- 20数年前 豪邸 『 薄暗い豪華絢爛たる一室 』
ヒック…!ヒック…!ヒヒック…!!
すすり泣く声がする。
それは絶望の泣き声だ。
それは敗北の泣き声だ。
その泣き声を発する者。
その男の名は『蔵金芯太郎(くらがね しんたろう)』・・!!
秘密結社ブラッククロスの日本支部幹部である。
○超鋼戦機カラクリオー外伝
クロガネの賛歌・番外 ー F i s t o r T w i s t ー
「 情 念 渦 巻 く 『 地 下 プ ロ レ ス 』 。 」
何処から話せば良い?僕は混乱する頭でそう考えた。
ああ、あれだ。あれから話せば良い。
ああ、あれだ。あれから話せば良い。
20年前。僕が8歳の時、僕の父、蔵金馬黒(くらがね ばぐろ)は死んだ。
僕は悲しんだ。大好きだったお父様。何故死んだのか?どうして死んだのか?
僕は悲しんだ。大好きだったお父様。何故死んだのか?どうして死んだのか?
僕は父から貰ったバタフライ・ナイフで、何度も車のぬいぐるみを刺し貫いた。
車がお父様の命を奪ったと聞かされたからだ。だから僕は憎い車を何度も何度も刺し貫いた。
溢れ出る黒い熱情がそうする事で加熱をし。そして癒されるからである。
交通事故。それがお父様の死因。
だが事実は違っていた。
何もかもが景色が変わった。
18歳となった僕はお父様の“跡”を継いだ。
それは“ブラッククロス幹部”としての“跡”を。
そして僕は全てを知った。
お父様はブラッククロス幹部にして、日本地下プロレスの王者“ブラックゴールド”。
強かった。本当に強かった。だが、死んだ。何故だ?何故死んだのだ??
それは殺されたからだ。
現日本地下プロレスの王者。
曰く“絶対王者”。
“ジ・ハンドレッド”の手によってである。
僕は憎んだ。ヒッヒッヒ!憎み抜いたァーッ!!
ヒィーハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!
憎くない訳無いじゃないですかァーッ!!
あの男が僕のお父様を殺したかと思うと、トロトロと粘着質な黒い炎が燃え上がった!!
ッ
ッ
!
憎しみでだァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!
すぐにでも僕はこのバタフライ・ナイフで持ってハンドレッドを殺してやりたかった。
だが、幹部の力を持ってしても、ヤツを殺す事は出来なかった。
何故か?それはチャンプに就く者は即ちお父様こと“ブラックゴールド”と同じ“権力”を持つ者であるからだ。
地下プロレスの1王者がそれだけ絶対な権力を持つ理由は、
先代の王者である“ブラックゴールド”が、それだけ絶対な王者だった事に所以する。
幹部かつ王者。その両輪あっての絶対的権力。
ハンドレッドは幹部ではなかったが、先代に勝るとも劣らない権力を持つに至ったのだ。
僕はその事実が誇らしかった。何と素晴らしいお父様なのだ!!
だが、激しくも歯噛みした!!
僕の幹部としての権力を持ってしても“奴”を殺せない!
だから歯噛みした!!
ならば、どうする?
ならば、暗殺だッ!!
幾ら王者と言えど、銃でドズンと撃ち抜いてしまえば、済む話だ!
だから、やったよ!絶対王者としての権力を無視して、ゴリ押しに暗殺を行った!!
だが・・・!!
だが銃程度では殺せなかった!!
ハンドレッドは後頭部を狙い撃ち放たれた“弾丸”を 掴 ん だ !
そしてハンドレッドは、狙らわれた方向へと思い切り弾丸を投げ放った!!
- それで暗殺者は死んだよ。
ハンドレッドは化物だった。
成程。お父様を殺しただけの事はある。
もっと徹底的な暗殺。逃げられぬ場所へ誘い込み、集中砲火でもすれば死ぬのかも知れない。
だが、ハンドレッドに隙は無かった。
ストイックに連戦と連勝を重ねる毎日。
自宅。ジム。プロレス会場。リング。その4つを往復する毎日だ。
隙は無かった。
あるとすれば・・・。
リ ン グ ! !
かつてお父様が其処で殺されたように、あの場でハンドレッドを殺すしか無かった。
だから、僕はアメリカから『Dr.劉』を招聘(しょうへい)した。
Dr.劉は肉体改造の第一人者であるからだ。
Dr.劉は偉大だった。
瞬殺続きだったハンドレッドの試合内容は一変したよ。
劉の作り出す“劉クリーチャー(RC)”は強く。劉の作り出す“劉クリーチャー(RC)”は激しかった。
何度も何度もハンドレッド手傷を負わせた。
だが・・・!
だが、ハンドレッドを殺すまで至らなかった。
いや、1度だけあと少しのトコロまで追い詰めたか。
赤胴流の秘伝を携えた劉クリーチャー(RC)・・・。
“赤胴鈴切仮面(あかどう すずきり かめん)”。
なす術もなく、なます切りにされていく“ジ・ハンドレッド”を見るのは、この上無い“快楽(エクスタシー)”であったよ・・!
今でも思い出す。あの時“鈴切仮面”が放った『赤胴真空切り』があと数ミリずれていれば・・・!!
だが現実は非常であった、勝ったのはジ・ハンドレッドであった。僕の念願は叶わなかった。
クックックックック・・・。
だが、それもそもそもの話だと笑いがこみ上げる。
劉の助手にハンドレッドの妻の『レディ・ミィラ』が選ばれた時・・・。
僕は何度も『ミィラを人質に取り、ハンドレッドを殺せ』と命令したんだ。
だのに、劉め!ゴミでも見るような目で『こう言いやがった。』
「彼女に手を出す事は許さぬ。」
「彼女は私とハンドレッドの決戦に置いて、ハンドレッドから贈られた塩のようなモノだ。」
「私一人では限界を感じていた、劉クリーチャー(RC)の研究に新たなる進化をもたらした。」
「私は此処に誓う。私が持つ“悪魔の頭脳”で“ジ・ハンドレッド”を討ちて倒し・・!」
「そして、その妻レディを“私だけの助手(モノ)”にするとな。」
「若造。お前に言う事はこれまでだ。」
「全ては私が持つ“悪魔の頭脳”に任せるが良い。」
「余計な手出しをするではないぞ。」
そう言いやがった。
ヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒ!!
ヒィーヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒ!!
このくされ脳ミソがァァァァァアアアアア!!
何が悪魔の頭脳だ!甘っちょろい事言いやがって!!
何が私だけの助手(モノ)だ!
クソ!クソ!クソ!クソ!クソ!!
腹立たしい事、この上無い!
だが、そんな劉に頼る他無かったッ!!
僕には手段が無かったからだ。
怒りと憎しみとがが増幅する毎日・・・。
- そんな時だ。
ヨーロッパ地下プロレス協会から、生きの良い男が居るとの噂が届いた。
ハンドレッドと同じく絶対王者として、連戦連勝を続ける男・・・。
その名は『大蛇毒砲(おろち どっぽ)』。
大蛇流空手の継承者である。
大蛇毒砲は豪壮な男だった。
強い男が居ると聞くと、誰にでも喧嘩を吹っかける男だ。
強い男が居ると聞くと、誰にでも喧嘩を吹っかける男だ。
その性分を拗(こじ)らせて、5年前ヨーロッパ地下プロレス協会に行き着く。
其処で無敗。絶対王者として君臨する。
そして最も恐るべしは『三日三晩!狂気!!1000人組み手ッッ!!』
日本地下プロレス協会がジ・ハンドレッドが持つ連勝記録を抜かす為に、
ヨーロッパ地下プロレス協会会長“コルネリウス=アルブレヒツベルガー”が考案し、
嬉々として大蛇毒砲が受け入れた、狂気の連続死合である。
ヨーロッパ地下プロレス協会会長“コルネリウス=アルブレヒツベルガー”が考案し、
嬉々として大蛇毒砲が受け入れた、狂気の連続死合である。
大蛇は並み居る猛者を空手で持って、叩き殺していった・・・。
その様は正に『人喰い大蛇』・・ッ!
誰もが毒砲を畏れ。誰もが毒砲を崇拝した。
毒砲はこう言う。
「己の意を・・通す力・・。」
「ぶっちゃけワガママを通す力って事だよなぁ、強さってモンは。」
「それも出来る事なら・・。拳(コイツ)で通してぇ・・。じゃねぇとややこしなっていけねぇや。」
「もうヨーロッパには敵にはいねぇ。」
「そろそろ。どっちが強ぇか決めようじゃねぇか。」
「なぁ、ハンドレッド。」
「死合おうと言ってんだ・・・よッ!」
「リングは日本(そっち)で良いや。おいらが乗り込んでやるよ・・。」
「怖くなって逃げ出すんじゃないぜぃッ!!」
僕は歓喜した!
殺せるッ!毒砲ならッ!!ジ・ハンドレッドをッッ!!!
だが、其処に邪魔が入る・・。
その男の名は『柳生月心斎(やぎゅう げっしんさい)』。
奴は空港に現れた。
毒砲を迎えたに来た僕の前に。
月心斎はボディガード2人を引き連れる僕を無視して“毒砲”に話しかける。
「毒砲ちゃん。ようやく帰って来たよん。」
「達倍(たつます・毒砲の父)ちゃんが死んで早2年。」
「馬鹿やるのは達倍ちゃんが、現役やってる間までの話だったね。」
「来てもらうよん。日本防衛軍に。」
毒砲はこう言う。
「悪ぃな。じっちゃん。おいらぁ誰にも縛らえねぇと決めているのさ。」
「どうしても連れて行きたいってぇんなら、拳(コイツ)で通しなよ、柳生のじっちゃん。」
月心斎は目を見開いてこう言い放つ。
「ほっほっほっ。面白い事言うよん、毒砲ちゃん・・・!」
ッ
ッ
!
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴゴゴゴ ゴゴゴ ゴゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
毒砲は荷物を捨て、両腕を上下に構える。
月心斎は微動だにしない。
次の瞬間であった。
ゴォォォォォオオオオオフユッ!!!!
拳音が鳴り響く。
大蛇毒砲の拳が、柳生月心斎の顔面をッ!!
否
ッ
!
それは拳では無かった!
言うなれば、菩薩(ぼさつ)の掌ッ!!
軽くもゆるく半握りの右の手を、月心斎の顔面に叩きつけ・・・ッ!!
い
い
や
!
ユゥ・・・・・ッ!!
柳生月心斎は緩くも首を傾けるッ!!
ヒュゴォオオオオオオオオオオオオオオ!!!
拳音と共に、大蛇毒砲の右の手はすり抜けた。
ツゥ・・・!!
柳生月心斎の左コメカミから、血がにじみ落ちる。
「血を流したのは、大神以来かね・・・?」
シュオン!!!
毒砲は右の手を繰り出した速度と同じ速度で、右腕を引く!!
「流石じっちゃんだ。油谷牙門以来だぜ、オイラの拳を回避(か)わしたのはよぅ。」
「ハンドレッドとやる為だ、邪魔するってんなら、どいて貰うぜぃ・・・?」
月心斎は首を正面に戻し、こう言う。
「百ちゃんと戦う為に戻って来たの、毒砲ちゃん?」
毒砲は答える。
「おうよ。チャンプだからなぁ、お互い。」
月心斎。
「なら話は早いよん。立会人になろうじゃない。」
毒砲。
「結構だぜぃ、地下プロレスのリングで死合うんでな♪」
月心斎。
「ワシの立会いなら、今日の今日、決闘が出来るよん。」
毒砲。
「おほ!そいつはマジかい、じっちゃんよぅ。」
月心斎。
「その気があるなら、付いて来なさい。」
毒砲。
「そんじゃ付いて行くとするかねぇ。」
トットットット。
二人は僕を無視して、立ち去ろうとする。
だから僕はこう言った。
「おい、柳生!ふざけるんじゃあないぞ!!」
「死合は既に決まっているッ!会場も日にちも地下プロレスが仕切るのだッ!!」
「ノコノコあらわれて、勝手に仕切るんじゃあない、この老いぼれがァーッ!!」
ク
ル
リ
柳生月心斎が振り向く。
「君は確か、馬黒ちゃんの息子だったね。」
僕は答える。
「そうだ。僕は蔵金芯太郎!地位は幹部だ!!」
月心斎。
「187cm77kgってトコかね?良い体格をしているね。」
僕はナイフを抜きながら、月心斎にこう言い放つ。
「バタフライ・ナイフ(コイツ)で何でも切り刻めるように、日々のトレーニングを欠かした事は無いッ!」
「柳生ッ!邪魔するって言うのなら、切り刻んでくれるぞッ!ヒヒヒ!このお父様から貰ったナイフでなぁッ!!」
月心斎は事も無げにこう言う。
「良いよん、かかってきなさい。」
そ
の
時
!
「蔵金さん。此処は俺達に任して下さい。」
「たかが老いぼれ一人。すぐにでもかたしてやりますよ。」
ボディガードの岸田と白木が前に出る。
それを見て、月心斎は。
「ほっほっほっ。良いね。若いというのは。血気盛んだよん。」
とニコニコと呟く。
岸田。
「おい、ジジイ!ゲートボールにでも勤しんでな!!」
白木。
「枯れ枝のような、その腕をへし折ってやる!!」
ダ
ッ
!
二人は、月心斎に襲い掛った。
スッ(二人同時に柳生月心斎の間合いに入る。)
グッ(上と下ッ!回避出来る術は無しッ!)
ッ!(かに思われたがッ!!)
柳生月心斎ッ!
「こんにゃくの動きだよん。」
ス
ル
リ
まるでこんにゃくのようにッ!
スルリと上と下の動きをすり抜けるッ!!
そして反撃ッ!!
「ほい!」(岸田の顎に掌底ッ!)
「よん!」(白木の顎にも掌底ッ!!)
結
果
!
ド ス ン !
ド ス ン ! !
崩れ落ちるように倒れる二名ッ!
瞬
間
ッ
!
「ピギャァァァアアアアアアアアアアアアアア!!!」
僕は!柳生月心斎にバタフライ・ナイフで!!
土手っ腹をブッ刺しにかかったぁぁぁぁぁああああ!!
「当時最高峰の金属“強化スチール”作られた!
このバタフライ・ナイフで、テメェを今ッ!
突 き 刺 し て や る ぜ ぇ ぇ え え え ! ! ! 」
今
ッ
!
ドズンン ン ン ン ン ン ! !
ナイフはッ!柳生月心斎のッ!!
否
ァ
!
柳生月心斎ッ!!
「心月流・・『月之抄』。」
「壱 之 型 『 霞 』 ッ ! ! 」
それは瞬撃であった!
僕のバタフライナイフが手刀で払われると・・!
その場で横回転して、僕の首筋に“ドズン”と『 手 刀 』が落とされたのだ!!
「ブ・・ギィ・・・!!!」
意識が遠のく僕。
だ
が
!
「たまるかぁぁぁあああああああああああ!!!」
「僕はッ!ハンドレッドが死ぬ様を!!見届けるッ!!」
ギ
チ
ギ
チ
ギ
チ
ギ
チ
ィ
!
僕の体が“成長”するッ!
僕もお父様同様、恐怖(激昂)すると体が成長する体を持っていたッ!!
柳生月心斎がこう話しかける・・!!
「血は争えないよん。芯太郎ちゃんもそう言う体をしているとはね。」
「そんなに見たいのなら、芯太郎ちゃんもついてくるかい?」
僕は断るッ!
「ギヒィー!知ってんだよ、柳生月心斎ッ!!」
「お父様を殺したのは、テメェの差金だって事はよぉぉおおおおおおおおお!!」
「僕は僕が用意した、血の花咲くリングで、ハンドレッドが死ぬ様を見届けるんだぁぁぁあああああ!!」
ブショワァァァアア ア ア ア
アアアアアアアアア ア ア ア
アアアアアアアア ア ア ア ア ! !
僕はッ!再びッ!!柳生月心斎を突き刺しにかかるぅぅぅぅうううううううううううううう!!!
柳生月心斎ッ!!
「心月流・・『月之抄』。」
「参 之 型 『 神 妙 拳 』 ッ ! ! 」
ズッドォォオオオオオオオオ オ オ オ オ オ
オオオオオオオオオオ オ オ オ オ オ
オオオオオオオオオオ オ オ オ オオ オ ! ! !
柳生の正拳が、僕のミゾオチに突き刺さるッ!!!
「コヒュウ・・・!!コッ!コッ!ヒュゴォオ・・・・ッ!!」
僕は呼吸困難に陥りながら・・・。
ド
ズ
ン
!
その場に倒れた・・・!!
ヒック!ヒック!ヒヒック!ヒィック!
僕は自室で泣いていた。悔しくて泣いていた。
許さない、ハンドレッドを!
許さない、レディ・ミィラを!
許さない、Dr.劉を!
許さない、大蛇毒砲を!
許さない、柳生月心斎を!
ただでは殺さない!
生き地獄を味あわせてつつ、なぶり殺してやる!!
ド ス ゥ ッ ! (僕はナイフを刺した!)
ド ス ゥ ッ ! (ただただ自室の壁に!)
ド ス ゥ ッ ! (今出来る事はそれだけだった・・。)
その日。ジ・ハンドレッドは柳生月心斎から、大蛇毒砲が立会いたい事を知らされた。
ハンドレッドはそれを快諾した。
それは、ハンドレッドに取って、大蛇毒砲は超えねばならぬ壁であると感じて居たからだ。
かつてハンドレッドは、自分の師であり義父である巴二十八(ともえ にじゅうはち)を大蛇毒砲に殺された。
尋常なるは死合によるモノだった。だがハンドレッドは激昂した。
大切な者を失った瞬間、例えようのない憤怒が燃え上がったのだ。
しかし・・・。
しかし、その怒りは針で穴空けた風船の様に小さく萎(しぼ)んだ。
大蛇毒砲の眼光に睨めつけられたから・・・。
気が付いたら、ハンドレッドは土下座をしていた。
そんなハンドレッドに大蛇がこう言う。
「故郷(くに)に、帰(けぇ)んな。」
「お前ぇさん、『こっちの世界』じゃあ生きちゃいけねぇぜ。」
そう言い放ち、大蛇毒砲はその場を去った・・・。
結果、ハンドレッドは傷一つ負わずに済んだ。
しかし、それは・・・。
自分が持ってる失ってはならない、『 大 切 な 何 か 』と引き替えに。
百文字は、失意の中。あてもなく大雪山の山中を彷徨(さまよ)い続けた。
そんなある日。
百文字は、出会う。
そう。
それは・・・。
その『出会い』こそが・・・!
私の名はレディ・ミィラ。
滅び行く、母星(ほし)を後にして。
滅び行く、母星(ほし)を後にして。
それから・・・。
どの位の時が経ったのであろう・・・?
どの位の時が経ったのであろう・・・?
流れ着いた星の名は。
ーー ー 『 地 球 』 。
母星(ほし)とよく似た、青くて美しい地球(ほし)だった。
緑溢るる青い地球(ほし)。
けれど。それは、決して自分にとって優しい地球(ほし)では無かった。
けれど。それは、決して自分にとって優しい地球(ほし)では無かった。
遅れた文明。同種すら差別をし合うその社会。
どちらも自分にとって、厳しい環境であると言わざる得なかった。
どちらも自分にとって、厳しい環境であると言わざる得なかった。
そんな自分を救ってくれたのが・・・。
『 百文字(ハンドレッド)であった。 』
モノを言わぬ。
感情すら無いと思われる、鈍感な彼(ハンドレッド)であったが・・・。
感情すら無いと思われる、鈍感な彼(ハンドレッド)であったが・・・。
必死に自分から学ぼうとする彼(ハンドレッド)を見ていると・・。
己が不幸を、嘆き悲しみ。何もせず生きていく事が、『 罪 悪 』であると思えてならなかった。
己が不幸を、嘆き悲しみ。何もせず生きていく事が、『 罪 悪 』であると思えてならなかった。
だから私は・・・。
この地球で『生きて行く』と決めたのだ。
この地球で『生きて行く』と決めたのだ。
姿も。形も。寿命すらも違う人間。
けれど、私は・・・。
『 生 き て 行 く 』と決めたのだ。
そして私達には夢があった。
それは『子を育む事』。しかし悲しきは別種族。どうやっても懐妊する事が出来なかった。
そんなある日の事。1人の老人と邂逅する事となる。
その老人の名は・・・『柳生月心斎』。
それは奇妙な老人であった。
158cm。47kg。寝むそうな顔に、語尾は『よん』付け。
158cm。47kg。寝むそうな顔に、語尾は『よん』付け。
何処からどう見ても、強そうに見えないのに・・・。
針で突き刺すような研磨をされたオーラを持った老人。
針で突き刺すような研磨をされたオーラを持った老人。
その老人こそが『柳生月心斎』。日本防衛軍空軍長官。
月心斎は雅号であり、本名は「十蔵」と言うとの事。
月心斎は雅号であり、本名は「十蔵」と言うとの事。
月心斎は集められた情報により、私達がこの大雪山の山奥に居る事を知り、此処にやって来たのだ。
「君等が件(くだん)の二人のようだね。」
「一人は異星人。放っておく訳には行かないよん。」
ハンドレッドがこう言い返す。
「レディを軍に渡す訳には行かぬ!」
月心斎。
「ならば腕ずくだよん。」
ギ
ラ
ッ
!
そう言うと月心斎は鋭い眼光でハンドレッドを睨んだッ!!
ハンドレッド!
「凄まじきは眼光ッ!!」
「だが・・!だが!だがッ!だがッ!!」
「 ワ シ は 決 め た の だ ッ ! 」
ッ
ッ
!
「 も う 二 度 と ッ !
あ の 日 の 百 文 字 豪 介 に は 戻 ら ぬ ッ ! ! 」
「 如 何 に 力 の 差 が あ ろ う と も 、ワ シ は 立 ち て 向 か う ッ ! ! 」
「 行 く ぞ 、 柳 生 月 心 斎 ッ ! !
“ レ ス ラ ー へ の 賛 歌 ” の 前 に 打 ち 崩 れ る が 良 い ッ ! ! 」
ッ
ッ
!
ハンドレッドは両腕を広げ、月心斎に対峙するッ!
そ
の
時
!
「ほっほっほっ!其処までの覚悟かよん!!」
柳生は座り、アグラを組む。
「話してみると良いよん。何か力になれるかも知れない。」
ハンドレッドとレディは月心斎に話した。
その出生を。その生い立ちを。その出会いを。その絆を。
異星同士。異種族同士。子を作れない体・・・。
それでも子が欲しいと言う事・・・。
そんな悩みに月心斎はこう答える。
「地下プロレスに行きなさい。」
「この日本には、秘密結社ブラッククロスが元締める“日本地下プロレス協会”と言うモノがある。」
「其処で勝ち進めるんだよん。多額の懸賞金を手に入れる事が出来るだろう。」
「そうして“宇宙船”を直し、種族の壁を超えられる『医学の進んだ異星(ほし)』に行くと良いよん。」
「何年掛かるか解らないけど、何時か達成できるかも知れない・・。」
あれから何年経った?
40年と数ヶ月。
ワシは地下プロレスで何人もの命を奪ってきた。
レディはDr.劉の下、幾度と無く人体実験を繰り返して来た。
そんな中、ワシ等の宇宙船は完成しつつあった。
血と屍(しかばね)の上に成り立つ宇宙船だ。
だが、それでもワシ等は成し遂げたかった。
そして、それはあと少しで成し遂げられるまで来た。
そんな時、大蛇毒砲の話を聞いた。
強いと言う。絶対王者と言う。ワシとの死合を望んでいると言う。
もし・・・。
もしも・・・。
もしも、あの時の雪辱を晴らせるとするのなら・・・。
何に変えても、それを成し遂げたい!
例え死地に赴(おもむ)くと言えども!!
しかし・・・。あの大蛇毒砲である。
恐らく互いのどちらかが死ぬであろう。
ワシは悩んだ。無理に毒砲との死合を行わずとも、宇宙船は完成する。
毒砲など無視をして、異星へと向かえば良いのではなかろうか?
- 。
- 。
- 。
出来なかった。
父を殺したと言う恨みもある。
だがそれよりも何よりも『自分が許せなかった。』
何故、土下座をしたのか?そんなに毒砲が怖かったのか?
恐らくは自分よりも若い男にだ。そんなにも毒砲が恐ろしかったのか?
白状しよう。恐れた。歯と歯がガチガチと鳴る程にな。
あの強かった父を殺した“豪壮無類の空手殺法”に恐れた。
捻り込んで打ち込まれる“蛇輪”に恐怖した。
今だって恐ろしい。奴と死合わねばならぬと思うと膝が震える。
だ が 、 そ れ が 許 せ な か っ た !
今此処で、毒砲から逃げ出せば、ワシは一生『毒砲から逃げた男』として生きてかなければならない。
異星で子を育む中、そんな情けない親父の背中を見て、子は何と思うのか?
何よりも・・。愛するレディの前で、そんな情けない姿を晒し続けるのは、耐え難い“恥辱”と感じるッ!!
だからワシは、レディにこう言い放った・・!!
「共に、我武者羅に突き進む事でしか、生きては行けぬ身。」
「だがな。レディ。」
「ワシは・・・。」
「お前を『妻』だと思っている。」
「最良の『夫婦(めおと)』だ。」
「例え、星が違おうと。」
「例え、種が違おうと。」
「この身、血を交わらす事が出来ぬと も ・・ な ・ ・・ ッ。 』 」
「 『 レ デ ィ 。 』 」
「 『 我 が 妻 よ 。 』 」
「 『 ワ シ は 、 お 前 を 、 愛 し て い る ・ ・ ・ ッ ! 』 」
レディは答える。
「 『 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 。 』 」
「 『 あ た し も よ 、 ハ ン ド レ ッ ド ・ ・ ・ ! ! 』 」
ジ・ハンドレッド。
「 『 行 っ て 来 る、レ デ ィ 。 』 」
「 『 仇 敵 と 戦 う 為 に ! ! 』 」
そうして、ワシは死地へと向かった・・!!
例えその先にあるモノが死であろうとも!
例えその先にあるモノが全てを無に帰す事になろうとも!!
ワシは死地へと向かう事を選んだッ!!
それはワシが“男”であるからだッ!!
男 に は ッ !
戦 わ ね ば な ら ぬ 時 が、あ る か ら だ ッ ! !
ーーーーーー