一撃に、すぐに動くことは叶わず続けてギースが先を行く。
「デェイ!」
そのまま飛びながら薙ぎ払う飛翔日輪斬。
文字通り斬撃に等しい一撃を前にすんでのところで屈む。
そこからライジングタックルによる蹴りが彼の下顎を蹴り飛ばす。
とは言えこのインクルシオは帝具アドラメレクを受けて電撃の耐性があり、
ロック自身が慣れれば即座に対応できるようになっていた。
顎骨が砕けながら肉体から吹き飛ぶが、その程度今となっては些末事に過ぎない。
空中で受け身を取った後、荒れに荒れた屋上へと降りる。
顎が形だけ再生し、地面を砕きながら踏み込んだギースからの二段回し蹴り。
迫る破壊の一撃をガードすることで多少の痛みと痺れに留める。
文字通り斬撃に等しい一撃を前にすんでのところで屈む。
そこからライジングタックルによる蹴りが彼の下顎を蹴り飛ばす。
とは言えこのインクルシオは帝具アドラメレクを受けて電撃の耐性があり、
ロック自身が慣れれば即座に対応できるようになっていた。
顎骨が砕けながら肉体から吹き飛ぶが、その程度今となっては些末事に過ぎない。
空中で受け身を取った後、荒れに荒れた屋上へと降りる。
顎が形だけ再生し、地面を砕きながら踏み込んだギースからの二段回し蹴り。
迫る破壊の一撃をガードすることで多少の痛みと痺れに留める。
「その程度がガードと思うな!」
続けて鋭い突くような蹴りを連続して叩き込む。
天倒殺活二段蹴りも、ヴァンパイアとなっては三段四段以上の蹴りを放つ。
全てが暴威となる蹴りをガードしきれるほど鎧の中の人間は頑丈ではない。
サイドステップから右ストレートを狙うが、空いている手を見て中断。
天倒殺活二段蹴りも、ヴァンパイアとなっては三段四段以上の蹴りを放つ。
全てが暴威となる蹴りをガードしきれるほど鎧の中の人間は頑丈ではない。
サイドステップから右ストレートを狙うが、空いている手を見て中断。
「良い判断だな。」
「ッ、ダブル烈風拳!」
わざと隙を作って当て身投げを狙ってる。
すんででそれに気づき距離を取って烈風拳に烈風拳を重ねた飛び道具を放つ。
烈風拳は重ね掛けすることで強化されるもので、ギースもこれと同じものがある。
すんででそれに気づき距離を取って烈風拳に烈風拳を重ねた飛び道具を放つ。
烈風拳は重ね掛けすることで強化されるもので、ギースもこれと同じものがある。
「温い!!」
ただし、上位種が彼にはあるのだが。
迫るダブル烈風拳に、同じどころか倍以上の烈風拳を重ねるギース。
流石に距離や向こうの攻撃の都合本来の技、虚空烈風斬程のチャージはできなかったが、
ダブル程度など余裕で蹴散らせるだけの威力と加速を誇り、台風が如き一撃が迫る。
横へ転がるように回避することで、辛うじて難を逃れる。
迫るダブル烈風拳に、同じどころか倍以上の烈風拳を重ねるギース。
流石に距離や向こうの攻撃の都合本来の技、虚空烈風斬程のチャージはできなかったが、
ダブル程度など余裕で蹴散らせるだけの威力と加速を誇り、台風が如き一撃が迫る。
横へ転がるように回避することで、辛うじて難を逃れる。
「烈風拳ッ!」
勢いで起き上がると続けざまに、斬撃のような烈風拳。
エレンにも使った短距離タイプのものだ。
即座にパワーダンクの要領で跳躍し、拳を叩き込む。
アッパーカットがぶつかり合うことで、相殺される。
エレンにも使った短距離タイプのものだ。
即座にパワーダンクの要領で跳躍し、拳を叩き込む。
アッパーカットがぶつかり合うことで、相殺される。
(これ以上長引かせたら回復がある以上、負ける!)
荒れ果て、足の踏み場も減ってきた屋上で、二人は距離を取る。
ロックの方は肩で息をしてるが、ギースの方も疲弊はしてるがロックよりはましだ。
借り物の力であるが、現状病院の最高戦力はインクルシオのある自分になる。
此処で負けたら病院にいる五名の仲間は皆殺しが確定する。
だから此処で倒すか、最悪相討ちにでも持ち込みたい。
インクルシオの時間もそう長くはもたない以上、決めに行くしかない。
ロックの方は肩で息をしてるが、ギースの方も疲弊はしてるがロックよりはましだ。
借り物の力であるが、現状病院の最高戦力はインクルシオのある自分になる。
此処で負けたら病院にいる五名の仲間は皆殺しが確定する。
だから此処で倒すか、最悪相討ちにでも持ち込みたい。
インクルシオの時間もそう長くはもたない以上、決めに行くしかない。
(けど、どうやる!?)
しかし勝負を決めようにも、彼の大技はデッドリーレイブかレイジングストームと、
素の状態でもどうしてもギースの方が上回っていると言ってもいいぐらいのものだ。
勝負を決めに行くには余りにも役者不足。だったらシャインナックルだけが頼りになるが、
最初はかすり傷、次はやけくそで防がれ三度目も防がれ、四度目は当たったが不意打ちだ。
この攻撃に希望を見出すのは、とてもできない話だ。
素の状態でもどうしてもギースの方が上回っていると言ってもいいぐらいのものだ。
勝負を決めに行くには余りにも役者不足。だったらシャインナックルだけが頼りになるが、
最初はかすり傷、次はやけくそで防がれ三度目も防がれ、四度目は当たったが不意打ちだ。
この攻撃に希望を見出すのは、とてもできない話だ。
(いや、違う。)
ないなら、今ここでそれを乗り越えろ。
自分らしさを貫く、それが餓狼であるのであれば。
何処まで逆境に追い込まれようとも、活路を見出して足掻く。
熱いだけでは、生き残れない。
自分らしさを貫く、それが餓狼であるのであれば。
何処まで逆境に追い込まれようとも、活路を見出して足掻く。
熱いだけでは、生き残れない。
「ウオオオオオオオオオッ!!」
距離を縮めてレイジランによる消失。
「くどい!」
背後に回り込んだのは容易に想像がつく。
振り向きながら掴もうとするが、ロックの姿がなく盛大に外す。
否、確かにロックは背後にいた。ただし、ギースの間合いから外れた位置で。
背後に移動した後、ロックはあえて距離を取った。ギースならそうするだろうと、
予想したことでできた隙に拳を構え、突撃する。
彼が選んだ行動は、シャインナックルと同じ攻撃の動き。
振り向きながら掴もうとするが、ロックの姿がなく盛大に外す。
否、確かにロックは背後にいた。ただし、ギースの間合いから外れた位置で。
背後に移動した後、ロックはあえて距離を取った。ギースならそうするだろうと、
予想したことでできた隙に拳を構え、突撃する。
彼が選んだ行動は、シャインナックルと同じ攻撃の動き。
「来るか!」
気配で悟った。これは奴の最大の技が来ると。
迫るロックを前に、両手にオーラを纏わせ構えるギース。
彼が狙うのはレイジングデッドエンド。当て身投げで相手を受け止め、
羅生門の要領で相手を投げ、掌底の代わりに虚空烈風斬を叩き込む。
まさに最終奥義とも言うべき、トリを飾る一撃で仕留めるのが相応しいと。
迫るロックを前に、両手にオーラを纏わせ構えるギース。
彼が狙うのはレイジングデッドエンド。当て身投げで相手を受け止め、
羅生門の要領で相手を投げ、掌底の代わりに虚空烈風斬を叩き込む。
まさに最終奥義とも言うべき、トリを飾る一撃で仕留めるのが相応しいと。
「ふん、テリーのバーンナックルの真似事如きで、私に挑むのか!」
しかしその内容は呆れ気味だ。
バーンナックルでは当然勝てない。
彼の大技のシャインナックルでも届かない。
餓えた狼が集いしサウスタウンで戦ったテリーとは違う。
どうあがいても足りない、埋めることはできない。彼を越えられない。
別に超えたいわけではないが、彼を越えねばこの男を倒すことはできない。
バーンナックルでは当然勝てない。
彼の大技のシャインナックルでも届かない。
餓えた狼が集いしサウスタウンで戦ったテリーとは違う。
どうあがいても足りない、埋めることはできない。彼を越えられない。
別に超えたいわけではないが、彼を越えねばこの男を倒すことはできない。
「いいや! それには先がある!」
だから此処で越えなければならない。
限界を超えろ。その身に纏ったそれと共に。
果てなき道を突き進む。魂を込めた怒りの拳を叩きつけろ。
限界を超えろ。その身に纏ったそれと共に。
果てなき道を突き進む。魂を込めた怒りの拳を叩きつけろ。
「テリーはもう、アンタの知ってるテリーじゃない!
あいつは伝説の狼になって確かに十年の月日は流れたが、
拳は錆びついてなんかいなかった……寧ろ進化していた!」
あいつは伝説の狼になって確かに十年の月日は流れたが、
拳は錆びついてなんかいなかった……寧ろ進化していた!」
カインが開いた十年ぶりのKOF準決勝。
勝ち上がってきたロックを待っていた対戦相手はテリー・ボガード。
伝説の狼を相手に白星を取ったことについては、彼自身も疑いたくなった。
勝ち上がってきたロックを待っていた対戦相手はテリー・ボガード。
伝説の狼を相手に白星を取ったことについては、彼自身も疑いたくなった。
「俺にはアンタを倒したテリーになんかなれやしない……けど!
俺はテリーのその背を追う! 十年経った先にあるのは、バーンナックルじゃないんだよ!!」
俺はテリーのその背を追う! 十年経った先にあるのは、バーンナックルじゃないんだよ!!」
だからと言って、テリーが錆びついただなんて思ってはいない。
彼にとってもテリーはサウスタウンのヒーローだ。だから憧れる部分もある。
ヒーローに憧れた憧憬からか、彼の力を借りたいと言う不安からか。
或いはどちらもあったからかもしれないが、この言葉を呟く。
彼にとってもテリーはサウスタウンのヒーローだ。だから憧れる部分もある。
ヒーローに憧れた憧憬からか、彼の力を借りたいと言う不安からか。
或いはどちらもあったからかもしれないが、この言葉を呟く。
「Are you OK?(覚悟はいいな?)」
『Are you OK?』
『Are you OK?』
「!?」
ギースは一瞬だけ見間違えた。
ロックの姿がよく知った、赤いキャップ帽を被った金髪の青年に。
父の仇を討つために自分を追い続けた癖に、最後は手を伸ばそうとしたあの男を。
ロックの姿がよく知った、赤いキャップ帽を被った金髪の青年に。
父の仇を討つために自分を追い続けた癖に、最後は手を伸ばそうとしたあの男を。
「テリー・ボガ───」
因縁の男の名前を紡ぐ前に、
ロックの拳が迫ってそれを受け止める。
であれば当然投げによるカウンターで決着。
そうなると筈だと、少なくともギースは思っていた。
威力が、尋常じゃなく強い。受け止めたはずだが、
屋上の床を削りながら後退を余儀なくされるほどの勢い。
下手に投げようとすればそのまま拳が直撃しかねない程の重みがある。
ロックの拳が迫ってそれを受け止める。
であれば当然投げによるカウンターで決着。
そうなると筈だと、少なくともギースは思っていた。
威力が、尋常じゃなく強い。受け止めたはずだが、
屋上の床を削りながら後退を余儀なくされるほどの勢い。
下手に投げようとすればそのまま拳が直撃しかねない程の重みがある。
「バスタアアアアア───!!」
テリーと言えばパワーゲイザーをアレンジした技が殆どだ。
だがあれから十年の時が過ぎた。ギースの知らないテリーもいる。
彼を超えるにはこれしかない。シャインナックルを超えた一撃を、
今のテリーの最大の技の一つ『バスターウルフ』をやるしかないと。
ロックはバスターウルフは使えない。十年の月日を経て昇華した技、
いわば年季の問題である以上は、若き餓狼には使えるわけがなかった。
だからこれはバスターウルフの名前を借りた別の技に近い。
砕けた言い方をすれば、なんちゃってバスターウルフのようなもの。
だがあれから十年の時が過ぎた。ギースの知らないテリーもいる。
彼を超えるにはこれしかない。シャインナックルを超えた一撃を、
今のテリーの最大の技の一つ『バスターウルフ』をやるしかないと。
ロックはバスターウルフは使えない。十年の月日を経て昇華した技、
いわば年季の問題である以上は、若き餓狼には使えるわけがなかった。
だからこれはバスターウルフの名前を借りた別の技に近い。
砕けた言い方をすれば、なんちゃってバスターウルフのようなもの。
───しかし。インクルシオによる能力の引き上げは限界を超える。
使用者の意志に応えて成長する、死してなおも意志が残り共にある帝具。
これがテリー直伝のバスターウルフではないとしても、
テリーのバスターウルフに完全に劣るわけではない。
使用者の意志に応えて成長する、死してなおも意志が残り共にある帝具。
これがテリー直伝のバスターウルフではないとしても、
テリーのバスターウルフに完全に劣るわけではない。
「ヌグゥゥゥ……!!」
しかし相手は吸血鬼となったあのギース・ハワード。
易々と攻撃を突破させられるようなら彼は負けている。
とは言うが、血管ですら数本は千切れそうな修羅が如き形相、
いや実際に腕の血管がちぎれていたるところで血を吹き出しつつ抑えようとする。
今まで受けてきた技の中で間違いなく最大の威力を肌で感じ取れた。
此処で受け止めれたことを僅かながら奇跡と思うほどに。
易々と攻撃を突破させられるようなら彼は負けている。
とは言うが、血管ですら数本は千切れそうな修羅が如き形相、
いや実際に腕の血管がちぎれていたるところで血を吹き出しつつ抑えようとする。
今まで受けてきた技の中で間違いなく最大の威力を肌で感じ取れた。
此処で受け止めれたことを僅かながら奇跡と思うほどに。
(限界まで飛ばすな!! 限界を超えろ、ロック・ボガードオオオオオッ!!!)
鎧の中ではロックもギース同様に腕が耐えきれず皮膚が避け、血が噴き出す。
歯を砕きかねない程に食いしばり、この一撃を叩き込まんとする。
ついに二人の攻防に耐え切れず、床が崩落して互いに投げ出される。
床が崩落したとなれば、当然飛べる方のギースが有利だ。
歯を砕きかねない程に食いしばり、この一撃を叩き込まんとする。
ついに二人の攻防に耐え切れず、床が崩落して互いに投げ出される。
床が崩落したとなれば、当然飛べる方のギースが有利だ。
本来、バスターウルフはまずストレートを叩き込み、
その後片腕を抑えて狙いを定める、と言う形を取っている。
例えるならばパイルバンカーみたいなものと呼ぶべきだろうか。
しかし、このロックはまだ殴る途中で叩き込めてない───
その後片腕を抑えて狙いを定める、と言う形を取っている。
例えるならばパイルバンカーみたいなものと呼ぶべきだろうか。
しかし、このロックはまだ殴る途中で叩き込めてない───
では、本来添えるはずの片手はどこで何をしている?
「アアアアアアアアアアッ!!」
空中に放り出された瞬間、疾風拳を後方へと持てる力を全力で放つ。
死ねないと言う、ありふれた生存欲と言ういつかのギースと同じ状況だからか。
今までで一番、勢いのある疾風拳が後方へと放たれて、今までで一番加速する。
その加速で後押しされたことで、ついに拮抗が崩れた。
止めていた拳を弾き飛ばし、胸元に拳が吸い込まれるように届く。
そのまま胴体を抉り、背中にまで貫通する。
死ねないと言う、ありふれた生存欲と言ういつかのギースと同じ状況だからか。
今までで一番、勢いのある疾風拳が後方へと放たれて、今までで一番加速する。
その加速で後押しされたことで、ついに拮抗が崩れた。
止めていた拳を弾き飛ばし、胸元に拳が吸い込まれるように届く。
そのまま胴体を抉り、背中にまで貫通する。
「ゴフッ───」
「ウルフッッ!!!!!」
拳が到達と同時に、ありったけの叫びと共に気を爆発させる。
鼓膜を突き破るかのような爆音が響きながら、ついにギースに炸裂した。
爆発の勢いでギースはロックを置いて、尋常じゃない速度で飛ぶ。
病室の壁を何度も破壊し、そのまま病院から出ていくように飛んでいく。
当然ながらそれだけ吹き飛べば、もう肉眼で判断できる領域を超えてる。
すぐさまロックは飛んで行ったギースを追いかけ、半壊しかけた病院を後にした。
鼓膜を突き破るかのような爆音が響きながら、ついにギースに炸裂した。
爆発の勢いでギースはロックを置いて、尋常じゃない速度で飛ぶ。
病室の壁を何度も破壊し、そのまま病院から出ていくように飛んでいく。
当然ながらそれだけ吹き飛べば、もう肉眼で判断できる領域を超えてる。
すぐさまロックは飛んで行ったギースを追いかけ、半壊しかけた病院を後にした。