252 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/08/11(水) 21:59 [ imAIk9NE ]
「マナの集まり具合が悪い・・・。まぁ、これだけあれば幾ら鉄でもあの船を沈めることくらいは出来るかしら。」
ゼナは篭手をしっかりとはめ直し、はめていないほうの手で魔道書の写しを見る。
「自爆魔法・・・基本は熱系魔法と同じ・・・か。」
あらかた暗記するとゼナは魔道書を取り出し。船長室からとってきた一番高級な酒を飲み干した、どうせすぐにこの世から消滅する、飲んでいけないことはないだろう。
僅かだけ酔いが身体を襲い、それと同時にほんの少しの不安が湧いた。
「アルクアイ様・・・あなたは私を忘れないで居てくれますね?」
ゼナはボソリと呟くと控えの魔術師に背中に付けていたマントを投げ捨てた。
「セグル・・・ごめんなさいね、私の勝手にあなたまで巻き込んで。」
「・・・いえ、死ぬまであなたにお供する、と決めましたから・・・。」
セグル、と呼ばれた控えの魔術師は跪いたままそう恐縮した。
「むこうのスピードならこちらまであと5分、といったところかしら。」
ゼナは目を瞑り魔法の詠唱を始めた。彼女の人生最後の魔法の詠唱を。
253 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/08/11(水) 21:59 [ imAIk9NE ]
ゾク・・・。
ゼナの乗る船に近づいていく過程、セフェティナは背筋が凍るような悪寒を感じた。
「これは・・・マナの干渉波・・・?」
何故今まで気付かなかったのか、先程の戦闘のせいで集中力が乱れていたのだろうか。
巨大なマナの干渉波が二つ。
両方ともあちらの船の方向から発されている。
しかしこちら側のマナが不自然な動きをしていない、どころか濃度が薄まっているこの状況、魔法をこちらにかけようというわけでもないようだ。
「一体・・・何を・・・?」
「どうしました?セフェティナさん。」
不安そうな顔をするセフェティナに青島が声をかけた。
セフェティナの暗い顔は青島を見て少し明るくなった。
「あ、青島さん・・・。実は、向こうの船が何か魔法を使っている様子なのです。」
「なんだって!?」
「しかもかなり巨大なものを、二つ。と言ってもこちら側を攻撃する、と言ったものではないのですが。」
「むぅ・・・。」
青島は考え込んでしまった。
魔法の仕組みが良く分からない以上あまり推測が立てられないが。
何かをたくらんでいる可能性が高い。
しかし「良く分からない術を使っていて、何かをたくらんでいる可能性がありました。」では攻撃は仕掛けられない。
「とりあえず、狩野さんに報告しよう。ありがとう、セフェティナさん。」
「あ・・・はい!」
走り去っていく青島にセフェティナは頬を赤くし答えた。
254 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/08/11(水) 21:59 [ imAIk9NE ]
「そうか。」
青島の報告に狩野は意外にもあっさりとした返答をした。
おそらく敵が何かをたくらんでいることくらい予想の範疇だったのだろう。
「といっても、我々自衛隊では『何かをたくらんでいる可能性がありました。』では攻撃することは出来ないな・・・。」
先程の青島の考えとまるっきり同じ事を狩野が口走る。
「こちらへ直接攻撃を加えるわけではないのだろう?ならば横付けした後武力制圧してしまえばいいではないか!」
考え込む狩野と青島に聞こえていたのか福地が叫ぶ。
先程騙されたのが余程腹が立ったらしい、皆殺しにしろと言わんばかりだった。
「そうは言いましても・・・。」
「どちらにせよこのままでは埒があくまい。」
福地は畳み掛ける。
狩野は閉口し、宮野に目で合図する。
すると、ひょいとその後ろ襟を宮野が掴みどこかへと連れ去っていってしまった。
航海士に一時停船を指示した。
「どうするのですか、司令。」
「・・・。」
狩野は考えていた、何をするかわからない敵。
しかも我々が自衛隊であるがゆえに攻撃することも出来ない。
と言ってもあまり時間を与えすぎてもむこうに何かをたくらむ時間を与えてしまう。
せめてむこうに連絡をとる手段があればよいのだがそれも無い。
八方塞がりではないか。
「どうしたものかな・・・。」
―――敵船全船、捕捉しています。いつでも撃てます―――
狩野はミサイル艇に連絡を繋いだ。
255 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/08/11(水) 22:00 [ imAIk9NE ]
おかしい・・・。ゼナは魔法の詠唱を終えふと顔を上げた。
もう魔法の準備は出来ている、あとは魔法を放つだけである。
魔力、精神力の集中のため髪からは汗が滴り落ちていた。
なぜ敵船が止まったのか。
「まさか・・・気付かれた・・・?」
いや、それならばすぐに攻撃が始まるはず。
それが無いということは・・・、何を考えているのか。
しかし、そもそも時間稼ぎの任務、敵が時間を与えてくれるならこれ程好都合なことは無い。
ゼナは自らの篭手の宝石を見た、それはもはや直視できないほどに赤く輝いている。
「敵船、動き出しました。」
セグルはの声がやけに遠く聞こえる。
「いよいよ・・・かしら。」
ゼナは微笑み、甲板へと歩いていった。
「マナの集まり具合が悪い・・・。まぁ、これだけあれば幾ら鉄でもあの船を沈めることくらいは出来るかしら。」
ゼナは篭手をしっかりとはめ直し、はめていないほうの手で魔道書の写しを見る。
「自爆魔法・・・基本は熱系魔法と同じ・・・か。」
あらかた暗記するとゼナは魔道書を取り出し。船長室からとってきた一番高級な酒を飲み干した、どうせすぐにこの世から消滅する、飲んでいけないことはないだろう。
僅かだけ酔いが身体を襲い、それと同時にほんの少しの不安が湧いた。
「アルクアイ様・・・あなたは私を忘れないで居てくれますね?」
ゼナはボソリと呟くと控えの魔術師に背中に付けていたマントを投げ捨てた。
「セグル・・・ごめんなさいね、私の勝手にあなたまで巻き込んで。」
「・・・いえ、死ぬまであなたにお供する、と決めましたから・・・。」
セグル、と呼ばれた控えの魔術師は跪いたままそう恐縮した。
「むこうのスピードならこちらまであと5分、といったところかしら。」
ゼナは目を瞑り魔法の詠唱を始めた。彼女の人生最後の魔法の詠唱を。
253 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/08/11(水) 21:59 [ imAIk9NE ]
ゾク・・・。
ゼナの乗る船に近づいていく過程、セフェティナは背筋が凍るような悪寒を感じた。
「これは・・・マナの干渉波・・・?」
何故今まで気付かなかったのか、先程の戦闘のせいで集中力が乱れていたのだろうか。
巨大なマナの干渉波が二つ。
両方ともあちらの船の方向から発されている。
しかしこちら側のマナが不自然な動きをしていない、どころか濃度が薄まっているこの状況、魔法をこちらにかけようというわけでもないようだ。
「一体・・・何を・・・?」
「どうしました?セフェティナさん。」
不安そうな顔をするセフェティナに青島が声をかけた。
セフェティナの暗い顔は青島を見て少し明るくなった。
「あ、青島さん・・・。実は、向こうの船が何か魔法を使っている様子なのです。」
「なんだって!?」
「しかもかなり巨大なものを、二つ。と言ってもこちら側を攻撃する、と言ったものではないのですが。」
「むぅ・・・。」
青島は考え込んでしまった。
魔法の仕組みが良く分からない以上あまり推測が立てられないが。
何かをたくらんでいる可能性が高い。
しかし「良く分からない術を使っていて、何かをたくらんでいる可能性がありました。」では攻撃は仕掛けられない。
「とりあえず、狩野さんに報告しよう。ありがとう、セフェティナさん。」
「あ・・・はい!」
走り去っていく青島にセフェティナは頬を赤くし答えた。
254 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/08/11(水) 21:59 [ imAIk9NE ]
「そうか。」
青島の報告に狩野は意外にもあっさりとした返答をした。
おそらく敵が何かをたくらんでいることくらい予想の範疇だったのだろう。
「といっても、我々自衛隊では『何かをたくらんでいる可能性がありました。』では攻撃することは出来ないな・・・。」
先程の青島の考えとまるっきり同じ事を狩野が口走る。
「こちらへ直接攻撃を加えるわけではないのだろう?ならば横付けした後武力制圧してしまえばいいではないか!」
考え込む狩野と青島に聞こえていたのか福地が叫ぶ。
先程騙されたのが余程腹が立ったらしい、皆殺しにしろと言わんばかりだった。
「そうは言いましても・・・。」
「どちらにせよこのままでは埒があくまい。」
福地は畳み掛ける。
狩野は閉口し、宮野に目で合図する。
すると、ひょいとその後ろ襟を宮野が掴みどこかへと連れ去っていってしまった。
航海士に一時停船を指示した。
「どうするのですか、司令。」
「・・・。」
狩野は考えていた、何をするかわからない敵。
しかも我々が自衛隊であるがゆえに攻撃することも出来ない。
と言ってもあまり時間を与えすぎてもむこうに何かをたくらむ時間を与えてしまう。
せめてむこうに連絡をとる手段があればよいのだがそれも無い。
八方塞がりではないか。
「どうしたものかな・・・。」
―――敵船全船、捕捉しています。いつでも撃てます―――
狩野はミサイル艇に連絡を繋いだ。
255 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/08/11(水) 22:00 [ imAIk9NE ]
おかしい・・・。ゼナは魔法の詠唱を終えふと顔を上げた。
もう魔法の準備は出来ている、あとは魔法を放つだけである。
魔力、精神力の集中のため髪からは汗が滴り落ちていた。
なぜ敵船が止まったのか。
「まさか・・・気付かれた・・・?」
いや、それならばすぐに攻撃が始まるはず。
それが無いということは・・・、何を考えているのか。
しかし、そもそも時間稼ぎの任務、敵が時間を与えてくれるならこれ程好都合なことは無い。
ゼナは自らの篭手の宝石を見た、それはもはや直視できないほどに赤く輝いている。
「敵船、動き出しました。」
セグルはの声がやけに遠く聞こえる。
「いよいよ・・・かしら。」
ゼナは微笑み、甲板へと歩いていった。