10月5日 午前4時30分 カウェルサント
俺は目が覚めて、寝床から起きた。
緊張しているためか、起きた時に来る眠気があまり来ない。
俺は目が覚めて、寝床から起きた。
緊張しているためか、起きた時に来る眠気があまり来ない。
「たった4時間しか寝ていないのに、頭が冴えているな。」
俺はそう呟く。ふと、自分の左脇に置いている、とあるモノに目が止まった。
「・・・・本物と比べたら、みすぼらしいけど、なんとかなるかな。」
と、苦笑混じりに言った。
なぜか、外がガヤガヤと騒がしい。なんだろうと思った俺は、ひとまず寝床のあるテントから出てみた。
辺りはかがり火が消されて、暗かった。太陽はまだまだ上がっていない。
それなのに、門の周辺には大勢の革命派の兵士達が集まっている。
なぜか、外がガヤガヤと騒がしい。なんだろうと思った俺は、ひとまず寝床のあるテントから出てみた。
辺りはかがり火が消されて、暗かった。太陽はまだまだ上がっていない。
それなのに、門の周辺には大勢の革命派の兵士達が集まっている。
「おい!こいつを手当てしてやれ!」
「水だ!水をもってこい」
「他に空いている部屋は無いか!?」
「水だ!水をもってこい」
「他に空いている部屋は無いか!?」
門の手前で、なぜか革命派の兵が寝かされて、味方の叱咤激励を受けている。その寝かされている奴は門の手前だけではなく、奥のほうにもいる。
10人や20人ではない。100単位の数の負傷兵が、仲間の介抱を受けていた。
10人や20人ではない。100単位の数の負傷兵が、仲間の介抱を受けていた。
「なんてこった・・・・・」
俺は思わずそう漏らした。なにせ、負傷兵のみならず、門から中に入ってくる兵の顔が、疲労で顔が死んでいる。
精も根も尽き果てたと言わんばかりだ。
その疲労に満ちた表情にも、目だけは鋭くぎらついており、まるで地獄から這い上がってきた幽鬼のように見えて、ぞっとする。
精も根も尽き果てたと言わんばかりだ。
その疲労に満ちた表情にも、目だけは鋭くぎらついており、まるで地獄から這い上がってきた幽鬼のように見えて、ぞっとする。
「継戦軍を食い止められなかったのか。」
彼らは防衛線を守っていた部隊だ。継戦軍が攻撃を仕掛けた場合、彼らは真っ先に攻撃を受ける。
そして、その攻撃を跳ね返すのが彼らの任務である。
敵味方が受けた被害がどうであれ、本来、防衛線で居座っているはずの彼らが、ここに逃げているという事は、防衛線から叩き出されたのだ。
そして、その攻撃を跳ね返すのが彼らの任務である。
敵味方が受けた被害がどうであれ、本来、防衛線で居座っているはずの彼らが、ここに逃げているという事は、防衛線から叩き出されたのだ。
「ポイントを継戦軍に取られたか・・・・・・」
となると、敵地上軍はこの砦に殺到してくることになる。
早くもピンチに陥るとは・・・・・・・・
早くもピンチに陥るとは・・・・・・・・
「他に部屋は無いのか!?」
「今探していますが、どこも先に収容した兵の治療に当たっております。空くのはもうしばらくかかるかもしれません。」
「こんな泥だらけのとこで、長い時間負傷兵は寝かせられん。」
「今探していますが、どこも先に収容した兵の治療に当たっております。空くのはもうしばらくかかるかもしれません。」
「こんな泥だらけのとこで、長い時間負傷兵は寝かせられん。」
すぐ近くで、革命派の兵が話し合っている。
俺が寝いている間に雨は止んだのだろう、空は再び星空が除いているが、地面は先の豪雨の影響で、まだぬかるんでいる。
その泥だらけの地面の上に、100、いや、200は下らぬ負傷兵がいる。そのうちの半数が地面に寝かされている。
一応、何かを敷いてから寝かされているが、これでは、負傷兵の衛生環境に悪い。
俺が寝いている間に雨は止んだのだろう、空は再び星空が除いているが、地面は先の豪雨の影響で、まだぬかるんでいる。
その泥だらけの地面の上に、100、いや、200は下らぬ負傷兵がいる。そのうちの半数が地面に寝かされている。
一応、何かを敷いてから寝かされているが、これでは、負傷兵の衛生環境に悪い。
「おい、君達。」
俺は後ろを振り返った。押し問答を繰り返していた革命派の兵2人が、俺を見て驚いている。
「あ、あなたは。」
「部屋を探しているんだろう?なら俺の部屋を使え。狭い部屋だが、5、6人は寝かせられる。
医療設備はないが、こんな汚い地面の上で寝かせるよりマシだろう。」
「部屋を探しているんだろう?なら俺の部屋を使え。狭い部屋だが、5、6人は寝かせられる。
医療設備はないが、こんな汚い地面の上で寝かせるよりマシだろう。」
彼らが驚くのを無視して、自分の部屋を使うように勧めた。
「え、でもマッキャンベル中佐。あなたの部屋を勝手に使うなど、自分達はとても。」
背の低い、ピンク色の目をした女性兵が言ってくる。この兵の表情にも、かなりの疲労が滲んでいる。
「あなたはいわば客人です。その客人の部屋を勝手に使う事は、」
「馬鹿野郎。そんなことはどうでもいい!君達は傷を負った仲間を助けたいんだろう?
ならばなおさらだ。俺の事など気にせず、部屋を使え。」
「馬鹿野郎。そんなことはどうでもいい!君達は傷を負った仲間を助けたいんだろう?
ならばなおさらだ。俺の事など気にせず、部屋を使え。」
じれったい奴らだ。こんな時にまでわざわざ遠慮なぞする必要もないだろうに。
本人がOKと言っているのだから、さっさと使えばいいのだ。
本人がOKと言っているのだから、さっさと使えばいいのだ。
「「あ、ありがとうございます!」」
2人が言葉を重ねて言ってきた。最初からそう言え。
「俺の部屋はあそこ、すぐ近くだ。」
指を指して、自分の部屋を教えた。2人の兵は、他の手の空いている仲間を呼んで、負傷兵を運ばせた。
自分も誰かを呼んで、負傷兵を運ぼう。おっ、あいつがよさそうだ。声をかけてみよう。
指を指して、自分の部屋を教えた。2人の兵は、他の手の空いている仲間を呼んで、負傷兵を運ばせた。
自分も誰かを呼んで、負傷兵を運ぼう。おっ、あいつがよさそうだ。声をかけてみよう。
「そこの黒い外套を着た君!ちょっと来てくれ!」
すたすたと歩き去っていこうとする兵を呼び止める。その黒い外套の兵が足を止めて、俺のほうを振り返った。
- 畜生、苦手な奴を呼んでしまったな。
「なんですか?」
「イメイン、君か。」
「イメイン、君か。」
彼女の顔がやや青ざめている。
確か彼女自身も撹乱部隊に参加していたというから、戦闘をやって来たに違いない。
確か彼女自身も撹乱部隊に参加していたというから、戦闘をやって来たに違いない。
「負傷兵をあの部屋に一緒に運んでもらおうかと思ってたんだが・・・・疲れているみたいだな。他を当たるよ。」
「手伝う。」
「手伝う。」
不機嫌そうな口調で言ってくるなり、俺が持とうとした負傷兵の側まで寄ってきた。
負傷兵の下に敷かれている紫色の薄布を握って、俺のほうを向いた。
負傷兵の下に敷かれている紫色の薄布を握って、俺のほうを向いた。
「あなたは頭の部分を。」
「あ、ああ。」
「あ、ああ。」
その言葉に施されて、俺は頭の自他にしかれている薄布を握った。
俺が合図をして、その負傷兵を持ち上げた。
負傷兵がうっと、うめきを上げたが、俺とイメインはそれを無視するかのように、そのまま歩き続けた。
部屋にかけられている天幕を、さっき押し問答を繰り返していた男性兵があげてくれた。俺は後ろ向きに天幕の中に入った。
ベッドの上に1人、床に3人が既に入っている。俺とイメインは、右側の空いている部分にその負傷兵を寝かせた。
俺が合図をして、その負傷兵を持ち上げた。
負傷兵がうっと、うめきを上げたが、俺とイメインはそれを無視するかのように、そのまま歩き続けた。
部屋にかけられている天幕を、さっき押し問答を繰り返していた男性兵があげてくれた。俺は後ろ向きに天幕の中に入った。
ベッドの上に1人、床に3人が既に入っている。俺とイメインは、右側の空いている部分にその負傷兵を寝かせた。
「マッキャンベル中佐、部屋の中にこのようなものがありましたが。」
さっきの男性兵が、俺の飛行服が入った手さげ鞄と(オイルエン大尉に譲ってもらった)、包まれた布を持って来てくれた。
「ああ、ありがとう。」
俺は微笑んでから、それを受け取った。
「医務官はまだか?」
「今、こっちに向かってるところです。マッキャンベル中佐、部屋を貸していただいてありがとうございます。」
「今、こっちに向かってるところです。マッキャンベル中佐、部屋を貸していただいてありがとうございます。」
「俺に感謝するのもいいが、それよりも、戦友を励ましてやれ。見たところ、みんな傷が酷い。
俺に対する感謝はどうでもいいから、先にあいつらを手当てするんだ。」
「はっ、分かりました。」
俺に対する感謝はどうでもいいから、先にあいつらを手当てするんだ。」
「はっ、分かりました。」
思わず、面食らったような表情になったが、すぐに男性兵は俺の言葉の意味を受け取り、天幕の中に入っていった。
イメインと共に天幕から出た俺は、ふと、彼女の右腕に白い包帯が巻かれているのが目に入った。
イメインと共に天幕から出た俺は、ふと、彼女の右腕に白い包帯が巻かれているのが目に入った。
「おい、負傷したのか?」
イメインが俺を見た。一瞬だけだが、どこか痛みに耐えているような表情が見えた。
しかし、それはすぐに冷静な表情へと変わった。
しかし、それはすぐに冷静な表情へと変わった。
「敵とやり合っているときにつけられたの。これぐらいはかすり傷よ。」
そう言って、彼女はどこか行ってしまった。
かすり傷か、じゃあさっき、一瞬だけ見たあの表情はいったい?
俺はイメインを見てみた。彼女はどこかに行ってしまい、見えなかった。
かすり傷といっていたが、包帯に付いていた血はだいぶ滲んでいた。
かすり傷か、じゃあさっき、一瞬だけ見たあの表情はいったい?
俺はイメインを見てみた。彼女はどこかに行ってしまい、見えなかった。
かすり傷といっていたが、包帯に付いていた血はだいぶ滲んでいた。
「かすり傷で、あんなに血が出るものか?」
戦闘中は激しく動いている分、血液のめぐりも早くなる。なるほど、その時に傷を受ければ、出血もやや多くなるだろう。
だが、彼女の表情は明らかにおかしかった。
戦闘中は激しく動いている分、血液のめぐりも早くなる。なるほど、その時に傷を受ければ、出血もやや多くなるだろう。
だが、彼女の表情は明らかにおかしかった。
「あれは、絶対にやせ我慢している。かすり傷ではないな。」
俺はそう思った。
それはともかく、今度の戦いは、この砦を巡るものとなる事は確かだ。
その時に、彼らは優勢な敵に対して、どのようにして戦うのだろうか?
それはともかく、今度の戦いは、この砦を巡るものとなる事は確かだ。
その時に、彼らは優勢な敵に対して、どのようにして戦うのだろうか?
午前5時 ヌーメア
ゼルポイス大佐は、やや晴れた表情でザルティグ少将に報告した。
ゼルポイス大佐は、やや晴れた表情でザルティグ少将に報告した。
「現場付近の天候は次第に回復しつつあり、午前6時ごろには現地の天候はだいぶ回復するようです。」
「雨雲は北に向かったようだな。よし、これでワイバーンロードの支援が受けられる。」
「雨雲は北に向かったようだな。よし、これでワイバーンロードの支援が受けられる。」
椅子に座っているザルティグ少将は満足そうな笑みを浮かべて頷いた。
昨夜の戦いで、第77歩兵師団に所属する第1連隊は、豪雨の中、敵の防御線に突入している。
戦いの結果、第1連隊側に多くの死傷者が出てしまったが、当初の目的であった、防御陣地からの敵軍の排除は達成させられた。
また、防御陣地は開けた土地となっているため、第1連隊指揮官から砲兵陣地には最適である、と報告されている。
昨夜の戦いで、第77歩兵師団に所属する第1連隊は、豪雨の中、敵の防御線に突入している。
戦いの結果、第1連隊側に多くの死傷者が出てしまったが、当初の目的であった、防御陣地からの敵軍の排除は達成させられた。
また、防御陣地は開けた土地となっているため、第1連隊指揮官から砲兵陣地には最適である、と報告されている。
「占領した防衛線に配置する砲兵隊はどうなった?」
「既に準備を終え、10分後には防御線に向けて出発する予定です。」
「万事順調だな。」
「既に準備を終え、10分後には防御線に向けて出発する予定です。」
「万事順調だな。」
最初こそ、革命派の思わぬ攻撃によって混乱したものの、物事はうまく進んでいる。
相手は数が少ないとはいえ、精鋭だ。死に物狂いで反撃してくる。
そのため、味方の損害率は敵よりも高い。
(だが、数の優位は全く動かぬ。このまま、一気に押し潰すぞ!)
遠いながらも、勝利を確信したザルティグ少将は思わず微笑んだ。
その時、いきなり魔道兵が、天幕の中に入ってきた。何か紙を握りしめている。
相手は数が少ないとはいえ、精鋭だ。死に物狂いで反撃してくる。
そのため、味方の損害率は敵よりも高い。
(だが、数の優位は全く動かぬ。このまま、一気に押し潰すぞ!)
遠いながらも、勝利を確信したザルティグ少将は思わず微笑んだ。
その時、いきなり魔道兵が、天幕の中に入ってきた。何か紙を握りしめている。
「報告します!」
「なんだ?読め。」
ゼルポイス大佐にほどこされて、その魔道兵は紙を読み上げた。
「海竜情報収集隊から連絡です。我、ギルアルグ北北東120キロ地点で・・・・」
思わず魔道兵が息を呑んだ。魔道兵は気を取り直して読み続ける。
ゼルポイス大佐にほどこされて、その魔道兵は紙を読み上げた。
「海竜情報収集隊から連絡です。我、ギルアルグ北北東120キロ地点で・・・・」
思わず魔道兵が息を呑んだ。魔道兵は気を取り直して読み続ける。
しかし、小型戦列艦3隻に、中型戦列艦が2隻しかいないとなると・・・・・
いや、まさか。
ゼルポイス大佐がある事を思い立った時、魔道兵が第2報を読み始めた。
いや、まさか。
ゼルポイス大佐がある事を思い立った時、魔道兵が第2報を読み始めた。
「続いて第2報です。敵艦隊は、艦隊の後方に空母3隻の機動部隊を伴う。
送られてきた魔法通信の内容はこれだけです。」
送られてきた魔法通信の内容はこれだけです。」
機動部隊だと!?
ゼルポイス大佐は心臓が跳ねた。彼はザルティグ少将の顔を見つめる。
先ほどまで、微笑を浮かべていたザルティグの顔は、やや暗いものになっている。
ゼルポイス大佐は心臓が跳ねた。彼はザルティグ少将の顔を見つめる。
先ほどまで、微笑を浮かべていたザルティグの顔は、やや暗いものになっている。
「これは、少々意外な事態だな。いや、少々でなく、深刻・・・・・といったほうがいいかもしれんな。」
昨日から、2通ほどの興味のある魔法通信が送られてきた。
2通とも、アメリカ軍の偵察機が偵察にやってきた、との報告である。
2通とも、アメリカ軍の偵察機が偵察にやってきた、との報告である。
「敵の空母はマリアナの沖合にいるかもしれない。」
ザルティグは昨日の作戦会議で、そう漏らしている。
彼らは敵空母部隊が付近にいるかもしれないと思っていたが、付近といっても、てっきりマリアナ付近であろうと思っていた。
その予想は、この魔法通信であっさり打ち砕かれた。
ギルアルグからこのヌーメアまでは直線で270キロある。
そのギルアルグから北120キロのとこに、あの忌まわしき空母部隊がいるのだ。
その海域からヌーメアまでの距離は直線でおおよそではあるが、400キロ。
一方、大魔道院が破壊される前に生起した海空戦で、第5艦隊が距離500キロ以上離れたアメリカ機動部隊から、
実に3波、300機の航空攻撃を受けている。
彼らは敵空母部隊が付近にいるかもしれないと思っていたが、付近といっても、てっきりマリアナ付近であろうと思っていた。
その予想は、この魔法通信であっさり打ち砕かれた。
ギルアルグからこのヌーメアまでは直線で270キロある。
そのギルアルグから北120キロのとこに、あの忌まわしき空母部隊がいるのだ。
その海域からヌーメアまでの距離は直線でおおよそではあるが、400キロ。
一方、大魔道院が破壊される前に生起した海空戦で、第5艦隊が距離500キロ以上離れたアメリカ機動部隊から、
実に3波、300機の航空攻撃を受けている。
「120キロ地点で、敵艦隊を発見。小型戦列艦3、中型戦列艦2。」
「なんだ、これだけか。」
「なんだ、これだけか。」
ゼルポイス大佐は、てっきり異世界軍の空母部隊かと思った。
しかし、小型戦列艦3隻に、中型戦列艦が2隻しかいないとなると・・・・・
いや、まさか。
ゼルポイス大佐がある事を思い立った時、魔道兵が第2報を読み始めた。
しかし、小型戦列艦3隻に、中型戦列艦が2隻しかいないとなると・・・・・
いや、まさか。
ゼルポイス大佐がある事を思い立った時、魔道兵が第2報を読み始めた。
「続いて第2報です。敵艦隊は、艦隊の後方に空母3隻の機動部隊を伴う。
送られてきた魔法通信の内容はこれだけです。」
送られてきた魔法通信の内容はこれだけです。」
機動部隊だと!?
ゼルポイス大佐は心臓が跳ねた。彼はザルティグ少将の顔を見つめる。
先ほどまで、微笑を浮かべていたザルティグの顔は、やや暗いものになっている。
ゼルポイス大佐は心臓が跳ねた。彼はザルティグ少将の顔を見つめる。
先ほどまで、微笑を浮かべていたザルティグの顔は、やや暗いものになっている。
「これは、少々意外な事態だな。いや、少々でなく、深刻・・・・・といったほうがいいかもしれんな。」
昨日から、2通ほどの興味のある魔法通信が送られてきた。
2通とも、アメリカ軍の偵察機が偵察にやってきた、との報告である。
2通とも、アメリカ軍の偵察機が偵察にやってきた、との報告である。
「敵の空母はマリアナの沖合にいるかもしれない。」
ザルティグは昨日の作戦会議で、そう漏らしている。
彼らは敵空母部隊が付近にいるかもしれないと思っていたが、付近といっても、てっきりマリアナ付近であろうと思っていた。
その予想は、この魔法通信であっさり打ち砕かれた。
ギルアルグからこのヌーメアまでは直線で270キロある。
そのギルアルグから北120キロのとこに、あの忌まわしき空母部隊がいるのだ。
その海域からヌーメアまでの距離は直線でおおよそではあるが、400キロ。
彼らは敵空母部隊が付近にいるかもしれないと思っていたが、付近といっても、てっきりマリアナ付近であろうと思っていた。
その予想は、この魔法通信であっさり打ち砕かれた。
ギルアルグからこのヌーメアまでは直線で270キロある。
そのギルアルグから北120キロのとこに、あの忌まわしき空母部隊がいるのだ。
その海域からヌーメアまでの距離は直線でおおよそではあるが、400キロ。
一方、大魔道院が破壊される前に生起した海空戦で、第5艦隊が距離500キロ以上離れたアメリカ機動部隊から、
実に3波、300機の航空攻撃を受けている。
そう、このヌーメアは敵飛空挺の航続距離内にすっぽりと入っているのだ。
実に3波、300機の航空攻撃を受けている。
そう、このヌーメアは敵飛空挺の航続距離内にすっぽりと入っているのだ。
「海竜は、情報を事細かく伝えてくるように訓練されています。」
ゼルポイスト大佐が言う。
「魔法通信の内容はかなり簡潔で、短い。恐らく、魔法通信を送っている途中で敵の攻撃を受けたのでしょう。」
天幕の中の雰囲気は、一気に重く沈んだ。
「魔法通信の内容はかなり簡潔で、短い。恐らく、魔法通信を送っている途中で敵の攻撃を受けたのでしょう。」
天幕の中の雰囲気は、一気に重く沈んだ。
「唯一の救いは。敵飛空挺に発見されていない事だ。」
ザルティグ少将がしっかりとした声音で言ってくる。
「発見されていないという事は、ヌーメアはまだ攻撃目標に含まれていない。それだけは確かだ。」
ザルティグ少将は立ち上がった。
「時間との勝負だな。敵空母がこっちを見つけるか、俺達が革命派を叩きのめしているか。参謀長!」
「はっ!」
「天候が収まり次第、至急第68空中騎士旅団に支援を要請しろ。」
「はっ!」
「天候が収まり次第、至急第68空中騎士旅団に支援を要請しろ。」
10月5日 午前5時20分 ラグナ岬北北西80マイル地点
第58任務部隊第1任務群は、午前5時から攻撃隊の発艦準備を開始した。
その前日の4日、第1任務群は策敵機を内陸に向けて発艦させ、墜落機パイロットの捜索、もしくは敵施設捜索を行った。
午後4時には、ラグナ岬より南西の沿岸に、4人のパイロットらしき人物が、革命派と思われる集団と共に、偵察機に手を振ってきた。
この墜落機パイロットの発見は、第1任務群の将兵を勇気づけた。
第58任務部隊第1任務群は、午前5時から攻撃隊の発艦準備を開始した。
その前日の4日、第1任務群は策敵機を内陸に向けて発艦させ、墜落機パイロットの捜索、もしくは敵施設捜索を行った。
午後4時には、ラグナ岬より南西の沿岸に、4人のパイロットらしき人物が、革命派と思われる集団と共に、偵察機に手を振ってきた。
この墜落機パイロットの発見は、第1任務群の将兵を勇気づけた。
午後5時には、魔法都市マリアナから20マイル南のところにある、敵の物資集積所のようなものを
ヨークタウンから発艦したアベンジャーが発見。
その際、アベンジャーは敵の対空砲火を受けて損傷している。
他にも、物資集積所から南に6マイル付近に、継戦軍のものと思わしき駐屯地があった。
この駐屯地を発見したのはホーネットのヘルダイバーである。
駐屯地には錬兵場や宿舎などがあり、基地の周囲には対空陣地が配備されている。
また、中には捕虜収容所のようなものもあり、その収容所付近には死体らしきものが散乱しており、それを片付けている継戦派の兵も確認された。
このヘルダイバーも、いきなり高射砲の砲撃を受けた。こちらも損傷を受けたが、なんとか母艦に辿り着いた。
しかし、軽傷で済んだヨークタウンのアベンジャーと違って、受けた傷は大きく、修理に2日はかかると言われた。
第1任務群司令のクラーク少将は、偵察機に対して敵対行動をとったこの2つの施設を艦載機で攻撃することに決めた。
ヨークタウンから発艦したアベンジャーが発見。
その際、アベンジャーは敵の対空砲火を受けて損傷している。
他にも、物資集積所から南に6マイル付近に、継戦軍のものと思わしき駐屯地があった。
この駐屯地を発見したのはホーネットのヘルダイバーである。
駐屯地には錬兵場や宿舎などがあり、基地の周囲には対空陣地が配備されている。
また、中には捕虜収容所のようなものもあり、その収容所付近には死体らしきものが散乱しており、それを片付けている継戦派の兵も確認された。
このヘルダイバーも、いきなり高射砲の砲撃を受けた。こちらも損傷を受けたが、なんとか母艦に辿り着いた。
しかし、軽傷で済んだヨークタウンのアベンジャーと違って、受けた傷は大きく、修理に2日はかかると言われた。
第1任務群司令のクラーク少将は、偵察機に対して敵対行動をとったこの2つの施設を艦載機で攻撃することに決めた。
5時20分を回ったのにも関わらず、海面はどこか薄暗い。
ヨークタウンの飛行甲板に取り付けられている前、後部のエレベーターが上下運動を繰り返し、格納庫内の艦載機を飛行甲板上に出している。
ヨークタウンの飛行甲板に取り付けられている前、後部のエレベーターが上下運動を繰り返し、格納庫内の艦載機を飛行甲板上に出している。
「よし、いいぞ。押せ!」
前部甲板に上げられたヘルキャットを、10人ほどの甲板要員が後ろに押していく。
後部甲板では、ヘルダイバー艦爆を10人ほどの甲板要員が、班長の指示に従いながら決められた位置に押す。
後部甲板では、ヘルダイバー艦爆を10人ほどの甲板要員が、班長の指示に従いながら決められた位置に押す。
「う~ん・・・・・・舷側エレベーターがつかえない分、準備にしわ寄せが来るな。」
艦橋から発艦準備の模様を眺めていた飛行長のジョン・ピーターズ中佐は眉をひそめる。
「ホーネットでは、後部甲板があんなに埋まっているのに、こっちはあっちの6割程度しか埋まっていない。」
薄暗い洋上をひた走る寮艦の空母ホーネットの飛行甲板上には、既に大多数の艦載機が後部甲板に集まっている。
それに対し、ヨークタウンの飛行甲板上では、出撃予定数の半分強しか並んでいない。
それに対し、ヨークタウンの飛行甲板上では、出撃予定数の半分強しか並んでいない。
「敵さんも、うまい所を壊してくれたものだ。」
左隣にいる艦長のジェニングス大佐がやや苦味の混じった表情で呟いた。
「攻撃隊は本艦からヘルキャットが16機、ヘルダイバーが23機、アベンジャーが16機出るが、
出撃数が6機多いホーネットに先を越されるとは。」
出撃数が6機多いホーネットに先を越されるとは。」
そう言って、彼はため息をつく。
現在、第1任務群の編成は、正規空母のヨークタウンとホーネット、軽空母のベローウッドとバターンが機動部隊の中核である。
これを援護する艦艇は、戦艦ワシントン、重巡洋艦ボルチモア、キャンベラ、軽巡サンファン、駆逐艦10隻。
本来は重巡のボストンと軽巡のオークランド、それに駆逐艦4隻が加わるはずであったが、
オークランドは30日の航空戦で撃沈され、ボストンは損傷のため後方に後退。
駆逐艦4隻は負傷兵を乗せてボストンと共に後退している。
艦載機はヨークタウンがF6F36機、SB2C29機、TBF23機。
ホーネットがF6F36機、SB2C27機、TBF23機。
軽空母のベローウッドではF6F22機、SB2C6機、TBF12機。
バターンはF6F28機、TBF14機となっている。
合計で256機。本来と比べて33機の減勢ではあるが、それでも強力な航空兵力だ。
第1次攻撃隊はヨークタウンからF6F16機、SB2C23機、TBF16機。
ホーネットからF6F20機、SB2C25機、TBF16機。
軽空母からはバターンとベローウッドがそれぞれF6F8機、アベンジャー12機を出す事になっている。
合計で156機を継戦側の残存部隊に叩きつける。
現在、第1任務群の編成は、正規空母のヨークタウンとホーネット、軽空母のベローウッドとバターンが機動部隊の中核である。
これを援護する艦艇は、戦艦ワシントン、重巡洋艦ボルチモア、キャンベラ、軽巡サンファン、駆逐艦10隻。
本来は重巡のボストンと軽巡のオークランド、それに駆逐艦4隻が加わるはずであったが、
オークランドは30日の航空戦で撃沈され、ボストンは損傷のため後方に後退。
駆逐艦4隻は負傷兵を乗せてボストンと共に後退している。
艦載機はヨークタウンがF6F36機、SB2C29機、TBF23機。
ホーネットがF6F36機、SB2C27機、TBF23機。
軽空母のベローウッドではF6F22機、SB2C6機、TBF12機。
バターンはF6F28機、TBF14機となっている。
合計で256機。本来と比べて33機の減勢ではあるが、それでも強力な航空兵力だ。
第1次攻撃隊はヨークタウンからF6F16機、SB2C23機、TBF16機。
ホーネットからF6F20機、SB2C25機、TBF16機。
軽空母からはバターンとベローウッドがそれぞれF6F8機、アベンジャー12機を出す事になっている。
合計で156機を継戦側の残存部隊に叩きつける。
「今回の攻撃は、継戦派の戦闘意欲を失わせるためのものだ。そのためにも、攻撃隊の連中には派手に暴れ回ってもらわんとな。」
ジェニングス大佐はやや弾んだ口調でそう言った。
「偵察写真によると、継戦軍は相当量の物資を備蓄しているようです。
5万以上の軍団が戦うには、写真に写っている集積所の分では足りませんが、それでも1個師団は充分に戦える量です。」
「同様の集積所は他にもあるかもしれないな。」
「クラーク司令はどのような判断をされるでしょうか。」
「俺はクラーク司令じゃないからあまりわからんが、そうだな。今回の攻撃で敵が音を上げる様子が無ければ、
今回のような空襲を何度でもやるだろう。それに、敵は前からではなく、後ろにも居座っているという印象も与えられる。
まっ、要するに、必要な物を全て破壊して、敵側の敢闘精神を寸刻みにすり減らしていく、という訳だ。」
「なるほど。」
5万以上の軍団が戦うには、写真に写っている集積所の分では足りませんが、それでも1個師団は充分に戦える量です。」
「同様の集積所は他にもあるかもしれないな。」
「クラーク司令はどのような判断をされるでしょうか。」
「俺はクラーク司令じゃないからあまりわからんが、そうだな。今回の攻撃で敵が音を上げる様子が無ければ、
今回のような空襲を何度でもやるだろう。それに、敵は前からではなく、後ろにも居座っているという印象も与えられる。
まっ、要するに、必要な物を全て破壊して、敵側の敢闘精神を寸刻みにすり減らしていく、という訳だ。」
「なるほど。」
ピーターズ中佐は納得して頷いた。
発艦準備作業は一応進捗しており、彼とジェニングス大佐が話している間には、作業は8割方完了した。
発艦準備作業は一応進捗しており、彼とジェニングス大佐が話している間には、作業は8割方完了した。
「もうそろそろですな。」
飛行甲板を見下ろしたピーターズ中佐が、やや表情を明るくさせた。
その時、右舷側を航行する空母ホーネットから、エンジン音が聞こえてきた。
最初は小さなものであったが、それは次第に響いていき、やがては50以上のエンジン音が海上を圧するまでに鳴った。
その時、右舷側を航行する空母ホーネットから、エンジン音が聞こえてきた。
最初は小さなものであったが、それは次第に響いていき、やがては50以上のエンジン音が海上を圧するまでに鳴った。
「やっぱり、舷側エレベーターが無いと困るな。」
午前6時 ミルクリンス
ミルクリンスは本来、草原の中にたたずむ小さな村であった。
7年前にバーマント軍がミルクリンスの近郊に基地を構えると、村は兵士達の落としていく金で次第に大きくなり、今では4000人の住民が住む町に成長した。
ミルクリンスの近郊には、バーマント軍の巨大な補給基地があり、そこに多種多様の物資が備蓄されている。
銃器、弾薬、大砲、剣、盾、ストーンゴーレム等・・・・・戦いに必要なものはなんでも揃っている。
1年前には、この補給施設の近くに鉄道が敷かれ、今まで馬車に頼っていた補給物資の運搬は、今では運搬のスピードが格段に向上した。
バーマント軍第290兵站連隊は、このミルクリンス物資補給施設の主である。
ミルクリンスは本来、草原の中にたたずむ小さな村であった。
7年前にバーマント軍がミルクリンスの近郊に基地を構えると、村は兵士達の落としていく金で次第に大きくなり、今では4000人の住民が住む町に成長した。
ミルクリンスの近郊には、バーマント軍の巨大な補給基地があり、そこに多種多様の物資が備蓄されている。
銃器、弾薬、大砲、剣、盾、ストーンゴーレム等・・・・・戦いに必要なものはなんでも揃っている。
1年前には、この補給施設の近くに鉄道が敷かれ、今まで馬車に頼っていた補給物資の運搬は、今では運搬のスピードが格段に向上した。
バーマント軍第290兵站連隊は、このミルクリンス物資補給施設の主である。
「おい、新入り!さっさっと起きろ!」
盗賊の棟梁のような顔をした軍曹の階級をつけた男が、仮眠室で休憩を取っていた若い男性兵を叩き起こした。
盗賊の棟梁のような顔をした軍曹の階級をつけた男が、仮眠室で休憩を取っていた若い男性兵を叩き起こした。
「え~、もう6時ですか?まだねむいのに。」
「馬鹿野郎!二度寝なんかしたら、川へ放り込むぞ!!」
「馬鹿野郎!二度寝なんかしたら、川へ放り込むぞ!!」
軍曹の怒声に、ぼんやりとしていた頭は瞬時に覚めた。
「す、すいません!今すぐ支度します!」
「10秒でやれよ。」
「10秒でやれよ。」
そんな無茶な!と思いつつ、彼は軍服に着替えてベッドから降りた。
「遅い!16秒もかかってる。」
「毎回毎回思うんですが、10秒以内に着替えるのは無茶っすよ~。それに、自分はこの部隊に配備されて1年以上経つんですが。」
「何を言う。俺が新入りといったら新入りなんだ。」
「毎回毎回思うんですが、10秒以内に着替えるのは無茶っすよ~。それに、自分はこの部隊に配備されて1年以上経つんですが。」
「何を言う。俺が新入りといったら新入りなんだ。」
そう言って、軍曹はがっははははは!と、豪快な笑い声を上げた。
この部隊に配備されて1年になるが、1等兵はこの軍曹に一番好感を持っている。
色々と無茶なことばかり口走る軍曹だが、その反面、部下や上司の信頼は厚い。
この部隊に配備されて1年になるが、1等兵はこの軍曹に一番好感を持っている。
色々と無茶なことばかり口走る軍曹だが、その反面、部下や上司の信頼は厚い。
「今日はストーンゴーレムを30体、貨車に移動させる事になっとる。気を引き締めていけよ。」
「ゴーレムは重たいですからねえ。それにしても、いきなり30体とは。何かあったんですか?」
「あったんだよ。ギルアルグの西にあるヌーメアというとこで、革命派の生き残りと味方が派手に叩き合っているらしい。
そんな中、30分前にゴーレム30体を移送せよと命令が来てな。これからギルアルグ行きの列車に乗せるんだ。」
「へえ~。」
朝っぱらから疲れる仕事だなあ、と1等兵はそう思った。
「ゴーレムは重たいですからねえ。それにしても、いきなり30体とは。何かあったんですか?」
「あったんだよ。ギルアルグの西にあるヌーメアというとこで、革命派の生き残りと味方が派手に叩き合っているらしい。
そんな中、30分前にゴーレム30体を移送せよと命令が来てな。これからギルアルグ行きの列車に乗せるんだ。」
「へえ~。」
朝っぱらから疲れる仕事だなあ、と1等兵はそう思った。
「それはともかく、稼動魔法の付いていないゴーレムは重たいからな。専用の鉄車で運ぶから、
最低でも2時間はかかるな。よーし、今日もバリバリ働くぞ!」
最低でも2時間はかかるな。よーし、今日もバリバリ働くぞ!」
そう言って、軍曹は1等兵の肩を叩く。
作業は、ゴーレムが仰向けに寝るようにして陳列されている区画で、まず引き揚げ機を使って体を上げる。
次にルエスと呼ばれる小さめの竜が引く鉄の荷車に載せて、貨車まで持っていく。
持っていく際は、作業に携わる者全員で押していくが、ゴーレムが保管されている区画から貨車までは
500メートルの距離があり、10分ほどかけて運んでいく。
かなりの重労働であるから、軟弱者にはゴーレムの移送は勤まらない。
作業は、ゴーレムが仰向けに寝るようにして陳列されている区画で、まず引き揚げ機を使って体を上げる。
次にルエスと呼ばれる小さめの竜が引く鉄の荷車に載せて、貨車まで持っていく。
持っていく際は、作業に携わる者全員で押していくが、ゴーレムが保管されている区画から貨車までは
500メートルの距離があり、10分ほどかけて運んでいく。
かなりの重労働であるから、軟弱者にはゴーレムの移送は勤まらない。
「載ったぞ!」
5体目のゴーレムが、鉄車に載せられる。鉄車の車輪が地面に食い込む。誰もが汗みずくとなって働いている。
「さてと、押すぞ!」
「おうっ!」
5体目のゴーレムが、鉄車に載せられる。鉄車の車輪が地面に食い込む。誰もが汗みずくとなって働いている。
「さてと、押すぞ!」
「おうっ!」
13人の屈強な男達が、鉄車も含めて3トン近くある荷を押す。緑の色をした竜。ルエスも渾身の力を込めて荷を運ぶ。
ゆっくりとだが、鉄車はスピードを上げていく。
男達が仕事に精を出している時、災厄は突然やって来た。
ゆっくりとだが、鉄車はスピードを上げていく。
男達が仕事に精を出している時、災厄は突然やって来た。
「空襲警報―!」
遠くから、いきなりその声が上がった。
「へっ?」
1等兵は思わず間の抜けた声を漏らした。
だが、鉄車を押していた先輩達は、誰もが立ち止まり、顔を見合わせた。
昨日、敵の飛空挺が1機だけやって来た時、彼らは慌てて作業を中断して退避したが、
敵は爆弾を落とさなければ、機銃も撃たず、高射砲によって追い払われている。
皆は、その敵飛空挺の逃げっぷりに、
昨日、敵の飛空挺が1機だけやって来た時、彼らは慌てて作業を中断して退避したが、
敵は爆弾を落とさなければ、機銃も撃たず、高射砲によって追い払われている。
皆は、その敵飛空挺の逃げっぷりに、
「白星の悪魔も大した事無いじゃないか」
と言い合っていた。しかし、1等兵は楽観できなかった。
もし爆撃を行うとすれば、まず、事前に目標を偵察する。
その後に、大量の爆撃機を飛ばして、一気に撃滅する。
1等兵は、あの偵察活動が、爆撃が始まる兆候なのでは?と思っていた。
しかし、昨日はその高射砲に追い払われた1機が来ただけで何も無かった。
1等兵は何も無かった事に安堵していたが、敵は日付が変わってからやってきたのだ。
伝令があちこちに走り、声を枯らしながら叫んでいる。
「敵飛空挺部隊接近!敵部隊はマリアナ上空を通過した模様!直ちに退避壕に避難せよ!」
「なんてこった、こんな辺ぴな補給施設を襲いに来るとは。
とりあえず、このゴーレムを貨車のところまで運んで、退避壕に逃げるぞ。」
かかれ!といって、彼らはこれまで以上に力を入れて鉄車を押した。
貨車の側にゴーレムを降ろした時には、北の空から爆音が轟いていた。
もし爆撃を行うとすれば、まず、事前に目標を偵察する。
その後に、大量の爆撃機を飛ばして、一気に撃滅する。
1等兵は、あの偵察活動が、爆撃が始まる兆候なのでは?と思っていた。
しかし、昨日はその高射砲に追い払われた1機が来ただけで何も無かった。
1等兵は何も無かった事に安堵していたが、敵は日付が変わってからやってきたのだ。
伝令があちこちに走り、声を枯らしながら叫んでいる。
「敵飛空挺部隊接近!敵部隊はマリアナ上空を通過した模様!直ちに退避壕に避難せよ!」
「なんてこった、こんな辺ぴな補給施設を襲いに来るとは。
とりあえず、このゴーレムを貨車のところまで運んで、退避壕に逃げるぞ。」
かかれ!といって、彼らはこれまで以上に力を入れて鉄車を押した。
貨車の側にゴーレムを降ろした時には、北の空から爆音が轟いていた。
「急げ!ずらかるぞ!」
軍曹は皆にそう言うと、軍曹と1等兵以外は退避壕に逃げ始めた。後ろで弾薬箱をもった兵が3人ほど、対空陣地に向けて走っていく。
その3人表情は、どれもが青ざめていた。
再び1等兵は、北の空に目を向ける。爆音だけだったはずなのに、今では多数の芥子粒が見えていた。
軍曹は皆にそう言うと、軍曹と1等兵以外は退避壕に逃げ始めた。後ろで弾薬箱をもった兵が3人ほど、対空陣地に向けて走っていく。
その3人表情は、どれもが青ざめていた。
再び1等兵は、北の空に目を向ける。爆音だけだったはずなのに、今では多数の芥子粒が見えていた。
「ルエスを離すのを手伝ってくれ。」
軍曹が言ってきた。1等兵は慌てて軍曹と共にルエスに付けられている牽引ロープを放す作業に取り掛かる。
ルエスは緑色のやや小さな竜である。小さめと言っても、人間より少々大きい。
愛嬌のある顔が特徴だが、その反面力強く、牛よりも頼りになる。
爆音が次第に近くなってきた。手が震えて、なかなかロープを外せない。
ルエスは緑色のやや小さな竜である。小さめと言っても、人間より少々大きい。
愛嬌のある顔が特徴だが、その反面力強く、牛よりも頼りになる。
爆音が次第に近くなってきた。手が震えて、なかなかロープを外せない。
「落ち着け。」
軍曹は穏やかな表情で言ってくる。1等兵は頷きながらも、ロープを外そうとする。
ロープが外れて、2頭のルエスは専用の退避壕に逃げていく。
その時には、高射砲が射撃を開始していた。
ロープが外れて、2頭のルエスは専用の退避壕に逃げていく。
その時には、高射砲が射撃を開始していた。
「俺達も逃げるぞ!」
2人は退避壕に向けて走り出した。退避壕に向けて走る際、彼はちらっと、北の空を見てみた。
既に上空に来ていた敵飛空挺が、猛然と対空陣地に向けて突進し、両翼から光を発した。
ミルクリンスの補給施設を襲ったのは、空母ヨークタウンと軽空母ベローウッドから発艦した75機の攻撃隊である。
既に上空に来ていた敵飛空挺が、猛然と対空陣地に向けて突進し、両翼から光を発した。
ミルクリンスの補給施設を襲ったのは、空母ヨークタウンと軽空母ベローウッドから発艦した75機の攻撃隊である。
「敵補給施設を視認!」
補給施設攻撃隊の指揮官は、ヨークタウンの艦爆隊長であるビリーズ・マルコム少佐である。
「確認した。全機に告ぐ、攻撃方法はBだ。繰り返す、攻撃方法はBだ。全機突撃せよ!」
彼は無線機を置き、目標を双眼鏡で確かめる。
物資集積所は、長方形の形をしており、種類ごとに区画に分けられている。
おおよそで、縦に200メートル、横に400メートルはある。
物資集積所は、長方形の形をしており、種類ごとに区画に分けられている。
おおよそで、縦に200メートル、横に400メートルはある。
「1個師団分の量とか言っていましたが。この量からすると、1個師団どころではないですね。」
「君もそう思うか?」
発艦前のブリーフィングでは、この補給施設には1個師団分の補給物資が備蓄されていると聞いていた。
しかし、よく見てみると、写真で見たものよりどこか多いような感がある。
しかし、よく見てみると、写真で見たものよりどこか多いような感がある。
「1個師団どころか、下手すりゃ2個師団分はあるな。それはどうであれ、
俺達はあの蓄えられた物資に1000ポンドをぶち込む事だけ考えればいい。」
俺達はあの蓄えられた物資に1000ポンドをぶち込む事だけ考えればいい。」
ヘルダイバーは、腹に1000ポンド爆弾を抱えている。アベンジャー隊は500ポンド爆弾を2発ずつ搭載している。
ヘルキャットは今回、爆弾は搭載していない。
75機の編隊が補給施設の上空に来るまで、そう時間はかからなかった。
高射砲弾が周りで炸裂する。8個の黒い煙が、攻撃隊の300メートル下で炸裂する。
その8秒後に、今度は上方1000メートルで炸裂した。
ヘルキャットは今回、爆弾は搭載していない。
75機の編隊が補給施設の上空に来るまで、そう時間はかからなかった。
高射砲弾が周りで炸裂する。8個の黒い煙が、攻撃隊の300メートル下で炸裂する。
その8秒後に、今度は上方1000メートルで炸裂した。
「やっこさん、慌ててやがるな。」
その時、ヘルキャット隊の隊長機が翼をバンクさせた。
その直後には、ヘルキャット隊が1機、また1機と、左右に別れて行く。
彼は再びマイクを取って、攻撃隊に指示を与えた。
「第1中隊はA区画、第2中隊はB区画、残りはC区画を狙え。アベンジャー隊は西のB区画側から爆撃を開始せよ。」
その直後には、ヘルキャット隊が1機、また1機と、左右に別れて行く。
彼は再びマイクを取って、攻撃隊に指示を与えた。
「第1中隊はA区画、第2中隊はB区画、残りはC区画を狙え。アベンジャー隊は西のB区画側から爆撃を開始せよ。」
後続のアベンジャー隊が指示に従い、ヘルダイバー隊から離れていく。
ヨークタウン、ベローウッドのアベンジャー隊28機は、しばらく左旋回を行った後、補給施設に機首を向けた。
ヘルダイバー隊と交差する形である。
低空に舞い降りたヘルキャットが、周囲に散らばる対空陣地に向けて猛進する。
対空陣地に取り付けられている11.2ミリ機銃がヘルキャットに放たれる。
ヘルキャットは機を横滑りしてこれを交わし、距離700で12.7ミリ機銃を撃ちまくった。
6本の線が機銃座に近づくと、操作していた敵兵が慌てて逃げ出す。
ヨークタウン、ベローウッドのアベンジャー隊28機は、しばらく左旋回を行った後、補給施設に機首を向けた。
ヘルダイバー隊と交差する形である。
低空に舞い降りたヘルキャットが、周囲に散らばる対空陣地に向けて猛進する。
対空陣地に取り付けられている11.2ミリ機銃がヘルキャットに放たれる。
ヘルキャットは機を横滑りしてこれを交わし、距離700で12.7ミリ機銃を撃ちまくった。
6本の線が機銃座に近づくと、操作していた敵兵が慌てて逃げ出す。
ヘルキャットの機銃弾は、射手のいなくなった11.2ミリ機銃を容赦なく叩き壊し、周りに積まれていた土嚢を打ち砕き、周囲に飛び散らせた。
2番機は逃げ惑う敵兵に対して機銃を撃ったが、これは外れてしまった。
高射砲に襲い掛かったヘルキャットも、4機1組で順番に機銃弾を叩き込む。
とある高射砲座は、ヘルキャットの機銃弾が予備の砲弾に突き刺さり、操作要員もろとも吹き飛んでしまった。
また、ある高射砲座では、無数に受けた機銃弾で砲の操作機構が滅茶苦茶に叩き壊された。
一度逃げた操作要員が戻った時には、高射砲はただのどでかい鉄屑に成り代わっていた。
継戦側の兵が、怒りの形相でヘルキャットに機銃弾を撃ち込む。そして、何発かは翼や胴体に命中した。
落としたと思って笑おうとしたが、機銃弾を受けたヘルキャットは、なんともなかったように突き進み、
遠慮介錯無く12.7ミリ機銃をぶち込みんで11.2ミリ機銃と射手をただの残骸へと変えてしまった。
まだヘルキャットに機銃弾を撃ち込める者はましである。
中には、ヘルキャットの猛スピードに付いていけず、弾を空振りさせる者がいる。
スピードに付いていけないものが、大多数に上った。
そして、ヘルキャットが猛スピードで通り抜けていった直後、上空から甲高い音が響いてきた。
地上の継戦派の兵達は、誰もが上を振り向く。
高度3000メートルの上空から、ヘルダイバーが次々と、翼を翻し、急角度で突っ込んできた。
2番機は逃げ惑う敵兵に対して機銃を撃ったが、これは外れてしまった。
高射砲に襲い掛かったヘルキャットも、4機1組で順番に機銃弾を叩き込む。
とある高射砲座は、ヘルキャットの機銃弾が予備の砲弾に突き刺さり、操作要員もろとも吹き飛んでしまった。
また、ある高射砲座では、無数に受けた機銃弾で砲の操作機構が滅茶苦茶に叩き壊された。
一度逃げた操作要員が戻った時には、高射砲はただのどでかい鉄屑に成り代わっていた。
継戦側の兵が、怒りの形相でヘルキャットに機銃弾を撃ち込む。そして、何発かは翼や胴体に命中した。
落としたと思って笑おうとしたが、機銃弾を受けたヘルキャットは、なんともなかったように突き進み、
遠慮介錯無く12.7ミリ機銃をぶち込みんで11.2ミリ機銃と射手をただの残骸へと変えてしまった。
まだヘルキャットに機銃弾を撃ち込める者はましである。
中には、ヘルキャットの猛スピードに付いていけず、弾を空振りさせる者がいる。
スピードに付いていけないものが、大多数に上った。
そして、ヘルキャットが猛スピードで通り抜けていった直後、上空から甲高い音が響いてきた。
地上の継戦派の兵達は、誰もが上を振り向く。
高度3000メートルの上空から、ヘルダイバーが次々と、翼を翻し、急角度で突っ込んできた。
「2500・・・・2300・・・・2100・・・・1900」
後部座席の部下が、高度計を読み上げる。
マルコム少佐が直率する第1中隊は、表面が黒く塗られている区画を狙った。
1箇所と言っても、範囲は広いから、4機ずつが個別に投弾箇所を決めている。
マルコム少佐は、黒い区画の左上を狙った。
ヘルダイバーの両翼についているダイブブレーキが、空気を切り裂き、艦爆特有の甲高い騒音を振り撒いている。
高度が1200に達した時、地上から機銃弾が放たれた。だが、向かってくる火箭は少ない。
そのささやかともいえる弾幕をあっさり突き抜けて、ヘルダイバーは尚も急降下を続行する。
マルコム少佐が直率する第1中隊は、表面が黒く塗られている区画を狙った。
1箇所と言っても、範囲は広いから、4機ずつが個別に投弾箇所を決めている。
マルコム少佐は、黒い区画の左上を狙った。
ヘルダイバーの両翼についているダイブブレーキが、空気を切り裂き、艦爆特有の甲高い騒音を振り撒いている。
高度が1200に達した時、地上から機銃弾が放たれた。だが、向かってくる火箭は少ない。
そのささやかともいえる弾幕をあっさり突き抜けて、ヘルダイバーは尚も急降下を続行する。
「700!」
「投下!!」
その声と同時に、マルコム少佐は1000ポンド爆弾を投下した。
思い1000ポンド爆弾は、懸架装置によってプロペラの回転圏外に誘導され、放り投げられる。
一瞬、先頭部が陽光に当てられ、黒光りした。
爆弾は、くるくると回転しながら、黒い表面に向けてまっしぐらに落ちていった。
爆弾は黒い表面に突き刺さり、尾部まで深くめり込んだ。次の瞬間、爆弾は内部のエネルギーを解放した。
赤黒い爆炎が沸き立ち、何かの破片が巻き上げられた。
「投下!!」
その声と同時に、マルコム少佐は1000ポンド爆弾を投下した。
思い1000ポンド爆弾は、懸架装置によってプロペラの回転圏外に誘導され、放り投げられる。
一瞬、先頭部が陽光に当てられ、黒光りした。
爆弾は、くるくると回転しながら、黒い表面に向けてまっしぐらに落ちていった。
爆弾は黒い表面に突き刺さり、尾部まで深くめり込んだ。次の瞬間、爆弾は内部のエネルギーを解放した。
赤黒い爆炎が沸き立ち、何かの破片が巻き上げられた。
「爆弾命中!」
マルコム少佐が狙った黒い表面の木箱。それは、黒布に覆われた、長剣が詰められた木箱であった。
1000ポンド爆弾が爆裂するや、1箱10本の剣が箱ごと叩き割られる。
鍛冶屋が精魂込めて作り上げた長剣が、異世界の爆弾によって、100本単位で叩き割られ、捻じ曲げられた。
この区画には、1万1千本の長剣と、今は使用されなくなった騎士用の防具などが貯蔵されており、防具は鉄部分を溶かして、再利用される予定だった。
しかし、ヨークタウン隊のヘルダイバーは、その防具が送るはずであった、第2の変わった生を打ち砕いてしまった。
ヨークタウンの第1中隊12機が放った12発の1000ポンド爆弾は、黒い区画に満遍なく着弾し、叩き折られた剣や鎧の破片を上空に吹き上げた。
災厄は剣、防具の貯蔵場所だけではない。
退避壕の左300メートルには、表面が白い区画がある。そこは、ゴーレムの貯蔵場所であり、現在200体が保管されている。
その白い区画に、3機のヘルダイバーが突っ込んできた。
1000ポンド爆弾が爆裂するや、1箱10本の剣が箱ごと叩き割られる。
鍛冶屋が精魂込めて作り上げた長剣が、異世界の爆弾によって、100本単位で叩き割られ、捻じ曲げられた。
この区画には、1万1千本の長剣と、今は使用されなくなった騎士用の防具などが貯蔵されており、防具は鉄部分を溶かして、再利用される予定だった。
しかし、ヨークタウン隊のヘルダイバーは、その防具が送るはずであった、第2の変わった生を打ち砕いてしまった。
ヨークタウンの第1中隊12機が放った12発の1000ポンド爆弾は、黒い区画に満遍なく着弾し、叩き折られた剣や鎧の破片を上空に吹き上げた。
災厄は剣、防具の貯蔵場所だけではない。
退避壕の左300メートルには、表面が白い区画がある。そこは、ゴーレムの貯蔵場所であり、現在200体が保管されている。
その白い区画に、3機のヘルダイバーが突っ込んできた。
「畜生、対空陣地は何をやっているんだ!?」
退避壕の小さな窓から、若い1等兵が悔しそうに叫んでいる。3機の敵が指向しているのは、今さっきまで、自分達が貨車に運んでいたストーンゴーレムの保管場所だ。
「馬鹿野郎!窓から離れろ!破片に吹っ飛ばされるぞ!」
その時、別方向から爆発音が響いた。軍曹が退避壕の正面を見据える。
退避壕の正面には、剣や防具が保管してあった区画が見える。
その区画が、爆弾の直撃を受けて派手に吹き飛んだ。
その区画が、爆弾の直撃を受けて派手に吹き飛んだ。
「あっ、腹から何か出したぞ!」
甲高い音に、何かが猛り狂うような音が加わる。
1等兵は知らなかったが、それはヘルダイバーが上げるエンジン音だった。
ヒューッという心臓を締め付けるような音が聞こえてきた。
1等兵は知らなかったが、それはヘルダイバーが上げるエンジン音だった。
ヒューッという心臓を締め付けるような音が聞こえてきた。
「伏せろ!落ちてくるぞ!」
軍曹が退避壕の中へ叫んだ。咄嗟に1等兵も頭を抑えてしゃがんだ。その直後、
ズダアーン!という雷が耳元で鳴り響いたような轟音が轟き、地面が大地震のように揺れた。
轟音は3回鳴った。
爆弾が炸裂するたびに、皆が悲鳴を上げて、すぐそこまで迫っている死の恐怖に戦慄する。
1000ポンド爆弾は、仰向けに寝かされているストーンゴーレムに命中すると、すぐに爆発した。
爆弾の直撃を受けたゴーレムは、粉々に砕け散った。その周囲のゴーレムも、胴と言わず、頭部といわず、深刻なダメージを受けた。
3発目の着弾では、爆風がすでに胴体を粉砕されたゴーレムを外側に吹き飛ばし、運搬用に飼われていたルエスの飼育小屋を押し潰し、
孵化したばかりの卵14個も巻き添えを食らって全滅した。
ルエス自体は、空襲を予期した別の兵士によって逃がされており、小屋はもぬけの殻であった。
だが、ここしばらくは、ルエスが気持ちよく眠れる場所は無くなってしまった。
ズダアーン!という雷が耳元で鳴り響いたような轟音が轟き、地面が大地震のように揺れた。
轟音は3回鳴った。
爆弾が炸裂するたびに、皆が悲鳴を上げて、すぐそこまで迫っている死の恐怖に戦慄する。
1000ポンド爆弾は、仰向けに寝かされているストーンゴーレムに命中すると、すぐに爆発した。
爆弾の直撃を受けたゴーレムは、粉々に砕け散った。その周囲のゴーレムも、胴と言わず、頭部といわず、深刻なダメージを受けた。
3発目の着弾では、爆風がすでに胴体を粉砕されたゴーレムを外側に吹き飛ばし、運搬用に飼われていたルエスの飼育小屋を押し潰し、
孵化したばかりの卵14個も巻き添えを食らって全滅した。
ルエス自体は、空襲を予期した別の兵士によって逃がされており、小屋はもぬけの殻であった。
だが、ここしばらくは、ルエスが気持ちよく眠れる場所は無くなってしまった。
甲高い音はいつの間にか鳴り止んでいたが、爆音はまだ続いている。
ヘルダイバーが投弾し終えると、今度は28機のアベンジャーが、東側から進入してきた。
てっきり空襲が終わったと思い、外に出てきた兵達は、再び退避壕の中に逃げていく。
アベンジャーは悠々と、補給施設の真上に到着した。そして、胴体から2発ずつの500ポンド爆弾を投下した。
再び、爆弾の炸裂音があたりに木霊した。1発は、D区画と呼ばれた緑色の表面に落下した。
その次の瞬間、火山噴火のような大火柱が立ち上がった。
ヘルダイバーが投弾し終えると、今度は28機のアベンジャーが、東側から進入してきた。
てっきり空襲が終わったと思い、外に出てきた兵達は、再び退避壕の中に逃げていく。
アベンジャーは悠々と、補給施設の真上に到着した。そして、胴体から2発ずつの500ポンド爆弾を投下した。
再び、爆弾の炸裂音があたりに木霊した。1発は、D区画と呼ばれた緑色の表面に落下した。
その次の瞬間、火山噴火のような大火柱が立ち上がった。
これには、アベンジャー隊のパイロットも仰天した。
このD区画には、各種砲弾、銃器の弾薬や装薬、燃料、油脂類が貯蔵されていた。
ヘルダイバー隊の投弾を免れたこの区画も、アベンジャー隊の到着によってついに命運が尽きた。
爆弾は装薬類が貯蔵されている場所に命中した。500ポンド爆弾の爆発は、次の爆発を誘発する。
装薬の次は銃器の弾薬、そしてその破片が燃料、油脂類の貯蔵場所に降り注ぎ、新たなる誘爆を招いた。
とある砲弾は、誘爆によって吹き飛ばされた後、黒煙の中のゴーレム貯蔵施設飛び込んで暴発。さらなる被害をゴーレムに与えた。
軍用列車の車長であるサピワイ・デバンズス大尉は、急いで列車を発進させようとした時に、アベンジャー隊の爆撃が始まった。
線路は補給施設のすぐ南にあり、線路は先ほど爆弾で破壊された黒い区画より30メートルしか離れていない。
残骸が散乱しているが、彼の列車は、3本ある線路のうち、真ん中の2本目であり、残骸もさほど散乱していない。
列車ゆっくりと動き出した。
このD区画には、各種砲弾、銃器の弾薬や装薬、燃料、油脂類が貯蔵されていた。
ヘルダイバー隊の投弾を免れたこの区画も、アベンジャー隊の到着によってついに命運が尽きた。
爆弾は装薬類が貯蔵されている場所に命中した。500ポンド爆弾の爆発は、次の爆発を誘発する。
装薬の次は銃器の弾薬、そしてその破片が燃料、油脂類の貯蔵場所に降り注ぎ、新たなる誘爆を招いた。
とある砲弾は、誘爆によって吹き飛ばされた後、黒煙の中のゴーレム貯蔵施設飛び込んで暴発。さらなる被害をゴーレムに与えた。
軍用列車の車長であるサピワイ・デバンズス大尉は、急いで列車を発進させようとした時に、アベンジャー隊の爆撃が始まった。
線路は補給施設のすぐ南にあり、線路は先ほど爆弾で破壊された黒い区画より30メートルしか離れていない。
残骸が散乱しているが、彼の列車は、3本ある線路のうち、真ん中の2本目であり、残骸もさほど散乱していない。
列車ゆっくりと動き出した。
「ひとまず、南に逃げるとしようか。」
デバンズス大尉がこの後の避難場所を考えていた時に、急に不思議な音が聞こえてきた。
基地司令のクェーク中佐は、勝手に動き出した列車を止めるように言いつけた。
基地司令のクェーク中佐は、勝手に動き出した列車を止めるように言いつけた。
「あれではいい的だ!列車の避難は後にさせて、乗員に退避壕に戻れと伝えろ!」
その刹那、アベンジャー隊が爆弾を投下した。
高度3000でばら撒かれた56発の爆弾は広範囲に着弾した。
ゆっくりと、線路を走りぬけようとする列車の目の前に、小さな黒い陰が落下してきた、
と思った直後に、ダーン!という轟音が鳴り響き、列車の先頭部分が吹き上がった。
3メートルの高さまで飛び上がった先頭部分は、燃えながら線路に着地、もとい、落下した。
先頭部分は左側の線路にのし上げ、後続部分もそれにつられて脱線する。
高度3000でばら撒かれた56発の爆弾は広範囲に着弾した。
ゆっくりと、線路を走りぬけようとする列車の目の前に、小さな黒い陰が落下してきた、
と思った直後に、ダーン!という轟音が鳴り響き、列車の先頭部分が吹き上がった。
3メートルの高さまで飛び上がった先頭部分は、燃えながら線路に着地、もとい、落下した。
先頭部分は左側の線路にのし上げ、後続部分もそれにつられて脱線する。
4両目には油脂、弾薬が既に満載されていたが、急な衝撃で弾薬が爆発、油脂にも引火して火達磨になってしまった。
爆弾を投下し終えた米軍機は、それだけでは飽き足らず、今度は攻撃機も低空に降下し、残っている物資に機銃弾を浴びせまくった。
爆弾を投下し終えた米軍機は、それだけでは飽き足らず、今度は攻撃機も低空に降下し、残っている物資に機銃弾を浴びせまくった。
午前7時34分
今や、物資集積所は黒煙に包まれていた。どれぐらいの被害を与えたのかは正確には分からない。
だが、少なくとも4割以上の物資は使い物にならなくした。マルコム少佐はそう確信した。
今や、物資集積所は黒煙に包まれていた。どれぐらいの被害を与えたのかは正確には分からない。
だが、少なくとも4割以上の物資は使い物にならなくした。マルコム少佐はそう確信した。
「こちら指揮官機。敵物資集積所の攻撃は成功せり。我がほうの損害は被弾9機のみ。オーヴァー。」
そう言って、彼は母艦への報告を終えた。攻撃隊は全機が無事であり、被撃墜機は1機もいない。
「隊長。南側からも黒煙が上がっています。」
マルコム少佐は確認できなかったが、この時、ホーネットとバターンの攻撃隊も、継戦派の駐屯地に対して、やりたい放題の攻撃を加えていた。