E-1エリア南部。
妖怪の山のふもとの一角に位置する石造りの洋館、『サンモリッツ廃ホテル』。
その一室で、赤づくめの少女……
岡崎夢美と、
紫色のロングヘアに寝間着のような服装の少女……
パチュリー・ノーレッジが、
椅子に腰掛け、ランタンの灯を挟んで話し合っていた。
何とも冴えない表情だった。
「やっぱりあの『見えない外壁』、破る方法は無いのかしらね?」
「軽く『魔法』を撃ちこんでみたけど、全く影響を受ける様子がなかったわね
私はあまり外を歩かないからよくわからないけど……
いつも幻想郷を囲っている『博麗大結界』とは全く別物って気がするわ」
「私の『科学力』の攻撃でも同じだったわ……それと、この『女教皇(ハイプリエステス)』でも」
そうつぶやいた夢美がブヨブヨした円盤を取り出して頭に差し込むと、テーブルの上に突如、
『両腕の生えた毛むくじゃらの顔面』とでも形容すべき物体が出現した。
「ちょっと、夢美?それ元々私の支給品なんだけど」
「良いじゃない、私に支給された『霧雨魔梨沙の箒』と交換ってことで
それにこの『女教皇(ハイプリエステス)』っていう、『スタンド』の一種だっけ?
これの特性はさっき見たでしょ?」
「……『鉱物』に由来する物体になら何にでも化けられるっていうアレね」
「そう、それよ。『刃物』や『ボウガン』はおろか、
『自動車』や『重機のアーム』にまで化けられるとは思わなかったわ。
……連続でそれに化けると流石にちょっと疲れるけど。
とにかく!鉱物、つまり、鉱石や石油を原料とする物……大抵の機械や工具に化けられるこのスタンドは
『自動車』や『重機』を見たことがないっていう貴女よりは、私の方が素敵に使いこなせるはずよ。
だから、コレは私の物!はい決定!」
「むきゅぅー……。納得いかないわね……。にしても……何なのかしらね、『スタンド』って。
白玉楼の庭師の『半霊』にも似ているような気がするんだけど……」
パチュリーはそう呟きながら目の前の『ハイプリエステス』に手を伸ばすが、
触れる事はできずに、すり抜けてしまう。
「やっぱり他の物体に化けていない時は『触れない』わ。
『幽霊』に触れた時みたいな『冷たさ』も感じない」
「でも、『スタンド』から他の物体を触れる事はできる、と」
「う、やめい、私のホッペに触んな!」
「おおー、やっぱり『スタンド』で触ってる感覚が私にも伝わるわ。
もっちもちのもち肌ねー。これも『魔法』の力なの?」
「こらっ、放せって!ああもう!引き剥がせない!
自分からは触れないのに向こうからは一方的に触れるって、反則じゃないの!」
「ほーれ、うりうりWRYYYY」
「MUKYUUUUUU!!」
「……とまあ、お遊びはこれくらいにして、と」
「ぜぇ、ぜぇっ……この……ぜんそく持ちをいじるんじゃ無いわよ……」
(あの『スタンド』とかいうの……こんど絶対直接グーで殴ってやるわ……)
「あの外壁、『いちごクロス』みたいな強力な攻撃なら、突破できないにしても
……ヒビを入れるとか、ちょっとぐらい振動させるとかできるのかも知れないけど」
「……だとすると、今度は別の問題が発生するわ」
「そこまでやったら、主催者の手によって直接私達の頭を爆破……してくるでしょうねぇ。
どこから見張られてるか、判ったもんじゃないし」
「まあ、参加者の誰かがこんな行動に出る事くらいは、あの二人の計算のうちなんでしょうけど」
「はあ……やっぱりこの頭の中の爆弾を何とかしなきゃダメよねぇ……」
「問題はそこなのよね……
あの二人が言ってた、『吸血鬼や柱の男、妖怪に蓬莱人』も例外でないって言葉が気になるわ。
『柱の男』とやらはともかく、吸血鬼……レミィが頭を吹っ飛ばされたぐらいで死ぬはずないもの」
「レミィって、アンタのお友達の吸血鬼の、レミリアちゃんね?
吸血鬼って、心臓に白木の杭を打ち込むくらいで殺せるんじゃなかった?」
「レミィは『コウモリ一匹分の肉片』からでも再生できるって言ってたわ。私は試したことはないけど。
とにかく、私達の頭に仕込まれているのはただの爆弾じゃない可能性が高いわ」
「あるいは、頭に仕込まれているのは本当にただの爆薬だけど、
レミリアってコの他、普段は並外れて頑丈なコたちが頭を爆破されただけで
死ぬように弱体化されているか、ね。
それはきっと、弾幕の破壊力が落ちたり、生身で飛べなくなったり、
私達の能力が低下している原因とも関係があるはずよ」
「……だとすれば、それは『呪い』や『封印』の類かも知れないわね」
「おおっ。流石魔法使い。そういう素敵なワードがしれっと出てくるか。それも実に興味深いわね」
「『外界』じゃぁ殆どインチキかおとぎ話の世界なんだっけ、そういうの
……けど、それも何か違う気がするのよね。
弾幕の威力が落ちてたり、ホウキ無しで飛べなくなってる以外は、
特に体調が悪いってわけじゃないし」
「魔法使いの貴女なら、そういうの分かるものなの?」
「全然。『呪い』とか『封印』っていっても千差万別だし。
今の段階じゃあ情報が少なすぎて何ともいえないわね。
貴女の身体も……特におかしい所とか無いでしょ」
「そうね……特に異常は感じないけど。
ねえ、パチュリー?……私ちょっと洗面所使ってくるわ」
「良いけど……水道が生きてるとは限らないわよ」
「違う。ちょっと脱いでチェックしてくるのよ」
「何を」
「身体に呪いの刻印なり御札なりが無いかを、よ」
「……無駄だと思うけど」
「やってみなきゃ分からないでしょ」
そう言い残すと、夢美はランタンと手鏡を持って客室備え付けの洗面所に入っていった。
ドア越しに、布が擦れて床に落ちる音と、それから「げぇっ、太った!?」という声が聞こえてきた。
しばらくすると浴室の戸が開き、すき間から夢美の手が覗いた。
「……夢美?その手招きは何よ」
「私の身体には特に変わった所は無かったわ。
……念のため、貴女の身体も調べるわよ」
「……自分でやる。あんたは出て」
「ちぇ~」
「服は着る!!」
数分後、再び服を着た夢美は不満そうな様子で洗面所から現れた。
夢美から手鏡を受け取ったパチュリーが入れ替わり、洗面所で服を脱いで身体のチェックを行ったが……
特段、身体に異常は無い様子だった。
「……やっぱり駄目だったわ」
「そうね。……魔法使いの外見って本当に人間と『どこも』変わらないのね」
「……ええ。こうなったら、永遠亭にでも行って身体の中を撮影してみるしか無いのかしらね……
……っておい、ちょっと待て。今、不自然な発言しなかったか、おい」
「不自然な発言?」
「人間と『どこも』変わらない、ってアンタ!さっき洗面所ノゾいてたでしょ!?」
「そんなことしないわよ……この手鏡、私が変身させた『女教皇』だから。
ノゾきなんかしなくても、スタンドの視覚で貴女の身体は隅々までチェック済み……
って、パチュリー!?そんな恐い顔して椅子を振り上げて、何をする気よ!?」
「…………………………」
「お、落ち着きなさい、パチュリー!『素敵』を数えて落ち着くの……」
ボ
カ
ッ
!!
ボ
カ
ッ
!!
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
「…………ごめんなさい」
岡崎夢美は、頭に生えた雪ダルマのようなたんこぶから『プスプス』と煙を上げながら、
パチュリーに深々を頭を下げていた。
「わか、ゴホッ、れば、ゲホッ、いい…ッ…のよッ」
そしてパチュリーは、急に暴れて舞い上がったホコリの直撃を喉に受け、
青息吐息の様相を呈していた。
廃ホテルの一室を気まずい空気が流れていた。
ろくに言葉を発することができずにむせ返る目の前の喘息患者に、私は何と声を掛ければ良いのか。
神経の図太さを誇る夢美もこれにはちょっとだけ、ほんのちょっとだけ反省していた。
舞い上がったホコリが収まり、パチュリーの息遣いがようやく落ち着き始めた所で
待ちかねたように、夢美が提案した。
「……パチュリー、一応、出来る範囲で体内も探ってみる?
この『女教皇』を小さなビー玉か何かに変えて飲み込めば、あとはスタンドの視覚で食道・胃腸の中を探れると思う」
「………………」
「まあ、体調も悪いみたいだし、今、無理にとは言わないわ……私から試してみる」
「いえ、私が先にやるわ……DISC、貸して……」
そう言ってパチュリーは夢美の額から引きぬいたDISCを自分の頭に押し込むと
現れたスタンドを小さなガラス球に変え、丸薬でも飲むかのように水と一緒にして飲み込んだ。
「パチュリー、どう?」
「ん?んー……真っ暗でよく分からない……ホタルじゃあるまいし、お腹の中に光が届くわけないじゃない。
うっかりしてた。ちょっと考えれば分かることだったわ」
「……あ!スタンドを豆電球に化けさせてみたら?知ってるでしょ、豆電球」
「……なるほど……あっ、視界が明るくなった。見える見える」
「…………!」
「何よ、夢美。……また、ヘンなこと考えてる?」
「パチュリー、今『胃』に入った所?」
「よく分かるわね」
「光が強すぎてパチュリーの身体から透けてる」
「なにそれ恥ずかしい……この強さならどう?」
「……見えない」
「何故ガッカリする」
「……それで、どう?何か分かりそう?」
「……うんにゃ、駄目ね。これといって何かされたような様子は無いわ」
「『出口』に着いたわ。……次、あんたの番よ」
と、パチュリーはDISCを夢美に渡した。
夢美はパチュリーと同じ手順で、スタンドの『胃カメラ』を水と一緒に口に含み、
「あ……!」
「何よ、パチュリー?」
「い、いや、洗わなくて良いのかな、って……」
「口に含んだこのタイミングで言う!?……うう、もう飲み込んじゃった……」
「……ごめん」
「まあ、一回解除した『スタンド』を再発動させてるから、汚れとかが残るわけじゃないんだけどぉー。
……単なる『気分の問題』なんだけどぉー」
「……ホントごめん」
その後、微妙に気まずい空気が流れる中、夢美の腸内検診もつつがなく進んだ。
「……で、夢美、どうだった?」
「大学の健康診断で見た映像と同じだった……お手上げね」
「やっぱり。
……ん?外界じゃ『女教皇』みたいな『スタンド』は珍しくないの?」
「いや、さっきも言ったけど『スタンド』なんて私の世界でも見たこと無いって。
……胃腸の中を撮影する機械ならあるけど」
「さっき見せてくれた『重機』や『自動車』といい、やっぱり外界の『魔法』って進んでるのね」
「『魔法』じゃない。……『科学』よ」
「呼び名だけで、本質は大して変わりないように思えるけど」
「違うのよ……絶対に違う」
「そうなの?……そんな怖い顔して否定しなくても」
「……それで夢美、これからどうしようか?」
「なんというか、爆弾みたいな
実体のあるモノが埋め込まれているって線は限りなく薄くなってきたわね。
……私達の身体、外科手術の跡はどこにも無かったし」
「となると、私達を縛っているのはやっぱり『呪い』か……あるいは『スタンド』あるいは『三尸』みたいな
霊的な存在なのかも。それだったら、肉体をすり抜けて入り込む事も可能ね」
「『サンシ』……?ああ、人の体内に棲んでお釈迦様に告げ口に行く虫のことね
……まあ何が埋め込まれているにせよ、お腹でも頭でも『切って』みないと分からんか」
「軽く言うわね……誰を『切る』のよ?」
「死体を拾ってくるか……あるいは生きてるサンプルが必要なら、
殺し合いに乗って襲いかかってきた奴を生け捕りにして……」
「……怖いわー、人間怖いわー」
「襲ってこない奴は『泣く泣く』見逃すって言ってるのよ、とっても有情じゃない」
「……『泣く泣く』なのね。……で、私達の身体に本当に何もされていないとしたら……」
「この会場……『幻想郷』全体に、私達の力を制限して頭を爆発させるような『何か』が存在する
……ってことかしらね?」
「……だとすればその『何か』は、私達を閉じ込めてる『外壁』とセットの可能性が高いわね」
「で、その『外壁』の元々の要と言えば……」
「「F-5エリア、博麗神社」」
「どう考えても怪しいわ」
「真っ先に禁止エリアに指定されてる場所だし。
……元々幻想郷に迷い込んだ人はここから外界に出ることになってるし」
「禁止エリア、10分間なら頭を爆発させられずに入っていられるわ。一回調べてみる?
F-4エリアの南の端からなら……この地図だと、400m程の距離ね。
この『魔梨沙の箒』に乗って全速力で往復すれば、数分くらいは調べる時間があると思う」
「主催者が直接私達に手を下さなければ、の話だけどね。
……夢美、博麗神社を調べるのはまだ危険すぎるわ。」
「……そうね。……だけどこの場合、私達が『危険』だと感じる行為は、
それだけ『真実』に近いとも言えるわ。
いずれあいつらの目をかいくぐって行動を起こさないといけない時が来る」
「……うん。まず、あいつらが私達をどうやって見張っているかも知らないと」
「それと、もう一つ!……会場の外部と連絡を取ることはできないかしら?
さっきの私達みたいに弾幕とかで派手にドンパチやってたら、
ここがいくら山奥でも誰か気づくと思うんだけど」
「うーん、元々幻想郷を囲っていた博麗大結界が外から見えないようになっていたから
可能性はかなり低いと思うんだけど……」
「それでも、何らかの方法で外部に信号を送れないか試してみましょうよ。
私なんて仮にも『教授』って身分で通ってる訳だし、急にいなくなって連絡がとれなくなったら
捜索願くらいは出てるはずだわ。
……幻想郷の外の『私の世界』に連絡が取れれば、きっとちゆりが助けに来てくれるはず」
「ちゆり?」
「私の助手よ。……『船』の操縦、少しは上達してくれてるといいんだけど」
「助手か……。そういえば、小悪魔に妹様は、どこに行ったのかしらね?
名簿には名前が無いし……」
「貴女の助手だっていうコと、レミリアちゃんの妹さんのフランドールちゃんね?」
「ええ。この殺し合いに参加させられなくて幸運と言うべきか、それとも……」
「……ねえ、パチュリー?その二人も、紅魔館の家族、つまり幻想郷の住民なのよね?」
「『この会場にいないということは、彼女たちは既に……』なんて、そういうこと言うのは止してよね。
……今は、私達が生き残ることだけを考えなきゃいけないのよ」
「そうじゃないわ。この会場は、本当に私や貴女の知る『幻想郷』なのかしら?
……なんて事を思っただけよ」
「……確かに、私達が今いる石造りの建物や、他にも幻想郷に無かった建物がいくつも配置されてるわね。
けど、建物がいきなり現れること自体は、幻想郷じゃそこまで珍しいことじゃないわ。
あの二人なら、建物をいくつも呼び出すことも不可能じゃない……とは思うけど」
「うーん、そこじゃなくて……『ポンペイ』とか、『コロッセオ』とか、
イタリアの有名な遺跡がそこかしこに配置されてるのは気になるけど……。
ほら、なんというか……そう、静かすぎるのよ!
こんな自然豊かな山奥なのに、鳥や虫の鳴き声も聞こえないなんて、不自然じゃないかしら?」
「そういえば……そうね。私達以外の気配は全く感じなかったわ。私達が元々いた『幻想郷』から、
参加者以外の人妖はおろか、小さな虫まで含む全ての動物を排除し尽くすのは確かに考えにくいわね……。
……するとこの会場は、仙人が新しく創りだした異空間……『仙界』に似た空間なのかしら」
「仙人!?……知り合いにいるの?仙人ってそんなことができるの?」
「あー、もう、あんたに新しい情報教えるとすぐにコレだから……。
直接会ったことはないけど、
豊聡耳神子と、
霍青娥の二人が仙人っていう存在よ。
元ある空間を広げることなら、うちの咲夜とか、鈴仙っていう妖怪兎にもできるけどね。
……あとは、スキマ妖怪の
八雲紫かしらね、異空間を創るなんて芸当ができそうなのは。
もしここが造られた空間だとしたら、あの主催者が仙人やスキマ妖怪に似た能力を持っているか、
……参加者でないもう一人の仙人、物部布都に無理やり協力させているか、かしら」
「あるいは『スタンド』能力の一種って可能性もあるけどね。
……とにかく、行動方針はちょっとだけ見えてきた気がするわ」
「ええ。人探しね。
会場の『外壁』のことについて調べるなら、霊夢か八雲紫、あるいは
八雲藍を連れて行くといいと思う。
博麗神社について調べる場合も、彼女たちを連れて行くべきね。
橙って子はちょっと頼りないかしら。
あとは神子に聞けば、この会場が仙界かどうかの判別はできるかもしれない」
「青娥って人には会わないの?」
「なんというか……あの女からは余り良い噂を聞かないのよね。
……夢美と同じで、自分の好奇心の探求のためには手段を選ばないところがあるみたい。
貴女が『人間』を辞めたら、あんな感じになるんじゃないかしら。
とにかく、彼女には近づかない方が良いわ」
「……さらっと酷い事を」
「それから体内を調べるなら、永琳に協力を仰ぐと良いわね。
本業は薬師だけど、医者としての腕前も確かだって聞くわ。
スキマ妖怪の紫なら、スキマを使って体内も簡単に調べられそうだけど」
「貴女、家から余り出ないっていう割には結構顔が広いのね」
「咲夜やレミィからの伝聞だったり、新聞とかで読んで知ってるってだけで、
面識のある人ばかりってわけじゃないけど。まあ名簿の半分以上は顔と名前が一致するわね」
「ふーん。……まあ良いわ。そろそろ出発しましょうか。
……魔法についての話があまりできなかったのは残念だけど」
「待って。……まだ、メモが取れてない」
「貴女もマメねぇ」
「……私達も、いつ襲われて死ぬか分からないもの。……記録だけは残しておかなきゃ」
「簡単に死んでやる気は無いけどね、私も……貴女も」
「私も?」
「ええ、私の理論を認めてくれなかった学会に叩きつけてやるための、貴重なサンプルだもの」
「結局そういう扱いなのね、私……」
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「……『スタンド』に、『幻想郷』、そして『結界』……か」
サンモリッツ廃ホテル屋外、パチュリーと夢美が情報交換を行っていた部屋の外壁に、
長髪の大男がベッタリと張り付いていた。
参加者の一人である闇の一族・
カーズが
夢美とパチュリーのやりとりの一部始終を耳にしていたのだ。
「二人の反応が遠ざかっていく……部屋を出て、ホテルを離れるつもりか……」
闇の一族の並外れて鋭敏な触覚をもって、
石造りの壁越しに二人の体温を感知するカーズ。
「このカーズには全く気づいていない様子。不意を討てば容易く仕留められるだろうが……」
「……ここは敢えて見逃す」
カーズの選択は、このまたとない殺害のチャンスを敢えて手放すことだった。
「あの二人は、今はまだ泳がせておいたほうが得策だろうな。
……小柄な方、『パチュリー』とやらが、メモを取っていた。奴らの得た情報は後から『回収』できる」
先ほど二名の参加者を迷わず殺害していたカーズが、この様な判断を取ったのにはもちろん理由がある。
「先ほどこのカーズの身体を内部までくまなく調べてみたが……特に異常を見つけることはできなかった。
頭蓋骨も切り開いてみたが……外観では何も判らなかった。
脳の内部は……忌々しい、『脳を破壊すると柱の男でも死ぬ』らしい、ロクに手を付けられなかった。
脳の仕組みについては、地上の誰よりも詳しいこのカーズが、だ……!」
要するに、最終的に主催者の2名に復讐する為に必要な……
主催者がスイッチを握っているという脳内の爆弾の解除方法は、カーズにも判らないのであった。
「……虫ケラと侮っていた人間どもが、
2000年の間に遂に我らを完全に遊びの駒にする力を得るとはな……。
案外、『
ワムウ』や『
エシディシ』も、本当に蘇っているのかも知れん。
フフ……探しまわってみるのも一興か。」
「ともかく、あの夢美にパチュリーとかいう小娘共はこのカーズも知らぬ知識を持っている。
『スタンドDISC』とやらを奪えぬのは少々惜しいが……せいぜい働いてもらうことにするか。
あとは、このカーズが直接『紅魔館』とやらに赴けば更に情報を得られるかも知れんな……。
参加者の脳内を生きたまま調べてみる必要もある……もし調べることができたら、
一度直接情報交換を持ちかけてみるか……?」
こうしてカーズが今後の行動方針を思案していると、大きな扉の開く音が聞こえた。
ホテルの玄関から姿を現す二人。
「期待しているぞ……パチュリー・ノーレッジ、
そして、人間の『異端者』・岡崎夢美よ」
ホテルの正門をくぐる彼女たちの背中を見送りながら、カーズはそう呟いていた。
【E-1 サンモリッツ廃ホテル正門/黎明】
【パチュリー・ノーレッジ@東方紅魔郷】
「状態」:疲労(小)、魔力消費(小)、頬に弾幕による掠り傷(応急処置済み)
「装備」:なし
「道具」:
霧雨魔理沙の箒、基本支給品、不明支給品0~1(現実出典・確認済み)、考察メモ
「思考・状況」
基本行動方針:紅魔館のみんなとバトルロワイヤルからの脱出、打破を目指す。
1:能力制限と爆弾の解除方法、会場からの脱出の方法を探す。
2:紅魔館のみんなとの再会を目指す。
3:岡崎夢美の知識に興味。
「備考」
※参戦時期は少なくとも神霊廟以降です。
※喘息の状態はいつもどおりです。
【岡崎夢美@東方夢時空】
「状態」:疲労(小)、科学力消費(中)
「装備」:スタンドDISC『女教皇(ハイプリエステス)』
「道具」:基本支給品、不明支給品0~1(現実出典・確認済み)
「思考・状況」
基本行動方針:『素敵』ではないバトルロワイヤルを打破し、自分の世界に帰ったらミミちゃんによる鉄槌を下す。
パチュリーを自分の世界へお持ち帰りする。
1:能力制限と爆弾の解除方法、会場からの脱出の方法、外部と連絡を取る方法を探す。
2:パチュリーから魔法を教わり、魔法を習得したい。
3:パチュリーから話を聞いた神や妖怪に興味。
4:霧雨魔理沙、
博麗霊夢って、あっちの世界で会った奴だったっけ?
5:私の大学の学生に
宇佐見蓮子、
マエリベリー・ハーンっていたかしら?
「備考」
※参戦時期は東方夢時空終了後にもう一度学会に発表して、つまみ出された直後です。
※霧雨魔理沙、博麗霊夢に関しての記憶が少々曖昧になっています、きっかけがあれば何か思い出すかもしれません。
※宇佐見蓮子、マエリベリー・ハーンとの面識はあるかもしれません。
※岡崎夢美はただの人間ですが、本人曰く『科学力』又は『疑似魔法』を使うことで弾幕を生み出すことができます。
【E-1 サンモリッツ廃ホテル敷地内/黎明】
【カーズ@第2部 戦闘潮流】
[状態]:疲労(小)
[装備]:狙撃銃の予備弾薬(7発)
[道具]:基本支給品×3
[思考・状況]
基本行動方針:生き残る。最終的に荒木と太田を始末。
1:どんな手を使ってでも勝ち残る。
2:この空間及び主催者に関しての情報を集める。そのために、夢美とパチュリーはしばらく泳がせておく。
時期が来たら、パチュリーの持っているであろうメモを『回収』する。
3:ワムウとエシディシ、それにあのシーザーという小僧の名が何故記載されている…?
主催者の力をもってすれば死者の蘇生も可能ということか?
4:魔法等に関する知識を得たい。『紅魔館』に行けば資料が見つかるだろうか。
5:生きた参加者の脳を解剖して、分析してみたい。
[備考]
※参戦時期はワムウが風になった直後です。
※ワムウとエシディシ、シーザーの生存に関しては半信半疑です。
※
ナズーリンと
タルカスのデイパックはカーズに回収されました。
※彼がどこへ向かうかは後の書き手さんにお任せします。
支給品紹介
<スタンドDISC『ハイプリエステス』@ジョジョ 第3部>
【破壊力:C/スピード:B/射程距離:A(200m超)→B(20~30m程度)/持続力:A/精密動作性:D/成長性:D】
パチュリー・ノーレッジに支給。
アフリカ原住民風マスクのような毛むくじゃらの顔面に、両腕が生えたようなデザインのスタンド。
鉱物に由来する物体、金属・ガラス・プラスチック等に化ける能力を持つ。
作中ではコーヒーカップ、カミソリ、潜水艦の計器、照明器具、水中銃などに化けており、
一旦化けてしまうと『スタープラチナ』の視力でも判別は困難。
本体から離れた状態では、鋼鉄を切り裂く両手のツメで攻撃する。
本体から数メートルの距離に近づくとスタンドパワーが増し、
人間を何人も丸呑みする巨大な岩の顔面にさえ変身可能。
格闘ゲーム『未来への遺産』では、自動車、重機、鉄骨、回転ノコギリなどに変身して攻撃する姿も見られる。
このバトルロワイアルでは、原作で200mを超えていた射程距離が20~30m程度まで低下させられている。
以下の問題点については後の書き手さんにお任せします。
- 物体に化けた『ハイプリエステス』は、スタンド以外で破壊可能か?
(アブドゥルがハンドルに化けた『ハイプリエステス』を素手で触れているシーン等があるため、接触は可能)
- 物体に化けた『ハイプリエステス』が、本体の射程外に移動させられた際の扱い
(能力が強制的に解除させられて、姿を消すのか?
本体からの操作を受け付けなくなるだけで、物体は残るのか?など)
最終更新:2014年07月13日 00:13