◆
朝を迎えた筈の都市の空は、薄暗く曇っていた。
分厚い雲に覆われ、都市全てが光届かない闇の中にある。地平の先も見通せない、深い闇が。
空に鎮座するのは、昇る太陽を喰らうかのように巨大な、鬼の貌をした岩盤。
鬼ヶ島と、その名で呼ばれていたのだけは知っていた。梨花が監禁されていた居場所であるが、内部の詳細も、外見すらも見た事がないのだから。
そして直に目にして改めて驚愕する。ここまでの規模の前線基地だとは。鬼の棲む島、怪物の巣穴そのもの。
真下の渋谷区からでなくても、梨花の目からありありとその威容の存在感を見せつけている。
その下で、何が行われているかも。
「ふふ、梨花? そんなに心配しなくても大丈夫ですわよ? ここは一番安全な所なのですから」
戦慄する梨花を尻目に、沙都子はいやに上機嫌だ。
鬼の暴挙が自分を巻き込まないかの心配を、まったくしていない。
そんな事より、こうして親友を連れあって歩く時間を堪能する方が何倍も大事だとでもいうように。
「……安全だなんて、よくこの場所でそんな口が利けるわね」
「少なくとも、今の時間はそうでしょう? お宝の争奪戦の最中にお宝を壊すなんて人がいたら、救えないおばかさんですもの」
そう言って沙都子は目の前にある赤い尖塔に目を向ける。
そこはまさに全勢力が鎬を削り求める宝物殿たる東京タワー。
首が痛くなるまで上に向けなければ頂点が見えないほどの近距離に2人は来ていた。
方角は増上寺の真逆……つまり
カイドウが進行したルートの反対方向だ。
タワーの向こうでは今も、霊地の所有者の大和と、方舟派のサーヴァントが三つ巴の混戦を演じている。
今も地鳴りの振動が幼い体を震わせ、激闘の予感を克明に伝えている。
しかしそれがタワーの方に直撃する事はない。沙都子の言う通り彼等の狙いは霊脈に眠る魔力。土地を傷つけては保管された莫大な魔力が漏出してしまう。
奮闘に見合った成果を手に入れたくば、ここまで余波を飛ばすわけにはいかない。
「私のサーヴァントからの報せによりますと、スカイツリーという塔の魔力はあの大きな龍に使われて今はからっぽ。あっちに向かったお婆さまは鏡の世界での戦いの真っ最中。
対してこちらの方まだ手つかずで、鬼さんは峰津院さんとやらに方舟の皆さんが頑張って食い止めてくれている」
巨大同盟の盟主二騎。沙都子にとっても目の上の瘤の両巨頭の動きは逐一把握している。
神出鬼没のアルターエゴは、情報戦でも複数の筋を自前で用意できる。
「早い者勝ちをするには、今が絶好のタイミングだと思いませんこと?」
その両雄が縫い留められているこの時こそが、裏まで伸ばした手を表に出す最適の瞬間。
そもリンボの海賊同盟の恫喝に対して強く出れる根拠は、霊地を正式に管理・運用する手腕を持った唯一のサーヴァントであるもの。
地脈の上に寝そべるか根こそぎ吸い上げるかは海賊にできても、こればかりは専門の知識と技術が必須。
正規の所有者(オーナー)の
峰津院大和を除いて、霊脈を最大限の効率で活用できるのはこのリンボを置いて他にいない。
当然、立場の保証の担保にその説明をしたのだから、豪胆と狡猾を兼ね備えたライダーがいち抜けを警戒して監視を怠らないのも当然。
その為の乱戦のお膳立て。戦線の混沌化。
恐怖と暴力で締め上げようと、海賊同盟は即席の集団。それも全員が下剋上を目論む蠱毒の壺だ。
ひとたび大きな戦いが勃発し、各々の思惑と因縁が走り出せば、他人にかかずらってる暇は即刻捨てられる。
現に頭目の最右翼たる
カイドウは、サーヴァントより前の宿敵という重大な因果を持ち込んでしまって、視野が狭窄しかかっている。
鬼ヶ島を地上に表出した皮下も、ここで完全に勝負を決めに来た。最悪霊地の獲得が成功しなくても力押しで事を終わらせる気だ。最早息を潜めて這い回る小虫を気にしていられる段階ではない。
その虫が、自分を乗せる支柱を内側から腐らせ、蚕食する毒虫と気づかずに。
その意味で方舟は最高のアシストをしてくれた。
常に見張りがついてる沙都子やリンボでは難しかった戦局の泥沼化を、率先して敵陣が行ってくれたのは感謝の念が尽きない。
万が一の奇跡と僥倖が重なって彼等が同盟や峰津院を退け、霊脈を手にできたとしても……彼等の心臓は既に、こちらが握っている。
「ああ、そういえばついでに。梨花、あなたとが身代わりになったアイドルさんですけど……先程リンボさんが見つけたらしいですわ。
お友達もたくさん連れて、あなたを売り飛ばしておいて随分楽しそうでしたそうよ」
「……! 霧子……!」
「ああ、そんな名前でしたか。どうでもいいから聞いてもいませんでした」
皮下らが仕込んでいた、アイドルの
プロデューサーを試金石に使った通告は、予想通りの結果をもたらした。
彼女は、
プロデューサーを切り捨てられない。
船に飛び乗らなければ足場が崩れる限界の最後まで手を取ろうとするほど執着してる。
ならば後は、引き剥がせばいい。見える場所には置いて、餌をばら撒き、その都度逃姿をくらませ続ければ脱出を封殺できる。
男の方もそちらを望んでいるのだから脅迫ですらない。逃げ道を誘導してやるだけで十分だ。
王達を潰し合わせ、海賊を出し抜き、方舟の出港を見送らせる。
全てを総取りするのは、魔女となる。
謀略を賽子回しの気分で弄び、閉じた円環の楽園を夢見る魔女の勝利となる。
「っ……………」
以上の話を理解して、梨花は唇を強く噛み締める。
事細かに説明されてはいないが、ここにまで連れて来られれば何をするのかはすぐに察しがつく。だから先に梨花に話したのだ。
ここまで舐められて、黙っていられる梨花ではない。事実、このまま沙都子を放置すれば梨花の、方舟の勝利の線は消えてなくなる。
沙都子の目的は梨花であり、即ち命の保証だけはされている。生還だけを目的に据えるなら身を委ねれば達成される。
だがそれは勝利と呼べるのか。元の世界に還れたその先で、梨花は如何に生きられるのか。
断言だ。そんなわけがない。
支配者が運命から沙都子に変わるだけで、100年抜け出せなかったあの輪廻(ループ)と何の違いもない。
第一、他人に寄りかかって手に入れる奇跡と勝利に見いだせる価値なんかない。
地上への脱出は図らずも成された。
最も困難かと思われた脱獄をクリアしても、 問題の解決には至っていない。
梨花の背中には、ついさっき沙都子の元に姿を見せまた去った怪しげな法師が寄越した符を張られている。
体の異常は何も起きず、害されている感覚はまるでないが、聞かされた効果はより実害を持つものだった。
サーヴァントへの念話の遮断。
空間の隔離から外れた梨花の唯一の勝ち筋、セイバーへの連絡網を断たれるというピンポイントな妨害。
不治よりも厄介な、呪(しゅ)の指先。
「さあさ参りましょう。 流石にいつまでもいたら巻き添えが来ないとも限りません。霊脈とやらは地下にあるので、最悪地上が吹き飛んでも何とななるそうですわ。
そこで一緒に皆さんを応援しましょう? 海賊さんの奮闘を。王様の健闘を。方舟の敢闘を。
頑張れば頑張るほど───私達の勝ちは万全に、揺るぎなく、完璧になるのですから」
自分と過ごす日常を最高の幸福と言ってくれた親友。
その為になら命の全てを嬉々として地獄に突き落とそうとする魔女。
片面を無視して、都合のいい面だけを逸らして見る事もできず。
偽らざる親友であり、疑いようのない魔女となった沙都子を、梨花はもう一度歯噛みするしかなかった。
◆
灰と雪が、青紫の空間に舞っている。
灰は侵入した超大規模の異分子(
ベルゼバブ)を招いた空間が基礎概念を歪ませ、脆くなった壁やが地面が脆くなり出来たもの。
それに混じり合う雪は、血の気配を塊にしたが如き鬼の持つ扇子状の刃から放出されたもの。
一帯に散りばめられる白色が、鬼の戦いの舞台を彩っていた。
再会した旧い同胞に、童磨は相も変わらず馴れ馴れしく語りかける。
手を止めて戦意がないと示し、まるで町中で偶然知り合った友人を呼び止めるような朗らかな声だ。
「鬼同士の戦いは不毛だ。殴って切ったぐらいじゃ俺達は死なない。決着には時間がかかりすぎる。
それに君じゃ俺には勝てない。だって俺は上弦の弐で、君は参。数字の差がそのまま強さの差だ」
軽薄に笑う顔、肉体に傷はない。
猗窩座から受けた幾多の殴打、打撃は骨肉を散らすが、2秒足らずで残らず復元を果たしている。
「俺も俺のマスターを捜さなきゃいけないし、鳴女ちゃんの術みたいなこの空間じゃ何があるか分からないし……。何より、これ以上大切な人を失いたくない。
猗窩座殿は知ってたかい? 界聖杯にはあのお方……かつての俺達の主もいた事を」
「…………………」
眉尻が動く。
かつての主という言葉に、これまで童磨の勝手な詰めよりを全て黙殺してきた
猗窩座が初めて反応を見せた。
可能性は常に懸念し、いつの間にか思考する事すら忘れていた事項だった。こうして話題に出されるまで忘却の事実にすら気づけなかった。
その不可思議に疑いを持ちつつも、急務ではないとして今は流し、童磨は話を続ける。
「何故だか今じゃもう名前もお姿すら思い出せないけど……俺はあのお方にとても感謝してるし、尊敬しているんだ。
そんなお方が敗れ、どうしてか世界から消え去ってしまって、俺の体には穴が空いてしまったようだよ。
それなのに、今度は親友をこの手で殺さなくてはいけないなんて……ああ俺は辛い! 耐えられない!」
虹の両目からは、なんと涙が流れていた。
止めどなく、滂沱と。本当に愛する者を失った悲しみを表しているように。
それが全て、虚無なる自己を隠す為の演技だと知っている
猗窩座には、猿芝居でも見せられている気分でしかないが。
「だからやめようぜ。俺達が戦ってもなんにも得しない。誰も喜ばない。
俺は
猗窩座殿と戦いたくないし、
猗窩座殿も勝てない相手に挑む理由もない。ここはお互いの為に一度引いてさ、改めて話を───」
「理由は、ある」
猗窩座の声が、童磨の喋りを途切れさせた。
戦闘中にどれだけ童磨に鬱陶しい言葉をかけられても無視を貫いてきた
猗窩座が、ここで初めて童磨に受け答える。
それは聞かされた説明の訂正であり───────。
「お前を殺せば、俺のマスターが勝利に近づく」
右腕を前に出し、左腕を脇元で締め、両脚で地面を力強く踏み締める。
破壊殺・羅針。間違いと喪失を繰り返し、無意味な破壊を徒に広げた男の、最後に残った記憶の証明。
童磨の評価は正しい。
上弦の序列は徹底した実力構造。相性も番狂わせも含まない、完全な上位互換のみで決定されている。
たとえ数字の差はひとつでも、実力差には覆しようのない開きがある。
入れ替わりの血戦が申し込まれ、下の数字の鬼が上の数字の鬼を上回った時にのみ、この序列は更新される。
「数字の差も、勝敗の歴も……所詮は俺達が死ぬ前の話だ。
此処にいる俺が……そんなものに囚われる事など、それこそ意味がない。敵がお前であるなら、今、潰すのみだ」
自棄ではない。意地でもない。
『誰よりも強くならなくては』という呪いは、既に解かれている。
拳を振るう意味、理由。それらはもう
猗窩座にはない。
守る為、等と大層な口は吐かない。狗は狗らしく、主の意を汲み捧げるのみだ。
「んー…………君、本当に
猗窩座殿かい? 生きてた頃とどうも違う気がするな」
拳を向けられた童磨は、妙なものを見たように首を傾げる。
彼がよく知る
猗窩座という鬼は、飢えた犬じみた強さへの執着を絶やさず、言葉より先に拳を振るってくる凶暴性を備えていたのに。
よくよく記憶をほじくり返してみれば……童磨にまともに受け答えした行為自体、今が初めてではないだろうか。
「さっき食らった拳も何だか変な感触がしたし……うん、確かにサーヴァントになった俺達は昔とは変わってる部分もあるかもだ。
ああ、でも──────そうか。残念だよ。親友をこの手で食べる日が来るなんて。どうして聖杯は俺にこんな酷い真似をさせるんだい?」
閉じていた両手の鉄扇が開く。周囲に付着していた粉氷が離れて再び宙を舞っていく。
同時に、鬼気が開かれる。飄々な陽気さに被せられた、底無しの淵を思わせる闇を。
生前と明らかに異なる
猗窩座の精神を見て、童磨はここで関心を切った。
理解できないものは理解しない。深く詮索せず、別にいいと打ち捨てる。
知性だけが詰まった頭は、蒙昧な思考にいつまでも時間をかける無駄を選べない。
死を経た鬼には時に新たな変化が起きる。サーヴァントというあり得ぬ第二の生は怪物の心境すらも影響を与える場合がある。
だがこうして変わらないものも───またある。
生まれた頃より心の箱に穴が空いていた、彼のように。
「でも安心しておくれ。君が死んでも、君の意志は俺が引き継いであげる。
人の思いの強さも、今の俺なら分かってあげられると思うよ。鬼狩りもこんな気持ちなんだってね」
闘気を吐く
猗窩座とは対称的な童磨の殺気はまさしく冷気。
触れれば熱を奪い、皮膚を剥ぎ肉を削ぐ。感情も情緒を挟まない現象の猛威。
「一緒に戦おう
猗窩座殿。俺の中で。俺と同じ夢を見よう!」
凍りついた大気が氷柱に変わり、銃口を揃えた歩兵となって
猗窩座を狙う。
その全てを撃ち落とす気で
猗窩座が踏み出し、奥に立つ指揮官たる童磨の首を狙う。
双方の攻防はしかし、交わりを見せる前に中断される。
ぶつかり合う二者の交差点。その付近の壁が一瞬で裁断されて。
「!」
猗窩座も、童磨も攻撃を止めて立ち止まる。
別方向からの奇襲に面を食らったわけではない。
視線は裁断された壁の破片。構造がブレ出してるとはいえ硬い石造りに近い素材を鮮やかに刻んだ切れ味。
何より、砂埃の中に佇む気配を、同族の血の臭いを嗅ぎ取った為に。
結わえた黒髪。侍にも似た袴姿。
人に近しい見目の中で、最も異形らしく概(かたち)を表す三対の凶眼。
「
黒死牟殿! そこにいるのはよもや
黒死牟殿じゃないか!!」
「童磨…………お前までもか…………」
現われた
黒死牟を視界に入れ、飛び跳ねる勢いで喜色の声を上げる童磨。
実際、驚きの連続なのだ。
昨夜の始祖に始まり、
猗窩座、そして
黒死牟。
童磨だけが、界聖杯に集った全ての鬼を見知っていた。故に興奮もひとしおとなる。
「あはははっ何だいこれは! 上弦が同じ聖杯戦争で一堂に会するなんて! こんなのは奇跡を超えて運命じゃないか! やはり神というのはいるのかもしれないな!」
上弦の壱。
上弦の弐。
上弦の参。
本来頂点となる始祖の鬼の許で等しく傅く、緊急の招集がなければ100年対面しない、深くも薄い関係性の3人が、一纏めに集っている。
同郷の英霊と会うだけでも聖杯戦争では希少。それが3騎となれば、意図を疑うのも無理からぬ事ではある。
「追ってきたか、
黒死牟」
「無論だ……逃さぬ理由が……何処にある……」
「ん? あれ? 二人はもう会ってたのかい? つれないなあ
猗窩座殿。そうならそうと言ってくれればよかったのに」
訝しむ童磨を他所に睨み合う壱と参。
それを気にせず、からからとせせら笑って言う。
「良かったな
猗窩座殿! これで君にも生きる道が見えてきたみたいだぜ!」
参の字が彫られた眼球が横に回る。
相対する構図だった童磨が、何を思ったか悠々と歩いて、
猗窩座の左隣を埋めていた為に。
「え? 何でそんな顔をしてるんだ? この中で一番弱いのは
猗窩座殿なんだから、俺と
黒死牟殿から襲われたら死ぬしかないだろ?
なら俺と一緒に
黒死牟殿を倒すしか選択肢は無いと思うんだが……こんな簡単な計算もできないの?」
どうしてそうしないのか、心底疑問でしょうがない表情。
今度は何も言わなかった。裏拳の一発を鼻柱に当てて吹き飛ばす。
血を噴出させた童磨は堪えた様子もなく、再生しながらも「えー……」とぼやくのみだ。
キン、という音が鳴る。
腰に提げた刀の鍔を親指の爪側で上げる
黒死牟の所作で、空気が張り詰めた。
「戯言はよい……始めるぞ……」
一声で、厳粛さと剣呑さが混濁した雰囲気に早変わる。
濃度、重圧を重くする場に、童磨すら軽口を閉じ神経を尖らせた。
嘲り声で
猗窩座に説いて見せた序列の段は、そのまま
黒死牟と童磨にも適用される。全力で臨んでも、童磨の勝機は細い。生前の記憶に縛られては二の舞いだ。
超えるには別の要素、ここで新たに培ったものの有無が問われる。
始祖の鬼は消えた。
死しただけでなく、それがいたという歴史の痕跡すらもが、悪魔の口に入った時点で抹消された。
此度、彼等を縛る鎖は存在しない。
生殺与奪を握られ、名を漏らすのを禁じられ、記憶を歪曲させる呪いから解かれてる。
されど戦鬼の死徒。忠誠が消え何の理由がなくとも、闘争こそ我がさだめ。
如何なる時期の上弦の歴史を紐解いても。
如何なる聖杯戦争の履歴を閲覧しても。
この聖杯戦争の、この時のみ、■■■■■の支配を受けない上弦の戦いが記録される。
上弦血戦。
あり得なき可能性がまたひとつ地平の碑の上に乗る。
人でも英霊でもない、鬼の戦いが、幕を上げた。
■
触れた血肉を凍えさせ、吸えば肺胞を壊し内側から死なせていく粉凍り。
鬼を狩る者、鬼殺隊の強さの基盤になる呼吸術の弱所を狙い撃ちした剣士殺しの術。その力は、鬼を相手にしても弱まるものでは何らない。
高温にせよ低温にせよ、極度に振り切った熱は生命を脅かす自然の猛威の具現である。
氷極の檻に囲まれれば、細胞の動きを止め、腐らせ、崩れ落ちるのみ。
童磨の敷いた銀の『膜』を前にして、徒手での戦いが下地の
猗窩座は、自傷を前提に間合いを詰める他にはない。
鬼の再生力を最大に活かし、張り付く氷を表皮ごと生まれ変わらせて脱皮の要領で脱ぎ捨てる。
手足は砕かれないよう血を高速で循環させ常に熱を一定に保たせる。これもまた鬼にのみ使える突破法だ。
負傷を厭わず進んで攻め込み、敵の受けた技を学習し、打拳を放つ
猗窩座。
敵との距離を計算に入れ、術を食らわせ、敵の情報を搾り取る童磨。
童磨も接近戦はそつなくこなせるが、方法に拘らない効率性から、もっぱら剣士の斬撃範囲の外から血鬼術を撃つのが基本戦術としている。
戦闘の姿勢、武器の手段、全てが正反対で噛み合わず、戦いの結果にも繋がっている。
只管に猪突猛進する
猗窩座を、巧みな術捌きでいなす童磨。
現役の十二鬼月の頃から、この図式は崩れはしなかった。
【月の呼吸 参ノ型 厭忌月・銷り】
眼前を覆う霧が、刃の弾雨に晴らされる。
剣閃を飛び越えて走り、分散する斬撃の群雲。
【散り蓮華】を吹き飛ばし童磨への道を開き、同時に突っ込んでいた
猗窩座の足を奪う。
鬼の身体能力を存分に活かし、血鬼術によって武技の範囲を拡大させる。双方の合せ技といでもいうべき、体技の極地。
片方を優先して片付ける……そんな弱い考えは端から持たない。
両者纏めて、撫で斬りにする。
頂点に立つ上弦、
黒死牟が戦場の主導を掴み、舵を切った。
「ははっ! やっぱりおっかないなあ、
黒死牟殿は!」
弾幕を抜けた
黒死牟の直の斬撃を、鉄扇に氷気を纏わせた【枯園垂り】で止め、鍔迫り合いになる前に背後に飛び退く。
近接戦闘は
黒死牟の独壇場だ。
猗窩座以上の格闘能力と正面から打ち合う気はない。
逃がすまじと
黒死牟が型を繰り出そうと構えた矢先に、予め背後に隠す形で設置していた【寒烈の白姫】から吐き出された冷気の波が、追撃を止めさせる。
一手を遅らせた。この有利を手放すまいと逆に追加の術で全身を固めんと鉄扇を舞わせる。
横合いから飛んできた拳によって、術の体勢に入っていた童磨の首がくの字に折れ曲がる。
側頭骨を割られ眼球がまろび出ながら童磨は、視覚以外の感覚で以て
猗窩座の【乱式】を受け流す。
「おいおい
猗窩座殿。今のは足の止まった
黒死牟殿を狙うところだろ?」
「知った事か」
猗窩座の視点からすれば、凍結で一時足を止めた
黒死牟も、間抜けにも自分から目を離してる童磨も同じ隙だ。
択一で童磨にしたのは、今
黒死牟に向かっても、位置関係で童磨から諸共に術を使うと踏んだと判断しただけの事。
そして隙をついた事で、間合いに入った。白兵戦ならば
猗窩座の距離。
無論それだけで押せるものとは考えてない。基礎能力だけでも以下の上弦を凌ぐからこその弐の数字。
だが近接格闘こそが
猗窩座の本領。懐に潜り込んだ方が僅かなれど勝機は上昇する。
童磨も、
猗窩座の得意分野に付き合う理はないとして後退を図る。
冷気を全身に纏い、猛攻を凌ぎつつ遠隔からの血鬼術を浴びせて少しずつ動きを削いでいく。
修羅は離れない。どこまでも追い縋る。
童磨が下がるなら同じだけ進み、凍りつき捲れ上がる血肉を頓着せず殴り続ける。
配分を考えない全力戦闘。体力の概念が限りなく無い鬼の体だからこその最適行動。
「駄目だぜ
猗窩座殿。君が一番弱いんだからもっと慎重に戦わなきゃ」
尚も、健在。
にやついた表情は失われず、余裕を保ったまま。
一度死んでも何ら変わらない顔つきに青筋が浮き上がるが、現にこれだけ打ち込んでも未だ、童磨を脅かす機は来ていない。
決死の侵掠の甲斐あって幾つかの拳は命中するが、急所の頸……そこを晒す程になる重い一撃は確実に避けている。
休みない攻め手を続けられる
猗窩座と同様、童磨も弱点を突かれない限りは100発打たれようが何の痛痒にもならない。
急所でなくても傷を増やせば不利になっていく人間とは、戦術の根本からしてが鬼は異なる。
膠着に絡み合う様が続くのもそこまでだった。
とうに氷結を砕いていた
黒死牟が剣林を生やし、両者を鳥籠に入れんと振り撒かれる。
これ以上組んでも徒労になるとして離れる
猗窩座を、今度は
黒死牟が攻め立てる。
「…………っ!」
一閃が十閃を引き連れて襲い来る様は、戦国で居並ぶ歩兵の戦列であるかのようだ。
童磨よりも互いの得物の差で童磨よりも近づくのは容易いが、それが逆に技の脅威を直に体験させられる。
その太刀筋を十二分に理解していても、やはり卓越してると言わざるを得ない。いや、過去に挑んだ時よりも更に研ぎ澄まされている気すらもする。
一手一手が至高の領域。闘気を見透かし自在とする無我の境地。
いったいどれだけの血を、その刀に染み込ませて練磨したのか。
最大稼働の羅針で斬撃の方位を精確に教え、払い、流し、落としていく。
対応は間に合うものの、そこより先に伸ばした途端、手首が泣き別れる。
構わず再生途中のままで振り抜く。無い腕で殴る奇策は、身を屈めて浮いた髪を撫でるだけで終わり、返礼に胴を裂かれる結果で終わった。
黒死牟には絶好の好機。
猗窩座には絶対の窮地。
早々に頸を落とすべく振るいかけた刀に、氷の蔦が巻き付いて阻害される。
このまま刀を取り上げようとしたのか、接触部から凍結を始めたのを、【月魄災渦】で粉々に裂いた。
「危ない危ない」
【蔓蓮華】を伸ばした童磨が安堵に息を吐く。
今の一手は
猗窩座を助ける援護をした、奇妙な行動にも見える。
……3騎共、その意図は察している。故に無言で睨むのみでいるのだ。
「
猗窩座殿はまだ殺させないよ。貴方に勝つには彼の力が必要なんだから」
入れ替わりの血戦において、三つ巴での戦いは過去に起きていない。
腕試しでも協議でもなく、一対一での厳格な序列決めの選抜なのだから当たり前だ。
全員が初となる形式を交わしていく中で……鬼達はこの勝負の勝利条件を整理し始めていた。
───
黒死牟は、どちらを先に落とした所で何も変わらない。片方が死んだ時点で勝利が決まる。
警戒するべきなのは、童磨と
猗窩座が手を組んで真っ先に排除しようとする時。
それでも己が負けるとは思いはしないが、それなりの手傷は予想され、出来うるだけ避けたい展開だ。
───童磨は、
猗窩座を片付けるのは容易だが、
黒死牟には勝てない。
勝てるにしても易々と倒れてくれる
猗窩座ではない。要らぬ消耗を強いられては
黒死牟に塩を送る羽目になる。
理想とするのは、
猗窩座と協力して先に
黒死牟を倒し、後でゆっくりと
猗窩座を倒す順番。
───
猗窩座は、どちらとも正面から敵わないが、同時にも率先して倒すのは憚られる立場にある。
最も弱いが故に後に残すのが上策と見做され、目溢しに合う。
そんな
猗窩座の勝ち筋は、
黒死牟を先に討ち、かつ童磨には再生が間に合わない重傷を負っていなくてはならないという、非常に困難な条件だ。
(不思議だね。一番弱い敵が、戦いの勝敗を握ってるなんて)
最弱である筈の
猗窩座の扱いが、趨勢の鍵を握る。
何ともおかしな勝利条件だが、それが計算に基づいた式であれば童磨は遠慮なく利用する。
武人肌の二者は姑息と疎んでやりたがらないとしたらそれこそ都合がいい。
(まあ、それ以外にも勝ち筋はあるんだけど)
目論見が上手くいかなかった時の秘策も、用意してあるとほくそ笑みながら。
(そろそろ準備も済む。ここからは勢いを上げていこう)
鉄扇を重ね、包みを広げるように開け放つ。
中には童磨を写実した小さな氷人形。
ひとり、またひとりと団扇状の卵で孵って、すぐさま数は6つに増えた。
生まれ、ひとりでに立ち上がる氷人形を見て、童磨が攻めの気勢でいると2人は把握した。
【結晶ノ御子】。数ある童磨の血鬼術の中で、とりわけ凶悪な技。
人形は自律的に動き、主と情報を共有し、単騎で集団戦を作り上げる。
のみならず──────。
【散り蓮華】
【散り蓮華】
【散り蓮華】
技の威力は、本体と据え置きだ。
6の内の3体が、技を同調させての連携で飛躍的に効果範囲を伸ばす。
無風無音の鏡世界が、銀世界に染め上げられる。摂氏は一気に零に向かって下がっていき、荒ぶ風は本物の吹雪以上。
猗窩座は拳圧で、
黒死牟は剣圧で弾きつつ冷気の圏内から逃れるが。
【冬ざれ氷柱】
【凍て曇】
【蔓蓮華】
かわした先で、今度は種別を織り交ぜた波状攻撃。
蔓が、氷柱が、礫が、霧の中から怪物の腸の如く飛び出す凶器郡。
ただ野暮図に撃ち出しているのではない。各人形が位置を取り、時間を合わせた指揮の元、統率されている。
さながら極寒の山中での遭難者を喰らう魔の狩り場か。
魔を祓うはやはり魔の技。
黒死牟の【常世孤月・無間】が種を問わず攻撃を纏めて粉雪に帰す。同時に、技を発動していた御子の1体も両断する。
小手先を幾ら使おうが、どれも微塵にすれば片付くもの。単純な道理であり隙のない鉄壁の理論。
このまま真正面から駒を落としていこうとした
黒死牟に、意外にも童磨が先に仕掛けてきた。
今まで避けてきた月の呼吸の斬撃範囲に自ら踏み入れ、無謀とも思える土俵入りをする。
意外が二転三転する。鉄扇と虚哭神去は打ち合えていた。圧倒といえないまでも持ち堪えてみせている。
原因は鉄扇の肥大化。斬撃に合わせて氷柱を生む【枯園垂り】が、一帯の冷気によって効果を増幅させているのだ。
御子の連撃すらも布石の一手。真の狙いは本体たる童磨自身の強化にこそあった。
「環境を……味方につけたか……」
「俺だって色々考えながら戦ってるんだぜ? 頭がいいからね。今日は特に冴えてるよ」
「その浅知恵で……私に抗せるとでも……驕ったか……」
「まさか。ここからだよ」
鉄扇と氷柱の二重の刃が無数の刃と弾き合う。
言葉に違わず、空間内の温度低下は止まらずに童磨のフィールドを形成していく。
技を出す毎に冷えた大気が血鬼術を強くする循環が出来ているなら、悠長に切り結ぶべきではない。
柄を握る指がみしりと軋む。鋒に血を注ぎ真の刃を露わにせんとする。
応じて童磨もさらなる冷気の高みを目指す。手持ちの内で最大の技を、最大の効果を発揮できる瞬間にまで貯蔵する。
互いに必殺を期する。
戦いも佳境に至り、どちらがより先に札を切るか、あえて切らせて後より断つかの読み合いの段階に入り。
初めて、その段階を先に越した者がいた。
察知、できなかった。
御子との情報共有でくまなく観察を可能とする目を有する童磨も。
生命の脈動を透き通らせて先の先を見抜く
黒死牟も。
2人の間に割って入り、拳を向けた
猗窩座の接近を見過ごしていた。
存在を忘却してなどおらず、死角から攻めてくる選択は念頭に入れていたというのに。
(気配が薄い。まさか、あえて氷を受けて体温を周囲と同化させた?)
猗窩座の肉体は、半ば以上が凍結していた。
死人じみた蒼白の肌、命の残骸ですらない石塊の彫像色にまで脱色されている。
局所的な猛吹雪が吹き荒れる環境下で、あえて再生力を落とし肉体を氷に変え、自然の一部に溶け込む事で2人の視界を謀ったというのか。
単なる捨て身の前進とはものが違う。思考と反射、狙い過たぬ意思がなくては不可能の所業。
両の拳が触れる。
重さは無い。肉を氷に置き換えたのなら、その硬度もまた薄氷並に落ちるのは当然だ。
童磨のように術の行使で操作したならいざしらず、外傷で付いた氷なぞ初雪程の柔らかさしか持たない。
「破壊殺・破式 縮円牡丹」
襤褸切れ同然の腕が、内側から弾け飛ぶ。
崩壊する黒ずんだ肉から伸びるは、真新しい鋼の拳。
腕の中で生きていた極細の血管を基点にして生えた腕が、再生の勢いを推進に使って殴りつけた。
炸裂弾のように資産した骨片と共に、虚を突かれた童磨の胴に拳が穿孔する。
油断した。まさかこんな手段で守りを抜けてくるとは。
攻撃に転用できてしまうほどの豪速、それは再生というより射出と呼んだ方が正しい。
傷は深い。心臓に到達している。ほぼ予備動作抜きの再生抜拳だけでこれ程の威力。上弦でもこの速さはひとつ抜けている。
戦術を崩されつつも、人一倍の鬼への適性を持つ上弦の弐の地頭の冷静さを失われず、攻撃の反動を利用して跳躍、態勢を立て直そうとする。
【月虹・片割れ月】
そして今度こそ、選択を誤った。
降り注ぐは星の落涙。
変形を完了した妖刀が生んだ月の呼吸・拾陸ノ型は、たたら踏んだ童磨と、残存していた全ての結晶ノ御子の頭上から直撃する。
氷像の割れる音が響き、肉が裂かれる音も混じる。
やがて吹雪が流れを緩めていく。御子が発生し続けていた冷気が止められたのだ。
「よくぞ……練り上げたものだ……」
童磨と違って
黒死牟に傷はない。
眼前で爆散する拳を寸前で読み切り柄尻で受けて難を逃れていた。
「過去の血戦では……見なかった技だ……。次の血戦に備えていたか……あるいは……この場で新たに会得したか……」
律儀に答えこそしないが、正解は後者の方だ。
新鮮な戦いの記憶は、落ちた修羅にも新たな発想を芽生えさせた。
抉られた腹から撒かれた血を燃料に火を灯す、上弦並の再生力を持った英霊。
戦士として半人前の判を押す他ない未熟者からも、学ぶものはあったと見える。
三叉に分かれた天秤のひとつが傾く。
趨勢は童磨の予想通り、確かに
猗窩座によって決められた。彼が描いた絵図を塗り替えて。
重りが浮いた二鬼の勝負は順当に
黒死牟に軍配が上がる以外かない筈だが、壱と参の埋め難い断崖の奥底に、今は見えざる何かが眠る。
容易に埋め合わせられる差でないとしても、確率を変動させる可能性を拓く、未踏の領域が。
確定していた下馬評を覆すやもしれぬ、新たな予感を滲ませて互いが睨み合う。
「時間だよ」
大番狂わせを糺す否の声がして。
そしてそこで、刻が凍る。
世界が漂白された
人の痕跡。生命の歩み。星の履歴が丸ごと根底から持ち去られたかのような、絶景が生まれる。
地理が狂ったような猛吹雪。現代においても文明の光の届かぬ白亜の地。人はそこを南極と呼ぶ。
一旦沈静化した冷気は勢いを取り戻すどころか、瞬く間に銀世界を完成させた。
鬼の視界すら霞ませる白明、耳も千切れる零下の風鳴りの中で。
「ふ、ふふ、あははははははは!
美味しい! なんという美味だろう! 食べ物の味で感動するなんて初めてだ! 御子に持ってこさせて本当によかった!
この街の女の子はみんな肌艶が綺麗だけどどこか味気なく霞でも食んでるようだったが……ああ、これが可能性に満ちたマスターの味なんだね!!」
笑いが、咀嚼が、木霊する。
嗅覚が用を為さない極寒でも届く、むせ返る臭気が流れている。
気を酩酊させる芳醇は、鬼に変わった人間が最初に踏み出す罪の味。
人の血の臭い。鬼の力の、原動力。
生暖かく滴る赤色を灯して、白一面の空に童磨が浮く。
そう見えるのは、氷で出来た透明な掌の上に脚を置いているが故。
蓮葉揺蕩う氷像の御仏。虚無を孕む教祖が持つには不遜が過ぎる慈悲なき慈悲。
童磨の手持ちで最大の技。上弦も当然この性能に関しては知悉している。
だが、違う。
猗窩座が目にしたものはここまで巨大ではなかった。
黒死牟が対面したのはここまで壮麗ではなかった。
あそこまで───押し寄せる大群ではなかった筈だ。
童磨という鬼を中心とし、周りを取り囲む分身の円陣。
理論だけでは、元よりそれは可能だった。
それぞれの御子が菩薩像を作り出しての一斉攻撃。
無間城での血戦の折で使用されれば、柱といわず城内の全ての鬼狩りを総浚いできていただろう。
頭で理解していた童磨が使い渋った原因は、ひとえに根ざした精神性に起因する。
感情を排し、常に冷静に状況を観察。有益な情報を入手するため敵を生殺しにする。
戦術としては正しいが、感情が無いが故に如何なる場面でも決して本気を出せない疾患を抱えている。
圧倒的に格下の柱の毒を喰らってしまい、柱ですらない鬼狩り2人により首を斬られた末路こそが証明だ。
人の精神を勘定に入れられない無機質性は、感情の爆発力を推し量る事ができなかった。
今はもうその縛りはない。
童磨は知った。人の思い、その強さを。
自身ただ1人に向けられる殺意と執念の焦がす熱を。
死の間際、あるいは最中になってようやく世界に色彩がついた時は、たとえ地獄に落ちても忘れていない。
「君の思いは無駄にはしないよ! その愛が、命が、俺を遥かなる高みへと導いてくれる!
そう! これが! 何よりも誰よりも強い愛の力なんだから!!
そうだよね、しのぶちゃん!!」
領域展開。
血華咲き誇る極地。敗北せし者の魂を取り込み喰らう屍山血河の死合舞台。
その骸の名、童磨。
その忌み名、キャスター・紅蓮地獄(コキュートス)。
神と幽世の実在を死後になって信じた死者が、遂に初めて出す『全力』が花開く。
【大紅蓮・睡蓮菩薩曼荼羅】
諸仏諸尊の集会する楼閣。
絶対零度の新宇宙が、古き世界をめくりあげる。
「……………ッ!」
「───────────ッッ!」
万象の何もかもを塗り潰す、絶対の白。
生命原理の奥底、遺伝子の螺旋に刻まれた絶滅の恐怖が形になる。
人外に成り果てた鬼といえど、その身に破滅が訪れる限り決して逃れられず。
闘気感知は意味がない。迫る殺気はこの世界そのものだ。
無尽斬撃は通じない。空を裂き氷を砕こうと、大気だけは壊せない。
回避の手立てごと飲み込まれ、2騎は影すら残せなかった。
太古の大量絶滅(ビッグ5)に匹敵する大寒波が過ぎ去った後の光景は、いっそ幻想的ですらある。
氷の樹木が生い茂り、割れた地面や壁の罅から隆起した剣山が、自然の芸術を演出する。
「はあ……はあ、はあ────────ああ、かなり疲れるなあこれ。息が上がるなんていつ以来だろう」
氷塊に、世界の一部と同化した
一旦術を止めて像と御子を待機させ、地に降り立つ童磨。その身には過去経験にない疲労感が両肩にのしかかっている。
体温調節の為の発汗はないが、人間でいえば単独での長距離走を駆け抜けた状態に近い。
これも生前に出し惜しんだ理由のうちひとつ。鬼の回復力でも追いつかない程の体力消費の激しさ。
模造品ではない、潤沢な栄養源を持った生身のマスターを食らったからこそここまでの発動にこぎつけられた。
人の縁というものも本当にあるのだと、童磨はまた世界との結びつきを感じていた。
氷の宮殿に立たされてる一対の氷像の片方に近づく。
腰を落とし拳を構えた姿勢は、職人が凝らした工芸品といっても通じそうだ。
今度は骨肉はおろか内臓、霊基の隅々まで凍結してる筈だ。身じろぎひとつ取れはしない。
とはいえ……流石に同時に纏めてとはいかない。上弦の壱の方にはまだ熱を感じてる。
固定を破られる前に追撃の冷凍波を浴びせるべきだが、消耗した状態では先にこちらが息切れしかねない。
では、取っておいた『保存食』に手を付けるとしよう。
目の前で氷漬けにされたばかりの新鮮な肉に触れ、中身を吸い上げる。
鬼が喰えるのは人間だけではない。同族の鬼をも取り込める。
入れ替わりの血戦でも、そうして前任の上弦を喰らう事で、時代を経る毎に上弦の枠全体の力を増していくのだ。
「さあ、待たせたね
猗窩座殿。しょーこちゃんだけでなく君さえ喰えば、
黒死牟殿にだって勝てるさ」
そして数字を足しさえすれば、上の階級の
黒死牟をも凌げる。童磨はそう確信する。
上弦の弐が参を喰らえる立場にいるのは自明の理。始祖が敷いた法にも何ら触りはしない。
友と称した間柄を勝利の糧に喰らう。そこに矛盾はない。 この時の為に、先に殺さずわざわざ残しておいたのだ。おかしいものは何もない。
何故なら、これも愛だから。
愛は何をしても許されるのだから。
「さようなら、俺の親友」
刈り上げられた頭髪に手が触れる。
せめて愛おしそうに撫であげてから食べてあげよう。そう祝福をかける言葉を考えて。
触れるより先に。氷が爆ぜた。
「────────────────────え?」
忘我。
絶やさずにいた思考が空白になる。発生した異常な情報を収集した脳が停止を訴える。
だってこれは、まったく意味が分からない。
何故凍結を防いだのか。氷の檻を砕けたのか。童磨の愛を受け入れないのか。
虹を彩る童磨の眼球を射殺す───その眼は、何だ。
種など、披露するものでもない。
先程見せたものを繰り返しただけ。
再生を、無限に繰り返しし続けただけだ。
霊核が凍結しないよう、表皮が凍り出した端から古い組織を脱ぎ捨て『重ね着』とした。
幾ら童磨の全力が
猗窩座を凌駕しようとも……即死さえしなければそれでいい。
猗窩座は常に全力だ。本気などという、慣れない感情を持ち込んでしまった者とは、意志の持久力に明確に差が出る。
拳を振り翳す。
必殺の勝機。だが繰り出すのは終式ではない。
それは既に、この会場で4度放ちながらいずれも仕留め残っている。
その内3つは、たった1人の少女───星の戦士プリキュアを地に落とす為だけに費やされた。
鬼に限界まで戦い抜く剣士に終を与えるべき青銀乱残光は、魔神跋扈する界聖杯では必殺たり得ない。
「破壊殺・極(ごく)式───────」
ならば、終の先を作るまで。
想起(イメージ)は火花。昇る光が黒く鋭い棘に変わり、夜空を108に裂く絵図。
細かな型までは決まらない。この想起に、身に積んだ術技の全てを乗せて託すのみ。
迷い無き拳が飛ぶ。
邪念妄念を霧散させた脳から、一筋の呪(しゅ)が流れる。
拳に回り伝わるのは、向けた喉元に拳が触れた100万分の1秒後。
故に、ここに。
黒い稲妻は鬼に微笑む。
「──────────黒閃万華鏡!!」
迸る豪雷。
沸騰した魔力呪力が、膨張して解き放たれる。
通常の威力の2.5乗に及ぶ拳は一切の反応を許さず童磨に突き刺さり、陥没し、喉を貫通した。
「ご────────────」
頭部が首の皮一枚のみで繋がった童磨が、大量の血を吹き出して咳き込む。
致命傷寸前の逆襲。だがその皮一枚が鬼には勝敗の分かれ目だ。
死にかけても、死なない限り鬼は動く。戦える。
そして童磨の術は、まだ生きている!
(そう───────まだだ!)
控えさせた菩薩に指令を送る。
命令は単純明快。押し潰せ。大質量の掌で直接微塵に叩く。
司令塔にして供給源の童磨が瀕死になり動きと冷気は精彩を欠くが、
猗窩座とて満身創痍。
決死の一打を耐えた童磨の方が、立ち直りは早い。
さんざ粘られたがこれで終わりだと安堵して─────真の終わりが、絶望の黒と共に宣言される。
【月の呼吸 拾伍ノ型】
純白を穢す、不遜なる漆黒。
染まらぬ絶対を覆すは、これ以上なく染まり切った無間。
体内の温度を呼吸で引き上げ、身の震えで以て呪縛を解いた
黒死牟が支刀を掲げる。
刀身を染めた黒は、血に非ず。
それは意志の色。無色不可触の気勢を武装に纏う力。
脳天から打たれた事で浸透していた、異聞の侍に渡された海の宝物。
【虧月・牙天衝】
首を断つ程度の細い代物ではない。
全身を裁断する黒い月牙が、清廉なる菩薩を砕き圧し、減衰なく童磨の下にまで到達する。
抗う手は、残されていない。
牙に手足を砕かれながら、童磨が思うのは疑問だ。
さっきから解けない疑問が多すぎる。どれかひとつでも答えを出さなければどうにも落ち着かない。
(俺が、負ける? 俺の愛が、敵わない? 愛は無敵なのに。何でもできるし、何をしたっていいのに)
分からない。どうでもいいと忘れられた問題が、こびりついて離れない。
面倒だとしか思えなかった汚れが、今はとても気持ちが悪く感じる。
(会いに来てくれよ、しのぶちゃん。また俺を叱りに来ておくれ。
君の笑顔を見れば俺は誰にだって負けない。この気持ちが恋だってちゃんと理解したんだ。頸を斬られても蘇ってみせる。絶対にできる。だからねえ早く──────)
己が真っ先に助けを呼ぶべき女性が他にいる事を、結局思い返さずに。
そんなものは、ただの思い込みの幻覚でしかないと、過去の自分自身に嗤われるようにして。
吼え立てる魔獣の顎が曼荼羅を破り裂いたと同時、氷の社が幻想ごと崩れ壊れた。
◆
「見事。御見事に御座いまする、峰津院殿」
「人の手でよくぞこれ程のものをお造りになられた。
数多の人員。数多の術式。数多の歴史が結集し、損なう事なく混じり合い、極小の宙と完成されているのが、目に見えて分かります。
このリンボ、世辞を抜きに称賛しております」
「そして、有難う御座います。これ程のものを、私に献上してくれるとは、いやはや何とお礼を申し上げていいのか」
「ああ構いませぬ。構いませぬ。拙僧、貴人への遇し方は心得ております。
これ程の一品を下賜されたのならば、応えて見せるのが礼儀というもの。
然とご覧に見せましょうぞ。誰もが眺めずにはおられない、地獄にこそ咲く花を。ふふ、はははははははははは!」
「誰に向けてくっちゃべってるか知らないけど。
させるわけないでしょ、そんなの」
◆
───万華鏡(kaleido scope)は、歪み果て。
◆
【鏡世界/二日目・早朝】
【
幽谷霧子@アイドルマスターシャイニーカラーズ】
[状態]:健康、お日さま
[令呪]:残り二画
[装備]:包帯
[道具]:咲耶の遺書、携帯(破損)、包帯・医薬品(おでん縁壱から分けて貰った)
[所持金]:アイドルとしての蓄えあり。TVにも出る機会の多い売れっ子なのでそこそこある。
[思考・状況]
基本方針:もういない人と、まだ生きている人と、『生きたい人』の願いに向き合いながら、生き残る。
0:……
プロデューサーさんの、お祈りを……聞きたい……
1:摩美々ちゃんに……会いに行きます……。
2:色んな世界のお話を、セイバーさんに聞かせたいな……。
3:摩美々ちゃんと……梨花ちゃんを……見つけないと……。
4:包帯の下に
プロデューサーさんの名前が書いてあるの……ばれちゃったかな……?
5:摩美々ちゃんと一緒に、咲耶さんのことを……恋鐘ちゃんや結華ちゃんに伝えてあげたいな……
[備考]
※皮下医院の病院寮で暮らしています。
※"SHHisがW.I.N.G.に優勝した世界"からの参戦です。いわゆる公式に近い。
はづきさんは健在ですし、
プロデューサーも現役です。
【セイバー(
黒死牟)@鬼滅の刃】
[状態]:健康、生き恥、武装色習得
[装備]:虚哭神去
[道具]:
[所持金]:なし
[思考・状況]
基本方針:不明
0:呪いは解けず。されと月の翳りは今はない。
1:……ひとつ、位階を上げたか。
2:私は、お前達が嫌いだ……。
3:どんな形であれこの聖杯戦争が終幕する時、縁壱と剣を交わす。
[備考]
※鬼同士の情報共有の要領でマスターと感覚を共有できます。交感には互いの同意が必要です。
記憶・精神の共有は
黒死牟の方から拒否しています。
※武装色の覇気を習得しました。
【
仁科鳥子@裏世界ピクニック】
[状態]:体力消耗(中)、顔面と首筋にダメージ(中)、右手首欠損(火傷で止血されてる→再止血・処置済)
……以上の消耗・疲労を帳消しにするほどのモチベーション。
[令呪]:残り二画
[装備]:なし
[道具]:護身用のナイフ程度。
[所持金]:数万円
[思考・状況]基本方針:生きて元の世界に帰る。
0:――空魚。今行くよ。
1:アルターエゴ・リンボを打倒したい。
2:霧子ちゃん達との協力関係を維持したい。向こうとこっちが持ってる脱出プランを組み合わせたりとか、色々話したい。
3:私のサーヴァントはアビーちゃんだけ。だから…これからもよろしくね?
4:できるだけ他人を蹴落とすことはしたくないけど――
5:もしも可能なら、この世界を『調査』したい。
6:アビーちゃんがこの先どうなったとしても、見捨てることだけはしたくない。
[備考]※鳥子の透明な手はサ―ヴァントの神秘に対しても原作と同様の効果を発揮できます。
式神ではなく真正のサ―ヴァントの霊核などに対して触れた場合どうなるかは後の話に準拠するものとします。
※荒川区・日暮里駅周辺に自宅のマンションがあります。
※透明な手がサーヴァントにも有効だったことから、“聖杯戦争の神秘”と“裏世界の怪異”は近しいものではないかと推測しました。
【フォーリナー(
アビゲイル・ウィリアムズ)@Fate/Grand Order】
[状態]:体力消耗(小)、肉体にダメージ(小)、精神疲労(大)、魔力消費(大)、決意
[装備]:なし
[道具]:なし
[所持金]:なし
[思考・状況]基本方針:マスターを守り、元の世界に帰す
0:霧子さんのお祈りが、叶いますように。
1:鳥子に自身のことを話す。
2:アルターエゴ・リンボを打倒したい。
3:マスターにあまり無茶はさせたくない。
4:あなたが何を目指そうと。私は、あなたのサーヴァント。
【
田中一@オッドタクシー】
[状態]:サーヴァント喪失、半身に火傷痕(回復済)、地獄への渇望、緊張(極大。一周回って落ち着いてきた)
[令呪]:残り三画
[装備]:なし
[道具]:スマートフォン(私用)、ナイフ、拳銃(6発、予備弾薬なし)、
蘆屋道満の護符×3
[所持金]:数千円程度
[思考・状況]基本方針:『田中革命』。
0:クソ……ッ。
1:
死柄木弔に従う。彼の夢に俺の道を託す。
2:敵は皆殺し。どんな手段も厭わない。
3:SNSは随時チェック。地道だけど、気の遠くなるような作業には慣れてる。
4:リンボに鞍替えして地獄界曼荼羅を実現させたかったけど、今は敵連合にいたい。
5:
峰津院大和のことは、保留。その危険度は理解した。
6:
星野アイ、めちゃくちゃかわいいな……
[備考]
※界聖杯東京の境界を認識しました。景色は変わらずに続いているものの、どれだけ進もうと永遠に「23区外へと辿り着けない」ようになっています。
※アルターエゴ(
蘆屋道満)から護符を受け取りました。使い捨てですが身を守るのに使えます。
【
松坂さとう@ハッピーシュガーライフ】
[状態]:疲労(中)、苦い味、思案、全身にダメージ(小)
[令呪]:残り3画
[装備]:なし
[道具]:最低限の荷物
[所持金]:数千円程度
[思考・状況]
基本方針:しおちゃんと、永遠のハッピーシュガーライフを。
0:???
1:しおちゃんに会う。そこにきっと、答えが待ってる。
2:どんな手を使ってでも勝ち残る。
3:しょーこちゃんと組む。いずれ戦うことになっても、決して負けない。
4:もし、しおちゃんと出会ったら―――。
5:
神戸あさひは邪魔なので早めに殺したい。
[備考]
※
飛騨しょうこと連絡先を交換しました。
※キャスター(童磨)からの連絡によってバーサーカー(
鬼舞辻無惨)の消滅を知りました。
※松坂さとうの叔母が命を落としたことを悟りました。
【キャスター(童磨)@鬼滅の刃】
[状態]:ダメージ(極大)、栄養満点、令呪の縛り
[装備]:二対の鉄扇
[道具]:なし
[所持金]:なし
[思考・状況]基本方針:もう一度“しのぶちゃん”に会いたい。
0:君の愛が、俺の先を行くものでないのなら。その時は俺が君の先を行くよ、さとうちゃん。
1:なんだ、久々に派手に暴れられると思ったんだけど。
2:あ~あ。あの彼(あさひ)、早めに食べておけばよかったな。
3:しょーこちゃんもまた愛の道を行く者なんだねぇ。くく、あはははは。
4:
黒死牟殿や
猗窩座殿とも会いたいなぁ
[備考]
※予選期間中にアーチャー(ガンヴォルト(オルタ))と交戦しています。さとうの目を通して、彼の魔力の気配を察知しました。
※鬼同士の情報共有の要領でマスターと感覚を共有できます。交感には互いの同意が必要ですが、さとうは索敵のために渋々受け入れています。
※"自身のマスター及び敵連合の人員に生命の危機が及ばない、並びに
伏黒甚爾が主従に危害を加えない範疇"という条件で、甚爾へ協力する令呪を課されました。
※可能性を持った生身のマスターは、一般人でも大量の栄養が得られるようです。
【中央区(港区へ進行中)/二日目・早朝】
【アサシン(
伏黒甚爾)@呪術廻戦】
[状態]:健康
[装備]:武器庫呪霊(体内に格納)
[道具]:拳銃等
[所持金]:数十万円
[思考・状況]基本方針:サーヴァントとしての仕事をする
0:聖杯戦争を横並びにする。そのために、出る釘共を排除する。
1:峰津院の霊地へと向かい、どちらかに現れるであろうアルターエゴ・リンボを殺す。
2:場合によっては写真のおやじ(吉良吉廣)の残穢を辿り、
仁科鳥子の元へ向かう。
3:
幽谷霧子の誘拐は保留。ただし283プロへの牽制及び調査はいつでも行えるようにする。
4:都内の大学について、(M以外の)情報筋経由で
仁科鳥子の在籍の有無を探っていきたい。
5:ライダー(
殺島飛露鬼)やグラス・チルドレンは283プロおよび
櫻木真乃の『偽のゴール』として活用する。漁夫の利が見込めるようであれば調査を中断し介入する。
6:ライダー(
殺島飛露鬼)への若干の不信。
7:あの『チェンソーの悪魔』は、本物の“呪い”だ。
[備考]
※
櫻木真乃がマスターであることを把握しました。
※甚爾の協力者はデトネラット社長"四ツ橋力也@僕のヒーローアカデミア"です。彼にはモリアーティの息がかかっています。
※
櫻木真乃、
幽谷霧子を始めとするアイドル周辺の情報はデトネラットからの情報提供と自前の調査によって掴んでいました。
※モリアーティ経由で
仁科鳥子の存在、および周辺の事態の概要を聞きました。
【
リップ@アンデッドアンラック】
[状態]:健康、魔力消費(小)
[令呪]:残り3画
[装備]:走刃脚、医療用メス数本、
峰津院大和の名刺
[道具]:ヘルズクーポン(紙片)
[所持金]:数万円
[思考・状況]
基本方針:聖杯の力で“あの日”をやり直す。
0:???
1:皮下と組むことに決定。ただしシュヴィに魂喰いをさせる気はない。
2:283プロを警戒。もし本当に聖杯戦争を破綻させかねない勢力なら皮下や大和と連携して殲滅に動く。
3:
古手梨花を利用する。いざとなれば使いつぶす。
4:敵主従の排除。同盟などは状況を鑑みて判断。
5:地獄への回数券(ヘルズ・クーポン)の量産について皮下の意見を伺う。
6:ガムテープの殺し屋達(グラス・チルドレン)は様子見。追撃が激しければ攻勢に出るが、今は他主従との潰し合いによる疲弊を待ちたい。
[備考]
※『ヘルズ・クーポン@忍者と極道』の製造方法を知りましたが、物資の都合から大量生産や完璧な再現は難しいと判断しました。
また『ガムテープの殺し屋達(グラス・チルドレン)』が一定の規模を持った集団であり、ヘルズ・クーポンの確保において同様の状況に置かれていることを推測しました。
※ロールは非合法の薬物を売る元医者となっています。医者時代は“記憶”として知覚しています。皮下医院も何度か訪れていたことになっていますが、
皮下真とは殆ど交流していないようです。
【アーチャー(
シュヴィ・ドーラ)@ノーゲーム・ノーライフ】
[状態]:頭部損傷、右目破損、『謡精の歌』
[装備]:機凱種としての武装
[道具]:なし
[所持金]:なし
[思考・状況]
基本方針:叶うなら、もう一度リクに会いたい。
0:うた、が、きこえる?
1:戦場を監視し、状況の変化に即応できるようにしておく。
2:マスターが心配。殺しはしたくないけと、彼が裏で暗躍していることにも薄々気づいている。
3:フォーリナー(アビゲイル)への恐怖。
4:
皮下真とそのサーヴァント(
カイドウ)達に警戒。
5:
峰津院大和とそのサーヴァント(
ベルゼバブ)を警戒。特に、大和の方が危険かも知れない
6:セイバー(
宮本武蔵)を逃してしまったことに負い目。
※聖杯へのアクセスは現在干渉不可能となっています。
※梨花から奪った令呪一画分の魔力により、修復機能の向上させ損傷を治癒しました。
※『蒼き雷霆』とのせめぎ合いの影響で、ガンヴォルトの記憶が一部流入しました。
※歌が聞こえました。
【アーチャー(ガンヴォルト(オルタ))@蒼き雷霆ガンヴォルト爪】
[状態]:疲労(中)、クードス蓄積(現在5騎分)、マスター喪失、令呪の縛り
[装備]:ダートリーダー
[道具]:なし
[所持金]:札束
[思考・状況]
基本方針:彼女“シアン”の声を、もう一度聞きたい。
0:マスター……!
1:マスターを支え続ける。彼女が、何を選んだとしても。
2:ライダー(
カイドウ)への非常に強い危機感。
3:
松坂さとうがマスターに牙を剥いた時はこの手で殺す。……なるべくやりたくない。
[備考]
※予選期間中にキャスター(童磨)と交戦しています。また予選期間中に童磨を含む2騎との交戦(OP『
SWEET HURT』参照)を経験したことでクードスが蓄積されています
※"自身のマスター及び敵連合の人員に生命の危機が及ばない、並びに
伏黒甚爾が主従に危害を加えない範疇"という条件で、甚爾へ協力する令呪を課されました。
【港区・東京タワー前】
【
北条沙都子@ひぐらしのなく頃に業】
[状態]:健康、高揚
[令呪]:残り3画
[装備]:トカレフ@現実
[道具]:トカレフの予備弾薬、地獄への回数券
[所持金]:十数万円(極道の屋敷を襲撃した際に奪ったもの)
[思考・状況]
基本方針:理想のカケラに辿り着くため界聖杯を手に入れる。
0:皆さん、私の為に頑張れ♡ 頑張れ♡
1:脱出の道は潰えた。願うのは聖杯の獲得による、梨花への完全勝利のみ。
2:割れた子供達(グラス・チルドレン)に潜り込み利用する。皮下達との折り合いは適度に付けたい。
3:ライダー(
カイドウ)を打倒する手段を探し、いざという時確実に排除できる体制を整えたい
4:ずる賢い蜘蛛。厄介ですけど、所詮虫は虫。ですわよ?
5:ガムテに対しての対抗策も考えたい。
【
古手梨花@ひぐらしのなく頃に業】
[状態]:疲労及び失血(大)、右腕に不治(アンリペア)、決意、鏡面世界にて軟禁中、念話禁止
[令呪]:全損
[装備]:背中に呪符
[道具]:なし
[所持金]:数万円程度
[思考・状況]
基本方針:生還を目指す。もし無ければ…
0:セイバー達が助けに来るまで時間を稼ぐ。
1:沙都子を完膚なきまでに負かして連れ帰る。
2:白瀬咲耶との最後の約束を果たす。
3:ライダー(
アシュレイ・ホライゾン)達と組む。
4:咲耶を襲ったかもしれない主従を警戒、もし好戦的な相手なら打倒しておきたい。
5:
櫻木真乃とアーチャーについては保留。現状では同盟を組むことはできない。
6:戦う事を、恐れはしないわ。
[備考]
※リンボの呪符により、武蔵ちゃんとの念話が禁止されています。
【港区・東京タワー地下/二日目・早朝】
【
紙越空魚@裏世界ピクニック】
[状態]:疲労(小)、背中と腹部にダメージ(いずれも小)。憤慨、衝撃、自罰、呪い、そして覚悟
[令呪]:残り三画
[装備]:なし
[道具]:マカロフ@現実
[所持金]:一般的な大学生程度。裏世界絡みの収入が無いせいでややひもじい。
[思考・状況]基本方針:鳥子を助ける。
0:さてはリンボだなオメー。
1:リンボをぶっ殺して鳥子を助ける。
2:鳥子を助けに行く。何が何でも。何を利用しようとも。だから……死ぬんじゃないぞ。
3:峰津院と組む。奴らの強さを利用する。
4:アイ達とは当分協力……したかったけど、どう転ぶか分からない。
5:アビゲイルとか、地獄界曼荼羅とか……正直いっぱいいっぱいだ。
【アルタ―エゴ・リンボ(
蘆屋道満/本体)@Fate/Grand Order】
[状態]:気分高揚、魔力消費(中)、ダメージ(中)
[装備]:なし
[道具]:
[所持金]:なし
[思考・状況]
基本方針:この東京に新たな地獄を具現させる。
0:それでは──総取りに向けて、動くと致しましょう。
1:霊地の収奪と、窮極の地獄界曼荼羅の実行準備。
2:計画を最終段階に移す。フォーリナーのマスターを抹殺する。
3:式神は引き続き計画のために行動する。
4:…のつもりでしたが、やめました。祭りの気配がしますぞ、ンンン――。
5:式神にさせるつもりだった役目は本体が直接担うことに変更。何をするつもりかはおまかせします。
6:それはそうと新たな協力者(割れた子供達)の気質も把握しておきたい
7:“敵連合”は静観。あの蜘蛛に邪魔されるのは少々厄介。
時系列順
投下順
最終更新:2023年04月30日 01:27