紳士怪人? ◆gry038wOvE


 ダークザギ──石堀光彦は、暗い森の中でこれからの行動を考える。
 自らの目的は何か? この石堀という名を借りて自らがやろうとしていることとは何か?
 それはウルトラマンの光を西条凪へと回し、闇に縛られた彼女の意思で光を消し去ることである。
 そのために彼女がまだ幼い頃から、あらゆる手段を使ってビーストと関わるように仕向けた。


 その崇高な目的を妨害したのがこの殺し合いである。
 殺し合い……本来、闇の存在であるダークザギとしてはこの宴を楽しむべきであろう。
 殺戮の祭、闇に堕ちる人間たちの姿を楽しむ好機────だが、今は素直に楽しむことさえも難しい。


 名簿には孤門一輝や西条凪、姫矢准や溝呂木眞也の名がある。
 孤門……この男は石堀としてのザギの「仲間」という役職の人間である。石堀にとっては騙しやすい相手でもあった。
 姫矢は現在の光の持主であり、注意して観察したい相手だ。この光が凪へと渡ったときに石堀は動き出す。
 溝呂木は石堀が闇の力を授けた人間のひとりでもある。ダークメフィストとしての姿を持つ彼はおそらく参加者を殺すために動くだろう。
 ──まあ、こいつらはどうにでもなる相手だ。
 一番の問題は凪だ。まだ彼女にはウルトラマンの光が回っていない。


 ────ゆえに、彼女が持つ光を闇に変換してノアを消し去ることもできない。


 だから、自らの生存、そして凪の生存……この二つを両立させるために、今は「加頭を倒す」という手段を取ろうと思っていた。彼が来た時間軸は、まだ石堀光彦としてのダークザギを見せていた頃である。どんな状況であれ、それらしく振舞わなければならない。
 加頭の「報酬」が本当の事ならば、優勝して光を消し去るのも一つの手として考えられるだろう。しかしまだ信憑性があるとはいえない。
 どちらにせよ、自ら手を汚す必要はない。溝呂木が勝手に参加者を殺し尽くしてくれるのはなんとなく想定できる。参加者を減らしてくれるのは有難いことだ。


(支給品は3つか……)


 デイパックを漁れば、支給された武器の数々。
 幸運にも彼に支給された武器は三つもあった。支給される最大の数である。

 一つは、石堀もよく知る「メモレイサー」という携帯電話である。
 この携帯電話によって記憶の欠片を消された人間も多い。このメモレイサーの画面の光を受ければ、ウルトラマンやビーストに関する記憶全てを消してしまうという、石堀にとって都合の良い道具でもあった。
 ナイトレイダーA班だけでなく、メモリーポリスにまで武装の窃盗が及んでいたということか……。
 そういえば加頭という男は、ドーパントなる怪物に変身するガイアメモリという武器まで持っていた。TLTの武器だけでなく、TLTさえ越える武器を持っているということか。

 二つ目は、金属を腐食させる「korrosion弾」とそれを発射するライフルだ。
 石堀はこれがおそらく人体にも有効と見た。弾丸が発射されるスピードと摩擦だけで充分人の体を貫く。
 だが、この弾丸が作られた目的は一体何だろうか……?
 金属を瞬時に錆びさせる弾丸に、どんな意味があるというのだろう。

 三つ目は、「110」というナンバーの書かれたシャンプーである。
 確かに生活が快適になるという利点があるが、石堀は女々しい人間ではない。
 だいたい、シャンプーは民家やホテルから調達できるだろう。なぜ武器として支給されたのだろうか。


(ガイアメモリという武器はないか……だが、メモレイサーは使える)


 メモリーポリスに所属しているわけではないが、メモレイサーを扱うのはそんなに難しいことではない。石堀にとってもかなり使える道具だとと感じた。
 石堀にとって都合の悪い記憶は大概ウルトラマンやビーストに関わる事であるため、これを私用で使うことができるのはやりやすい。
 場合によっては孤門や姫矢の記憶を消すことにもなるだろう。


(……加頭は俺の正体に気づいているのだろうか。いや、どちらにせよ迂闊な真似はできない。まだ『石堀光彦』を続けた方が良さそうだな……)


 その時、石堀の目に丁度一人の少女の姿が留まった。
 ナイトレイダーの班員・石堀光彦ならば、こんな場所に放り出された少女を見捨てるか?
 確かにナイトレイダーの職務は人の命を護ることではないが、一応「見て見ぬフリ」を孤門あたりに見られると厄介だ。それに、今人間になりすましている石堀は、「人の道」とやらを表向き貫かなければならない。

 よって、今はあの少女を保護だ。
 人間の信用を得るのはダークザギの得意分野────それは、この場においても変わらない。



★ ★ ★ ★ ★



「私、堪忍袋の緒が切れました!」


 いきなりこの台詞を吐いたのはキュアブロッサム──花咲つぼみである。
 確かにクモジャキーはプリキュアの敵の一人であった。
 だが、その命をあんなにも粗末に奪い、まるで人々を殺し合わせるための見せしめのように使う加頭はクモジャキーなんかよりも、もっと許せない。
 他にも二人、あの場で「首輪の効力を教える」ためだけに殺されている。
 NEVER、テッカマンなどと呼ばれていたが、彼らが何者なのかはわからない。知っているのは、砂漠の使徒だけである。それと同じく、この二つ何かの団体名・組織名だろうか?


「私の友達まで巻き込んで……加頭さん、絶対に許しません! 誰も死なずにこの殺し合いを終えてみせます!」


 ドーパントという怪物に変身する加頭──その姿にはつぼみも強い恐怖を抱いた。
 あれはガイアメモリという道具によって人間が変身するようだったが、あの異形は人のものとは思えない。
 彼に立ち向かう──それには強い勇気が必要だった。


 来海えりか、明堂院いつき、月影ゆり……仲間たちがいれば、もっと勇気が出るかもしれない。
 確かに友達が巻き込まれたことは悲しむべきことだった。しかし、加頭を倒すという目的においては心強い。
 ここにいてくれたのは嬉しい。
 ただ、ガイアメモリがあらゆる人に支給されている以上、プリキュアであろうと彼女たちに生きて会えるという可能性は────


(…………いえ! きっとみんな生きてます! えりか、いつき、ゆりさん……無事でいてください!)


 悲観的になってはならない。そのネガティブがいけないのだ。
 つぼみは長い時間をかけて変わった。だからもう弱い自分ではいたくない。
 四人のプリキュアで力を合わせて加頭を倒す。そして、元の日常に帰るのだ。


 …………とはいうものの、つぼみ自身も立場としては微妙であった。
 支給品は鯖ひとつ。何故こんなものが支給されたのかはわからない。そもそも鯖は放っといたら腐るんじゃないか?
 加頭の言ったガイアメモリという道具は入っていなかった。あれはあくまで、アタリ中のアタリらしい。
 支給品には全く恵まれず、このままどうして生きていけばいいのかと溜息をつく。
 迂闊にプリキュアの姿になって周囲に正体を明かすわけにもいかないし……。


「君!」

「ひっ!」


 そんな小さな不安が頭をよぎる中、背後からかけられた声につぼみは驚いた。
 知らない人の声だ。もしかしたらガイアメモリの力で怪物になれて、自分を殺す気の人かもしれない。
 振り向くのを躊躇うくらいに怖かったが、なんとか勇気を振り絞って振り向く。


「驚かせてしまったかな」


 そこにいたのはごく普通の青年の姿。
 ドーパントでなかったことに少しだけ安心を感じたものの、彼がどこの誰だかわからない人間であるために、まだ不安は残る。


「えっと……あなたは……? えっと、こういう時は自分から名乗るのが礼儀ですね! わ、私、花咲つぼみって言います」

「そうか、俺は石堀光彦。まあ、よろしく頼むよ」


 石堀と名乗る男は、つぼみを襲ったり殺そうとしたりする様子がなかった。
 つまりは、最初に出会えたのはドーパントに変身した人間でなく、ちゃんとした優しい人だったということ。
 それで安心して、つぼみは少しずつ調子を取り戻していこうと思った。


「……君も殺し合いをする様子はないか。まあ、その年齢で人殺しなんかになりたくはないだろうからな」

「ていうことは、石堀さんも殺し合いをする気はないんですね! じゃあ私たちは仲間です!」

「仲間?」

「ええ、一緒にこんな事を止める為の仲間です!」


 つぼみはこうして殺し合いをしない人間を最初に見つけたことを幸運に思う。
 プリキュアでなくても、同じ思いを持つ人はみんな仲間だ。
 石堀という大人の男性には、少し心強さも感じる。もっとたくさん人を集めて、加頭を倒すために団結したい……そう思っていた。
 多くの人が集まれば、それだけ良い案も生まれるというものだ。


(なるほど…………使いようもないただの子供のようだな)


 ────石堀のもう一つの思考が始まる。
 やはり彼女はなんということのない、ただの女の子。できて、簡単な料理というところか。
 つまりは石堀にとって不要な存在。
 だが、それゆえにここでは切らない。不要な存在を持ち歩くことは、なぜか人間の世界では「善」らしい。
 これは孤門などと行動するときに逆に好都合か。


「仲間っていえば、俺の仲間もここにいたな。彼らなら君の保護もしてくれると思う」

「そ、そうです! 私の仲間もここにいました!」

「俺の仲間はパンスト太郎っていうヤツと、血祭ドウコクっていうヤツなんだ」

「……え? 随分変わってますね、石堀さんの友達」

「はっはっはっ! 冗談だよ。孤門一輝と西条凪。溝呂木眞也と姫矢准も一応知り合いだ」


 軽い冗談を飛ばし、きょとんとするつぼみをよそに、石堀は自分の仲間の名を紹介した。
 利用している相手に過ぎないのだが、表面上は彼らも仲間だ。ある程度本当の情報を流している。
 間違った情報を与えると孤門や凪と会ったときに面倒だ。
 こういう時、特に自分への信頼が強い詩織がいれば好都合だったが……。


「えっと、私の知り合いは来海えりか、明堂院いつき、月影ゆり、それと…………」


 つぼみも自分の仲間の名前を紹介するが、あるところで口は止まった。
 ダークプリキュアと知り合いであることを言ってはならないと思ったのだ。
 一応、彼女はプリキュアであることを隠して生活している。それで何故ダークプリキュアを知っているのかと問われてしまうだろう。
 逆に石堀もウルトラマンやナイトレイダー、ビーストのことは話してはならないことになっているので、話すのを避けているが……。


「……それだけです」

「何か言いかけたようだが?」

「私の勘違いでした! すみません!」

「……? そうか……」


 と、納得せざるを得ない石堀である。
 まあ、彼女は隠し事が得意そうなタイプではないし、あまり気にするほどのことでもないと思った。
 これで粗方聞くべきことは聞いた。


(あとは、何の手がかりもなしに「仲間」を捜すだけか……)


 彼という存在が危険なのか、或いはそれは心のうちのみに終わり散りゆくのか……。
 怪人と認識される日が来るか、ただの紳士として人々の心に残るか。
 彼自身にもわからなかった。


 ────また、そんな二人の様子を見つめる者がいた。


 彼もまた、怪人でありながら、表の顔は人間──それも東京都知事という特異な男であった。



★ ★ ★ ★ ★


 知っているか!
 東京都知事・黒岩省吾の正体は暗黒騎士ガウザーである。ダークザイドの幹部にして、人間のやり方で日本を征服しようという野心を握っているのだ!


 ────だが、今回はそんな経緯が邪魔して、今ここで彼が堂々と人を殺すことはできなかった。
 東京都知事が人殺し────そんなこと、できるものか。
 表向きは親切な紳士を装っているのだから、東京を東京国として独立させてダークザイドによる侵略をするためには、まだ堂々と殺しをするわけにはいかない。
 無論、邪魔者は容赦なく消す。


 具体的に言うならば、涼村暁とかいうちゃらんぽらんな探偵とかだ。
 どちらにせよ、それは数少ない例外。
 ここにいる参加者はまともに戦い続けて勝てる相手ばかりではない。
 シャンゼリオン、ドーパント、仮面ライダー、NEVER、砂漠の使徒、テッカマン……。
 生命力の強さでは負けないダークザイドを差し置いて、「生命力の強い者を殺せる証明」の対象となった三つの勢力についても気になる。
 とにかく、この六十人余りの参加者を一人で消して勝者となるのは難しいし、効率的ではない。


 東京都知事としてのカリスマ性を用いて、あらゆる人間を仲間に引き入れ、加頭を倒す。
 その方が、生き残って野望を果たすには都合が良い。


 そこで、目の前の二人の男女を引き入れようと考えていたが、彼らがそのために利用できるか否かを思うと、無意味な行動なのではないかと思っていた。
 たとえば、彼らが「ガイアメモリ」を所持していたら……?
 何らかの戦闘でまだ彼らにも使い道ができる。
 黒岩はやはり東京都知事としての信用を落とさないためにも、極力ブラックアウトを避けたいと思っていたのだ。


(奴らを仲間に引き入れるか、どうするか……)


 そして黒岩が出した結論は──────



【1日目/未明 E-4 森】


【石堀光彦@ウルトラマンネクサス】
[状態]:健康
[装備]:Kar98k(korrosion弾8/8)@仮面ライダーSPIRITS
[道具]:支給品一式、メモレイサー@ウルトラマンネクサス、110のシャンプー@らんま1/2
[思考]
基本:今は「石堀光彦」として行動する
1:周囲を利用し、加頭を倒し元の世界に戻る
2:今、凪に死なれると計画が狂う……
3:表面上はつぼみを保護
4:孤門、凪、つぼみの仲間を捜す
5:都合の悪い記憶はメモレイサーで消去する
6:加頭の「願いを叶える」という言葉が信用できるとわかった場合は……
[備考]
※参戦時期は姫矢編の後半ごろ。
※今の彼にダークザギへの変身能力があるかは不明です(原作ではネクサスの光を変換する必要があります)。
※ハトプリ勢の名前を聞きましたが、ダークプリキュアの名前は知りません。


【花咲つぼみ@ハートキャッチプリキュア!】
[状態]:健康、加頭に怒りと恐怖
[装備]:プリキュアの種&ココロパフューム
[道具]:支給品一式、鯖(@超光戦士シャンゼリオン?)
[思考]
基本:殺し合いはさせない!
1:仲間を捜す
2:石堀と一緒に行動する
[備考]
※参戦時期は本編後半(ゆりが仲間になった後)。
※溝呂木眞也の名前を聞きましたが、悪人であることは聞いていません。


【黒岩省吾@超光戦士シャンゼリオン】
[状態]:健康
[装備]:不明
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1~3
[思考]
基本:周囲を利用して加頭を倒す
0:目の前の二人を仲間にするか……?
1:あくまで東京都知事として紳士的に行動する
2:涼村暁との決着をつける
3:人間でもダークザイドでもない存在を警戒
[備考]
※参戦時期は東京都知事になってから東京国皇帝となるまでのどこか。
※NEVER、砂漠の使徒、テッカマンはダークザイドと同等又はそれ以上の生命力の持主と推測しています。




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石堀光彦 Next:血染めのライダーパンチ
花咲つぼみ Next:血染めのライダーパンチ
黒岩省吾 Next:野望のさらにその先へ



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最終更新:2013年03月14日 22:13