地理・施設

※ネアが引き落とされるより以前に滅亡した国を(亡国)と表記。(作中で滅亡した国は(亡国)としない)


ヴェルクレア】

本作品の舞台となる国家。元は四つの異なる国で、南のヴェルリアが統一戦争を起こし、北のウィーム、東のアルビクロム、西のガーウィンの三国を併合した。
王都はヴェルリア。

旧北の王都・ウィーム

領主は現在エーダリア
財産の質を持つ土地。それ故に、土地そのものは不可侵の質。
ウィームそのものを滅ぼすことは出来ないが、統一戦争のようにより頑強な管理が可能な者が現れてしまうと、統治者の変更はあり得る。
街は円環状にひろがっている。哺乳類寄りの精霊や妖精が多い。

雪を沿わせる高い山と、深い森、更には深淵の湖に囲まれた北の王都は、自然の要塞に守られている。
また、魔術に長けた人間も多いので、防衛は目に見える形で特化していない。
ヴェルクレア一、また大陸一潤沢な魔術を蓄えた土地で、リーエンベルクに降る雪には祝福の気配が強く淡く光る。

芸術や音楽や魔術が栄えている。壮麗で繊細で雪と森で情緒的。山と森と湖に囲まれている。ウィームの領民達の生活水準は非常に高く、魔術の叡智に恵まれた住人たちは豪胆かつ優美でマイペース。

ウィームの特産に、精巧な硝子彫刻に金の彩色を重ねて瑪瑙で磨く硝子製品がある。


統一前、旧ウィーム時代の初期から全盛期にかけては二つの王家により統治がなされていた。が、様々な事情から片方の王家はウィームから出奔、あるいは市井に下りることを選んだ。そのもう一つの王家の者達の身体的特徴は、ゆるやかに巻いた黒髪に青や菫色混じりの灰色の瞳を持つという。絵画でしか残されなかったその王族の記録は、統一戦争で全て焼かれて消失した(k251)。

また、王家としてたくさんの名を持つ事で、魔術の豊かな土地からくる、呪いや障りを防いでいた。
グレアムがクライメルの呪いの黒馬車の標的として淡いの向こうへと逃げのびてゆく王子の為に、ウィームに彼の為だけの王家を立ち上げたので、旧ウィームには厳密にいうと3つの王家が存在していたことが、短い期間であるが統括の魔物として治めていたゼノーシュの口から語られた。(k292)

統一戦争集結直後にヴェルクレアから赴任してきた領主は大変吝嗇だったため、リーエンベルク内のわかりやすく価値のある設備や品物の多くが売り払われたが、領民達の力によりその領主が追い払われた後に領主代行として赴任してきた当時ヴェルリア国軍の大尉であったオフェトリウスが、前領主のやりように荒ぶるウィーム市民を平定し、当時からして手に入りにくい消耗品などをシカトラームに備蓄しておいてくれた経緯がある。

ウィーム(旧王都周辺)

旧王都全体としてではなく、旧王宮とその周辺の街を指してウィームと呼ぶことがある。領地名と明確に分ける場合はウィーム中央と表現される。

絵画と音楽の街で非常に物価が高い。オペラハウス、美術館に自然史博物館、野外オペラが名所となっている。
紅茶とケーキも有名店が多い。


リーエンベルク
またの名を北の王宮という。元は北の王族のための王宮だった為。白と青磁青を基調としている。国境の森に囲まれている。
雪狩りの為の好立地に作られた北の王族の為の王宮。
王家の白鳥城と称される華やかな見た目に反して、要塞としての機能も高い。
大小合わせて七百の部屋があるが、現在使用されているのが、本棟の二十七、ネアの住む離宮内の別棟の十一。50

  • 本棟/本宮……執務室がある。離宮から歩いて数分で着く。本棟の大廊下は、壁紙や天井画のうっとりとするような精緻な暗さと窓の外の純白のコントラストが広がっており、胸の奥がすうっとするような感嘆をもたらす。現在使用されているのは二十七部屋。

  • 離宮……ネアやディノ、銀狐の部屋がある。禁足地とされる魔術的隔離地の森に面した東棟。現在使用されているのは十一部屋。

  • 別棟……衛兵用の控え室がある。

  • 外客棟……外からの客の受け入れるための会議室や客間、談話室、備蓄庫、遮蔽室等がある棟。本棟や離宮と回廊で繋がっている。度々リーエンベルクに泊まるアルテア専用の部屋になりつつある客間は住居棟にも近く、外門も見える。また、ここの他にも外客用の施設がある。魔術の潤沢なリーエンベルクで、不用意に来客を驚かせたりしないよう、内装を気紛れに変えることを防ぐ不変の質を部屋の構築の際に書き加えてある。

  • 住居棟……会食堂や厨房、仮設厨房にもなる保管庫など生活に必要な施設が集まった棟。イブメリアの飾り木を飾り、門にならない暖炉が灯る居間もここにある。

  • 騎士棟……騎士達の個室や関係施設がある棟。本棟や離宮とは屋外の回廊で繋がっている。

  • 西塔……バベルクレアの花火を打ち上げに使われている。

  • 禁足地の森……その国の為政者でも力の及ばない、原始的な魔術の地。

  • 中庭……中央にある素晴らしい彫刻のある噴水は、周囲に真っ白な水仙と青紫のアネモネを咲き誇らせており、おとぎの国のようなロマンチックさがある。厩舎に住んでいた馬の亡霊が出る。

  • 旧王家の礼拝堂……真夜中十二時の鐘を鳴らしている。

  • 地下の魔術基盤……リーエンベルクに敷かれた全ての魔術を支える重要な場所。影絵の深層にあり、転移の間の隣にある白い雪の結晶石と水色の氷の結晶石の象嵌細工の螺旋階段から降りる事が出来る。淡い色の波がひたひたと打ち寄せる海岸を思わせる床には、一枚の基板の覆いの足場を挟み、どこまでも澄明な海の色が敷き詰められている。その下をゆらゆらと模様を変える波紋を潜るように泳ぐ色鮮やかな鉱石で出来た魚達のひとつひとつが、重要な魔術基盤となっている。地下層にはこのような基盤が多く活動しており、地下の庭園には蝶、外壁を司る境界線には魔術基盤の鳥がいる。自己補修の機能を持たせるため、生き物のをとったことで、時に魔術的な事故がおきることもある(309)。エーダリアが季節の変わり目や、時間の空いた時等に降りて細やかにチェックしている。その際、エーダリアがリーエンベルクに対する深い愛を伝えたところ、歓喜した魔術基盤によって普段は無い壮麗な部屋がたくさん現れたり、壁やカーテン等の意匠に花が咲きまくる椿事が起きた(k14)。

  • 影絵の花畑……かつて禁足地の森のあわいにあった花畑。夜の月明かりの下に広がる森の中の花畑で、淡い淡いレモン色の花々から鎮静効果のある特殊な魔術が敷かれ、疫病の患者や悪変に蝕まれている生き物達を治療の間隔離するのに使われていた。花畑自体は既に失われているが、影絵として残ったので、リーエンベルクの管轄となっている。悪変した氷狼に襲われたベージの治療に使われた(k21)。

  • 客人の間
  • 謁見の間
  • 談話室

  • 衛兵用の控室……別棟にある。リーエンベルクの建築にあたった者はかなりの完璧主義者だったのか、初見の客なら来客用の控室だと思ってしまうくらいの造りになっている。けれども離宮にくらべればやや簡素なしつらえ。来客というほどの身分ではない、警戒が必要な人と話すのに使われている。

  • 騎士棟の一室……任務帰りの騎士達の為の、遮蔽と解術を敷いた部屋。気付かずに持ち帰った呪いや穢れなどを引き剥がす効果など、様々な魔術の叡智が敷き詰められた、リーエンベルクの中でも高度な魔術の粋が集まる場所になっている。銀狐の誕生日を祝う朝食会に使われた。(975話)

  • 遮蔽魔術の広間……外客棟にある広間の一つ。外からのお客を受け入れる部屋として作られただけに、その壮麗さは目を奪う。内側のものを外に出さないという魔術の遮蔽がある部屋で、問題のあるお客がいた際に、この部屋ごと隔離出来るような魔術で覆われており、かつては、国交のない国の使節などとの会談もこの部屋で行われたと言われている。気象性の悪夢の時(559話)や、あわいの波が押し寄せた夏至祭(802話)、呪物の傘になったクラ・ノイとの対話などに使われた。(k12話)

  • 特別隔離区画……リーエンベルクの中に何か所か設けられている。外部からの浸食を防ぎ内部の施設を守る為の場所と、内部で行われていることを外部より隠匿する場所の二種類がある。

  • 会食堂……住居棟にある皆で食事をしたり、酒宴を楽しんだりする部屋。行事によってはふんだんに花を活けて華やかに飾り付けられることもある。平常時の詳しい描写はほとんどないが、会話の様子からして大きな長いテーブルに皆がつく形なのではないかと思われる。

  • 大浴場……元は王族専用の浴場。手入れに時間がかかるので、現在はあまり使っていないが、時々真夜中に勝手にとても芳しい百合とオレンジの香りのお湯を湛えて、それとなく住人達にお知らせしてくれる。内装も最盛期の立派なものになっている。

  • 来客用の茶葉の保管庫……談話室の隣にある。茶葉の為に室温管理の魔術が敷かれている。

  • 図書室……歴代の王の胸像や見事な天井画が素晴らしい、目にも麗しい王宮のものらしい図書室。ダリルダレンの書架にほとんどの蔵書を収めているので、王宮にしては微々たる所蔵数で、閲覧禁止の書架などもない。三階分が吹き抜けになった天井の高いスペースになっていて、上の部分の書架には、可動式の階段をかけて登る仕組みになっている。

  • 夕墨の部屋……終戦前に、南の王族と密談が持たれた部屋だと言われている。墨がかった茜色を基調としており、ゼノーシュが普段使わない部屋でお茶をしたいと開拓した部屋。

  • 大広間……薔薇の祝祭の見本として集められた大量の薔薇を並べるのに使われている。旧王朝時代から大切に使われふんだんに魔術を吸い込んだカーテンは、部屋の薔薇に感化されてしまうくらいに自我を育て、例年はしゃいで織り模様の蔓薔薇を咲かせてしまう。また、出るという噂の首無し貴婦人以外にも、薔薇を喜ぶリーエンベルクの亡霊達が大集合する。

  • 冬の大広間/冬の広間……光りの加減で織り模様が浮かび青い影を落とす美しいドレープのカーテンに、雪の結晶のように見える素晴らしい雪と氷の結晶石のシャンデリア、こつこつと踏む床の結晶石は雪のように青く白く、窓の外の雪景色と合わせれば冬の美しさの全てを集めたように見える美しい広間。660話では、天井画の左の端に描かれた妖精の騎士は、白薔薇の妖精に扮してはいるがエーヴァルト王であることを、ネアはエルトから聞き、エーダリアは山猫のドロシーから教えてもらっていた。ネアの誕生日を祝う会に毎年使われており、独身最後の誕生日には冬告げの舞踏会からネアが持ち帰った冬聖の小枝を喜んだ家事妖精達が、きらきらとダイヤモンドダストの降る冬の夜が広がる特別仕様にしてくれた。景観を魔術で移植して、広間の湖水水晶の床石には霧が這い、装飾として部屋の隅にはイブメリアを思わせる雪をかぶったモミの木のような青緑の葉を持つ針葉樹の木があり、ダイヤモンドダストが陽の光に煌めく雨のように降っていて、雪まであるのに寒くない素晴らしい部屋となった。(977話)

  • 霧の間……秋から冬の間にかけての霧深い夜にしか現れない長らく実在が疑われていた幻の広間。人外者が霧と夜会を楽しむ為の部屋なので、魔物か、妖精、或いは竜が三人以上いなければ開かない。見事なシャンデリアはクリスタルのようにも見える霧の結晶石製で、中心に淡い水色を滲ませて縁の部分は乳白色になっており、ふんわりと霧を纏って輝く。部屋の壁の全てが暗く澄んだ青に紫の色味が重ねた濃紺の夜の結晶石でできており、シャンデリアがどこまでも続く夜の大広間に浮かんだ霧の中の月のように見える。初代の夜霧の魔物の作品。ネアが作った収穫祭のパイを食べる日のために開かれた。(927話)

  • 雪と花の小部屋……バレンタインデーのリーエンベルクに突如現れたお部屋のひとつ。繊細な金細工のドアノブがついた美しい扉の向こうに、ふわりと積もった美しい雪景色と、立派なライラックの大木が部屋の輪郭を示すように生えて、薄紫の花をずっしりと咲かせている。その枝の中に守られるようにして、灰色がかった淡い薔薇色の花をみっしり咲かせた冬薔薇の茂みに囲まれた小さなガゼボがある。八角形の造りの白いガゼボには、中央に丸い森結晶のテーブルが備え付けられており、壁と一体になっている椅子の上には、細やかに光る糸を縫い込んだ淡い水色の天鵞絨のような手触りのふかふかとしたクッションが敷かれている。そのガセボでネアが焼いたバレンタインデーのチョコレートシフォンケーキを囲んで、ディノとネア、ちびふわになったアルテアの3人で小さなお茶会となった。(k13)


ネアの厨房
森の中にある洋館。ディノからネアにプレゼントされた。ウィームの森の中ではあるが、影絵側に作られている。
鍵を使うとそのまま厨房に入ることができる。
最初きちんと準備されていたのは厨房だけだったが、後にアルテアが手を入れ、寝室など他の部屋が整えられた。

ダリルダレンの書架/ダリルダレンの書庫
国内最高峰であり、世界で一番美しい図書館とも言われる。
ダリルダレンの書庫は領民達にとっての図書館にあたる所で、その蔵書の全てをダリルが管理している訳ではなく、入ってすぐの区画には領雇用の公務職員である司書たちが管理する一般棟がある。特に資格なく貸し出しが許可され、夜中に誰かが本から出てくるような本はない。
ダリルダレンの書架と呼ばれる部分が、大聖堂のような建物の本館となるダリルの領域で、ドーナツ状にその周囲を囲む一般棟の図書館を出て、中庭の外回廊を通る。螺旋階段を登るようにゆっくりと知識を深めてその叡智の最奥に近付いてゆくのが、書の魔術の作法であり、この建物の作りはその形を正しく現している。
羊皮紙や紙の匂いに、蓄積された魔術の歴史のミントのような独特な香りに包まれた薄暗い書架で、膨大な結界を組み上げて迷路のように外周を取り囲んでいる。エーダリア曰く「趣味の悪い要塞」。
書架前の広場は野外オペラの会場になっており、近くに王立博物館と歌劇場がある。

ローゼンガルデン(ローゼンガルテン)
リーエンベルクの正面、街を挟んで反対側にある薔薇の丘。薔薇の祝祭の日には祝祭の舞台となる場所だが、冬になると雪に閉ざされ、ひっそりと荊のカーテンを纏う。夏至の日はカップル以外にも美しい薔薇の妖精達への求愛者が多く押し寄せ、人の集まるカフェやレストランの周囲以外は、なみいるライバル達を殲滅せんと荒ぶる求婚者が潜む危険区域となる。

ザハ
老舗ホテル
高価なチョコレートケーキが有名。ウィームの中心街にある。真紅の絨毯と旗が目印。
一階にカフェ兼レストラン、二階にラウンジ。一階と二階は吹き抜けで繋がっている。
カフェ内は白とミントグリーンを基調 にした上品な雰囲気。少しお値段は張る。
十年程前に倒れた王家から出奔した料理人たちが奮起し、ザハという歴史は長いがあまり奮わなくなっていた高級ホテルの料理部門を安定させた。菓子部門もあり。

アクス商会
表向きに卸すのは物品ばかりだが、実際には、情報や市場調整が商売の中枢を占めている。
高級紳士服店を装っている。商会としての敷居が高く、特定の顧客としか取引をしない。また、紹介状のないお客は入れない。アクス商会を示す紋様の鍵がロゴになっている。
ヴェルリアにある古い塔とアルビクロムにある瀟洒な商館など、各地に支社がある。
本社はウィームにあるリノアールの向いにあり、上等な蒸留酒を結晶化させたような、茶褐色半透明の石材で建てられた瀟洒な店となっている。

リノアール
世界に誇る品揃えの高級複合商店、三階建ての離宮めいた造りの建物で、高級百貨店のような外観。
店舗内に違法併設された別店舗などもあり、魔術道具の店や、妖精の営む宝石店もある。

飴玉屋
ウィームの中央通りの、リノアールより一本手前の通りに位置しており、ゼノーシュ御用達のクッキー専門店の二店舗隣にある。

銀狐専門店
ウィーム領主の襟巻きになっている銀狐グッズの専門店。
銀狐を模した陶器人形や、ネアを泣かせたくじ引きカード、銀狐柄のポーチやハンカチ、塩入れなど、銀狐ファンのウィーム市民の心を鷲掴みにする品を販売している。一番人気の品は狐印の塩なので、たぶん銀狐の正体はバレバレ。店主はエーダリアの会の役員。

スープ専門店
ウィーム市内にあるスープの専門店。
ネアのスープの飲み方を偏愛する店主のアレクシスが世界中を回ってレシピを考え、エーダリアの熱烈なファンである妹の一家が店を回している。
店主が居る時は試作品や、特殊効果のつく特別なスープが飲めるので、その日を狙って魔術師達や他の料理人達は勿論、ザハの料理人やアクス商会の面々、リーエンベルクの料理人も後学の為にと足を運ぶ。
ネアが一時期ドはまりした山羊のチーズのスープや、スプーンの精がウォルターの辛いスープにスープの精を派生させたり、果ての薔薇についての情報をくれたのもこの店。時々ネアの元に新作スープのお知らせが届けられる。

スフレ専門店
ウィームの中心地から少し外れたお屋敷街にある旧ロクマリア公爵の駐在館であった壮麗な建物に入っている店。
豊富な種類のスフレを絵入りのメニューから選ぶ事ができる。

歌劇場
王立歌劇場ことオペラハウス。
ウィームの市街地、ダリルダレンの書架の近くにあり、ヴェルリア王都の歌劇場よりも大きく美しい。屋根には竜の彫刻が施されている。
数ある席のなかでも、最高のボックス席は薔薇のロージェと呼ばれている。
前の広場には小さな噴水があり、イブメリアには美しくライトアップされる。

大聖堂
ウィームの一番端にある、複数の塔からなる高層建築。
ザルツからの主要交通路で旧王都に入る時、必ず正面に大聖堂が見えるような配置になっており、国を跨ぎ中立の権力を有する教会を王都の守りとして利用した意図も見て取れる。

議事堂
傘祭りの広場に面して建っている壮麗な建物。
ウィームの内政に深く関わっており、日々諸侯との重要な会議などに利用されている。
ぐるりと周囲を円柱で囲みドーム状の天井を乗せた構造の建物で、屋根の上にはウィームの権力の象徴でもあった雪竜の彫刻がある。また、建物全体を大きな木に見立て、内外の屋根の部分には精緻な木の葉の彫刻が施されている。
特に背の高い吹き抜けになっている内天井は葉や枝を模して彩色された装飾で森の木々が茂るような表現がなされ、またその奥に隠されたステンドグラスを通した光が実際の木漏れ日のように落ちる事から、議事堂には魔術の森の天蓋あり、と言われている。
中は円形の議会場を囲むようにドーナツ状の回廊があり、傘祭りの際は外来客と騎士の昼食時の交流の場となっている。

封印庫
立派な円柱に支えられた白大理石の神殿のような建物。
入り口の奥に円堂と半球形のドームがある。円柱の奥の壁は大きな扉があり、堅牢な魔術刻印で施錠されている。
送り出しや焚き上げを必要とする祟り物や、滅する事で大きな被害が出る危険な魔術的な品々が数多く封印されている。
そのなかの保管庫には傘祭りを待つ使用済みの傘が数多く納められている。
また、シカトラームへの入り口もここに隠されている。
この建物の前の大きな通りでは、定期的に夜市場が開かれ、不思議な品物や特別な品物めあての客で賑わっている。

シカトラーム
どこの国や土地にも属さず、特別な魔術の理と、その為に用意された守護者達によって運営されている魔術銀行。
ウィームに二年以上住んだ者、特定の許可証を持つ者達にしか明かされない特別な場所。
当初の預け入れは魔術だけだったが、今は、資産価値は高くても、保管が難しい秘宝など表の銀行に預け入れが難しい財産も受け入れている。
中は十二の区画の分れており、それぞれに番地がある。持ち主が居なくなって開かなくなった扉もある。
シカトラームの入場規制の魔術そのものが命を得た許可証検査の妖精のほか、許可証周りで一人の魔物と、内部の管理で二人の妖精と一人の精霊、そして三人の魔物が役職を拝する管理者として運営に携わっている。
各人それぞれ普段は他の仕事をしているが、シカトラームが開くときだけその役割を思い出す不思議な仕組みになっている。
元はノアの城を改築したもので、基本的な制度や魔術の預け入れの術式の仕組みはノアが整えた。その後アルテアグレアムも携わっている。
封印庫にある特殊な金庫室の扉にその許可証を見せると、廊下の突き当たりに、譜面台と銀の譜面が現れる。
その譜面を魔術の調べで奏でれば、地下に降りる階段の扉が開く。その譜面の旋律を奏でる魔術で、ウィームの民かどうかを測る。
が、許可証が届いて招かれたネア達一行は、思わぬ大冒険を経て目的の品へとたどり着く事になった。(950)

ウィーム美術館
ウィームの町中にある壮麗な建物の美術館。
エントランスの中央は吹き抜けになっており、立派な装飾の階段とそれを囲むようにおかれた壁画があり、その両方を楽しめるよう3階にカフェが併設されている。
死者の日には、同伴者なしの墓犬や死者も美術鑑賞を楽しめる試みが始められたばかり。(933話)

地下墓地
ウィームにある旧時代の地下墓地群。
別名で死者の街と呼ばれており、豊穣祭の季節には亡霊になった死者達が出てきて大変賑やかになる。

王立博物館
新規の収蔵品は儀式詠唱の式典により所蔵の作品であるという着在の魔術添付を行っている。この添付を受けられない収蔵品は他の収蔵品から余所者めと仲間はずれにされる。四十年前、そうして仲間外れにされた収蔵品が思い余って脱走する騒ぎがあったことが、儀式詠唱をしに行くエーダリアの口から語られた。(k194)

スケート場
冬になると凍るザルツへと続く大きな川が、冬季限定のスケート場として解放されている。
昼夜を問わず人がいるため雪熊など悪い生き物が出る事もあり、滑る人への猟銃を借し出しなども行われている。
ラベンダー蜂蜜入りのホットミルクやザハのクリーム珈琲など、スケート場限定の美味しい飲み物が売られているので、市民ばかりでなく観光客にも人気がある。


アルバンの山

ウィーム西にある山。
リーエンベルク御用達の牧場をはじめ、ソリ滑り、咎竜事件、雪菓子採取などのエピソードで登場。

ザルツ

ウィーム第二の都市。
ウィーム領内ではウィーム中央に次ぐ大都市。国交のない国からの留学も受け入れている大学があり、ヴェルリアの中でも手薄な拠点の一つ。ウィームとザルツとの間には大きな川があり、スケートが出来る。世界的に有名なのは音楽院だがザルツの魔術大学は音楽の研究から派生した魔術に長けている。動物園も有名。ザルツ銘菓として有名なのはクーヘンで、ザルツクーヘンとも言われる。
ザルツを任されている伯爵とヒルドは折り合いが悪いが、過去に何かがあった訳でもなく、単純に性格の不一致である。

シュタルト

貴族達の別荘地になっている、湖水地方にある湖岸の小さな町。湖岸に沿う町並みはウィームの真珠と言われている。千人程の人口の小さな町だが、住民に見合わない数の屋敷が立ち並ぶ。
透明度が高い湖と塩の採掘地としても知られ、元は塩の魔物の城であった岩塩抗は地下街のように入り組んでいる。岩塩坑へ降りるための木造滑り台や、地底湖など一部を一般客に公開して観光資源とし、残りの部分は現在も採掘中である。レース産業が有名。

ヴェルツ

最も暗い夜が訪れる、暗く黒い街。
夜の気配が強すぎて他の要素を避けてしまうため、雪は降らない。

建材の黒大理石の産出地で、四方をその黒大理石が採掘される山で囲まれている。
最も暗い夜が来る街のため、純粋な黒の大理石が産出される。生粋の黒は珍しい為、各国で重宝されている。
また、この大理石は光を吸うことから、貴人の大罪人の牢獄にも使用されている。

黒みのある建材のほとんどが揃うヴェルツは、この土地の建物の殆どを黒いものに揃えてしまっている。
石畳も漆黒で、土壌も黒が強く、生い茂る木々も黒みの強い針のようなモミの木ばかり。
その代わり、どの家々にも壁に手書きでレリーフや柱などが色鮮やかに描かれており、それがこの土地の伝統的な建築手法となっている。

カスティリオ

小さな港がある、ラベンダー畑とオリーブ畑に囲まれた小さな町。
夏の終わりと冬の始まりに降る追憶の雨を蓄えたラベンダーやオリーブを売ることで生計を立てている。

クーデリ

ウィームから見て西にある学徒の都市。リーエンベルクの西にある。

グラニ

ウィーム近郊の温泉街の一つ。温泉プールがある。
海側からはウィーム中央より更に内陸に入る土地。

グリシーヌ

ウィームとヴェルリアの境にある。

ツグリの村

ツダリの隣に位置する。ツダリから移住した若者達が作った村で、同じ南瓜でもやや革新的な品種を出荷している。
南瓜祭りに似た、悪いものを溜めた南瓜を頭で割って鎮める儀式が行われる。

ツダリの街

南瓜の名産地。昔ながらの美味しい南瓜を作っている。
毎年南瓜祭りが行われる。

ツベルトの草原

ウィーム北西にある。
毒舌な鶏や鴨、そしてここにしか生息しない草原牛に草原山羊がいる。
ほんのりとミントのような香りを持つ牧草地は、穏やかさと不変の祝福をかけられた稀有な土地であり、平穏を司る精霊が住んでいた恩恵なのだと言われている。

トウフェム

アルバンの西側にある小さな集落で、人差し指ほどの大きさの小さな人形の産地。
ほっこり可愛い系の人型の人形に、集落の女達の器用さで凝りに凝った民族衣装やドレスなどを着せており、その色鮮やかで可憐な素晴らしい仕上がりは、人外者への対価や献上品として利用されるほど。
年に一度、作った人形達で人形遊びをして、桃の精霊に奉納する人形飾りの祝祭がある。
それに利用される人形飾りの桃を手に入れたエーダリアが、カット済みの桃を食堂に置いたまま席をはずしてしまったため、知らず桃を食べてしまったネアが幼児に変身する事件が起きた。(k29)

ビャシヤ村

ウィームの北部にある山間の村。
酪農と特殊な魔術を持つ者による雪森結晶の細工が有名。
土地の魔術がよく、魂が育ちきっておらずに未熟な者の中に、大地や自然に近しい目を持つ者が育ちやすい。
作られている災いを封じる為の精緻な彫り物が有名な雪森結晶の装飾品は、小さな滴型の石に細やかで美しい彫り物をし、込められた魔術が石を輝かせて持ち主を守る。
旧ウィーム王家に永きに渡って守り石を納めており、エーダリアの祖母リリィも足を運んで守り石の作成行程を学んだ。
最後の石の納品が叶わず死んでしまった届け人が、のちに祟りものになって事件を起こした。

フエビエ

ウィーム領の最北端に近い土地にある。絵付けの陶器などが有名。
二度目の送り火の魔物捜索の際の候補地で、擬態が得意なノアを探しにきた黒狼姿のギードとばったり遭遇することになった。

ミノスの村

k369で銀狐の予防接種のために訪れた、祠守りの竜たちを守護者とする集落。すでに役目を終えた迷宮を利用して作られている。

その他(地名が特定されていない)

狐温泉
ウィームの北部にある小さな古城。
お城の中央に湧き出てきた湯は、獣型の人外者や魔術師に人気があり、特に狐系統の獣にはかなりの効用がある。
様々な土地の祝福に溢れたとてもよい匂いがする人気の温泉。


旧南の王都・ヴェルリア

現王都。海業と商人の都。海の加護を得ており、海と共に生きる都市でもある。
ウィーム以外から塩を得られない呪いがかけられている。
火竜と海竜との結びつきが強く、精霊や妖精は水に纏わる特徴を持つ者が多い。
また、火の魔術が強く、土地の生き物達は目で見てわかりやすい類の大きな力を持つ。(k6)

平地を森に囲まれ、中央からだいぶ離れてから山々となるウィームとは違い、王都のヴェルリアは海辺が一番低くなっており、そこからなだらかな勾配にみっしりと建物が並び、一番高い位置に王宮がある。また、王都の道路は砂色の石畳になっており、日差しが強く色鮮やかな明るい街並みの色彩に良く映える。
国に管理された見事な港のすぐ奥には職人街や船乗り御用達の飲み屋や道具屋が所狭しと連なり、その袋小路の石壁には違法増築された併設空間への扉がある。
大運河沿いには華やかな商館が立ち並ぶ。また、閑静な高台には庭園や貴族の館が連なる。

下町の者達が貧しく貴族だから裕福ということもなく、港沿いの小さな屋台の店主が海の秘宝で大貴族より儲けていたりもする。
計算高くしたたかで、噎せ返るような命の営みが行き交う万華鏡のような街であり、ウィームと同じ王政の土地ではあるが、どこか闇鍋のような得体の知れない賑やかさと如何わしさがある。
ネア曰く、ウィームが上品に陳列された高級テーラーなら、この街は天井いっぱいまで品物がぎゅうぎゅうに詰め込まれた雑貨屋のようであり、しかもその雑貨屋にはとんでもなく希少なものや高価なものが棚の隙間に詰め込まれているようだとのこと。

境界となり得る海沿いの国であったことから、時間と世界が交差して押し寄せてくる漂流物という厄災についての知識を多く有していることが、ネアとヴェンツェルが漂流物の城に落とされる事件をきっかけに明らかになった。(k784)
ヴェルリア王族は、元より境界の向こう側から来た者だという説もあることから、ヴェルリアの古い貴族の中には、海の向こうからやってくる力を持つ者を招き入れると大きな富を授かるという言い伝えを信じている者が多いという。(k785)

ウルメラ

王都の中央から少し西側にある港町。
平原と海に面し、町が小規模で物流も良い。

料理人の卵に人気の町で、他国の調味料や食材も手に入れやすく、質のいいレストランが多い。
ヴェンツェルはこの町のトルテッリが大好きで、時折お忍びで食べに来ている。

最近では人気の観光地の一つになっている。
宿泊施設が少ないため、朝でも外部からの出入りがあり、近くの大きな町から訪れるという観光客で日中は賑わいを見せる。
最近では、行列が出来る有名レストランの朝食ツアーもある。

城壁に囲まれている。陸からの敵に備えたものではなく、港から侵略があった際に町ごと海の玄関口を塞ぐために造られたもので、その際には住民達は転移で町を出る。
王都のように正規海軍がいない港のため、他国からの侵攻などを想定したこのような護りがあるという。


旧東の王都・アルビクロム

工業が盛ん。学徒と書架の街。太陽の光を好まない、雨と霧の街でもある。
黒檀色の石で威圧感のある窓の少ない建築を好む。ゴシック建築を彷彿とさせるガーゴイルに、街中に塔が多いのが特徴。窓が少ないのは本に日の光を当てないようにするため。
商業用に開発されたもののどこか雑然としている。また、夜の繁華街が名高い。
食べ物に関してはとても評判が悪い。
第五王子の母がアルビクロムの王族だった。
精霊や妖精は煙や影などが多い。現在のトップは第三王子の系譜。

  • 劇場……音楽や演劇のためではなく、学術や数式を分かりやすく浸透させる為に建てられた。

  • 武器庫……大きな黒い塔。国境域で魔術の薄い土地を守るために建てられた。他にもいくつか点在している。

  • ノーレム聖堂……夜の繁華街にある。裏手の墓地はとても広く、木々や花に囲まれている。墓地というものは大変に魔術的な敷地なので、部外者の立ち入りは厳しく制限されている。グリムドールの鎖を探せる月の羅針盤を作った黒煙の魔物が墓地の中央にある月の女神の像に住み着いていたため、ネアたちが訪れることになった。(40)

  • 森林公園……乗馬用のコースや遊歩道がある大きな公園。奥にダイアナの噴水がある。ディノに片腕を落とされた黒煙の魔物が逃げ込んだ場所。

  • 旧王宮……月の魔物のモニュメントがある。

  • 王立図書館……妖精が住んでいる。

  • 博物館


ロンディアの砦

アルビクロムの国境域、ハヴランとの国境にある砦。
ラッカムがヴェルクレアの騎士の身分を装う際に名前があがった。


旧西の王都・ガーウィン

教会文化と信仰を司る都市。
四角く区画整理されている(ものすごく几帳面な誰かが都市開発したのだろうと思ってしまう整然ぶり)。
ゼベルの叔父が領主を務めている。枢機卿リーベル(ゼベルの兄)の主な活動場所となっている。
天上湖のある空中都市が観光地として有名。
爬虫類系の精霊や妖精が多い。ミカエル曰くあまりかわいくないとのこと。
第四王子ジュリアンの母はまだ統一戦争前のいち国家であったガーウィンに亡命したロクマリアの王族である。瞳占いをした水竜の巫女さんが務めていた神殿がある。

鹿角の聖女とされる修復の魔物を祀るのがこの文化圏の教会の成り立ちだが、その中には土着の信仰により祀られる様々な人外者達専用の神殿や教会も混ざっている。
枢機卿であるムエノやリーベル達は、教会組織の中心となる鹿角の聖女にのみ仕える信徒であるが、それとは別に、同じ教会組織の中から、古くからある信仰や祀り上げられた祟りものなどを司る教会の管理者を選出し、神官とする。
流行の大きな信仰が雑多に散らばった様々な信仰を飲みこんだ結果、このような形に収まったのだが、古くから神官と呼ばれていた土着の信仰を司る者達の呼び名を変えるのは不可能とされ、教会組織の中に別の魔物を祀る神官がいるという奇妙な形になっている。
それぞれに若干ではあれ教えなども違う。(554)
その成り立ちから信仰の系譜が強いので、目に見えず心や魂に作用する類の魔術に長けていおり、また、固有魔術を持つ者が多い。(k6)

空中都市

ガーウィンにある雲の上にある空中都市。街の中心にある真円の天上湖が有名。この都市の上にも幾つもの島が浮かんでおり水が循環している。観光資源を生業としている都市で、年間に上がれる観光客の人数は厳しく制定されている。一年前から空中都市観光を予約し、特殊な遊覧船に乗らないと行けない。(260)


カルウィ】

小国群を挟んでヴェルクレアの隣国となる大国。
紛争多発地帯。支配の質を持つ土地。一般的には短気で残虐な性格の者が多い。
特殊空間に居を構える水竜の国への入り口や、豪華絢爛な犠牲の魔物のための神殿、また南西部にかかる空の砂漠には星闇の竜達の宮殿がある。
旧ロクマリアの王族である、ジュリアンの生母の妹が亡命している。
最近カルウィの王弟の息子と第五王子で土地の利権をめぐる大きな内戦があった。
情勢はきな臭くヴェルクレアに友好的な王族もいるのだが国力が安定している今こそ領土拡張をと声高に唱える勢力もある。
1年に一度海の日と呼ばれる障りの日があり、明確な姿を持たない怪物が現れる。
この日を祝祭日にし、民に海遊びなどを推奨して海に行く者の中から無差別に贄を捧げることで、怪物を鎮める方策をとっている。
林檎の木の災いによって滅びたカルフェイドの後継国。


アチア】

ネアがアルバン山に巣を作ろうとした梟の魔物を追放した追放先の国。
南国で果物が豊富。


イスキア】

海沿いの小国。
対岸の小国に侵攻され一度は属国になったが、反乱を起こして宗主国を滅ぼすことに成功した。
しかし政情は厳しく、亡命を目論む高官によりウィームのイブメリアの儀式を損ないエーダリアに瑕疵をつける計画を企てられ、事件が起きた。ウィームに来る前に送り火の魔物が住んでいた国。(k561)


エイコーン】

海沿いの共和国。近隣諸国の中では中堅どころの国家。
議会制だが、府王と呼ばれる世襲制の代表者を立てている。府王に独裁的権限はなく、主に外交上の役割を担う立場で、王政が多い諸外国との交渉に立つ。
人外者の目に止まらないほどに中庸な国家に見えていたが、その実、中庸であり続けることに特化した固有魔術が育っており、k446以降のインク瓶の竜の予言の禍を退けた後、高位の魔物たちが注目するようになった。


ガシャ】

カルウィの近くの国。
アルテアが教会組織の一つを解体した。


ガゼッタ】

ガゼットカルナの後継国。
k223でネアがバタークッキーを買い求めに訪れたアクテー天上修道院のある国。
三領制度のうちの大鷲領では、妖精の王族と人間の王族の婚姻が盛んにおこなわれており、独自の教会文化が栄えている。聖堂妖精たちが大きな力を持ち、土地の人間は彼らと共存してきたとされる。(k407)


ガゼット】

ヴェルクレアと国境域を面した西方の隣国であり中堅程の国。または旧ロクマリアの一領になる以前の国名を指す場合もある。
 → 古ガゼット
114でクラヴィスの儀式に立ち会っていたネアは、滅亡間近のガゼットに引き落とされ、ウィリアムと初めて出逢った。この時のガゼットは121の後に滅びている。
王城は、高台にそびえる尖塔が木に止まった大鷲に似ていることから、大鷲城と呼ばれた。
古ガゼットの頃より続く三領制度のもと、三領の王を戴いている。(k407)
以前は旧ロクマリアの一都市だったが、南方からの香辛料の中継地や大国ヴェルクレアからの品物の経由地として、また森と川に恵まれたこともあり栄えてきた。加えて当時のロクマリア中央部からの目も届きにくい国の最端という立地も伴い、不相応な自由と財力を手にした結果、周囲の国の独立運動に便乗する形で再度立国、国境伯が王座に就いた。
しかし独立戦争の被害が最も少なく豊かさを維持したことで、ロクマリアから独立した際に疲弊しきった周辺諸国の侵略を呼ぶ原因となった。最終的には教皇軍と改革軍の拮抗した勢力による総力戦となり、ウィリアムが鳥籠を展開するほどの激戦を経て崩壊した。
王子は侵略戦争の中で妻に裏切られ死亡したが、国王は早々に亡命している。974で、ガゼットの王族はそもそも隣国の政情不安を解消したいバーンディアたちが駒として育てていたことが判明した。
ガゼットの跡地は、ガゼットカルナの一部となっている。


ガゼットカルナ】

121の後に滅亡した旧ガゼット跡地と旧ロクマリア公国の西北部の中間地帯を含む地域にできた国。k223でネアがガゼッタ国のことをガゼットカルナの後継国と表現しているため、この国で国名を変更する事態があったことが窺える。
かつてのロクマリアを支えた地下資源の宝庫で、魔術を多く含む鉱石や地下水脈が多い土地柄。


クレアズル】

ヴェルクレアとカルウィの間にある小国。
静謐の書によって守護された国だったが、砂糖の魔物の思惑により書が奪われ、更には純白の襲撃にあい国力を落とした。近年価値が高い魔術鉱脈が見つかったことで軍部の気運が高まっていた。
星竜信仰の遺跡があるラズィルが残響の残した幻惑の魔術で閉じた街となり事件の舞台となった。


クロアラン】

仮面の魔物による被害が出てしまった国家。


コルジュール】

リゾート地として観光で栄えている国。周辺諸国の要人たちにも避暑地として重宝されているため、戦禍に巻き込まれないよう、国際条約で保護されている。
もとは太陽や南洋の系譜の地域のひとつだが、明るい海を欲した北海の精霊の一人が治める、北海の系譜の力の強い飛び地。そのため魔術的にも稀有な正反対の二重属性を持つ。
貴族の子弟たちのための全寮制学院と、海辺の高級リゾートが有名な美しい港町として知られている。(k425)


シャスフィック】

ヴェルクレアと国境を接する小国。
かつては旧ロクマリアの一部だったが、未だ混乱する他地域よりいち早く国土をを固めた堅実な国。
王位交代の一報を受けたネアが、前の世界で孤独に暮らしていた頃の記憶と重ねて心を揺らし、ディノと語らう一幕があった。(k82)


スーフィ】

旧ガゼットから、旧ロクマリア公国の西北部の中間地帯にできた国。ガゼットカルナより東側に位置する。(525)


スール】

スールの国母である精霊を信仰する、狂信的な南方の小さな国。国森の記憶が良質なエメラルドとして砂の中から生まれてくる。春と長い夏を行き来する気候。
珈琲色の肌を持つ緑の瞳の人間達が暮らしている。ウィリアムがうっかり腐らせた。
アルテアが前にここで悪さをしていた。



ハヴラン】

ヴェルクレアの国境沿いにある国。


ファーシタル】

死の精霊の怒りを買った旧ロクマリアの魔術師の一族が逃れ、そこに住む夜の国の王と呼ばれる夜の座の精霊の王弟と契約して生まれた森の中の小国。
冬と夜が長く、民は皆銀髪を持つ。土地も人も魔術可動域がとても低く、潤沢に採れる森結晶や鉱石の取引と銀やレースなどの精緻で繊細な加工品、コルヘムが主要な産業となっている。ファーシタルの森とされているハイドラターツは森の西方、ターハウの渓谷寄りで、黄色みがかった良質な森結晶が取れる。これは契約によりファーシタルの民の本来の魔術可動域のほとんどがここへ吸い上げられているからである。(n19) 
また、周囲には終焉の系譜の精霊も多く住んでいる。(s2)
作中では、人外者がその伴侶である人間のために人間の国を治めることになっためずらしい土地として、ディノ達の会話にのぼった。(k199)
外伝「長い夜の国と最後の舞踏会」の舞台。


マグダリ】

花の国。ウィームの中央都市ほどの小国。
すぐ隣は砂漠の国だが、春の妖精達の豊かな祝福があり、大きな花畑とその花からできる高価な香水が有名。
祝福のある花の中で暮らしてゆくことで、美などの祝福を子供に授ける種類の妖精が多く、住んでいる人は皆美しい。黒髪で緑の瞳、肌は優しいミルク珈琲色の人が多い。
有名なアイスクリーム店がある。


モンスーリャ】

山羊と茶畑しかない西の辺境の国。


ランシーン】

カフタルという高地がある。
国王軍と王制を排したい港町の商人の軍による内戦が起きている。
国王を支持するアルテアと商人達を支持するアイザックの国盗りゲームの舞台。
王家の姫が商人達につきアイザックの駒になったため、それを籠絡する為にアルテアが動き、大怪我を負うことになった。


ロシエル】

北方の国。ディノがネアに観せてあげたい劇場がいくつかある。


影の国】

海竜戦に使われるあわいの国。海竜の離宮に出入りのための門がある。
王都は灯台の街と呼ばれている。
前代の世界の中で、魔術が潤沢であったり栄えていたりした土地の残骸が、海に飲み込まれたその底で再生したもの。
管理者である海竜と海の精霊から招かれないと入れない上に、招かれて入っても力を振るい難い。
1年に1日ずつ、海を見てはいけない日と、森に入ってはいけない日があり、海からはジアリノームと呼ばれる怪物が這い上がってきて地上の生き物達を食べたり呪ったりし、森の中にはトファイノームと呼ばれる怪物が現れて地上に住む穢れた心の生き物を滅ぼす。後者は食事のための殺傷までもゆるさぬ狭量さなので、ほぼ無差別となる。
前代の残響の中から、怨嗟や怨念のような良くないものが形を持つ日で、いずれの怪物も巨大な蛇とも竜ともつかぬ姿をしているが性質は正反対で、ジアリノームは前代においての咎竜にあたる存在、トファイノームは光竜にあたる存在がいたのかもしれない、とグレアムは語る。


地底の国】

ハヴランの方面にある。門番は岩の精霊。
焼き肉弁当屋の引っ越し先。(746)


流砂の国】

地竜が守護する国。地竜が運営する有名な砂風呂がある。


死者の国】

死者が向かう国。ウィリアムの管轄。
ここで過ごす事により生者であった頃の執着と自我を洗い流して次の生へと向かう。
墓犬と兎の掃除婦が通りすがりの死者を刈り取ることにより、恐怖によって街の治安が守られている。
名を奪われると、死者の国の住民として定められた日以外出られなくなる。
また、生者がが死者の国に送り込まれると、周囲の者達はその人間のことを忘れてしまう。
元々は魔物によって殺された者もここに来ていたが、魔物の襲撃が面倒でそれを分けた。


死者のあわい/シーヴェルノート】

魔物に殺された人間が行く死者の国。ウィリアムの管轄。
死者を取り戻そうとする魔物の襲撃に業をにやしたことにより、あわいに設置された。
恩赦日には死者に縁のある魔物が国に入り、面会することができるが、死者の同意なしに連れ出したり、損なうことはできない。
ネアがかつていた世界との境界ちかくにあり、奥にいけばいくほど魔術が希薄になる。
外伝「ジョーンズワースの魔術師と雪白の歌姫」作中で、グラフィーツの口から、ネアのいた元の世界はこの世界から古き時代に剥離したもので、元々何らかの通行条件があった可能性があることが語られている(j8)。異なる二つの世界が境界があいまいになる日に限って繋がるのはその成り立ちからくるものと思われる。
二つの世界が繋がっている時には、境目の国境域は汽水域とも呼ばれ、ネアのいた世界との時差が無い緩衝地帯として存在している(j30)。


南方にある島国】(国名不明)

永久凍土に閉ざされていて、氷と月の獣達が支配しているらしい。ちびふわの元と思われる幻の獣ウィーミアがいる。
そこには氷の酒の泉があり、木で出来たものを一晩漬け込むと、その表面に氷の砂糖が結晶化して採れる。
アレクシスがスープの材料を探しにいく予定の島(965)。


海沿いの小国】(国名不明)

澱の寺院と呼ばれる海から上がった怨嗟や祟りものを鎮める為の古い遺跡と、そこを治めるに足りる古の魔術の泉がある。
古の魔術と悪しきものを鎮める寺院を持ちながらも、その豊かな土壌を生かし切れず、面白みのある人間や産業が育たない。
そのことに疑問を持ったアルテアが、ゆくゆくは堅実さも腹黒さも中途半端で長く居座りそうな王を引きずり下ろす為、やがて王を殺す革命家達の旗印になる男を仕込んだ。(s2)


豊かな農産業と夏草の雫の生産で栄えていた国】(国名不明)

湿地に綿密に計算された水路を張り巡らせ、豊かな農産業と夏草の雫の生産で栄えていた国。
侵略者が水路を壊して制圧するも、修復する事ができず湿地にもどってしまった土地を扱いきれず、放棄された。
遅々として復興が進まずに居たが、アルテアが旗頭となる王子の皮をかぶせた人材を投入することでてこ入れを計った。(s2)


終焉の呪いを受けた小国】(国名不明)

すべての王族が一定の年齢になると死に至る終焉の呪いを受けた小国。重病の娘を救うためと偽りを吹き込まれた王が死の王の心臓を狙ったため、ナインが定めた代償として王族である限り一人の例外も許さぬ厳しい呪いを受けることになった。そんな呪いにすべての家族を奪われた王弟が、疫病馬車の辻毒で王子たちを付け狙い、最後には鳥籠を要する激しい戦いとなった。(k197)


海沿いの小国】(国名不明)

悪政を敷く王を革命で打ち倒した際、革命軍の旗印であった隣国王庶子の娘を処刑したため、隣国王の報復を受けて滅びた。
革命軍を含めた一連の流れはアルテアの仕込み。手入れをして流通に長けた土地に整えたのに、また2つの国に割れてしまったために再度の統一を目論んだ。
生き残ったかつての革命軍の英雄がその事情を知り、禁呪により命を永らえアルテアへの復讐を果さんとする事件があった。(713)


イスキアを属国とする海沿いの小国】(国名不明)

防壁と呼ばれる特殊な魔術を持つ港町を盾として近海の覇権を争っていた海沿いの小国。
大学講師として入り込んだアルテアの仕込みにより、対岸の属国イスキアの王子を留学生として招き入れ、結果として侵攻を許し、滅びた。(621)


カイン】(亡国)

政争に負けて出奔した旧ウィームの王族達により建国され、のちに原因不明で滅びた。
緑の女王と呼ばれる妖精の女王が住まう森の潤沢な魔術を蓄えた土地で、その祝福を受けた薔薇の香りと薔薇色の輝きを帯びた薔薇金の鉱脈があり、一国の王を凌ぐほどに裕福だった土地だが、ある時忽然と姿を消した。
かつてこの都の守護をしていた魔物が力を失った結果、森の精霊が勢力を増して都を飲み込んだとも、藤の魔物の怒りを買ったとも、奇病により一晩で滅びたとも様々な説がある。
230話で、城の跡地の書庫で泳ぐ鯨が落とした絵本と絵本の裏表紙に隠して残された手記から、カイン滅亡の真実が明かさた。→黄金の騎士の絵本
絵本の表紙には、カインの領主だった旧ウィームの最盛期につくられた王の指輪が隠されており、拾ったネアからエーダリアに絵本ごと譲られることになった。


古ガゼット】(亡国)

旧ロクマリアの一領になる以前に存在した独立国。交易の要所として栄えた。
作中、旧ロクマリア滅亡後に独立したガゼットとの表記上の違いはない。
国の維持に特殊な仕組みを敷いており、国内を三つの領地に分割にし、それぞれの領地を治める者達を国境伯という肩書に据えた上で、なおかつ各領地の王としていた。
またガゼットそのものを治める国王は、政治的な役割を持つ外交官のような存在でしかなく、三領地の王族の中から選挙で選出された。最も多くの国王を輩出してきたのが、大鷲城のあった領地。
大鷲城はのちの新ガゼットでも存在しており、ネアが114ウィリアムと初めて出逢った場所。
多くの人々が行き交う領内を円滑に治めるため、この三領制度が始まったと言われている。
この国の仕組みは後のロクマリア領地としてのガゼット地域→ガゼット→ガゼットカルナ→ガゼッタへと受け継がれている。

カルザーウィル】(亡国)

西南の大陸の端にあった大国。国勢を平定する為に周辺諸国を侵略し続けた残虐な王を、守護竜であった夏闇の竜の王子が疎んじて討ち、それに乗じて乗り込んできた他国の軍により滅びた。
王都の歌劇場は、影絵として死者の国の最奥の街に移設され、50年に一度の特赦のための舞台として使われている
竜が出入りする事も珍しくはなかったので、空間併設の魔術により外観よりも中ははるかに広く、また天井も高く作られていて、中で飛ぶことができるようになっている。


カルフェイド】(亡国)

カルウィの前身となる砂漠の大国。七つの州国で構成されていたが、白本が齎した林檎の木の災いにより、当時の王都の全てが林檎に喰われ、中心となる国が倒れた為に滅びた。(k437) 
各州国の直系の王子の中から、苛烈な戦いを勝ち抜き最も力のある者が国王となった。力が全てとされるカルウィの残忍な気質と手段を選ばぬ苛烈な継承争いはそこから引き継がれたものと思われる。
外伝「林檎の魔術師と災いの書」の舞台となる七の州では、将来の国母になるかもしれない側妃の運命の基盤を州国に繋ぎ、カルフェイドに隷属させる儀式が行こなわれていた。


チェスカ】(亡国)

紅茶と香草が有名。太陽と豊穣に恵まれた国だが滅びた。ノアとネアが出会ったラベンダー畑は戦争により燃えてしまった。


ラエタ】(亡国)

高慢の国。魔術の発展で急速に大きな国に育ったが、それまでは近隣に集まる小さな国や集落の集まりがある土地に過ぎなかった。
復活薬によって死の恐怖から逃れ、多くの魔物達の加護を得た事で豊かな国になったが、次第に生きる事に倦み死ぬ心配の無い狭い世界だけを尊ぶようになり、最終的には死さえも支配しようとしたことで終焉の怒りをかい滅ぼされた。
ラエタの最後をくりかえすあわいが残され、そこにネアが放り込まれる事件があった。


リルベリア】(亡国)

深い森の中にある、豊かな林檎畑と上等な林檎のお酒の有名な美しい小国。高位の人外者の庇護を受けてか、長く他国の侵攻を許さず、千年もの歴史を繋げた。
近隣国である旧カルフェイドの王子の不興を買い、王族は勿論のこと、数少ない国民達の一人残らずまでが粛清されて滅びた。
実際は王位を狙う王子による一方的な侵攻で、全ての国民が高い魔術素養を持っていたことから、他国のように属国にされることなく、報復や呪いなどを防ぐために皆殺しにされ、死者の日にも戻ることができぬようすべての土地が焼き払われた。
少なくない数の人外が暮らしに寄り添い、また100年に一度訪れる旅の魔物を騎士団に迎え入れてみんなで歓待するのどかで豊か国だった。
最後の王にはウィームの王女が嫁いでおり、たった一人生き残ったウィームの血を引く王女は古い林檎の妖精の伴侶となり妖精の国へと迎えられたことがオフェトリウスの口から語られた。(k437)
その最後の王女の物語が、外伝「林檎の魔術師と災いの書」
また、毒を盛られ、守護する土地とともに焼き払われた豊穣の妖精たちの呪いが気象性の悪夢にのってリーエンベルクを襲う事件もあった。(k347)


ロクマリア】(亡国)

ネアが引き落とされる2年前に継承争いと疫病で滅びた大国。最盛期には旧ウィームと国境を隣り合わせにしていた。今は旧ガゼットを含む十一の国に分かれている。
小さな国の集まりとして生まれた成り立ちから、複数の王家の中から一人の王と王妃を選ぶシステムになっており、全盛期には7つの王家があったが、国の終焉が近くなった頃には三王家までに減っていた。
一氏族が星闇の竜の賢者クラ・ノイが庇護する星霞の花の妖精を根こそぎ狩り尽くしたため、狩った人間達を地上から一掃しようとして祟りものになり、大きな被害を出した。星霞の花は兵士達の士気を高める興奮剤の原料であり、言わば、国による乱獲で滅びかけたともいえる。報復の対象は国そのもので間違いはなかったが、ウィリアムがクラ・ノイを粛正したことで全滅を免れた。竜が起こした二番目に大きな事件として伝えられている。(k12)
ジルフの悲劇の舞台。ジュリアンの生母はロクマリアの元王族であり、まだ統一戦争前のいち国家であったガーウィンに亡命した。
先代の犠牲の魔物が復活する為の強大な犠牲の魔術の贄にされた。(961)

ハーグルムーハの街

ロクマリアがカルウィ近くまで領土を広げていた最盛期、最も東寄りだった国境域の街。処刑された第二王子の支援者達が多く住み、国王に取り潰しを命じられたが、取り潰しの日の朝に突如として街まるごと消失したと思われていた。(k360)
実際には、街まるごと山猫商会の管理する魔術金庫に移設され、ハムの街となった。
良質な陶器と燻製肉が有名で、最も有名な食べ物は林檎の木のチップで燻製されたベーコン。建物の整い方から貴族の街のようだが、兵士達に人気の安価な食堂が多く、中流階級の人間達が多く暮らしてきた街。


ロクマリア公国】(亡国)

ロクマリアの公爵家が本国の滅亡の後に興した国だが滅びた。
現在は小さな三つの自治政府により治められている。そのうちの一つは小さいながらになかなかに優秀な自治区。




◆名称不明の国にある地名・施設

インバル
海竜王戦で出た地名。影の国の西方にある。
その海域にある島の礼拝堂に海竜の剣の一対が納められており、海峡の魔物がそれを守っている。

ヴァレー
雪山の山裾に広がる湖のほとりに建つ石造りの元小国の城は、現在は湖畔の王の食堂と呼ばれるレストランになっている。この場所でしかヴァレーの氷河ワインが飲めない。
また湖上で魔物や竜、妖精、精霊、上位者たちの新年の舞踏会が開かれる場所でもある。

オアシス・サナアーク
旧ガゼットの延長線上にある国にある。寺院が中心。
かつては豊かな森に育まれた千年王国と呼ばれる小さな国があったが、精霊の王子に伴侶を殺された白百合の魔物が全てを滅ぼし、一面を水白の砂漠にした、とされる。実際のところは、親友の妻を救えなかった死の精霊の王子の慟哭により、白百合の報復で生者のいなくなった土地のすべてが砂漠化した。
激しい絶望が呪いとして残り、国として失われはしないが、禍子が多く生まれる土地になった。
林檎の魔物が殺された場所であるサナアークだけがオアシスとして残っている。
近年地下に旧時代の天文学の都が発掘され、その一部が観光地として整備されつつある。星空の遺跡広場という見事な星空の事象石が売られる市場などがある。(s7)

お盆の町
現在十八確認されている円形、楕円形のお盆型をした土地に自然派生した魔力隔絶地の中の集落を指す。お盆型の土地自体は今後も増えていくらしい。
k414,k415でネアたちが花蒸しを食べに訪れたのもお盆の町のひとつで、二番目に古い場所。

コロール
どこにも属さない、特別な職人達と水路と運河の町。ランテラの都の近くにある。
選ばれた商人や高位の人外者達、そしてコロールの工房で作られた道具の持ち主など限られた者しか入れない。
行くべき者が行くべき時にしか門戸を開かない選別と排他の魔術の門に守られている。
あまり大きな町ではないので、大通りと称される道も片側をようやく馬車一台が通れるくらいの幅。中央に大きな水路、その水路の両脇と店舗側に歩道を配した構造で、石畳の道はどこも一方方向にしか進めない。なので右回りか左回りで町を巡ることになる。

スノー(スーノルフェ)
k83でネアたちが調印の呪いで落とされた城郭都市。
古くはスーノルフェという肥沃な大地を示す地名だったが、土地に住む人間達の呼んだスノーという愛称が定着し、そのまま呼ばれるようになった。(k84)
ドニア暦百五十年には、スノーの城郭都市全域が、期日までに伴侶がいないと疫病にかかる「クルフェの嫁取り」という疫病の系譜の呪いを受けていた。

タンタリアの書庫
固定させると宜しくない叡智を集めた書庫。
世界の表層にはあるものの、特定の箇所に留めておけない難しいものを集めて管理し、世界のあちこちを彷徨い続けている。特定の方法で来館予約が取れるが、その資格は厳しく、種族ごとに納められた叡智を活用するに相応しい年齢制限が課されている。また、一度訪れると次は5年後まで予約が取れない。
常に彷徨っているため、書庫の存在を知る者が失われないよう、時折人間の魂の裏側に徴を撒き、それに応えた子供のところに訪れる。タンタリアを知り、相応しい対処が出来れば、必要な叡智を収めた魔術書と巡り会える祝福を得る権利を授けるが、適切な対処方法を知らなかった場合は子供の周囲の大人に災いを授ける。
呼ばれたネアの寝室の窓の向こうの入り口に、書庫に勤める旧ウィーム王家出身の魔術師が立って手を振る椿事が起きた。エーダリアがまだ入ることができない憧れの書庫。(k581)

トカレ
鳥しかいない無人島。

ハーラントの島
かつて、野に咲く方の白薔薇の魔物が暮らしていた島。

ハトメキア火山湖
良い魔術鉱脈がある。
そこに咲く花はよい顔料になり、5年周期で需要がやってくる。魔術師でなけれは摘めず、また摘んだら石になる。
アイザックには苦手な分野なのでアルテアが介入し流通調整している。(860)

ハルディム島
薔薇の祝祭のとき、ほこりが隔離された南方の島。アイザックが同行した。
鯱や極楽鳥、大蜥蜴、悪夢の精霊王などが生息しており、もれなくほこりに食べられた模様。
大蜥蜴は島では神格化された生き物で、それなりの魔術階位があり、極楽鳥は、精霊の系譜で美しい女性の姿にもなれる希少な生き物。悪夢の精霊王は大きな巻貝の姿。

モナ
カルウィの隣の小さな国の国境沿いの町。海の系譜の者を埋葬する海岸がある。

ランテラ
歌劇の都。ウィームからは、世界の反対側くらいに遠い場所にある。
街並はネアの髪よりもう少し青みが強い青灰色で統一されている。
小高い丘に張り付くように広がった街には、一定区画ごとに見事な教会があり、その教会には歌劇が祀られている。
演じることで祀り上げられ、その歌劇を贔屓とする観客が信者になり、信者達にとってはお気に入りのその演目こそが信仰となり、世界各地からお気に入りの演目の為にランテラに移り住む。ほぼ寄進だけ成り立っている観光地。
歌劇の他には、教会の周辺や教会の中の床石は水晶のような透明な石材で、透かして見える内部は空洞ではなく、みっしりと透明な結晶石が詰まっている。そしてその下には、閉じ込められた素晴らしい都がある。
かつてこの都の王が標本の魔物の保管庫を荒らしてひどく怒らせたため、財産を損なう行為には財産の封印をと、都に住む者達全てに退避をするような報せを出した後、都を閉じ込めて一晩で結晶石で固めてしまった。
生き物の姿はないが、素晴らしい庭園や保存状態の良い貴族の屋敷のようなものなどはそのまま残って遺跡となっている。

ロッタル
嵐の夜の聖堂で居合わせた騎士の出身地。(k28)

幻の島
元は海の魔物が秘宝を隠していた島で、その守護により海に霧がかかった日にだけ、蜃気楼のように島の影が見えることから、船乗り達からは亡霊の島や幻の島と呼ばれている。
ドリーが飲み比べで手に入れ、ヴェンツェルの所有になった。珊瑚の魔物の亡骸が砕けた白い砂浜に、限りなく透明な南洋の色をした海が美しい離島。
どこの国の領土にも属さない土地や、暗殺の危険などがある人物との会談に、また息抜き用の秘密の島としても使われている。

ゴーモント
大いなる者達の意向で失われた都市の一つとして、ラエタと並んで歴史本や魔術教本などには必ず載っている虚飾の街。→ゴーモントの伝承
705で嘘の精霊王に恨まれたネアが、この街の影絵に落とされて放浪する事件に至った。

ザッカム
赤帽子の疫病によって滅びた。
大きな港がある交易路の中継地点で、色々な国の船が何日か停泊して船員が体を休めるのに利用され、なかなかに栄えていた。北側は森や農作地帯へと続いている。大きな教会があり、ゼノ曰く美味しい物がたくさんあったらしい。
一度は疫病の封じ込めに成功したものの、再びの蔓延に勝つ事はできなかったらしいが滅亡に至る詳細は不明。
ここの教会には町を守る怪物に子供の生贄を捧げる習慣があり、そこから誘導人が生まれ、町が滅びたのちも子どもを捜して彷徨っていたと思われる。
この町のあわいへ辻毒の馬車とそれを利用した異形の誘導人にネアとゼノーシュが攫われ、グラフィーツが助けに入る事件となった。(k285)

デナスト
森を隔てた隣町ザッカムから入って来た赤帽子の疫病によって滅びた。
ザッカムより栄えた大きな町で、学院や大きな竜が入れる教会などがあった。信仰に篤い街だったが、街を治めていた教会関係者が疫病を恐れていち早く逃げ出してしまったことから、人々は混乱し、あっというまに病が蔓延した。
教会関係者の失態を象徴する事件となったため、ロクマリアの画家フェリデリーの絵の題材となり、また弟子が連作となる絵を仕上げて有名になった事から、名が残り語り継がれるようになった。


◆あわい・影絵の中の地名・施設

あわいや影絵は記憶の亡霊と呼ばれる。
その土地の最盛期の記憶や、最悪の悲劇のその瞬間など、特定の場所の特定の時期が切り取られたものが多い。
中には潤沢な魔術を利用して意図的につくられたものもある。

嵐の夜の聖堂
嵐の夜に聖堂に逃げ込んだ五人の者達が蝋燭の火を囲んで夜を過ごす。が、その中の一人が、その場に居合わせた聖人の秘密に気付いてしまい、全員が閉じ込められたまま虐殺される。聖人は元はロクマリアの伯爵で、自分の魔術の研究のために多くの人間を殺し、やがて避難壕として設置した影絵の聖堂から獲物を狙ううちに魔術を凝らせて魔物に変じた。かつてロクマリアのイオディンの町の教区特化地区にあった聖堂はその狩場で、偶然を装ってそこを訪れたアイザックが閉ざされた避難壕を永遠の夜を繰り返す影絵に固定した。ネアの狩りの獲物の査定のためにアクス商会に同伴したアルテアがアイザックに押し付けられた特殊物件。(k28)

タジクーシャ
この世界に存在する特殊な宝石だけを集めた宝石商の街。あえてあわいに街を作った商人たちの自治区のようなもの。街と呼ばれてはいるが王がいるため、小さな国として機能している。(k80)

デナストの青い鳥の絵
画布の魔物の管轄である絵の内側にできた有名なあわい。
中には人造精霊である黒い羊の聖人がおり、教会の審問官の審査を通らなければ絵のあわいから出る事ができない。
疫病で滅びたデナストの町を、ロクマリアの画家フェリデリーが描いたもので、教会に属する者達だけが、早々に住民を見捨て避難したことに対する強烈な皮肉が込められている。隠し絵としても有名で、三人の弟子達が描いた、疫病の絵と密かに連作になっている。青い鳥は疫病の死者達が姿を変え、逃げ出した教会関係者達を追ってゆく様子だと言われている。弟子との連作を合わせて教会に属した信徒達への強い呪詛がこめられているが、ガーウィンの大聖堂で祭り上げられた事でそれが回避されている。
ウィームの美術館から絵に手を出そうとした隠し絵の魔物の固有結界に暴挙を阻んだ額縁の魔物と、ネア、ウィリアム、ちびふわになったアルテアが落とされ、そこから継がれたこのあわいに迷い込む事となった。(930)

ブンシェの国
物語のあわいで、ダーダムウェルの魔術師の物語の舞台になった国。モデルになったのは復活薬ができたばかりの頃のラエタ。

雪明かりの浴場
恩寵の杯でノアが呼んだあわいの列車の停車駅。
真夜中の結晶石の森の中にかつてあった温泉。
泉の乙女が、愛する森の賢者の為に、森の生き物や近隣の人々の憩いの場になるように作ったもので、当時の森の賢者トトラはまだ小さかったため、人間だと足湯のサイズになっている。
この温泉に感動した当時のウィーム王が、リーエンベルクの大浴場を作った。

ガゼットの属国(国名不明)
魔術書の物語のあわいで、ネアが引き落とされた鳥籠の舞台。(m15)
あわいの元となった国はガゼットの属国である、良質な砂岩と香りの良い香草の有名な小国。小さいながらもそれなりの軍事力を誇っていた。
死んでしまった王女を救い出すために死者の国への侵攻を目論み、終焉の魔物の怒りに触れて粛正され、滅ぼされた。


◆あわい・影絵以外の特殊な場所にある地名・施設

サムフェル
サムフェル

スリフェア
スリフェア

ハムの街
山猫商会が所有する商品箱の中にある魔術金庫の中の街。
もともと砂漠の国の中に隠された宝物庫だった魔術金庫の中には、宝物庫の妖精のシー達が治める豊かな土地があったが、旧ロクマリアのハーグルムーハの街が取り潰されかけた際に妖精たちの手によって街ごと魔術移設された。のちにその魔術金庫の鍵を山猫商会が預かり、妖精たちと交渉の末、商会と街の双方に理のある現在の管理方法に落ち着いた。
山猫商会にとってのあらゆる敵対者を落とす場所であり、罪人達の処理をこの中では大きな権限を持つ宝物庫の妖精に任せ、代わりに山猫商会はハムの街の燻製肉や、妖精達の取り分を除いた陶器の買い上げることで街に利益を落としている。
現在は、ジルクの祖母であり先々代の山猫商会代表だったアンジュリアが管理している。

ミッテム
ミッテム

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最終更新:2024年08月29日 15:44