10月6日 午前9時50分 ギルアルグ北西80マイル沖
「撃ち方やめ。」
エセックスの艦長である、オフスティー大佐の声が掛かると、それまで撃ちまくっていた対空火器が、一斉に静まった。
そのエセックスの艦橋より少しはなれた右舷側から黒煙が噴き出している。
飛行甲板には被害は及んでいないようだが、格納甲板では火災が発生しているようだ。
艦橋のスリットガラスから、右舷側をみつめていたハリル少将がおもむろに口を開いた。
そのエセックスの艦橋より少しはなれた右舷側から黒煙が噴き出している。
飛行甲板には被害は及んでいないようだが、格納甲板では火災が発生しているようだ。
艦橋のスリットガラスから、右舷側をみつめていたハリル少将がおもむろに口を開いた。
「ワイバーンロードも、なかなかやるな。」
オフスティー大佐もええ、と言って答えた。
「これで、正規空母は全て傷物にされてしまいましたね。」
「エセックスは、最後まで無傷だろうかと思っていたが。思い通りには行かないものだな。」
「エセックスは、最後まで無傷だろうかと思っていたが。思い通りには行かないものだな。」
そう言って、彼は長官席に腰を下ろした。
「どうも後味が悪いな。せめて、襲って来る敵が飛空挺なら、あんな光景も見ずに済んだのだが。」
「しかし、敵の指揮官も考えましたね。こっちの攻撃隊が発進してから襲ってくるとは。」
「しかし、敵の指揮官も考えましたね。こっちの攻撃隊が発進してから襲ってくるとは。」
オフスティー大佐は人差し指を上げてから言う。
「敵も分かってきたのだろう。攻撃隊には少なからぬ戦闘機が付いている。
その分、艦隊を守る戦闘機は少なくなる事をな。」
その分、艦隊を守る戦闘機は少なくなる事をな。」
そう言って、ハリル少将はため息を吐いた。
「いずれにしろ、爆弾1発をぶち込まれたのは気に入らないが、
エセックスの母艦機能に支障をきたさないのなら大丈夫だ。」
「サンディエゴの損傷も軽微のようですからね。」
「結果として、敵はこっち側のF6F2機を落として、エセックスとサンディエゴを小破させた
のに対して、敵のワイバーン部隊は全滅したからな。こっち側の勝利と言っていい」
エセックスの母艦機能に支障をきたさないのなら大丈夫だ。」
「サンディエゴの損傷も軽微のようですからね。」
「結果として、敵はこっち側のF6F2機を落として、エセックスとサンディエゴを小破させた
のに対して、敵のワイバーン部隊は全滅したからな。こっち側の勝利と言っていい」
ハリルは満足するようにそう呟く。
しかし、内心とは裏腹に、彼の表情はどことなく哀れみが混じっていた。
しかし、内心とは裏腹に、彼の表情はどことなく哀れみが混じっていた。
ワイバーンロード部隊、継戦側の最後の航空打撃力である第68空中騎士旅団のワイバーンロード38騎が、
第58任務部隊第4任務群に迫ったのは午前9時の事である。
第68空中騎士旅団のパルンク司令官は、夜明け後にワイバーンを発進させようとはしなかった。
位置は既に分かっている。
だが、いつまで待っても、出撃命令が出ない事に、竜騎士達は苛立ちを募らせた。
クランベリン少佐などは、部下3人を引き連れて、すぐに出撃させてくださいと詰め寄ってきたが、
パルンク中将は彼の進言を一蹴した。
第58任務部隊第4任務群に迫ったのは午前9時の事である。
第68空中騎士旅団のパルンク司令官は、夜明け後にワイバーンを発進させようとはしなかった。
位置は既に分かっている。
だが、いつまで待っても、出撃命令が出ない事に、竜騎士達は苛立ちを募らせた。
クランベリン少佐などは、部下3人を引き連れて、すぐに出撃させてくださいと詰め寄ってきたが、
パルンク中将は彼の進言を一蹴した。
「今行っても、確かに敵艦隊に攻撃を仕掛けられると思うだろう。
だが、貴様らは気付いていない。今、わが旅団のワイバーンロードは何騎だ?たったの38騎だ。
これで正々堂々と、200機の飛空挺もつ敵機動部隊に立ち向かえると思うのかね?」
だが、貴様らは気付いていない。今、わが旅団のワイバーンロードは何騎だ?たったの38騎だ。
これで正々堂々と、200機の飛空挺もつ敵機動部隊に立ち向かえると思うのかね?」
パルンク中将には考えがあった。
偵察機を繰り出してきたからには、必ず敵は攻撃隊を差し向け来るはず。
攻撃隊には必ず、戦闘飛空挺が護衛についている。
攻撃隊を発進させる前に襲い掛かったら、敵機動部隊は攻撃隊の発進を中止して、
護衛用の戦闘飛空挺までも引っ張り出して、全力でわずか38騎のワイバーンロードを潰しに来るだろう。
偵察機を繰り出してきたからには、必ず敵は攻撃隊を差し向け来るはず。
攻撃隊には必ず、戦闘飛空挺が護衛についている。
攻撃隊を発進させる前に襲い掛かったら、敵機動部隊は攻撃隊の発進を中止して、
護衛用の戦闘飛空挺までも引っ張り出して、全力でわずか38騎のワイバーンロードを潰しに来るだろう。
そうなれば、逃げる事も出来ずにすべて叩き落されてしまう。
そうなるよりかは、攻撃隊を発進させ、敵の護衛の数を減らしてから、憎きアメリカ機動部隊とぶつかるしかない。
そうなるよりかは、攻撃隊を発進させ、敵の護衛の数を減らしてから、憎きアメリカ機動部隊とぶつかるしかない。
「艦隊の護衛機も残っているだろうが、それでも数は少ないはずだ。
そうであれば、必ず敵の対空砲火を突破して、敵空母を傷つけることが出来る。
それに、君達も帰る事が出来る。」
そうであれば、必ず敵の対空砲火を突破して、敵空母を傷つけることが出来る。
それに、君達も帰る事が出来る。」
パルンク司令官はそう言って、クランベリンら竜騎士達を宥めた。
そして午前7時50分、ギルアルグから、敵戦爆連合100機、ギルアルグ上空を通過中との魔法通信が入った。
パルンク中将はすぐに全騎出撃を命令した。
ワイバーンロード部隊は、敵攻撃隊との接触を避ける為、一旦北東に回り込むようにしてから海上に出て、
海竜の情報通りにギルアルグ北西沖130キロ地点を目指した。
基地を出発してから1時間以上が経った。
高度は1000メートルほどで飛行しており、雲はやや多かったものの、海上は見晴らしがよかった。
もうすぐ、敵機動部隊が見えるだろうと、竜騎士達は誰もが思った。
その時、雲の向こうから飛空挺独特の、そして友軍のものより力強いエンジン音が聞こえてきた。
誰もが殺気を感じた瞬間、断雲を突き破って12機のF6Fが急降下で迫ってきた。
そして午前7時50分、ギルアルグから、敵戦爆連合100機、ギルアルグ上空を通過中との魔法通信が入った。
パルンク中将はすぐに全騎出撃を命令した。
ワイバーンロード部隊は、敵攻撃隊との接触を避ける為、一旦北東に回り込むようにしてから海上に出て、
海竜の情報通りにギルアルグ北西沖130キロ地点を目指した。
基地を出発してから1時間以上が経った。
高度は1000メートルほどで飛行しており、雲はやや多かったものの、海上は見晴らしがよかった。
もうすぐ、敵機動部隊が見えるだろうと、竜騎士達は誰もが思った。
その時、雲の向こうから飛空挺独特の、そして友軍のものより力強いエンジン音が聞こえてきた。
誰もが殺気を感じた瞬間、断雲を突き破って12機のF6Fが急降下で迫ってきた。
「よけろ!」
攻撃隊指揮官に任じられていたクランベリン少佐は、咄嗟に命令を下し、
編隊飛行を行っていたワイバーンロードが、2~3騎ずつに散らばった。
600キロのスピードで急降下してきたF6Fは、2機ずつに別れてからそれぞれが決めた目標に向かった。
ワイバーンのうち、5騎が爆弾を捨ててF6Fに挑んできた。
その時、別の方角からも10機以上のF6Fが向かってきた。
ハリル部隊は、艦隊より南南東70マイル付近で向かって来るワイバーンをレーダーで発見した。
ハリル少将は、稼動可能なF6Fを全て上空に上げる事を決意した。
編隊飛行を行っていたワイバーンロードが、2~3騎ずつに散らばった。
600キロのスピードで急降下してきたF6Fは、2機ずつに別れてからそれぞれが決めた目標に向かった。
ワイバーンのうち、5騎が爆弾を捨ててF6Fに挑んできた。
その時、別の方角からも10機以上のF6Fが向かってきた。
ハリル部隊は、艦隊より南南東70マイル付近で向かって来るワイバーンをレーダーで発見した。
ハリル少将は、稼動可能なF6Fを全て上空に上げる事を決意した。
エセックスから24機、カウペンス、ラングレーから12機のヘルキャットが出撃した。
合計で36機のF6Fにたかられたワイバーンは、意外に健闘した。
ワイバーンは12騎が爆弾を捨ててF6Fに立ち向かった。
特にヴァルス大尉の率いた4機のワイバーンロードは、巧みにF6Fの射弾をかわし、隙あらばブレスを吐き、光弾を浴びせた。
部隊全体で1機のF6Fを叩き落し、5機に傷を負わせた。
しかし、総合性能では大きく水を開けられているヘルキャットには、ワイバーンの健闘も長続きはしない。
次第にヘルキャットはワイバーンロードを食い始めた。
ワイバーン部隊も優秀であったが、ヘルキャットもこれまでの戦いで鍛えられた精鋭揃いである。
12騎のワイバーンは全機が撃ち落され、挙句の果てには機動部隊に向かったワイバーンまでも襲われてしまった。
残りがアメリカ機動部隊の輪形陣に取り付いた頃には、既に16機のワイバーンしかいなかった。
その16騎にも、VT信管つきの高角砲弾、40ミリ、20ミリ機銃弾が遠慮介錯なく注ぎ込まれた。
軽巡洋艦サンディエゴの40ミリ機銃手であったトニー・コンプス兵曹は、こう語っている。
合計で36機のF6Fにたかられたワイバーンは、意外に健闘した。
ワイバーンは12騎が爆弾を捨ててF6Fに立ち向かった。
特にヴァルス大尉の率いた4機のワイバーンロードは、巧みにF6Fの射弾をかわし、隙あらばブレスを吐き、光弾を浴びせた。
部隊全体で1機のF6Fを叩き落し、5機に傷を負わせた。
しかし、総合性能では大きく水を開けられているヘルキャットには、ワイバーンの健闘も長続きはしない。
次第にヘルキャットはワイバーンロードを食い始めた。
ワイバーン部隊も優秀であったが、ヘルキャットもこれまでの戦いで鍛えられた精鋭揃いである。
12騎のワイバーンは全機が撃ち落され、挙句の果てには機動部隊に向かったワイバーンまでも襲われてしまった。
残りがアメリカ機動部隊の輪形陣に取り付いた頃には、既に16機のワイバーンしかいなかった。
その16騎にも、VT信管つきの高角砲弾、40ミリ、20ミリ機銃弾が遠慮介錯なく注ぎ込まれた。
軽巡洋艦サンディエゴの40ミリ機銃手であったトニー・コンプス兵曹は、こう語っている。
「前の夜は、ほとんど真っ暗だったから、敵さんがどのようにして落ちていくかは分からなかった。
でも、この日は夜明けで、とても明るかった。俺としては、ワイバーンには前日と同じように夜に来てもらいたかった。
ここで、みんな同じ質問をするんだ。なぜかって?答えは簡単だよ。あんた、生き物が内臓や血を撒き散らして、
吹っ飛ぶとこを見た事があるか?はっきり言って、気分が悪くなる。あの時の対空戦闘ほど、居心地の悪い戦闘はなかった。
敵はナマモノのドラゴンとそれに跨る竜騎士だ。それが、爆弾を持ってやってくる。こっちは敵が狙っている空母を
守らないといけないから、それを落とさなきゃならん。艦隊の全艦が高角砲や機銃を撃ちまくったよ。
で、その次の光景が、あっという間に肉片になって飛び散るドラゴンと竜騎士だ。ばたばたと落ちて行ったよ。
俺は落ちると言ってるけど、正確には砕け散ったと言った方がいいな。形を留めて墜落するのも何騎かあったけど、
ほとんどはパァーンと、弾け飛んだよ。でも、それにめげずに突っ込んでくる敵には、さすがに恐怖を通り越して
尊敬すら覚えたね。あの16騎のワイバーンのうち、1騎ワイバーンは、爆弾を俺の乗っていたサンディエゴ
に爆弾をぶち込んできた。その後に犯人はぶち落とされたけど、あれだけの損害で、サンディエゴとエセックスに
引導を渡したのは、大したもんだよ。」
でも、この日は夜明けで、とても明るかった。俺としては、ワイバーンには前日と同じように夜に来てもらいたかった。
ここで、みんな同じ質問をするんだ。なぜかって?答えは簡単だよ。あんた、生き物が内臓や血を撒き散らして、
吹っ飛ぶとこを見た事があるか?はっきり言って、気分が悪くなる。あの時の対空戦闘ほど、居心地の悪い戦闘はなかった。
敵はナマモノのドラゴンとそれに跨る竜騎士だ。それが、爆弾を持ってやってくる。こっちは敵が狙っている空母を
守らないといけないから、それを落とさなきゃならん。艦隊の全艦が高角砲や機銃を撃ちまくったよ。
で、その次の光景が、あっという間に肉片になって飛び散るドラゴンと竜騎士だ。ばたばたと落ちて行ったよ。
俺は落ちると言ってるけど、正確には砕け散ったと言った方がいいな。形を留めて墜落するのも何騎かあったけど、
ほとんどはパァーンと、弾け飛んだよ。でも、それにめげずに突っ込んでくる敵には、さすがに恐怖を通り越して
尊敬すら覚えたね。あの16騎のワイバーンのうち、1騎ワイバーンは、爆弾を俺の乗っていたサンディエゴ
に爆弾をぶち込んできた。その後に犯人はぶち落とされたけど、あれだけの損害で、サンディエゴとエセックスに
引導を渡したのは、大したもんだよ。」
次々と撃ち落されたワイバーンロードだが、それでも、1騎は軽巡洋艦のサンディエゴの舷側に爆弾を叩きつけ、
最後の1騎がエセックスの艦橋やや後ろよりの舷側に爆弾を命中させた。
最後の1騎がエセックスの艦橋やや後ろよりの舷側に爆弾を命中させた。
米側は知らなかったが、これはクランベリン少佐のワイバーンが放った爆弾であった。
クランベリン騎は、エセックスの飛行甲板を飛びぬけたところで右の翼を機銃弾でもがれ、
左舷側に墜落して血交じりの水柱を上げた。
この時の様子は、記録映像でしっかりと取られていた。
サンディエゴに当たった爆弾は、右舷側の救命ボートと魚雷発射管の間に命中し、ボートと
空の発射管を吹き飛ばした。この被弾で3名が戦死、28名が重軽傷を負った。
エセックスでは、舷側に命中した爆弾が壁を突き破って格納甲板で爆発した。
この時は、被弾対策のために舷側の開放部は全てシャッターが開かれていた。
このため、爆弾のエネルギーは大部分が外に吹き散らされた。
被害は格納甲板にあった工具箱と、ヘルダイバー2機が破損し、火災が発生したのみで、
人員の損害は負傷者5名に抑えられた。
これが、第68空中騎士旅団があげた全戦果であった。
クランベリン騎は、エセックスの飛行甲板を飛びぬけたところで右の翼を機銃弾でもがれ、
左舷側に墜落して血交じりの水柱を上げた。
この時の様子は、記録映像でしっかりと取られていた。
サンディエゴに当たった爆弾は、右舷側の救命ボートと魚雷発射管の間に命中し、ボートと
空の発射管を吹き飛ばした。この被弾で3名が戦死、28名が重軽傷を負った。
エセックスでは、舷側に命中した爆弾が壁を突き破って格納甲板で爆発した。
この時は、被弾対策のために舷側の開放部は全てシャッターが開かれていた。
このため、爆弾のエネルギーは大部分が外に吹き散らされた。
被害は格納甲板にあった工具箱と、ヘルダイバー2機が破損し、火災が発生したのみで、
人員の損害は負傷者5名に抑えられた。
これが、第68空中騎士旅団があげた全戦果であった。
「しばらくは、ステーキが食えなくなるな。」
ハリル少将は、やや浮かない表情でそう呟いた。いや、彼のみならず、第4任務群の大多数の将兵がそう思っている。
「普通の対空戦闘のほうが幾分かマシだな。前の対空戦闘では、飛行機が敵だったからな。」
「私としては、しばらくは食事を取る気になりませんね。」
「同感だ。こんなグロテスクな対空戦闘は初めてだよ。」
「私としては、しばらくは食事を取る気になりませんね。」
「同感だ。こんなグロテスクな対空戦闘は初めてだよ。」
そう言って、ハリルはげんなりとした表情を浮かべた。
「しかし、仕事はまだ終わってはないない。攻撃隊の着艦作業があるぞ。」
ハリル少将は、別の話題に切り替える。しかし、脳裏には、砕け散り、散華するワイバーンと竜騎士の姿がくっきりと残っている。
(嫌なものをみてしまった)
そう思うハリルだが、思いを振り払うように、彼は指示を下した。
(嫌なものをみてしまった)
そう思うハリルだが、思いを振り払うように、彼は指示を下した。
「艦隊を少し陸地に近付けよう。進路を南にとれ。」
全滅を前提にした戦い。
部隊全員が、敵に討ち取られる予定であった戦い。
全てが、それぞれの意地をかけた戦いに、勇躍して望んでいった。
「その結果が、これだというのか。」
ヴァルス大尉は、浮き具に顔を横たえながら、力なく言う。
彼は、ぼんやりと北の方角を見つめる。北の方角から、2つの黒煙が噴き上がっている。
クランベリンの攻撃隊は、敵艦隊に対して被害を与えたようだ。
しかし、その黒煙の量は、悲しくなるほど小さい。
被害は与えたが、それはかすり傷程度なのだろう。小さく見える敵艦隊が、スピード緩めていないのがその証拠だ。
仲間は、ほとんどが敵に立ち向かい、死んでいった。
だが、ここでこうしている自分は、何なのだろうか?なぜ、自分だけが生きているのか?
部隊全員が、敵に討ち取られる予定であった戦い。
全てが、それぞれの意地をかけた戦いに、勇躍して望んでいった。
「その結果が、これだというのか。」
ヴァルス大尉は、浮き具に顔を横たえながら、力なく言う。
彼は、ぼんやりと北の方角を見つめる。北の方角から、2つの黒煙が噴き上がっている。
クランベリンの攻撃隊は、敵艦隊に対して被害を与えたようだ。
しかし、その黒煙の量は、悲しくなるほど小さい。
被害は与えたが、それはかすり傷程度なのだろう。小さく見える敵艦隊が、スピード緩めていないのがその証拠だ。
仲間は、ほとんどが敵に立ち向かい、死んでいった。
だが、ここでこうしている自分は、何なのだろうか?なぜ、自分だけが生きているのか?
「「敵に戦闘員も市民も関係あるか」」
いつだったか、クランベリンと喧嘩した事が思い出される。
あの時は、司令に止められたが、彼は近いうちにクランベリンとまた議論をしようと思っていた。
あの時は、司令に止められたが、彼は近いうちにクランベリンとまた議論をしようと思っていた。
「あいつのやっている事を、気付かせてやる」
そう思っていた。だが、クランベリンは米艦艇の対空砲火の前に命を散らしてしまった。
彼だけではない、馴染みの仲間も、嫌いな奴も・・・・・・
彼だけではない、馴染みの仲間も、嫌いな奴も・・・・・・
「遠くに・・・・・逝ってしまった。」
なぜか、泣きたくなってきた。
本当に、この作戦はやる意味があったのだろうか?もはや、継戦派は不利になりつつある。
本当に、この作戦はやる意味があったのだろうか?もはや、継戦派は不利になりつつある。
降伏すれば、自由はなくなるだろうが、それでも生は保証されるかもしれない。
希望がない訳ではないのだ。
だが、旅団の皆は、戦闘飛空挺と、米機動部隊の猛烈な対空砲火の前に散っていった。
希望がない訳ではないのだ。
だが、旅団の皆は、戦闘飛空挺と、米機動部隊の猛烈な対空砲火の前に散っていった。
「あんな命令さえなければ・・・・・・」
継戦軍司令部から出された命令、それを忠実に実行したばかりに、彼らは無為に戦力を喪失する事もなかった。
「これじゃ、自殺と変わらないじゃないか」
自然と、拳に力が入った。内心、言いようの無い怒りが湧き起こってくる。
唐突に、エンジン音が聞こえてきた。それは、自然に大きくなってきた。
ヴァルスはそれが何なのか分かっている。
唐突に、エンジン音が聞こえてきた。それは、自然に大きくなってきた。
ヴァルスはそれが何なのか分かっている。
「戦闘飛空挺が殺しにやってきたか。」
彼はそう確信していた。それならば、悔いは無い。
敵の動きはとても良かった。
そんな敵部隊に少ないながらも、損害を与えた事にヴァルスは満足している。
さあ、撃て。そう言って、彼は背後を振り向いた。轟音と共に、F6Fが彼の右上空を飛び抜けていった。
F6Fが通過していく際、乗員がこっちに姿勢を向け、右腕を折り、手の先を頭にくっつけていた。
真剣な表情で見つめている事も分かった。
敵の動きはとても良かった。
そんな敵部隊に少ないながらも、損害を与えた事にヴァルスは満足している。
さあ、撃て。そう言って、彼は背後を振り向いた。轟音と共に、F6Fが彼の右上空を飛び抜けていった。
F6Fが通過していく際、乗員がこっちに姿勢を向け、右腕を折り、手の先を頭にくっつけていた。
真剣な表情で見つめている事も分かった。
「・・・・・・」
しばらく、ヴァルスは無言だったが、彼は、その乗員の動作が、なにかしらの敬意を表しているのだと思った。
そのF6Fは、優雅な機動で機動部隊の上空に向かっていった。
そのF6Fは、優雅な機動で機動部隊の上空に向かっていった。
午後8時30分 ガレンスアロ軍港7マイル沖
「こちらエンゼルキャット。予定位置に到着した。」
「エンゼルキャットよりセイバー。了解、これより掃除を開始する。」
「こちらエンゼルキャット。予定位置に到着した。」
「エンゼルキャットよりセイバー。了解、これより掃除を開始する。」
そう言って、戦艦サウスダコタ艦長のブルース・ウッドワード大佐は電話を切った。
サウスダコタの左舷には、ガレンスアロ軍港の倉庫群がある。
サウスダコタの後方3マイルには、軽巡洋艦のマイアミ、ビンセンズが別の港湾施設に照準を向けている。
この日、第4任務群は4次の攻撃隊を発艦させ、敵継戦軍の要地を爆撃したが、
このガレンスアロ軍港のみは艦砲射撃でたたく事にした。
なぜ、艦砲射撃で叩くのか?それは、敵の心理的動揺を狙っての事である。
砲撃部隊は、戦艦サウスダコタと軽巡2隻、駆逐艦3隻で編成されており、A地区を2巡洋艦と駆逐艦が、
B地区をサウスダコタが叩く事になっている。
砲撃部隊はそれぞれコードネームで呼ばれており、サウスダコタはエンゼルキャット、
マイアミはセイバー、ビンセンズはパンサーと呼ばれる事になっている。
弾着観測機が、照明弾を落とした。
ぱあっと青白い光が広がり、陸地と多数の港湾施設が見えてきた。
サウスダコタの左舷には、ガレンスアロ軍港の倉庫群がある。
サウスダコタの後方3マイルには、軽巡洋艦のマイアミ、ビンセンズが別の港湾施設に照準を向けている。
この日、第4任務群は4次の攻撃隊を発艦させ、敵継戦軍の要地を爆撃したが、
このガレンスアロ軍港のみは艦砲射撃でたたく事にした。
なぜ、艦砲射撃で叩くのか?それは、敵の心理的動揺を狙っての事である。
砲撃部隊は、戦艦サウスダコタと軽巡2隻、駆逐艦3隻で編成されており、A地区を2巡洋艦と駆逐艦が、
B地区をサウスダコタが叩く事になっている。
砲撃部隊はそれぞれコードネームで呼ばれており、サウスダコタはエンゼルキャット、
マイアミはセイバー、ビンセンズはパンサーと呼ばれる事になっている。
弾着観測機が、照明弾を落とした。
ぱあっと青白い光が広がり、陸地と多数の港湾施設が見えてきた。
「これより掃除を始める。撃ち方用意。」
ウッドワード大佐は、淡々とした口調で命じた。
サウスダコタの主砲が、ゆっくりと動き、9門の16インチ砲が軍港に向けられる。
軍港には倉庫群のみならず、木造の大型船も何隻か見える。
(これで、継戦派の連中は必要な物資をまた失う事になるな)
ウッドワード艦長は内心でそう確信した。
この軍港から、列車で内陸に向けて、物資が搬送されるのを攻撃機が発見している。
軍港の物資は半数近くが内陸に運ばれたと思われているが、継戦軍は、米艦隊がやってくるまで、すべてを内陸に運ぶ事は出来なかった。
軍港には、まだ50%以上の物資が残されており、あの手この手を尽くして、大事な軍事物資を搬送しようとしている。
しかし、それは終わろうとしていた。
サウスダコタの主砲が、ゆっくりと動き、9門の16インチ砲が軍港に向けられる。
軍港には倉庫群のみならず、木造の大型船も何隻か見える。
(これで、継戦派の連中は必要な物資をまた失う事になるな)
ウッドワード艦長は内心でそう確信した。
この軍港から、列車で内陸に向けて、物資が搬送されるのを攻撃機が発見している。
軍港の物資は半数近くが内陸に運ばれたと思われているが、継戦軍は、米艦隊がやってくるまで、すべてを内陸に運ぶ事は出来なかった。
軍港には、まだ50%以上の物資が残されており、あの手この手を尽くして、大事な軍事物資を搬送しようとしている。
しかし、それは終わろうとしていた。
「照準よし!」
ウッドワード大佐は頷いた。一瞬間を置き、彼は答えた。
「撃ち方始め」
抑揚の無い声音が聞こえた。その次の瞬間、サウスダコタの各砲塔の1番砲が吼えた。
それをきっかけに、最後の大掃除が始まった。
米艦隊の作戦目的は、ガレンスアロ軍港の第1軍港、第2軍港一体に艦砲射撃を加える事である。
第1第2軍港とも、東西に2キロほどの長さがある。そこを、艦砲射撃で倉庫内の物資
を粉砕し、継戦派の継戦能力を削ぐのだ。
サウスダコタの第1射が内陸に着弾する。
軍港から3つの閃光が走り、それが収まると、オレンジ色のゆらめきが起こる。
火災が起こったのだろう。
続いて第2射が放たれ、3発の16インチ砲弾が港に殺到し、倉庫群に落下した。
倉庫群には、銃器、刃物、弾薬、衣類などの物資が入っており、このガレンスアロ軍港だけで
2個師団は満足に補給できるほど、物資は備蓄されていた。
今は半数近くが内陸に運ばれているため、倉庫内は空のものが多数あった。
しかし、それでも50%以上の物資はまだ搬送されていない。
その倉庫群に、16インチ砲弾が落下してきた。
台形上の倉庫の至近に砲弾が落下した。たちまち、爆風が倉庫の側壁を叩き壊し、倉庫であった粗大ゴミに変換する。
別の1発は、搬送途中で、野ざらしにされていた物資の山にぶち当たり、何もかも木っ端微塵に打ち砕いた。
7回交互撃ち方をやった。ガレンスアロ軍港の所々で火災が起きている。
ロウソクのような小さなものもあれば、巨大な篝火のような大火災もある。
それをきっかけに、最後の大掃除が始まった。
米艦隊の作戦目的は、ガレンスアロ軍港の第1軍港、第2軍港一体に艦砲射撃を加える事である。
第1第2軍港とも、東西に2キロほどの長さがある。そこを、艦砲射撃で倉庫内の物資
を粉砕し、継戦派の継戦能力を削ぐのだ。
サウスダコタの第1射が内陸に着弾する。
軍港から3つの閃光が走り、それが収まると、オレンジ色のゆらめきが起こる。
火災が起こったのだろう。
続いて第2射が放たれ、3発の16インチ砲弾が港に殺到し、倉庫群に落下した。
倉庫群には、銃器、刃物、弾薬、衣類などの物資が入っており、このガレンスアロ軍港だけで
2個師団は満足に補給できるほど、物資は備蓄されていた。
今は半数近くが内陸に運ばれているため、倉庫内は空のものが多数あった。
しかし、それでも50%以上の物資はまだ搬送されていない。
その倉庫群に、16インチ砲弾が落下してきた。
台形上の倉庫の至近に砲弾が落下した。たちまち、爆風が倉庫の側壁を叩き壊し、倉庫であった粗大ゴミに変換する。
別の1発は、搬送途中で、野ざらしにされていた物資の山にぶち当たり、何もかも木っ端微塵に打ち砕いた。
7回交互撃ち方をやった。ガレンスアロ軍港の所々で火災が起きている。
ロウソクのような小さなものもあれば、巨大な篝火のような大火災もある。
「セイバー、パンサー、一斉撃ち方始めました。」
後方のA地区を砲撃しているマイアミ、ビンセンズが一斉撃ち方を開始した。
マイアミ、ビンセンズが砲撃しているA地区は、巨大なテントが5つに大きめの倉庫群があり、
岸壁には5隻の輸送船が係留されている。
ここには、ストーンゴーレムと、魔道師が大掛かりな魔法発動に使う魔法石や薬品、それに今では不要となった、
飛空挺の整備器具などが置かれていた。
6インチ砲弾は、交互撃ち方で、ストーンゴーレムが保管されている倉庫に何発か命中し、
床に寝かされていたゴーレムを14体破壊していた。
交互撃ち方を10回やったところで、マイアミ、ビンセンズは一斉撃ち方に切り替えた。
2艦合計、24門の6インチ砲は急斉射で放たれ、6~7秒に1斉射、24発の6インチ砲弾が容赦なく、
テント、倉庫群に突き刺さる。
現世界にいたときの海戦、サイフェルバン沖海戦、マリアナを巡る海戦で遺憾なく発揮されてきた
クリーブランド級軽巡の速射性能は、ここでも威力を発揮した。
縦20メートル、幅50メートルのテントが、次々と迫り来る6インチ砲弾に一方的に叩かれ、
内部の魔法石や薬品が勢いよくはね跳び、燃え上がった。
急な異常反応を来たした薬品が、唐突に爆発したり、閃光を発する。
それがテントを覆う布に燃え移ったり、他のテントを照らし出して、上空の弾着観測機にその姿を晒しだした。
姿を現した新たなテントや、野ざらしの木箱に、別の砲弾がぶち込まれて破片を辺りに撒き散らした。
6インチ砲の他に、5インチ両用砲も射撃に加わってからは、周囲は修羅場と化した。
薬品の異常反応で照らし出された無傷のテントに、別の砲弾が落下し、中の物資を吹き飛ばして役立たずの残骸に変えてしまう。
駆逐艦部隊も、5マイルの距離に接近して砲撃を開始する。
サウススダコタの16インチ砲のド派手さから見れば、軽巡、駆逐艦の砲撃はかなり物足りないと思うが、砲弾の投射量はこちらの方が多い。
戦艦の砲弾は、大威力で敵の息の根を一気に止める、というイメージがある反面、軽巡、駆逐艦の砲弾は威力が低い分、
敵を一寸刻みに嬲って殺すイメージがある。
今がそうである。サウスダコタの斉射は、B地区の倉庫群をひとまとめに吹き飛ばしているが、
マイアミ、ビンセンズ、駆逐艦部隊の砲撃は、徐々に倉庫群、テント群を叩いて、火を付けている。
砲撃開始から30分が経つと、ガレンスアロ軍港は、A地区、B地区とも火の海に変わっていた。
マイアミ、ビンセンズが砲撃しているA地区は、巨大なテントが5つに大きめの倉庫群があり、
岸壁には5隻の輸送船が係留されている。
ここには、ストーンゴーレムと、魔道師が大掛かりな魔法発動に使う魔法石や薬品、それに今では不要となった、
飛空挺の整備器具などが置かれていた。
6インチ砲弾は、交互撃ち方で、ストーンゴーレムが保管されている倉庫に何発か命中し、
床に寝かされていたゴーレムを14体破壊していた。
交互撃ち方を10回やったところで、マイアミ、ビンセンズは一斉撃ち方に切り替えた。
2艦合計、24門の6インチ砲は急斉射で放たれ、6~7秒に1斉射、24発の6インチ砲弾が容赦なく、
テント、倉庫群に突き刺さる。
現世界にいたときの海戦、サイフェルバン沖海戦、マリアナを巡る海戦で遺憾なく発揮されてきた
クリーブランド級軽巡の速射性能は、ここでも威力を発揮した。
縦20メートル、幅50メートルのテントが、次々と迫り来る6インチ砲弾に一方的に叩かれ、
内部の魔法石や薬品が勢いよくはね跳び、燃え上がった。
急な異常反応を来たした薬品が、唐突に爆発したり、閃光を発する。
それがテントを覆う布に燃え移ったり、他のテントを照らし出して、上空の弾着観測機にその姿を晒しだした。
姿を現した新たなテントや、野ざらしの木箱に、別の砲弾がぶち込まれて破片を辺りに撒き散らした。
6インチ砲の他に、5インチ両用砲も射撃に加わってからは、周囲は修羅場と化した。
薬品の異常反応で照らし出された無傷のテントに、別の砲弾が落下し、中の物資を吹き飛ばして役立たずの残骸に変えてしまう。
駆逐艦部隊も、5マイルの距離に接近して砲撃を開始する。
サウススダコタの16インチ砲のド派手さから見れば、軽巡、駆逐艦の砲撃はかなり物足りないと思うが、砲弾の投射量はこちらの方が多い。
戦艦の砲弾は、大威力で敵の息の根を一気に止める、というイメージがある反面、軽巡、駆逐艦の砲弾は威力が低い分、
敵を一寸刻みに嬲って殺すイメージがある。
今がそうである。サウスダコタの斉射は、B地区の倉庫群をひとまとめに吹き飛ばしているが、
マイアミ、ビンセンズ、駆逐艦部隊の砲撃は、徐々に倉庫群、テント群を叩いて、火を付けている。
砲撃開始から30分が経つと、ガレンスアロ軍港は、A地区、B地区とも火の海に変わっていた。
A地区はほとんどの建物に無数の穴が開き、その穴から火炎を噴き出している。
時折、建物自体が大きく欠損しているものがあるが、それは中の物資が、誘爆を起こしたものである。
テント群、倉庫群の大多数が、6インチ砲弾、5インチ砲弾の洗礼を受けて全壊、良くて半壊状態にあった。
B地区は、A地区とは対照的に、砲撃を受けた箇所の建物はほとんどが原形を留めぬままに吹き飛んでいた。
着弾地点には必ず10~20メートル近いクレーターが開き、その周囲には訳の分からないゴミしかなかった。
この時点で、既に壊滅状態にあったガレンスアロ軍港の補給物資群だが、米艦隊はそれでも砲撃を止める気配が無い。
サウスダコタが吼え、9発の16インチ砲弾が軍港に殺到する。
2発が海面に落下して高々と水柱を吹き上げ、1発が停泊中の木造船叩き割る。
3発が岸壁をそっくり抉り取り、残りが健在であった倉庫や、地面に命中して破片を吹き上げた。
マイアミ、ビンセンズらは多数の砲弾をぶち込んで、まだ無傷の施設群を瓦礫の山に変えていく。
まとまった6インチ砲弾が、ストーンゴーレムの体をあっという間に砕く。
5インチ砲弾が、勇敢にも反撃を加えてきた沿岸砲に向けられ、沿岸砲が撃った以上の砲弾をぶち込んで、これを沈黙させた。
米艦隊は、ガレンスアロの砲撃をその後も続行し、補給物資群のみならず、軍港機能そのものを破壊するようであった。
時折、建物自体が大きく欠損しているものがあるが、それは中の物資が、誘爆を起こしたものである。
テント群、倉庫群の大多数が、6インチ砲弾、5インチ砲弾の洗礼を受けて全壊、良くて半壊状態にあった。
B地区は、A地区とは対照的に、砲撃を受けた箇所の建物はほとんどが原形を留めぬままに吹き飛んでいた。
着弾地点には必ず10~20メートル近いクレーターが開き、その周囲には訳の分からないゴミしかなかった。
この時点で、既に壊滅状態にあったガレンスアロ軍港の補給物資群だが、米艦隊はそれでも砲撃を止める気配が無い。
サウスダコタが吼え、9発の16インチ砲弾が軍港に殺到する。
2発が海面に落下して高々と水柱を吹き上げ、1発が停泊中の木造船叩き割る。
3発が岸壁をそっくり抉り取り、残りが健在であった倉庫や、地面に命中して破片を吹き上げた。
マイアミ、ビンセンズらは多数の砲弾をぶち込んで、まだ無傷の施設群を瓦礫の山に変えていく。
まとまった6インチ砲弾が、ストーンゴーレムの体をあっという間に砕く。
5インチ砲弾が、勇敢にも反撃を加えてきた沿岸砲に向けられ、沿岸砲が撃った以上の砲弾をぶち込んで、これを沈黙させた。
米艦隊は、ガレンスアロの砲撃をその後も続行し、補給物資群のみならず、軍港機能そのものを破壊するようであった。
「撃ち方やめ!」
ウッドワード大佐は、鋭い声音でそう命じた。
左舷側に向けられていたサウスダコタの16インチ砲が、唸りを止めた。
ガレンスアロ軍港は、赤く燃えていた。砲撃前に見えた、整然と並んでいた倉庫郡は、
今や炎と瓦礫の山になっており、所どころ、何も無かったかのように綺麗さっぱり無くなっている。
左舷側に向けられていたサウスダコタの16インチ砲が、唸りを止めた。
ガレンスアロ軍港は、赤く燃えていた。砲撃前に見えた、整然と並んでいた倉庫郡は、
今や炎と瓦礫の山になっており、所どころ、何も無かったかのように綺麗さっぱり無くなっている。
「セイバー、パンサー。砲撃を終了しました。」
「よし。」
「よし。」
頷いたウッドード大佐は、次の命令を下した。
「直ちに引き上げる。艦隊針路変更。」
ウッドワード艦長は、砲撃部隊の針路を、機動部隊がいる方角に向けさせた。
12ノットのスピードで航行していたサウスダコタが、ゆっくりと右に回頭し始める。
ウッドワード艦長は、ガレンスアロ軍港を、じっと見つめていた。
12ノットのスピードで航行していたサウスダコタが、ゆっくりと右に回頭し始める。
ウッドワード艦長は、ガレンスアロ軍港を、じっと見つめていた。
「これで、継戦派の連中も懲りるといいんだが。いや、懲りないほうがおかしいか。
今日一日だけで、第4任務群はかなり暴れ回ったからな。」
今日一日だけで、第4任務群はかなり暴れ回ったからな。」
やがて、ガレンスアロ軍港は、艦の陰に隠れて見えなくなった。
「あれだけお灸を据えてやれば、後は大人しくなるだろう」
10月7日 午前2時 クレールスレンス
「・・・・・そうか。わかった。なるべく、革命軍の侵攻を遅らせるように伝えろ。」
ヴァルケリン公爵は、紙を持ってきた魔道将校にそう伝えた。
その声は、力が無く、顔はげっそりと細くなっている。目だけがやたらにぎらついていた。
ここは、継戦軍司令部より西に1キロ離れた質素な小屋である。
この小屋は、森の中にあるため、上空からは視認出来ないようになっている。
彼は、気を落ち着かせようと、コップの水を飲もうとした。手が小刻みに震え、まともにコップが持てない。
急に苛立ちが爆発し、彼はコップを思い切り、床に叩き付けた。
バリィン!!という鋭い音が鳴り、狭い部屋で寝ずに仕事していた幕僚達が、ぎょっとなってヴァルケリンのほうを振り向いた。
その声は、力が無く、顔はげっそりと細くなっている。目だけがやたらにぎらついていた。
ここは、継戦軍司令部より西に1キロ離れた質素な小屋である。
この小屋は、森の中にあるため、上空からは視認出来ないようになっている。
彼は、気を落ち着かせようと、コップの水を飲もうとした。手が小刻みに震え、まともにコップが持てない。
急に苛立ちが爆発し、彼はコップを思い切り、床に叩き付けた。
バリィン!!という鋭い音が鳴り、狭い部屋で寝ずに仕事していた幕僚達が、ぎょっとなってヴァルケリンのほうを振り向いた。
「・・・・・・いや、なんでもない。落としてしまっただけだ。仕事を続けてくれ。」
彼が言うと、幕僚達は再び仕事に取り掛かる。
彼らの表情も、1週間前と比べると、明らかに違っていた。
誰もが覇気を失っている。米機動部隊が現れるまでは、誰もが継戦派の勝利を確信していた。
幕僚達も、休憩の時には全てが終わった後の話ばかりして、司令部の空気はとても明るかった。
それが、今ではどうか?
空中騎士団、艦隊はアメリカ艦隊にたたきのめされ、目玉の大魔道院は、史上最高とまで言われた
貴重な魔法石使いながら、エンシェントドラゴンを召喚する前に米艦載機の物量に押し潰された。
リーダーであるエリラは、戦闘飛空挺によって射殺された。
それだけでも、情勢は圧倒的に不利になったのに、アメリカ艦隊は以降も継戦派を苦しめ続けた。
連日の空襲で、補給物資は4割が空襲で焼き討ちにされ、反撃に出たワイバーンは全滅。
精油所とキメラの研究を行ってきた中央研究所もやられ、彼の自宅兼司令部は米軍機の空襲によって吹き飛ばされた。
挙句の果てに、ガレンスアロ軍港が、接近してきたアメリカ艦の砲撃で完全に吹き飛ばされ、止めは革命軍の本格侵攻開始、である。
1つ悪い事が起きると、別の悪い事が次々と、それも雪達磨式に増えていったのだ。
彼らの表情も、1週間前と比べると、明らかに違っていた。
誰もが覇気を失っている。米機動部隊が現れるまでは、誰もが継戦派の勝利を確信していた。
幕僚達も、休憩の時には全てが終わった後の話ばかりして、司令部の空気はとても明るかった。
それが、今ではどうか?
空中騎士団、艦隊はアメリカ艦隊にたたきのめされ、目玉の大魔道院は、史上最高とまで言われた
貴重な魔法石使いながら、エンシェントドラゴンを召喚する前に米艦載機の物量に押し潰された。
リーダーであるエリラは、戦闘飛空挺によって射殺された。
それだけでも、情勢は圧倒的に不利になったのに、アメリカ艦隊は以降も継戦派を苦しめ続けた。
連日の空襲で、補給物資は4割が空襲で焼き討ちにされ、反撃に出たワイバーンは全滅。
精油所とキメラの研究を行ってきた中央研究所もやられ、彼の自宅兼司令部は米軍機の空襲によって吹き飛ばされた。
挙句の果てに、ガレンスアロ軍港が、接近してきたアメリカ艦の砲撃で完全に吹き飛ばされ、止めは革命軍の本格侵攻開始、である。
1つ悪い事が起きると、別の悪い事が次々と、それも雪達磨式に増えていったのだ。
「全ては・・・・・・・ヴァルレキュアが奴らを呼び出した事が原因だ・・・・・・・
あの艦隊さえ・・・・・あの機動部隊さえいなければ・・・・!」
あの艦隊さえ・・・・・あの機動部隊さえいなければ・・・・!」
内心で、彼は悲鳴を上げていた。
彼の脳裏には、昼間の空襲以来、ずっと米艦載機の姿が浮かび上っている。
ずんぐりとした機体に、太く白い棒線が付いた白い星のマーク。白星の悪魔と呼ばれた由縁である、あのマークが、彼の頭からこびりついて離れない。
彼の脳裏には、昼間の空襲以来、ずっと米艦載機の姿が浮かび上っている。
ずんぐりとした機体に、太く白い棒線が付いた白い星のマーク。白星の悪魔と呼ばれた由縁である、あのマークが、彼の頭からこびりついて離れない。
「もはや・・・・・これまでなのだろうか・・・・・・」
彼の表情は、もはや死人と比較しても変わらぬほど、生気に欠けるものであった。
「戦いはやめるべきか・・・・・・それとも、最後まで武人らしく、華々しく散るべきか。」
ヴァルケリンは考えた。降伏は・・・・・できない。
(なぜか?いや、分かりきっている事だ。反旗を翻したものには、良くて日の目が
見れない監獄に放り込まれるか、処刑されるかだ。それも本人のみならず、関係の
ない家族全て。今まで、バーマントはそうしてきた。反旗を翻したものは、家族、
一族郎党皆殺か、監獄に放り込まれるからしかないからな。私はそうなった者達を何度も見て来ている)
ヴァルケリンは、度重なるショックで衰えかけた脳を、再び活性化させた。
(そうなるよりは、革命派の連中を、1人でも多く道連れにして、我らの意地を見せる。それしかない!!!)
彼は、そう決意した。そのほうが、この後の生き地獄を味合わなくてすむ。
(なぜか?いや、分かりきっている事だ。反旗を翻したものには、良くて日の目が
見れない監獄に放り込まれるか、処刑されるかだ。それも本人のみならず、関係の
ない家族全て。今まで、バーマントはそうしてきた。反旗を翻したものは、家族、
一族郎党皆殺か、監獄に放り込まれるからしかないからな。私はそうなった者達を何度も見て来ている)
ヴァルケリンは、度重なるショックで衰えかけた脳を、再び活性化させた。
(そうなるよりは、革命派の連中を、1人でも多く道連れにして、我らの意地を見せる。それしかない!!!)
彼は、そう決意した。そのほうが、この後の生き地獄を味合わなくてすむ。
「それにしても、少々疲れた。諸君、少しすまないが、私は仮眠を取らせてもらう。
諸君らも、適度に休みを取ってくれ。」
諸君らも、適度に休みを取ってくれ。」
そう言うと、ヴァルケリンは立ち上がり、自分の部屋へ向かっていった。
1098年 10月7日 午前8時 第5艦隊旗艦 戦艦ノースカロライナ
ノースカロライナの艦橋に、スプルーアンス大将はいつもの通り、8時に上がって来た。
ノースカロライナの艦橋に、スプルーアンス大将はいつもの通り、8時に上がって来た。
「おはよう諸君。」
艦橋職員や、その場にいた第5艦隊の幕僚が彼に挨拶を返してきた。
「長官、コーヒーであります。」
水兵が、スプルーアンスにコーヒーを持って来た。
「ありがとう。」
彼は頷くと、コーヒーを一口すすった。
程よい苦味が、口の中を満たし、微かに残っていた眠気が吹き飛ぶ。
程よい苦味が、口の中を満たし、微かに残っていた眠気が吹き飛ぶ。
「何か変わった事はないかね?」
彼は、先ほどから側にいた、参謀長のデイビス少将に声をかけた。
スプルーアンスは、昨日の9時には、眠りについていた。
午前2時頃に、同乗の魔道師であるレイムから、革命軍がグランスボルグ地方に侵攻を
開始したという報告を受け取ったが、彼はそれを聞いただけで、詳しい事は明日聞くといい、
レイムを寝室から追い出した。
スプルーアンスは別に追い出したつもりは無く、レイムもそう思っていなかったが、
後から寝室でのやりとりを聞いていたフォレステル大佐が、
スプルーアンスは、昨日の9時には、眠りについていた。
午前2時頃に、同乗の魔道師であるレイムから、革命軍がグランスボルグ地方に侵攻を
開始したという報告を受け取ったが、彼はそれを聞いただけで、詳しい事は明日聞くといい、
レイムを寝室から追い出した。
スプルーアンスは別に追い出したつもりは無く、レイムもそう思っていなかったが、
後から寝室でのやりとりを聞いていたフォレステル大佐が、
「長官は眠いから、明日話を聞くと言って君を追い出したのさ」
と言っていた。それにはレイムも苦笑して、
「あらら・・・・・提督らしい追い出し方ですね」
と言っていた。
「艦隊に変わった事は特にありません。それから、エリオンドルフまではあと1日で着きます。」
「1日か」
「1日か」
スプルーアンスは頷く。
「バーマント側の対応に感謝すべきだな。また1週間以上、休みなしで航海する事を覚悟していたが、
とりあえず移動サービス部隊の分遣隊とのランデブーは、エリオンドルフでできるな。」
とりあえず移動サービス部隊の分遣隊とのランデブーは、エリオンドルフでできるな。」
本来、第5艦隊は、海上でウルシーからやってくるはずの移動サービス部隊の分遣隊と落ち合う予定であったが、
マリアナ近海から引き上げる直前になって、バーマント側がエリオンドルフの港を使用しても良いと伝えてきた。
再び、1週間前後の航海を覚悟していた艦隊の将兵は、思ったより早く、休息が取れる事を喜んでいた。
マリアナ近海から引き上げる直前になって、バーマント側がエリオンドルフの港を使用しても良いと伝えてきた。
再び、1週間前後の航海を覚悟していた艦隊の将兵は、思ったより早く、休息が取れる事を喜んでいた。
「革命軍の状況はどうなっている?」
スプルーアンスは、一番聞きたかった話題に話を移した。
「第1、第4群とTF52、タフィ2が、継戦軍を痛めつけたようだが、肝心の革命軍の侵攻状況はどうだろうか。」
「あまり、良好とはいえないようです。」
「あまり、良好とはいえないようです。」
デイビス少将は、やや表情を固くして言う。
「ベルーク大佐によると、継戦派の軍は思ったよりも激しく抵抗しているようです。革命側が包囲して、
降伏を求めても、それを拒んで全滅するまで戦う部隊も出ているようです。」
降伏を求めても、それを拒んで全滅するまで戦う部隊も出ているようです。」
その言葉を聞いて、スプルーアンスは珍しく表情を歪めた。
「まだ戦うつもりなのか。我が機動部隊の艦載機で、物資や重要施設を大分やられているし、
昨日の夜には第4群が艦砲射撃でガレンスアロ軍港を吹き飛ばしたじゃないか。それなのに、革命軍が手こずるとは。」
昨日の夜には第4群が艦砲射撃でガレンスアロ軍港を吹き飛ばしたじゃないか。それなのに、革命軍が手こずるとは。」
スプルーアンスは、機動部隊の一部を現場海域に置いて継戦派を攻撃し、継戦意欲を失わせようと思った。
しかし、ベルーク大佐からの報告では、どうも上手くいっていないようだ。
しかし、ベルーク大佐からの報告では、どうも上手くいっていないようだ。
(ひょっとして・・・・・・・)
スプルーアンスはしばらく思考した。腕を組んで、彼はじっと前を見据える。
眼前には、駆逐艦が2隻航行しているが、彼の眼には駆逐艦は映っていない。
20分ほど考えると、スプルーアンスは口を開いた。
眼前には、駆逐艦が2隻航行しているが、彼の眼には駆逐艦は映っていない。
20分ほど考えると、スプルーアンスは口を開いた。
「そうとしか、考えられないな」
「えっ?何がでしょうか?」
「えっ?何がでしょうか?」
デイビス少将は、ぽかんとした表情でそう言った。
「バーマントは、確か反逆者に厳しい国だそうだな。いや、この異世界のみならず、
現世界の過去、中世では、反逆者に酷い仕打ちを下していたな。例えば、家族、一族郎党、全て皆殺しとか。」
「まあ、それも少なくなかったと思われますが。」
現世界の過去、中世では、反逆者に酷い仕打ちを下していたな。例えば、家族、一族郎党、全て皆殺しとか。」
「まあ、それも少なくなかったと思われますが。」
途端に、デイビスも分かってきた。継戦派の連中が、なぜ、あれほどまでに戦いを続けるのか。
「バーマントの場合はもっと厳しいようだぞ。2年前の反対派の粛清では、反対派側についていた
貴族や将軍が、軒並み粛清されている。そのうち半数近くは見せしめとして、一族郎党皆殺し、
という方法がとられていた。ベルーク大佐の口ぶりからして、革命派も同じようなやり方をするかもしれないぞ。」
「長官は、どうするべきだと思うのですか?」
「どうするべきか。答えは簡単だ。そんな方法は取らぬほうがいい。」
貴族や将軍が、軒並み粛清されている。そのうち半数近くは見せしめとして、一族郎党皆殺し、
という方法がとられていた。ベルーク大佐の口ぶりからして、革命派も同じようなやり方をするかもしれないぞ。」
「長官は、どうするべきだと思うのですか?」
「どうするべきか。答えは簡単だ。そんな方法は取らぬほうがいい。」
スプルーアンスは淀みなく言い放った。
「継戦派の連中は、投降しても屈辱的な扱いをされたり、すぐに殺されるかもしれないと思うはずだ。
革命派がそのような方法をとるのならば、確かに脅威は残らなくなるが、その分、多くの命を無駄にする」
革命派がそのような方法をとるのならば、確かに脅威は残らなくなるが、その分、多くの命を無駄にする」
「なるほど。それならば、敵を1人でも道連れにして死ぬ、という覚悟を決める兵も多数出かねないですからね。」
事実、革命派の幹部には、継戦軍を皆殺しにしてしまえ、と息巻くものが多い。
それは最前線部隊の将兵も思っている事であった。
昔から続いてきた、一族郎党皆殺し、運が良くても監獄に放り込む。
その方法が、かえって継戦派を焚き付け、革命派に出血を強いる危険が高い。
自暴自棄なった軍隊は、死に物狂いで攻撃してくるのがほとんどだ。
それが、数が少ないうちはまだいいが、継戦側は減ったと言えど、万単位のれっきとした軍だ。
はっきり言って、非常に危ない。
それは最前線部隊の将兵も思っている事であった。
昔から続いてきた、一族郎党皆殺し、運が良くても監獄に放り込む。
その方法が、かえって継戦派を焚き付け、革命派に出血を強いる危険が高い。
自暴自棄なった軍隊は、死に物狂いで攻撃してくるのがほとんどだ。
それが、数が少ないうちはまだいいが、継戦側は減ったと言えど、万単位のれっきとした軍だ。
はっきり言って、非常に危ない。
「そんな方法をとる者は、私が教官ならば合格点は与えんよ。」
「合格点は与えない、ですか。では、何点ぐらい与えるのです?」
「0点だ。」
「合格点は与えない、ですか。では、何点ぐらい与えるのです?」
「0点だ。」
スプルーアンスは即答した。
「そんな馬鹿な方法をとれば、多くの若者や、前途あるものまで命を散らす。絶滅戦なぞ、私から言わせれば無駄な戦法だよ。
それよりかは、敵も引き込み、力にするのがよっぽどいい。人の能力は、戦いにのみ生かされるわけではないのだからね。」
それよりかは、敵も引き込み、力にするのがよっぽどいい。人の能力は、戦いにのみ生かされるわけではないのだからね。」
そう言うと、スプルーアンスはニヤリと笑みを浮かべた。
「私は、エリオンドルフに到着した時に、このノースカロライナに乗ってくる革命派の将軍に言うつもりだ。
一族郎党、反逆者皆殺しなど、実行する本人の首を絞めるようなものだ。それよりかは、首脳部のみを裁判で裁くんだ。
末端の兵士達は、彼らを信じてやってきたのだ。末端の将兵には罪はない。」
一族郎党、反逆者皆殺しなど、実行する本人の首を絞めるようなものだ。それよりかは、首脳部のみを裁判で裁くんだ。
末端の兵士達は、彼らを信じてやってきたのだ。末端の将兵には罪はない。」
スプルーアンスはそう言い切った。
「国の宝となる者達を、無為に捨てる必要はないからな。とは言っても、一軍の将である私が言っては、説得力に欠けるか。」
彼は苦笑しながらも、コーヒーをまたすする。
「そういえば、墜落機のパイロットはどうなっている?」
「今のところ、マリアナ周辺で4人、ギルアルグ周辺で3人、カウェルサントで1人の発見が確認されています。」
「そうか。」
「今のところ、マリアナ周辺で4人、ギルアルグ周辺で3人、カウェルサントで1人の発見が確認されています。」
「そうか。」
スプルーアンスは満足そうに頷いた。
彼としては、1人も生存者いないのでは、と思っていた。
いるとしても、2、3人ぐらいだろうと。
だが、生存者は生きていたのだ。それも、8人も。
彼としては、1人も生存者いないのでは、と思っていた。
いるとしても、2、3人ぐらいだろうと。
だが、生存者は生きていたのだ。それも、8人も。
「生存者は、革命派の部隊に匿われているようです。既に、マリアナ周辺で発見した墜落機のパイロットは、
最寄の海岸で収容する予定です。それから、残り4人に関しては、艦載機から小型無線機を投下しているので、
後に無線機で収容場所の打ち合わせを行う予定です。」
最寄の海岸で収容する予定です。それから、残り4人に関しては、艦載機から小型無線機を投下しているので、
後に無線機で収容場所の打ち合わせを行う予定です。」
「よし。彼らはなんとしても救ってやれ。彼らを、無事、母艦に帰してやるのが、我々の義務だ。」
スプルーアンスは語調を強くし、そう言った。