午後4時40分 ヌーメア
第77歩兵師団はヌーメアに司令部を置いた。
77師団の司令官であるマルガ・ザルディグ少将は、苦りきった表情で作戦地図を見つめていた。
第77歩兵師団はヌーメアに司令部を置いた。
77師団の司令官であるマルガ・ザルディグ少将は、苦りきった表情で作戦地図を見つめていた。
「どうもな・・・・・敵にしてやられたとしか言いようが無い。」
彼は呻くような口調で言う。
彼の顔色が良くない原因はいくつかあった。その1番目が、侵攻部隊の損害であろう。
左翼の第3大隊は、途中でポールレント高地に砲兵中隊を分離させ、そこから革命軍の陣地を砲撃した。
しかし、砲撃開始からわずか5分後に、砲兵中隊は謎の敵部隊に襲われてしまった。
護衛に当たっていた2個小隊の歩兵は奇襲を受けて半数が戦死。残りが逃げ散った。
特に酷いのが砲兵中隊の損害で、大砲14門は全てが予備弾薬と共に吹き飛ばされ、全門使用不能。
砲兵中隊も中隊長ヴィキク大尉を始め、3分の1が戦死し、残りは先の歩兵小隊と同じように逃げ散って行った。
それが合図だったかのように、各所で革命側の小部隊による奇襲が頻繁に行われた。
奇襲を受けたのは、第3大隊本隊の他に、第1、第2大隊の最後尾部隊である。
第1大隊は戦死者76名、負傷者34名の損害を出しながらも、敵部隊40名を全滅させると言う戦果を挙げた。
しかし、残りの部隊は敵部隊に対してかすり傷しか与えきれず、逆に134人の兵員が死に、200名余りが負傷して戦いに参加できなくなった。
この時、革命側は2個中隊相当の兵力を、それぞれ40名ずつ、5チームに分けて各所に展開させた。
展開した場所や、オイルエン大尉らが襲撃した高地や、敵の最後尾部隊が通る森林の中である。
隠れ場所はいくらでもあり、木陰や藪の中、岩の陰などにひっそりと隠れていたのだ。
そして、ポールレント高地の爆発音を合図に、撹乱部隊は一斉に動き出した。
第1大隊を襲ったクァルツ大尉の部隊は、武運つたなく、全員が取り囲まれて、討ち死にしてしまったが、
残りの部隊の損害は、合計で戦死者6名、負傷者10名というかなり軽微なものであった。
彼の顔色が良くない原因はいくつかあった。その1番目が、侵攻部隊の損害であろう。
左翼の第3大隊は、途中でポールレント高地に砲兵中隊を分離させ、そこから革命軍の陣地を砲撃した。
しかし、砲撃開始からわずか5分後に、砲兵中隊は謎の敵部隊に襲われてしまった。
護衛に当たっていた2個小隊の歩兵は奇襲を受けて半数が戦死。残りが逃げ散った。
特に酷いのが砲兵中隊の損害で、大砲14門は全てが予備弾薬と共に吹き飛ばされ、全門使用不能。
砲兵中隊も中隊長ヴィキク大尉を始め、3分の1が戦死し、残りは先の歩兵小隊と同じように逃げ散って行った。
それが合図だったかのように、各所で革命側の小部隊による奇襲が頻繁に行われた。
奇襲を受けたのは、第3大隊本隊の他に、第1、第2大隊の最後尾部隊である。
第1大隊は戦死者76名、負傷者34名の損害を出しながらも、敵部隊40名を全滅させると言う戦果を挙げた。
しかし、残りの部隊は敵部隊に対してかすり傷しか与えきれず、逆に134人の兵員が死に、200名余りが負傷して戦いに参加できなくなった。
この時、革命側は2個中隊相当の兵力を、それぞれ40名ずつ、5チームに分けて各所に展開させた。
展開した場所や、オイルエン大尉らが襲撃した高地や、敵の最後尾部隊が通る森林の中である。
隠れ場所はいくらでもあり、木陰や藪の中、岩の陰などにひっそりと隠れていたのだ。
そして、ポールレント高地の爆発音を合図に、撹乱部隊は一斉に動き出した。
第1大隊を襲ったクァルツ大尉の部隊は、武運つたなく、全員が取り囲まれて、討ち死にしてしまったが、
残りの部隊の損害は、合計で戦死者6名、負傷者10名というかなり軽微なものであった。
「緒戦で、4個中隊相当の部隊がやられるとはな。」
「ここは、いわば敵の庭のようなものです。」
「ここは、いわば敵の庭のようなものです。」
参謀長のゼルポイス大佐が隣で口を開いた。
「確かに、我々は警戒しながら進みましたが、地の利に関してはあちら側が上手だったのです。
我々と対峙している敵部隊は、ガルファン将軍の森林旅団です。彼らは革命の数年前から、あの砦を
根城に訓練を重ねてきました。革命直後の我々の奇襲で、ガルファン将軍の部隊も壊滅的打撃を受けていますが、
いくら少なくなったと言えど、彼らの部隊はあの森林を訓練で知り尽くしています。
我々は知らず、敵には分かる隠れ場所などはいくらでもありますから。」
「うーむ・・・・・・これでは先が思いやられるな。」
「確かに、我々は警戒しながら進みましたが、地の利に関してはあちら側が上手だったのです。
我々と対峙している敵部隊は、ガルファン将軍の森林旅団です。彼らは革命の数年前から、あの砦を
根城に訓練を重ねてきました。革命直後の我々の奇襲で、ガルファン将軍の部隊も壊滅的打撃を受けていますが、
いくら少なくなったと言えど、彼らの部隊はあの森林を訓練で知り尽くしています。
我々は知らず、敵には分かる隠れ場所などはいくらでもありますから。」
「うーむ・・・・・・これでは先が思いやられるな。」
当初は、ポールレント高地からの準備砲撃の後、第1、第2、第3大隊の総力を持って、敵陣地を突破。
一気にカウェルサント門前で立ちはだかる砦まで進軍しようと考えていた。
だが、このままでは準備砲撃が不十分なまま、奇襲でやや減勢した戦力で敵陣地突破を図らねば成らない。
実を言うと、支援は準備砲撃だけではなかった。
一気にカウェルサント門前で立ちはだかる砦まで進軍しようと考えていた。
だが、このままでは準備砲撃が不十分なまま、奇襲でやや減勢した戦力で敵陣地突破を図らねば成らない。
実を言うと、支援は準備砲撃だけではなかった。
「こんな時に限って、雨雲が出てくるとは。」
天幕に、ポツ ポツ という雨が滴り落ちる音が聞こえてきた。
ゼルポイス大佐は出入り口の幕を退けて、外に顔を出してみた。
廃墟と貸したヌーメアの町並みには、あちらこちらに第77歩兵師団の陣地があり、町の外縁には、
師団の標準装備になった11.2ミリ機銃が上空を睨んでいる。
そのヌーメアに、雨が降ってきた。雨足はたちどころに増していく。
ゼルポイス大佐は出入り口の幕を退けて、外に顔を出してみた。
廃墟と貸したヌーメアの町並みには、あちらこちらに第77歩兵師団の陣地があり、町の外縁には、
師団の標準装備になった11.2ミリ機銃が上空を睨んでいる。
そのヌーメアに、雨が降ってきた。雨足はたちどころに増していく。
「前線部隊より報告。作戦区域の天候は雨なり。」
テントの中に居た魔道将校が、受信した魔法通信の内容をザルティグ師団長に伝えた。
「これで、ワイバーンロードの支援はなしか。全くついていないな!」
ザルティグはふてくされたような表情になり、椅子にふんぞり返った。
「でも、この雨ではアメリカ機動部隊も艦載機を飛ばせないでしょう。」
「アメリカ機動部隊だと?」
「アメリカ機動部隊だと?」
ザルティグ少将は嘲笑を浮かべた。
「そんなどこぞに姿を消した艦隊の事を言って何になる。海竜情報収集隊の情報では、
敵機動部隊は大魔道院の爆砕に満足して引き返した、と言われているぞ?」
「一部の敵艦隊の所在が不明ともありましたが?」
敵機動部隊は大魔道院の爆砕に満足して引き返した、と言われているぞ?」
「一部の敵艦隊の所在が不明ともありましたが?」
ゼルポイス大佐は釘を刺すような口調で言う。
ザルティグ師団長は、基本的に思慮深く、堅実な作戦を行う事で知られている。
しかし、時折、状況を深く考えずに決定したりする欠点もある。
今日のザルティグは、その欠点が出てしまった。
このような欠点が出る場合は、彼がかなりイラついていると言う証拠である。
ザルティグ師団長は、基本的に思慮深く、堅実な作戦を行う事で知られている。
しかし、時折、状況を深く考えずに決定したりする欠点もある。
今日のザルティグは、その欠点が出てしまった。
このような欠点が出る場合は、彼がかなりイラついていると言う証拠である。
「その一部の艦隊だって、海竜の探知範囲外に居ただけだろう。それに、万が一敵機動部隊が出現したとしても、
このような辺ぴな場所には来ないだろう。来るとしたら、ギルアルグあたりか、ヴァルケリン閣下のお膝元だろう。」
彼は大佐の不安を打ち消すような口調で言った。
このような辺ぴな場所には来ないだろう。来るとしたら、ギルアルグあたりか、ヴァルケリン閣下のお膝元だろう。」
彼は大佐の不安を打ち消すような口調で言った。
「敵の機動部隊も、こんな廃墟よりは、“迷宮の城”を狙うだろう。」
「そうですか・・・・・・」
「そうですか・・・・・・」
外の雨音は、彼の不安を助長するかのように、まずます大きくなってくる。
「こいつは・・・・本降りですなぁ。」
別の幕僚がそう呟いたとき、外で青白い雷が光った。
午後1時40分 ギルアルグ西北海域100マイル付近
第58任務部隊の第4任務群は、ギルアルグまで100マイルの沖まで進出していた。
第58任務部隊の第4任務群は、ギルアルグまで100マイルの沖まで進出していた。
「艦長、少し早いだろうが、策敵機を飛ばさんかね?」
司令官のハリル少将が、予定よりも早く策敵機を飛ばそうとしたのはこの時である。
当初、救出部隊の空母は、目標地点の80マイル沖合いに達してから艦載機を発艦させると決めてある。
しかし、ハリルは唐突にその言葉を言ってきたのである。
当初、救出部隊の空母は、目標地点の80マイル沖合いに達してから艦載機を発艦させると決めてある。
しかし、ハリルは唐突にその言葉を言ってきたのである。
「司令、80マイル付近まではあと1時間半ほどで到着いたしますが。」
空母エセックス艦長のオフスティー大佐は、やや驚きつつも、彼にそう答えた。
「艦長、確かに早すぎるかもしれんが、航続距離が1800キロもあるアベンジャーやヘルダイバーは10マイルや20マイル
の距離など、あっという間だ。それに、森林や革命軍に匿われているだろう墜落機のパイロット達は、私達の救援を今か今かと、
待ちわびているに違いない。その彼らに、私は勇気を与えてやりたいのだよ。」
の距離など、あっという間だ。それに、森林や革命軍に匿われているだろう墜落機のパイロット達は、私達の救援を今か今かと、
待ちわびているに違いない。その彼らに、私は勇気を与えてやりたいのだよ。」
ハリルは、エセックスの艦橋を行ったり来たりしながら、そう言い放った。
「その考えには、私も同感です。」
オフスティー大佐は頷いた。
彼らは知らなかったが、策敵機のパイロット達は、必ずや、地上で待っているはずの戦友を必ず見つけると誓っており、
発艦の時をやきもきしながら待っていた。
彼らは知らなかったが、策敵機のパイロット達は、必ずや、地上で待っているはずの戦友を必ず見つけると誓っており、
発艦の時をやきもきしながら待っていた。
「ですが、取り決めでは80マイルです。」
「それは、おおまかな取り決めだろう?」
「それは、おおまかな取り決めだろう?」
オフスティー大佐は、はあ、と言って困った表情になった。
「ミッチャー提督は、場合によっては任務群の各司令の判断に任せると言っていた。
私は、一分一秒でも、味方を早く救うために、策敵機を上げたいと思うのだ。」
「・・・・・分かりました。」
艦長は納得したように頷いた。
私は、一分一秒でも、味方を早く救うために、策敵機を上げたいと思うのだ。」
「・・・・・分かりました。」
艦長は納得したように頷いた。
「少々早いですが、策敵機を発艦させます。」
「うむ。そうしてくれ。」
「うむ。そうしてくれ。」
艦長は、ハリル少将の言葉が終わるのを確認すると、マイクを手に取った。
現在、第4任務群の艦載機の総数は153機である。
輪形陣の真ん中には、正規空母のエセックスがおり、その左舷後方にラングレー。右舷後方にカウペンスという順になっている。
輪形陣の真ん中には、正規空母のエセックスがおり、その左舷後方にラングレー。右舷後方にカウペンスという順になっている。
この3隻の空母の艦載機の内訳は、まず第4任務群唯一の正規空母であるエセックスが
F6F32機、SB2C29機、TBF19機。合計80機である。
次に軽空母のラングレーがF6F21機、SB2C3機、TBF14機。最後の軽空母カウペンスが、F6F23機、TBF12機である。
本来なら、第4任務群には空母ランドルフもいて、艦載機の総数は290機を数えていた。
だが、打ち続く激戦で、ランドルフは異世界の水面の底に召され、生き残った空母の航空団は、大魔道院を巡る激戦で少なからぬ被害を受けた。
大魔道院戦が始まるまでは、ランドルフを失ったと言えど、189機を数えていた。
しかし、大魔道院が爆砕された後には、第4任務群が即座に準備できる艦載機は120機、要修理機を含めても138機に減っていた。
エセックスに関しては、艦載機のうち、32機が戦闘や事故で失われており、100機あった搭載機は68機にまで激減していた。
今現在は、優先的に回された補充機によって、なんとか80機を数えるまでになった。
ちなみに、大魔道院戦での各任務部隊の航空機喪失数は、第1任務群が47機、第2任務群が42機、
第3任務群が31機、そして第4任務群が69機と、各任務群の中でダントツに被害が大きかった。
F6F32機、SB2C29機、TBF19機。合計80機である。
次に軽空母のラングレーがF6F21機、SB2C3機、TBF14機。最後の軽空母カウペンスが、F6F23機、TBF12機である。
本来なら、第4任務群には空母ランドルフもいて、艦載機の総数は290機を数えていた。
だが、打ち続く激戦で、ランドルフは異世界の水面の底に召され、生き残った空母の航空団は、大魔道院を巡る激戦で少なからぬ被害を受けた。
大魔道院戦が始まるまでは、ランドルフを失ったと言えど、189機を数えていた。
しかし、大魔道院が爆砕された後には、第4任務群が即座に準備できる艦載機は120機、要修理機を含めても138機に減っていた。
エセックスに関しては、艦載機のうち、32機が戦闘や事故で失われており、100機あった搭載機は68機にまで激減していた。
今現在は、優先的に回された補充機によって、なんとか80機を数えるまでになった。
ちなみに、大魔道院戦での各任務部隊の航空機喪失数は、第1任務群が47機、第2任務群が42機、
第3任務群が31機、そして第4任務群が69機と、各任務群の中でダントツに被害が大きかった。
第4任務群は、第2、第3、第5、第6次の際に攻撃隊を送り込んでいる。
その際、第4任務群の部隊は常に防備の厚い対空陣地に突っ込んでは、それらを潰し続けた。
一見、勇気のある行動であったが、その代償は69機の艦載機、パイロット多数の命と言う手痛いものとなった。
しかし、第4任務群の将兵達は、その献身的行動が、作戦成功に少なからぬ影響を与えたと自負している。
話は逸れたが、第4任務群は、まず第1段策敵隊12機、第2段索敵隊14機、第3索敵隊12機、合計38機を用意している。
それらは第1段索敵隊が発艦した後、30分おきに空母から飛び立つ予定である。
時間や、天気の具合では、さらに第4、第5の索敵隊が出される事も計画されている。
その際、第4任務群の部隊は常に防備の厚い対空陣地に突っ込んでは、それらを潰し続けた。
一見、勇気のある行動であったが、その代償は69機の艦載機、パイロット多数の命と言う手痛いものとなった。
しかし、第4任務群の将兵達は、その献身的行動が、作戦成功に少なからぬ影響を与えたと自負している。
話は逸れたが、第4任務群は、まず第1段策敵隊12機、第2段索敵隊14機、第3索敵隊12機、合計38機を用意している。
それらは第1段索敵隊が発艦した後、30分おきに空母から飛び立つ予定である。
時間や、天気の具合では、さらに第4、第5の索敵隊が出される事も計画されている。
午後2時10分。
空母エセックスから6機、軽空母ラングレー、カウペンスからそれぞれ3機ずつ、計12機のアベンジャー、ヘルダイバーは、
未だに救援を待っているであろう、味方のパイロットを探すため、大陸の内部へ向けて飛び立っていった。
空母エセックスから6機、軽空母ラングレー、カウペンスからそれぞれ3機ずつ、計12機のアベンジャー、ヘルダイバーは、
未だに救援を待っているであろう、味方のパイロットを探すため、大陸の内部へ向けて飛び立っていった。
「こちらムーンライト7。現在、ギルアルグ西南80マイル、高度1500。味方の姿は無し。」
アベンジャー雷撃機を操縦するクリス・ヘンダーソン中尉は、定時電報を後部座席の電信員に打たせた。
ムーンライト7とは、第1索敵隊につけられた呼び出し符丁である。
現在、第1索敵隊は、ギルアルグの西方、及びギルアルグ周辺か、その後方を偵察している。
エセックスから発艦したムーンライト1は一番西側を飛行しており、ムーンライト7はギルアルグの上空を通り過ぎて、眼下には広大な森が広がっていた。
電信員や後部射撃手は、目を皿のようにして辺りを見回している。
ムーンライト7とは、第1索敵隊につけられた呼び出し符丁である。
現在、第1索敵隊は、ギルアルグの西方、及びギルアルグ周辺か、その後方を偵察している。
エセックスから発艦したムーンライト1は一番西側を飛行しており、ムーンライト7はギルアルグの上空を通り過ぎて、眼下には広大な森が広がっていた。
電信員や後部射撃手は、目を皿のようにして辺りを見回している。
「どうだ。何か見つからんか?」
ヘンダーソン中尉は後ろの2人に問いかけてみた。この日で既に同じような事を3度も言ってきている。
「だめっすね。この濃い森じゃあ、発見は難しそうですな。」
電信員が残念そうな口調で言ってくる。
「煙とか、鏡の反射らしきものなどは無かったか?」
「ありません。あるとしても、変な牛のようなモンスターや変わった鳥ぐらいしか見つけていません。」
「ありません。あるとしても、変な牛のようなモンスターや変わった鳥ぐらいしか見つけていません。」
射撃手もそう答えた。
「くそ、見つけるには骨がいるな。」
ヘンダーソン中尉は舌打ちした。
「何度もくどくてすまんが、とにかくどんな変化も見逃すな。」
「「アイアイサー」」
「「アイアイサー」」
部下の声が重なって聞こえた。
20分後、ムーンライト7号機はギルアルグ西南130マイル付近上空に到達した。
「中尉、左前方に何かあります。」
電信員がヘンダーソン中尉に報告してきた。
この時、ムーンライト7号機は母艦の軽空母ラングレーに向けて、引き返そうとした最中であった。
ヘンダーソン中尉は、電信員に言われた方向へ視線を向けた。双眼鏡を使い、少しでも目標を見やすくした。
この時、ムーンライト7号機は母艦の軽空母ラングレーに向けて、引き返そうとした最中であった。
ヘンダーソン中尉は、電信員に言われた方向へ視線を向けた。双眼鏡を使い、少しでも目標を見やすくした。
「あれは・・・・・何か覚えのある城だな。」
「もしかして、あれがグランスボルグで有名な、トラップの城ではないですか?規模からしてなかなか大きいです。」
「トラップの城か。あの話に出てきた、悲劇の姫様の城だな。」
「もしかして、あれがグランスボルグで有名な、トラップの城ではないですか?規模からしてなかなか大きいです。」
「トラップの城か。あの話に出てきた、悲劇の姫様の城だな。」
トラップの城・・・・・それはグランスボルグ地方では120年前に建てられた城といわれている。
元々はバーマント軍の軍事施設であったが、一時、運営に困ったバーマントが民間に解放した。
元々はバーマント軍の軍事施設であったが、一時、運営に困ったバーマントが民間に解放した。
しかし、その民間に解放された城は、とある富豪が入居した後に不思議な改装を施された。
城のあちらこちらに、なぜかトラップが仕掛けられていった。
城のあちらこちらに、なぜかトラップが仕掛けられていった。
そして、解放されてから3年後。
ライルフィーグ王国の第2皇女が誘拐されると言う事件が起きた。
当時、ライルフィーグと友好関係にあったバーマント側はすぐに調査を開始。
事件発覚から6時間後には、グレンドルス城に不穏分子が集結しており、第2皇女誘拐はその不穏分子らの仕業であると分かった。
当時、ライルフィーグと友好関係にあったバーマント側はすぐに調査を開始。
事件発覚から6時間後には、グレンドルス城に不穏分子が集結しており、第2皇女誘拐はその不穏分子らの仕業であると分かった。
バーマント側は直ちにグレンドルス城に部隊を派遣した。部隊はグレンドルス城の数々のトラップに苦しめられ、
不穏分子らの攻撃に疲労困憊していたが、なんとか城を制圧した。
しかし、城の中の牢屋には第2皇女はおらず、見つかったのは、トラップの設置場所であった。
第2皇女は、自ら監禁されていた部屋を抜け出し、脱出を図ったものの、武運つたなく、トラップの餌食になっていたのである。
木の杭に体を貫かれ、致命傷を負った第2皇女は、腹の急所に受傷しつつも、救助隊が来るまではなんとか生きていた。
しかし、救助隊の手当ても功を奏せず、第2皇女は息を引き取った。
不穏分子らの攻撃に疲労困憊していたが、なんとか城を制圧した。
しかし、城の中の牢屋には第2皇女はおらず、見つかったのは、トラップの設置場所であった。
第2皇女は、自ら監禁されていた部屋を抜け出し、脱出を図ったものの、武運つたなく、トラップの餌食になっていたのである。
木の杭に体を貫かれ、致命傷を負った第2皇女は、腹の急所に受傷しつつも、救助隊が来るまではなんとか生きていた。
しかし、救助隊の手当ても功を奏せず、第2皇女は息を引き取った。
以来、グレンドルス城は再びバーマント軍の元に戻っている。
現在も、トラップの大部分は可動はしていないものの、未だに残されていると言う。
俗に言われているグレンドルス事件は、大陸中に悲劇の代名詞として広く知られている。
第5艦隊の将兵らも、ヴァルレキュア人から聞かされ、誰もがこの事件のことは耳にしていた。
現在も、トラップの大部分は可動はしていないものの、未だに残されていると言う。
俗に言われているグレンドルス事件は、大陸中に悲劇の代名詞として広く知られている。
第5艦隊の将兵らも、ヴァルレキュア人から聞かされ、誰もがこの事件のことは耳にしていた。
「ちょうど、帰還ラインに入っていますが、あの城も偵察しますか?」
電信員が聞いて来た。
「もちろんだとも。これから、トラップの城を偵察しよう。」
ヘンダーソン中尉はフットバーを踏み込んで、操縦桿を左に倒す。
アベンジャーの機体はゆっくりと、そのトラップの城へと向けられた。
現在、アベンジャーは時速180マイルのスピードで飛行している。
問題の城までは約40、50マイルほどであるから、10分ほど飛行すれば、上空に到達する。
アベンジャーの機体はゆっくりと、そのトラップの城へと向けられた。
現在、アベンジャーは時速180マイルのスピードで飛行している。
問題の城までは約40、50マイルほどであるから、10分ほど飛行すれば、上空に到達する。
「トラップの城か・・・・・・噂でしか聞いた事は無かったが、どんなものかな。」
ヘンダーソン中尉は、話でしか聞かれなかったグレンドルス城が見れる事に、内心では嬉しかった。
しかし、そのグレンドルス城も、今では継戦派の拠点となっている可能性もある。
もし、継戦派の拠点となっていれば、機動部隊の艦載機は容赦なしに爆弾や機銃弾を叩きこむだろう。
あまりやりたくないではあるが、任務は、救出と継戦派の戦闘意欲を削ぐ事だ。
彼らの行動如何では、後々、艦爆や艦功の爆弾で、グレンドルス城をたたきのめす事になるだろう。
(だが、任務であれば、やらねばならない。それが軍人だ)
しかし、そのグレンドルス城も、今では継戦派の拠点となっている可能性もある。
もし、継戦派の拠点となっていれば、機動部隊の艦載機は容赦なしに爆弾や機銃弾を叩きこむだろう。
あまりやりたくないではあるが、任務は、救出と継戦派の戦闘意欲を削ぐ事だ。
彼らの行動如何では、後々、艦爆や艦功の爆弾で、グレンドルス城をたたきのめす事になるだろう。
(だが、任務であれば、やらねばならない。それが軍人だ)
15分後、ムーンライト7号機は、緊急の無電を母艦のラングレーに送信した。