自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

SS 001-020 8

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94 名前:F猿 投稿日: 2004/06/30(水) 19:55 [ qUq6iUEM ]
    「木造船・・・?」
    「はい、おそらく木造船団と思われます。技術レベルは13~15世紀、形状、大きさから排水量は50トン前後かと。」
    観測員の言葉に狩野は又起き始めた頭痛に頭を抑えながら、いい加減これは現実なんだと自分に言い聞かせた。
    「何隻だ?」
    「・・・4隻、ですねまあ標準な数でしょうか。この距離からでは分かりませんが、武装もしているのではないでしょうか。」
    狩野はいたって冷静な観測員をすこし奇異の目で見た。もしかしたらとっくのとうに慣れきっているのかもしれないが。
    「宮野副長、どう思う?」
    「は。なんにせよ、接触をとってみるべきだと思われますが。」
    まあ、やれることはそれしかないのだ。情報収集も任務の一つとなっているし、あの少女と関係のある船かもしれない。
    「向こうが敵意を示さないことを祈るばかりだな・・・。」

95 名前:F猿 投稿日: 2004/06/30(水) 19:56 [ qUq6iUEM ]
    「司令、漂流者の女性を連れてきました。」
    「ああ、ご苦労。」
    「・・・ほぅ。」
    誰とも無く簡単のため息が漏れる。それだけこの少女は美しかった。
    特に女性を見ること自体ほとんど無いこの状況では。数人女性自衛官がいないことも無いのだが、
    それは少々女性としては・・・、いや、止めておこう。

    狩野は目の前に立つ少女を眺めた。
    流れる水のような金の髪に白い肌、碧の瞳、顔の作りはまるで神が全力で作り上げた石造のように端整だった。
    どちらかと言うと顔のつくりは色素に反してモンゴロイド系のようだ。
    そして嫌でも目に付くその長い耳がその少女が自分達とは違う存在であることをはっきりと示していた。
    見た目では18かそこら。
    病人服では少々分かりにくかったが胸の辺りの膨らみははっきりと女性のものであった。

    外見としてはこのくらいだろうか。

96 名前:F猿 投稿日: 2004/06/30(水) 19:56 [ qUq6iUEM ]
    医務室から連れていかれた所は「カンキョウ」というところだった。
    船長室の様な物だろうか。しかしそれにしてもここは広い、彼らは船だというが絶対に嘘だろう。
    そこに居たのはオークのような男、そしてそれの隣に座っている大人しそうな小柄な老人だった。
    オークのような男がきっと艦長で、老人のほうは執事だろうか。
    しかし、艦長にしてはずいぶんと普通の服を着ている。
    様子からして彼らは軍人らしいがそれにしては誇りを示す勲章も、序列を表すマントも付けては居ない。

    「どうも、私がこの船の艦長、そしてこの艦隊の司令官の狩野海将補です。」
    最初に口を開いたのは老人のほうであった。・・・って艦長!?
    「は、はぁ・・・。」
    この上なく間抜けな声が出てしまう。本当にこのひ弱そうな男が?さすがに疑ってしまう。
    「・・・どうしました?」
    「い、いえ!私はアジェント王国魔術仕官、セフェティナ・バロウです。お目にかかれて光栄です、狩野閣下。」
    とりあえず知っている限りの礼を尽くして対応する。
    こんなことなら士官学校でもっと礼儀の授業を聞いておくべきだったと深く後悔するがそんなことを言ってもしょうがない。
    「どうも救助いただき有難うございました。」
    「いえ、それが自衛隊の任務ですから。」
    ジエイタイとはなんなのか、気になるが聞くのも無礼かもしれず、うかつな事はしゃべれなかった。

97 名前:F猿 投稿日: 2004/06/30(水) 19:56 [ qUq6iUEM ]
    しかし、この船は一体何なのか?
    今まで召還されて来た島々はほとんど文明といった文明も持っておらずせいぜい弓矢で襲い掛かってくる程度。
    しかし今自分の目の前に居る彼らは違う。アジェントの船の何倍もの大きさの船を持ち、トイレ、ベッドなど高度な文明が発達している。
    特にベッドに掛けられていた布は今までに無い手触りと美しい光沢を持っていた。
    もしこれが国内に流入したら信じられないほどの高値で売れるだろう。
    特に驚いたのは鉄をふんだんに使用していること。
    鉄はマナを遮る性質を持つのでアジェントではあまり使われていないのだが、この船は良く見ると鉄そのもので出来ているではないか。
    魔法も使わず何故沈まないのか、なぜ魔法も無いのにこれほどの文明を持つのか。

    なによりもアジェントはこんな船を大量に持つ国にもうすぐ攻め込むのだ。

    いくら魔法があるとはいえ、魔法はそこまで万能ではない、魔法に精通するものほどそのことを良く知っている、
    逆に知らないものほど魔法の力を過信しているのだ、あのジファンのように。
    もし攻め込もうものなら勝敗は目に見えている。
    背筋に冷たいものが走った。脂汗が流れるのが自分でも分かった。

98 名前:F猿 投稿日: 2004/06/30(水) 19:57 [ qUq6iUEM ]
    相手はひどく緊張している様子だった。
    無理も無い、まったく知らない軍人達に囲まれているのだ。しかしそうしてばかりいる訳にもいかない。
    「それで、まず聞きたいことがあるのですが、よろしいでしょうか。」
    「は、はい!」
    飛び上がるような声を出す少女。
    なぜか出会ったばかりの時の妻を思い出してしまった。
    こんな風に可愛らしく初々しかったのは始めの一週間だけ、すぐに自分を尻に敷いてしまった人だったが、元気だろうか?

    「まず、我々は日本国、という国に属しています。日本国をご存知ですか?」
    「ニホンコク・・・?すみませんが知りません。」
    少女は首をかしげる。一筋の期待はあったのだが、予想通りの答えであった。
    本当はこれから日本の状況を事細かに説明したいところだが、この少女の国が敵に回る可能性もある為、そううかつな行動は出来ない。
    さらにもう三十分もしないうちに未確認木造船団とぶつかるだろう。あまり時間も無い。

    「詳しい説明は後でしますが、今この船の進路上に船団があるのです。心当たりはありませんか?」
    少女はしばらく考え込んだ後、少し目を背けて言った。
    「・・・あります。」

99 名前:F猿 投稿日: 2004/06/30(水) 19:57 [ qUq6iUEM ]
    少女からあの船団に関する全ての事情――自分がつき落とされた可能性がある――も含めて、を聞いた時には、
    未確認船団はあと、10分という距離に迫っていた。

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