本論の目的は、ハイデッガーが『存在と時間』(一九二七年)で展開した「道具」(Zeug)概念と、それを受け継ぐ和辻哲朗の風土論とを理論的枠組として、〈最適動線〉を見いだす過程を、生活的自然との身体的関わりのなかで分析することにある。
〈最適動線〉とは本論の造語である。発表者の専攻する環境思想における関心事として、大きく二点をあげることができる。一つは、共有地・入会地(土地、山林、原野、河川等)の保全管理を、国家や市場だけではなく、その場所に利害関係をもつ住人が、その場所に適切な規範を見出す可能性。もう一つは、環境リスクへの対応が新しいリスクを生み、その新しいリスクへの対応がさらなるリスクを生むことで状況が複層的に深刻化する、連鎖的転移と呼ばれる現象の回避である。どちらの場合も、〈変化しつづける状況における最適な動き方の判断および振る舞い〉が求められる案件であり、それゆえ、単一の組織や個人による占有や、一元的な管理が馴染まない。環境思想におけるこれらの案件に関して、ハイデッガーの道具論および和辻の風土論から導かれる「存在」と「所有」の関係は、考察に大きく寄与するものと発表者は考える。
〈最適動線〉とは本論の造語である。発表者の専攻する環境思想における関心事として、大きく二点をあげることができる。一つは、共有地・入会地(土地、山林、原野、河川等)の保全管理を、国家や市場だけではなく、その場所に利害関係をもつ住人が、その場所に適切な規範を見出す可能性。もう一つは、環境リスクへの対応が新しいリスクを生み、その新しいリスクへの対応がさらなるリスクを生むことで状況が複層的に深刻化する、連鎖的転移と呼ばれる現象の回避である。どちらの場合も、〈変化しつづける状況における最適な動き方の判断および振る舞い〉が求められる案件であり、それゆえ、単一の組織や個人による占有や、一元的な管理が馴染まない。環境思想におけるこれらの案件に関して、ハイデッガーの道具論および和辻の風土論から導かれる「存在」と「所有」の関係は、考察に大きく寄与するものと発表者は考える。