自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

SS 001-020 44

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714 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/10/26(火) 01:07 [ kHqoVL5Q ]
    「やれやれ、とんでもねえ作戦だなこりゃ…。」
    これから作戦に赴く集団を見て(と言っても彼もその一員なのだが)沢村は言った。
    しかしそれも無理も無い。
    赤羽佐世保地方隊司令が陸自、空自も含め直接指揮を執るこの作戦は、
    これから編成される異界方面隊司令が彼で適正であるかどうか見るテストでもあった。
    気合いが入るのも当然である。
    陸自は一個師団をほぼまるごとつぎ込み、そしてイージス艦を含むそれに見合うだけの艦隊が用意されていた。
    そして空自においても制空権確保のためのF-15J部隊が用意されていた。

    つまり、名目上は「解放」であるこれも、実質は「侵攻」なのである。特にこの三介島上陸作戦は。

    そして青島たちの小隊は魔法戦を経験した物として、
    セフェティナの護衛をしながら陸自と行動を共にする特別部隊とされていた。
    「沢村さん、どうですか調子は?」
    「ああ、佐藤か、いやいや、二回目ともなるとさすがに慣れてくるもんかな。
    周りの奴を見てみろよ。」
    言われて佐藤が周りを見渡す、すると周りの隊員のほとんどが緊張にガチガチになっていた。
    「といっても俺達はティナちゃんの護衛ですから、そんなしんどい仕事にはなりませんよ。」
    「まあ、な。」
    沢村は曖昧な返事をした。

715 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/10/26(火) 01:07 [ kHqoVL5Q ]
    一方、この作戦の司令官達、及び特別幹部候補である青島、加藤は赤羽に作戦の説明を受けていた。
    だが、最低でも左官レベルの司令官達の視線は冷たかった。
    「(ひえ~、睨んでる睨んでる。)」
    「…。」
    その視線に少し圧される青島に対して加藤は全く気にする素振りは見せなかった。
    しかし赤羽が壁に張ってある地図を用いて説明を始めると、その視線も立ち消えた。
    「これは三介島の地図だ、人工衛星があれば完璧な物が撮れるのだが、無いものねだりをしてもしょうがない。とにかく我々はこの台湾の半分ほどの島への上陸作戦を行う。」
    赤羽は島の中心部を指した、そこには真っ赤な三角印とバツ印が寄り添うようにあった。
    「この三角がこの島を重要なものと成し得ている鉱山だ。そしてこのバツ印が敵拠点。
    元々鉱山管理として作られた物のためにこれら二つの距離は非常に近い。
    この二つが我々の制圧目標となる。
    しかしこの拠点、魔法という強力な遠距離攻撃手段が存在しているせいか、非常に防御力が高い。
    そのため、鉱山はともかくとしてこの拠点で攻城戦を行うことは絶対に避けたい。」
    赤羽は手元のプリントも見ずに続けた。

    「そして偵察によると敵の兵力はおよそ2000。これは予想よりずっと少ない数字だ。」
    部屋の面々の間に安堵のため息が漏れた。
    「ただし、これは敵の訓練された兵士、常備軍の数だ。ちなみにその内200は竜騎士部隊。敵は現地人を徴用して兵士として使ってくる可能性が非常に高い。
    それもたぶん男なら誰でもという勢いで、だろうな。
    そしてこの場合、相手兵力はおよそ4万。まあ単純計算でこちらの2倍以上だ。」
    ビキッ。部屋の空気が一気に凍りついた。
    冷静な顔をしているのは三人。赤羽と加藤、そして意外にも青島であった。

716 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/10/26(火) 01:08 [ kHqoVL5Q ]
    「ちょっと待ってください。」
    士官の一人がたまらず発言した。
    「海将は我々に死ねとおっしゃるのですか?数で圧倒的差をつけられているのに侵攻などと…。
    兵法の条理にも反しています。」
    この言葉を皮切りにかなりの批判意見が噴出した。
    しかしそれを赤羽は黙って聞いていた。
    そしてひとしきり批判が出終わると彼は青島のほうを向いた。
    「お前はこの作戦が無茶だとは思っていないようだな。」
    「えっ…?あ、はい。」
    再び冷たい視線が皆から突き刺さる。
    赤羽が青島を構うことからのジェラシーだろうか、その視線の中には加藤も含まれていた。
    「…何故かを少し言ってみてもらえないか。」
    「あ、…はい。まずはネックとなっている4万と言う数字、しかしこれはほとんど戦闘訓練も受けていない素人たちです。当然魔法の脅威も存在しません。
    そして更にそれを指揮するには2000人では到底足りません。
    まず間違いなく指揮系統は混乱すると思われます。
    そしてさらにもう一つこの4万人は皆、アジェントの常備軍に対して憎しみを持っています。
    士気も0に等しいでしょうし、さらに場合によっては戦闘すら起こりえないと思われます。」

717 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/10/26(火) 01:09 [ kHqoVL5Q ]
    青島が言葉を切ると赤羽は満足そうに笑った。
    「その通りだ。はっきり言ってしまえばこの現地徴用の敵は相手にはならない。
    むしろ注意すべきはこの現地人達を傷付けないようにすることだ。我々は解放軍なのだからな。
    現地人たちは敵ではない、むしろ味方だ。」
    赤羽はそう言うと再び自分でしゃべり始めた。
    「そこで、だ。
    前提として、上陸地点付近の敵竜騎士部隊を殲滅、制空権を確保する。
    そして我々はまず、敵船部隊、これは相手にもならないだろうが、を殲滅後、海上に艦船を展開する。
    その後、敵が海辺に展開するかどうかで戦闘パターンが決まる。
    海辺に兵を展開する場合は厄介なことになる。本来ならば砲撃で焼き払いたいところだが、
    そうもいかん。この場合、敵現地兵を説得、失敗の場合は威嚇砲撃を行う。
    それでもだめならば仕方があるまい、兵法の基本どおり、焼き払う。
    そうして突破後はもうなんら厄介なところは無いだろう。
    むしろこうなってくれたほうが我々側の犠牲は少なくて済む。」
    赤羽は薄く笑った。
    その表情は笑みであるにもかかわらず、多くの士官達を畏怖させた。

718 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/10/26(火) 01:11 [ kHqoVL5Q ]
    「もう一つは敵が篭城、もしくは拠点周辺に兵を展開する場合だ。
    この場合は艦船の援護射撃がほとんど得られない可能性が高い。
    この場合は鉱山を攻める。鉱山は敵が絶対に守らねばならない施設だ。
    そうである以上ここを攻めれば敵は守らざるを得ない。拠点より遥かに守りにくいこの鉱山をだ。
    つまりは亀の甲羅からお出まし願うわけだ。」
    「赤羽海将。」
    赤羽の言葉を遮るように士官の一人が言葉を発した。
    「なんだ?」
    「鉱山を攻めるとしたら、現地人の犠牲は免れないのでは?」
    「いや、そこで現地抵抗勢力と手を結ぶ。彼らを先方とすれば現地人との衝突は避けられるだろう。
    現地レジスタンスたちの言葉も聞かないようであれば、それは解放される意思のないただの敵だ。
    ちなみに…現地レジスタンス達とはもう連絡を取ってある。」
    そして最後に赤羽はニヤリと笑って言った。
    「そしてもし鉱山を攻撃されても拠点から出てこない臆病者ならば、
    我々はこの島への「援助」を続けながらゆっくりと兵糧攻めをさせてもらうとしよう。以上だ。
    これらの作戦は最後のケース以外は敵常備軍を以下に早く殲滅できるかにかかっている。諸君の健闘に期待する。」
    「はっ!」
    参加者達が一斉に十度の敬礼をする。
    これが、戦後日本の始めての侵攻。「三介島解放作戦」のはじまりであった。

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