エーダリア・追跡者から逃れて/グレアム・今度こそずっと側に/ゼノーシュ・優しい秘密
本日の更新はお休みです。
追跡者から逃れて
今度こそずっと側に
グレアムについては、同行した先で遊び疲れたネア達の保護者をしている感じでしょうか…
優しい秘密
本日のSSの更新は、ここまでとなります。
お付き合いいただき有難うございました!
画像中の文章
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ふと、遠い夜の暗さに心が震えた。
安息日の前日の夜は穏やかで、開いたばかりの魔術書は美しい術式の薔薇を咲かせている。
それなのに、身を守る知識を得る為に、物置部屋のカーテンの影に隠れて魔術書を読んでいた幼い自分の怯えた息遣いが、耳元で聞こえたような気がしたのだ。
深い溜め息を吐き、無様に軋んだ心の圧を逃そうとしたその時、ふさふさしたものが足にぶつかった。
机の下を見ると、ぼろぼろになったタオルを咥えた銀狐が尻尾を振っている。
もう一人で怯える必要などないのだとその温もりにほっとしたのも束の間、口元のタオルを見て凍り付いた。
「こ、これはヒルドの私物だな?!すぐに返して…」
「エーダリア様、ここにネイが来ていませんか?」
凍えるようなヒルドの低い声が戸口から響いたのは、その直後のことだった。
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風に煌めき落ちる星影の下で、美しい夜を見上げた。
しゃりんと涼やかな音が聞こえたので、どこかに星屑が落ちたのだろう。
膝の上に頭を乗せてすやすやと眠る少女の髪を撫でてやり、その少女の首元に体を丸めて幸せそうに眠る真珠色のムグリスを指先でそっと撫でた。
大切な王の幸せそうな寝顔は、いつまでも見ていられる。
遠いあの日、狂乱して壊れてゆく視界の向こうに立っていたシルハーンは、淡く微笑みながらも泣いているように見えた。
孤独に食い荒らされながらも泣く事すら知らなかった大切な王が、今はこんなにも無防備に安らいでいる。
「俺は、もうどこにも行きませんよ」
そう呟くと微笑みが心を満たし、美しい夜の静けさに深く感謝した。
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暗い窓の外から、暖かな光の灯る部屋を見ていた。
それはいつかの孤独を彷彿とさせる光景だったが、今はもうあの優しい微笑みを独り占めしてもいいのは自分なのだ。
でも今日ばかりは、こうして息を潜め、なぜ自分だけが呼ばれなかったのだろうと不安に心を震わせる。
しょんぼりと窓辺から離れようとしたその時、大好きなグラストがこちらを振り返った。
「ゼノーシュ?」
窓を開けて、身を乗り出したグラストが手を伸ばしてくれる。
くしゃりと髪を撫でた大きな手に、萎れかけていた心が少しだけ弾んだ。
「いいんだ。僕に内緒の話なんでしょう?」
「そうだな。今日は急な休みだったから、ゼノーシュに白いケーキを作る材料があるかどうかをこっそり調べていたんだ」
そう微笑んだグラストに、ぱっと明るくなった心を弾ませて微笑む。
「僕、今日でも明日でもいつでもいいよ!」
そう答えれば、柔らかな心が滲むような優しい目で微笑んだグラストに、胸がいっぱいになった。
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最終更新:2022年05月07日 11:52