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『あー、あー、うん。よし。放送を始めよう。』

二階に上がってすぐのことだった。移動中でなくて本当によかったと思う。
悪態をつきながらも名簿と地図、ペンを引っ張り出す。が……

『今回は少し趣向を変えようと思ってね』

と言った後に放送の主、荒木飛呂彦がマイク越しにも分かるほど大きく息を吸い込んだのを聞いてその手を止める。
そして……

『バトルロワイアルの生き残りを聞きたいかアァーーーーッ』

「はあァ!?」

思わず素っ頓狂な声をあげてしまった。一体なんだと言うのだろうか。
しかし相手がここで嘘をつく事に利はないと思う。とりあえず放送を聞こうとペンを固く握る。

『全生存者紹介!!

 ミスタ殺しは生きていた!! さらなる混沌を重ね波紋戦士が甦った!!!
 ジョジョ!! ジョナサン・ジョースターだァ――――!!!』

何とも無理のある放送である。下手な聞き方をしたら鼓膜をつぶされるかもしれない。
しかし気になったのはその姓。自分も知っている、会ったこともあるその姓。
ジョースターさんと同じ姓だけど、そう言おうとしてその口が止まる。放送はなお続いていたからだ。

『スタンドの扱いは既にこの俺が完成している!!
 イギリスの帝王ディオ・ブランドーだァ――――!!!

 現状把握しだい救いまくってやる!!
 英国紳士代表 ジョージ・ジョースター1世だァッ!!!』

 波紋の殴り合いならこの俺の腕がものを言う!!
 漫画家の洗脳 ヘブンズ・ドアーズ シーザー・アントニオ・ツェペリ!!!』

必死にペンを動かすものの……空いた口が塞がらない。
馬鹿げているのか本気なのか……。死者の紹介でない事も混乱を加速させていた。
当然と言えば当然だが、そんな彼を気遣う様子もなく無謀な放送は続く。

『真の支配を知らしめたい!! 柱の男 エシディシだァ!!!

 スタンドでは遠距離制覇だが説得なら全参加者がオレのものだ!!
 教皇の緑 花京院典明だ!!!

 誤解対策は完璧か!? 銀の戦車 ジャン・ピエール・ポルナレフ!!!!

 快楽殺人のベスト・パフォーマンスは鏡の中にある!!
 スタンド使いの鬼畜が来たッ J・ガイル!!!

 疑心暗鬼なら絶対に敗けん!!
 心理戦のスタンド見せたる ヘタレ兄貴 オインゴだ!!!』

この放送、中身は本当なのだろうか……?
だとしたらものすごい情報を流す可能性がある。
殺し合いを促進させるためだろうか?ならば自分の事はどう紹介される?まさかこの考えが読まれている可能性は……ッ?
嫌な汗をペンごと握りこみ、聞きとれる情報は可能な限りメモしていく

『ザ・ハンド(なんでもあり)ならこいつが怖い!!
 杜王町のピュア・ファイター 虹村億泰だ!!!

 少年ジャンプから人気漫画家が参戦だ!! ヘブンズドアー 岸辺露伴!!!

 ルールの無い恋愛がしたいからヤンデレ(病照娘)になったのだ!!
 女子高生の愛を見せてやる!!山岸由花子!!!

 めい土の土産に仇討ちとはよく言ったもの!!
 漆黒の意思が今 バトルロワイアルでバクハツする!! 杜王町の小学生 川尻早人だ―――!!!』

……どうだろうか。決して自分が不利になるような言葉はなかった、と思う。
吉良吉影は気付くだろうがまさか脅迫を考えている事までは思いつかないだろう……
少しだけ握りしめていた手が緩む。それでもそのペン先を止める事はまだ出来ない。

『水分のスタンドこそが地上最強の代名詞だ!!
 まさかこの外道が生きているとはッッ 片桐安十郎!!!

 生き残りたいからここまできたッ 本心は一切不明!!!!
 ニホンのギタリスト(スタンド)ファイター 音石明だ!!!!

 私はスタンド最強ではない生存への欲求で最強なのだ!!
 御存知殺人鬼 キラ・ヨシカゲ!!!』

ハッとして手が止まる。
これはもしかして……ものすごく良い放送かも知れないッ!
自分の手で仇を討つ事は限りなく不可能に近くなったが、ヤツの正体を参加者全員が知ったのだ。
口の端が少しだけ持ち上がる。メモを取る手も少し軽く感じてきた。

『スタンドの本場は今やイタリアにある!! 俺とゲームを止めるやつはいないのか!!
 ジョルノ・ジョバァーナ!!!

 ツヨォォォォォいッ説明不要!! ギャングの幹部!!! スティッキィ・フィンガーズ!!!
 ブローノ・ブチャラティだ!!!

 スタンドは実戦で使えてナンボのモン!!! 超戦闘用幽波紋!!
 イタリア・パッショーネからパンナコッタ・フーゴの登場だ!!!

 優勝はオレ達のもの 邪魔するやつは思いきり縮め思いきり握るだけ!!
 リトル・フィート暗殺チーム ホルマジオ

 自分を成長させに殺し合いへきたッ!!
 マンモーニ全スタンドチャンプ ペッシ!!!

 暗殺に更なる磨きをかけ“リーダー”リゾット・ネェロが帰ってきたァ!!!』

暗殺……そんなことを生業にしている人間も参加しているのか。
この場に放り込まれてから多くの人間に出会ったが、やはりどことなく信じられない。

『今の自分に帝王の資格はないッッ!! パッショーネ・ボス ディアボロ!!!

 空条の血の拳技が今ベールを脱ぐ!! アメリカから 空条徐倫だ!!!

 己の信念はどーしたッ 戦士の炎 未だ揺らぐッ!!
 治すも壊すも思いのまま!! フー・ファイターズだ!!!

 特に理由はないッ 分解が殺人なのは当たりまえ!!
 徐倫にはないしょだ!!! シャバの下開山!
 ナルシソ・アナスイがきてくれた―――!!!

 水族館で磨いた実践ヘタレ!!
 臆病者のグーグー・ドールズ グェスだ!!!

 生への執念だったらこの人を外せない!! 超A級逃走師 ドナテロ・ヴェルサスだ!!!』

 超一流先住民の超一流の疾走だ!! 生で拝んでオドロキやがれッ
 祖先の土地の砂男!! サンドマン!!!

 ロープアクションはこの男が完成させた!!
 連邦保安官の切り札!! マウンテン・ティムだ!!!

 公正なる果たし合いがやってきたッ
 どこへ行くンだッ 男の世界ッッ
 僕達は君を待っていたッッッ リンゴォ・ロードアゲインの登場だ――――――――ッ


 以上31名で漆黒の闇夜を戦っていただきますッッ』

どうやらこれで放送が終わったようだ。
ふぅ、と息をつく……つもりだったが、もうひとつだけやり残しがあった。

『ふゥ~~~。どうだった?なかなかイカしてたろう?
 じゃあこれから禁止エリアを言うから―――』



―――以下解説―――

◆yxYaCUyrzc氏が七匹の子ヤギで投下したおまけSSである。
第3回放送投下に合わせて執筆したもの。本人が「おまけで投下扱いはしない」と言っており、お蔵入りとなった。
元ネタはもちろん『グラップラー刃牙』シリーズの『全選手入場』から。
死亡者人数が32に達した時にも同様のパロがしたらばに投下されていた。

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最終更新:2010年10月12日 12:58