自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

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5月17日 午前8時 クロイッチ
シュングリル侵攻軍のグレイソル・キアルング元帥は、打ちのめされた表情で、目の前に
広がるクロイッチの光景を見つめていた。
昨日までは、美しい町並みをこの小高い丘から一望できた。だが、今日、いつものように
一望できるクロイッチの町は、もはや美しい町並みではなかった。
「なんてことだ・・・・・・・なんてことだ・・・・・・」
彼は、それだけしか言えなかった。キアルングは、昨日の第58任務部隊が放った第1次攻撃隊
によって自らが構えていた司令部の城を爆砕されてしまった。
彼を初めとする幕僚は、その時既に城の外にいたため、無事だったが、城の中にいた将兵に
多数の死傷者を出してしまった。
そして、あの悪魔のごとき未知の飛空挺は何度も何度もやってきては、この町に破壊をもたらした。
その行為には容赦が無かった。人が集まっている場所があれば、すぐに俊敏な飛空挺が駆けつけ、
その集団にまとわりついてはバタバタとなぎ倒してしまう。
目に付くもの、軍用の馬車や倉庫などはあらかたが吹き飛ばされたり、無数の穴を開けられたりした。
目立つ宿舎などは言うまでも無く、真っ先に叩き潰されてしまった。

特に彼がショックを受けたのは、バーマント公国きっての精鋭部隊、第1、第2空中騎士団が、海上
で忌々しい飛空挺を飛ばしてくる艦隊に攻撃をしかけ、ほとんど全滅してしまったことだ。
バーマント軍第1、第2空中騎士団は、第1航空軍という航空部隊の指揮の下に作戦行動に出ていた。
第1航空軍司令官は、形式的にはシュングリル侵攻軍の指揮下にあるものの、第1航空軍司令官は、独自
の命令権を有していた。このため、司令官であるグルースロッド騎士中将は出撃を決定した。が、勇躍して、
慣れない洋上飛行に飛び立っていった精鋭航空隊は、米機動部隊の激烈な反撃によって壊滅してしまった。
生き残りの12機ももはや使い物にならなかった。
国の象徴でもあり、選りすぐりの部隊が、敵の船に対して若干の被害を与えただけで全滅してしまった。
彼は夜中にやってきた伝令兵にそう聞かされた。そうすると、敵の攻撃力、防御力は相当高いものである。
いや、もはや次元を超えていると言っても過言ではない。

「未知の敵・・・・・・現るか。」
彼は力ない声でそう呟いた。


「未知の飛空挺・・・・それを大量に載せ、飛空挺を好きな時に出せる平らの軍艦・・・・・飛空挺母艦
か・・・・・」
彼は昨日、徹夜で行われた緊急会議の席で、騎士団の生き残りである女性パイロットが口にした言葉を呟い
ていた。
「そして、その船と、護衛する船に取り付けられた恐るべき対空火器。それがいともたやすく、精鋭の空中
騎士団、それも新鋭機を装備した部隊が、全滅した・・・まるで悪魔が生み出した産物だ。」
彼は唇を強くかみ締めた。この一連の大空襲で、ララスクリス、クロイッチにいた兵員は、暫定的な数値で
7400人が戦死、34789人が負傷するという未曾有の大損害を被っている。
それも、たった1日で!
それにララスクリスとクロイッチの町は、もはや灰燼と化している。その下に埋もれているであろう幸無き
者も、そして空中騎士団の戦死者も含めれば、犠牲はさらに増える。もしや、万の単位に達するかも知れない。
「ひどい・・・・・・あまりにも酷すぎる。もしや、俺達にこの戦争を続けるなと言う警告なのだろうか。」
彼はそう力なく呟いた。彼の深緑色の瞳には、灰燼と化し、未だに炎上を続けるクロイッチの姿が映し出されていた。

重巡洋艦インディアナポリス艦上の第5艦隊司令部では、スプルーアンスを初めとする司令部幕僚が作戦室で地図を
見ながら額を集めあっていた。
「第58任務部隊は、北方攻撃部隊の第1、第2任務群がクロイッチを、南方攻撃部隊の第3、第4任務群がララス
クリスを爆撃しました。南方部隊は合計で6波、北方部隊は合計で7波の攻撃隊を出し、周辺の軍事施設や飛行場
に攻撃を加えました。この間、敵の飛空挺部隊の攻撃を北方部隊の第2任務群が受けましたが、敵機多数を撃墜して
これを撃退しました。被害はバンカーヒルが中破、ワスプが小破、戦艦ニュージャージー、軽巡サンタフェも小破の
損害を受けましたが、各艦とも作戦続行に支障はありませんでした。」
「あの対空砲火をくぐり抜けて手傷を負わせるとは、それだけでも侮れない奴らだな。」
スプルーアンスは、顎をなでながら呟いた。
「今回、突入してきた敵飛空挺部隊は100機にも満たなかった。だが、敵をほとんど叩き落したのにもかかわらず、
バンカーヒルとワスプなどが傷つけられた。もし、突入機が多かったら。そして敵が300機、400機と突っ込ん
できたら、「大破」と言う判定を付けられた艦船が増えるかも知れんな。いや、最悪の場合、撃沈されるのも出てくる
だろう。」
「それを未然に防ぐためには、」
参謀長のデイビス少将が口を開いた。
「機動部隊の全戦闘機を上空に上げ、進撃してくる大編隊にぶつけなければなりません。今回の航空戦では、第2任務群
のF6F60機、それに他任務群からの救援30機で突入前のバーマント群の飛空挺を75機撃墜し、20機以上に損傷
を与えました。現在第58任務部隊が保有するF6Fは合計で400機以上です。これのほぼ全てをあげてバーマント軍
の飛空挺部隊を迎撃すれば、敵の対艦攻撃力を多く削ぐ事ができ、あるいは攻撃前に完全に撃墜することが可能になります。」
作戦参謀のフォレステル大佐も加わる。
「長官、もし敵の飛空挺部隊の大攻勢が、我が機動部隊に掛けられれば、貴重な高速空母を撃破、最悪の場合撃沈される可能性
があります。今後の作戦には各任務群の距離が30マイルほどの近距離で集合すれば、戦闘機の集合密度は上がります。」
「うむ。作戦参謀の言うとおりだ。」
スプルーアンスは頷いた。
「私も色々考えたのだが、結論は君と同じだった。高速機動が売りである機動部隊だが、分散していては、大量の敵に襲われては
ひとたまりも無い。今後、敵の主要基地を叩くときには、4群がほぼ集合してから攻撃隊をとばさせよう。」

翌日、20機のヘルダイバーが、根拠地、今では半分以上が焼けてしまった町、クロイッチに姿を現した。
バーマント軍の将兵はこのヘルダイバーの襲来に、恐怖の眼差しで確認した後、一斉に勝手な方向に逃げ始めた。
だが、ヘルダイバーの爆弾倉から落とされたのは、何かが書かれたビラだった。ヘルダイバーはビラを、
未だに燃えている建物に落ちないように避けながら落とした。

キアルング騎士元帥は、従兵が持ってきた一枚の紙を彼に渡した。その紙には、バーマント語でバーマント元首、
国民、将兵へ、と書かれた文があった。
その文の続きはこうである。
我々は、貴国のヴァルレキュアに対する蛮行を承認する事はできない。民族浄化は悪である。彼ら、
ヴァルレキュア人は確かに貴国バーマントよりも技術などで劣っている。
しかし、彼らは決して殺してはならない。なぜなら、彼らも同じ人だからである。
彼らヴァルレキュア人はとても素晴らしい民族であり、将来、貴国に勝るとも劣らない国に
成長するであろう。そして、互いに戦争をやめ、共同歩調を取っていけば、貴国もヴァルレキュアも
大いに発展するであろう。
我々が要求するのは、ヴァルレキュア王国の主権、それに占領地の返還である。それ以上は望まない。
もし、貴国がこの要求を踏みにじり、ヴァルレキュアに侵攻を続けるならば、我々も更なる武力行使を行うであろう。
それが行われれば、ララスクリス、クロイッチ、そして飛空挺部隊の犠牲を大きく上回る数の、
大損害を貴国が被るであろう。

最後に、この文を貴国の王に届け、拝見してもらうように

被召喚者、アメリカ合衆国第5艦隊司令長官、レイモンド・エイムズ・スプルーアンス大将

「被召喚者だと!?ヴァルレキュアの奴ら、もしや異世界からあの飛空挺部隊を召喚してきたのか・・・
        • なんて卑怯な奴らだ!!」
キアルングは激怒し、側にあったくずかごを思いきり蹴飛ばした。
従兵や彼の幕僚達は、普段温厚な彼が突然激情に駆られた事に、仰天した。
キアルングはしばらく怒りのあまり、体を震わせていた。しばらくすると、落ち着きを取り戻したのか、
椅子に座った。そして、彼は頭を抱えて何かを考え始めた。
(アメリカ合衆国?そんな国はどこにも無い。それに主だった国はわがバーマントが全て占領しているし、
しかしあの見慣れない飛空挺は確実にこの世に無い。それより飛空挺はわが国しか持っていないし、ヴァルレキュア
が持つ予定だったのみで、これも他には無い・・・・・・と言う事は、あの大部隊は本当に異世界から来た事に
なるのか?でもどうやって・・・・・・それになぜヴァルレキュア側に付き、我が国に敵対するのだろうか?)
彼は考えを浮かべては自問自答した。彼は深く考え続けた。

それから1時間後、彼は従兵を呼んだ。
「この通告文を、首都におられる陛下に渡して欲しい。」
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