自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

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だれでも歓迎! 編集
448 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/09/21(火) 01:10 [ imAIk9NE ]
    赤羽はこの手紙を出した人間こそ、この世界における最も厄介な物になり得ると考えていた。
    たった一度の戦いで今まで召還された島々への偏見を無くし、こちらの力を見極める。
    更には国家としてではなく国家から独立してこちらと友好関係を結ぼうと強いているのにもかかわらず、
    候と名乗り、自らを王家の臣下としている。
    そして特筆すべきはこの手紙には一言もアジェント国家全体と日本との友好などは書かれていない。
    つまりこの手紙の主はおそらく日本と王家を戦わせようとしているのだ。
    恐らくは自らの野望のために。
    「危険だな・・・。」
    赤羽は手紙を見ながら満面の笑みを浮かべている袴を見て呟いた。

449 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/09/21(火) 01:10 [ imAIk9NE ]
    「アルクアイーっ!」
    ラーヴィナ、ウェルズ邸中庭。
    アルクアイが自らのワイバーンに乗ろうとしている時、彼に少女の声が掛けられた。
    13、4と言ったころの少女であった。それを見るとアルクアイはすぐさま臣下の礼をとった。
    「これは・・・ファンナ様。」
    「もうっ、ファンナって呼んでって何度も言ってるじゃない。」
    ファンナ=ラーヴァス。ウェルン=ラーヴァスの娘であった。
    またそれはウェルズの孫娘、と言うことでもある。
    そして3、4歳の時に彼女の父ウェルンが淫欲に溺れたがために(アルクアイのせいなのだが)、
    アルクアイにその養育が任されていたのであった。しかしこの二人の関係はどちらかと言うと兄妹に近かった。
    「それで、航海から帰ったのなら言ってくれれば良かったのに。」
    ファンナが頬をプッと膨らます。その態度にアルクアイは軽く笑って答えた。
    「すみません、帰還後の処理に追われていたもので・・・。」
    「けど、またしばらく一緒なんでしょ?」
    ファンナがアルクアイの腕を抱き、上目使いで彼を見る。
    13、14と言うのはこの世界でしかも女子ならば結婚してもなんらおかしくない年齢であった。
    そしてこの少女はその結婚相手を自分の父代わりで兄代わりでもあるアルクアイと心に決めていた。
    そしてまたアルクアイも自分のせいで親に愛してもらえなくなった彼女へのわずかな罪の意識もあり、
    彼女を粗末に扱うようなことは決してなかった。

450 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/09/21(火) 01:11 [ imAIk9NE ]
    しかしこのときばかりはアルクアイは心底申し訳なさそうに答えた。
    「すみません、これからすぐに王侯会議に出るためにまた行かねばならないのです。」
    王と各大臣そして全ての諸侯が集まるこの会議、これこそアルクアイの計画の要であった。
    「えっ、なんで?前回まではおじい様が行ってたじゃない。」
    「ええ、ですがウェルズ様は今はご病気です。だから私が代理として行くのです。」
    そしてアルクアイは少し声色を変え、ファンナの頭に手をポンと置き、言った。
    「すまないな。」
    「・・・。」
    ファンナが俯いて何も言わないのを確認するとアルクアイはワイバーンの背に跨った。
    ワイバーンは軽くキュルルンと鳴き、それを歓迎した。
    そしてその時アルクアイは自分の服の袖を掴まれていることに気が付いた。そして後ろを振り返る。
    「ファンナ様・・・。」
    「わたしも一緒に行く。」
    そう宣言してファンナもまたアルクアイの後ろに跨った。ワイバーンは特に嫌がるそぶりも見せず、キュウと鳴いた。
    「ファンナ、しっかり掴まっていろよ?」
    「うんっ!」
    自分達の周りにマナの壁を作りそしてワイバーンを飛び立たせる。向かう先は王都。
    こんなにも自分を慕う少女を背中に感じ、アルクアイはまた、この少女を不幸にしたのは自分であることを思い、僅かな後ろめたさを感じていた。

451 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/09/21(火) 01:11 [ imAIk9NE ]
    佐世保基地、寝所。
    青島はベッドに横たわったまま加藤の落とした物と思われる名刺入れを眺めていた。
    赤羽海将の写真が入った物だったが、いったい何故だろうか。
    「ま、考えていても仕様が無いか・・・。」
    「なにがしょうがないんすか隊長。」
    ボソッと言った呟きを聞き取り佐藤がいきなり青島に声をかけた。
    「わっ、佐藤・・・どうしたいきなり。」
    「あ、いや、天野さんがほぼ前回の見通しが立ったらしいんで。伝えようかと。」
    「そうか、有難う。」
    話によると内臓や骨、筋肉などに当たらずに貫いたのが良かったらしい。
    もしあれが銃などだったら回転で内蔵をズタズタにされていただろう。
    「それにしても隊長随分可愛い名刺入れ持ってますね~。女物じゃないですかそれ?」
    「あ、いや。」
    慌てて青島はポケットにしまいこんだが、もう遅かった。
    「どうしたんすかそれ~。」
    佐藤は面白がって更に突っ込んでくる。
    「いや、俺の物じゃないんだよこれは、・・・加藤陸三尉が落とした物だ。」
    その答えに佐藤は目を丸くした。
    「え?あの名物三尉?」
    予想外の答えに青島も目を丸くした。
    「有名なのか?」
    「有名も何も知らないんっすか?」
    それから佐藤が話した物は話半分の噂の集まりだった。
    しかしとにかくそれらに共通している物は男勝りの性格と、高い能力。
    そして赤羽海将となんらかの関係がある、ということであった。

452 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/09/21(火) 01:12 [ imAIk9NE ]
    「隠し子説とか愛人説とか色々あるっすよ。それにどっちにしろ可愛いから有名にはなるっすよね。」
    佐藤は散々しゃべり倒してその言葉で話を切った。
    「あ~、よく分からんがすごい人なんだな?」
    「まあ、そういうことです・・・しかも派手な赤いバッジをいつも付けてて・・・って、え!?」
    佐藤はそう言いながら青島を見て妙な顔をした。目線ははっきりと青島のつけている赤いバッジに向いている。
    「どうしたんすかソレ!?」
    「ん・・・、説明すると長くなるからやめとく。」
    「ならいいっす。」
    佐藤はしげしげと赤いバッジを見ていたが、あっさりと身を引いた。
    「直接返したほうが早いよな・・・。」
    再び出した名刺入れを見ながら青島はぼうっと呟いた。

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