自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

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WROLD ALL(仮題) …ドイツ語のヴェルトール。 事象世界、宇宙の意。


1月1日

ア ルヘイム(鯰の故郷)というこの国は大陸西方の南部、スードと呼ばれる比較的温暖な地域を領有している国で、大昔からエルプ山脈をはさんだ北部のトイトや 西部のケルト、東部のポレなどに居を構える、ヴァナヘイム、ヴィンドヘイム、ニザヴェリルといった国々とは領土をめぐって何度も戦争を繰り返している歴史 を持つ。
大昔のスードは都市ごとに小国家が軒を連ね、争いあっていたのを300年ほど前に初代の王となるヴァーヴォル1世が統一してアルヘイムを建国したといわれており、そのような国柄もあってか、弱肉強食の実力主義が常識となっている国でもある。
他の国と何度も戦争を行い、その度に勝利してきただけあって兵器や戦術などの技術は高いものを持っているのが自慢でもある。
アルヘイムは(ほかの国も大抵そうなのだが)身分制度の強い国で、王族、貴族、士族、平民、農民の階級ごとに階層を作って社会が形成されていた。
王族と貴族が政治をつかさどり、士族が軍事を担う。
一応、専制主義国家ではあったが地方分権の色も濃いという一面も持つ。
というのも、もともとが小国家の集まりで、統一後300年たつ現在も貴族たちは地方の都市を領有してそれなりの勢力を保っている。
故に、王族の子弟が玉座を巡って争うときなどには、貴族の後ろ盾をどれだけ多く味方につけることが出来るか、というのが重要視された。

第27代目の国王であるヴィーウル4世の死去の直後、次の後継者として最も有力であったのは王弟ニューラーズ公だった。
彼は7つの地方都市領を支配する7人の大貴族の後ろ盾を得て、第28代目のアルヘイム国王として即位するはずだった。
しかし、即位の直前となって7人の大貴族のうち6名が、先王の忘れ形見である12歳になったばかりの幼い王女、ローニを新王をとして推挙、そのまま強引に即位させてしまったのである。
これには、6人の貴族たちとニューラーズ公との間に政治上の権限をめぐる衝突があったと噂されている。
ローニ女王の後見人あるいは摂政となった貴族たちは、既に成人し頑迷で自己中心的なニューラーズ公を御しがたいと判断し、まだ幼い女王を傀儡として自らの思うままに政権を握る心積もりでいたのだ。

当然、王になるはずだったニューラーズ公はこれに納得するはずがなく、唯一自分を後援するラーズスヴィズ伯とともに女王と貴族たちに対し叛乱を企てた。
しかしならが、公とラーズスヴィズ伯の持つ戦力では、既に近衛騎士団と常備軍を掌握した貴族たちに対抗できるはずもない。
どう見ても勝ち目はないはずだったが、公には勝算があった。
公は、切り札ともいえる「援軍」を配下の魔法士に命じて召喚していたのである。
その援軍とは、国外…ヴァナヘイムやヴィンドヘイム、あるいはスードの西端の小国ロガフィエルなどの周辺諸国から呼び寄せたものではなかった。
国内の紛争に外国の力を借りれば、後々面倒なことになるのはわかりきったことだ。
ただでさえ、諸外国はスードの温暖で肥沃な土地を虎視眈々と奪う機会を窺っている。
ならば、公はどこに援軍を求め、貴族たちに対抗しようとしたのか?

その答えを、貴族たちは戦場で知ることになる。
近衛軍と常備軍を率いてヴァグリーズの平原へ会戦に赴いた6人の貴族たちは、そこで異様な姿かたちの軍隊を目にすることになる。
見たこともない銃や砲、そして鉄の車を使う、まだら色の服を着た異貌の集団が、そこに待っていたからだ。



修道会の本部ヴァルファズル大聖堂は三つの巨大な円錐状の建築物が寄り集まったような形をしている。
この巨大建築物は250年ほど前に当時の国王ガングレイリ2世が命じて建築が始まったもので、着工してから120年ほど経過した段階で工事が打ち切られ未完成のまま現在に至る。
建築予算が国庫に多大な負担をかけるとの理由から建築途中のまま放棄された西の塔の上部三分の一は、基礎の骨組みだけという少しみすぼらしい姿をさらしていた。

その西の塔に、私たち「姉妹」の寮は置かれていました。

今日も王都から修道会へ魔法士の援軍を求める女王の(貴族たちの、というほうが正しいかも知れない)使者達が大聖堂の城門前広場で開門を求める声を叫ぶ。
ほどなくして人の背丈の3倍はあろうかという巨大な門は開かれ、使者たちは中へと入っていった。
私はそれを寮の自室、南側に面した日当たりのいい小窓から見下ろしている。 最近はそれが、日課になりつつあった。
早駆けの馬で来る使者の一団が大聖堂に来ない日は一日とてなく、彼らが肩を落として帰ってゆかなかった日も未だなかった。

異世界軍…ジエイタイを味方につけたニューラーズ公の軍は既に貴族の支配する二つの地方都市領を攻め落とし、王都まで40里の距離まで迫っているという噂だった。
「姉妹」たちの間では、私たち「魔法士」が異世界軍と戦うことになるのかならないのか…つまりは、修道会が貴族たちに援軍を差し向ける決定を行うのか否かという話題でもちきりで、誰もが訓練や勉強に手のつかない有様…というよりは、噂話や議論のほうに夢中になっていた。
現在のところ、修道会は中立、不介入の立場をとり続けているが、将来的にどうなるのかはわからない。
大聖堂が王都のすぐそばにある以上、この場所も戦争に巻き込まれないとも限らないのだ。

「それは、無いんじゃないのかな」

『黄色の姉妹』のスルーズが唐突にそう言ったので、『赤』のミストや『黒』のスケルグが「突然何?」とでも言いたげげな顔をこちらに向ける。
『黄』の派閥に属する感応系の魔法士であるスルーズは、他人の思考を読む魔法に長けている。
彼女は、私が頭の中で考えていたことを読み取り、それに答えたのだが、ミストやスケルグにはわからない話だったので、二人は怪訝そうな顔をしたのだ。

「修道会は神聖不可侵な神の家だもの。 修道会に手出しをしたら、国中を敵に回すことになるわ。 ニューラーズ公がそんな暴挙に出るとも思えないけれど」

それを聞いて、スケルグが「なんだ、その話?」とあきれたような顔で納得する。
私も、いきなり人の思考を読んで話しかけてくるスルーズの突拍子の無さには少し呆れるものがある。
いきなり話しかけられた方はびっくりするだろうし、周りで聞いていた人たちもいきなり何を言い出したのか戸惑うだろう。
スルーズは、そのあたり天然でデリカシーに欠けているんじゃないかと思える節もある。

「そ、そんなつもりは無いんだけれどなっ…でもその言い方はひどいよっ」

彼女はまた私の思考を読んだけれど、ミストとスケルグには話が伝わってないのでわからない。
スケルグは「二人だけで会話するのやめてくれない?」と溜息をつくし、ミストに至っては何がなんだかわからず、きょとんとしている。

「…で、スヴァンは何を考えていたって?」

スケルグが書き物をしていた手を止めて、私を見る。
私の名前は本当はヒルデというのだけれど、ここの「姉妹」たちはスヴァンヒルデ…さらに前半分だけでスヴァンと呼ぶ。
スヴァンヒルデというのは御伽噺に出てくる、戦場で戦士たちを導く戦乙女の名前らしいけれど、私は自分の名前を変えられて呼ばれるのはあまり嬉しく思っていない。
もっとも、スケルグや「姉妹」たちの多くは「もともとヒルデというのはスヴァンヒルデが短くなった名前なのだからいいのよ」と言って抗議しても押し切ってしまう。
だからなんとなく、私はここではスヴァンという名前で呼ばれていた。

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