その3

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homuhomu_tabetai

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ガコンと軽く振動してから、上に昇っていく感じが足元から伝わってくる。
ついに、ミタキハラカルトと出会える。
どのような場所なのか、少しだけ好奇心が湧き、冷徹な感情に押しつぶされる。
いよいよドアの隙間から光が漏れてきた。この目に焼き付けて、殺して、もう一度戻そう。
そうすればまた…また、優しいまどかと元気なさやかに会える。そう信じたい。

 まどか「ここが、ほ虐場。ほむらちゃんには見せられないけど」

 さやか「古今東西いろいろな拷問道具をほむほむサイズにしたものと、工具や文房具、日常用品みたいな…ありふれた物が置いてあるんだ」

 まどか「えっと…暁美さん、大丈夫?」

目に入ってきた景色は、自分がまだ知らない色で彩られていた。
そこには、カルトらしい狂気に囚われている者は一人もいない。
冷静…とも違う。これは、日常風景なのだ。
ミタキハラの生徒と思しき少年と、その子の知り合いらしい男性が言葉を交わす様を見る。

 少年「あ、こんにちは、○○さん」

 男性「おお、××君。今日は部活とかないのかい?」

 少年「テスト前なんでねー」

 男性「じゃ、こんなとこにいちゃだめじゃないか」

 少年「上で勉強してたんすよ」

声だけで判断しても、彼は普通の少年よりもむしろ活発そうだった。

 男性「だからって降りてきちゃだめだろー」

こちらも、明るい口調で喋る、気さくな学生であった。

 少年「んじゃ、俺、向こうの工具室に行ってなんか取ってきますわ」

 男性「だからー、勉強しなって。ま、俺もラック取ってくるか…久しぶりに」

少年は小さな部屋へとドアを開けて入っていった。男性も、同様に拷問器具を持ち出しに行くようである。
この二人はまともそうだった。しかし、虐待そのものがおかしい行為なのだ。よって、ここにいる時点でまともな人間ではない。
世の中には、人の皮を被って鬼畜の所業をする人間はいくらでもいる。絶対に騙されるものか。

 さやか「ちょっと!暁美さん…暁美さん!て、転校生!」

 ほむら「…!?あ、ご、ごめんなさい。少し惚けてしまったわ」

 まどか「やっぱりきついよね…ごめんね!すぐ戻ろ!」

 ほむら「まだいいわ。ええ、そこまで…しなくてもいい」

 さやか「え…?」

何だろう、この感情は。
少し前まで皆殺しにしてやると息巻いていたのが嘘のようだ。狂気は、ここにはなかった。
本当に、『いつも』の事として皆受け入れているのだろう。私をその日常に引き入れようとしたのは、積極的な行動だったのではないだろうか。
それでも…私は、虐待を許す訳にはいかない。

 ほむら「ねえ、『鹿目さん』。まどまどというのは何なの?」

 まどか「え…でも、いいの?」

 ほむら「ええ。そこまでショックじゃなかったわ」

 さやか「…そういうもんなの?」

二人とも拍子抜けしたような顔をして、体裁が悪そうに笑う。まるで、けんかが双方の同時の謝罪で突然終わったかのように。



中に入ると、手縫いの頭巾を被った女性が近くでまどまどを虐待していたので、そちらを見させていただく。
昭和からタイムスリップしてきたのかと聞きたかったが、おそらく、昭和でも似たような風景が見られていたのだろう。
今、私は本当にタイムスリップしているのかもしれない。

 まどか「これがまどまど。私そっくりでしょ」

 ほむら「ええ…確かに。鹿目まどか、だから、まどまど?」

 まどか「逆じゃないかな。こっちの方が昔からいるしね」

 さやか「…ほんと、大丈夫?我慢してない?」

私が知っているさやかも、こんなふうに人を気遣っていたらと思う。自分勝手な思いだけれど。
まあ、こちらのさやかはさすがに気持ち悪い。もっと普通でいい…そう、普通。
私にとって、この世界は普通じゃない。ただ一度だけの世界、一期一会、それでいい。
そう割り切ると、意外にもすんなりと「ほ虐」が受け入れられた。理屈はそれは間違っていると言うけれど、人間、いざという時は感情を優先するものだ。

 まどまど「マドォ!マドマドーーー!」イヤダー!タスケテー!

 まどか「おー」

 まどまど「マドーー!」タスケテー!  チュウブラリン

薄い木の棒に、マッチをホッチキスでとめたものを辺とした三角錐の頂点から、麻の糸でまどまどのツインテールを下ろす。
随分と強度のある糸だと思ったが、生きたまどまどを手で持つとかなり軽かった。

 赤ずきんのような女性「ここ2週間ほど餌を抜いたんですよ。栄養失調になってるので軽いんです」

そして、下から火で炙る。まどまどは暴れ、バランスが崩れてタワーごと倒れこみ、マッチによって火が燃え盛る。

 まどまど「マギャアアアアア!」アツイ!アツイヨォォォー!

 まどか「熱そうですねえ」

 赤ずきんのような女性「ええ」

やがて、丸焦げになったまどまどが出てくる。さやかは面白くなさそうな顔でそれを見ていた。
確かに、ただ焼くだけではつまらないかもしれない。準備が大変な割に、つまらないとなると、この反応も頷ける。

…私は一体何を考えているのだろうか。

 さやか「すいませんね、横から」

 赤ずきんのような女性「いえいえ」



 ほむほむ「ホムゥ・・・ホム・・・?ホムギャーーー!」ン・・・エ?イタアアアイ!

 まどか「……」チクッ

 ほむほむ「ホギャァァァァァ・・・―――」ピクピク


まどかが早速ほ虐を実演すると言うので、付き合ってみた。
工具室からはんだごてを持ちだし、コンセントにプラグを差し込んで、加熱すること数分。
ほむほむは何をされるのか察知し、小さなアクリル製のゲージの隅っこでブルブルと震えていた。可哀想に。
しかし、それよりも…この街の日常を知りたかった。

 まどか「これ、はんだごて。暁美さん…やっぱ、ほむらちゃんでいいかな?」

 ほむら「別にいいわ」

 まどか「うん、じゃあほむらちゃん、そこのほむほむを取ってくれるかな?」

私がほ虐に寛容な態度になると、急に笑顔を見せる。全く、現金なものだ。

 さやか「……」

まどかがほ虐を始めてからずっと黙っていたが、その表情は明るい。
性格のまるで違うさやかの笑顔は、本当のさやかと同じものなのだろうか。

 ほむら「はい」

 まどか「でね、単純なんだけど、このはんだごてをほむほむに突き刺すんだ」

満面の笑みでも、虚勢を張った歪んだ笑顔でもない。いつものまどかだった。

 ほむら「本当に単純ね」

 まどか「でも、中身が出てくることもないし、焼け跡が綺麗だから私は好きだよ」

はんだごては高温で皮膚、血管などの循環系、深く刺せば神経を傷つける。当然焼き跡が残るし、それはあまり見ていて気持ちのいいものではない。
が、その反面、周囲を汚さないというメリットがあった。
まどかは外見の醜さが好きだと言う。蓼食う虫も好き好きだ。

 まどか「じゃ、やってみるね」

 ほむほむ「ホムッ・・・ホム・・・」コワイコワイ

 まどか「…」プチュ・・・ブチュゥ

ジュウウウと肉が焼ける音が伝わってきた。心なしか、良い香りもする。

 ほむほむ「ホギャアアアアアアアア!!!」イタイイタイイタイー!

 まどか「今は肉まで刺したんだ。まあ、見ててね」プチュリ・・・チュクチュク

 ほむほむ「ホギィ・・・」イタッ・・・!

 まどか「今度は、皮膚まで。数mmだからちょっと難しいけど、焼けた穴は見物だと思うなぁ」

毛細血管が切れて軽く血が流れてくるが、先ほどの刺し傷に比べればというところである。
少し面白そうだった。

 まどか「次は、骨まで…神経を焼き切るよ。割りとうるさいかもしれないけど、大丈夫かな?」

 ほむら「今更…平気よ。どうぞ」

 まどか「うん、ありがとう。んっ…!」グチュッ!

 ほむほむ「ホギャアアアアアー!ホビィィィィィィ!ホ・・・ホ?」

 まどか「神経が切れたから、むしろ痛みを感じないそうだよ」

ほむほむに障害が残ろうと、こちらには何の痛みもない。だから、どこまででも行ける。
そういう意味では確かにストレス解消にはなる。

 まどか「同じ事を繰り返して、切って…出来上がり。ほむだるま!」

 だるまほむ「ホム・・・?ホ、ホ・・・ホヒャアアアア!」

 さやか「やっと気づいたんだねー。野生動物としては失格だよね」




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