ほむ神

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作者:ljPOl+3m0

937 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] 投稿日:2012/05/15(火) 00:08:48.46 ID:ljPOl+3m0



路地裏でゴミ箱を漁っている時のことだった
残飯狙いのほむ種を待ち構えていたあんあんとさやさやによって、私たち一家は地獄を見たのだ
やつらはまず動きの遅い子ほむと子まどたちに飛び掛かりその腕を喰いちぎった
私と番のまどまどは半狂乱になりながら子どもたちを助けようとしたが、無論ほ食種に敵うはずもない
右足を潰された私は放り捨てられ、身動きができぬまま目の前で家族を蹂躙された
泣いて助けを乞う私を嘲笑うかのように、ほ食種たちはまどまどと子どもたちを食い荒らす
そして満腹になったのか、結局私を放ったままその場を去って行ったのだった

片足を失い、家族を奪われた私には、もはや這いずって巣に帰る気力さえなかった
いっそこの薄汚い路地裏で果てるか――そう思い、目を瞑った矢先のことである

「なぁ、そこのほむほむ。お前――『神』になるつもりはないか?」

目を開けると、ひとりの人間が私を見下ろしていた
これといった特徴のない、ごく平均的な人間の男である
『神』――俗に言う『神さま』のことか?私がそれに、なる……?

「このまま死ぬつもりだと言うのなら別に止めはしない
 だがもしお前にその素質があり、その覚悟があるならば、俺がお前を『神』にしてやろう」

こいつは何を言っているのだろう
バカバカしい、何が『神』だ、そんなモノになれると言うのか、こんな死に損ないのほむほむが?
だがしかし、今の私にはもはや何も残されてはいない――ならばいっそ、下らない夢物語に縋ってみるのも悪くはないだろう

そのあと私は人間の家へ連れて行かれ、綺麗なお湯で身体を洗ってもらい、傷の手当てを受け、久々に栄養のある食事にもありつけた
もう少し早くこの人間に保護されていれば家族たちも――涙を零しながら、暖かい布団に寝かされたところまでは覚えている

目が覚めると、私は地面に埋められていた
身をよじろうにも身体は完全に埋められており、微塵も動く気配がない――頭は地上に出ているため、ひとまず呼吸の心配はなさそうだが

顔をあげると、あの人間が私を見下ろしていた
騙された、こいつはほ虐嗜好の人間だったのか――後悔したところでもう遅い
そもそも、下手をすればほ食種以上に危険な個体の多い人間などに縋った私が愚かだったのだ――再び諦めの境地に達しかけた私の耳に、しかしながら意外な言葉が飛び込んできた

「これからお前には『神』となるための修練を積んでもらう
 非常に過酷な修行となるだろうがその苦行を超克した末に、お前は『神』――『ほむ神』となるだろう」

『ほむ神』――その響きが琴線に触れた
そういえばまどまどの中でも希少な白まどたちの間では、半ば伝説的な存在として『まど神』なるモノが噂されているという
もしや『ほむ神』というのは、伝説上の『まど神』に類する超希少種なのだろうか?

「もし『ほむ神』になったならば、この世の全てはお前の意のままとなるだろう
 奪われた家族を取り戻すことも、あのほ食種たちに復讐することも容易い――」

やはり荒唐無稽に聞こえる、この人間はただの気違いなのではないだろうか
そう感じつつも、私は『ほむ神』という言葉に強い興味を覚えていた
どうせ今の私は身動き一つ取れないのだ、せいぜいこの妄言じみた話に付き合ってみるとしよう――

修行の内容は至極単純だった
目の前に置かれた食事を、我慢し続けるというものである

「このさき空腹が募るにつれ、お前は地獄を体感することだろう
 抗いようもない生存本能の増大、その極限の苦行を制したその果てに――お前は『ほむ神』として生まれ変わるのだ」

なるほど確かに、それは地獄だった
なまじ保護された最初の日に豪奢な食事を味わったせいで、一時はあの路地裏で死する覚悟すらあった私の心は、すっかり生への執着を取り戻していたのだ
一日が経ち、二日が経ち、三日目の日が沈む頃にはもう、私の精神は限界に近かった
むしろ、肉体的にも精神的にも、よくぞ三日も保ったものだと不思議に思う
どんなに身をもがいても身体は抜けず、どんなにあがいても口は届かない
ご丁寧にも人間は、朝昼晩と毎回作りたての食事を用意して目の前に置いていくのだ――なんとも手間と金のかかったことである
立ち上る湯気 そそる匂い、目にも鮮やかな盛り付け……それら全てが空腹を刺激し、私の精神を苦しめた

その時唐突に、人間はこちらへ近づくと、わずかに――ほんのわずかに皿を私へ近づけた
おいしそうな匂いが近付いてくる
私は狂ったように首を振りまくった
白痴のように広げた口からこれまでにない量のよだれをまき散らしながら、なんとか目の前の食事に喰らいつこうとする
さらに数ミリ、皿が近づけられた
獣のような唸り声をあげ、目を限界まで見開いて舌を伸ばす――

ぶんっ―

「――ようやく完成した
 これが我が家に代々伝わる呪物――『ほむ神』か…!」

「地面に埋め、限界まで飢えさせたほむほむの首を切断し、呪的霊具として祀る――古来から用いられてきた禍々しき蠱術!」

「さぁ『ほむ神』よ――ほむ種を超越したその呪力を以て、我が呪詛の念を成就させたまえ!!」


【『ほむ神』――現代でも日本のどこかで執り行われていると噂される呪術の一種である】


ジャンル:野良ほむほむ 風俗


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