612 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/10/09(土) 23:25 [ kHqoVL5Q ]
「私達の言いたいことが分かっていただけましたか?」
「はい、ですが唯一つ聞きたい、何故あなた達は奴隷島群を私達にあけ渡そうとするのです?
それは利敵行為に値するのではありませんか?そこまでするのにはなにか理由が?」
「・・・我々は貴国に最大限協力します。
ですからアジェントと貴国が戦争になった場合、我が領への攻撃は止めていただきたい。
それが我が主の言葉です。それでは。」
アルマンたちが帰った後
日本では喧々諤々の論争が起こっていた。
アルマンたちが言った、奴隷島の解放をやるべきか否か。
やるとしたらそれは侵攻か否か。と言う問題であった。
そして政府は赤羽の強い薦めもあり奴隷島の解放論に傾いていたのだが、
ここで一つ問題が起こった。
世論と野党である。
今までこの状況を乗り切るために、挙国一致、
として袴率いる自由民権党に比較的賛意を示してきた最大野党民社党が、
この問題についてどこで聞いたのか、反対姿勢を鮮明にしたのである。
そして侵攻、という話が出れば当然出てくる人間達がいる。
自称、平和主義団体である。
閣議から一週間もたたないうちに一部マスコミもこれをあたかも侵攻のように書き始め、
世論を二分する問題となってしまったのであった。
613 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/10/09(土) 23:25 [ kHqoVL5Q ]
そして、国会での審議中にある事件が起こった。
袴が機密事項を失言してしまったのである。
いきさつはこうであった。
奴隷島の解放について、袴以下自民党がその正当性を演説するのに対し、
民社党達野党はけんもほろろの態度を示し、それを拒絶した。
「いくら生き残るためとはいえ、罪も無い人々を踏みにじることが正義なのか!」
こう言う野党議員に対し、袴は言ってしまったのである。
「我々と同じように召還され他人々が、奴隷として扱われるのを黙ってみているのが何故正義なのか!」
袴が言いたいことは後半部であった、しかし前半部、つまり日本が召還された、
この事実は未だ内閣と一部官僚以外のトップシークレットだったのである。
世論は揺れた。
極端から極端に走りやすいのがマスコミである、とよく言われる。
マスコミはこの時も例に漏れなかった。
政府からでた僅かな資料でアジェントの暴虐を想像した記事を書き立てる者。
日本が召還されていたという事実を隠していた政府を徹底攻撃する者。
様々であったが、これによって議会は混乱状態となり、
まともな議論をすることが難しくなってしまったことは確かであった。
614 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/10/09(土) 23:26 [ kHqoVL5Q ]
「事は急を要する。なんとかして周辺諸島を開放するための法律を通さねばならない。
なによりもこれが出来れば大陸への足がかりとなると同時に、
万が一アジェントとの戦闘となった場合の防波堤となるのだからな。」
何度目か分からぬ閣議において袴達は当面の計画を立て始めていた。
少なくともせねばならないことは周辺の奴隷島の征圧。
ラーヴィナとの貿易ラインの確立。
そして自衛隊の組織の再編であった。
その為、この閣議には赤羽を含む自衛隊幕僚長なども参加していたのである。
「はい、それに相手外交官の言葉・・・セフェティナ嬢によって裏付けもとりましたが、
で、周辺諸島には鉄、銅などの鉱物資源が認められています。
確保しなければならない資源の種類には程遠いですが、
工業業界にとっては救いの手となりますし、資源の乏しい今、日本の生命線ともなりえます。」
そして、今議論されようとしていることは更に先の話。
周辺諸島の征圧、及び貿易ラインの確保が終わった後の話であった。
615 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/10/09(土) 23:27 [ kHqoVL5Q ]
閣議参加者の面々の前にはそれぞれこの世界の地図が配られていた。
それぞれがそれをしげしげと眺める、全員もはやこの地図は丸暗記してしまうほど眼にしていたが。
「相手外交官によると、アジェントが攻めてくる可能性は非常に高い。
早急な防備、情報収集及び味方作りが肝要かと思われます。」
外務省長官が発言した。
「そして、それについて今二つの案がある。」
袴は議長として言った。
「一つは・・・赤羽君。」
赤羽が声を受けて立ち上がる。
「はい。皆様、先程配った紙をご覧下さい。」
全員が紙を見る、そこには大量の文字と共に、船の設計図が記載されていた。
「これは・・・?」
軍事には疎い参加者の一人が赤羽を見た。
「はい。海上自衛隊が上陸戦力の不足を補うため設計中だった次期ヘリ搭載護衛艦、通称16DDH、
これを軽空母として設計しなおした物です。」
616 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/10/09(土) 23:28 [ kHqoVL5Q ]
会議が終わりを告げた夜。
アルヴァールは他の参加者より一足先に自室に戻っていた。
本来ならばアシェリーナ姫の元へいくところだが、そうはできなかった。
いくら養育係とはいえ、年頃の姫の部屋に夜、男が入ることはさすがに許されなかったのである。
しかし、警備上の心配は全く無かった。
彼の強力な魔力探知能力は城内程度の広さならば僅かなマナ干渉波すら感知することが出来た。
そして、夜には自室でこの彼流の警備をするのが彼の日課であった。
そして今、彼はある場所から普段はない干渉波を感知した。
「これは・・・?」
私にはその場所にもこの干渉波にも覚えがあった。
場所はアルクアイとファンナ嬢に与えられた部屋、
そして感知された干渉波は紛れも無い・・・教会の兵の象徴的武器・・・光の槍。
それが三つ・・・部屋に入っていき、弱い魔法を使った。
「この魔法は・・・睡眠魔法?」
それにより、弱々しい魔力を発する人間・・・一人、ファンナ嬢だろう、が眠らされたようだ。
そして進入した三人の内一人が、この眠った人間を連れて他の二人と別行動をとり始めた。
「そうか・・・そうきたか・・・。」
私は苦笑した。
おそらく教会はアルクアイを始末しようとしているのだろう。
そしてアルクアイが王家を揺るがす何かを企んでいる以上、
それは私にも都合が良かった。
617 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/10/09(土) 23:29 [ kHqoVL5Q ]
アルクアイは、アルヴァールより遅れること約十分、自室に戻ってきた。
さすがの彼でもあれだけの大立ち回りをすれば疲労する。
ファンナには悪いがすぐに寝てしまうつもりだった。
しかし、彼は部屋の扉を開いた途端、その部屋のマナの濃さに顔をゆがめた。
マナが不自然に濃い、これは直前に魔法が使われたことを意味する。
「ファンナ?ファンナ!」
アルクアイは叫び、少女を探した。しかし、いない。
そして彼がふと机に目をやるとそこには一枚の紙切れが落ちていた。
「!」
アルクアイはそれを目にし、絶句した。
「娘は預かった。一時間以内に城の裏庭に来るように。」
なんの捻りも無い文句であったが、それだけに言いたいことは嫌と言うほどに伝わる。
大体犯人も想像がつく。
彼は又、一度脱ぎかけたマントを羽織りなおした。
廊下はひどく冷たかった、不思議とアルクアイは疲労を感じなかった。
「私達の言いたいことが分かっていただけましたか?」
「はい、ですが唯一つ聞きたい、何故あなた達は奴隷島群を私達にあけ渡そうとするのです?
それは利敵行為に値するのではありませんか?そこまでするのにはなにか理由が?」
「・・・我々は貴国に最大限協力します。
ですからアジェントと貴国が戦争になった場合、我が領への攻撃は止めていただきたい。
それが我が主の言葉です。それでは。」
アルマンたちが帰った後
日本では喧々諤々の論争が起こっていた。
アルマンたちが言った、奴隷島の解放をやるべきか否か。
やるとしたらそれは侵攻か否か。と言う問題であった。
そして政府は赤羽の強い薦めもあり奴隷島の解放論に傾いていたのだが、
ここで一つ問題が起こった。
世論と野党である。
今までこの状況を乗り切るために、挙国一致、
として袴率いる自由民権党に比較的賛意を示してきた最大野党民社党が、
この問題についてどこで聞いたのか、反対姿勢を鮮明にしたのである。
そして侵攻、という話が出れば当然出てくる人間達がいる。
自称、平和主義団体である。
閣議から一週間もたたないうちに一部マスコミもこれをあたかも侵攻のように書き始め、
世論を二分する問題となってしまったのであった。
613 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/10/09(土) 23:25 [ kHqoVL5Q ]
そして、国会での審議中にある事件が起こった。
袴が機密事項を失言してしまったのである。
いきさつはこうであった。
奴隷島の解放について、袴以下自民党がその正当性を演説するのに対し、
民社党達野党はけんもほろろの態度を示し、それを拒絶した。
「いくら生き残るためとはいえ、罪も無い人々を踏みにじることが正義なのか!」
こう言う野党議員に対し、袴は言ってしまったのである。
「我々と同じように召還され他人々が、奴隷として扱われるのを黙ってみているのが何故正義なのか!」
袴が言いたいことは後半部であった、しかし前半部、つまり日本が召還された、
この事実は未だ内閣と一部官僚以外のトップシークレットだったのである。
世論は揺れた。
極端から極端に走りやすいのがマスコミである、とよく言われる。
マスコミはこの時も例に漏れなかった。
政府からでた僅かな資料でアジェントの暴虐を想像した記事を書き立てる者。
日本が召還されていたという事実を隠していた政府を徹底攻撃する者。
様々であったが、これによって議会は混乱状態となり、
まともな議論をすることが難しくなってしまったことは確かであった。
614 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/10/09(土) 23:26 [ kHqoVL5Q ]
「事は急を要する。なんとかして周辺諸島を開放するための法律を通さねばならない。
なによりもこれが出来れば大陸への足がかりとなると同時に、
万が一アジェントとの戦闘となった場合の防波堤となるのだからな。」
何度目か分からぬ閣議において袴達は当面の計画を立て始めていた。
少なくともせねばならないことは周辺の奴隷島の征圧。
ラーヴィナとの貿易ラインの確立。
そして自衛隊の組織の再編であった。
その為、この閣議には赤羽を含む自衛隊幕僚長なども参加していたのである。
「はい、それに相手外交官の言葉・・・セフェティナ嬢によって裏付けもとりましたが、
で、周辺諸島には鉄、銅などの鉱物資源が認められています。
確保しなければならない資源の種類には程遠いですが、
工業業界にとっては救いの手となりますし、資源の乏しい今、日本の生命線ともなりえます。」
そして、今議論されようとしていることは更に先の話。
周辺諸島の征圧、及び貿易ラインの確保が終わった後の話であった。
615 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/10/09(土) 23:27 [ kHqoVL5Q ]
閣議参加者の面々の前にはそれぞれこの世界の地図が配られていた。
それぞれがそれをしげしげと眺める、全員もはやこの地図は丸暗記してしまうほど眼にしていたが。
「相手外交官によると、アジェントが攻めてくる可能性は非常に高い。
早急な防備、情報収集及び味方作りが肝要かと思われます。」
外務省長官が発言した。
「そして、それについて今二つの案がある。」
袴は議長として言った。
「一つは・・・赤羽君。」
赤羽が声を受けて立ち上がる。
「はい。皆様、先程配った紙をご覧下さい。」
全員が紙を見る、そこには大量の文字と共に、船の設計図が記載されていた。
「これは・・・?」
軍事には疎い参加者の一人が赤羽を見た。
「はい。海上自衛隊が上陸戦力の不足を補うため設計中だった次期ヘリ搭載護衛艦、通称16DDH、
これを軽空母として設計しなおした物です。」
616 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/10/09(土) 23:28 [ kHqoVL5Q ]
会議が終わりを告げた夜。
アルヴァールは他の参加者より一足先に自室に戻っていた。
本来ならばアシェリーナ姫の元へいくところだが、そうはできなかった。
いくら養育係とはいえ、年頃の姫の部屋に夜、男が入ることはさすがに許されなかったのである。
しかし、警備上の心配は全く無かった。
彼の強力な魔力探知能力は城内程度の広さならば僅かなマナ干渉波すら感知することが出来た。
そして、夜には自室でこの彼流の警備をするのが彼の日課であった。
そして今、彼はある場所から普段はない干渉波を感知した。
「これは・・・?」
私にはその場所にもこの干渉波にも覚えがあった。
場所はアルクアイとファンナ嬢に与えられた部屋、
そして感知された干渉波は紛れも無い・・・教会の兵の象徴的武器・・・光の槍。
それが三つ・・・部屋に入っていき、弱い魔法を使った。
「この魔法は・・・睡眠魔法?」
それにより、弱々しい魔力を発する人間・・・一人、ファンナ嬢だろう、が眠らされたようだ。
そして進入した三人の内一人が、この眠った人間を連れて他の二人と別行動をとり始めた。
「そうか・・・そうきたか・・・。」
私は苦笑した。
おそらく教会はアルクアイを始末しようとしているのだろう。
そしてアルクアイが王家を揺るがす何かを企んでいる以上、
それは私にも都合が良かった。
617 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/10/09(土) 23:29 [ kHqoVL5Q ]
アルクアイは、アルヴァールより遅れること約十分、自室に戻ってきた。
さすがの彼でもあれだけの大立ち回りをすれば疲労する。
ファンナには悪いがすぐに寝てしまうつもりだった。
しかし、彼は部屋の扉を開いた途端、その部屋のマナの濃さに顔をゆがめた。
マナが不自然に濃い、これは直前に魔法が使われたことを意味する。
「ファンナ?ファンナ!」
アルクアイは叫び、少女を探した。しかし、いない。
そして彼がふと机に目をやるとそこには一枚の紙切れが落ちていた。
「!」
アルクアイはそれを目にし、絶句した。
「娘は預かった。一時間以内に城の裏庭に来るように。」
なんの捻りも無い文句であったが、それだけに言いたいことは嫌と言うほどに伝わる。
大体犯人も想像がつく。
彼は又、一度脱ぎかけたマントを羽織りなおした。
廊下はひどく冷たかった、不思議とアルクアイは疲労を感じなかった。