自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

SS 001-020 6

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60 名前:F猿 投稿日: 2004/06/24(木) 06:41 [ qUq6iUEM ]
    日本転移頃、キャラベル船「シャンク」船長室。
    ラーヴィナの領主の部下、ジファンは我が世の栄華を味わっていた。
    与えられた任務は「奴隷の収穫」
    5年前に召還した島から奴隷をまた再び収穫してくるのが彼の任務であった。
    しかしこんな任務など子供でも出来るような任務であった、何しろ召還された島―奴隷島と呼んでいるのだが、
    には魔法が無いのだ、魔法が無い以上、使えるものはせいぜい弓矢のみなのだ、
    今までもファイアーボールあたりを遠距離から連発してやればあっという間に降伏してきた。
    何よりも一度制圧した島達は我が国の圧倒的な力に怯えきっている。すぐに奴隷を差し出すだろう。

61 名前:F猿 投稿日: 2004/06/24(木) 06:41 [ qUq6iUEM ]
    いままで6回の召還を行ったのか、マナの存在しない世界の島を呼び出すこれは、いずれも程度の差こそあれ成功していた。
    一度大規模な鉄山が見つかって王家の連中が大喜びしていた事もあったし、
    最後まで必死に抵抗する連中共で、結局ほとんど皆殺しにしてあまり奴隷も取れないことがあったか。
    しかしそれも即物的、刹那的人生を送る彼にとってはどうでも良いことだった。

62 名前:F猿 投稿日: 2004/06/24(木) 06:41 [ qUq6iUEM ]
    「魔法が使えないと言うのは不便なものだなぁ?」
    「あぐっ・・・。」
    隣にいた奴隷の女を無理やり抱き寄せる。
    最初は抵抗した女ももはや抵抗する気も失せたようだった。
    その態度が気に入らずジファンは女の長い耳を千切らんばかりにつねりあげた。
    「うぐぅっ!」
    さすがに浮かべる苦痛の表情、それがジファンの心を満たした。

    この女の種族の特徴は外見がエルフ、そうあの忌々しい高慢なエルフ共にそっくりなのだ。
    同盟などという、訳の分からないもののため、エルフ達への手出しは禁止されている。
    ジファンはエルフ達への憎しみをこの女にぶつける事で晴らしていた。
    「恨むんだったら、奴らにそっくりな自分達を恨むんだな?」
    思い切りナイフを振り上げる、女の身が強張った。

63 名前:F猿 投稿日: 2004/06/24(木) 06:42 [ qUq6iUEM ]
    「待ってください。」
    ジファンがナイフを女の胸に目掛け突き刺すその寸前、掛けられた声にジファンは顔を上げた。
    見るとちょうどその忌々しいエルフ、「セフェティナ」とか言ったか?
    が強張った顔をしてこちらを睨みつけていた、大方自分達にそっくりなこの奴隷が嬲られているのを見て我慢ならなかったのだろう。
    「どうしました?セフェティナ魔術士官殿。」
    ジファンの出す猫撫で声にセフェティナは嫌悪感をあらわにした。

64 名前:F猿 投稿日: 2004/06/24(木) 06:42 [ qUq6iUEM ]
    「奴隷への虐待は程々にして置かれたらどうですか?兵への士気に響きます。」
    「ほう?セフェティナ殿には私の行動に意見する権利は無かったはずですが?
    船の上では食料が自由には行かないのです、女くらい自由にしても良いでしょう?」
    なるべく凛とした口調で話そうとするセフェティナに対し、ジファンは気味の悪い厭味ったらしい声を出した。
    「いえ、クーディビッヒ大神官様と、エスフィリーナ魔術大臣補佐様に極度の虐待が有った場合止める様に、
    とのご命令を受けましたので。」

65 名前:F猿 投稿日: 2004/06/24(木) 06:43 [ qUq6iUEM ]
    ジファンは片眉をピクン!と上げ女を苦々しげに床にほうり捨てた、ドスッ、という鈍い音が響く。
    弱き者への慈愛を説くアシェナ聖教にとって奴隷への虐待はあまり推奨できるものではなかった。
    そしてまたジファンも、いやアジェント王国国民のほとんどはアシェナ聖教の教徒である。
    その大神官の命令となれば、聞かないわけにはいかなかった。
    「はん、これでいいのか?さっさと行け!」
    「・・・、それでは。」
    船長室から出て行くセフェティナをジファンは苦々しげに見つめていた。

66 名前:F猿 投稿日: 2004/06/24(木) 06:43 [ qUq6iUEM ]
    「ふぅ・・・。」
    甲板に出たセフェティナは潮風にその金の髪を任せながら月を眺めていた。
    真紅の月は海面に美しい像を映し、またセフェティナはこの月がなによりも好きだった。
    この月がストレスも何もかも洗い流してくれる。そう思えさえした。
    「なぜ・・・あんなことができるのだろう。」
    ふと口をついて出る言葉、子供のころからアシェナ聖教を教え込まれながら(同族には)優しいエルフの中で育ってきた彼女には、
    ジファンのするようなことは信じられないことだった。
    セフェティナが魔術士官として森を出てから大して時間は経っていなかったが、
    彼女は自分がいかに恵まれた環境に生きてきたかを痛感していた。
    国中いたるところで劣悪な条件で働かされる奴隷達、どれもアシェナの教えに反するものではないのか、
    とりとめもなく物思いが続いてしまう。

67 名前:F猿 投稿日: 2004/06/24(木) 06:43 [ qUq6iUEM ]
    「エルフも、人間も、奴隷も、ダークエルフもドワーフも、皆幸せに暮らすことは出来ないのかな・・・。」
    多種族を嫌うエルフの中ではセフェティナのこの考えは異端であり幼い考えであった。
    「きっとその内アシェナの神様が私達に天使様を遣わしてくれるはず・・・。」
    この世界では世間知らずの貴族のお嬢様くらいしか言わないようなアシェナの神話を呟いた時、
    不意に後ろに気配を感じセフェティナは後ろを振り返ろうとした、が。

68 名前:F猿 投稿日: 2004/06/24(木) 06:44 [ qUq6iUEM ]
    ドン!
    「え…っ?」
    強い衝撃を背中に受け、セフェティナの身体は宙に踊り、そのまま海へと叩きつけられていた。
    「あうぐっ!」
    盛大な水しぶきがあがり体中に強い痛みが走る。


    「・・・何故?」
    最後に見えたものはニヤニヤした薄気味悪い笑顔、ジファンの腰巾着である船員の一人であった。

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