自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

10

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
普段、冷静なフランクス将軍も例外ではなかった。スミスは言葉を続けた。
「君たちがこの世界に引っ張り出さなければ、我々は予定通り、マリアナに進撃し、
あの戦争の雌雄を決する戦いが出来るはずだった。それが君たちのお陰でご破算だ!」
彼は憤然となり、忌々しげに置いていた葉巻を加えた。
「あなた方は、このメジュロ環礁に入る前に、巨大な船を見ただろう?平べったい甲板
を持つもの、巨大な砲塔を持つもの、だ。」
今度はミッチャー中将が声をかけてきた。4人はミッチャーの皺だらけ顔に視線を移した。
「はい。見ました。ですが、あたしにはあれは何だか分からないのですが。」
リーソン魔道師は声を震わせながら答えた。
「君たちが見た平べったい船は航空母艦というものだ。航空母艦は何十機もの飛行機を載せ
る事ができ、それを武器として使えるのだ。」
(飛行機・・・・・昨日見た、バーマント軍が持つ機動式飛空挺の似たようなものね)
彼女は、昨日見たアベンジャーを思い出して、心中でそう呟いた。
「君達は大きいのと小さいほうの航空母艦を見たね?ほら、こんなのだ。」
ミッチャーは2枚の写真を取り出した。1枚目の大き目の空母はエセックス級、2枚目の
小さいのがインディペンデンス級である。
「大きいので飛行機が100機。小さいので45機は積める。我々はこの航空母艦を中心
兵力とした大艦隊で、日本と呼ばれる我々が敵対していた国の航空母艦を相手に戦いを挑
む予定だったのだ。こっちはこの大小の主力が15隻、日本側は9隻持っている。我々は
日本機動部隊の空母9隻を、全て沈める意気込みで、今まで訓練を重ねていたのだ。」
ミッチャーの表情がやや自嘲めいたものになってきた。

「将兵の錬度は相当上がった。「「今回はどの空母が我が無敵の機動部隊の餌食に
なるんだ?」」そのような余裕を言う将兵も出てきた。来るべき宿敵との決戦が近い事を誰もが
感じ取っていた。だが、」
ミッチャーは伏せ気味になっていた視線を彼らにじろりと向けた。その相貌には明らかに
怒りが混じっていた。

「君達のお陰で大事な機動部隊決戦を取り上げられはしたが、空母を失う確率が格段に減ったよ。
ある意味では君達に感謝してるよ。」
と、嘲笑を浮かべた。
「ミッチャー提督が言っていた大きな砲塔を持つ船だが、」
今度はウイリス・リー提督が話し始めた。
「あれは戦艦というものだ。戦艦は水上艦の中ではもっとも強力な軍艦だ。航空機の大群には敵わんが、
敵の水上部隊相手には対等以上に立ち向かえる。だが、この世界に引っ張り出されたせいで、ただでさえ
出番の少ない戦艦が、余計に出番が少なくなった。私はそう確信したのだよ。」
ミッチャー、リー両提督は、ホーランド・スミス中将のような激しい罵声ではなかったが、その言葉の裏には
スミスと同様の、「怒り」、がひしひしと感じられた。
言うなれば、わざわざ呼ばれてもいないのにこんな世界に連れて来るとは何事か!迷惑千万だ!!と言っている
ようなものであった。

「・・・・・・すいません。私達が・・・・・余りにも軽率な事をしてしまったばかりに
          • 申し訳ございません。」
レイムは後悔した。召喚に成功したときの喜びは、召喚者である米軍将兵の冷遇、そして
首脳部の激しい怒りと不満を目の当たりした事から、綺麗さっぱり吹っ飛んでしまった。
「申し訳ないで済むんなら、こうも怒りはせんよ。」
リッチモンド・ターナーが突き放したような口調で言う。
「召喚主を選ぶことだな。お嬢さん。」
レイムは、その美貌に深い失望を浮かべていた。彼女は腰に吊ってある短剣を握り締めた。
(こんな状態では、彼らはこっちの用件も聞かないでさっさと帰れというかもしれない。いや、
絶対にここからたたき出されるわ。もはや、召喚は失敗したも同然。なら、この剣を胸に突き刺して
死んでしまおう)
彼女が失望に追いやられ、自殺を考えたとき、先程、激しい口調で彼らを罵ったスミス中将が声を上げた。
「おい!何しけたツラしとるんだ?話は終わったと思うのか?言っておくが、私たちはまだ君達の話を
聞いてはおらんぞ。話し合いはまだ終わってはおらん!」
スミスは葉巻を吹かしながら4人に、特にレイムを見ながらそう言った。そのまま叩き出されると思っていた
4人は唖然とした。
「さあ、君達の話を聞かせてくれ。まだ詳しい話を聞いておらん。」
スミスは、太った丸顔にニヤリと笑みを浮かべた。
「バーマント公国とやらはどういう国なのだね?」

レイムは言葉に詰まった。彼らが話を聞いてくれる。彼女は嬉しい気持ちで一杯になった。
これで、あの悪魔のごときバーマント本性を彼らに教えられる。
「どうした?言わんのか?」
スミスが催促する。そこへフランクス将軍が会話に入ってきた。
「スミス将軍。私が説明してもいいですか?」
「フランクス将軍だったな。あんたは軍のことに詳しいだろうから・・・・・まずは、なぜ
精鋭部隊が壊滅したのか。それを聞きたい。」
「分かりました。」
彼は、1週間前に起きた王国軍とバーマント軍との激戦を事細かに語った。精鋭部隊が、孤立しかけている
味方部隊を助けるために敢えて敵の大群に立ち向かった事、奮戦し敵に多大な損害を与えたこと、やがて敵に
包囲され、壊滅したこと。そして戦死した旅団長が彼の無二の親友だったこと。
その激戦模様を知らされた第5艦隊一同は静まり返った。やがて、しばしの静寂の後、スミスが口を開いた。
「勇敢でいい指揮官だったな。あなたの友人は。数倍の敵に立ち向かうことは余程の勇気がいることだ。」
スミスは頷きながら言った。
「だが、壊滅するまで引かなかったのは、少し評価できないな。」
彼は、故スプレル将軍をそう判断した。
「しかし、勇敢で、いい軍人であることには間違いない。誇りに思いたまえ。」
+ タグ編集
  • タグ:
  • US 001-020
  • アメリカ軍
  • アメリカ
ウィキ募集バナー