2011/12/05ゼミ個人発表
富士山の価値 発表者：梶原美沙
富士山の価値 発表者：梶原美沙
０．はじめに
前回の発表では、富士山を世界遺産の登録基準に照らし合わせながら、これを満たす可能性について検討した。しかし登録基準において規定される価値は限定的であり、富士山の価値を余すことなくここに見出すことは難しいと感じた。そこで、いきなり世界遺産としての価値に当てはめようとするのではなく、まずは身近なところから富士山の価値を問い直してみることにした。
前回の発表では、富士山を世界遺産の登録基準に照らし合わせながら、これを満たす可能性について検討した。しかし登録基準において規定される価値は限定的であり、富士山の価値を余すことなくここに見出すことは難しいと感じた。そこで、いきなり世界遺産としての価値に当てはめようとするのではなく、まずは身近なところから富士山の価値を問い直してみることにした。
１．私にとっての富士山の価値
(1) 姿の美しさ、雄大さ
富士山のどこが好きかと問われれば、真っ先にその姿の美しさ、雄大さを挙げる。富士山の他にも山はたくさんあるが、富士山の存在感は群を抜いている。他の山とは比べものにならないほどの圧倒的な高さを誇り、左右対称になだらかな裾野を広げたシルエットをもつ富士山は、堂々としていて威厳がある。その姿に神秘性を感じることもある。
(2) 変化に富んだ表情
いくら姿かたちが美しくても、ずっと見ていれば飽きてしまうこともあるだろう。しかし富士山は変化に富んでおり、時間帯によって、日によって、季節によって、場所によって、多彩な表情を見せてくれる。だから毎日のように眺めていても全く飽きることがない。飽きるどころか、ますます富士山から目が離せなくなるのである。
日ごとの変化
富士山の周辺を取り巻く雲は流れがはやく、この雲の動きによって富士山の表情はころころと変わる。また、これは直近の天気を知る手掛かりになる。富士山が笠雲をかぶれば雨が降ると言われており、実際翌日の天気は崩れることが多い。「ひとつ笠は雨、二重笠は風雨」という言葉もある。さらに笠雲に加えて吊るし雲がかかっているとほぼ間違いなく雨が降る。
季節ごとの変化
初冠雪によって秋の気配を感じ、雪化粧が濃くなるにつれて冬仕度を始め、やがて白が淡くなると同時に農鳥に春の訪れを告げられ、残雪の消失から登山シーズンの到来を知り、それから数か月の登山シーズンが続き、雪をかぶった富士山が恋しくなる頃に再び秋がやって来る。
→様々な表情を見せ感動を与えてくれると同時に、天気や季節の変化を教えてくれる。
(3) 自然との触れ合いの場として
剣丸尾溶岩流跡のアカマツ林・・・春には山菜、秋にはキノコを採りにいく。
青木ヶ原樹海・・・地面が固いため樹木の根が浮いていて面白い様相をしている。溶岩樹型をはじめとする独特の溶岩地形が数多く見られる。夏に風穴に入ると大変涼しい。
大室山・・・ブナ、イヌブナが優占する明るい林。樹海と見比べるとその差が歴然で、その境界がはっきりと見てとれることからも溶岩の破壊力がうかがえる。
富士登山・・・夏に登山する。雲海や影富士、御来光など素晴らしい景色を見られる。
富士五湖・・・湖畔を散歩したり、ボートに乗ったり、釣りをしたりする。
→こうした経験は楽しさ、面白さ、癒し、安らぎ、満足感などを与えてくれる。また、繰り返しの中にも常に新しい発見があり、多くのことを学ぶ絶好の機会になる。
(4) 地域にもたらす経済的な効果
富士山やその周辺の富士山麓が観光地や避暑地として栄えてきたのは、そこに富士山があったからである。毎年多くの観光客が富士山を目当てに訪れ、地元のホテルや旅館に宿泊する。標高約1000メートルの富士山麓の冷涼な気候に惹かれて別荘を購入する人もいる。さらに大学の宿泊施設も数多くあり、夏季休暇の間にはしばしばサークルやゼミ等で利用される。このように富士山があるからこそ外部からたくさんの人が訪れるのである。これが地域にもたらす経済的な効果は計り知れない。
(5)愛着記憶
(1)～(4)で挙げたことは確かに私が富士山の価値として見出すものであるが、私が富士山を好きな理由とするにはどれも少し弱い気がする。結局のところ、私が富士山を好ましいと感じる最大の理由は、(1)～(4)を含めた日常生活における富士山との関わりの中で愛着が生まれ、これが蓄積されてきたからである。他でもない富士山麓で生まれ、富士山麓で育ったという事実が、富士山への愛着の源であり、それが私自身のアイデンティティの形成に関わっているのだと思う。富士山やそれを取り巻く自然環境があったからこそ、こうして今の自分があるのだと感じる。
(1) 姿の美しさ、雄大さ
富士山のどこが好きかと問われれば、真っ先にその姿の美しさ、雄大さを挙げる。富士山の他にも山はたくさんあるが、富士山の存在感は群を抜いている。他の山とは比べものにならないほどの圧倒的な高さを誇り、左右対称になだらかな裾野を広げたシルエットをもつ富士山は、堂々としていて威厳がある。その姿に神秘性を感じることもある。
(2) 変化に富んだ表情
いくら姿かたちが美しくても、ずっと見ていれば飽きてしまうこともあるだろう。しかし富士山は変化に富んでおり、時間帯によって、日によって、季節によって、場所によって、多彩な表情を見せてくれる。だから毎日のように眺めていても全く飽きることがない。飽きるどころか、ますます富士山から目が離せなくなるのである。
日ごとの変化
富士山の周辺を取り巻く雲は流れがはやく、この雲の動きによって富士山の表情はころころと変わる。また、これは直近の天気を知る手掛かりになる。富士山が笠雲をかぶれば雨が降ると言われており、実際翌日の天気は崩れることが多い。「ひとつ笠は雨、二重笠は風雨」という言葉もある。さらに笠雲に加えて吊るし雲がかかっているとほぼ間違いなく雨が降る。
季節ごとの変化
初冠雪によって秋の気配を感じ、雪化粧が濃くなるにつれて冬仕度を始め、やがて白が淡くなると同時に農鳥に春の訪れを告げられ、残雪の消失から登山シーズンの到来を知り、それから数か月の登山シーズンが続き、雪をかぶった富士山が恋しくなる頃に再び秋がやって来る。
→様々な表情を見せ感動を与えてくれると同時に、天気や季節の変化を教えてくれる。
(3) 自然との触れ合いの場として
剣丸尾溶岩流跡のアカマツ林・・・春には山菜、秋にはキノコを採りにいく。
青木ヶ原樹海・・・地面が固いため樹木の根が浮いていて面白い様相をしている。溶岩樹型をはじめとする独特の溶岩地形が数多く見られる。夏に風穴に入ると大変涼しい。
大室山・・・ブナ、イヌブナが優占する明るい林。樹海と見比べるとその差が歴然で、その境界がはっきりと見てとれることからも溶岩の破壊力がうかがえる。
富士登山・・・夏に登山する。雲海や影富士、御来光など素晴らしい景色を見られる。
富士五湖・・・湖畔を散歩したり、ボートに乗ったり、釣りをしたりする。
→こうした経験は楽しさ、面白さ、癒し、安らぎ、満足感などを与えてくれる。また、繰り返しの中にも常に新しい発見があり、多くのことを学ぶ絶好の機会になる。
(4) 地域にもたらす経済的な効果
富士山やその周辺の富士山麓が観光地や避暑地として栄えてきたのは、そこに富士山があったからである。毎年多くの観光客が富士山を目当てに訪れ、地元のホテルや旅館に宿泊する。標高約1000メートルの富士山麓の冷涼な気候に惹かれて別荘を購入する人もいる。さらに大学の宿泊施設も数多くあり、夏季休暇の間にはしばしばサークルやゼミ等で利用される。このように富士山があるからこそ外部からたくさんの人が訪れるのである。これが地域にもたらす経済的な効果は計り知れない。
(5)愛着記憶
(1)～(4)で挙げたことは確かに私が富士山の価値として見出すものであるが、私が富士山を好きな理由とするにはどれも少し弱い気がする。結局のところ、私が富士山を好ましいと感じる最大の理由は、(1)～(4)を含めた日常生活における富士山との関わりの中で愛着が生まれ、これが蓄積されてきたからである。他でもない富士山麓で生まれ、富士山麓で育ったという事実が、富士山への愛着の源であり、それが私自身のアイデンティティの形成に関わっているのだと思う。富士山やそれを取り巻く自然環境があったからこそ、こうして今の自分があるのだと感じる。
２．山梨県にとっての富士山の価値
富士山総合環境保全対策基本方針(平成10年3月～)
「私たちの誇る富士山の自然と恵みを次代に継承するために」
県が取り組む富士山の環境保全施策の方向性を示すもの
地元関係市町村などとの連携・協調した展開により、効果的・一体的な推進を図るもの
県民や事業者、さらに富士山に関心を持つ全国の人々に対して、保全活動への積極的な参加を求めるもの
国に対して要望的な性格を有するもの
山梨県は「自然、景観、歴史・文化、社会経済」の4つの観点から富士山の多面的な価値を守り、これに基づいて取り組み方針を示し、環境保全の推進を図るとしている。
豊かな自然環境の保全（自然的価値）
対象：青木ヶ原の原生林、植物の垂直分布、特異な火山性地形、豊富な地下水など
広大な地域に凝縮する様々な自然。
地域の広大性、標高差などによる自然特性に着目し、3つの地域に区分。
1) 山頂～富士山五合目
成層火山として核心的な火山景観を表す地域。安全対策を除きそのままでの保全が必要。
崩落防止等の安全対策の推進。谷地形の進行による景観問題への対処。
2) 富士山五合目～富士五湖に至る山麓
自然の豊かさを生み出している地域。公益的機能を高度に発揮できる森づくりが必要。
動植物の保護。活力ある森林の整備。啓発・監視。調査・研究の推進。
3) 富士五湖周辺
生活の場として利用されている地域。自然を大切にした美しい地域づくりの推進が必要。
水質保全の推進。美しい水辺空間の創出。地下水の保全。
美しい景観の保全と創造（景観的価値）
対象：裾野の広い美しい円錐形の山容。季節や時間により変化する感動的な景観。
地域振興を図りつつ、自然と調和した地域らしさを表すような景観づくりが必要。
ビューポイントの整備。建築物の形状や色彩、広告物･案内板の整備。樹高配慮。
心豊かな文化の育み（歴史･文化的価値）
対象：山岳信仰などの歴史や伝統的文化。絵画や文学などの芸術文化。
富士山の歴史･文化を保護･継承するとともに、新たな文化の形成に努めることが必要。
伝統芸能や文化財の保護。継承活動の支援。研究、芸術、交流活動の推進。
環境保全と調和した富士山の活用（社会経済的価値）
対象：地域社会の振興の基盤である住民生活や観光産業、企業活動、研究機関等。
以下の2つの観点から、富士山を活用した富士山と人との共生が求められる。
1) 環境に配慮した地域の振興
豊かな自然や美しい景観がベースになって地域振興が図られることを認識した上で、産業、文化、教育など様々な分野で潤いのある地域づくりを目指した富士山の活用が必要。
計画的な土地利用の推進。特性を生かした地域の整備。環境に配慮した観光の推進。
利用マナーの向上。快適な交通の確保。
2) 情報の発信と交流の推進
富士山のもつシンボル性や影響力を生かし、幅広い環境保全の活動に発展するような情報発信と交流の拡大が必要。
富士山環境教育の情報発信。交流の推進。これらの拠点機能の整備。
富士山総合環境保全対策基本方針(平成10年3月～)
「私たちの誇る富士山の自然と恵みを次代に継承するために」
県が取り組む富士山の環境保全施策の方向性を示すもの
地元関係市町村などとの連携・協調した展開により、効果的・一体的な推進を図るもの
県民や事業者、さらに富士山に関心を持つ全国の人々に対して、保全活動への積極的な参加を求めるもの
国に対して要望的な性格を有するもの
山梨県は「自然、景観、歴史・文化、社会経済」の4つの観点から富士山の多面的な価値を守り、これに基づいて取り組み方針を示し、環境保全の推進を図るとしている。
豊かな自然環境の保全（自然的価値）
対象：青木ヶ原の原生林、植物の垂直分布、特異な火山性地形、豊富な地下水など
広大な地域に凝縮する様々な自然。
地域の広大性、標高差などによる自然特性に着目し、3つの地域に区分。
1) 山頂～富士山五合目
成層火山として核心的な火山景観を表す地域。安全対策を除きそのままでの保全が必要。
崩落防止等の安全対策の推進。谷地形の進行による景観問題への対処。
2) 富士山五合目～富士五湖に至る山麓
自然の豊かさを生み出している地域。公益的機能を高度に発揮できる森づくりが必要。
動植物の保護。活力ある森林の整備。啓発・監視。調査・研究の推進。
3) 富士五湖周辺
生活の場として利用されている地域。自然を大切にした美しい地域づくりの推進が必要。
水質保全の推進。美しい水辺空間の創出。地下水の保全。
美しい景観の保全と創造（景観的価値）
対象：裾野の広い美しい円錐形の山容。季節や時間により変化する感動的な景観。
地域振興を図りつつ、自然と調和した地域らしさを表すような景観づくりが必要。
ビューポイントの整備。建築物の形状や色彩、広告物･案内板の整備。樹高配慮。
心豊かな文化の育み（歴史･文化的価値）
対象：山岳信仰などの歴史や伝統的文化。絵画や文学などの芸術文化。
富士山の歴史･文化を保護･継承するとともに、新たな文化の形成に努めることが必要。
伝統芸能や文化財の保護。継承活動の支援。研究、芸術、交流活動の推進。
環境保全と調和した富士山の活用（社会経済的価値）
対象：地域社会の振興の基盤である住民生活や観光産業、企業活動、研究機関等。
以下の2つの観点から、富士山を活用した富士山と人との共生が求められる。
1) 環境に配慮した地域の振興
豊かな自然や美しい景観がベースになって地域振興が図られることを認識した上で、産業、文化、教育など様々な分野で潤いのある地域づくりを目指した富士山の活用が必要。
計画的な土地利用の推進。特性を生かした地域の整備。環境に配慮した観光の推進。
利用マナーの向上。快適な交通の確保。
2) 情報の発信と交流の推進
富士山のもつシンボル性や影響力を生かし、幅広い環境保全の活動に発展するような情報発信と交流の拡大が必要。
富士山環境教育の情報発信。交流の推進。これらの拠点機能の整備。
３．世界遺産登録を目指す上での富士山の価値
富士山は日本の世界遺産文化暫定リストに追加記載された。(平成19年1月23日)
両県合同会議が提出した暫定リスト素案に対する文化庁の審議結果より抜粋
富士山は一国の文化の基層を成す「名山」として世界的に著名であり、日本の最高峰を誇る秀麗な成層火山であるのみならず、信仰と芸術・文学の諸活動に関連する文化的景観として、顕著な普遍的価値を持つ可能性は高い。また、本資産は、日本の世界文化遺産及び日本の世界遺産暫定一覧表に記載された文化資産には未だ見られない分野の文化資産である。したがって、我が国の世界遺産暫定一覧表に記載することが適当と判断される。
→富士山は「顕著な普遍的価値を有する出来事（行事）、生きた伝統、思想、信仰、芸術的作品、あるいは 文学的作品と直接または実質的関連がある。」という6番目の登録基準を満たすものとして世界文化遺産への登録を目指している。
この基準は他の基準と合わせて用いられることが望ましいとされているが、これだけしか満たさなくても登録される可能性はあるのだろうか。
セネガルの「ゴレ島」、カナダの「ランス･オ･メドー国定史跡」「ヘッド‐スマッシュト‐イン・バッファロー・ジャンプ」、ポーランドの「アウシュビッツ･ビルケナウ ナチスドイツの強制絶滅収容所」、ガーナの「ヴォルタ州、グレーター・アクラ州、セントラル州、ウェスタン州の城塞群」、アメリカの「プエルト・リコのラ・フォルタレサとサン・ファン国定史跡」、ブルガリアの「リラ修道院」、日本の「原爆ドーム」(1996)、ボスニア･ヘルツェコビナの「モルタル旧市街地の古橋地区」、モーリシャスの「アプラガシ･ヴァート」の10件の文化遺産が登録されている。ちなみに2011年現在の世界遺産総数は936件うち文化遺産は725件である。
→富士山は日本の世界遺産暫定リストに載っている他の遺産ないし既登録の遺産と分野が異なることが高く評価されている。
文化庁は、暫定リスト記載に至らなかった候補に対しては「新規の登録遺産数を抑制しようとの最近の世界遺産委員会の傾向に鑑み、既登録の文化遺産との統合又は再整理の視点を十分視野に入れ、資産構成について検討することが必要」であるとし、主題の類似する遺産候補ないし既存の遺産との比較検討を行うよう指示している。
～感想～
自分にとっての富士山の価値は、山梨県にとっての富士山の価値とかぶる部分が多かった。一方で世界遺産登録を目指す上での富士山の価値は大切なものが抜けているように感じた。世界遺産の登録基準においては、芸術や文学、信仰に関連することは重要な価値とみなされる。けれども私にとっては、絵画や文学作品に描かれる富士山よりも生活の中に実物として存在する富士山の方がはるかに大きな価値をもつ。世界遺産の登録を目指すためには相対的にすぐれた価値を証明しなくてはならないので仕方ないのかもしれないが、この点にギャップを感じた。
参考HP
「富士山を世界文化遺産に」富士山世界遺産登録推進両県合同会議 (2011.11.22取得)
http://www.fujisan-3776.jp/index.html
「世界遺産暫定一覧表に追加記載することが適当とされた文化資産」
文化審議会文化財分科会世界文化遺産特別委員会 (2011.11.22取得)
http://bunka.nii.ac.jp/jp/world/docs/14_attach4.pdf
「富士山総合環境保全対策基本方針」山梨県 (2011.11.26取得)
http://www.yamanashi-kankou.jp/fujisan/mamoro/documents/cherter.pdf
「社団法人日本ユネスコ協会連盟」社団法人日本ユネスコ協会連盟 (2011.12.1取得)
http://www.unesco.or.jp/contents/isan/list.html
富士山は日本の世界遺産文化暫定リストに追加記載された。(平成19年1月23日)
両県合同会議が提出した暫定リスト素案に対する文化庁の審議結果より抜粋
富士山は一国の文化の基層を成す「名山」として世界的に著名であり、日本の最高峰を誇る秀麗な成層火山であるのみならず、信仰と芸術・文学の諸活動に関連する文化的景観として、顕著な普遍的価値を持つ可能性は高い。また、本資産は、日本の世界文化遺産及び日本の世界遺産暫定一覧表に記載された文化資産には未だ見られない分野の文化資産である。したがって、我が国の世界遺産暫定一覧表に記載することが適当と判断される。
→富士山は「顕著な普遍的価値を有する出来事（行事）、生きた伝統、思想、信仰、芸術的作品、あるいは 文学的作品と直接または実質的関連がある。」という6番目の登録基準を満たすものとして世界文化遺産への登録を目指している。
この基準は他の基準と合わせて用いられることが望ましいとされているが、これだけしか満たさなくても登録される可能性はあるのだろうか。
セネガルの「ゴレ島」、カナダの「ランス･オ･メドー国定史跡」「ヘッド‐スマッシュト‐イン・バッファロー・ジャンプ」、ポーランドの「アウシュビッツ･ビルケナウ ナチスドイツの強制絶滅収容所」、ガーナの「ヴォルタ州、グレーター・アクラ州、セントラル州、ウェスタン州の城塞群」、アメリカの「プエルト・リコのラ・フォルタレサとサン・ファン国定史跡」、ブルガリアの「リラ修道院」、日本の「原爆ドーム」(1996)、ボスニア･ヘルツェコビナの「モルタル旧市街地の古橋地区」、モーリシャスの「アプラガシ･ヴァート」の10件の文化遺産が登録されている。ちなみに2011年現在の世界遺産総数は936件うち文化遺産は725件である。
→富士山は日本の世界遺産暫定リストに載っている他の遺産ないし既登録の遺産と分野が異なることが高く評価されている。
文化庁は、暫定リスト記載に至らなかった候補に対しては「新規の登録遺産数を抑制しようとの最近の世界遺産委員会の傾向に鑑み、既登録の文化遺産との統合又は再整理の視点を十分視野に入れ、資産構成について検討することが必要」であるとし、主題の類似する遺産候補ないし既存の遺産との比較検討を行うよう指示している。
～感想～
自分にとっての富士山の価値は、山梨県にとっての富士山の価値とかぶる部分が多かった。一方で世界遺産登録を目指す上での富士山の価値は大切なものが抜けているように感じた。世界遺産の登録基準においては、芸術や文学、信仰に関連することは重要な価値とみなされる。けれども私にとっては、絵画や文学作品に描かれる富士山よりも生活の中に実物として存在する富士山の方がはるかに大きな価値をもつ。世界遺産の登録を目指すためには相対的にすぐれた価値を証明しなくてはならないので仕方ないのかもしれないが、この点にギャップを感じた。
参考HP
「富士山を世界文化遺産に」富士山世界遺産登録推進両県合同会議 (2011.11.22取得)
http://www.fujisan-3776.jp/index.html
「世界遺産暫定一覧表に追加記載することが適当とされた文化資産」
文化審議会文化財分科会世界文化遺産特別委員会 (2011.11.22取得)
http://bunka.nii.ac.jp/jp/world/docs/14_attach4.pdf
「富士山総合環境保全対策基本方針」山梨県 (2011.11.26取得)
http://www.yamanashi-kankou.jp/fujisan/mamoro/documents/cherter.pdf
「社団法人日本ユネスコ協会連盟」社団法人日本ユネスコ協会連盟 (2011.12.1取得)
http://www.unesco.or.jp/contents/isan/list.html
